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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B23Q
管理番号 1220282
審判番号 不服2008-25424  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-02 
確定日 2010-07-15 
事件の表示 特願2000-256545「異物混入防止機構を備えた卓上型ロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月 5日出願公開、特開2002- 66868〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成12年8月25日の特許出願であって、平成16年2月2日、平成18年6月2日、平成18年10月23日、平成19年2月5日、平成20年5月7日に手続補正がなされ、平成20年8月29日付けで平成20年5月7日の手続補正を却下するとともに拒絶をすべき旨の査定がされた。
これに対し、平成20年10月2日に本件審判の請求がなされ、平成20年11月4日に明細書を対象とする手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同22年4月12日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲、及び対応する発明の詳細な説明について補正をするものであって、請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「作業用テーブル表面上に平行に形成された一対のリブと、
該一対のリブ上に空隙を以て配置されて該一対のリブにより形成される空間を被覆する上面被覆部と前記リブの外方側で前記リブの上端面より垂下して被覆する垂下状被覆部を形成し前記作業用テーブルに固着されたカバー材と、
前記リブの間には、該リブの長手方向に沿って移動自在な可動部を有するスライドベースと、
該スライドベースの可動部に一端が連結された可動ワークテーブルとからなり、
該可動ワークテーブルには前記リブと前記カバー材との間を通ってワークが載置されるワークテーブル面と前記スライドベースの収納スペースより外側に前記リブの上端が入り込む案内溝とを形成してなることを特徴とする異物混入防止機構を備えた卓上型ロボット。」

(2)補正後
「作業用テーブル表面上に平行に形成された一対のリブと、
該一対のリブ上に空隙を以て配置されて該一対のリブにより形成される空間を被覆する上面被覆部と前記リブの外方側で該リブの上端面より垂下して被覆する垂下状被覆部を形成し前記作業用テーブルに固着されたカバー材と、
前記リブの間には、該リブの長手方向に沿って移動自在な可動部を有するスライドベースと、
該スライドベースの可動部に一端が連結された可動ワークテーブルとからなり、
該可動ワークテーブルには前記リブと前記カバー材との間を通ってワークが載置されるワークテーブル面と前記作業用テーブル表面上に設けられたスライドベースの収納スペースより外側に前記作業用テーブル表面から垂直方向に設けられたリブの上端が入り込む案内溝とを形成してなることを特徴とする異物混入防止機構を備えた卓上型ロボット。」

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の補正後の請求項1についての補正は、スライドベースについて「作業用テーブル表面上に設けられた」なる事項を、リブについて「作業用テーブル表面から垂直方向に設けられた」なる事項を、それぞれ付加するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
ア.刊行物1
これに対し、原査定の拒絶理由で引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭55-104895号(実開昭57-26991号)のマイクロフイルム(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)明細書第1ページ第11?12行
「この考案は、移動装置におけるスライド部の保護装置に関するものである。」

(イ)明細書第3ページ第6行?第5ページ第5行
「1は移動台であり、中空部2を有するほぼ逆凹字状の形状になつていて、上部には溶接ヘツド(図示せず)などが搭載されている。また移動台1の下部の中央部には軸受支持台3が設けてあり、その両脇部には案内軸受4、4'が設けてある。・・・。8は基台である。基台8には、案内軸受4、4'と対応する位置に案内軸台9、9'が設けられている。そして、この案内軸台9、9'上には、それぞれ案内軸10、10'が固定されている。案内軸10、10'は、案内軸受4、4'と滑動可能に嵌合されている。11、11'は仕切板であり、それぞれの案内軸台9、9'と移動台1の内側部12、12'との間に位置するように設けてある。・・・。14は固定カバーである。固定カバー14は、移動台1の中空部2を挿通しうるほぼ逆凹字状の形状であり、鋼板などにより製作されている。もちろん、上部板と側板部との分割形であつてもよい。この固定カバー14は、移動台1の中空部2を挿通させ、基台8の両端板13、13'にビス15などによつて固定する。
移動台1は、駆動軸6の回転によつて移動するが、駆動軸6はモータ7の回転方向に従つて回転し、移動台1を前後方向に移動させる。また案内軸10、10'は、移動台1を支持案内する。固定カバー14は、基台8の内部に設けられた駆動軸6や案内軸10、10'などのスライド部を、ゴミや異物から保護するが、側面からの異物の侵入を防ぐためには、この固定カバー14と仕切板11、11'とは、上下方向になるべく重なり合うようにすればよい。また固定カバー14は、移動台1の中空部2を挿通しているので、移動台1の移動台には何ら差支えがない。」

(ウ)第3図
仕切板11、11'が、案内軸10、10'の長手方向に沿って平行に形成されていること、
逆凹字状の固定カバー14が、一対の仕切板11、11'上に空隙を以て配置されて一対の仕切板11、11'により形成される空間を被覆する上面被覆部と、仕切板11、11'の外方側で仕切板11、11'の上端面より垂下して被覆する垂下状被覆部からなること、
移動台1が、仕切板11、11'と固定カバー14との間を通っている移動台面を有すること、
が看取できる。

