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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60S
管理番号 1220303
審判番号 不服2009-13441  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-28 
確定日 2010-07-15 
事件の表示 特願2003-407060号「車両情報管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-162148号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成15年12月 5日の特許出願であって、平成21年 4月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年 7月28日付けで本件審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

II.平成21年 7月28日付けの手続補正の却下
[補正却下の決定の結論]
平成21年 7月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
個々の車両に備えられる車載コンピュータから、該車両の故障発生時に送信される当該車両の構成要素の状態に関する車両状態情報を取得する手段と、
前記車両状態情報及び当該車両の整備に関連する整備情報を含む、当該車両に関連する車両履歴情報を、当該車両のそれぞれに固有の車両特定番号に対応付けて格納可能な車両情報データベースと、
前記車両状態情報に含まれる、当該車両の挙動、及び車両位置情報に関連する情報と、前記整備情報とに基づいて、当該車両におけるユーザの運転操作に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段と、
前記車両履歴情報を、前記車両情報データベースに格納する手段と、
前記車両情報データベースに格納された車両履歴情報を、当該車両に関連付けられた車両属性情報に基づいて検索する手段と、を備える、車両情報管理装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「車両における消耗部品の交換時期を特定する手段」を「車両におけるユーザの運転操作に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段」と限定するものであって、この限定した事項は、願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例の記載事項
原査定の平成21年 1月 9日付けの拒絶理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-370630号公報(以下「引用例1」という。)には、「自動車の予防保全サービスシステム」に関し、図面とともに以下の事項が記載または示されている。

a:「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両部品の耐用年数、センタに集められた部品状態センサから得られる車両部品状態情報、車両が使用された環境情報に基づいて車両に使用されている要点検部品の劣化状態を判定し、要点検部品が交換時期に来たときに警告を発する予防保全サービスシステムに関する。」

b:「【請求項4】 複数の車両を管理する事業体と該事業体が管理する各車両の要点検部品の部品状態の監視について予防保全サービス契約を締結したサービス提供管理会社において,予め事業体から供給される自己の管理する車両の車両情報を記憶する車両データベースと,予め事業体から供給され前記車両データベースに記憶される各車両の要点検部品の各部品の内容・耐用年数を記憶する車両点検部品データベースと,前記車両点検部品データベースに記憶される各要点検部品の内、常時部品状態の監視を必要とする部品に取り付けたセンサを記憶する部品状態センサデータベースと,前記車両データベースに記憶される車両に取り付けられ、車両の周囲の環境状態を検出するセンサを記憶する環境センサデータベースと,前記車両データベースに記憶される車両を使用する環境状態を記憶する車両使用環境データベースと,前記各車両から提供される道路・路面データに基づいて地図上に道路・路面情報を記憶する道路・路面情報データベースと,前記車両データベースに記憶されている各車両に使用されている各部品の現在の劣化状態がどのような状態であるかを記憶する車両状態監視データベースと,点検・整備時に前記車両点検部品データベースに記憶される各要点検部品についての修理・交換した情報を記憶するメンテナンスデータベースと,全国の地図情報を記憶する地図データベースと,を備え、
前記車両点検部品データベースに記憶される要点検部品を前記部品状態センサデータベースに記憶される部品状態センサからの部品状態情報と、前記環境センサデータベースに記憶される環境センサから出力される車両の周囲の環境状態情報に基づいて前記車両使用環境データベースに記憶される車両を使用する環境状態情報と前記道路・路面情報データベースに記憶される道路・路面情報とによってその劣化状態を判定し、前記車両状態監視データベースに各部品の現在の劣化状態を記憶するようにしたことを特徴とする自動車の予防保全サービスシステム。
【請求項5】 前記車両点検部品データベースに記憶してあるそれぞれの要点検部品の内、前記部品状態センサデータベースに記憶されている部品状態センサの検出データに基づき交換時期を判定し、前記部品状態センサが取り付けられていない部品については環境センサデータベースに記憶されている使用環境に応じて補正した耐用年数に基づき交換時期を判定し、交換時期に到来したことを検出すると、交換の警告を前記事業体に発信するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の自動車の予防保全サービスシステム。
【請求項6】 前記車両点検部品データベースに記憶してあるそれぞれの要点検部品の内、前記部品状態センサデータベースに記憶されている部品状態センサの検出データの単位時間当たりの部品状態変化と過去の単位時間当たりの走行距離とから要点検部品の劣化進行状態を演算し要点検部品の時間変化に基づき交換時期の予測値を演算をし、前記部品状態センサが取り付けられていない部品については環境センサデータベースに記憶されている使用環境に応じて補正した耐用年数に基づき交換時期の予測値を演算をし、該予測演算値を前記事業体に発信するようにしたことを特徴とする請求項4又は5に記載の自動車の予防保全サービスシステム。
・・・
【請求項8】 前記メンテナンスデータベースに記憶されるメンテナンスデータに基づき前記車両点検部品データベースに記憶される部品の内容・耐用年数を書換えるようにしたことを特徴とする請求項4、5、6又は7に記載の自動車の予防保全サービスシステム。
【請求項9】 前記メンテナンスデータベースの書換に伴い、交換した要点検部品の各部品の内容・耐用年数を記憶する車両点検部品データベースの内容を更新するようにしたことを特徴とする請求項4、5、6、7又は8に記載の自動車の予防保全サービスシステム。」

