• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1219664
審判番号 不服2008-19387  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-31 
確定日 2010-07-08 
事件の表示 特願2002-250518「通信装置および通信制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 96146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年8月29日の出願であって、平成19年7月26日付け拒絶理由通知に対して、同年9月28日付けで手続補正がされ、同年10月23日付け最後の拒絶理由通知に対して、同年12月28日付けで手続補正がされたが、平成20年6月26日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月31日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年9月1日付けで手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記「第1 手続の経緯」で述べた様に、原審において平成19年12月28日付け手続補正は却下されたので、上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は本件補正前の平成19年9月28日付け手続補正による特許請求の範囲の請求項1に記載された

「他の装置との間で無線通信を行う通信装置であって、
可搬型の記録媒体を着脱する着脱口と、
前記着脱口に装着された前記記録媒体から、所定の無線ネットワークに接続するために設定することが必要な情報として、少なくとも無線ネットワークを識別するための識別情報を読み出す記録媒体読み出し手段と、
前記記録媒体から読み出された前記識別情報を、前記通信装置に設定する識別情報設定手段と、
前記識別情報設定手段によって設定された前記識別情報によって接続される無線ネットワーク内に、無線ネットワークに接続された機器に対して、IP(Internet Protocol)通信を行うためのIP情報の割り当てを行う情報処理装置が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記情報処理装置が存在すると判定された場合、前記情報処理装置から自身に割り当てられるIP情報を取得して設定するIP情報設定手段と
を備えることを特徴とする通信装置。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「他の装置との間で無線通信を行う通信装置であって、
可搬型の記録媒体を着脱する着脱口と、
前記着脱口に装着された前記記録媒体において前記無線通信に関する情報を格納するために設けられた所定のディレクトリに格納されている無線LAN情報ファイルにアクセスして、所定の無線ネットワークに接続するために設定することが必要な情報として、テキスト形式で記述されている少なくとも無線ネットワークを識別するための識別情報を読み出す記録媒体読み出し手段と、
前記記録媒体から読み出された前記識別情報を、前記通信装置に設定する識別情報設定手段と、
前記識別情報設定手段によって設定された前記識別情報によって接続される無線ネットワーク内に、無線ネットワークに接続された機器に対して、IP(Internet Protocol)通信を行うためのIP情報の割り当てを行う情報処理装置が存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記情報処理装置が存在すると判定された場合、前記情報処理装置から自身に割り当てられるIP情報を取得して設定するIP情報設定手段と
を備えることを特徴とする通信装置。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された、「記録媒体読み出し手段」に関し、「前記記録媒体において前記無線通信に関する情報を格納するために設けられた所定のディレクトリに格納されている無線LAN情報ファイルにアクセスして」と限定を付加し、また、「識別情報」に関し、「テキスト形式で記述されている」と限定を付加して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で補正後の発明として認定したとおりである。

(2)引用発明
A 原審の平成19年10月23日付け拒絶理由に引用された特開2001-274816号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テレコミュニケーションシステムにおいて移動をサポートする方法及び装置に係る。」(3頁3欄)