これらの事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

「基台8表面上に平行に形成された一対の仕切板11、11'と、
該一対の仕切板11、11'上に空隙を以て配置されて該一対の仕切板11、11'により形成される空間を被覆する上面被覆部と前記仕切板11、11'の外方側で該仕切板11、11'の上端面より垂下して被覆する垂下状被覆部を形成し前記基台8に固定された固定カバー14と、
前記仕切板11、11'の間には、該仕切板11、11'の長手方向に沿って移動自在な案内軸受4、4'とこれに嵌合する案内軸10、10'と、基台8に設けられ案内軸10、10'が固定される案内軸台9、9'と、
該案内軸受4、4'に一端が連結された移動台1とからなり、
該移動台1には前記仕切板11、11'と前記固定カバー14との間を通って溶接ヘッドなどが搭載される移動台面を形成してなる移動装置におけるスライド部の保護装置。」

イ.刊行物2
同じく特開平11-48082号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、移送体を移動するためにベースに設けられる駆動手段や案内手段の、移送体の移動方向に延びる長手部材を移送体の移動に無関係に覆うカバーをベースに固定した長手部材のカバー構造及びそのカバー構造を備えたテーブル機構に関する。」

(イ)段落0014
「【0014】次に第2の実施の形態を図5と図6により説明する。スライドユニット39は、断面コ字形のガイドフレーム(ベース)40と駆動手段としてのロッドレスシリンダ41とロッドレスシリンダ41により往復直線駆動されるスライダ(移送体)42とスライダ42を移動可能に案内支持する案内手段43等から構成されている。ガイドフレーム40には、ロッドレスシリンダ41のシリンダチューブ(長手部材)44が配設され、シリンダチューブ44の長手両端のエンドプレート45を固着してある。また、案内手段43のガイドレール(長手部材)46がシリンダチューブ44と近接して並設してあり、案内手段43の案内子53がスライダ42に連結してある。スライダ42の移動範囲を覆う上方カバー47の長手両端がエンドプレート45とクランプ部材54とに狭着され、側方カバー48がガイドフレーム40の左右側壁49上面に立設されている。上方カバー47の幅方向下端より側方カバー48の上端は内側に位置し、夫々の上端と下端とは高さ方向において重合して屈曲隙間50を形成している。スライダ42には上方カバー47の幅方向下端と側方カバー48の上端が夫々非接触に貫通する溝51,52が設けられており、屈曲隙間50を通過して上方、側方カバー47,48の外側に腕部55が位置している。この上方カバー47と側方カバー48とにより、スライドユニット39に搬送物が落下してもロッドレスシリンダ41とガイドレール46とは保護され、また、上方カバー47と側方カバー48との重合により塵埃がガイドフレーム40内に侵入して長手部材44,46に付着することを防止できる。」

(ウ)図6
側方カバー48が、ガイドフレーム40の左右側壁49上面に垂直方向に設けられていることが看取できる。

これらの事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら整理すると、刊行物2には以下の発明(以下、「刊行物2事項」という。)が記載されていると認める。

「ガイドフレーム(ベース)40と、駆動手段としてのロッドレスシリンダ41と、ロッドレスシリンダ41により往復直線駆動されるスライダ42とからなるスライドユニット39において、
スライダ42には、上方カバー47の幅方向下端と、ガイドフレーム40の左右側壁49上面に垂直方向に設けられた側方カバー48の上端が、夫々非接触に貫通する溝51,52が設けられており、屈曲隙間50を通過して上方、側方カバー47,48の外側に腕部55が位置することにより、塵埃がガイドフレーム40内に侵入することを防止できるもの。」

