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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1219398
審判番号 不服2009-11566  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-24 
確定日 2010-06-30 
事件の表示 特願2002-345607「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-174055〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年11月28日の出願であって、平成21年4月7日付け(4月17日発送)で拒絶査定され、これに対し、同年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成21年6月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年6月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成21年6月24日付けの手続補正書により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
遊技者による遊技操作に応じて図柄の表示態様を変動および停止させ、その停止時に所定の表示態様になると遊技者に特典を付与する遊技機において、
周面に図柄が付された無端状の表示ベルトを有し、この表示ベルトを周方向に走行させて図柄の表示態様を変動可能な図柄表示部と、
前記図柄表示部に設けられ、前記表示ベルトに走行力を与える回転体と、
前記回転体を駆動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータに供給するべき電流を一定にすることで、その回転動作を定電流制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、遊技場に設置された業務用電源から電源装置を介して生成されるとともに前記ステッピングモータの定格電圧の約10倍の電圧であるDC24Vの電源を用いて前記ステッピングモータを駆動することを特徴とする遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成20年10月10日付け手続補正書による補正)の請求項1における、「ステッピングモータの定格電圧よりも遙かに高い電圧であるDC24Vの電源」の記載を「ステッピングモータの定格電圧の約10倍の電圧であるDC24Vの電源」と変更することで、ステッピングモータの定格電圧を限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献として引用された特開平11-262558号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0003】 図1はパチンコ機1の正面図であって、その遊技盤2のほぼ中央に複数(図示の場合3列)の図柄表示部4により構成された回転図柄表示装置3が配設されている。図2は回転図柄表示装置3を遊技盤2に取付けた状態を示す側断面図であって、各図柄表示部4にはステッピングモータ8に直結された駆動プーリ9、テンションプーリ10及びアイドルプーリ11が所定の位置に取着され、これらの外周に弛みなく接して図柄表示体としての図柄表示ベルト5がステッピングモータ8の駆動により回動可能に装着されている。また、図柄表示ベルト5を挟んで図柄位置検出用フォトセンサ12及び13が装着されている。図柄表示ベルト5は図3に示すように、透光性フィルムをループ状に形成し、外周面に複数の図柄が描かれたものであって、各図柄に対応してマーク14が設けられ、されに特定の一箇所には、前記フォトセンサ12,13を同時に遮光できる長さのホームポジションマーク14aが設けられている。」

(イ)「【0011】 次に、本発明に係る上記構成のステッピングモータ駆動制御回路の動作について説明する。トランジスタTR1がオフの時、モータコイルL1には電流が流れていないので、電流検出抵抗R8にフィードバック電圧VFは生起せず、基準電圧VRよりも当然に低いのでコンパレータIC1の出力レベルはハイレベルを維持し、トランジスタTR6,TR5はオンになっている。この状態で相励磁信号φ1によりトランジスタTR1がオンになるとモータコイルL1に電流が流れ、同時にフィードバック電圧VFが生起し上昇する。このフィードバック電圧VFが基準電圧VRよりも高くなった時、コンパレータIC1の出力レベルは反転しローレベルになる。よってトランジスタTR6,TR5はオフになり、モータ駆動電圧VMの供給が遮断される。その瞬間にモータコイルL1に逆起電力が発生し、循環電流IFがフライホイールダイオードD1を通じて流れ、電流を維持しようとする。モータコイルL1に蓄積されたエネルギーの減少に伴い、除々に循環電流IFが減少し、フィードバック電圧VFが下降して基準電圧VRより低くなった時、コンパレータIC1の出力がハイレベルに転換し、トランジスタTR6,TR5がオンになる。再びモータコイルL1にモータ駆動電圧VMが供給され、フィードバック電圧VFが基準電圧VRと等しくなるまでコイル電流を増加させる。この動作を繰り返し、モータコイルL1に流れる電流は基準電圧VRの設定値に応じた一定の電流値に維持されることになる。」

