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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1219369 |
審判番号 | 不服2007-28314 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-17 |
確定日 | 2010-06-30 |
事件の表示 | 特願2001-363664「応募システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月13日出願公開、特開2003-167973〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年11月29日の出願であって、平成19年6月1日付けで拒絶理由通知がなされ、同年7月10日付けで手続補正がなされたが、同年9月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月14日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成19年11月14日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年11月14日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の請求項1に係る発明 本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 ユーザが有するユーザ端末と前記ユーザが紹介した被紹介者が有する被紹介者端末との間で機能し、ネットワークを介してデータの送受信が可能なコンピュータである応募システムであって、 前記コンピュータは、演算処理装置と記憶媒体とを有しており、 前記記憶媒体には、 前記ユーザからの応募情報、前記被紹介者からの応募情報、前記ユーザの電子メールアドレスを含むユーザに関する情報、前記被紹介者の電子メールアドレスを含む被紹介者に関する情報を格納している応募データベースを備え、 前記演算処理装置には、 前記ユーザ端末から前記ネットワークを介して応募を受付け、前記記憶媒体の前記応募データベースに前記ユーザの応募情報を格納する応募手段と、 前記ユーザ端末から前記被紹介者に関する情報を受信して前記記憶媒体の前記応募データベースに格納し、前記被紹介者端末に対して、前記被紹介者に関する情報における電子メールアドレスに基づいて前記懸賞、応募の案内を電子メールにより通知する紹介案内手段と、 前記懸賞、応募の案内に対する応募情報を前記被紹介者端末から受信して前記被紹介者の応募情報を、前記記憶媒体の前記応募データベースに格納する被紹介者応募手段と、 前記被紹介者応募手段が前記被紹介者端末から応募拒否の情報を受信した場合に、その応募拒否の情報を受信したことにより、前記記憶媒体の前記応募データベースに格納している前記被紹介者に関する情報を削除又は使用不能にする削除手段と、を備える、 ことを特徴とする応募システム。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1における「前記ユーザに関する情報、前記被紹介者に関する情報」を「前記ユーザの電子メールアドレスを含むユーザに関する情報、前記被紹介者の電子メールアドレスを含む被紹介者に関する情報」に限定し、「前記被紹介者端末に対して前記被紹介者に関する情報に基づいて前記懸賞、応募の案内を通知する紹介案内手段」を「前記被紹介者端末に対して、前記被紹介者に関する情報における電子メールアドレスに基づいて前記懸賞、応募の案内を電子メールにより通知する紹介案内手段」に限定し、「応募拒否の情報を受信した場合または予め定められた時間経過後に、」を「応募拒否の情報を受信した場合に、その応募拒否の情報を受信したことにより、」に限定するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-236409号公報(以下、「引用例1」という。)、「城井田勝仁,インターネット懸賞の基礎知識,当たる!ネット懸賞の法則 第1版,株式会社オーム社,2000年3月23日,p.8-17」(以下、「引用例2」という。)、特開2001-109821号公報(以下、「引用例3」という。)、原査定の備考欄において周知例として引用された特開2001-282469号公報(以下、「引用例4」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。 (引用例1) A.「【0009】本発明実施例の物理的構成は図1に示すものであり、発明の中核を成す会員制サービス提供システム3は、処理を司るサーバシステム4と会員データベース5と識別情報データベース6から構成され、ネットワーク2を介して既存会員パソコン1と未入会々員パソコン7とに接続されている。 【0010】ここで、既存会員パソコン1は、既存会員がネットワーク2を介して会員制サービス提供システム3に入会の紹介をする知人の情報を送信したり、会員制サービス提供システム3からネットワーク2を介して既存会員に紹介成功の報酬通知を受信するものである。 