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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1218935
審判番号 不服2007-16335  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-11 
確定日 2010-06-21 
事件の表示 特願2002-368664「情報処理装置および方法、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-199496〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年12月19日の出願であって、平成19年1月17日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対して同年3月22日に手続補正がなされたところ、同年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月10日に手続補正がなされたものである。その後、当審において平成21年12月10日付けで前置審尋がなされたところ、請求人からは応答がなく回答書の提出がなされなかったものである。


2.平成19年7月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年7月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成19年7月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を、本件補正前の

「 【請求項1】 3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置において、
実空間に存在する第1の実物体の所定の情報を入力する第1の入力手段と、
前記第1の入力手段により入力された第1の実物体の所定の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築手段と、
前記構築手段により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御手段と、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する第2の入力手段と、
前記第2の入力手段より入力された前記指定情報と、前記設定手段により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定手段と
を備え、
前記構築手段は、前記決定手段により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】?【請求項9】 ・・略・・
【請求項10】 3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置の情報処理方法において、
実空間に存在する第1の実物体の所定の情報を入力する第1の入力ステップと、
前記第1の入力ステップの処理により入力された第1の実物体の所定の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定ステップと、
前記設定ステップの処理により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築ステップと、
前記構築ステップの処理により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御ステップと、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する第2の入力ステップと、
前記第2の入力ステップの処理より入力された前記指定情報と、前記設定ステップの処理により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定ステップと
を含み、
前記構築ステップは、前記決定ステップの処理により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築するステップを含む
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項11】 3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
実空間に存在する第1の実物体の所定の情報の入力を制御する第1の入力制御ステップと、
前記第1の入力制御ステップの制御処理により入力された第1の実物体の所定の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定ステップと、
前記設定ステップの処理により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築ステップと、
前記構築ステップの処理により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御ステップと、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する制御を行う第2の入力制御ステップと、
前記第2の入力制御ステップの制御処理より入力された前記指定情報と、前記設定ステップの処理により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定ステップと
を含み、
前記構築ステップは、前記決定ステップの処理により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築するステップを含む
ことを特徴とするプログラム。」

を、本件補正後の

「 【請求項1】 3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置において、
実空間に存在する第1の実物体の位置および角度の情報を入力する第1の入力手段と、
前記第1の入力手段により入力された第1の実物体の位置および角度の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における前記第1の実物体の位置および角度を基準とした第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築手段と、
前記構築手段により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御手段と、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する第2の入力手段と、
前記第2の入力手段より入力された前記指定情報と、前記設定手段により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定手段と
を備え、
前記構築手段は、前記決定手段により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】?【請求項9】 ・・略・・
【請求項10】 3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置の情報処理方法において、
実空間に存在する第1の実物体の位置および角度の情報を入力する第1の入力ステップと、
前記第1の入力ステップの処理により入力された第1の実物体の位置および角度の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における前記第1の実物体の位置および角度を基準とした第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定ステップと、
前記設定ステップの処理により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築ステップと、
前記構築ステップの処理により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御ステップと、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する第2の入力ステップと、
前記第2の入力ステップの処理より入力された前記指定情報と、前記設定ステップの処理により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定ステップと
を含み、
前記構築ステップは、前記決定ステップの処理により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築するステップを含む
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項11】 3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する処理を、コンピュータに実行させるプログラムであって、
実空間に存在する第1の実物体の位置および角度の情報を制御する第1の入力制御ステップと、
前記第1の入力制御ステップの制御処理により入力された第1の実物体の位置および角度の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における前記第1の実物体の位置および角度を基準とした第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定ステップと、
前記設定ステップの処理により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築ステップと、
前記構築ステップの処理により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御ステップと、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する制御を行う第2の入力制御ステップと、
前記第2の入力制御ステップの制御処理より入力された前記指定情報と、前記設定ステップの処理により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定ステップと
を含み、
前記構築ステップは、前記決定ステップの処理により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築するステップを含む
ことを特徴とするプログラム。」(下線は、補正された部分を示すものとして、手続補正書に表示されていたものを援用したものである。)