(ウ) 「【0014】 図7は、基準電圧VRを例えばVR1(高)又はVR2(低)に設定されている場合のモータコイルに流れる電流波形を図示したもので、各々一定の電流値に制御されている状態を示す。ここで、電流波形が鋸歯状に制御されているのは、図6に示すように、コンパレータIC1にR7を付加してヒステリシス特性を持たせ、基準電圧VRをヒステリシス分変化させてコンパレータIC1のオン/オフに一定の時間差を与えることにより、基準電圧VRの中心値近傍でコンパレータIC1がオン/オフを頻繁に繰り返して発振状態に陥ることを防止するためである。」

(エ)「【0015】 上述の実施状態は、パチンコ機の回転ベルト方式による回転図柄表示装置について説明したが、同様に回転ドラム方式の回転図柄表示装置、或いは、スロットマシン等の遊技機にも適用可能であることはいうまでもない。」

上記(ア)には、ステッピングモータ8に直結された駆動プーリ9、テンションプーリ10及びアイドルプーリ11に弛みなく接することによって回動される外周面に複数の図柄が描かれたループ状の図柄表示ベルト5を備えた回転図柄表示装置3を有するパチンコ遊技機が記載されている

上記(イ)、(ウ)には、ステッピングモータ駆動制御回路が、ステッピングモータ8を一定の電流値で駆動する点が記載されている。

上記(エ)には、スロットマシンにおいても(上記(ア)?(ウ)に記載した事項が)適用可能である点が記載されている。

以上、上記(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)の記載、および図面を総合すると、引用例1には、
「外周面に図柄が描かれたループ状の図柄表示ベルト5を有し、この図柄表示ベルト5を回動可能とした回転図柄表示装置3と、
前記図柄表示ベルト5が弛みなく接する駆動プーリ9、テンションプーリ10及びアイドルプーリ11と、
前記駆動プーリ9に直結されたステッピングモータ8と、
前記ステッピングモータ8のモータコイルL1に流れる電流を一定の電流値に維持するステッピングモータ駆動制御回路を備えたスロットマシン」
の発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明」という。)

(3)対比
引用発明の「外周面に図柄が描かれたループ状の図柄表示ベルト5」は、本願補正発明の「周面に図柄が付された無端状の表示ベルト」に相当する。
以下同様に、「回転図柄表示装置3」は、「図柄表示部」に、
「図柄表示ベルト5が弛みなく接する駆動プーリ9、テンションプーリ10及びアイドルプーリ11」は、「表示ベルトに走行力を与える回転体」に、「スロットマシン」は、「遊技機」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「ステッピングモータ駆動制御回路」は、ステッピングモータ8のモータコイルL1に流れる電流を一定の電流値に維持していることから、本願補正発明の「(定電流制御する)制御部」に相当することは、明らかである。
さらに、引用文献にはパチンコ遊技機としての実施の形態が明細書及び図面に記載されているが、上記(エ)にもあるように、スロットマシンへの適用についても言及されており、スロットマシンへ適用した場合、スロットマシンとしての基本構成である「遊技者による遊技操作に応じて図柄の表示態様を変動および停止させ、その停止時に所定の表示態様になると遊技者に特典を付与」する構成を備えることは自明であるから、引用発明においても同様の構成を備えているものと認められる。

以上のことから、両者は、
〈一致点〉
「遊技者による遊技操作に応じて図柄の表示態様を変動および停止させ、その停止時に所定の表示態様になると遊技者に特典を付与する遊技機において、
周面に図柄が付された無端状の表示ベルトを有し、この表示ベルトを周方向に走行させて図柄の表示態様を変動可能な図柄表示部と、
前記図柄表示部に設けられ、前記表示ベルトに走行力を与える回転体と、
前記回転体を駆動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータに供給するべき電流を一定にすることで、その回転動作を定電流制御する制御部と
を具備する遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〈相違点1〉
制御部がステッピングモータを駆動するために用いる電源として、本願補正発明では「遊技場に設置された業務用電源から電源装置を介して生成される」のに対して、引用発明では電源に関して不明である点。
〈相違点2〉
制御部がステッピングモータを駆動するために用いる電源として、本願補正発明では「ステッピングモータの定格電圧の約10倍の電圧であるDC24Vの電源」であるのに対して、引用発明ではどのような電源を用いてステッピングモータを駆動しているのか不明である点。

