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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1218624
審判番号 不服2007-33696  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-13 
確定日 2010-06-17 
事件の表示 平成10年特許願第171341号「快適空気環境形成方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月 7日出願公開、特開2000- 2459号〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,平成10年6月18日の出願であって,平成19年11月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,平成20年1月15日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年1月15日付け手続補正についての補正却下

[補正却下の結論]

平成20年1月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願発明

本件補正により,特許請求の範囲の請求項2は,次のように補正された。
「所定領域内におけるほぼ1気圧の空気中の酸素濃度が標準酸素濃度であるか標準酸素濃度より人体に自覚症状が発生しない程度の所定濃度分低い低酸素濃度(17.25%)であるかを検出する酸素濃度検出手段と,検出された酸素濃度が前記標準酸素濃度より前記低酸素濃度まで低下した時に,前記所定領域内より取出した空気を濃縮処理した濃縮空気を前記所定領域内に供給して酸素濃度を前記標準酸素濃度に回復させる酸素供給手段とを有することを特徴とする快適空気環境形成装置。」

(2)補正の適否

本件補正は,「標準酸素濃度より低い低酸素濃度」を,「標準酸素濃度より人体に自覚症状が発生しない程度の所定濃度分低い低酸素濃度(17/25%)」に限定するとともに,「検出された酸素濃度が前記標準酸素濃度より低下した時」を「検出された酸素濃度が前記標準酸素濃度より前記低酸素濃度まで低下した時」に限定するものであり,かつ,補正後の請求項2に記載された発明は,補正前の請求項2に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。
(3)引用文献

原査定の拒絶の理由に引用された,特開昭64-14530号公報(以下「引用文献」という。)には,図面ともに,次の事項が記載されている。

a.「各種の構造物内の空間の空気調整装置として,空間の酸素濃度及び任意の香気濃度を調整する手段を設けたことを特徴とする空調用装置。」(特許請求の範囲)

b.「〔産業上の利用分野〕
本発明は空間の空気中の酸素濃度を所要のレベルに自動調整すると共に,その環境条件に合せて任意の香気を必要な濃度に調整し,快適な生活環境状態に保持する装置に関する。」(第1ページ左下欄第9-13行)

c.「本発明の目的は,上記問題点を改善するために,従来の空調装置等に次の機能を追加することにある。
(1)空間の酸素濃度を標準の21%を中心に適正な濃度に自動調整する。」(第1ページ右下欄第8-12行)

d.「上記目的は,従来の空調装置又は換気装置の送気(または吸気側)に次の機能を附加する事により達成される。
(1)空間の酸素濃度を検出し,所要酸素濃度との差が改善されるまで酸素を供給する装置。
尚この酸素供給装置には酸素ボンベ等の高圧容器からの供給するか,または,酸素PSA(Pressure SWing Adsorption )装置による酸素富化製造装置からの自給する型式が考えられる。」(第1ページ右下欄第17行-第2ページ左上欄第5行)

e.「第1図では密閉空間1に対して,従来型の空調装置(又は換気装置)2に対して外部よりの吸気3が2を経由して空間1に送気4される機構に於いて,酸素供給装置5を併置して,空間内の酸素濃度検知装置6により検知濃度が目標濃度と差異がある場合は,酸素供給調整等7に電気信号等を送り5より4の送気系に酸素を供給する機能をもたせる。
尚,この場合,酸素供給装置5は前述の通り,既存技術によるあらゆる様式のものとの接続が可能であるが,その代表例は,
1)酸素の高圧ボンベ,又は,各種容器による供給(この場合は容器の容量により定期補充が必要)
2)酸素「PSA製造装置を採用する時は,酸素を外部から供給する必要はなく連続運転が可能である。
3)その他外部の酸素供給装置との配管接続による供給も可能である。」(第2ページ左上欄第15-同右上欄第13行)

f.「尚,第1図および第2図共に,空間の酸素濃度の目標値は,空間の需要により調整することが出来る。(例:病室等の場合は必要により標準の酸素濃度21%より若干高めることもできる。
本実施例によれば次の事項が改善される。
1)特に多人員を収容する会議室,集会所,事務室等の酸素欠乏症の防止
2)ガス,石油,石炭等の各種暖房室内の燃焼による酸素欠乏の防止
3)喫煙場所等における空気の慢性的汚染防止
4)病室等における病弱者及老人の健康条件改善」(第2ページ左下欄第2-12行)

そして,上記記載事項fには「空間」として,「会議室,集会所,事務室等」が記載されていることからみて,「空間」は「ほぼ1気圧」であることは,明らかである。

また,上記記載事項eの「酸素「PSA製造装置を採用する時は,酸素を外部から供給する必要はなく連続運転が可能である。」との記載からみて,空間より取出した空気を酸素PSA製造装置で処理して,酸素を空間に供給していることは,明らかである。

そこで,これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用文献には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「空間におけるほぼ1気圧の空気中の酸素濃度が目標濃度であるかを検出する酸素濃度検知装置と,検出された酸素濃度が前記目標濃度と差異がある場合に,前記空間より取出した空気を酸素PSA製造装置で処理して,酸素を前記空間に供給して酸素濃度を前記目標濃度に調整する酸素供給装置とを有する空調用装置。」

