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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1218791
審判番号 不服2008-28499  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-06 
確定日 2010-06-14 
事件の表示 特願2003-323614「電気二重層コンデンサ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日出願公開,特開2005- 94894〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成15年9月16日の出願であって,平成20年9月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年12月3日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年12月3日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「充電手段によって充電される単一又は複数の電気二重層コンデンサを備える電気二重層コンデンサ装置であって,
前記電気二重層コンデンサに並列に接続されて前記電気二重層コンデンサに流れる電流をバイパスするバイパス回路を構成し,導通した際に前記電流を流す第1のトランジスタと,
前記電気二重層コンデンサの充電電圧と,電圧源によって設定された基準電圧とが加えられて前記充電電圧と前記基準電圧とを比較する電圧比較器を設けるとともに,前記充電電圧が前記基準電圧を超えた場合の前記電圧比較器の出力により導通する駆動用トランジスタを設け,該駆動用トランジスタの導通によって前記第1のトランジスタに駆動電流を供給し,前記第1のトランジスタを導通させる駆動手段と,
前記第1のトランジスタに流れる電流を分流させて電圧に変換し,過電流を電圧に変換して検出する過電流検出手段と,
この過電流検出手段が前記過電流を表す電圧を発生した場合に,前記バイパス回路の前記第1のトランジスタを遮断させる第2のトランジスタと,
を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサ装置。」
と補正された。
上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「駆動手段」について,「前記電気二重層コンデンサの充電電圧と,電圧源によって設定された基準電圧とが加えられて前記充電電圧と前記基準電圧とを比較する電圧比較器を設けるとともに,前記充電電圧が前記基準電圧を超えた場合の前記電圧比較器の出力により導通する駆動用トランジスタを設け,該駆動用トランジスタの導通によって」との限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-25162号公報(以下「引用例」という。)には,図面とともに以下の記載がある。

・「【0012】 本発明に係る均等充電回路は,複数の電気二重層コンデンサセル(セル)を直並列に接続してなるモジュールにおけるセルの直列接続部分に用いられる。図1は均等充電回路1の概略構成を示す説明図であり,均等充電回路1の主な構成要素は,充電回路2,電圧検出回路3,均等充電タイミング制御回路(以下,「タイミング回路」という。)4,均等化回路5,及びセル6であり,1個のセルに1回路の均等化回路が並列に接続されている。尚,当然に,セルの直列接続数は図1に示される4個に限定されるものではない。」

・「【0014】 そこで本発明においては,先ず,満充電時における電圧以下の任意の電圧で,一度,セル6各々の電圧を合わせることとする。具体的には,予めセル6について均等化したい所定の電圧値を定めておき,充電回路2が作動しているときの全セル6間にかかる総電圧値を電圧検出回路3で監視し,総電圧値が均等化したいセルの所定電圧とセルの積により得られる値に達した時点で,タイミング回路4から各々の均等化回路5にタイミング信号を送り,均等化回路5を作動させる。
【0015】 均等化回路5は,各々に接続されたセル6の充電状態(電圧値)に応じて,充電を行うか,或いは放電を行うかを判断し,全てのセル6の電圧を均等化させ,均等化が終了した時点で均等化回路5の作動を停止する。均等化が終了した時点から再び充電回路2による充電が開始されるが,ここで,電圧検出回路3がセル6の満充電状態をも検出する機能を有するように設計しておくと,電圧検出回路3はセル6の総電圧を監視しながら,満充電に到達した時点で,充電回路2へ信号を送り,充電回路2の作動が停止し,セル6の充電が終了する。
【0016】 ここで,充電電流のバイパス或いはセル6の放電は,必要な量(電流量)を必ずしも1回で行う必要はない。つまり,1回で実行してもよいし,複数回(複数サイクル)にわたって実行しても構わない。
【0017】 図5は,複数サイクルにわたって均等化回路5を動作させることにより均等化充電を行う一例を示す説明図である。図5中の2本の折線は,電圧が不揃いとなった2個のセル(セル6A及びセル6Bとする。)の充放電に伴う電圧の変化を示している。第1サイクルでは,充電の進んだセル6Aは,均等化回路5が動作した時点で充電電圧が一定となり(図5中のステップ101),この間に充電の遅れたセル6Bの充電電圧が上昇する。しかし,本例では,セル6Bの充電電圧がセル6Aと同一になる前に,均等化回路5の動作が停止し,再びセル6Aに充電が開始されて,セル6Aとセル6B間に電圧差が残った状態となっている。」

