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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45C
管理番号 1218998
審判番号 不服2008-7855  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-01 
確定日 2010-06-23 
事件の表示 特願2004- 99855号「背負いバッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開、特開2005-279025号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成16年3月30日の出願であって、平成20年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年4月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年4月14日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成22年2月4日付けで拒絶理由通知が通知され、これに対し、平成22年4月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は平成22年4月6日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「背負いバッグ本体に左右の背負いベルトが、背負いベルトの背負いバッグ本体への取付部位の間において互いに交差するように取付けられると共に、背負った場合に背中側で交差するように構成され、
上記背負いベルトは、背負い時において、左右の背負いベルトの上端部が夫々中心方向に引っ張られることで肩にかけられた背負いベルトが首側に寄り合うように形成され、
右肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の上端右側部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の下端左側部に接続され、又、左肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の上端左側部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の下端右側部に接続されていることを特徴とする背負いバッグ。」

III.当審の拒絶理由
一方、当審において平成22年2月4日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平9-252838号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、 特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

IV-1.引用例の記載事項
引用例には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】背当て部に左右一対の肩掛けひもを有する背負い袋であって、
前記ひものうちの一方の上端部が前記背当て部を左右に二分する中心線の右側において前記背当て部に取り付けられ、かつ、そのひもの下端部が前記中心線の左側において前記背当て部に取り付けられており、前記ひもの他方は、前記中心線に関して前記一方のひもと左右対称に前記背当て部に取り付けられ、これら一対のひもの上端部のそれぞれが下端部のそれぞれよりも前記中心線寄りに位置し、前記一対のひもがそれらの上端部近傍において互いに交叉していることを特徴とする前記背負い袋。
【請求項2】前記一対のひもが、一本のひもの長手方向中央部を前記背当て部の上部中央に固定し、該中央部外側の左右側部それぞれを右方向と左方向とに折曲して互いに交叉させ、その交叉した左右側部の先端部位を前記背当て部の下部に固定することにより形成されている請求項1記載の背負い袋。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「この発明は、リュックサック等の背負い袋に関する。」(段落【0001】)
(ウ)「背負い袋が背中によく密着すると、歩行中に袋が背中で踊ることがなく、歩行が容易になり、袋を背負うことによる疲れも少なくなる。
そこで、この発明は、従来の背負い袋よりも、さらによく背中に密着する背負い袋の提供を課題にしている。」(段落【0003】?【0004】)
(エ)「前記課題を解決するために、この発明が前提とするのは、背当て部に左右一対の肩掛けひもを有する背負い袋である。
かかる前提において、この発明が特徴とするところは、前記ひものうちの一方の上端部が前記背当て部を左右に二分する中心線の右側において前記背当て部に取り付けられ、かつ、そのひもの下端部が前記中心線の左側において前記背当て部に取り付けられており、前記ひもの他方は、前記中心線に関して前記一方のひもと左右対称に前記背当て部に取り付けられ、これら一対のひもの上端部のそれぞれが下端部のそれぞれよりも前記中心線寄りに位置し、前記一対のひもがそれらの上端部近傍において互いに交叉していることを特徴としている。」(段落【0005】?【0006】)
(オ)「図1,2において、この発明のリュックサック1は、袋2と、左右一対の肩掛けひも3,4とによって構成されている。着用者の左肩に掛かるひも3は、その上端部6が背当て部5を左右に二分する中心線C-Cの右側において背当て部5の頂部近傍に縫合され、下端部7が中心線C-Cの左側において背当て部5の底部近傍に縫合されている。着用者の右肩に掛かるひも4は、ひも3と左右対称の位置に縫合され、上端部8が中心線C-Cの左側に、下端部9が中心線C-Cの右側に位置している。それぞれのひも3,4の上端部6,8は、中心線C-Cの比較的近傍にあり、下端部7,9は、上端部6,8よりも中心線C-Cから横方向に離間している。したがって、ひも3と4とは、それらの上端部6,8の近傍で互いに交叉している。左右の上端部6,8の上には、袋2の幅方向に延びる当て布11が縫合されている。ひも3,4と当て布11とは、鎖線13において縫合されている。」(段落【0009】)
(カ)「図1の着用状態となるこの発明のリュックサック1は、背当て部5における頂部の右側がひも3によって左肩方向へ斜めに引っ張られ、頂部の左側がひも4によって右肩方向へ斜めに引っ張られるので、頂部は中心線C-Cとその近傍が背中によく密着する。袋2が背中から離れる傾向にあるときは、ひも3に外側から重なるひも4を肩から腹側方向へ引っ張るだけでひも3が背中から離れるのを抑え、頂部を背中に密着させることができる。また、ひも3と4とは、単に重なり合うだけで互いに拘束することがないから、ひも3,4が上端部6,8から肩へと延びるときに、それぞれが独立して着用者の体型に応じた傾きをとることができる。かかるひも3,4は肩に無駄なく当るのでリュックサック1の着用感がよい。」(段落【0013】)
(キ)「なお、この発明にかかるリュックサック1の肩掛けひも3,4には、これらの長さを調節するためにバックル等の適宜の部材を取り付けることができる。」(段落【0014】)
(ク)「この発明にかかる背負い袋では、左右一対の肩掛けひもが互いに交叉して、袋の背当て部が背中によく密着するから、歩行中に背負い袋が背中で踊ることがなく、歩行が楽になる。」(段落【0015】)
(ケ)図1には、左右の肩掛けひも3,4が、背負った場合に背中側で交叉するように構成される点が図示されている。
(コ)上記記載事項(オ)の「それぞれのひも3,4の上端部6,8は、中心線C-Cの比較的近傍にあり、・・・ひも3と4とは、それらの上端部6,8の近傍で互いに交叉している。」及び図2より、「左右の肩掛けひも3,4が、肩掛けひも3,4の袋2への取付部である上端部6,8の間において互いに交叉するように取付けられる」といえる。
(サ)上記記載事項(カ)の「図1の着用状態となるこの発明のリュックサック1は、背当て部5における頂部の右側がひも3によって左肩方向へ斜めに引っ張られ、頂部の左側がひも4によって右肩方向へ斜めに引っ張られるので、頂部は中心線C-Cとその近傍が背中によく密着する。」及び図1より、「肩掛けひも3,4は、背負い時において、左右の肩掛けひも3,4の上端部が夫々中心方向に引っ張られることで肩にかけられた肩掛けひも3,4が首側に寄り合うように形成されている」といえる。
(シ)上記記載事項(オ)、図1及び図2より、「右肩に掛ける肩掛けひも4の上端部8が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)左側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部9が上記袋2の(着用者からみて)右側底部近傍に縫合され、又、左肩に掛ける肩掛けひも3の上端部6が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)右側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部7が上記袋2の(着用者からみて)左側底部近傍に縫合される」といえる。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。) が記載されている。
「袋2に左右の肩掛けひも3,4が、肩掛けひも3,4の袋2への取付部である上端部6,8の間において互いに交叉するように取付けられると共に、背負った場合に背中側で交叉するように構成され、
上記肩掛けひも3,4は、背負い時において、左右の肩掛けひも3,4の上端部が夫々中心方向に引っ張られることで肩にかけられた肩掛けひも3,4が首側に寄り合うように形成され、
右肩に掛ける肩掛けひも4の上端部8が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)左側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部9が上記袋2の(着用者からみて)右側底部近傍に縫合され、又、左肩に掛ける肩掛けひも3の上端部6が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)右側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部7が上記袋2の(着用者からみて)左側底部近傍に縫合される背負い袋1。」