(4)判断
〈相違点1〉について
遊技機の技術分野において、遊技機で使用する電源を「遊技場に設置された業務用電源から電源装置を介して生成する」ことは、きわめて普通に行われている周知技術(以下、「周知技術1」という。)であるから、引用発明に周知技術1を用いて、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得る程度の設計的事項である。
周知技術1として必要であれば、以下の文献を参照されたい。
・特開2001-218896号公報(【0048】)
・特開2000-325647号公報(【0040】)
・特開2000-312771号公報(【0048】-【0050】)

〈相違点2〉について
相違点2を検討するにあたり、「ステッピングモータの定格電圧の約10倍の電圧」を用いる点と、「DC24Vの電源」を用いる点の2点に分けて検討する。
まず、「ステッピングモータの定格電圧の約10倍の電圧」であるが、ステッピングモータの駆動にあたり、定格電圧より高い電圧を用いることは、ステッピングモータの駆動制御の技術分野において周知技術(以下、「周知技術2」という。)である
周知技術2として必要であれば、以下の文献を参照されたい。
・特開2001-258292号公報(【0003】-【0006】)
・特開平11-150990号公報(【0002】-【0006】)
・実願昭63-55202号(実開平1-159887号公報)のマイクロフィルム(明細書2頁8行-3頁16行)
さらに、「約10倍の電圧」については、本願の明細書および図面を参照しても、ステッピングモータの定格電圧である2.4Vと、その10倍の24Vとの比較例が記載されているにとどまり、「約10倍」という数値限定に基づく臨界的効果は何ら記載されておらず、明細書等において記載された効果も、周知技術2で一般的に知られている効果と同様のものにすぎないから、「約10倍」という限定に関して、格別の技術的意義を認めることはできない。
なお、周知技術2を示す上記文献のうち特開2001-258292号公報には、「(ステッピング)モータ定格電圧の10倍から20倍の高い電圧をコイルに加える(【0006】)」と、その数値限定も含めて記載されている。
次に、「DC24Vの電源」であるが、遊技機の技術分野において、「DC24V」は、きわめて普通に用いられる周知の電源電圧であって(以下、「周知技術3」という。)、周知技術1を示す文献として例示した3つの文献は、いずれも電源装置において24Vの直流電源を生成して遊技機内の必要箇所に供給しているものである。
そして、本願の明細書および図面を参照しても、「DC24V」という限定に基づく臨界的効果は何ら記載されておらず、「DC24V」という限定に関して、格別の技術的意義を認めることはできない。
よって、引用発明に周知技術2及び3を用いて、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得る程度の設計的事項である。

以上のように、本願補正発明は、引用発明および周知技術1-3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本願補正発明についてのまとめ
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明及び引用文献に記載された発明
平成21年6月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成20年10月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項1】
遊技者による遊技操作に応じて図柄の表示態様を変動および停止させ、その停止時に所定の表示態様になると遊技者に特典を付与する遊技機において、
周面に図柄が付された無端状の表示ベルトを有し、この表示ベルトを周方向に走行させて図柄の表示態様を変動可能な図柄表示部と、
前記図柄表示部に設けられ、前記表示ベルトに走行力を与える回転体と、
前記回転体を駆動するステッピングモータと、
前記ステッピングモータに供給するべき電流を一定にすることで、その回転動作を定電流制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、遊技場に設置された業務用電源から電源装置を介して生成されるとともに前記ステッピングモータの定格電圧よりも遙かに高い電圧であるDC24Vの電源を用いて前記ステッピングモータを駆動することを特徴とする遊技機。」 (この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-262558号公報(引用例)に記載された発明は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は 前記2.で検討した本願補正発明から「ステッピングモータの定格電圧の約10倍」という技術事項を除いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明および周知技術1-3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術1-3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-06 
結審通知日 2010-05-07 
審決日 2010-05-19 
出願番号 特願2002-345607(P2002-345607)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎赤坂 祐樹  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 吉村 尚
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人アイ・ピー・エス  

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