と補正するものである。


(2)補正の目的について
本件補正は上記のとおりのものであって、その補正の前後の内容を対比すると、本件補正は請求項1、10、11に係る以下の補正事項を含むものである。
(a)第1の入力手段によって入力され、第1の座標系の設定の際に基づかれる第1の実物体の「所定の情報」が「位置および角度の情報」であることを限定する補正。
(b)第1の座標系が「前記第1の実物体の位置および角度を基準とした」ものであることを限定する補正。
よって、上記補正事項(a)(b)を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。


(3)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3-1)本願補正発明について
本件補正後の請求項1を再掲すると、次のとおりである。

「3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置において、
実空間に存在する第1の実物体の位置および角度の情報を入力する第1の入力手段と、
前記第1の入力手段により入力された第1の実物体の位置および角度の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における前記第1の実物体の位置および角度を基準とした第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築手段と、
前記構築手段により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御手段と、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する第2の入力手段と、
前記第2の入力手段より入力された前記指定情報と、前記設定手段により演算された前記第1の変換関数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定手段と
を備え、
前記構築手段は、前記決定手段により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築する
ことを特徴とする情報処理装置。」

なお、請求項1には「前記第1の変換係数」との表記があるが、これはその内容からみて、「前記第1の変換関数」の誤記であると考えられるから上記のごとく認定した。(下線部参照。)

(3-2)引用例について
原査定の拒絶理由に引用された特開平1-94420号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下(ア)?(ウ)の事項が記載されている。

(ア)「第1?2図に示される本発明の装置は、大きくわけて入力ペンまたはマウスとしての作用を行なう機構部(1)と、機構部(1)からの信号に基づいてパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)(第2図の(4))などのホストコンピュータに座標信号を送るための論理回路部(2)とから構成されており、さらに第1図に示す装置ではパソコンからの信号に基づいて画像を表示するためのCRTデイスプレイ装置(以下CRTという)(3)が設けられている。
前記論理回路部(2)は第1図に示す実施例では3枚のボード(2a)、(2b)、(2c)によって構成されており、ボード(2a)、(2b)、(2c)はCRT(3)を載置しているラック(6)内に収容されている。
前記機構部(1)は、第12?15図に示されている従来の各種装置と同じく3次元入力を行なうためのペンまたはマウスとしての機能を有するものであるが、本発明においては多関節機構が用いられており、第1図に示すばあいは以下に説明するように5軸関節機構を採用している。」(4頁左上欄1?20行)

(イ)「ロータリー・エンコーダ(R1)?(R5)で検出された各関節における変位角はたとえば電気信号の形で読み込まれ、座標変換手段に送られる。前記座標変換手段においては読み込まれた変位角と、既知のアーム(10)、(12)および指示グリップ(16)の長さに基づいて指示グリップの先端位置、すなわち被入力点位置の3次元座標が演算される。
前記3次元座標としては、たとえば機構部をクランプするテーブルの左前端を原点とする3次元直交座標(マウス座標系)(K2)などが採用されるが、さらに操作者が望むように座標の単位や方向を変えたユーザー座標系(K1)に変換してもよい。
多関節座標系(K3)からマウス座標系(K2)やユーザー座標系(K1)への座標変換は、従来公知の種々の方法により行ないうるが、軸数の変更に対応しうるように以下のようにマトリックス計算で行なうのが便利である。」(5頁右上欄7行?左下欄5行)

(ウ)「第1図に示す装置においては、以上の基本構成のほか、前述のごとくパソコンによってえられる画像信号を表示するCRT(3)をテーブル(5)上に配置しており、それにより入力した3次元位置信号に基づいて指示グリップ(16)の先端の形状に似せた三角錐状のカーソルをCRT(3)上に表示し、操作者が入力位置などを見ながら指示グリップ(16)を操作することができるように構成されている。
そのばあいのカーソルは、背景画像に合わせて、透視図のように奥ゆき方向で大きさが変わる立体画像とし、背景画像がステレオ画像のばあいは、さらにステレオ画像のカーソルを用いるのが好ましい。」(7頁左上欄12行?右上欄5行)


