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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1218957
審判番号 不服2008-23629  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-16 
確定日 2010-06-21 
事件の表示 特願2005-270441「写真シール作成装置および方法、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月29日出願公開、特開2007- 79451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成17年9月16日の出願であって、平成20年2月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月23日付けで手続補正がなされ、同年5月15日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、同年7月18日付けで手続補正がなされたが、同年8月7日付けで同年7月18日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月16日に本件審判が請求されるとともに、同年10月14日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成22年1月20日付けで平成20年10月14日付けの手続補正を却下するとともに、同日付で拒絶の理由を通知したところ、平成22年3月23日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明について
1 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成22年3月23日付け手続補正後の特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「メカニカルシャッタ機構および撮像素子を有し、前記撮像素子により被写体である利用者を撮影し、撮影時以外は前記メカニカルシャッタ機構により前記撮像素子を外部の光から遮断する第1の撮影手段と、
前記第1の撮影手段の上側近傍または下側近傍に設けられ、前記被写体を撮影する第2の撮影手段と、
前記第1の撮影手段による撮影の前において、前記第2の撮影手段により撮影された動画像を表示し、前記第1の撮影手段による撮影タイミングの後において、前記第1の撮影手段による次の撮影と並行して、前記第2の撮影手段により撮影された静止画像を表示する第1の表示手段と、
前記第1の撮影手段により撮影された前記被写体の複数の画像を表示する第2の表示手段と、
前記第2の表示手段に表示された画像をシール紙に印刷する印刷手段と
を備える写真シール作成装置。」

2 刊行物
(1)本願出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶の理由に引用された特開2003-101847号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア 「【請求項1】 撮影領域内に存在する使用者を含む被写体を撮影して撮影画像を生成する第1撮影手段と、上記撮影画像をプリント出力するプリント手段とを備えた写真撮影装置であって、所定時間内に複数の撮影画像を生成する連写機能を有することを特徴とする写真撮影装置。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主としてゲームセンター等に設置され、硬貨等が投入されることにより使用者を撮影し、撮影画像をプリントして出力する写真撮影装置および方法ならびに印刷媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ゲームセンター等において、写真を撮影してシールプリント等にする写真自販機が数多く設置されている。このような写真自販機としては、一般に、図14に示すようなものが用いられている。このものは、内部および前面に各種の装置が設けられた筐体1と、上記筐体1の上下から被写体2の背後まで達するように突き出された支柱3とを備えている。」
ウ 「【0027】上記筐体1の内部には、被写体2を撮影する2台のカメラ6a,6bが設けられ、各カメラ6a,6bの前側には、透明板10が嵌め込まれている。この例において、上記第1および第2カメラ6a,6bは、被写体2の前面で被写体2に対して左右に並ぶよう配設されている。