ロ.「【0008】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。好ましい実施形態では、テレコミュニケーションネットワークは、IEEE(インスティテュート・オブ・エレクトリカル・アンド・エレクトロニックス・エンジニアーズ)802.11規格に基づくワイヤレスローカルエリアネットワークであると仮定するが、本発明は、この形式の特定のネットワークに限定されるものではない。本発明は、ユーザが、異なるネットワーク及びネットワークリソースにアクセスするときに種々の設定を変更する必要のあるいかなる種類のテレコミュニケーションネットワークにも使用できる。
【0009】図1には、IEEE802.11をベースとするWLANシステムの一例が示されている。移動ターミナルMSは、ターミナル装置TE、通常は、ポータブルコンピュータと、WLANアダプタMTと、おそらくは、スマートカードSCとを備えている。論理的WLANネットワークNW1、NW2は、布線ネットワークへのアクセスをMSに与えるWLANアクセスポイントAP1、AP2、AP3及びAP4を備えている。802.11規格は、エアインターフェイスを経て通信するための物理的及び媒体アクセスの両制御プロトコルを規定する。IEEE802.11の物理層の仕様は、3つの送信オプション、即ち1つの赤外線オプションと、直接シーケンス拡散スペクトル(DSSS)オプションと、周波数ホップ型拡散スペクトル(FHSS)オプションとを包含する。両拡散スペクトル技術は、多数の国々で広く利用されていることから、2.4GHz帯域に使用される。IEEE802.11規格は、1MbpsデータレートのBPSK変調又は2MbpsデータレートのQPSK変調で使用するためのDSSSをサポートする。FHSSは、802.11のもとでは、GFSK変調と、1Mbps及び2Mbpsのデータレートをもつ2つのホッピングパターンとでサポートされる。又、近い将来、より高いビットレートも期待される。
【0010】IEEE802.11MAC(媒体アクセス制御)の基本的アクセス方法は、衝突回避を伴う搬送波感知多重アクセス(CSMA/CA)として知られている。CSMA/CAは、「話す前に聞く(listen before talk)構成」で機能する。これは、送信しようとしている移動ターミナルMSは、先ず、受信信号の強度に基づいて無線チャンネルを感知し、別のターミナルが送信しているかどうか決定しなければならないことを意味する。媒体がビジーでない場合には、送信を行うことができる。CSMA/CA構成は、所与のユーザからのフレーム間に最小の時間ギャップを実現する。所与の送信ターミナルMSからフレームが送信されると、そのターミナルMSは、再送信を試みる前に時間ギャップが終わるまで待機しなければならない。時間が経過すると、ターミナルMSは、送信しようとするクリアなチャンネルを確認するために再び「聴取」するまで待機すべきランダムな時間長さ(バックオフ・インターバルと称する)を選択する。チャンネルが依然としてビジーである場合には、その後のバックオフ・インターバルは、第1のバックオフ・インターバルより短く選択される。このプロセスは、待機時間がゼロに接近しそしてターミナルMSが送信を許されるまで繰り返される。確認されたデータ転送を使用することができ、即ちデータフレームが受信された後に、確認フレームが返送され、成功裡なデータ送信が確認される。
【0011】WLAN移動ターミナルMSは、別のターミナルへの接続を確立するだけで特別なネットワークを形成することができる。特別なネットワークとは、布線ネットワークインフラストラクチャーを必要とせずにインターネットワーク型通信を行う目的でグループ編成された移動ステーションである。特別なネットワークは、基本的サービスセット(BSS)を形成する。インフラストラクチャーネットワークは、移動ターミナルMSに特定のサービス及びレンジ拡張を与えるために確立される。インフラストラクチャーネットワークは、アクセスポイントAP1ないし4とターミナルMSとの間に接続を形成することにより確立される。アクセスポイントAP1-4は、MDへのネットワーク接続を与え、従って、拡張されたサービスセット(ESS)を形成する。