(a)上記摘記事項(ア)の記載によれば、引用例に記載されたものは、機構部によって3次元入力された信号が論理回路部で座標信号とされ、パーソナルコンピュータの処理を経てCRTに表示されるものである。そして、上記摘記事項(ウ)に記載されているように、3次元位置信号に基づいて指示グリップに対応させた三角錐状のカーソルを奥ゆき方向で大きさが変わる立体画像としてCRTに表示させていることから、仮想的な3次元空間をCRTに表示していると考えるのが自然である。したがって、このような表示を行うように制御している引用例記載のものは、3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する装置であると考えられる。

(b)上記摘記事項(イ)によれば、機構部を構成するロータリー・エンコーダからの信号により、指示グリップの先端の3次元座標が、テーブルの左前端を原点とする3次元直交座標上の座標として演算され、そして、上記摘記事項(ウ)によれば、当該座標に基づいて、指示グリップに対応させた三角錐状のカーソルをCRT上の3次元仮想空間に表示している。してみると、3次元仮想空間をCRTに表示するために、3次元仮想空間を表現する3次元仮想空間の座標系を設定していると考えるのが自然であり、テーブルの左前端を原点とする3次元直交座標から前記3次元仮想空間の座標系への変換がなされていると考えられる。

(c)上記(b)で検討したように、引用例に記載されたものは3次元仮想空間の座標系への変換がなされ、CRT上に3次元仮想空間を表示しているから、3次元仮想空間を構築する手段を有していると考えるのが自然である。

(d)そして、上述のように、引用例記載のものは構築された3次元仮想空間をCRT上に表示しているから、構築された3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する手段を有していると考えられる。

(e)上記(b)で言及したように、指示グリップの先端はテーブルの左前端を原点とする3次元直交座標上の座標として演算され、当該座標によって3次元仮想空間の座標系での三角錐状のカーソルの座標が求められると考えられるから、指示グリップの先端の座標は三角錐状のカーソルの3次元仮想空間の座標系での座標を指示する情報であるということができ、さらに指示グリップが手で操作され座標が次々に入力されていくという構成を踏まえれば、指示グリップの先端は前記情報を入力する手段であるということができる。そして、このように、指示グリップの先端は3次元仮想空間における三角錐状のカーソルに対応づけられていると考えられる。

(f)上記(e)で述べたように、引用例に記載されたものは、指示グリップの先端により入力された情報に基づいて3次元仮想空間の座標系での三角錐状のカーソルの座標が求められていると考えられるから、3次元仮想空間における三角錐状のカーソルの座標を決定する手段を有していると考えるのが自然である。

(g)CRTに表示される3次元仮想空間には三角錐状のカーソルが表示されるから、上記(c)で言及した「3次元仮想空間を構築する手段」が上記三角錐状のカーソルを決定する手段により決定された座標に配置して3次元仮想空間を構築していると考えられる。

したがって、上記摘記事項の内容を総合すると、引用例には、

「3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する装置において、
実空間にテーブルの左前端を原点とする3次元直交座標が設定されており、テーブルの左前端を原点とする3次元直交座標から3次元仮想空間の座標系への変換がなされ、
3次元仮想空間の座標系を用いて3次元仮想空間を構築する手段と、
前記構築する手段により構築された3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する手段と、
前記3次元仮想空間における三角錐状のカーソルに対応づけられた指示グリップの先端がテーブルの左前端を原点とする3次元直交座標上にあり、前記指示グリップの先端の座標を、前記三角錐状のカーソルの3次元仮想空間の座標系での座標を指示する情報として入力する指示グリップの先端と、
前記指示グリップの先端により入力された前記座標を指示する情報に基づいて、3次元仮想空間における前記三角錐状のカーソルの座標を決定する手段と
を備え、
前記構築する手段は、前記決定する手段により決定された3次元仮想空間の座標系での座標に前記三角錐状のカーソルが配置された3次元仮想空間を構築する
ことを特徴とする装置。」

との発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。


(3-3)対比

本願補正発明を引用発明と対比すると、

引用発明の「3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する装置」は、後述する相違はあるものの、表示制御を行うための情報処理装置ということができるから、本願補正発明の「3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置」に相当する。

