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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1218955
審判番号 不服2008-20717  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-12 
確定日 2010-06-22 
事件の表示 特願2002-532773「ガスフロー処理の手順およびデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月11日国際公開、WO02/29218、平成16年 4月 8日国内公表、特表2004-510908〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本件出願は、2001年10月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年10月4日、スウェーデン国)を国際出願日とする出願であって、平成15年3月20日付けで明細書の翻訳文が提出され、平成19年7月9日付けの拒絶理由の通知に対して、平成20年2月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日けの手続補正書によって明細書を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成21年9月8日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年11月9日付けで回答書が提出されたものである。


【2】平成20年8月12日付けの明細書を補正する手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成20年8月12日付けの手続補正を却下する。


[理 由]
1.本件補正の内容
平成20年8月12日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成20年2月12日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の下記の(b)に示す請求項1ないし20を、下記の(a)に示す請求項1ないし20と補正する内容を含むものである。

(a)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 ガスフローの処理方法であって:
該ガスフロー中の粒子を濾過するのに適合されたガス処理ユニット(18)を通して該ガスフローを誘導する工程、および
該ガス処理ユニット(18)中で該粒子を除去する工程、
を包含し、該方法は、以下:
該ガスフローが該ガス処理ユニット(18)を通過する際に、該ガス処理ユニット(18)の一部を形成する多くのダクト(21)中に、該ガスフロー中の粒子を蓄積することにより、該粒子を濾過する工程、
該ダクト(21)に沿った該ガスフローの温度を、該ガスフローの組成を制御することによって該粒子が燃焼する値で制御する工程、および
該ダクト(21)中で燃焼させることにより、該ガス処理ユニット(18)中の該濾過された粒子を除去する工程、
を包含する点で特徴付けられ、
ここで、該粒子の該濾過および該燃焼は、該ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである、方法。
【請求項2】 請求項1に記載の方法であって、以下:
前記ガスフローの前記温度制御が、前記ダクト(21)間での熱交換により達成され、
ここで、該ダクト(21)は、前記ガス処理ユニット(18)のそれぞれ入口および出口に接続されており、その結果、該ガスフローは、該ガスフローの流入および流出の間の熱交換の際に達成される点で特徴付けられる、方法。
【請求項3】 請求項1または2に記載の方法であって、ここで、前記ガスフローが、燃焼エンジン(1)からの排気ガスのフローにより構成され、該ガスフローの前記温度制御が以下の手段の少なくとも1つにより達成される点で特徴付けられる、方法:
i)上昇したガス温度が獲得されるよう、該エンジン(1)の投入時間および点火系統を制御する手段、
ii)該エンジン(1)の制御手段であって、該エンジンの排気ストロークの際にさらなる燃料の投入がなされる、手段、
iii)リッチオペレーションおよびリーンオペレーションの間で定期的に該エンジン(1)を制御する手段、
iv)該エンジン(1)のリッチオペレーションの際に外部供給源から該排気ガス処理ユニット(18)に空気を投入する手段、
v)シリンダーを別々に制御する手段であって、ここで、該エンジン(1)の1つまたはいくつかの該シリンダーからの該排気ガスがリッチ様式で操作され、残りのシリンダーがリーン様式または化学量論的様式において操作される、手段、
vi)該排気ガス処理ユニット(18)に提供されるヒーター要素(31)を通して熱を提供する手段、
vii)該エンジン(1)の後の排気ガス中に燃料を投入する手段、および
viii)該排気ガス処理ユニット(18)中の未燃焼炭化水素を酸化する手段。
【請求項4】 請求項1?3のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が、前記排気ガス処理ユニット(18)における表面濾過により行なわれる点で特徴付けられる、方法。
【請求項5】 請求項1?3のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が、前記排気ガス処理ユニット(18)におけるディープ濾過により行なわれる点で特徴付けられる、方法。
【請求項6】 請求項1?3のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が電気フィルターにより行なわれ、ここで、前記粒子の蓄積は、前記排気ガス処理ユニット(18)中の接地要素上で起こる点で特徴付けられる、方法。
【請求項7】 請求項1?6のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が、前記ガスの混合のための該ガスの乱流の際に行なわれる点で特徴付けられる、方法。
【請求項8】 請求項1?7のいずれかに記載の方法であって、該方法が、前記ダクト(21)における触媒性コーティングにより、前記ガスフローにおける望ましくない放出物を減少させる工程を包含する点で特徴付けられる、方法。
【請求項9】 請求項8に記載の方法であって、該方法が、前記触媒性コーティングにより、前記ガスフロー中のNOx化合物を減少させる工程を包含する点で特徴付けられる、方法。
【請求項10】 請求項1?9のいずれかに記載の方法であって、該方法が、前記排気ガス処理ユニット(18)と連絡して提供される少なくとも1つの温度センサにより、該排気ガス処理ユニット(18)の温度を決定する工程を包含する、方法。
【請求項11】 請求項1?9のいずれかに記載の方法であって、該方法が、
前もって規定され、そして前記排気ガス処理ユニット(18)の温度と前記エンジン(1)の一般の操作状態との間の関係を規定する計算モデルにより、該排気ガス処理ユニット(18)の温度に関する測定を決定する工程を包含し、ここで、該測定は、該温度の制御の際に用いられる点で特徴付けられる、方法。
【請求項12】 ガスフローを処理するためのデバイスであって、該ガスフロー中の粒子を濾過し、該粒子を除去するのに適合されたガス処理ユニット(18)を備え、該ガス処理ユニット(18)が、多くのダクト(21)であって、該ガスフローが該ガス処理ユニット(18)を通過する際に、該ダクト(21)中の該粒子の蓄積により濾過するためのダクトを備える点、および該ガス処理ユニット(18)が該ガスフローの組成を制御することによって該ダクト(21)に沿った該粒子の燃焼を提供する値で該ガスフローの温度を制御するよう適合されている点で特徴付けられ、
ここで、該粒子の該濾過および該燃焼は、該ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである、デバイス。
【請求項13】 請求項12に記載のデバイスであって、前記ダクト(21)が、前記ガス処理ユニット(18)のそれぞれ入口および出口に接続されており、その結果、前記ガスフローは、該ガスフローの流入および流出の間の熱交換の際に達成される点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項14】 請求項12または13のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、粒子の表面濾過に適合されている点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項15】 請求項12または13のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、粒子のディープ濾過のための構造を備える点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項16】 請求項12または13のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、前記粒子のイオン化のための電気的フィルター、および該粒子を除去するための該排気ガス処理ユニット(18)中の接地要素を備える点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項17】 請求項12?16のいずれかに記載のデバイスであって、前記ガス処理ユニット(18)が前記ガスを混合するための乱流を生成するために適合されている点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項18】 請求項12?17のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、前記ガスフロー中の望ましくない放出物を減少させるために前記ダクト(21)中に触媒性コーティングを含む点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項19】 請求項12?18のいずれかに記載のデバイスであって、該デバイスが、前記排気ガス処理ユニット(18)の温度を決定するための、該排気ガス処理ユニット(18)に連絡して提供される少なくとも1つの温度センサを備える点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項20】 請求項12?19のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、パッケージ(19b)中に折り畳まれるストリップ(19a)を備え、それによって、前記ダクト(21)が形成される点で特徴付けられる、デバイス。」(下線部は補正箇所を示す。)