最小限、アクセスポイントAP1-4は、移動ターミナルMSと論理的ネットワークNW1、NW2の布線部分との間における送信時間の割り当て、データの受信、バッファリング及び送信を制御する。論理的なWLANネットワークNW1、NW2は、1つ以上のサブネットワークSN1、SN2及びSN3を備えている。サブネットワークは、複数のアクセスポイントAP1-4を含む。例えば、NW1は、2つのサブネットワークSN1及びSN2を備え、サブネットワークSN1は、2つのアクセスポイントAP1及びAP2を備え、そしてSN2は、アクセスポイントAP3を備えている。又、論理的WLANネットワークNW1、NW2は、ポータルPT1、PT2と称する装置を経て、インターネットのような他のネットワークONへのゲートウェイアクセスを与えることもできる。ポータルPT1、PT2は、IEEE802.11特有の論理的ネットワークNW1、NW2が非IEEE802.11ネットワークONと一体化するところの一体化ポイントを特定する論理的エンティティである。通常、論理的WLANネットワークNW1、NW2は、論理的ネットワークNW1においてIPアドレスを割り当てるDHCP(ダイナミック・ホスト・コンフィギュレーション・プロトコル)サーバーのような他のサーバーも備えている。
【0012】セキュリティ構成は、この規格では任意の特徴として取り扱われている。データセキュリティは、「布線等価プライバシー(WEP)」として知られた暗号化技術によって達成される。WEPは、無線インターフェイスを経て送信されるデータを、暗号キー及びRC4暗号アルゴリズムを使用して保護することをベースとする。IEEE802.11規格は、40ビットの暗号キーを推奨しているが、他のキー長さも許す。WEPは、これがイネーブルされたときに、データパケット情報のみを保護するが、物理層ヘッダは保護せず、従って、ネットワークの他の移動ターミナルは、ネットワークを管理するのに必要な制御データを聴取することができる。しかしながら、他の移動ターミナルは、パケットのデータ部分を解読することはできない。
【0013】アクセスポイントAP1-4の個々のマイクロセルは、論理的ネットワークNW1、NW2の布線部分と連続的に通信できるように重畳される。移動ターミナルMSは、次いで、別の地理的エリアへ移動するときに信号強度の良好なアクセスポイントに接続することができる。IEEE802.11 WLANの更なる詳細については、IEEE802.11規格、例えば、「ドラフト・インターナショナル・スタンダードISO/IEC8802-11 IEEE802.11/D10、1999年1月、パート11:ワイヤレスLAN媒体アクセス制御(MAC)及び物理層(PHY)仕様書」を参照されたい。
【0014】ネットワーク及び異なるネットワークリソースにアクセスするのに必要な設定は、一緒に収集して、情報セットとして移動ターミナルMSに記憶することができる。情報セットは、情報セットに属するネットワークを識別するネットワーク名を含むのが好都合である。情報セットは、各論理的WLANネットワークNW1、NW2に対して別々に決定されるのが好都合であり、そしてそれらは、プロファイルとみなされ且つ呼ばれる。情報セットは、基本的に、当該論理的WLANネットワークNW1、NW2にアクセスするのに必要な何らかの種類の設定を含み、そしてそれらは、図2に示す非WLAN特有の設定も含むのが好都合である。ネットワークにアクセスするのに必要な設定とは別に、情報セットは、ネットワークによる異なるサービスを可能にするネットワークリソースにアクセスするのに必要な設定も含む。ターミナルMSは、基本的に、ネットワークにアクセスするときに幾つかのネットワークリソースを常に使用し、例えば、アクセスポイントAP1の送信能力を使用してポータルPT1にデータが転送される。