【0028】上記第1カメラ6aは、所定の短時間内に複数回の撮影を行い、複数の撮影画像を生成する連写機能を有した撮影装置である。そして、上記第1カメラ6aは、連写で得られた静止画である被写体2の連続的な撮影画像の画像データを複数格納するメモリ装置11(図3参照)を備えている。そして、上記メモリ装置11に一旦格納された複数の画像データは、連写撮影終了後に一括してコンピュータ装置7に転送されるようになっている。」
エ 「【0030】このようにすることにより、撮影毎に撮影画像の電子データを転送するのに比べ、撮影間隔を短縮でき、連続的な撮影画像を得やすくなる。上記第1カメラ6aとしては、例えば、エクステンションユニットが取り付けられたデジタルカメラが用いられ、具体的には、フジフィルム社製DS-330等をあげることができる。」
オ 「【0031】上記第2カメラ6bは、被写体を撮影してその動画を生成するものであり、具体的にはデジタルビデオカメラやビデオカメラ等が用いられる。
【0032】また、上記筐体1の内部には、上記各カメラ6a,6bから画像データを受信して画像合成等の処理を行なうコンピュータ装置7が設けられている。さらに、上記筐体1の内部には、上記コンピュータ装置7から送信された画像データを受信し、この画像を印刷媒体15に印刷するプリンタ9が設けられている。このプリンタ9で印刷された印刷媒体15は、筐体1の前面に形成された送出口19から送出されるようになっている。
【0033】また、上記筐体1の前部には、上記コンピュータ装置7から送信された撮影画像や合成画像等の画像信号を受信して画像を表示する第1および第2ディスプレイ8a,8bが設けられている。
【0034】上記第1ディスプレイ8aには液晶タブレット等が用いられ、画面が斜め上に被写体2を向くように設けられている。この第1ディスプレイ8aには、第1カメラ6aで連写撮影された複数の静止画である撮影画像を表示して、撮影画像の表情やポーズあるいはフレーミング等をプレビュー確認しうるようになっている。
【0035】また、上記第1ディスプレイ8aは、タッチペン12を備え、操作パネルを兼ねている。すなわち、上記第1ディスプレイ8aには操作指示とともに各種の操作ボタン等が表示され、上記操作指示に従って、ディスプレイ8aに表示された操作ボタンをタッチペン12の先端でタップ(軽く触れる)等することにより、各種の操作信号がコンピュータ装置7に送られ、シャッタ操作等、後述する各種の操作が行なわれるようになっている。
【0036】また、上記タッチペン12は、その先端を第1ディスプレイ8aの表面に接触させて文字や図形等を描いて入力しうるようになっており、手書き入力された文字・図形等の画像データやスタンプ画像等が、カメラ6aで撮影された被写体2の撮影画像と合成されて第1ディスプレイ8aに表示され、その合成画像がプリント媒体15に印刷されるようになっている。」
カ 「【0038】上記第2ディスプレイ8bには、CRT装置等が用いられ、第2カメラ6bで撮像されている動画としての撮像映像をリアルタイムに表示して、撮影の際の表情やポーズあるいはフレーミング等を確認しうるようになっている。このようにすることにより、リアルタイム表示される動画を見ながら、動きを含めたポーズの確認を行なうことができ、連写撮影の際、例えば、ピッチングフォームやダンス等の一連の動作を行ないながらのポーズ決定等に便利である。また、上記第2ディスプレイ8bには、第1カメラ6aで撮影された静止画としての撮影画像も表示され、使用者2にプレビュー確認させるようになっている。」
キ 「【0051】上記写真撮影装置の動作の一例について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。ここで、図4において、「S」はステップを意味する。
【0052】まず、第1および第2ディスプレイ8a,8bにデモ画面が表示されているなか、使用者2がコイン投入口18に必要なコインを投入すると(S120)、第2カメラ6bによる被写体2の撮像と撮像された動画の第2ディスプレイ8bへのリアルタイム表示が開始される(S140)。
【0053】つぎに、使用者2が第2ディスプレイ8bの表示画像を見ながら被写体2の位置やポーズを決めた後に、タッチペン12を用いて画面の指示に従ってシャッタ操作の操作信号を入力すると(S160)、所定の瞬間の撮像映像が静止画として第1カメラ6aのメモリ装置11に格納される。
【0054】ついで、カウンタ25で所定の連写回数に達しているか否かが確認され、規定の撮影回数に達していなければステップ160に戻り、カウントが所定の連写回数に達するまで連写が繰り返される(S220)。
【0055】一方、所定の撮影回数に達していればステップ230に進み、連写されたメモリ装置11に格納された複数の画像データを一括してコンピュータ装置7に転送し、固定画像記憶部38に記憶させる(S230)。
【0056】つぎに、固定された静止画像を第1ディスプレイ8aの表示部36に表示して、タッチペン12を操作することによる手書き画像等の入力が開始される(S240)。ここで、手書き画像の入力画面の一例を図5に示す。この手書き画像入力画面において、21a,21b,21cは、それぞれ手書きペン,スタンプ画像,アルファベット等の文字を入力する際にタッチペン12でタップするアイコンである。