(b)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 ガスフローの処理方法であって:
該ガスフロー中の粒子を濾過するのに適合されたガス処理ユニット(18)を通して該ガスフローを誘導する工程、および
該ガス処理ユニット(18)中で該粒子を除去する工程、
を包含し、該方法は、以下:
該ガスフローが該ガス処理ユニット(18)を通過する際に、該ガス処理ユニット(18)の一部を形成する多くのダクト(21)中に、該ガスフロー中の粒子を蓄積することにより、該粒子を濾過する工程、
該ダクト(21)に沿った該ガスフローの温度を、該ガスフローの組成を制御することによって該粒子が燃焼する値で制御する工程、および
該ダクト(21)中で燃焼させることにより、該ガス処理ユニット(18)中の該濾過された粒子を除去する工程、
を包含する点で特徴付けられる、方法。
【請求項2】 請求項1に記載の方法であって、以下:
前記ガスフローの前記温度制御が、前記ダクト(21)間での熱交換により達成され、
ここで、該ダクト(21)は、前記ガス処理ユニット(18)のそれぞれ入口および出口に接続されており、その結果、該ガスフローは、該ガスフローの流入および流出の間の熱交換の際に達成される点で特徴付けられる、方法。
【請求項3】 請求項1または2に記載の方法であって、ここで、前記ガスフローが、燃焼エンジン(1)からの排気ガスのフローにより構成され、該ガスフローの前記温度制御が以下の手段の少なくとも1つにより達成される点で特徴付けられる、方法:
i)上昇したガス温度が獲得されるよう、該エンジン(1)の投入時間および点火系統を制御する手段、
ii)該エンジン(1)の制御手段であって、該エンジンの排気ストロークの際にさらなる燃料の投入がなされる、手段、
iii)リッチオペレーションおよびリーンオペレーションの間で定期的に該エンジン(1)を制御する手段、
iv)該エンジン(1)のリッチオペレーションの際に外部供給源から該排気ガス処理ユニット(18)に空気を投入する手段、
v)シリンダーを別々に制御する手段であって、ここで、該エンジン(1)の1つまたはいくつかの該シリンダーからの該排気ガスがリッチ様式で操作され、残りのシリンダーがリーン様式または化学量論的様式において操作される、手段、
vi)該排気ガス処理ユニット(18)に提供されるヒーター要素(31)を通して熱を提供する手段、
vii)該エンジン(1)の後の排気ガス中に燃料を投入する手段、および
viii)該排気ガス処理ユニット(18)中の未燃焼炭化水素を酸化する手段。
【請求項4】 請求項1?3のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が、前記排気ガス処理ユニット(18)における表面濾過により行なわれる点で特徴付けられる、方法。
【請求項5】 請求項1?3のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が、前記排気ガス処理ユニット(18)におけるディープ濾過により行なわれる点で特徴付けられる、方法。
【請求項6】 請求項1?3のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が電気フィルターにより行なわれ、ここで、前記粒子の蓄積は、前記排気ガス処理ユニット(18)中の接地要素上で起こる点で特徴付けられる、方法。
【請求項7】 請求項1?6のいずれかに記載の方法であって、前記濾過が、前記ガスの混合のための該ガスの乱流の際に行なわれる点で特徴付けられる、方法。
【請求項8】 請求項1?7のいずれかに記載の方法であって、該方法が、前記ダクト(21)における触媒性コーティングにより、前記ガスフローにおける望ましくない放出物を減少させる工程を包含する点で特徴付けられる、方法。
【請求項9】 請求項8に記載の方法であって、該方法が、前記触媒性コーティングにより、前記ガスフロー中のNOx化合物を減少させる工程を包含する点で特徴付けられる、方法。
【請求項10】 請求項1?9のいずれかに記載の方法であって、該方法が、前記排気ガス処理ユニット(18)と連絡して提供される少なくとも1つの温度センサにより、該排気ガス処理ユニット(18)の温度を決定する工程を包含する、方法。
【請求項11】 請求項1?9のいずれかに記載の方法であって、該方法が、
前もって規定され、そして前記排気ガス処理ユニット(18)の温度と前記エンジン(1)の一般の操作状態との間の関係を規定する計算モデルにより、該排気ガス処理ユニット(18)の温度に関する測定を決定する工程を包含し、ここで、該測定は、該温度の制御の際に用いられる点で特徴付けられる、方法。
【請求項12】 ガスフローを処理するためのデバイスであって、該ガスフロー中の粒子を濾過し、該粒子を除去するのに適合されたガス処理ユニット(18)を備え、該ガス処理ユニット(18)が、多くのダクト(21)であって、該ガスフローが該ガス処理ユニット(18)を通過する際に、該ダクト(21)中の該粒子の蓄積により濾過するためのダクトを備える点、および該ガス処理ユニット(18)が該ガスフローの組成を制御することによって該ダクト(21)に沿った該粒子の燃焼を提供する値で該ガスフローの温度を制御するよう適合されている点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項13】 請求項12に記載のデバイスであって、前記ダクト(21)が、前記ガス処理ユニット(18)のそれぞれ入口および出口に接続されており、その結果、前記ガスフローは、該ガスフローの流入および流出の間の熱交換の際に達成される点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項14】 請求項12または13のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、粒子の表面濾過に適合されている点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項15】 請求項12または13のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、粒子のディープ濾過のための構造を備える点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項16】 請求項12または13のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、前記粒子のイオン化のための電気的フィルター、および該粒子を除去するための該排気ガス処理ユニット(18)中の接地要素を備える点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項17】 請求項12?16のいずれかに記載のデバイスであって、前記ガス処理ユニット(18)が前記ガスを混合するための乱流を生成するために適合されている点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項18】 請求項12?17のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、前記ガスフロー中の望ましくない放出物を減少させるために前記ダクト(21)中に触媒性コーティングを含む点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項19】 請求項12?18のいずれかに記載のデバイスであって、該デバイスが、前記排気ガス処理ユニット(18)の温度を決定するための、該排気ガス処理ユニット(18)に連絡して提供される少なくとも1つの温度センサを備える点で特徴付けられる、デバイス。
【請求項20】 請求項12?19のいずれかに記載のデバイスであって、前記排気ガス処理ユニット(18)が、パッケージ(19b)中に折り畳まれるストリップ(19a)を備え、それによって、前記ダクト(21)が形成される点で特徴付けられる、デバイス。」