IV-2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「背負い袋1」は、本願発明の「背負いバッグ」に、「袋2」は「背負いバッグ本体」に、「肩掛けひも」は「背負いベルト」に、「交叉」は「交差」に、「背当て部5」は「背中当接面部」に、及び「縫合」は「接合」に、相当する。
また、引用発明の「右肩に掛ける肩掛けひも4の上端部8が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)左側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部9が上記袋2の(着用者からみて)右側底部近傍に縫合され、又、左肩に掛ける肩掛けひも3の上端部6が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)右側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部7が上記袋2の(着用者からみて)左側底部近傍に縫合される」と、本願発明の「右肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の上端右側部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の下端左側部に接続され、又、左肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の上端左側部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の下端右側部に接続されている」とは、「右肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の右側上部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の左側下部に接続され、又、左肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の左側上部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の右側下部に接続されている」という概念で共通する。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
「背負いバッグ本体に左右の背負いベルトが、背負いベルトの背負いバッグ本体への取付部位の間において互いに交差するように取付けられると共に、背負った場合に背中側で交差するように構成され、
右肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の右側上部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の左側下部に接続され、又、左肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の左側上部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の右側下部に接続されている背負いバッグ。」

本願発明と引用発明とを対比すると、両者は次の点で相違する。
相違点:本願発明では、右肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の上端右側部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の下端左側部に接続され、又、左肩に掛ける上記背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、上記背負いバッグ本体の上端左側部に接合されるとともに、その下端部が上記背負いバッグ本体の下端右側部に接続されているているのに対し、引用発明では、右肩に掛ける肩掛けひも4の上端部8が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)左側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部9が上記袋2の(着用者からみて)右側底部近傍に縫合され、又、左肩に掛ける肩掛けひも3の上端部6が袋2の背当て部5側において、袋2の(着用者からみて)右側頂部近傍に縫合されるとともに、その下端部7が上記袋2の(着用者からみて)左側底部近傍に縫合される点。

IV-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
背負いベルトの上端部が、バッグの背中当接面部側において、背負いバッグ本体の上端部に接合される点、あるいは、背負いベルトの下端部が、バッグの背中当接面部側において、背負いバッグ本体の下端部に接合される点は、いずれも背負いバッグの技術分野において従来周知の技術である(例えば、特開2002-58536号公報、特開平6-30817号公報参照)。 そして、引用発明に上記周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

V.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-28 
結審通知日 2010-04-30 
審決日 2010-05-12 
出願番号 特願2004-99855(P2004-99855)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A45C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 康平村山 睦  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 吉澤 秀明
蓮井 雅之
発明の名称 背負いバッグ  
代理人 木村 高明  

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