【0057】手書き画像を入力する際には、手書きペンのアイコン21aをタッチペン12の先端でタップしてから、タッチペン12の先端を、ディスプレイ8aに表示された画像22の上に接触させて絵や文字を描くことにより、手書き画像の入力が行なわれる。
【0058】スタンプ画像を入力する際には、スタンプ画像のアイコン21bをタッチペン12の先端でタップしてから、タッチペン12の先端を、ディスプレイ8aに表示された画像22の上に接触させることにより、スタンプ画像の入力が行なわれる。
【0059】アルファベット等の文字を入力する際には、アルファベット文字のアイコン21cをタッチペン12の先端でタップしてから、タッチペン12の先端を、ディスプレイ8aに表示された画像22の上に接触させることにより、アルファベット文字の入力が行なわれる。
【0060】このようにして、図6に示すように、手書き画像27やスタンプ画像28等が入力され、表示された画像22の上にさらに合成される。
【0061】そして、上記手書き画像等の入力は、タイマ26の計測時間があらかじめ設定された所定の入力可能時間(例えば90秒等)に達するまで続けられる(S260)。ステップ260において規定の入力可能時間に達すると、手書き画像等の入力が停止され、印刷の際のシートレイアウトの選択が行なわれる(S280)。ここでのシートレイアウトの選択は、ディスプレイ8aの表示部36にシートレイアウトの見本画面が表示され、タッチペン12の操作により所望のシートレイアウトを選択することが行なわれる。
【0062】ついで、シートレイアウトの選択が終了すると、合成画像の画像データがプリンタ9に送られ、ステップ280で選択されたシートレイアウトにより印刷が開始される(S300)。印刷が終了すると、印刷された印刷媒体15(写真プリント)が出力される。
【0063】ここで、シートレイアウトの一例を図7に示す。この例では、写真プリントとしてシールプリントに出力した例を示しており、41はシール台紙、42はシールである。」
ク 上記エより、第1カメラ6aはデジタルカメラであるから、撮像素子を有していることは明らかである。

(2)上記(1)アないしクから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「撮像素子を有し、使用者を含む被写体を撮影し、複数の撮影画像を生成する連写機能を有したデジタルカメラである第1カメラ6aと、被写体を撮影してその動画を生成する第2カメラ6bと、第2カメラ6bで撮像されている動画としての撮像映像をリアルタイムに表示して、撮影の際の表情やポーズあるいはフレーミング等を確認しうるようになっている第2ディスプレイ8bと、第1カメラ6aで連写撮影された複数の静止画である撮影画像を表示して、撮影画像の表情やポーズあるいはフレーミング等をプレビュー確認しうるようになっている第1ディスプレイ8aと、その先端を第1ディスプレイ8aの表面に接触させて文字や図形等を描いて入力しうるタッチペン12により手書き入力された文字・図形等の画像データやスタンプ画像等が、カメラ6aで撮影された被写体2の撮影画像と合成されて第1ディスプレイ8aに表示され、その合成画像がプリント媒体15に印刷されるプリンタ9とを有し、
第1および第2カメラ6a,6bは、筐体1の内部に設けられて、その前側には透明板が嵌め込まれ、被写体2の前面で被写体2に対して左右に並ぶよう配設され、第2ディスプレイ8bには、第1カメラ6aで撮影された静止画としての撮影画像も表示され、使用者2にプレビュー確認させるようになっている、写真プリントとしてシールプリントに出力する写真撮影装置」

(3)本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶の理由に引用された特開平10-161233号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は人物写真撮影装置に関する発明である。」
イ 「【0006】本発明の目的は、撮影内容を思いだす必要なく、撮影されるその場で、既に撮影された画像を見てポーズを決めることができるようにすることである。」
ウ 「【0026】本実施形態の人物写真撮影装置は、椅子95に座っている人物1を撮影し、その人物像のプリントを得るための装置である。電子カメラ76は、透明板91及びハーフミラー80を透過した椅子95に座っている人物1の像を撮影し、デジタル画像を得る。画像処理回路70は、電子カメラ76により得られたデジタル画像を画像処理して、VRAM73に記録されている動画表示領域を常に書換えまた、所定の手順で静止画表示領域に静止画を記憶させる。そして、CRT74は、VRAM73に記憶されている画像を画像表示面75に表示する。すると、画像表示面75に表示された画像がハーフミラー80で反射して、透明板91を介して人物1が見ることができる。また、所定の手順で静止画表示領域に記憶されている静止画が了承されると、露光部40は、これらの静止画の像を印画紙(プリント用ハロゲン化銀カラー写真感光材料であるカラーネガポジ印画紙)2に露光し、現像処理部28が露光された印画紙2を現像処理して、静止画表示領域に記憶されている静止画に対応するプリントが得られる。