2.新規事項の追加について
本件補正によって本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び12に付加された「該粒子の該濾過および該燃焼は、該ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである」なる点について検討する。
平成15年3月20日付けの明細書の翻訳文及び国際出願日における図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「さらに、以下の詳細な記載に従って、上昇した温度(通常約400?500℃)が、エンジン1の作動中にストリップパッケージ19bにおいて生じ得る。これは、排気ガスの組成の特別の制御(これは、次いで、例えば、炭化水素化合物を排気フローに注入することによってか、またはエンジン1の特別の制御によって起き得る)か、あるいは特別のヒーター要素によってかもしくはストリップパッケージ19bの熱交換機能によってか(またはこれらの手段の組み合わせによって)のいずれかによって起き得る。全体として、これは、波型20に蓄積された粒子が、温度が十分に高い場合に、連続的にかまたは断続的にかのいずれかで燃焼されることをもたらす。燃焼の間、粒子は、この方法で除去されるが、二酸化炭素が形成される。」(段落【0022】)等が記載されているが、これらから、「粒子の燃焼は、ガス処理ユニットの中で起こすことができるものである」とはいえるが、粒子の燃焼中(再生中)のガス処理ユニットの中で排気ガスからの粒子の濾過がかならず起こるとまではいえず、このため、「粒子の濾過および燃焼は、ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである」ということまで、当初明細書等に記載されていたとは認められず、かつ、当初明細書等の記載から自明であったとも認められない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。


