ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q |
---|---|
管理番号 | 1219589 |
審判番号 | 不服2008-21120 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-18 |
確定日 | 2010-07-05 |
事件の表示 | 特願2003-188142「サービス提供システム、端末装置および通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日出願公開、特開2005- 25337〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件出願は、平成15年 6月30日の特許出願であって、平成19年 8月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年10月22日付けで手続補正書が提出されたが、平成20年 1月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して同年 3月17日付けで手続補正書が提出されたが、当該手続補正書については同年 7月11日付けで補正の却下の決定がなされると共に、同日付けで拒絶査定され、これに対して同年 8月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に、同年 9月17日付けで手続補正書が提出され、平成21年11月10日付けで審尋が通知され、これに対して平成22年 1月12日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成20年 9月17日付けでした手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年 9月17日付けでした手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容について 平成19年10月22日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲は、平成20年 9月17日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)により、以下のとおり補正された。 <<本件補正前の特許請求の範囲>> 「 【請求項1】 非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶するユーザ認証装置と、非接触ICカードとの通信手段を備える端末機器と、前記端末機器にサービスを提供するサービス提供装置とから成るサービス提供システムにおいて、 前記端末機器は、 前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信する受信手段と、 パスワードを入力する入力手段と、 前記受信手段により受信した前記カードIDおよび前記入力手段により入力された入力パスワードを前記ユーザ認証装置に送信する送信手段と、 前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段を備え、 ユーザ認証装置は、 前記端末機器から受信した前記カードIDに対応付けられた前記登録パスワードと、受信した前記入力パスワードとが一致したか否かを判定する判定手段と、 前記判定の結果および前記カードIDに対応付けられて記憶されたユーザ情報を前記サービス提供装置へ送信する手段を備え、 前記サービス提供装置は、 前記判定の結果および前記ユーザ情報を受信する手段と、 前記ユーザ情報と前記サービスを対応付けて管理する管理手段と、 前記判定の結果に基づいて、前記ユーザ情報と対応付けられた前記サービスを前記端末機器に提供するサービス提供手段を備える ことを特徴とするサービス提供システム。 【請求項2】 前記ユーザ認証装置と前記サービス提供装置が1つの装置として構成される 請求項1に記載のサービス提供システム。 【請求項3】 非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶するユーザ認証装置と、非接触ICカードとの通信手段を備える端末機器と、前記端末機器にサービスを提供するサービス提供装置とから成るサービス提供システムの端末機器であって、 前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信する受信手段と、 パスワードを入力する入力手段と、 前記受信手段により受信した前記カードIDおよび前記入力手段により入力された入力パスワードを前記ユーザ認証装置に送信する送信手段と、 前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段を備える ことを特徴とする端末機器。 【請求項4】 前記サービス提供システムの前記ユーザ認証装置と前記サービス提供装置が1つの装置として構成される 請求項3に記載の端末機器。 【請求項5】 非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶するユーザ認証装置と、非接触ICカードとの通信手段を備える端末機器と、前記端末機器にサービスを提供するサービス提供装置とから成るサービス提供システムの端末機器の通信方法であって、 受信手段により、前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信し、 入力手段により、パスワードの入力を受け付け、 送信手段により、前記受信手段により受信した前記カードIDおよび前記入力手段により入力された入力パスワードを前記ユーザ認証装置に送信し、 提供手段により、前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段を備える ことを特徴とする通信方法。」 