【0027】電子カメラ76は、椅子95に座っている人物1を、約40万画素の固体撮影素子により1秒間に6?30フレーム撮影する。そして、電子カメラ76は、この撮影により得られる1秒間に6?30フレームの約40万画素のデジタル画像信号を画像処理回路70に送信する。
【0028】画像処理回路70には、CPU71と、CPU71に接続されているメモリ72と、CPU71に接続されているVRAM73とがある。そして、電子カメラ76から送信された1秒間に6?30フレームの約40万画素のデジタル画像信号を画像処理して、VRAM73の動画表示領域を書き換える。また、後述する所定の手順に従って、静止画をVRAM73の静止画表示領域に記憶する。また、同時に画像出力するための静止画の像をメモリ72に記憶させる。これにより、1秒間に6?30回、VRAM73の動画表示領域を書き換えることになり、人物1は、現在の自分のポーズや表情の変化などをストレスなく視認して観察でき、かつ、記憶されている静止画を視認して観察することができ、撮影内容を思いだす必要なく、撮影されるその場で、電子カメラ76により撮影される人物1が既に撮影されたポーズを見て、ポーズを決めることができる。
【0029】また、CRT74は、1つの画像表示面75のみを有し、この画像表示面75に、VRAM73に記憶されている画像を表示させることにより、VRAM73の静止画表示領域に記憶されている静止画もVRAM73の動画表示領域に記憶されている動画も表示することにより、本人物撮影装置では、画像表示面を1つに済ましている。」
エ 「【0039】本人物写真撮影装置の画像表示面75が表示する画像は、VRAM73に記憶されている画像を表示したものである。そして、CRT74はこの画像表示面75に、VRAM73の動画表示領域に記憶されいている動画7とVRAM73の静止画表示領域に記憶されている静止画11、12、13、14とVRAM73の説明文表示領域に記憶されている説明文8とを図3に示すように表示する。また、VRAM73の静止画表示領域に記憶されている静止画11、12、13、14に相当するメモリ72に記憶されている静止画からプリント(ハードコピー)が得られる。
【0040】そして、静止画11、12、13、14とそれに対応するメモリ72に記憶されている静止画は、所定の時点の動画7からCPU71がトリミング処理して得られたものである。メモリ72に記憶されている静止画は、単に動画から所定の上下位置の範囲内をトリミングして、トリミングされた画像に、プリント形成用の階調処理を施したものである。これに対して、VRAM73の静止画表示領域に記憶されている静止画11、12、13、14は、メモリ72に記憶されている静止画と同じトリミング処理をして、1/2に間引いて画素数縮小処理をしたものである。これにより、ハードコピーがトリミング処理されたものであっても、人物1が、撮影されるその場で、ハードコピーに出力されるトリミング処理された静止画を見て、ポーズを決めることができ、その結果のハードコピーを得ることができる。
【0041】また、静止画を撮るタイミングは、以下の通りである。人物1が料金徴収部92に貨幣を投入すると、画像表示面75にモードの選択を指示する画面が表示される。そして、選択されたモードに必要な金額が投入されていなければ、さらに貨幣の投入を促す画面が画像表示面75に表示される。また、充分な金額が投入されていたら、電子カメラ76の動画の撮影が開始され、図3に示すような画面(但し、静止画は表示されていない。)が画像表示面75に表示される。そして、画像表示面75に表示される説明文8に、撮影手順の説明が示される。そして、料金徴収部92の図示しない開始ボタンを押すと、所定の時間間隔毎に静止画が撮影される。
【0042】例えば、静止画を連続して複数回撮影し、この複数回の撮影で得られた複数の静止画をプリントする複数シーンプリントモードでは、最初の撮影は8秒後、その後4秒間隔に3枚の撮影が行われる。そして、その間、既に撮影された1又は複数の静止画を上方から撮影された順に表示して、同時に表示する。例えば、開始ボタンを押して、18秒後の状態の例を図3に示す。このようにして、既に撮影された複数の静止画を見て、ポーズを決めることができる。」

(4)本願の出願前に頒布された刊行物であって、当審で通知した拒絶の理由に引用された特開2005-107041号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア 「【0009】