【0015】オペレーションモード設定は、特別な又はインフラストラクチャーモードを使用できるかどうか定義する。ネットワーク名設定は、情報セットに属するネットワーク名を定義する。論理的WLANネットワークNW1、NW2は、多数のサブネットワークSN1-3にセグメント化されるので、全てのサブネットワークSN1-3がそれら自身のネットワーク名を有するのが好ましい。従って、情報セットは、2つ以上のワイヤレスネットワーク名を含むことができる。使用するオペレーションモードがインフラストラクチャーである場合には、使用するネットワーク名がESSID(拡張サービスセット識別子)と称され、そして使用するオペレーションモードが特別なものである場合には、ネットワーク名は、BSSID(基本的サービスセット識別子)と称される。
【0016】ネットワーク識別子は、2つ以上のネットワーク名をカバーするようにネットワーク名設定に記憶される。ネットワーク識別子は、「?」や「*」のようなワイルドカードキャラクタを含むのが好都合であり、これらのワイルドカードキャラクタを使用することにより、ネットワーク名のグループを指定することができる。これを機能させるために、同じ論理的ネットワークに属する各サブネットワークは、同様の(同一ではない)名前をもたねばならず、例えば、SN1は、ネットワーク名NW1LAN1をもち、そしてSN2は、ネットワーク名NW1LAN2をもつことができる。従って、NW1の情報セットのネットワーク名設定は、NW1WLAN*となる。
【0017】チャンネル設定は、動作中の無線チャンネルが自動的に選択されるか手動で選択されるかを定義する。「!」で示された最初の3つの設定は、重要なものであり、各情報セット内に記憶されねばならない。データレート設定は、考えられるデータレートに関する情報を含み、例えば、論理的ネットワークNW1、NW2は、2Mbpsのデータレートを与えることができる。WEPに関連したセキュリティ設定は、キー長さ、キーモード、選択されたデフォールトキー、及び認証及び/又は暗号化に使用されるキー又はキーに関する情報を含むのが好ましい。キーは、情報セットの部分であってはならないことが示唆され、即ちそれらは、どこにでも記憶できるが、情報セットがそれらを参照する。他のWLAN特有の設定は、無線関連のパラメータ、又は必要とされる他の設定を含んでもよい。他の設定は、例えば、IEEE802.11規格に規定された異なる設定、例えば、分断スレッシュホールド又は聴取インターバルであってもよい。
【0018】又、非WLAN特有の設定は、特にインフラストラクチャー通信のための情報セットに含まれてもよい(オペレーションモードがインフラストラクチャー)。通常、最も重要な設定は、DHCP設定、TCP/IP設定、並びにドメインログオン及びワークグループ設定である。DHCP設定は、DHCPが使用されるかどうか定義する。TCP/IP設定は、使用するIPアドレス、ゲートウェイ、DNS(ドメイン・ネーム・システム)サーバー及びWINS(ウインドウズ・インターネット・ネーミング・サービス)サーバーに関する情報を含む。代理設定は、正しいWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)ブラウザ設定を指定する。ドメインログオン及びワークグループ設定は、共用フォールダー、Eメールサーバー、ネットワークプリンター、マップ型ネットワークドライブ及びイントラネットページのような特定のネットワークサービスへアクセスできるようにするために必要とされる。又、他の種類の非WLAN設定を情報セットに記憶することもできる。
【0019】情報セットは、ファイルに記憶することができ、そしてそれらは、基本的に何らかの媒体を介してユーザに分配することができる。例えば、情報セットをWWWページからダウンロードしたり、又は情報セットをEメールにより送信したりすることができる。移動ターミナルMSは、情報セットが記憶されるスマートカードSCを含むのが好都合である。スマートカードは、MTに挿入されるのが好ましいが、TEのカードリーダーと共にSCを使用することもできる。会社のネットワークに対する新たなユーザのセキュリティ接続は、必要な情報セットを含むスマートカードSCをそのユーザに与えることにより容易に且つ迅速に構成することができる。情報セット(例えば、NW1及びNW2の)は、ターミナルMSのユーザインターフェイス(UI)によりユーザに示すことができる。」(4頁6欄?6頁10欄)