c:「【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような自動車部品の点検は、従来から自動車検査証を陸運局から受ける際に、定期点検を行い、法定点検を受けたときに行うのが一般的である。しかしながら、最近の自動車部品は、性能が良いことから故障を起こすことが少なく、実際に故障が生じたときに故障した部品を交換するということを行っている。このような自動車部品の劣化状態は、外部から観察しただけでは判らず、自動車の使用頻度によっては、劣化の程度が早い場合がある。一旦、故障が生じると、部品交換をするなどの修理をしない限り走行させることが出来ないことが多く、運転走行に支障を来す状態となる。
【0004】また、自動車部品は、自動車を走行させなくても経年変化によって劣化し、同車種の自動車であっても走行環境(豪雪地帯、海岸地帯等)によって自動車部品の劣化の速度は異なる。したがって、従来のような自動車検査証を陸運局から受ける際とか、法定点検の際に自動車部品の点検を行う程度では、きめ細かい自動車部品のメンテナンスができず、常に安定した状態で自動車を走行させられるようにすることができないという問題がある。
【0005】本発明の1つの目的は、車両に使用された要点検部品の耐用年数と車両部品に取り付けられた部品状態センサから得られる車両部品状態情報に基づいて、又は車両部品の耐用年数に基づき車両が使用さる走行環境及び車両が走行する道路環境と走行距離に基づいて要点検部品の劣化状態を判定し、要点検部品の劣化状態が予め設定した基準に達し交換時期に来たときに部品交換の警告を発することのできる予防保全サービスシステムを提供することにある。
【0006】本発明の他の1つの目的は、車両に使用された要点検部品の耐用年数と車両部品に取り付けられた部品状態センサから得られる車両部品状態情報に基づいて、又は車両部品の耐用年数に基づき車両が使用さる走行環境及び車両が走行する道路環境と走行距離に基づいて要点検部品の劣化状態を判定し、過去の単位時間当たりの走行距離と走行状態とから要点検部品の劣化進行状態を演算し要点検部品の劣化状態が予め設定した基準に達する部品交換時期の到来を予測し、部品交換時期の到来予測値を定期的に発信することのできる予防保全サービスシステムを提供することにある。」