引用発明における「テーブル」はその左前端を原点として3次元直交座標が設定されているから、当該テーブルの位置および角度を基準として3次元直交座標は設定されており、また、当該テーブルは当該3次元直交座標に含まれるということができ、本願補正発明における第1の実物体が引用発明のテーブルに相当する。

引用発明の「テーブルの左前端を原点とする3次元直交座標」は、後述する点で相違するものの、実空間における座標系であるという点で、本願補正発明の「第1の座標系」と共通する。

引用発明の「3次元仮想空間の座標系」は、後述する相違はあるものの、本願補正発明の「3次元仮想空間における第2の座標系」に相当する。

引用発明の「3次元仮想空間を構築する手段」は、後述する相違はあるものの、本願補正発明の「構築手段」に相当する。

引用発明の「画像の表示を制御する手段」は、本願補正発明の「表示制御手段」に相当する。

引用発明の「三角錐状のカーソル」「指示グリップの先端」は、互いに対応付けられ、また、前者が3次元仮想空間、後者が実空間上のものであるから、本願補正発明の「所定の仮想物体」「第2の実物体」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「指示グリップの先端」は、その座標を三角錐状のカーソルの3次元仮想空間の座標系での座標を指示する情報として入力しているから、後述する相違はあるものの本願補正発明の「第2の入力手段」にも相当する。
さらに、引用発明の「三角錐状のカーソルの座標」「指示グリップの先端の座標」は、それぞれの座標系における位置を表しているから、それぞれ本願補正発明の「所定の仮想物体の位置」「第2の実物体の位置」に相当する。

引用発明の「座標を指示する情報」は、角度を指定していないものの、座標(本願補正発明における「位置」)を指定している点で、本願補正発明の「指定情報」と共通する。

引用発明の「三角錐状のカーソルの座標を決定する手段」は、後述する相違はあるものの、本願補正発明の「決定手段」に相当する。

そうすると両者は、

[一致点]
「3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置において、
第2の座標系を用いて3次元仮想空間を構築する構築手段と、
前記構築手段により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御手段と、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置を、前記仮想物体の位置を指定する指定情報として入力する第2の入力手段と、
前記第2の入力手段より入力された前記指定情報に基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置を決定する決定手段と
を備え、
前記構築手段は、前記決定手段により決定された前記第2の座標系における前記位置で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築する
ことを特徴とする情報処理装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、実空間に存在する第1の実物体の位置および角度の情報を入力する第1の入力手段を有しているのに対して、引用発明はそのようなものではない点。

[相違点2]
本願補正発明は、前記第1の入力手段により入力された第1の実物体の位置および角度の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における前記第1の実物体の位置および角度を基準とした第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定手段を有するのに対して、引用発明はそのようなものではない点。

[相違点3]
本願補正発明においては、第2の入力手段は第2の実物体の位置および角度を仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力し、決定手段は前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定し、構築手段は決定された前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築しているのに対して、引用発明では、角度を入力したり、決定したり、あるいは角度に基づく配置を行っていない点。

[相違点4]
本願補正発明では、決定手段は、指定情報と、設定手段により演算された第1の変換関数とに基づいて、仮想物体の位置および角度を決定しているのに対して、引用発明はそのようなものではない点。


(3-4)判断
[相違点1について]
本願補正発明は実空間に存在する第1の実物体の位置および角度の情報を入力する第1の入力手段を有するのに対して、引用発明はこれに対応する構成を有していない。しかしながら、引用発明では実空間にテーブルの左前端を原点とする3次元直交座標が設定されており、このように3次元直交座標を設定するためには、座標系の原点や座標軸などを決定するためにテーブルの位置や角度を予め求めておく必要があることは明らかであるから、これらを求めるために第1の入力手段を有するように構成することは当業者が必要に応じて適宜設計できる程度の事項にすぎない。
したがって、相違点1とした本願補正発明の構成は、引用発明から当業者が容易に想到できたものである。