3.独立特許要件について

3-1.特許請求の範囲の減縮
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び12の記載は、上記2.に指摘したような当初明細書等に記載された範囲にない事項を包含するものであるが、仮に、当初明細書等に記載された範囲内の事項を包含するものであるとすると、
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び12については、
「ここで、該粒子の該濾過および該燃焼は、該ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである」
と追加補正し、
粒子の濾過および燃焼についてより限定するものであるから、特許請求の範囲の請求項1及び12に関する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される発明(以下、単に「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭62-168915号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「1)(a)ハウジング、(b)流体取込マニホールド、(c)流体取出マニホールド、および(d)金属部材から成る装置であつて、この金属部材は波型表面を特徴とするアコーデイオン状に折りたたんだ薄くて細長いひろがりの金属ストリツプから成り、それらの波形は金属ストリツプの平面から変位しそのストリツプの長さ方向の平行縁端の間で横方向にひろがる、交互の山および谷で構成されており、上記の金属ストリツプはそれを貫通して流体媒体を通過させるためにアコーデイオン状折り目線に沿つて縁端に直角方向の抜き孔をもち、それらの波形と折り目線が上記ハウジング内でその中を通過する流動媒体の流れの方向に対して直角方向である、流体処理装置。
2)(a)ハウジング;(b)流体取込マニホールド;(c)流体取出マニホールド;(d)金属質の触媒担持部材であり、この部材が波型表面を特徴とするアコーデイオン状に折りたたんだ薄くて細長いひろがりの金属ストリツプから成り、それらの波形は金属ストリツプの平面から変位しそのストリツプの長さ方向の縁端の間で横方向にのびている交互の山と谷とで構成され、上記金属ストリツプはそのストリツプを貫通して流体媒体を通すためにアコーデイオン状折り目線に沿つた抜き孔をもち、そして、波形と折り目線がハウジング内でそのハウジングを通る流動媒体の流れの方向に対して直角方向である、金属質の触媒担持部材;(e)上記の波形金属ストリツプの少くとも一つの表面上に担持された触媒;および、(f)上記流動媒体の少くとも一部と上記触媒の影響下で反応性である薬剤を変換器中へ選択的に注入するための手段;から成る触媒変換器。
・・・(中略)・・・
7)流体が内燃機関からの排気ガスである、特許請求の範囲第1項に記載の流体処理装置。
8)内燃機関がスパーク着火される、特許請求の範囲第7項に記載の流体処理装置。
9)内燃機関が圧縮着火される、特許請求の範囲第7項に記載の流体処理装置。
10)上記流体媒体の少くとも一部と反応性である薬剤が通常は液状炭化水素燃料である、特許請求の範囲第1項に記載の流体処理装置。
11)炭化水素燃料がデイーゼル燃料である、特許請求の範囲第10項に記載の流体処理装置。
12)上記の流体媒体の少くとも一部と反応性である薬剤を系内へ導入する、特許請求の範囲第1項に記載の流体処理装置。」(特許請求の範囲第1ないし12項)

(イ)「本発明はガスまたは液体の物理的および/または化学的処理装置に関するものであり、さらに特定的には、ガスまたは液体のいずれかの流動流体中で薄い波形金属薄片(foil)上で担持させた担持静止触媒の存在下で化学的変換を実施するための構造体に関するものである。
さらに特定的な具体化においては、本発明は内燃機関排気ガス、特に随伴する炭素質粒子または滴、例えば、炭素粒子または未燃焼炭化水素、並びに一酸化炭素、窒素酸化物、などのようなその他の汚染物質が存在することを特徴とする排気ガス、のための接触的変換器またはトラツプ構造体に関するものである。」(第2ページ右上欄第19行ないし同ページ左下欄第11行)

(ウ)「上記のとおり、本発明は内燃機関、特に圧縮着火型の内燃機関と一緒に使用するための接触的変換器に主として関係する。本発明の主目的は比較的安価な接触的変換器およびエンジン排気から粒状物を除去するのに有効である変換器を提供することである。デイーゼルエンジンの場合に、特にかつある種の負荷条件の下では、その排気中に不完全燃焼を示す重質的量の未燃炭素が生成される。これは排気管から流出するいやな黒煙として現われる。本発明は、内燃機関排ガスから流出する粒状物質、特に微細状に分割された炭素粒子の量を受容可能水準へ減らすよう特に適合させた構造体を提供する。」(第4ページ右下欄第17行ないし第5ページ左上欄第9行)