(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを、技術常識を踏まえ、対比する。
刊行物1発明の「仕切板11、11'」は補正発明の「リブ」に相当し、同様に、「固定」は「固着」に、「固定カバー14」は「カバー材」に、「案内軸受4、4'」は「可動部」に、それぞれ相当する。
刊行物1発明の「案内軸受4、4'」とこれに嵌合する「案内軸10、10'」は、併せて補正発明の「スライドベース」に相当する。
刊行物1発明の「基台8」、「移動台1」、「溶接ヘッドなどが搭載される移動台面」、「移動装置におけるスライド部の保護装置」と、補正発明の「作業用テーブル」、「可動ワークテーブル」、「ワークが載置されるワークテーブル面」、「異物混入防止機構を備えた卓上型ロボット」とは、それぞれ、「固定台」、「移動テーブル」、「物品が載置される移動テーブル面」、「異物混入防止機構を備えた移動装置」である限りにおいて一致する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、次の点で一致している。
「固定台表面上に平行に形成された一対のリブと、
該一対のリブ上に空隙を以て配置されて該一対のリブにより形成される空間を被覆する上面被覆部と前記リブの外方側で該リブの上端面より垂下して被覆する垂下状被覆部を形成し前記固定台に固着されたカバー材と、
前記リブの間には、該リブの長手方向に沿って移動自在な可動部を有するスライドベースと、
該スライドベースの可動部に一端が連結された移動テーブルとからなり、
該移動テーブルには前記リブと前記カバー材との間を通って物品が載置される移動テーブル面を形成してなる異物混入防止機構を備えた移動装置。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
相違点1:固定台、移動テーブル等からなる移動装置に関し、補正発明は「作業用テーブル」、「可動ワークテーブル」、「ワークが載置されるワークテーブル面」、「異物混入防止機構を備えた卓上型ロボット」であるが、刊行物1発明は「基台8」、「移動台1」、「溶接ヘッドなどが搭載される移動台面」、「移動装置におけるスライド部の保護装置」である点。
相違点2:スライドベースについて、補正発明は「作業用テーブル表面上に設けられ」るが、刊行物1発明は「基台8に設けられる案内軸台9、9'」に設けられる点。
相違点3:移動テーブルについて、補正発明は「スライドベースの収納スペースより外側に前記作業用テーブル表面から垂直方向に設けられたリブの上端が入り込む案内溝」を有するが、刊行物1発明は案内溝を有しない点。

(4)相違点の検討
相違点1について検討する。
処理対象であるワークに、処理機器による両者間の相対的移動によって処理を行う場合、固定された処理機器に対しワークを移動させる、固定されたワークに対し処理機器を移動させる、いずれも想定され、適宜選択されている。
刊行物1発明は、処理機器である「溶接ヘッドなど」を移動させるものであるが、処理機器とワークの相対的移動がなされれば処理は可能であるから、ワークを移動させるものとし、相違点1に係るものとすることに困難性は認められない。
請求人は、刊行物1発明の移動テーブルは「溶接ヘッドなどが搭載される移動台」であり、「ワークが載置されるワークテーブル」とする理由、根拠がない旨、主張する。
しかし、刊行物1発明における「溶接ヘッドなどが搭載される」は例示であり、実用新案登録請求の範囲が「移動装置」とされていることからみても、処理機器である「溶接ヘッド」を移動させる場合にのみ利用可能で、ワークを移動させるものには利用不能とまでは認められない。
そして、上記のとおり、ワークを移動させることは、相対的位置関係の問題にすぎないから、請求人の主張は根拠がない。

相違点2について検討する。
部品点数の削減は、一般的課題であるところ、刊行物1発明のスライドベースを、「案内軸台9、9'」を介することなく、直接「作業用テーブル表面上に設けられ」るものとすることは、設計的事項にすぎない。

相違点3について検討する。
刊行物1発明は、リブ(仕切板11、11')の外方側と、移動台の垂下状被覆部との間の「1つの」隙間により、異物の侵入を防止している。
刊行物2事項は、上記のとおりであり、固定部材であるガイドフレーム40に対して、スライダ42が移動するものにおいて、塵埃がガイドフレーム40内に侵入することを防止するため、溝51,52による「2つの」隙間を設けたものである。
刊行物1発明、刊行物2事項は、ともに移動部材を有し、異物侵入防止に関するものであるところ、刊行物1発明において、刊行物2事項に接した当業者は、隙間を重畳的に設けることで、一層の異物侵入防止が図れることは、当然に予想されるところである。
よって、刊行物1発明に刊行物2事項を適用することに困難性は認められない。
その際、刊行物1発明は、刊行物2事項の側方カバー48に相当するリブ(仕切板11、11')を有しているから、移動台に、刊行物2事項の溝52に相当する「リブの上端が入り込む案内溝」を設ければ良いこととなる。
新たに設ける「リブの上端が入り込む案内溝」は、異物侵入防止のために設けるのであるから、「スライドベースの収納スペースより外側」とすることは、当然に考慮すべき事項である。
よって、相違点3は格別なものではない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

以上のことから、補正発明は、刊行物1発明、刊行物2事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(5)補正案について
請求人は、回答書で補正案を示しているが、補正案には法的根拠はない。
一応、検討するに、「作業用テーブル表面上に直接設けられたスライドベース」とする補正案を採用したとしても、上記(4)の相違点2として検討したとおり、審決の結論に変わりはない。

3.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成19年2月5日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。
請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の際にあげられた刊行物及びその記載内容は、上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、補正発明において付加された事項を削除するものである。
そうすると、本願発明も、上記第2.2.(4)と同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2事項、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-12 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2010-06-01 
出願番号 特願2000-256545(P2000-256545)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23Q)
P 1 8・ 575- Z (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 遠藤 秀明
千葉 成就
発明の名称 異物混入防止機構を備えた卓上型ロボット  
代理人 岩堀 邦男  

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