[相違点2について]
上記[相違点1について]で検討したように、引用発明において本願発明の「第1の入力手段」に相当する構成を設けることは適宜設計できた事項にすぎないから、このように構成した場合、入力されたテーブルの位置および角度の情報に基づいて3次元直交座標を設定するような構成とすることも、当業者が適宜なし得る程度の事項にすぎない。さらに、引用発明において「3次元直交座標」と「3次元仮想空間の座標系」は互いに対応する関係にあることから、設定した「3次元直交座標」に基づいて「3次元仮想空間の座標系」を設定することも格別な事項とはいえない。
また、座標系の変換をする際に変換関数を用いて変換することは周知の技術事項にすぎず、このような変換のための関数を求めることも周知の事項にすぎないから(例えば、特開平9-101742号公報参照)、引用発明において「3次元直交座標」を「3次元仮想空間の座標系」に変換する変換関数を演算により求めることも、当業者が設計する上で適宜なし得た事項にすぎない。
よって、相違点2とした設定手段を設けることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。

[相違点3について]
引用発明は、実空間における指示グリップの先端の位置を表す座標が入力され、これに基づき3次元仮想空間における座標が決定され、当該座標により3次元仮想空間に3角錐状のカーソルを配置するものである。したがって、指示グリップの先端の角度が入力されないため、3次元仮想空間における3角錐状のカーソルの向きを指定することはできない。
しかしながら、3次元空間のものの位置と角度に対応させて3次元仮想空間上に表示されるものの位置と角度を決定するようにし、3次元仮想空間上に表示されるものの位置と向きを自在に制御する技術は周知の技術にすぎないから(例えば、特開2001-325615号公報の【0024】【0027】欄、特開2001-291119号公報の【0043】欄等参照)、引用発明においても指示グリップの先端の角度を入力し、これに基づき3次元仮想空間における角度を決定し、当該角度に基づいて3次元仮想空間に3角錐状のカーソルを配置することは当業者が格別な創意工夫を要することなく容易に設計し得る事項にすぎない。
したがって、相違点3とした本願補正発明の構成は、当業者が引用例及び周知の技術に基づいて容易に想到できた事項にすぎない。

[相違点4について]
上記[相違点2について]において検討したように、座標系の変換をする際に変換関数を用いて変換することも、このような変換のための関数を求めることも周知の事項にすぎないから、引用発明において3次元仮想空間における三角錐状のカーソルの座標を決定する際に、3次元直交座標から3次元仮想空間の座標系への変換する関数として演算された変換関数を用いることに格別の困難性はない。
したがって、相違点4とした本願補正発明の構成は、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。

したがって、上記の各相違点に係る検討から、本願補正発明は、引用発明、周知の技術及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。


(4)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書(平成19年7月10日提出の手続補正書参照。)において、以下のとおり主張している。

「(C)特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの認定について
(a)引用文献の説明
・・・略・・・

(b)本願発明と引用文献との対比
・・・略・・・
しかしながら、「実空間に対応する3次元仮想空間における「第2の座標系」を有している」点が、単体として独立して、(補正前)請求項1に係る本願発明の特別な技術的特徴となっているわけではない。
即ち、かかる点に加えてさらに、「前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する」点や、「前記第2の入力手段より入力された前記指定情報と、前記設定手段により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する」点等を有機的に結合した点が、(補正前)請求項1に係る本願発明の特別な技術的特徴のうちのひとつ(以下、第1の技術的特徴と称する)となっているのである。即ち、第1の技術的特徴とは、平成19年3月22日付けの意見書内の次の記載を換言したものともいえる。
即ち、第1の技術的特徴とは、
『そして、「3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合」、「第2の座標系」を用いて構築された「3次元仮想空間」の適切な位置および角度で「前記仮想物体」を配置させることができるように、「前記第1の入力手段により入力された第1の実物体の所定の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定手段」と、「前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する第2の入力手段」と、「前記第2の入力手段より入力された前記指定情報と、前記設定手段により演算された前記第1の変換係数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定手段」とを備えることを特徴のひとつとしています。』
という点にある。
このような第1の技術的特徴を(補正前)請求項1に係る本願発明は有しているにもかかわらず、その第1の技術的特徴の一部にしか過ぎない「実空間に対応する3次元仮想空間における「第2の座標系」を有している」点を抜き出し、かかる点が引用文献2や3等から判断して「一般的に用いられる技術である」という内容だけをもって、(補正前)請求項1に係る本願発明の進歩性を否定する論理付けはできないと思料する。
なお、このような第1の技術的特徴は、補正後の請求項1に係る本願発明もそのままそっくり有している。