(エ)「第1図は透視図で、前記諸目的を達成するための、そして並行に配置されかつ排気管例えばテールパイプ12,12aの中に挿入された一対の接触的変換器から成る系10を示している。テールパイプ12は”Y″型継手14に入り、それは排気ガスを接触的変換器18および20のどちらかへ選択的に向けるための蝶番弁16を含む。接触的変換器18および20は一酸化炭素、窒素酸化物、未燃炭化水素などのような有害ガスを環境的に許容できるガス状物質に転化するのを触媒するだけでなく、炭素質粒状物を捕捉しそれらがテールパイプ12aから逃げるのを物理的に制扼する。これらの変換器は交替で使用される。従つて、変換器の一つ、例えば変換器18が炭素で以て詰まるようになると(変換器中の圧力降下が予定水準をこえることによつて証明されるとき)、蝶番弁16が自動的に位置を変えてテールパイプ部分12を通つて入つてくる排気を再生された接触的変換器20に入らせ、一方では、再生器18の蓄積炭素沈着物の焼却と再生を行なわせる条件がつくり出される。蝶番弁16を自動的に看視し調節するための適切な系の詳細はW.B.リタリツクによる、かつ本発明と一緒の共通所有者の米国特許願第648,381(1984年9月7日登録)において与えられている。
第6図は前述の米国特許願第648,381号の第4図に相当し、そこで使用した同じ番号付けに従つている。
再生操作は燃料例えばデイーゼル燃料を接触的変換器、例えば、変換器18の中へ十分な空気と一緒に注入し、燃焼をおこさせ捕捉された炭素粒を物理的に燃焼させてそれによつて燃料および炭素を二酸化炭素および水へ転化させることによつて、実施される。これらの流出ガスは向い合う変換器20からの接触的に転化されたガスと一緒に”Y″型継手22を通して組合わされ、テールパイプ部12aを通つて外に出る。」(第5ページ左上欄第16行ないし同ページ左下欄第12行)

(オ)「第2図をさらに具体的に参照すると、ここには、両端において適当な端末キヤツプ26および28をそれぞれとりつけた長方形の管状ハウジング24をもつ接触的変換器18が断片状断面で示されている。端末キヤツプ26および28は、それらのそれぞれの大きい方のあるいは広口の先端30と32において矩形または正方形の断面の管状ハウジングを受け入れるように、幾何的に形状が合わされている。・・・(中略)・・・
また第2図においては燃料取入口48が示され、それを通して易揮発性燃料例えばデイーゼル燃料を運転の再生相の間で導入してよい。また、本発明に従つて有用である金属質の触媒担持部材46の内部で、燃料と捕捉された炭素との燃焼を促進するのに十分な量で、空気を系中に導入する取入口50が提供されている。グロープラグ(図示せず)を端末キヤツプ26の中で使用して燃料着火を助けてよい。」(第5ページ左下欄第13行ないし同ページ右下欄第18行)

(カ)「第3図を参照すると、波形48が示されている。各々の波形は谷48と山50および52のような山とで構成されている。それらの山と谷は平行な縁端54および56の間でジグザグ形態にある。
上記のとおり、装置全体は扇子状に折りたたまれており、すなわち、連続の一つのストリツプが均一な間隙を置いて自らの上で前後に折りたたまれている。その間隙はその金属ストリツプを貫通してひろがる横方向の抜き孔の一連のものによつて決定され、向い合う層の間のガスの進入および流出の手段を与える。例えば、層60と62は向い相う関係にあり、ガスは層60と62の間に抜き孔58を通つて入ることができる。同様に、ガスは向い合う層62と64の間に開口66を通過することによつて入ることができる。抜き孔58の類似の取合せが折り目68に沿つて提供されて層62と64の間からのガスの通過を許す。ガスの流れの模様は第3図においてよく示されている。矢印70によつて示される通路に沿つて動くガスは触媒部材46に向い合う層62と64の間で入る。矢印70に沿つて入つたガスは矢印74によつて示される抜き孔58を通つて部材46を出る。矢印72によつて示される通路に沿つて動くガスは抜き孔58を通つて接触部材46に入り、部材46を通つて向い合う表面60と62の間を移動し、矢印76によつて示される通路に沿つて出る。
第4図に最もよく示されているジグザグ状にロールをかけた形態は、ガスが折たたみの間、例えば向い合う面60と62、および向い合う面62と64の間を通過するときにその速度と方向の十分な変化をおこさせ、ガス流中で運ばれる粒状物が粗面化された触媒表面へ付着し排気ガス流から抜出されるようになるものと信じられる。ガスは、鋭く直角に方向を変へ炭素を金属の隣接層または相対層の間の「割れ目」の中で沈着することによつて間隙を横断するものではない。」(第6ページ右上欄第7行ないし同ページ右下欄第2行)