【0011】ネットワーク2は、インターネットや電子メールなどの回線であり、顧客である既存会員のパソコン1や未入会々員のパソコン7と会員制サービス提供システム3との相互の通信を可能とするものである。 【0012】会員制サービス提供システム3は、既存会員のパソコン1や未入会々員のパソコン7からネットワーク2を介して通知された紹介情報や入会申込み情報を受信したり、紹介情報をもとに識別情報を付与したり、未入会々員のパソコン7に入会勧誘電子メールを発信したりするものである。 【0013】サーバシステム4は、会員制サービス提供システム3の処理を司るコンピュータである。 【0014】会員データベース5は、会員の個人情報の集まりであり、会員のIDや名前、紹介成功件数などを記憶させて置くものである。 【0015】識別情報データベース6は、既存会員からの紹介情報に基づいて被紹介者毎に付与した識別情報に対し、紹介者ID、被紹介者の名前などを記憶させて置くものである。 【0016】未入会々員パソコン7は、会員制サービス提供システム3から入会の勧誘電子メールを受け取ったり、会員制サービス提供システム3に入会のための入会申込み情報を送信したりするものである。」 B.「【0023】次に、図3から図8を用い、図1および図2で示した構成要素と機能を具体的な動作で詳細に説明する。 【0024】図3は、会員制サービス提供システム3が既存会員のパソコン1から紹介情報を受信してから、未入会々員のパソコン7に対して入会勧誘メールを発信するまでの動作を説明するもので、S11において、会員制サービス提供システム3は、既存会員が例えば図5に示す紹介情報入力画面で入力した情報を受信する。本例での紹介情報は、 ・紹介者名 ・紹介者e-mailアドレス ・被紹介者名 ・被紹介者e-mailアドレス である。ここで、紹介者は既存会員であり、被紹介者は既存会員が入会を紹介しょうとする未入会々員である。図5に示す例では1回の紹介で複数人の紹介ができるようにしている。 【0025】紹介情報受信手段11は、S11の動作を行うものである。 【0026】S12において、会員制サービス提供システム3は発信者が会員であるかどうかを、紹介情報の発信者と例えば図9に示す会員データベース5とを照合して確認する。 【0027】会員認証手段12は、S12の動作を行うものである。 【0028】S13において、会員制サービス提供システム3はS11の紹介情報に基づいて被紹介者一名につき一つのユニークな識別情報を与えることを行う。 【0029】S14において、会員制サービス提供システム3は紹介者である会員IDと、S13で付与された識別情報と、紹介情報から得られた ・被紹介者名 ・被紹介者e-mailアドレス とを、例えば図10に示す識別情報データベース6に格納する。 【0030】識別情報付与手段13は、S13とS14の動作を行うものである。 【0031】S15において、会員制サービス提供システム3は被紹介者のe-mailアドレスに対し入会勧誘の電子メールを発信する。入会勧誘の電子メールには例えば図6のように、 ・紹介者名 ・紹介者e-mailアドレス ・識別情報 の情報を、入会勧誘文に折り込んで記載する。 【0032】勧誘メール発信手段14は、S15の動作を行うものである。」 上記A,Bの記載及び関連する図面を参照すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の発明」という。) 「紹介者の既存会員パソコンと紹介者が紹介した被紹介者の未入会々員パソコンの間で機能し、ネットワークを介して通信を行なう会員制サービス提供システムであって、 会員制サービス提供システムは、サーバシステムとデータベースとを有しており、 前記データベースは、 紹介者のe-mailアドレスを含む紹介者に関する情報を記憶する会員データベースと、 被紹介者e-mailアドレスを含む被紹介者に関する情報を記憶する識別情報データベースとを備え、 前記サーバシステムは、 既存会員パソコンから被紹介者に関する情報を受信する紹介情報受信手段と、 被紹介者に関する情報を識別情報データベースに格納する識別情報付与手段と、 被紹介者のe-mailアドレスに対し入会勧誘の電子メールを発信する勧誘メール発信手段とを備える 会員制サービス提供システム。」 (引用例2) C.「2.3 懸賞に応募する インターネット懸賞の応募は、懸賞の実施されているホームページで行います。そのページをブラウザソフトで表示して、専用のフォームなどを使って応募します。」(第16頁第18?20行) 上記Cにおける「インターネット懸賞の応募」とは、応募者がインターネットを介して懸賞に応募をすることであり、インターネットはネットワークである。 そして、「専用のフォームなど」は、図2.4を参照すると、名前やメールアドレス等の応募者に関する情報を入力ための項目を有する。 よって、上記Cの記載及び関連する図面を参照すると、引用例2には、次のシステムが記載されているものと認められる。(以下、「引用例2記載のシステム」という。) 「名前やメールアドレス等の応募者に関する情報を入力することにより、ネットワークを介して懸賞に応募可能なシステム。」 (引用例3) D.「【0031】この実施例においては、各ユーザ(加入者)は、その端末装置1-iから所定のインフォメーションプロバイダ(以下、適宜、サーバと称する)4-jにアクセスし、そこから商品、サービスなどの提供を受け、クレジットカード、銀行口座などからの自動的引き落としにより、その料金の支払いを行う。