ハ.「【0038】図5は、本発明の好ましい実施形態による移動ターミナルMSの基本的な機能を示す。ターミナルMSは、アンテナをもつトランシーバTx/Rxと、ユーザインターフェイスUIと、制御ユニットCPUと、メモリMEMと、スマートカードSCとを備えている。トランシーバTx/Rxは、無線インターフェイスを経てデータを送信及び受信するための典型的な802.11適合の送信及び受信装置である。既に述べたように、スマートカードは、情報セットをプロファイルとして好都合に記憶することのできるメモリSCMEMを備えている。従って、移動ステーションMSのメモリ手段は、2つの部分、即ちメモリMEMと、スマートカードメモリSCMEMとを備えている。
【0039】ユーザインターフェイス手段UIは、一般に、キーボード、ディスプレイ、スピーカ及びマイクロホンを含むが、これらは図5には示されていない。ユーザインターフェイス手段UIにより、制御ユニットCPUは、好ましい実施形態では、良好な接続属性をもつ第2のアクセスポイントについてユーザに通知し、ユーザはこれに接続することができる。ユーザインターフェイスUIを使用することにより、好都合にも、記憶された情報セットの設定を見て変更し、そして制御ユニットCPUへ更に別の命令を与えることができる。ある実施形態によれば、ユーザは、新たな情報セットを形成することもできるし、或いはユーザインターフェイスUIを使用することにより既存のものを変更することもできる。
【0040】制御ユニットCPUは、アクセスポイントの選択に関連して上述した本発明の機能を制御する。CPUは、トランシーバTx/Rxを用いて使用可能なアクセスポイントに関する情報を収集する(401)ための収集手段をなすように構成される。更に、制御ユニットCPUは、収集された情報に基づいてネットワーク名をチェックする(402)ためのチェック手段と、最良の接続属性をもつ第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントを選択する(404、405)ための選択手段もなすように構成される。制御ユニットCPUは、第1アクセスポイント及び第2アクセスポイントの接続属性を比較するための比較手段と、接続属性間の差が所定の条件を満足する場合に新たなアクセスポイントへの接続を確立する(410、412)ためのアクセス手段もなすように構成される。接続は、トランシーバTx/Rxを使用して確立される。ある実施形態では、CPUは、情報セットをメモリに記憶し、即ちMSのスマートカードリーダー及びスマートカードコントローラCNTRLを用いてスマートカードメモリSCMEMに記憶するよう構成されるのが好都合である。制御ユニットCPUによる本発明の全ての機能は、移動ステーションMSの既存のプロセッサ及びメモリMEM、SCMEMを使用することにより実行することができる。」(9頁16欄?10頁17欄)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ロ.の【0009】における「図1には、IEEE802.11をベースとするWLANシステムの一例が示されている。移動ターミナルMSは、ターミナル装置TE、通常は、ポータブルコンピュータと、WLANアダプタMTと、おそらくは、スマートカードSCとを備えている。論理的WLANネットワークNW1、NW2は、布線ネットワークへのアクセスをMSに与えるWLANアクセスポイントAP1、AP2、AP3及びAP4を備えている。」との記載、【0019】における「移動ターミナルMSは、情報セットが記憶されるスマートカードSCを含むのが好都合である。スマートカードは、MTに挿入されるのが好ましいが、TEのカードリーダーと共にSCを使用することもできる。」との記載、及び図1によれば、移動ターミナル(MS)は、アクセスポイント(AP1?4)との間で無線通信を行っている。また、情報セットが記憶される可搬型のスマートカード(SC)を着脱するカードリーダーを備えている。
また、上記摘記事項ロ.の【0014】における「ネットワーク及び異なるネットワークリソースにアクセスするのに必要な設定は、一緒に収集して、情報セットとして移動ターミナルMSに記憶することができる。情報セットは、情報セットに属するネットワークを識別するネットワーク名を含むのが好都合である。」との記載によれば、前述のカードリーダーに装着されたスマートカードから、所定の無線ネットワークに接続するために設定することが必要な情報として、無線ネットワークを識別するためのネットワーク名を読み出すスマートカード読み出し手段があることは自明である。