(キ)「第6図によると、一度に一方の変換器だけが再生される。再生温度は約600°Cである。接触変換器110および111は第1-5図に示すのと実質上同じ構造のものである。排気ガス流の方向は矢印113および114によつて示されている。排気導管140は変換器110および111中へガスを導く導管141および142へ連結される蝶番弁112へ連がれる。
蝶番弁112は三つの位置:ガスを両方の変換器中へ自由に流れさせる図示の中立位置、および、ガスの大部分を変換器110および111の一方だけへ流れることを強制する二つの位置、をもつ。点線150は後者の位置の一つを表わし、その位置においては、変換器110への流れの大部分が遮断される。蝶番弁112はこのように流れを接触変換器110および111の一方または他方へそらせる転換手段から成る。
変換器110あるいは111のいずれかへの排気ガスの流れは完全に遮断されるべきではない。デイーゼル機関排気は再生工程の間に燃料を支持するのに有用であるかなりの量の酸素を含む。もちろん、補充の酸素および/または燃料を必要なときに添加してもよい。
圧力監視器115は装置の導入管および導出管の端へ連結される。圧力降下は排気導管140および導出管151において測定され、すなわち、圧力降下は系全体に差渡しで測定される。
マイクロプロセツサ-102は圧力降下並びにエンジン速度を表わす入力をアナログ/デジタル変換器101から受けとる。マイクロプロセツサ-102はエンジン速度による圧力降下の変化を表わすデーターを貯える。
マイクロプロセツサ-102は温度センサー132および133へ連結され、それらは燃料弁136および137をそれぞれ制御する。マイクロプロセツサ-102はまた蝶番弁112を操作するタイマーおよび弁起動手段103へまた連結される。
マイクロプロセツサ-102が許容できない大きい圧力降下を感知すると、弁起動手段103に蝶番弁112をその二つの非中立位置の一つへ向けさせ、次いでもう一つのその種の位置へ向けさせる。例えば、弁起動手段103はまず変換器110を通る流れが実質上遮断されるよう、弁112を働かせる。弁112をこの位置で数秒間起動手段103によつて保ち、一方、マイクロプロセツサ-102は感知した圧力降下を内部的に記録および貯蔵する。この圧力降下は変換器111が捕捉粒状物で以て充満される程度の指標を与える。
弁起動手段103は、弁112に変換器111への排気ガス流の大部分を遮断させ、その圧力降下を記録および貯蔵する。マイクロプロセツサ-102は次に再生をより多く必要としている110または111のいずれかの接触変換器を選択する。
マイクロプロセツサ-102が再生用変換器を選択すると、温度調節器132または133の一つへ機能付与( enabling )信号を出し燃料を制御された方式で再生に選ばれた変換器の中へ注入させる。
変換器110または111の一つが再生を行ないつつある間、マイクロプロセツサ-102は経過時間を記録し続ける。例えば5分の再生後、マイクロプロセツサ-102は瞬時、温度調節器132または133の作動を場合によっては停止させ、弁起動手段103を通じてその蝶番弁112を一時的に中立位置へ向きを変えさせる。系金体にわたる圧力降下を再び測定する。その圧力降下が運転エンジン速度にとつて十分低い場合には、その再生は完全であつて、系はそのもとの状態へ戻り、すなわち、蝶番弁112は中性位置となり温度調節器132および133はともに作動が止められる( disabled )。圧力降下が十分に小さくない場合には、マイクロプロセツサ-102はさきに作動的であつた温度調節器を再活性化させ、再生が継続する。その後、毎分毎にマイクロプロセツサ-102は再生工程を中断して再生が終了しているかどうかを測定する。
再生工程完了についてのテストは1秒から2秒を必要とする。再生工程全体は5から10分、あるいはそれ以上かかるかもしれない。エンジンが動いている間の時間の大部分の間は再生がおこらず、蝶番弁112が従つてその時間の大部分について中立位置にあることが期待される。」(第6ページ右下欄第7行ないし第7ページ右下欄第10行)

(ク)「第1図はデイーゼル排気系の透視図であつて、平行に配置された本発明の接触変換器または粒状物トラツプの一対を含み、それによつて一つの変換器またはトラツプは、他方が正規使用状態にある間に再生を受けることができる。
第2図は本発明の装置の断片的な部分切除断面であり、ハウジング内の扇子形折りたたみ部材と両端における端末キヤツプまたはマニホールドを示している。
第3図は本発明による扇子形折りたたみ部材またはアコーデイオン状折りたたみ部材の等角投影図であり、横方向にひろがる波動状の波形と、部材薄片のガス通過用の抜き孔、およびガスの入路と出路を示している。
第4図は、第3図の直線4-4によつて示される平面内で現われるときに、波形薄片の向い合う層が入れ込み関係でないことを示す、断片状の断面拡大図である。
第5図は第4図に示す折りたたみ波形断片の、それが第4図の線5-5によつて示される平面内で現われるときの、部分立面図である。
第6図は本発明の装置に関して有用である再生系の模型的かつ線図的の図解である。」(第8ページ右上欄第7行ないし同ページ左下欄第9行)

