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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1219083
審判番号 不服2006-26662  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-27 
確定日 2010-06-24 
事件の表示 平成 9年特許願第 44945号「外科用針及び哺乳類動物の組織を隣接させる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月16日出願公開、特開平 9-322898号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、1997年2月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年2月15日、米国)の出願であって、平成18年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年12月27日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成21年3日19付けで拒絶理由通知がなされ、それに対し、平成21年9月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

II.本願発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年9月30日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「切開用エッジを有する外科用針であって、
手元側端部部分と末端側端部部分とを有し、湾曲している細長い部材と、
該部材の末端側端部部分から伸びている刺通し用尖端と、
該部材の手元側端部部分における縫合糸取付け用手段とを具備し、
該部材の末端側端部部分の断面が、
対向した第1及び第2の縁を有し、1線を定めている上辺と、
上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第1の中低の側辺であって、少なくも一部分が曲がっている1線を定め有していて、少なくとも1つの湾曲した部分と少なくとも1つの直線状部分とを有する第1の中低の側辺と、
上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第2の中低の側辺であって、少なくも一部分が曲がっている1線を定めており、少なくとも1つの湾曲した部分と少なくとも1つの直線状部分とを有する第2の中低の側辺とを有し、
横方向の対向した第1の側辺の上の縁及び上面の対向した第1の縁が、第1の切開用エッジを形成するように共に伸び、更に横方向の対向した第2の側辺の上の縁及び上面の対向した第2の縁が、第2の切開用エッジを形成するように共に伸び、そして第1及び第2の側面の下の縁が、第3の切開用エッジを形成するように共に伸びている
ことを特徴とする外科用針。」


III.引用例の記載事項
III-1.引用例1の記載事項
当審における拒絶の理由に引用され、本件出願日前に頒布された刊行物である特開昭63-257539号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

a.「本発明の目的は、その断面が多角形に形成された切削部を有する先端を尖らせたロッドに形成され、また尾部が糸を保持するようになっている非外傷針において、針の断面の少なくとも2つの隣接辺が切削部分の少なくとも一部において凹面とされかつ鋭角で交差することを特徴とすることによって、達成されるものとなる。」(2頁左下欄17行?右下欄5行)

b.「本発明によって作られた非外傷針は、第1図に示されるように長さ方向にわん曲した、先端を尖らせたロッドの形状をしており、縫合される組織中に所定の半径でわん曲された創傷溝が形成されるようにしている。
この先端を尖らせたロッドは、先端切削部1(第1図)と糸3を保持するようになっている尾部2とを有している。」(3頁左上欄5?12行)

c.「切削部1はその前端が先を尖らせた部分4(第2図)となっており、第3図に示されるように断面三角形の三角錐の形状をなし、その寸法は先端5から漸進的に増加している。」(3頁左上欄15?19行)

d.「先を尖らせた部分4の三角形断面の底辺8(第3図)、台形断面の底辺9(第4図)及び四角形断面の底辺10(第5図)は、全て長さ方向にわん曲された切削部1の表面11(第1図)上に位置し、直線である。
針切削部1の先を尖らせた部分4の各断面の2つの辺12,13(第3図)は、相互に鋭角αで交差しまた底辺8とは鋭角βで交差するよう、凹面に形成される。」(3頁右上欄14行?左下欄2行)

これら記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。

「鋭角αと鋭角βを有する非外傷針であって、
尾部2と先を尖らせた部分4とを有し、長さ方向にわん曲した、先端を尖らせたロッドと、
ロッドの先を尖らせた部分4の先端5と、
糸3を保持するようになっている尾部2とを具備し、
先を尖らせた部分4の三角形断面が、直線からなる底辺8を有し、各断面の2つの辺12,13は、相互に鋭角αで交差しまた底辺8とは鋭角βで交差するよう、凹面に形成される非外傷針。」

III-2.引用例2の記載事項
当審における拒絶の理由に引用され、本件出願日前に頒布された刊行物である特開平3-103249号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

e.「本発明は一般に改良された外科用針に関する。」(1頁左欄17行)

f.「 第3図に関連して得られた第5図及び第6図に見られるように、下面l6は薄いエッジ部分l8a,18bにつながっている辺16a,16bを有する。一方、これらの薄いエッジ部分は、針10にその厚さを与える針壁面20a.20bとつながっている。第5図に見られるように、先細りの先端部領域l2では、針壁面20a,20bは上面の端部14dにて出会う。」(3頁左上欄8?15行))

g.第5図には、直線で形成された針壁面20a、20bに挟まれた角は、直線で形成された下面16に対向して設けられていることが図示されている。

これらの記載事項からみて、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されている。

「外科用針であって、直線で形成された下面16に対向した部分に、直線で形成された針壁面20a、20bに挟まれた角を設けた外科用針。」


IV.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明1の「鋭角αと鋭角β」は、本願発明の「切開用エッジ」に相当する。

同様に、引用発明1の「非外傷針」は本願発明の「外科用針」に、「尾部2」は「手元側端部部分」に、「先を尖らせた部分4」は「末端側端部部分」に、「長さ方向にわん曲した、先端を尖らせたロッド」は「湾曲している細長い部材」に、「先端5」は「刺通し用尖端」に、「底辺8」は「上辺」にそれぞれ相当する。

また、引用発明1の「先端5」は「ロッドの先を尖らせた部分4」の先端部であるから、引用発明1は、本願発明の「部材の末端側端部部分から伸びている刺通し用尖端」の発明特定事項を有するといえる。