d:「【0013】事業体1から事業体1が管理する車両2の車両情報、車両2に使用されている部品情報の送信を受け、部品情報のサービスの提供の依頼を受けたサービス提供管理会社3は、事業体1の希望する部品情報のサービスを、回線5を使用して通信中継媒体(通信網/地上波/衛星)4に送り、事業体1の要求に基づく部品情報サービスを受信した通信中継媒体(通信網/地上波/衛星)4から回線7を経由して、事業体1に送る。また、このサービス提供管理会社3は、部品情報が部品交換の警告の場合は、部品交換警告情報を、回線5を使用して通信中継媒体(通信網/地上波/衛星)4に送り、この通信中継媒体(通信網/地上波/衛星)4から回線6を経由して、車両2の車載機器に送る。
【0014】この事業体1は、図7に示す如き構成の処理装置を有している。すなわち、処理装置10は、CPU11を有しており、このCPU11によってあらゆる演算が行われる。このCPU11には、バスラインを介して入力部12と、表示部13が、また、バスラインを介して各種データベースである記憶装置が接続されている。この入力部12は、処理装置10の処理(データの書き込み、読み出し等)を行うものである。14は、アンテナで、事業体1が管理する車両2の車載機器20やサービス提供管理会社3と交信を行うためのものである。
【0015】また、記憶装置には、事業体1が管理する車両2の情報を記憶しておく車両データベース15、車両データベース15に登録される各車両に使用されている定期的に点検してチェックする必要のある部品の一覧リストを記憶する車両点検部品データベース16、劣化したため部品交換するなどメンテナンスを行った情報を記憶する車両メンテナンスデータベース17、サービス提供管理会社3から送信されてくる各車両に使用されている部品の現在の劣化状態を記憶する車両状態監視データベース18、サービス提供管理会社3から送信されてきた情報を一時記憶するデータメモリエリア19がある。
【0016】事業体1が管理する車両2の車載機器20は、図8に示す如き構成となっている。すなわち、車載機器20は、CPU21を有しており、このCPU21によってあらゆる演算が行われる。このCPU21には、バスラインを介してマンマシンインターフェース22が、また、バスラインを介して送受信装置23が接続されている。このマンマシンインターフェース22は、車載機器20の操作(データの書き込み、読み出し等)を行い、送受信装置23は、マンマシンインターフェース22から入力されたデータ類の送信、サービス提供管理会社3から送信されるデータの受信を、アンテナ24を介して行うものである。また、CPU21には、バスラインを介してI/O25が接続されており、このI/O25には、マンマシンインターフェース22によって入力したデータ類、サービス提供管理会社3から受信したデータを表示するディスプレイ26と、速度センサ、車速センサ、スリップセンサ、降雨センサ、照度センサ、バッテリセンサ、オイルセンサ、エンジン温度センサ、エンジン回転センサ、前照灯・フォグランプ点灯センサ、室内温度センサ等の各種センサ27が接続されている。さらに、CPU21には、バスラインを介してGPS受信機28が接続されており、このGPS受信機28によってGPS衛星8からの位置信号9をアンテナ29を介して受信できるようになっている」