なお、本件補正前の特許請求の範囲には、「端末装置」なる記載が認められるが、これは「端末機器」の誤記であるものと認められるから、本件補正前の特許請求の範囲を上記のとおり認定した。 <<本件補正後の特許請求の範囲>> 「 【請求項1】 非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶するユーザ認証装置と、非接触ICカードとの通信手段を備える端末機器と、前記端末機器に提供する複数のサービスを管理するとともに、前記端末機器に前記サービスを提供するサービス提供装置とから成るサービス提供システムにおいて、 前記端末機器は、 前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信する受信手段と、 パスワードを入力する入力手段と、 前記受信手段により受信した前記カードIDおよび前記入力手段により入力された入力パスワードを前記ユーザ認証装置に送信する送信手段と、 前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段を備え、 ユーザ認証装置は、 前記端末機器から受信した前記カードIDに対応付けられた前記登録パスワードと、受信した前記入力パスワードとが一致したか否かを判定する判定手段と、 前記判定の結果および前記カードIDに対応付けられて記憶されたユーザ情報を前記サービス提供装置へ送信する手段を備え、 前記サービス提供装置は、 前記判定の結果および前記ユーザ情報を受信する手段と、 前記ユーザ情報と前記サービスを対応付けて管理する管理手段と、 前記判定の結果に基づいて、該サービス提供装置が管理する前記複数のサービスのうち、前記ユーザ情報と対応付けられた前記サービスを前記端末機器に提供するサービス提供手段を備える ことを特徴とするサービス提供システム。 【請求項2】 前記ユーザ認証装置と前記サービス提供装置が1つの装置として構成される 請求項1に記載のサービス提供システム。 【請求項3】 非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶するユーザ認証装置と、非接触ICカードとの通信手段を備える端末機器と、前記端末機器に提供する複数のサービスを管理するとともに、前記端末機器に前記サービスを提供するサービス提供装置とから成るサービス提供システムの端末機器であって、 前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信する受信手段と、 パスワードを入力する入力手段と、 前記受信手段により受信した前記カードIDおよび前記入力手段により入力された入力パスワードを前記ユーザ認証装置に送信する送信手段と、 前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段を備える ことを特徴とする端末機器。 【請求項4】 前記サービス提供システムの前記ユーザ認証装置と前記サービス提供装置が1つの装置として構成される 請求項3に記載の端末機器。 【請求項5】 非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶するユーザ認証装置と、非接触ICカードとの通信手段を備える端末機器と 、前記端末機器に提供する複数のサービスを管理するとともに、前記端末機器に前記サービスを提供するサービス提供装置とから成るサービス提供システムの端末機器の通信方法であって、 受信手段により、前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信し、 入力手段により、パスワードの入力を受け付け、 送信手段により、前記受信手段により受信した前記カードIDおよび前記入力手段により入力された入力パスワードを前記ユーザ認証装置に送信し、 提供手段により、前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段を備える ことを特徴とする通信方法。」 なお、本件補正後の特許請求の範囲には、「端末装置」なる記載が認められるが、これは「端末機器」の誤記であるものと認められるから、本件補正後の特許請求の範囲を上記のとおり認定した。 (2)本件補正前後の各請求項の対応関係について 本件補正前の請求項1乃至2に係る発明は、「サービス提供システム」に係る発明であり、本件補正前の請求項3乃至4に係る発明は、「端末機器」に係る発明であり、本件補正前の請求項5に係る発明は、「通信方法」に係る発明であり、一方、本件補正後の請求項1乃至2に係る発明は、「サービス提供システム」に係る発明であり、本件補正後の請求項3乃至4に係る発明は、「端末機器」に係る発明であり、本件補正後の請求項5に係る発明は、「通信方法」に係る発明であるから、本件補正前後の各請求項の記載を対比して検討すると、本件補正前の請求項1乃至2の「サービス提供システム」に係る発明は、本件補正後の請求項1乃至2の「サービス提供システム」に係る発明に対応するものであり、本件補正前の請求項3乃至4の「端末機器」に係る発明は、本件補正後の請求項3乃至4の「端末機器」に係る発明に対応するものであり、本件補正前の請求項5の「通信方法」に係る発明は、本件補正後の請求項5の「通信方法」に対応するものである。 (3)補正の目的 本件補正後の請求項3に係る発明の「提供する複数のサービス」は、本件補正前の請求項3に係る発明の「サービス」の個数を複数に限定したものであり、当該限定によってもなお、本件補正前後の請求項3に係る発明は、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるといえる。 