さらに、(補正前)請求項1に係る本願発明の特別な技術的特徴は、上述した第1の技術的特徴のみならず、その他にも存在し、そのうちのひとつとして次の点が存在することを、平成19年3月22日付けの意見書にて本審判請求人は主張していた。
即ち、『これに対して、請求項1に係る本願発明においては、「第1の座標系」は、固着された唯一の物体(テーブル等)に基づいて必ずしも設定される訳ではないです。即ち、予め入力された情報に基づいて「第1の座標系」が必ずしも設定されている訳ではないです。換言すると、様々な物体(例えば本願の出願当初の願書に添付した図面のうちの、図8のシート14-1、図11の本14-2、図12の台座71の上に模型72等が配置されている実物体14-3、図13の模型14)が「第1の実物体」となり得、それらの様々な実物体が「第1の実物体」として実空間内の様々な場所に設置された場合でも、それぞれの場合に応じて適切な「第1の座標系」の設定を行うべく、請求項1に係る本願発明では、「実空間に存在する第1の実物体の所定の情報を入力する第1の入力手段」を備えることを特徴のひとつとしています。』
といった技術的特徴も存在することを、平成19年3月22日付けの意見書にて本審判請求人は主張していた。

かかる特別な技術的特徴の意義をさらに明確にすべく、本審判請求人は、本審判請求理由補充書と同時に提出した手続補正書によって、上述の如く請求項1を補正した。即ち、補正後の請求項1に係る本願発明は、「実空間に存在する第1の実物体の位置および角度の情報を入力する第1の入力手段」と、「前記第1の入力手段により入力された第1の実物体の位置および角度の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における前記第1の実物体の位置および角度を基準とした第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定手段」とを備えていることを特別な技術的特徴(以下、第2の技術的特徴と称する)のひとつとして有している。

これにより、「第1の入力手段」は、例えば、第1の座標系でも第2の座標系でもない別座標系によって、「第1の実物体」の位置、大きさ、形状等を特定できる情報を、「第1の実物体の位置および角度の情報」として入力できる。この場合、「設定手段」は、このような情報に基づいて、「前記第1の実物体を含む実空間における前記第1の実物体の位置および角度を基準とした第1の座標系」を設定できる。
このことは、「第1の実物体」の位置、大きさ、形状等に適した座標系、即ち、ユーザが第2の物体を実空間上に配置する際の指標として適した座標系を第1の座標系として設定できることを意味する。換言すると、「第1の実物体」の位置、大きさ、形状等に応じて、第1の座標系は直交座標系のみならず、その他様々な座標系を事後的に設定できることを意味する。
・・・略・・・
このように、請求項1に係る本願発明は、第2の技術的特徴を有しているので、第1の座標系として自由な座標系の設定ができる、という効果を奏することが可能になる。

また、例えば、請求項1に係る本願発明は、第2の技術的特徴を有しているので、次のような効果を奏することができる。
即ち、「第2の入力手段」が「指定情報」として入力する「第2の実物体の位置および角度」を特定するための座標系と同一座標系を用いて、「第1の実物体の位置および角度の情報」を表すこともできる。この場合には、「第1の入力手段」と「第2の入力手段」とをひとつの入力手段(例えば3次元位置角度センサ等)で構成させ、かつ、ユーザは、そのひとつの入力手段自体を「第2の物体」として用いることができるようになる、といった効果を奏することが可能になる。
この場合、「第2の実物体」自体が、第1の座標系でも第2の座標系でもない別座標系を有していると把握することができる。よって、ユーザは、「第1の入力手段」として機能している「第2の実物体」(例えば3次元位置角度センサ等)を「第1の実物体」上に配置させたりするだけで、自身が定義したい任意の「第1の座標系」の設定作業が容易にできるようになる。即ち、第1の座標系として自由な座標系の設定がより一段と簡便な操作でできるようになる、という効果も奏することが可能になる。
・・・略・・・