このような現状を踏まえ、上述の特許文献1のものに、単に低価格の高解像用ディジタルカメラを適用すると、高解像度用ディジタルカメラでは、CCDの画素数が多いので必然的にデータ量が低解像度用ディジタルカメラに比べて遥かに大きいことから、A/D変換処理やキャプチャー処理といったディジタル処理に時間がかかると共に、画像処理装置にデータを転送するのにも時間がかかってしまう。」
イ 「【0028】
本発明によれば、高画質の写真印刷及び確認画像の高速表示の両方を低コストにて実現することができる。具体的には、1台のカメラで撮影した画像を印刷用と表示用に用いる従来の構成に比べ、はるかに低コストにて高画質の写真印刷及び確認画像の高速表示の両方を実現することができる。
そして、高速表示により、使用者が撮影画像を確認する際の待ち時間をほとんど無くすことができる。特に、撮り直しをする場合においては、従来のように撮り直しの都度待たされることがないので、使用者は快適に撮り直し作業及び画像確認を行うことができる。」
ウ 「【0042】
図2は、図1に示した自動写真撮影装置100の撮影機構室外部筐体1の内部構成を示す図である。
【0043】
図2において、撮影機構室外部筐体1の内部には、大きく分けると、制御装置10と、印刷用カメラ(A)11aと、表示用カメラ(B)11bと、表示部12と、操作部13と、印刷装置14と、現金処理部15と、電源部16とを具えて構成される。
【0044】
制御装置10は、この自動写真撮影装置100全体を統括的に制御する装置である。具体的には、印刷用カメラ(A)11aや、表示用カメラ(B)11bや、表示部12や、操作部13や、印刷装置14や、現金処理部15等と電気的に接続し、それらの各種処理動作を制御する。特に、本実施例では、印刷用カメラ(A)11a及び表示用カメラ(B)11bの2台のカメラにおける撮影に係わる一連の処理を制御する。
【0045】
印刷用カメラ(A)11aは、撮影範囲内の使用者を含む画像を高解像度で撮影する撮影装置である。そして、このカメラ(A)11aで撮影された高解像度画像を印刷装置14で印刷する場合に用いる。尚、写真印刷用として高画質を望むので高解像度で撮影できるように受光素子を数多く具えたCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)を搭載したディジタルカメラやビデオカメラを採用する。
【0046】
表示用カメラ(B)11bは、撮影範囲内の使用者を含む画像を低解像度で撮影する撮影装置である。そして、このカメラ(B)11bで撮影された低解像度画像を撮影画像確認用表示部12で表示する場合に用いる。尚、確認さえできれば良いので画質は問わず低解像度で撮影できる受光素子が少ないCCDを搭載したディジタルカメラやビデオカメラを採用する。
【0047】
撮影画像確認用表示部12は、使用者が印刷してもよい撮影画像かどうかを判断する場合に用いられる撮影画像を表示する。特に、この実施例では、表示用カメラ(B)11bにて撮影した撮影画像を表示する。そして、その表示される撮影画像は、印刷用カメラ(A)11aにて撮影して印刷用に利用すべく形成される撮影画像が撮影された時間と一致した時間或いは略一致した時間にて表示用カメラ(B)11bで撮影した画像である。尚、この表示部を実現する手段としては、低コスト化を考慮して安価なビデオモニター或いはTVを採用する。」
エ 「【0129】
まず、図18において、図18(a)は、図2に示す構成において、ハーフミラー18越しに撮影空間部屋2の撮影エリア(使用者が椅子の高さを調整すればその使用者の顔及び肩部分を撮影できるエリア)を撮影できる高さ位置に表示用カメラ(B)11bを上にし、そのもとに印刷用カメラ(A)11aを設置し、それら印刷用カメラ(A)11aと表示用カメラ(B)11bの間に、使用者の視線をガイドする為の光を発する視線ガイド用発光素子(青色LEDなど)22を設ける。」
オ 図18より、表示用カメラが印刷用カメラの上側近傍に設けられていることが看取できる。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「撮像素子」は、デジタルカメラにおいて撮影するためのものであるから、「使用者を含む被写体を撮影」していることは、明らかである。
(2)引用発明1の「使用者」は、本願発明の「利用者」に相当する。
(3)引用発明1の「使用者を含む被写体を撮影」は、すくなくとも「使用者」を撮影していることから、本願発明の「被写体である利用者を撮影」に相当する。
(4)上記(1)ないし(3)より、引用発明1の「撮像素子を有し、使用者を含む被写体を撮影し、複数の撮影画像を生成する連写機能を有したデジタルカメラである第1カメラ6a」は、本願発明の「第1の撮影手段」と、「『撮像素子を有し、前記撮像素子により被写体である利用者を撮影』する『第1の撮影手段』」という点で一致する。