・「【0019】 ここで,図2に均等化回路5の更に詳細な回路構成の一実施形態である均等化回路5Aを示し,上述した均等充電回路1の動作について,タイミング回路4からのタイミング信号が,均等化回路5Aに与えられた後の均等化の過程について更に詳細に説明する。尚,図2において,セル6は静電容量Cと等価内部抵抗Rとに分けて示されている。図2に示されるように,タイミング回路4としては,具体的にはフォトカプラPC1等を用いることができ,フォトカプラPC1のダイオードにタイミング信号が入力されると,フォトカプラPC1の出力トランジスタが導通し,これにより均等化回路5Aが作動する。
【0020】 即ち,フォトカプラPC1の出力トランジスタが導通すると,トランジスタTR3が導通し,抵抗R2を通じて均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオード(以下,「定電圧ダイオード」という。)ZD1に電圧が印加され,均等化回路5Aが動作を開始する。図2に示されるように,セル6の端子電圧VCは,抵抗R4・R5により分圧されて定電圧ダイオードZD1に入力されるので,定電圧ダイオードZD1は,端子電圧VCが所定の電圧(均等化電圧)となるように,トランジスタTR1のベース電流を調節する。
【0021】 トランジスタTR1は,セル6がこの時点で均等化電圧よりも大きくなっている場合には,導通してバイパス用トランジスタTR4を導通させ,セル6の放電が起こり,セル6の端子電圧VCが下降を始める。そして端子電圧VCが均等化電圧に到達すると,トランジスタTR1は導通しなくなり,従ってTR4も導通しなくなり,バイパス動作が終了され,セル2は均等化電圧において保持されることとなる。
【0022】 一方,定電圧トランジスタZD1の作動開始時において,セル6の端子電圧VCが,均等化電圧に満たない場合には,トランジスタTR1は導通しないので,TR4も導通せず,充電回路2からの電流によってセル6が充電され,端子電圧が上昇する。端子電圧VCが均等化電圧に達すると,トランジスタTR1が導通するため,TR4も導通し,充電電流をバイパスして,端子電圧VCが均等化電圧よりも高くならないようにして,端子電圧VCを一定に保つ。」

・「【0024】 ところで,均等化回路5Aの作動開始時に,セル6の端子電圧が均等化電圧よりも大きくなっている場合には,前述したように,セル6の放電が起こるが,このときセル6の等価内部抵抗Rに基づく短絡電流がTR4に流れる。そこで,この短絡電流を抵抗R1で検出して,抵抗R1とトランジスタTR2のベース・エミッタ間電圧で決まる電流値より上昇しないようにトランジスタTR2が動作し,トランジスタTR4のベース・エミッタ間電圧を調節し,トランジスタTR4に流れる電流値を制限する。こうして放電回路が保護されることとなる。
【0025】 尚,フォトカプラPC1から均等化回路5Aへの入力がない場合には,トランジスタTR3は動作せず,定電圧ダイオードZD1には電圧が因果されないので,トランジスタTR1は導通しないままであり,充電動作が継続して行われることとなる。」