(4)対比

本件補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「空間」は,本件補正発明の「所定領域内」に相当し,以下同様に,「目標濃度」は「標準酸素濃度」に,「酸素濃度検知装置」は「酸素濃度検出手段」に,「調整する」は「回復させる」に,「酸素供給装置」は「酸素供給手段」に,「空調用装置」は「快適空気環境形成装置」に,それぞれ相当する。

そして,酸素PSA製造装置は,空気から酸素以外の成分を取り除くことで,高い酸素濃度の空気を生成する酸素濃縮器であるから,引用発明の「空間より取出した空気を酸素PSA製造装置で処理して,酸素を前記空間に供給して」は,本件補正発明の「所定領域内より取出した空気を濃縮処理した濃縮空気を前記所定領域内に供給して」に相当する。

また,本件補正発明の「検出された酸素濃度が前記標準酸素濃度より前記低酸素濃度まで低下した時」と,引用発明の「検出された酸素濃度が前記目標濃度と差異がある場合」は,ともに,酸素濃度を標準酸素濃度に回復させるための「所定のタイミング」である点で,共通している。

そうしてみると,両者は,次の点で一致する。

[一致点]

「所定領域内におけるほぼ1気圧の空気中の酸素濃度が標準酸素濃度であるかを検出する酸素濃度検出手段と,所定のタイミングで,前記所定領域内より取出した空気を濃縮処理した濃縮空気を前記所定領域内に供給して酸素濃度を前記標準酸素濃度に回復させる酸素供給手段とを有する快適空気環境形成装置。」

また,両者は,次の点で相違している。

[相違点1]

酸素濃度検出手段が,本件補正発明では「標準酸素濃度であるか標準酸素濃度より人体に自覚症状が発生しない程度の所定濃度分低い低酸素濃度(17.25%)であるかを検出する」のに対して,引用発明では「目標濃度であるかを検出する」ものである点。

[相違点2]

酸素濃度を標準酸素濃度に回復させるための「所定のタイミング」が,本件補正発明では「検出された酸素濃度が標準酸素濃度より低酸素濃度まで低下した時」であるのに対して,引用発明では「検出された酸素濃度が目標濃度と差異がある場合」である点。

(5)判断

上記相違点について検討する。

a.相違点1及び2について

空間内の酸素濃度を調整するにあたり,酸素供給手段の作動を所定の閾値に基づいて制御することは,本願出願前周知の技術である(例えば,特開平5-16661号公報,特開平3-295982号公報参照。)。
また,吸入気酸素濃度が16?12%で脈拍,呼吸数等の増加,頭痛,耳鳴,嘔気等の酸素欠乏症の症状をきたすものであり(「最新医学大事典」,第2版,医歯薬出版株式会社,1996年3月31日,P649,「酸[素]欠[乏]症」参照。),さらに,酸素欠乏による人体への影響を考慮して,酸素を供給するための基準酸素濃度を酸素欠乏症の症状があらわれる前の所定の低酸素濃度(18%)とすることは,本願出願前周知の技術事項である(例えば,特開平8-28902号公報,実願昭55-128843号(実開昭57-52612号)のマイクロフィルム参照。)。
そして,本件補正発明が,標準酸素濃度より人体に自覚症状が発生しない程度の所定濃度分低い低酸素濃度として,仮に「17.25%」に限定しているものとしても,この数値限定に臨界的意義も認められない。

そうしてみると,引用発明において,酸素検出装置で,「標準酸素濃度であるか標準酸素濃度より人体に自覚症状が発生しない程度の所定濃度分低い低酸素濃度(17.25%)であるかを検出する」とともに,酸素濃度を標準酸素濃度に回復させるための「所定のタイミング」を,「検出された酸素濃度が標準酸素濃度より低酸素濃度まで低下した時」とすることは,上記周知技術に倣って,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本件補正発明による効果も,引用発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって,格別なものとはいえない。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(6)むすび

以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明

(1)本願発明

平成20年1月15日付け手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年8月13日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項2に記載された,次のとおりのものである。

「所定領域内におけるほぼ1気圧の空気中の酸素濃度が標準酸素濃度であるか標準酸素濃度より低い低酸素濃度であるかを検出する酸素濃度検出手段と,検出された酸素濃度が前記標準酸素濃度より低下した時に,前記所定領域内より取出した空気を濃縮処理した濃縮空気を前記所定領域内に供給して酸素濃度を前記標準酸素濃度に回復させる酸素供給手段とを有することを特徴とする快適空気環境形成装置。」

(2)引用文献

原査定の拒絶の理由に引用した引用文献の記載事項,及び,引用発明は,前記「2.(3)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断

本願発明は,前記「2.」で検討した本件補正発明から,「人体に自覚症状が発生しない程度の所定濃度分低い」,「(17.25%)」,「低酸素濃度まで」との限定を省いたものである。

そうしてみると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「2.(5)」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が用に発明をすることができたものである。

(4)むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-23 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-30 
出願番号 特願平10-171341
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24F)
P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長崎 洋一久保 克彦  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 豊島 唯
長浜 義憲
発明の名称 快適空気環境形成方法および装置  
代理人 畑中 芳実  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 伊藤 高英  
代理人 玉利 房枝  
代理人 大倉 奈緒子  
代理人 高橋 洋平  
代理人 鈴木 健之  
代理人 磯田 志郎  

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