また、本件補正後の請求項3に係る発明の「管理する」は、本件補正前の請求項3に係る発明の「前記端末機器にサービスを提供するサービス提供装置」において、サービスを提供するサービス提供装置が、当該サービスを提供するために当然行うべき、当該サービスを管理するという処理を明示したものにすぎないから、当該「提供する」との処理を実質的に限定したものではない。 したがって、平成20年 9月17日付けの上記手続補正により補正された本願の請求項3に係る発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (4)独立特許要件 本件補正後の請求項3に係る発明は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものであるから、本件補正後の請求項3に係る発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。 (4-1)本願補正発明 本願の請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成20年 9月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される上記したとおりのものである。 (4-2)引用文献に記載の発明 (引用文献1) 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-16039号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の内容が記載されている。 (1a)「【0002】 【従来の技術】従来のシステムやサービスにおいて、ユーザごとにID(IDentification)およびパスワードが設定され、ユーザがそのシステムやサービスを利用する場合、ユーザ固有のIDおよびパスワードにより、ユーザの認証が行われる。 【0003】図1は、従来のユーザ認証システムの構成例を示す図である。 【0004】サービス事業者10は、サービスを提供するサービス提供サーバ11、サービスを要求するユーザの認証に関する処理を行う専用認証サーバ12、および、IDおよびパスワード等を含む顧客情報を蓄積している顧客情報データベース13を有しており、それらはネットワーク2を介して端末装置1と接続されている。 【0005】端末装置1は、ユーザの指示により、ユーザの認証を行うために、ネットワーク2を介して、ユーザのIDおよびパスワードをサービス事業者10の専用認証サーバ12に送信する。専用認証サーバ12は、IDおよびパスワードを受信すると、顧客情報データベース13に蓄積されたIDおよびパスワードと照合し、ユーザがサービスを利用可能か否かを判定する。ユーザがサービスを利用可能な場合、専用認証サーバ12はサービス提供サーバ11にサービスの提供を指示する。 【0006】以上のように、ユーザの認証が行われる。」 したがって、上記摘記事項(1a)を参酌すると、引用文献1には、以下の構成が記載されているといえる。 (ア)上記摘記事項(1a)の「【0003】図1は、従来のユーザ認証システムの構成例を示す図である。【0004】サービス事業者10は、サービスを提供するサービス提供サーバ11、サービスを要求するユーザの認証に関する処理を行う専用認証サーバ12、および、IDおよびパスワード等を含む顧客情報を蓄積している顧客情報データベース13を有しており、それらはネットワーク2を介して端末装置1と接続されている。」の記載によれば、当該「ユーザ認証システム」は、当該「ID」及び当該「パスワード」を「蓄積」する「顧客情報データベース」を用いて「ユーザの認証に関する処理」を行う当該「専用認証サーバ」と、当該「端末装置」と、当該「端末装置」に当該「サービスを提供するサービス提供サーバ」とから成るものと解することができる。 そして、上記摘記事項(1a)の「【0002】【従来の技術】従来のシステムやサービスにおいて、ユーザごとにID(IDentification)およびパスワードが設定され、ユーザがそのシステムやサービスを利用する場合、ユーザ固有のIDおよびパスワードにより、ユーザの認証が行われる。」の記載によれば、上記「ID」とは、当該「ユーザ固有のID」を指し示すものであり、当該「ユーザ固有のID」と対応づけられているものと解することができる。 したがって、上記摘記事項(1a)によれば、引用文献1には、「ユーザ固有のIDと対応づけて、パスワードを蓄積する顧客情報データベースを用いて、ユーザの認証に関する処理を行う専用認証サーバと、端末装置と、前記端末装置に提供するサービスを提供するサービス提供サーバとから成るユーザ認証システムの端末装置」が記載されているといえる。 (イ)上記摘記事項(1a)の「【0005】端末装置1は、ユーザの指示により、ユーザの認証を行うために、ネットワーク2を介して、ユーザのIDおよびパスワードをサービス事業者10の専用認証サーバ12に送信する。専用認証サーバ12は、IDおよびパスワードを受信すると、顧客情報データベース13に蓄積されたIDおよびパスワードと照合し、ユーザがサービスを利用可能か否かを判定する。ユーザがサービスを利用可能な場合、専用認証サーバ12はサービス提供サーバ11にサービスの提供を指示する。」の記載によれば、上記(ア)の「端末装置」は、上記(ア)の「ユーザ固有のID」である当該「ユーザのID」及び当該「パスワード」を当該「専用認証サーバ」に「送信」する手段を備えるものと解することができる。 したがって、上記(ア)及び上記摘記事項(1a)によれば、引用文献1には、「上記端末装置が、前記ユーザ固有のID及び前記パスワードを前記専用認証サーバに送信する手段を備える」ことが記載されているといえる。 (ウ)上記摘記事項(1a)の「【0005】・・・(中略)・・・ユーザがサービスを利用可能な場合、専用認証サーバ12はサービス提供サーバ11にサービスの提供を指示する。」の記載によれば、上記(ア)の「端末装置」は、当該「サービス提供サーバ」から「提供」された当該「サービス」を当該「ユーザ」に提供する手段を備えるものと解することができる。 