(2)ここで、上記(1)の(ア)、(イ)、(エ)ないし(ク)及び図面からみて、次のことがわかる。

(ケ)上記(1)の(ア)及び(イ)からみて、流体処理装置は排気ガスを処理するためのものであることがわかる。

(コ)上記(1)の(ア)及び(エ)並びに第1、2及び6図からみて、接触的変換器18,20は、排気ガス中の炭素粒を捕捉するものであるから、当該炭素粒を濾過し、かつ該炭素粒を焼却するのに適合されたものであることがわかる。

(サ)上記(1)の(ア)及び(エ)ないし(カ)並びに第1ないし4図からみて、接触的変換器18,20が部材46を有しており、この部材46は、連続の一つのストリツプが均一な間隙を置いて自らの上で前後に折りたたまれていて、排気ガスは、部材46の抜き孔58及び向い合う一対の層の間隙からなる多くの通路を通って流入および流出をすることにより接触的変換器18,20を通過し、当該排気ガス中の炭素粒を濾過することがわかる。
また、排気ガス中の炭素粒は、接触的変換器18,20における前記部材46の各層の触媒表面に付着して濾過されるので、該接触的変換器18,20が、上記の多くの通路であって、該排気ガスが該接触的変換器18,20を通過する際に、該通路中の該炭素粒の蓄積により該炭素粒を濾過するための通路を備えることがわかる。

(シ)上記(1)の(ア)、(エ)ないし(ク)及び上記(2)の(サ)並びに第2、3及び6図からみて、第6図は米国特許願第648,381号の第4図に相当し、そこで使用した同じ番号付けに従っているが、引用文献における発明の装置に関して再生系の図解であって、第6図における「接触変換器110および111」、「蝶番弁112」等は引用文献における発明における「接触的変換器18および20」、「蝶番弁16」等と実質上同じものであることがわかる。
そうすると、上記(1)の(キ)の『蝶番弁112は三つの位置:ガスを両方の変換器中へ自由に流れさせる図示の中立位置、および、ガスの大部分を変換器110および111の一方だけへ流れることを強制する二つの位置、をもつ。点線150は後者の位置の一つを表わし、その位置においては、変換器110への流れの大部分が遮断される。蝶番弁112はこのように流れを接触変換器110および111の一方または他方へそらせる転換手段から成る。
変換器110あるいは111のいずれかへの排気ガスの流れは完全に遮断されるべきではない。デイーゼル機関排気は再生工程の間に燃料を支持するのに有用であるかなりの量の酸素を含む。もちろん、補充の酸素および/または燃料を必要なときに添加してもよい。』なる記載及び第6図から、接触的変換器18および20(接触変換器110および111)のうち再生工程となる一方には排気ガスが一部流れ、再生工程とならない他方には排気ガスの大部分が流れることになる。このことから上記(1)の(エ)、(オ)及び(キ)の記載を合わせてみると、接触的変換器18,20のうち再生工程となる一方が一部の排気ガスに加えて取入口50から空気を燃料取入口48からデイーゼル燃料を注入することによって該接触的変換器18,20のうち一方の部材46の多くの通路に沿った該炭素粒の燃焼を起こさせる再生温度(約600°C)で排気ガスの温度を制御するよう適合されていることがわかる。
また、以上のことから、接触的変換器18および20のうち一方における再生工程についてみると、排気ガス中の炭素粒の濾過および再生のための燃焼は、該接触的変換器18又は20の中で同時に起こすことができるものであることがわかる。

(3)上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「排気ガスを処理するための流体処理装置であって、該排気ガス中の炭素粒を濾過し、該炭素粒を焼却するのに適合された接触的変換器18,20を備え、該接触的変換器18,20が、多くの通路であって、該排気ガスが該接触的変換器18,20を通過する際に、該通路中の該炭素粒の蓄積により該炭素粒を濾過するための通路を備える点、および該接触的変換器18,20が一部の排気ガスに加えて空気及びデイーゼル燃料を注入することによって該通路に沿った該炭素粒の燃焼を起こさせる再生温度で排気ガスの温度を制御するよう適合されているものであり、
ここで、該炭素粒の濾過および該燃焼は、該接触的変換器18,20の中で同時に起こすことができるものである、流体処理装置。」