(5)引用発明1の「第2カメラ6b」、「第2カメラ6bで撮像されている動画としての撮像映像」、「第1カメラ6aで連写撮影された複数の静止画である撮影画像を表示して、撮影画像の表情やポーズあるいはフレーミング等をプレビュー確認しうるようになっている第1ディスプレイ8a」及び「写真プリントとしてシールプリントに出力する写真撮影装置」は、本願発明の「第2の撮影手段」、「第2の撮影手段により撮影された動画像」、「第1の撮影手段により撮影された前記被写体の複数の画像を表示する第2の表示手段」及び「写真シール作成装置」に相当する。
(6)引用発明1の「第2ディスプレイ8b」は、「第2カメラ6bで撮像されている動画としての撮像映像を表示し」ている。
引用発明1の「第2カメラ6bで撮像されている動画としての撮像映像」は、「リアルタイムに表示」され、「撮影の際の表情やポーズあるいはフレーミング等を確認しうるようになっている」ことから、「第1カメラ6a」による撮影の前において表示していると認められる。
してみれば、引用発明1の「第2ディスプレイ8b」は、本願発明の「第1の表示手段」と、「『第1の撮影手段による撮影の前において』、『第2の撮影手段により撮影された動画像』を『表示する』」点で一致する。
(7)引用発明1の「プリンタ9」は、「第1ディスプレイ8aに表示され」た「合成画像」を「プリント媒体15に印刷」し、「写真プリントとしてシールプリントに出力」することから、本願発明の「第2の表示手段に表示された画像をシール紙に印刷する印刷手段」に相当する。
上記(1)ないし(7)からみて、本願発明と引用発明1とは、

「撮像素子を有し、前記撮像素子により被写体である利用者を撮影する第1の撮影手段と、
前記被写体を撮影する第2の撮影手段と、
前記第1の撮影手段による撮影の前において、前記第2の撮影手段により撮影された動画像を表示する第1の表示手段と、
前記第1の撮影手段により撮影された前記被写体の複数の画像を表示する第2の表示手段と、
前記第2の表示手段に表示された画像をシール紙に印刷する印刷手段と
を備える写真シール作成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
第1の撮影手段について、本願発明が「メカニカルシャッタ機構を有し、撮影時以外は前記メカニカルシャッタ機構により前記撮像素子を外部の光から遮断する」と特定されているのに対し、引用発明1は「メカニカルシャッタ機構」を有しているか否か定かでない点。

<相違点2>
第2の撮影手段について、本願発明が「第1の撮影手段の上側近傍または下側近傍に設けられ」と特定されているのに対し、引用発明1は「第1および第2カメラ6a,6bは、被写体2の前面で被写体2に対して左右に並ぶよう配設され」ている点。

<相違点3>
第1の表示手段が、本願発明では「前記第1の撮影手段による撮影タイミングの後において、前記第1の撮影手段による次の撮影と並行して、前記第2の撮影手段により撮影された静止画像を表示する」と特定されているのに対し、引用発明1はそのようになっていない点。

5 判断
(1)上記相違点1について
メカニカルシャッタ機構であるフォーカルプレーンシャッタを有する連写撮影可能なデジタルカメラは、本願出願前に周知である(例:特開2001-275033号、特開2005-175908号公報、特開2005-176265号公報。以下「周知技術」という。)から、引用発明1において、連写撮影するデジタルカメラとしてフォーカルプレーンシャッタ等のメカニカルシャッタ機構を有するデジタルカメラを採用することは、当業者が周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。
また、フォーカルプレーンシャッタは、撮影時にレリーズ信号等に応じて露光を開始させ、その後所定のタイミングで遮光することにより、撮影時の露光量を制限するために動作させるものであることは技術常識であるから、フォーカルプレーンシャッタ等のメカニカルシャッタ機構を採用した場合には、「撮影時以外」には動作させず、「撮像素子を外部の光から遮断」することは、明らかである。

(2)上記相違点2について
引用発明1の第2カメラ6bは、「撮影の際のフレーミング等を確認するための動画を撮影する」ために、印刷に用いられる第1カメラ6aに近い位置に設けられているものである。引用文献3には、「高解像度で撮影できるように受光素子を数多く具えたCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)を搭載したディジタルカメラからなる印刷用カメラと、画質は問わず低解像度で撮影できる受光素子が少ないCCDを搭載したディジタルカメラやビデオカメラからなる表示用カメラを有し、撮影画像を確認するための表示用カメラを、印刷用カメラの上側近傍に設け、1台のカメラで撮影した画像を印刷用と表示用に用いる従来の構成に比べ、はるかに低コストにて高画質の写真印刷及び確認画像の高速表示の両方を実現することができる自動写真撮影装置」の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められるから、引用発明のフレーミング等を確認するための第2カメラ6bの配置位置として、引用発明3の撮影画像を確認するための表示用カメラの配置位置を採用して、印刷に用いられる第1カメラ6aの上側近傍に第2カメラ6bを設けることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)上記相違点3について