この場合、ユーザは、所定の課金プロクシ11の会員となるための入会手続きを事前に行っておく必要がある。この手続きは、所定の申し込み用紙に所定の事項を記入し、それを郵送するなどして行うようにすることも可能であるが、各端末装置1-iから電話回線を介して、あるいは必要に応じてインターネット3を介して課金プロクシ11にアクセスし、オンラインで、この入会手続きを行うようにすることもできる。図4と図5は、この場合におけるオンラインサインアップ処理を表している。 ・・・(中略)・・・ 【0043】ステップS14において、ユーザが約款に同意する旨を入力したとき、ステップS17に進み、氏名、そのふりがな、性別、生年月日、職業、現住所(都道府県)、現住所(都道府県以下の住所)、そのふりがな、郵便番号、電話番号、電話の種別(公衆回線またはISDN)、ファックス番号、使用通信環境などを入力させる。 ・・・(中略)・・・ 【0054】以上のようにして入力が行われると、ステップS48において、例えば「ご入会手続きありがとうございました。*日以内に入会審査の結果を郵送にてご連絡いたします。もし、お問い合わせ、ご質問等ございましたら、次の窓口までお願いいたします。」のようなメッセージを、端末装置1-iに表示させ、さらに、電話番号、電子メールアドレスなどを表示させる。そして、ステップS49において、回線切断処理を行い、ステップS50において、以上の処理により入力された事項を光磁気ディスク26に形成されている仮会員マスターに登録する。 【0055】そして、入会審査の結果、入会を承諾する場合においては、その旨をユーザに郵便で連絡するとともに、その登録情報を仮会員マスターから会員マスターに転送し、記憶させる。また、入会員審査の結果、何らかの理由により、入会を許可するすることができない場合においては、郵便で、その旨をユーザに連絡するとともに、仮会員マスターにおける登録を消去する。」 上記Dの段落【0043】における「氏名、そのふりがな、性別、生年月日、職業、現住所(都道府県)、現住所(都道府県以下の住所)、そのふりがな、郵便番号、電話番号、電話の種別(公衆回線またはISDN)、ファックス番号、使用通信環境など」は、ユーザに関する情報ということができる。 よって、上記Dの記載及び関連する図面を参照すると、引用例3には、次の事項が記載されているものと認められる。(以下、「引用例3記載の事項」という。) 「入力されたユーザに関する情報を仮会員マスターに登録し、入会を許可することができない場合は仮会員マスターにおける登録を消去すること。」 (引用例4) E.「【0216】また、ポータルサイトコンピュータ2は、利用規約の印刷催促処理や同意催促処理により、仮登録後の一定期間(30日以上)利用規約を未印刷の仮登録ユーザや未同意の仮登録ユーザに対して、登録を削除する旨の電子メールを送信して会員登録情報を削除するようにした。」 上記Eの記載を参照すると、引用例4には、次の事項が記載されているものと認められる。(以下、「引用例4記載の事項」という。) 「仮登録後の一定期間に利用規約に同意しないユーザの会員登録情報を削除すること。」 (3)対比 本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。 (あ)引用例1記載の発明における「紹介者」、「紹介者の既存会員パソコン」、「被紹介者の未入会々員パソコン」、「サーバシステム」及び「e-mailアドレス」は、本願補正発明における「ユーザ」、「ユーザが有するユーザ端末」、「被紹介者が有する被紹介者端末」、「演算処理装置」及び「電子メールアドレス」に相当する。 (い)引用例1記載の発明における「会員制サービス提供システム」は、情報を記憶するデータベースと、処理を司るサーバシステムとを備えるものであるから、一種のコンピュータである。 よって、引用例1記載の発明における「会員制サービス提供システム」と、本願補正発明における「コンピュータである応募システム」は、ともに、「コンピュータであるシステム」である点で共通するものである。 (う)引用例1記載の発明における「会員データベース」及び「識別情報データベース」とからなる「データベース」と、本願補正発明における「記憶媒体」とは、ともに、情報を記憶する手段であるから、「記憶手段」である点で共通するものである。 また、引用例1記載の発明における「会員データベース」及び「識別情報データベース」と、本願補正発明における「応募データベース」とは、ともに、「電子メールアドレスを含む情報を格納しているデータベース」である点で共通するものである。 (え)引用例1記載の発明における「入会勧誘の電子メールを発信する」ことと、本願補正発明における「懸賞、応募の案内を電子メールにより通知する」こととは、「勧誘の知らせを電子メールにより通知する」点で共通するものである。 よって、引用例1記載の発明における「紹介情報受信手段」、「識別情報付与手段」及び「勧誘メール発信手段」と、本願補正発明における「紹介案内手段」とは、ともに、「ユーザ端末から被紹介者に関する情報を受信して、データベースに格納し、被紹介者端末に対して、被紹介者に関する情報における電子メールアドレスに基づいて、勧誘の知らせを電子メールにより通知する手段」である点で共通するものである。 上記(あ)?