また、引用発明1の「糸3を保持するようになっている尾部2」は「ロッド」に設けられているのであるから、引用発明1は本願発明の「部材の手元側端部部分における縫合糸取付け用手段」の発明特定事項を有するといえる。

また、引用発明1は、「先を尖らせた部分4の三角形断面が、直線からなる底辺8を有し」ているから、底辺の両端に対向した縁を有していることは自明であるし、「各断面の2つの辺12,13」は、それぞれ上の縁と下の縁を有する事も自明であり、かつ「凹面に形成される」ので「少なくとも一部分が曲がっている1線」で、「中低」であるといえ、引用発明1の「先を尖らせた部分4の三角形断面が、直線からなる底辺8を有し、各断面の2つの辺12,13は、相互に鋭角αで交差しまた底辺8とは鋭角βで交差するよう、凹面に形成される」ことと、本願発明において「対向した第1及び第2の縁を有し、1線を定めている上辺と、上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第1の中低の側辺であって、少なくとも一部分が曲がっている1線を定め有していて、少なくとも1つの湾曲した部分と少なくとも1つの直線状部分とを有する第1の中低の側辺と、上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第2の中低の側辺であって、少なくとも一部分が曲がっている1線を定めており、少なくとも1つの湾曲した部分と少なくとも1つの直線状部分とを有する第2の中低の側辺とを有」することとは、「対向した第1及び第2の縁を有し、1線を定めている上辺と、上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第1の中低の側辺であって、少なくとも一部分が曲がっている1線を定め有していて、少なくとも1つの湾曲した部分を有する第1の中低の側辺と、上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第2の中低の側辺であって、少なくとも一部分が曲がっている1線を定めており、少なくとも1つの湾曲した部分を有する第2の中低の側辺とを有し」ている点で共通するものである。

また、引用文献1において「各断面の2つの辺12,13は、相互に鋭角αで交差しまた底辺8とは鋭角βで交差する」鋭角αと鋭角βは切開に用いられるものであることが自明であり、これらは、先を尖らせた部分4に設けられているのであるから、引用発明は、本願発明と同様に、「横方向の対向した第1の側辺の上の縁及び上面の対向した第1の縁が、第1の切開用エッジを形成するように共に伸び、更に横方向の対向した第2の側辺の上の縁及び上面の対向した第2の縁が、第2の切開用エッジを形成するように共に伸び、そして第1及び第2の側面の下の縁が、第3の切開用エッジを形成するように共に伸びている」ものであるといえる。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「切開用エッジを有する外科用針であって、
手元側端部部分と末端側端部部分とを有し、湾曲している細長い部材と、
該部材の末端側端部部分から伸びている刺通し用尖端と、
該部材の手元側端部部分における縫合糸取付け用手段とを具備し、
該部材の末端側端部部分の断面が、
対向した第1及び第2の縁を有し、1線を定めている上辺と、
上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第1の中低の側辺であって、少なくとも一部分が曲がっている1線を定め有していて、少なくとも1つの湾曲した部分を有する第1の中低の側辺と、
上の縁と下の縁とを有する横方向の対向した第2の中低の側辺であって、少なくとも一部分が曲がっている1線を定めており、少なくとも1つの湾曲した部分を有する第2の中低の側辺とを有し、
横方向の対向した第1の側辺の上の縁及び上面の対向した第1の縁が、第1の切開用エッジを形成するように共に伸び、更に横方向の対向した第2の側辺の上の縁及び上面の対向した第2の縁が、第2の切開用エッジを形成するように共に伸び、そして第1及び第2の側面の下の縁が、第3の切開用エッジを形成するように共に伸びている
外科用針。」

そして、両者は次の相違点で相違する。

(相違点1)
本願発明は、「第1の中低の側辺」が、「少なくとも1つの湾曲した部分と少なくとも1つの直線状部分とを有」し、「第2の中低の側辺」が、「少なくとも1つの湾曲した部分と少なくとも1つの直線状部分とを有」するのに対して、引用発明1は「第1の中低の側辺」と「第2の中低の側辺」が共に「1つの湾曲した部分」を有するものの直線状部分は有さないものである点。

V.相違点の判断
上記相違点について検討する。
引用発明2は、前記したとおり「外科用針にであって、直線で形成された下面16に対向した部分に、直線で形成された針壁面20a、20bに挟まれた角を設ける」ものである。

そして、各引用文献に記載された発明は同一の分野に属するものであり、異なった切開用エッジを組み合わせることも、引用文献1,2にも記載されているようによく知られていることであるから、引用発明1において、「各断面の2つの辺12,13」で形成された「鋭角α」に替えて、引用発明2の「直線で形成された下面16に対向した部分に、直線で形成された針壁面20a、20bに挟まれた角」を採用することは当業者にとって容易になし得る事であるし、そうすることによって、各側辺は「1つの湾曲した部分」と「1つの直線部分」とから構成されることになるから、引用発明1と引用発明2をを組み合わせて、相違点に係る本願の請求項1に係る発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易になし得る事である。

そして、本願の請求項1に係る発明による効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予想し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明1、及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1,及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-07 
結審通知日 2010-01-19 
審決日 2010-02-01 
出願番号 特願平9-44945
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史土田 嘉一宮部 愛子  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 岩田 洋一
豊永 茂弘
発明の名称 外科用針及び哺乳類動物の組織を隣接させる方法  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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