上記記載事項及び図示内容を総合すると,引用例には,
「充電回路2によって充電される複数の電気二重層コンデンサセル6を備える電気二重層コンデンサ装置であって,
前記セルに並列に接続されて前記セルに流れる電流をバイパスするバイパス回路を構成し,導通した際に前記電流を流すトランジスタTR4と,
前記セルの端子電圧Vcが印加される均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードZD1を設けるとともに,前記均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードに接続され,該均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードに加えられる前記セルの端子電圧Vcが所定の均等化電圧よりも大きくなった場合に該均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードによってベース電流を調節されて導通するトランジスタTR1を設け,該トランジスタTR1の導通によって前記トランジスタTR4を導通させる回路と,
前記トランジスタTR4に流れる電流を電圧に変換し,短絡電流を電圧に変換して検出する抵抗R1と,
前記トランジスタTR4のベースとエミッタ間に接続されたトランジスタTR2であって,前記抵抗R1に流れる電流が前記抵抗R1と前記トランジスタTR2のエミッタ・ベース間電圧で決まる電流値より上昇しないように前記トランジスタTR2が動作して,前記トランジスタTR4のベース・エミッタ間電圧を調整し,前記バイパス回路の前記トランジスタTR4に流れる電流を制限するトランジスタTR2と,
を備えた電気二重層コンデンサ装置。」との発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを比較すると,その機能・作用からみて,以下のことが明らかである。
a.後者における「充電回路2」は前者における「充電手段」に相当し,以下同様に,「複数の電気二重層コンデンサセル6」及び「セル」は「単一又は複数の電気二重層コンデンサ」に,「トランジスタTR4」は「第1のトランジスタ」に,それぞれ相当している。
b.後者の「端子電圧Vc」は前者の「充電電圧」に相当し,以下同様に「大きくなった場合」は「超えた場合」に,「トランジスタTR1」は「駆動用トランジスタ」に相当し,後者の「所定の均等化電圧」と前者の「基準電圧」とは,「所定の電圧」との概念で共通するから,後者の「セルの端子電圧Vcが印加される均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードZD1を設けるとともに,前記均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードに接続され,該均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードに加えられる前記セルの端子電圧Vcが所定の均等化電圧よりも大きくなった場合に該均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードによってベース電流を調節されて導通するトランジスタTR1」と,前者の「電気二重層コンデンサの充電電圧と,電圧源によって設定された基準電圧とが加えられて前記充電電圧と前記基準電圧とを比較する電圧比較器を設けるとともに,前記充電電圧が前記基準電圧を超えた場合の前記電圧比較器の出力により導通する駆動用トランジスタ」とは,「電気二重層コンデンサの充電電圧が所定の電圧を超えた場合に導通する駆動用トランジスタ」との概念で共通する。
c.後者の「トランジスタTR1の導通によってトランジスタTR4を導通させる回路」は前者の「駆動用トランジスタの導通によって第1のトランジスタに駆動電流を供給し,前記第1のトランジスタを導通させる駆動手段」に相当する。
d.後者の「トランジスタTR4に流れる電流を電圧に変換し,短絡電流を電圧に変換して検出する抵抗R1」と,前者の「第1のトランジスタに流れる電流を分流させて電圧に変換し,過電流を電圧に変換して検出する過電流検出手段」とは,「第1のトランジスタに流れる電流を電圧に変換し,所定の電流を電圧に変換して検出する電流検出手段」との概念で共通する。
e.後者の「トランジスタTR2」は前者の「第2のトランジスタ」に相当するから,後者の「トランジスタTR4のベースとエミッタ間に接続されたトランジスタTR2であって,抵抗R1に流れる電流が前記抵抗R1と前記トランジスタTR2のエミッタ・ベース間電圧で決まる電流値より上昇しないように前記トランジスタTR2が動作して,前記トランジスタTR4のベース・エミッタ間電圧を調整し,前記バイパス回路の前記トランジスタTR4に流れる電流を制限するトランジスタTR2」と,前者の「この過電流検出手段が過電流を表す電圧を発生した場合に,バイパス回路の第1のトランジスタを遮断させる第2のトランジスタ」とは,「この電流検出手段の発生する電圧に応じて,バイパス回路の第1のトランジスタに流れる電流を制御する第2のトランジスタ」との概念で共通する。

したがって,両者は,
「充電手段によって充電される単一又は複数の電気二重層コンデンサを備える電気二重層コンデンサ装置であって,
前記電気二重層コンデンサに並列に接続されて前記電気二重層コンデンサに流れる電流をバイパスするバイパス回路を構成し,導通した際に前記電流を流す第1のトランジスタと,
電気二重層コンデンサの充電電圧が所定の電圧を超えた場合に導通する駆動用トランジスタを設け,該駆動用トランジスタの導通によって第1のトランジスタに駆動電流を供給し,前記第1のトランジスタを導通させる駆動手段と,
前記第1のトランジスタに流れる電流を電圧に変換し,所定の電流を電圧に変換して検出する電流検出手段と,
この電流検出手段の発生する電圧に応じて,前記バイパス回路の前記第1のトランジスタに流れる電流を制御する第2のトランジスタと,
を備えた電気二重層コンデンサ装置。」の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
駆動用トランジスタの制御の態様に関し,本願補正発明は,「電気二重層コンデンサの充電電圧と,電圧源によって設定された基準電圧とが加えられて前記充電電圧と前記基準電圧とを比較する電圧比較器」を設けるとともに,駆動用トランジスタが「充電電圧が基準電圧を超えた場合の電圧比較器の出力により導通する」ものであるのに対し,引用発明は,「セルの端子電圧Vcが印加される均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードZD1を設ける」とともに,トランジスタTR1(駆動用トランジスタ)が「均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードに接続され,該均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードに加えられるセルの端子電圧Vcが所定の均等化電圧よりも大きくなった場合に該均等化電圧・基準電圧発生用定電圧ダイオードによってベース電流を調節されて」導通するものである点。

[相違点2]
電流検出手段に関し,本願補正発明は,第1のトランジスタに流れる電流を「分流させて」電圧に変換し,「過電流」を電圧に変換して検出するものであるのに対し,引用発明は,分流させずに「短絡電流」を電圧に変換して検出している点。

[相違点3]
第2のトランジスタの作動態様に関し,本願補正発明では,「過電流検出手段が過電流を表す電圧を発生した場合」に,バイパス回路の第1のトランジスタを「遮断」させているのに対し,引用発明では,「抵抗R1に流れる電流が抵抗R1とトランジスタTR2のエミッタ・ベース間電圧で決まる電流値より上昇しないように」トランジスタTR2(第2のトランジスタ)が動作して,トランジスタTR4のベース・エミッタ間電圧を調整し,トランジスタTR4に流れる電流を「制限」させている点。