(え)の事項を踏まえると、本願補正発明と引用例1記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。 (一致点) 本願補正発明と引用例1記載の発明とは、ともに、 「ユーザが有するユーザ端末と前記ユーザが紹介した被紹介者が有する被紹介者端末との間で機能し、ネットワークを介してデータの送受信が可能なコンピュータであるシステムであって、 前記コンピュータは、演算処理装置と記憶手段とを有しており、 前記記憶手段には、 電子メールアドレスを含む情報を格納しているデータベースを備え、 前記演算処理装置には、 前記ユーザ端末から前記被紹介者に関する情報を受信して、前記データベースに格納し、前記被紹介者端末に対して、前記被紹介者に関する情報における電子メールアドレスに基づいて、勧誘の知らせを電子メールにより通知する手段を備える システム。」 である点。 (相違点) 相違点1:「電子メールアドレスを含む情報を格納しているデータベース」が、本願補正発明においては「ユーザの電子メールアドレスを含むユーザに関する情報」及び「被紹介者の電子メールアドレスを含む被紹介者に関する情報」を格納しているデータベースであるのに対し、引用例1記載の発明においては「紹介者のe-mailアドレスを含む紹介者に関する情報を記憶する会員データベース」と「被紹介者e-mailアドレスを含む被紹介者に関する情報を記憶する識別情報データベース」の二つのデータベースである点。 相違点2:本願補正発明は、「応募システム」であり、「応募データベース」に、「ユーザからの応募情報」と「被紹介者からの応募情報」を格納し、「ユーザ端末からネットワークを介して応募を受付け、記憶媒体の応募データベースにユーザの応募情報を格納する応募手段」と「懸賞、応募の案内に対する応募情報を被紹介者端末から受信して被紹介者の応募情報を、記憶媒体の応募データベースに格納する被紹介者応募手段」とを有し、「勧誘の知らせを電子メールにより通知する」ことが、「懸賞、応募の案内を電子メールにより通知する」ことであるのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。 相違点3:本願補正発明は、「被紹介者応募手段が被紹介者端末から応募拒否の情報を受信した場合に、その応募拒否の情報を受信したことにより、記憶媒体の応募データベースに格納している被紹介者に関する情報を削除又は使用不能にする削除手段」を有しているのに対し、引用例1記載の発明は、そのようなものではない点。 (4)判断 そこで、上記相違点1?3について検討する。 (相違点1について) 一般に、データベースを構築する際、複数のデータベースに情報を分けて記憶させるか、あるいは、一つのデータベースに情報をまとめて記憶させるかは、当業者が必要に応じて適宜に設計できる事項にすぎない。 よって、引用例1記載の発明において、「ユーザの電子メールアドレスを含むユーザに関する情報」と「被紹介者の電子メールアドレスを含む被紹介者に関する情報」を格納しているデータベースを備えるようにすることは、当業者が適宜になし得ることである。 (相違点2について) 上記引用例2記載のシステムに見られるように、名前やメールアドレス等の応募者に関する情報を入力することにより、ネットワークを介して懸賞に応募可能なシステムは、周知である。そして、上記引用例2記載のシステムは応募するためのシステムであることから、応募者からの応募情報を格納する手段を有していることは明らかである。 一方、コンピュータソフトウェアを利用する技術分野においては、ある用途のシステムに使用されている方法、手段等を別の用途のシステムに適用することは、普通に試みられていることである。 してみれば、引用例1記載の発明を上記引用例2記載のシステムに適用することにより、引用例1記載の発明において、「勧誘の知らせ」を「懸賞、応募の案内」とし、「応募データベース」に、「ユーザからの応募情報」と「被紹介者からの応募情報」を格納し、「ユーザ端末からネットワークを介して応募を受付け、記憶媒体の応募データベースにユーザの応募情報を格納する応募手段」と「懸賞、応募の案内に対する応募情報を被紹介者端末から受信して被紹介者の応募情報を、記憶媒体の応募データベースに格納する被紹介者応募手段」とを演算処理装置に備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (相違点3について) 上記引用例3,4記載の事項に見られるように、システムを使用しないユーザに関する情報を削除することは、ごく普通に行なわれていることである。 また、そのような情報の削除をユーザからシステムに対して、該システムを使用しない旨の通知を行なうことにより行なうことも、以下に例示するように、周知技術にすぎない。 例えば、特開2001-306785号公報の段落【0125】?【0128】には、脱会したい消費者が、端末のHP上のメニュー画面を操作することにより、消費者に関する会員データの削除を行なう技術が記載されている。 また、「深町賢一著,fmlバイブル,初版,株式会社オライリー・ジャパン,2001年1月30日,pp.100,133-135,159,448」には、MLから抜けたい人が、MLに登録されているアドレスからunsubscribeコマンドを送ることにより、削除処理を行なうことができる技術が記載されている。 