引用文献2には、「透明板91及びハーフミラー80を透過した椅子95に座っている人物1の像を撮影し、デジタル画像を得る電子カメラ76と、電子カメラ76により得られたデジタル画像を画像処理して、VRAM73に記録されている動画表示領域を常に書換え、また、所定の手順で静止画表示領域に静止画を記憶させる画像処理回路70と、VRAM73の静止画表示領域に記憶されている静止画もVRAM73の動画表示領域に記憶されている動画も表示して、画像表示面75に表示された画像がハーフミラー80で反射して、透明板91を介して人物1が見ることができるようにするCRT74とを有し、人物1が、現在の自分のポーズや表情の変化などをストレスなく視認して観察でき、かつ、記憶されている静止画を視認して観察することができ、撮影内容を思いだす必要なく、撮影されるその場で、電子カメラ76により撮影される人物1が既に撮影されたポーズを見て、ポーズを決めることができるように、電子カメラ76の動画の撮影が開始されると画像表示面75に動画が表示され、開始ボタンを押すと、所定の時間間隔毎に静止画が撮影され、その間、既に撮影された1又は複数の静止画を上方から撮影された順に表示して、同時に表示し、所定の手順で静止画表示領域に記憶されている静止画が了承されると、現像処理部28が露光された印画紙2を現像処理して、静止画表示領域に記憶されている静止画に対応するプリントが得られる人物写真撮影装置」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
引用発明1の「撮影の際の表情やポーズあるいはフレーミング等を確認しうるようになっている第2ディスプレイ8b」について、「人物が、現在の自分のポーズや表情の変化などをストレスなく視認して観察でき、かつ、記憶されている静止画を視認して観察することができ、撮影内容を思いだす必要なく、撮影されるその場で、電子カメラにより撮影される人物が既に撮影されたポーズを見て、ポーズを決めることができ」ようにするために、引用発明2のように「所定の時間間隔毎の静止画の撮影の間、既に撮影された1又は複数の静止画を上方から撮影された順に表示」するようにして、第1カメラ6aによる撮影タイミングの後において、第1カメラ6aによる次の撮影と平行して、静止画を表示するようにし、その際、「1台のカメラで撮影した画像を印刷用と表示用に用いる従来の構成に比べ、はるかに低コストにて高画質の写真印刷及び確認画像の高速表示の両方を実現する」ことができるように、引用発明3のように、印刷用のカメラではなく、確認表示用の第2カメラ6b(動画撮影用)により撮影された静止画を、表示する静止画として採用して、上記相違点3に係る構成のようになすことは、当業者が引用発明2及び引用発明3に基づいて容易に想到し得るものである。

(4)請求人が平成22年3月23日付け意見書で述べている「このように、1つのカメラによって撮影を行い、撮影により得られた静止画像を撮影結果の表示にも用いる場合には、連写する回数に応じて転送時間が多くかかってしまい、スムーズなゲームの進行を確保するという点からは実質的に連写ができないが、カメラ32とは別に設けられたCCDにより撮影された画像を撮影結果の表示に用いることによってそれが可能と」なるという効果も、引用発明3の「1台のカメラで撮影した画像を印刷用と表示用に用いる従来の構成に比べ、はるかに低コストにて高画質の写真印刷及び確認画像の高速表示の両方を実現する」という効果から当業者が予測できた程度のものである。
また、その他の本願発明の奏する効果も、引用発明1の奏する効果、引用発明2の奏する効果、引用発明3の奏する効果及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-23 
結審通知日 2010-04-27 
審決日 2010-05-10 
出願番号 特願2005-270441(P2005-270441)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 登丸 久寿  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 湯本 照基
村田 尚英
発明の名称 写真シール作成装置および方法、並びにプログラム  
代理人 稲本 義雄  

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