したがって、上記(ア)及び上記摘記事項(1a)によれば、引用文献1には、「上記端末装置が、前記サービス提供サーバから提供された前記サービスをユーザに提供する手段を備える」ことが記載されているといえる。 上記(ア)乃至(ウ)を考慮して、上記摘記事項(1a)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。 「 ユーザ固有のIDと対応づけて、パスワードを蓄積する顧客情報データベースを用いて、ユーザの認証に関する処理を行う専用認証サーバと、端末装置と、前記端末装置に提供するサービスを提供するサービス提供サーバとから成るユーザ認証システムの端末装置であって、 前記ユーザ固有のID及び前記パスワードを前記専用認証サーバに送信する手段と、 前記サービス提供サーバから提供された前記サービスをユーザに提供する手段を備える ことを特徴とする端末装置。」 (4-3)本願補正発明と引用文献1発明との対比 本願補正発明と引用文献1発明を対比する。 引用文献1発明の「ユーザ認証システム」は、ユーザにサービスを提供する機能を備えたシステムであるから、本願補正発明の「サービス提供システム」に相当する。 また、引用文献1発明の「前記サービス提供サーバから提供された前記サービスをユーザに提供する手段」は、本願補正発明の「前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段」に相当する。 そして、本願補正発明の「非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶するユーザ認証装置」と、引用文献1発明の「ユーザ固有のIDと対応づけて、パスワードを蓄積する顧客情報データベースを用いて、ユーザの認証に関する処理を行う専用認証サーバ」とは、後記の点で相違するものの、当該「専用認証サーバ」は当該「ユーザの認証に関する処理」を行うための装置として当該「顧客データベース」を備えており、当該「顧客情報データベース」に蓄積される当該「パスワード」は、通常、登録されたものであるから、共に、「IDと対応付けて、登録パスワードを記憶するユーザ認証装置」という点で共通する。 また、本願補正発明の「非接触ICカードとの通信手段を備える端末機器」と、引用文献1発明の「端末装置」とは、後記の点で相違するものの、共に「端末機器」である点で共通する。 また、本願補正発明の「前記端末機器に提供する複数のサービスを管理するとともに、前記端末機器に前記サービスを提供するサービス提供装置」と、引用文献1発明の「前記端末装置に提供するサービスを提供するサービス提供サーバ」とは、後記の点で相違するものの、共に「前記端末機器に前記サービスを提供するサービス提供装置」である点で共通する。 また、本願補正発明の「前記受信手段により受信した前記カードIDおよび前記入力手段により入力された入力パスワードを前記ユーザ認証装置に送信する送信手段」と、引用文献1発明の「前記ユーザ固有のID及び前記パスワードを前記専用認証サーバに送信する手段」とは、後記の点で相違するものの、共に「前記IDと前記パスワードを前記ユーザ認証装置に送信する送信手段」である点で共通する。 したがって、両者は、 (一致点) 「 IDと対応付けて、登録パスワードを記憶するユーザ認証装置と、端末機器と、前記端末機器に前記サービスを提供するサービス提供装置とから成るサービス提供システムの端末機器であって、 前記IDと前記パスワードを前記ユーザ認証装置に送信する送信手段と、 前記サービス提供装置から提供された前記サービスをユーザに提供するサービス提供手段を備える ことを特徴とする端末機器。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願補正発明では、IDが非接触ICカードに記憶された固有のカードIDであり、当該カードIDによりユーザ認証してサービスを提供し、そのため、 ユーザ認証装置が、非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報及び登録パスワードを記憶し、 端末機器が、前記非接触ICカードとの通信手段と、前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信する受信手段を備えるのに対し、 引用文献1発明では、IDがユーザ固有のIDであり、当該ユーザ固有のIDによりユーザ認証してサービスを提供し、そのため、 ユーザ認証装置が、ユーザ固有のIDと対応づけて、登録パスワードを記憶するものの、ユーザ情報及び当該登録パスワードを、非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて記憶しておらず、 端末機器が、前記非接触ICカードとの通信手段と、前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信する受信手段を備えていない点。 (相違点2) 本願補正発明は、パスワードを入力する入力手段を備え、送信手段が前記入力手段により入力された入力パスワードを送信するのに対し、 引用文献1発明は、パスワードを入力する入力手段について明記されておらず、送信手段がパスワードを送信するものの、それが前記入力手段により入力された入力パスワードではない点。 (相違点3) 本願補正発明では、サービス提供装置が、提供する複数のサービスを管理するとともに、当該サービスを提供するのに対し、 引用文献1発明では、サービス提供装置が、サービスを提供するものの、その具体的な処理が不明である点。 (4-4)相違点についての判断 (相違点1について) 例えば、特開2001-138670号公報(段落【0015】、段落【0018】、段落【0021】、段落【0023】、【図1】、【図2】及びその関連箇所等参照。)にみられるように、認証用の情報であるIDとして、非接触ICカードに記憶されたID番号を採用することは、周知事項である。 