(4)判断
上記相違点について,以下検討する。
・相違点1について
本願補正発明及び引用発明におけるバイパス回路は,電気二重層コンデンサ装置において,各電気二重層コンデンサの充電電圧をバランスさせるための回路であるところ,バイパス回路の内部に電圧源によって設定された基準電圧と,該基準電圧と電気二重層コンデンサの充電電圧とを比較する電圧比較器を設け,充電電圧が基準電圧を超えた場合の電圧比較器の出力により,バイパス回路のトランジスタを導通させることは,例えば,特開2001-268786号公報(段落【0024】,図2等を参照。),特開2000-78765号公報(段落【0004】,図8等を参照。)に記載されているように周知技術であるから,引用発明において,上記周知技術を採用し,相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点2について
引用発明において,抵抗R1にてトランジスタTR4に流れる電流を電圧に変換し,短絡電流を電圧に変換して検出しているのは,電気二重層コンデンサセルの充電電圧(端子電圧)が均等化電圧を超えた際に導通するトランジスタTR4(本願補正発明の「第1のトランジスタ」に相当)に流れる短絡電流が過大に流れるのを防止して放電回路を保護するためである。
一方,本願補正発明において,「過電流」を検出しているのも,バイパス回路が過電流で破損するのを防止するためである。
したがって,引用発明で検出している「短絡電流」は,本願補正発明における「過電流」に相当するといえるから,「過電流」を検出する点は,実質的な相違点ではない。
また,負荷等に直列に接続した抵抗の両端の電圧降下を利用した電流検出回路において,該抵抗に流れる電流を分流させて電圧に変換するものは,例えば,特開昭63-178609号公報(負荷電流検出用の抵抗7,ポテンショメータ8,図1,2等を参照。)及び特開平5-11864号公報(電流検出抵抗11,調整用可変抵抗12,図1等を参照。)に記載されているように周知技術であるから,引用発明において,上記周知技術を採用し,相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が適宜実施し得る設計的事項に過ぎない。

・相違点3について
一般に,回路の電流を制御する制御素子に付加した過電流の保護回路において,過電流が検出された場合に,過電流を遮断することや,電流を制限することは,いずれも周知の制御態様に過ぎず,いずれを選ぶかは,回路の種類や制御の目的等を勘案して適宜選択すべきものであるから,引用発明において,相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が必要に応じて適宜設定し得ることに過ぎない。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明,及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成20年6月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「充電手段によって充電される単一又は複数の電気二重層コンデンサを備える電気二重層コンデンサ装置であって,
前記電気二重層コンデンサに並列に接続されて前記電気二重層コンデンサに流れる電流をバイパスするバイパス回路を構成し,導通した際に前記電流を流す第1のトランジスタと,
前記電気二重層コンデンサの充電電圧が所定電圧を超えた場合,前記第1のトランジスタに駆動電流を供給し,前記第1のトランジスタを導通させる駆動手段と,
前記第1のトランジスタに流れる電流を分流させて電圧に変換し,過電流を電圧に変換して検出する過電流検出手段と,
この過電流検出手段が前記過電流を表す電圧を発生した場合に,前記バイパス回路の前記第1のトランジスタを遮断させる第2のトランジスタと,
を備えたことを特徴とする電気二重層コンデンサ装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,および,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,前記「2.」で検討した本願補正発明から「駆動手段」の限定事項である「電気二重層コンデンサの充電電圧と,電圧源によって設定された基準電圧とが加えられて前記充電電圧と前記基準電圧とを比較する電圧比較器を設けるとともに,前記充電電圧が前記基準電圧を超えた場合の前記電圧比較器の出力により導通する駆動用トランジスタを設け,該駆動用トランジスタの導通によって」との限定を省き,これに代えて「電気二重層コンデンサの充電電圧が所定電圧を超えた場合」との構成としたものである。
そうすると,引用発明の「均等化電圧・基準電圧発生用低電圧ダイオードに加えられるセルの端子電圧Vcが所定の均等化電圧よりも大きくなった場合」が本願発明の「電気二重層コンデンサの充電電圧が所定電圧を超えた場合」に相当するから,本願発明と引用発明との相違点は,上記相違点2,3のみとなり,本願発明の構成要件を含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(4)」に記載したとおり,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-30 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-19 
出願番号 特願2003-323614(P2003-323614)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢島 伸一  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 仁木 浩
小川 恭司
発明の名称 電気二重層コンデンサ装置  
代理人 畝本 正一  

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