一方、引用例1記載の発明ないしはそれを引用例2記載のシステムに適用したものにおいても、勧誘を受けない被紹介者、すなわちシステムを使用しないユーザに関する情報は不要であり、それを削除する手段を設けることが望ましいこと、さらには、その削除する手段は、被紹介者が勧誘を受けないと判断された場合に削除できるものであれば、どのようなものでもよいことは、当業者に自明である。 してみれば、引用例1記載の発明において、上記引用例3,4記載の事項及び上記周知技術に示される知見に基づき、「被紹介者応募手段が被紹介者端末から応募拒否の情報を受信した場合に、その応募拒否の情報を受信したことにより、記憶媒体の応募データベースに格納している被紹介者に関する情報を削除又は使用不能にする削除手段」を備えることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (本願補正発明の作用効果について) そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の発明、引用例2記載のシステム、引用例3,4記載の事項及び周知技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載のシステム、引用例3,4記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび よって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.補正却下の決定を踏まえた検討 (1)本願発明 平成19年11月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年7月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項1】 ユーザが有するユーザ端末と前記ユーザが紹介した被紹介者が有する被紹介者端末との間で機能し、ネットワークを介してデータの送受信が可能なコンピュータである応募システムであって、 前記コンピュータは、演算処理装置と記憶媒体とを有しており、 前記記憶媒体には、 前記ユーザからの応募情報、前記被紹介者からの応募情報、前記ユーザに関する情報、前記被紹介者に関する情報を格納している応募データベースを備え、 前記演算処理装置には、 前記ユーザ端末から前記ネットワークを介して応募を受付け、前記記憶媒体の前記応募データベースに前記ユーザの応募情報を格納する応募手段と、 前記ユーザ端末から前記被紹介者に関する情報を受信して前記記憶媒体の前記応募データベースに格納し、前記被紹介者端末に対して前記被紹介者に関する情報に基づいて前記懸賞、応募の案内を通知する紹介案内手段と、 前記懸賞、応募の案内に対する応募情報を前記被紹介者端末から受信して前記被紹介者の応募情報を、前記記憶媒体の前記応募データベースに格納する被紹介者応募手段と、 前記被紹介者応募手段が前記被紹介者端末から応募拒否の情報を受信した場合または予め定められた時間経過後に、前記記憶媒体の前記応募データベースに格納している前記被紹介者に関する情報を削除又は使用不能にする削除手段と、を備える、 ことを特徴とする応募システム。」 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?3、及び原査定の備考欄において周知例として引用された引用例4とその記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「ユーザに関する情報」について、「ユーザの電子メールアドレスを含む」との限定を省き、「被紹介者に関する情報」について、「被紹介者の電子メールアドレスを含む」との限定を省き、「紹介案内手段」について、「被紹介者に関する情報における電子メールアドレスに基づいて電子メールにより通知する」との限定を省き、「削除手段」について、「応募拒否の情報を受信した場合」のみとした限定を「応募拒否の情報を受信した場合または予め定められた時間経過後に」と択一的な構成としたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例1記載の発明、引用例2記載のシステム、引用例3,4記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定、特に、「削除手段」について、「応募拒否の情報を受信した場合」のみとした限定を省いた本願発明は、上記周知技術を用いるまでもなく、引用例1記載の発明、引用例2記載のシステム及び引用例3,4記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載のシステム及び引用例3,4記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-19 |
結審通知日 | 2010-04-27 |
審決日 | 2010-05-10 |
出願番号 | 特願2001-363664(P2001-363664) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 美樹 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
久保 正典 小曳 満昭 |
発明の名称 | 応募システム |
代理人 | 生田 哲郎 |
代理人 | 吉浦 洋一 |