3-3.対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「排気ガス」は、その機能及び形状や構造からみて、本願補正発明における「ガスフロー」に相当し、以下同様に、「流体処理装置」は「デバイス」に、「接触的変換器18,20」は「ガス処理ユニット(18)」に、「通路」は「ダクト(21)」に、「燃焼を起こさせる再生温度」は「燃焼を提供する値」にそれぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「炭素粒」は、その機能及び形状や構造からみて、本願補正発明における「粒子」に包含され、以下同様に、「焼却する」は「除去する」に包含される。
さらに、引用文献記載の発明における「通路中の該炭素粒の蓄積により該炭素粒を濾過する」は、本願補正発明における「ダクト(21)中の該粒子の蓄積により濾過する」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用文献記載の発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
「ガスフローを処理するためのデバイスであって、該ガスフロー中の粒子を濾過し、該粒子を除去するのに適合されたガス処理ユニットを備え、該ガス処理ユニットが、多くのダクトであって、該ガスフローが該ガス処理ユニットを通過する際に、該ダクト中の該粒子の蓄積により濾過するためのダクトを備える点、および該ガス処理ユニットが該ダクトに沿った該粒子の燃焼を提供する値でガスフローの温度を制御するよう適合されているものであり、
ここで、該粒子の濾過および該燃焼は、該ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである、デバイス。」

<相違点>
ガスフローの温度を制御することに関し、
本願補正発明では、「ガスフローの組成を制御することによって」制御するのに対し、引用文献記載の発明では、「一部の排気ガスに加えて空気及びデイーゼル燃料を注入することによって」制御する点(以下、「相違点」という。)。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献記載の発明では、一部の排気ガスに加えて空気及びデイーゼル燃料を注入することによって再生用ガスである排気ガスの温度を制御するが、この空気及びデイーゼル燃料を注入する処理は排気ガスの組成を制御することであって、本願補正発明における「ガスフローの組成を制御すること」に相当するものであり(本願の明細書でも「さらに、以下の詳細な記載に従って、上昇した温度(通常約400?500℃)が、エンジン1の作動中にストリップパッケージ19bにおいて生じ得る。これは、排気ガスの組成の特別の制御(これは、次いで、例えば、炭化水素化合物を排気フローに注入することによってか、またはエンジン1の特別の制御によって起き得る)か、・・・(中略)・・・によって起き得る。全体として、これは、波型20に蓄積された粒子が、温度が十分に高い場合に、連続的にかまたは断続的にかのいずれかで燃焼されることをもたらす。燃焼の間、粒子は、この方法で除去されるが、二酸化炭素が形成される。」(本願明細書段落【0022】)と記載されている。)、上記相違点に関し、結局、本願補正発明も引用文献記載の発明も実質的に差異は認められない。
仮に、上記相違点が依然としてあるとしても、排気ガスフィルタにおいて、再生の際に、ガスフローである排気ガスの組成を制御することによって該ガスフローである排気ガスの温度を制御することは従来周知の技術(以下、「周知技術」という。必要があれば、例えば、特開平7-189653号公報の特に、段落【0031】ないし【0034】及び図1ないし4、特開平5-44434号公報の特に、段落【0009】ないし【0013】及び【0015】ないし【0021】並びに図1、2及び5参照。)であるので、引用文献記載の発明において、上記周知技術を採用し、上記相違点に係る本願補正発明のようにすることは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

なお、本願補正発明における「粒子の濾過および該燃焼は、該ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである」点について、文字上は引用文献記載の発明と同様であるが、その程度において相違がある旨、請求人は主張するかもしれないが、排気ガスフィルタにおいて、再生の際に、粒子の濾過および燃焼をガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるようにすることは、従来周知の手段(以下、「周知手段」という。必要があれば、例えば、特開平7-189653号公報の特に、段落【0031】ないし【0034】及び図1ないし4、特開平5-44434号公報の特に、段落【0009】ないし【0013】及び【0015】ないし【0021】並びに図1、2及び5、特開平7-224632号公報の特に、段落【0006】及び図1参照。)であり、上記の点については上記周知手段を採用した程度のことにすぎない。

また、本願補正発明は、全体として検討してみても、引用文献記載の発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。

(3)まとめ
したがって、本願補正発明は引用文献記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得る程度のことであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
したがって、上記2.に記載したとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、上記3.に記載したとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


【3】本願発明について
1.本願発明の内容
平成20年8月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし20に係る発明は、平成20年2月12日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項12に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、前記【2】の[理 由]の1.(b)に示した請求項12に記載されたとおりのものである。


2.引用文献記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された引用文献(特開昭62-168915号公報)の記載事項及び引用文献記載の発明は、前記【2】の[理 由]の3.の3-2.の(1)ないし(3)に記載したとおりである。


3.対比・判断
本願発明は、実質的に、前記【2】で検討した本願補正発明における発明特定事項である
「ここで、該粒子の該濾過および該燃焼は、該ガス処理ユニットの中で同時に起こすことができるものである」
と、粒子の濾過および燃焼についての限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記【2】の[理 由]の3.の3-3.の(1)ないし(3)に記載したとおり、引用文献記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明は、全体として検討してみても、引用文献記載の発明及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-27 
結審通知日 2010-01-28 
審決日 2010-02-10 
出願番号 特願2002-532773(P2002-532773)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 柳田 利夫
八板 直人
発明の名称 ガスフロー処理の手順およびデバイス  
代理人 山本 秀策  
代理人 山本 秀策  

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