してみると、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、認証用の情報であるIDとして、非接触ICカードに記憶された固有のカードIDを採用することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。 そして、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、非接触ICカードに記憶された固有のカードIDにより認証するのであれば、そのため、ユーザ認証装置が、非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、登録パスワードを記憶し、端末機器が、前記非接触ICカードとの通信手段と、前記通信手段を介して前記非接触カードから前記カードIDを受信する受信手段を備えることは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。 また、サービス提供装置が、ユーザ認証された特定のユーザにサービスを提供するために、当該特定のユーザの提供先等の個人情報であるユーザ情報を取得することは当然のことである。 してみると、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、非接触ICカードに記憶された固有のカードIDによりユーザ認証してサービスを提供するのであれば、そのため、ユーザ認証装置が、非接触ICカードに記憶された固有のカードIDと対応付けて、ユーザ情報をも記憶することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。 したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 (相違点2について) 例えば、特開2001-138670号公報(段落【0015】、段落【0018】、段落【0021】、段落【0023】、【図1】、【図2】及びその関連箇所等参照。)にみられるように、パスワードを入力する入力手段は、周知事項である。 してみると、引用文献1発明において、上記周知事項を適用し、パスワードを入力する入力手段を備え、送信手段が前記入力手段により入力された入力パスワードを送信することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。 したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 (相違点3について) サービス提供手段がユーザに複数のサービスを提供することは周知技術である。 また、サービス提供手段が、サービスを提供する際に、当該提供するサービスを管理することは当然行われるべき処理にすぎないものである。 してみると、引用文献1発明において、上記周知技術に基づき、サービス提供装置が、提供する複数のサービスを管理するとともに、当該サービスを提供することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。 したがって、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願補正発明の作用効果も,引用文献1発明、周知事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (4)本件補正についてのむすび よって、本願補正発明は、引用文献1発明、周知事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願の請求項3に係る発明 上記の平成20年 9月17日付けでした手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記の平成19年10月22日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される上記したとおりのものである。 (2)引用文献に記載の発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びこれらの記載事項は、上記2.(4)(4-2)「引用文献に記載の発明」の項に記載したとおりである。 (3)対比 本願発明と引用文献1発明とを対比すると、本願発明は、上記本願補正発明において、上記2.(3)の「補正の目的」の項において検討した特許請求の範囲の限定を解除するものであることから、上記2.(4)(4-3)「本願補正発明と引用文献1発明との対比」の項において検討した相違点以外の相違点は存在しない。 (4)判断 してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する上記本願補正発明が、上記2.(4)「独立特許要件」の項に記載したとおり、引用文献1発明、周知事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1発明、周知事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.むすび 上記のとおり、本願の請求項3に係る発明が、引用文献1発明、周知事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-12 |
結審通知日 | 2010-04-13 |
審決日 | 2010-05-21 |
出願番号 | 特願2003-188142(P2003-188142) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 篠原 功一 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 田代 吉成 |
発明の名称 | サービス提供システム、端末装置および通信方法 |
代理人 | 稲本 義雄 |