したがって、上記引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

「アクセスポイント(AP1?4)との間で無線通信を行う移動ターミナル(MS)であって、
可搬型のスマートカード(SC)を着脱するカードリーダーと、
前記カードリーダーに装着された前記スマートカードから、所定の無線ネットワークに接続するために設定することが必要な情報として、無線ネットワークを識別するためのネットワーク名を読み出すスマートカード読み出し手段と
を備える移動ターミナル(MS)。」

B 原審の平成19年10月23日付け拒絶理由に引用された特開2001-189722号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ニ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無線LANを用いた無線通信システム、このシステムを構成する無線端末、無線基地局、この無線通信システムで利用される認証カード、および無線通信システムの認証方法に関する。特に、本発明は、IEEE802.11等の無線LANシステムにおける、無線端末同士や、無線基地局と無線端末間の、認証技術に関する。」(3頁4欄)

ホ.「【0074】(第3の実施の形態)次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。上記の第1および第2の実施の形態においては、無線端末12に固有の端末情報のみを認証カード14を介して無線基地局10に通知していたが、本発明の第3の実施の形態ではさらに、無線基地局10に固有の情報(以下、「基地情報」と呼ぶ)を認証カード14を介して無線端末12に直接通知する。すわなち、本発明の第3の実施の形態は、認証カード14を介して、端末情報が無線端末12から無線基地局10に、基地情報が無線基地局10から無線端末12に、それぞれ直接通知される例である。この例では、端末情報および基地情報を相互に交換することにより、上記の第1のおよび第2の実施の形態の認証処理を大幅に簡単化することができる。
【0075】図9は、本発明の第3の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図であり、図1と共通する要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、図9では、図1の場合と同様、説明の簡単化を図るため、無線LANに接続される無線端末の数を1つとして説明する。図9に示すように、本発明の第3の実施の形態に係る無線通信システムは、図1の第1の実施の形態と同様、無線ゾーンを形成する無線基地局10と、無線基地局10と無線通信する無線端末12と、無線端末12の端末情報を格納し、その端末情報を無線端末12から無線基地局10に直接通知する認証カード14と、から少なくとも構成される。さらに、本発明の第3の実施の形態では、認証カード14は、無線基地局10の基地情報を格納し、その基地情報を無線基地局10から無線端末12に直接通知する。
【0076】本発明の第3の実施の形態に係る無線基地局10は、具体的には、図1の第1の実施の形態の無線制御部16および端末情報管理部20に加えて、基地情報保持部36が設けられている。さらに、第1の実施の形態の認証カード読み出し部18を、認証カード読み出し/書き込み部38に置き換えた構成となっている。基地情報保持部36は、無線基地局10に固有の基地情報を保持するものであり、たとえば無線基地局10の製造時にその基地情報が埋め込まれる。基地情報は、認証カード読み出し/書き込み部38を介してのみ、外部に出力される。基地情報保持部36は、たとえば読み出し専用の半導体メモリである、マスクROM、EPROM等で構成される。これらのメモリは、電源を切ってもデータは破壊されず、一旦書き込まれたデータは半永久的に記憶可能である。
【0077】ここで、「基地情報」には、(a)無線基地局10に固有の識別番号(以下、「基地局ID」と呼ぶ)、データ通信の際に無線基地局10の利用可能な、(b)鍵(暗号化鍵および復号鍵)、および(c)この鍵の暗号方式、が少なくとも含まれている。基地局IDは、たとえば無線基地局10の製造時等に付与される装置固有の識別番号である。もちろん、必ずしも製造時に付与されるものである必要はなく、無線基地局10に固有の識別番号であれば良い。鍵は、たとえば周知の共通鍵暗号方式のための共通鍵であり、この鍵を無線端末12に通知することで、無線端末12との通信の秘匿を図ることが可能となる。無線基地局10およびこの鍵の通知を受けた無線端末12は、この同一の鍵を用いて暗号化および復号の両方の処理を行なう。鍵は、たとえば基地局IDから生成すれば良い。無線基地局10に固有の鍵を容易に生成することができるからである。もちろん、鍵は基地局IDとは独立に生成しても構わない。また、暗号方式は、この鍵の方式を明示するものであり、たとえば共通鍵暗号方式の種類であるDES,FERL等が示される。
【0078】認証カード読み出し/書き込み部38は、第1の実施の形態の認証カード読み出し部18と同様、無線基地局10と認証カード14とを結ぶインターフェースであり、認証カード14が挿入される挿入口(図示しない)を有している。認証カード14の読み出し時では、読み出し部/書き込み部38は、挿入口に挿入された認証カード14内の端末情報を読み出し、その端末情報を端末情報管理部20に出力する。また、読み出された端末情報は、たとえば無線基地局10に設けられた、ディスプレイ(CRT画面)等の表示部(図示しない)に表示することが可能である。ユーザーは、その表示部を介して、端末情報を目で見て確認することができる。一方、認証カード14の書き込み時では、基地情報保持部36から基地情報を取得し、その基地情報の書き込みを、挿入口に挿入された認証カード14に対して実行する。
【0079】本発明の第3の実施の形態に係る無線端末12は、具体的には、図1の第1の実施の形態の無線制御部24および端末情報保持部28に加えて、基地情報管理部40が設けられている。さらに、第1の実施の形態の認証カード書き込み部26を、認証カード読み出し/書き込み部42に置き換えた構成となっている。基地情報管理部40は、読み出し部/書き込み部42によって読み出された、無線基地局10の基地情報を取得し、登録・管理する。基地情報は、たとえばテーブル化して登録され、複数の無線基地局の基地情報の管理の容易化が図られる。無線端末12は、無線基地局10との通信の際には、基地情報管理部40に登録されている基地情報を利用する。
【0080】認証カード読み出し/書き込み部42は、第1の実施の形態の認証カード書き込み部26と同様、無線端末12と認証カード14とを結ぶインターフェースであり、認証カード14が挿入される挿入口(図示しない)を有している。認証カード14の書き込み時では、読み出し/書き込み部42は、端末情報保持部28から端末情報を取得し、その端末情報の書き込みを、挿入口に挿入された認証カード14に対して実行する。認証カード14の読み出し時では、読み出し/書き込み部42は、挿入口に挿入された認証カード14内の基地情報を読み出し、その基地情報を基地情報管理部40に出力する。また、読み出された基地情報は、たとえば無線端末12に設けられた、ディスプレイ(CRT画面)等の表示部(図示しない)に表示することが可能である。ユーザーは、その表示部を介して、基地情報を目で見て確認することができる。」(10頁18欄?11頁20欄)