これに対して、引用文献1には、ただ単に、固着された「テーブル」を使用することが前提とされて「テーブルの左前端を原点とする3次元直交座標」(第1の座標系として使用可能な座標系のひとつに過ぎない直交座標)が予め設定されており、機構部に設けられた指示グリップの先端位置が、この予め設定された「3次元直交座標」に座標変換された後にパソコン4に入力されること、そして、そのような入力を行うことで、指示グリップの先端の形状に似せた三角錐状のカーソルを背景画像に合わせて透視図のように奥ゆき方向で大きさが変わる立体画像をCRT3に表示させる、といった用途が実現可能となること、即ち、かかる用途の実現可能性が示唆されているに過ぎない。
即ち、引用文献1は勿論のこと引用文献2や3にも、第2の技術的特徴については開示は勿論示唆もされていない(それゆえ、第2の技術的特徴は、先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴であるといる)。よって、たとえ引用文献1乃至3の発明を組み合わせたとしても、上述した効果を奏することは不可能である。
・・・略・・・

このように、請求項1乃至11に記載の本願発明は何れも、引用文献1乃至3には開示されていない構成と、たとえ引用文献1乃至3を組み合わせたとしても実現できない作用/効果を有するものであり、その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとは到底認めることはできないものである。」

しかしながら、当審の判断は前記(3-4)で判断したとおりであり、上記審判請求人の主張はこれを採用することができない。


(5)まとめ
以上のとおり、本件補正は、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)平成19年7月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年3月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する情報処理装置において、
実空間に存在する第1の実物体の所定の情報を入力する第1の入力手段と、
前記第1の入力手段により入力された第1の実物体の所定の情報に基づいて、前記第1の実物体を含む実空間における第1の座標系を設定するとともに、設定した前記第1の座標系に基づいて、前記実空間に対応する前記3次元仮想空間における第2の座標系を設定し、前記第1の座標系から前記第2の座標系に変換する第1の変換関数を演算する設定手段と、
前記設定手段により設定された前記第2の座標系を用いて前記3次元仮想空間を構築する構築手段と、
前記構築手段により構築された前記3次元仮想空間に対応する画像の表示を制御する表示制御手段と、
前記3次元仮想空間における所定の仮想物体に対応づけられた第2の実物体が前記第1の座標系を指標として配置された場合、前記第2の実物体の位置および角度を、前記仮想物体の位置および角度を指定する指定情報として入力する第2の入力手段と、
前記第2の入力手段より入力された前記指定情報と、前記設定手段により演算された前記第1の変換関数とに基づいて、前記仮想物体の前記第2の座標系における前記位置および前記角度を決定する決定手段と
を備え、
前記構築手段は、前記決定手段により決定された前記第2の座標系における前記位置および前記角度で配置された前記仮想物体を含む前記3次元仮想空間を構築する
ことを特徴とする情報処理装置。」

なお、請求項1には「前記第1の変換係数」との表記があるが、これはその内容からみて、「前記第1の変換関数」の誤記であると考えられるから上記のごとく認定した。(下線部参照。)

(2)引用例について
原査定の拒絶理由で引用された引用例に記載された事項は、上記「2.(3-2)」に記載したとおりである。

(3)対比、判断
本願発明は、上記「2.(3)」で検討した本願補正発明から、(a)第1の入力手段によって入力され、第1の座標系の設定の際に基づかれる第1の実物体の「所定の情報」を「位置および角度の情報」とする限定を省き、また、(b)第1の座標系が「前記第1の実物体の位置および角度を基準とした」ものであるとする限定を省いたものである。
そこで、本願発明を引用発明と対比すると、上記「2.(3-3)」において[相違点1]?[相違点4]とした点において両者は相違する。しかしながら、これらの相違点は「2.(3-4)」に記載したとおり、引用発明、周知の技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、本願補正発明と同様の理由により、引用発明、周知の技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、周知の技術及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願発明は、引用発明、周知の技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


4.むすび
上記「3.」で述べたとおり、本願請求項1に係る発明は、引用発明、周知の技術及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-26 
結審通知日 2010-04-27 
審決日 2010-05-10 
出願番号 特願2002-368664(P2002-368664)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 山本 章裕
小林 義晴
発明の名称 情報処理装置および方法、並びにプログラム  
代理人 稲本 義雄  

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