上記引用例2の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ホ.の【0080】における「認証カード読み出し/書き込み部42は、第1の実施の形態の認証カード書き込み部26と同様、無線端末12と認証カード14とを結ぶインターフェースであり、認証カード14が挿入される挿入口(図示しない)を有している。」との記載、及び図9によれば、無線端末(12)は、可搬型の認証カード(14)を着脱する挿入口を備えている。
また、上記摘記事項ホ.の【0079】における「無線端末12は、具体的には、図1の第1の実施の形態の無線制御部24および端末情報保持部28に加えて、基地情報管理部40が設けられている。さらに、第1の実施の形態の認証カード書き込み部26を、認証カード読み出し/書き込み部42に置き換えた構成となっている。基地情報管理部40は、読み出し部/書き込み部42によって読み出された、無線基地局10の基地情報を取得し、登録・管理する。」との記載によれば、前述の認証カードから読み出された基地情報を、無線端末(12)に設定する基地情報設定手段を備えている。

したがって、上記引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

「可搬型の認証カード(14)を着脱する挿入口と、
前記認証カード(14)から読み出された基地情報を、無線端末(12)に設定する基地情報設定手段と
を備える無線端末(12)。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明1とを対比する。
a.引用発明1の「アクセスポイント(AP1?4)」、「スマートカード(SC)」、及び「ネットワーク名」は、その機能において、補正後の発明の「他の装置」、「記録媒体」、及び「識別情報」にそれぞれ相当する。
b.引用発明1の「カードリーダー」と、補正後の発明の「着脱口」とは、いずれも、「読み取り装置」という点で一致する。
c.引用発明1の「移動ターミナル(MS)」は、通信装置の一種である。

したがって、補正後の発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)

「他の装置との間で無線通信を行う通信装置であって、
可搬型の記録媒体を着脱する読み取り装置と、
前記読み取り装置に装着された前記記録媒体から、所定の無線ネットワークに接続するために設定することが必要な情報として、少なくとも無線ネットワークを識別するための識別情報を読み出す記録媒体読み出し手段と
を備える通信装置。」

(相違点1)

「読み取り装置」に関し、
補正後の発明は、「着脱口」であるのに対し、引用発明1は、「カードリーダー」である点。

(相違点2)

「記録媒体読み出し手段」に関し、
補正後の発明は、「前記記録媒体において前記無線通信に関する情報を格納するために設けられた所定のディレクトリに格納されている無線LAN情報ファイルにアクセスして」読み出すのに対し、引用発明1は、その様な構成を備えていない点。

(相違点3)

「識別情報」に関し、
補正後の発明は、「テキスト形式で記述されている」のものであるのに対し、引用発明1は、その様な構成を備えていない点。

(相違点4)

補正後の発明は、「前記記録媒体から読み出された前記識別情報を、前記通信装置に設定する識別情報設定手段」を備えるのに対し、引用発明1は、その様な構成を備えていない点。

(相違点5)

補正後の発明は、「前記識別情報設定手段によって設定された前記識別情報によって接続される無線ネットワーク内に、無線ネットワークに接続された機器に対して、IP(Internet Protocol)通信を行うためのIP情報の割り当てを行う情報処理装置が存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記情報処理装置が存在すると判定された場合、前記情報処理装置から自身に割り当てられるIP情報を取得して設定するIP情報設定手段」を備えるのに対し、引用発明1は、その様な構成を備えていない点。

そこで、まず、上記相違点1及び4について検討する。
引用発明2の「認証カード(14)」、「挿入口」、「基地情報」、及び「無線端末(12)」は、補正後の発明の「記録媒体」、「着脱口」、「識別情報」、及び「通信装置」にそれぞれ相当し、引用発明1に引用発明2を採用することに格別の困難性はないから、引用発明1の「スマートカードリーダー」に換えて、補正後の発明のように「着脱口」とすること(相違点1)、また、補正後の発明のように「前記記録媒体から読み出された前記識別情報を、前記通信装置に設定する識別情報設定手段」を設けること(相違点4)は当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点2について検討する。
通信一般において、記録媒体において通信に関する情報を格納するために設けられた所定のディレクトリに格納されている情報ファイルにアクセスして読み出すことは、例えば、特開平6-22054号公報(21,22段落、図2)に開示されているように周知であるから、補正後の発明のように「前記記録媒体において前記無線通信に関する情報を格納するために設けられた所定のディレクトリに格納されている無線LAN情報ファイルにアクセスして」読み出すことは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点3について検討する。
通信一般において、設定情報をテキスト形式で記述することは、例えば、特開2000-22732号公報(11段落)、特開平11-98196号公報(53段落)に開示されているように周知であるから、補正後の発明のように「テキスト形式で記述」することは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点5について検討する。
通信一般において、ネットワーク内に、ネットワークに接続された機器に対して、IP(Internet Protocol)通信を行うためのIP情報の割り当てを行う情報処理装置(DHCPサーバ)が存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記情報処理装置(DHCPサーバ)が存在すると判定された場合、前記情報処理装置(DHCPサーバ)から自身に割り当てられるIP情報を取得して設定するIP情報設定手段を設けることは、例えば、原審の平成19年10月23日付け拒絶理由に引用された「これで安心! Windows2000のネットワーク設定,TCP/IPではじめよう,日本,株式会社アスキー,2000年12月31日,P.81-83」に開示されているように周知であるから、補正後の発明のように「前記識別情報設定手段によって設定された前記識別情報によって接続される無線ネットワーク内に、無線ネットワークに接続された機器に対して、IP(Internet Protocol)通信を行うためのIP情報の割り当てを行う情報処理装置が存在するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記情報処理装置が存在すると判定された場合、前記情報処理装置から自身に割り当てられるIP情報を取得して設定するIP情報設定手段」を設けることは当業者が容易に成し得ることである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明1、2及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明1、2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年9月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正却下の決定 1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明1、2及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-05-07 
結審通知日 2010-05-11 
審決日 2010-05-25 
出願番号 特願2002-250518(P2002-250518)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽岡 さやか  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 高野 洋
萩原 義則
発明の名称 通信装置および通信制御方法  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