e:「【0017】また、サービス提供管理会社3は、図9に示す如き構成の処理装置30を有している。すなわち、処理装置30は、CPU31を有しており、このCPU31によってあらゆる演算が行われる。このCPU31には、バスラインを介してマンマシンインターフェース32が、また、バスラインを介して各種データベースである記憶装置(具体的には、図16に示す如き会員情報カード50)が接続されている。このマンマシンインターフェース32は、処理装置30の処理(データの書き込み、読み出し等)を行うものである。33は、アンテナで、事業体1や、事業体1が管理する車両2の車載機器20と通信中継媒体(通信網/地上波/衛星)4を介して交信を行うためのものである。また、記憶装置には、会員の顧客データベース34、車両データベース35、車両点検部品データベース36、部品状態センサデータベース37、環境センサデータベース38、車両使用環境データベース39、道路・路面情報データベース40、車両状態監視データベース41、車両メンテナンスデータベース42、地図データベース43、データメモリエリア44がある。
【0018】会員の顧客データベース34は、サービス提供管理会社3と事業契約を交わす事業体1のデータをデータベース化して収納するもので、事業体名、住所、職業、連絡先、業種(運送会社1A、レンタカー業1B、カーディーラー1C、タクシー会社1D、観光会社1E)等が記憶されている。
【0019】車両データベース35は、顧客データベース34に記憶された顧客(事業体1)が管理する車両2のそれぞれの車両を特定する情報(車両情報)をデータベース化して収納するもので、車両を特定する情報(車両情報)として、メーカー名、車種、タイプ(例えば、4ドアハードトップ)、グレード(例えば、VIP)、初年度登録年月日(例えば、平成13年1月)等が記憶されている。
【0020】車両点検部品データベース36は、車両データベース35に記憶されている顧客(事業体1)が管理する車両2のそれぞれの車両に使用された要点検部品の各部品データをデータベース化して収納するもので、タイヤ、ヘッドランプ、ストップランプ、ブレーキ、バッテリ、フューズ、ウィンカ、エンジンオイル、スピードメータ、エンジン回転数センサ、燃料計等の部品名、型番、部品番号、製造年月が記憶されている。
【0021】部品状態センサデータベース37は、車両点検部品データベース36に記憶されている各車両に使用された要点検部品の内、定期的に劣化状態を監視する必要がある(車両走行上直接関係してくる)ものについて取り付けられているセンサデータをデータベース化して収納するもので、ヘッドランプ切センサ、ストップランプ切センサ、バッテリセンサ、断線センサ、照度センサ、室内温度センサ、燃料センサ、ウィンカ、ラジュエタ温度センサ等が記憶されている。
【0022】環境センサデータベース38は、車両2が走行している周囲環境を検知するセンサについてのデータをデータベース化して収納するもので、外気温センサ、降雨センサ、振動センサ等が記憶されている。
【0023】車両使用環境データベース39は、車両が使用されている環境(海岸地方、豪雪地帯、灼熱地帯、多湿地方、山間部等)をデータベース化して収納するものである。
【0024】道路・路面情報データベース40は、車両を走行させる道路の情報(非舗装道路、登坂路、蛇行路等)、路面の情報(砂利道、凍結等)をデータベース化して収納するものである。
【0025】車両状態監視データベース41は、車両に使用されている各部品の現在の劣化状態をデータベース化して収納するものである。
【0026】車両メンテナンスデータベース42は、劣化したため部品交換するなどメンテナンスを行った情報をデータベース化して収納するものである。
【0027】地図データベース43は、全国の地図データをデータベース化して収納するものである。
【0028】データメモリエリア44は、事業体1及び車両2から送信されてくる各情報を一時記憶しておくものである。」

f:「【0035】そこで、事業体1は、各車両2に使用される要点検部品のそれぞれの劣化状態を判定する条件(判定条件)を通信事業者4を介して(138)、サービス提供管理会社3に送信する(140)。事業体1から各車両2に使用される要点検部品のそれぞれの劣化状態を判定する条件(判定条件)の送信を受けると、サービス提供管理会社3においては、劣化状態の判定条件を処理装置30のデータベースに格納する(142)。
【0036】このような状態で、車両2からは、部品状態センサ27から取り込んだデータ(バッテリ状態等)の送信をサービス提供管理会社3に行い(144)、サービス提供管理会社3においては、車両2から送信されてきた部品状態センサ27から取り込んだデータ(バッテリ状態等)を部品状態センサデータベース37に格納する(146)。さらに、車両2からは、自動車が走行する走行地域の環境状態(降雪、降雨等)を検出する環境センサに関するデータをサービス提供管理会社3に送信し(148)、サービス提供管理会社3においては、車両2から送信されてきた環境センサから取り込んだデータを環境センサデータベース38に格納する(150)。
【0037】また、車両2は、複数のGPS衛星8からの電波をアンテナ29を介してGPS受信機28によって受信し、自動車の位置を演算し、この求めた位置データをサービス提供管理会社3に送信し(152)、車両2から当該車両の位置データの送信を受けると、サービス提供管理会社3においては、車両2が現に使用(走行)されているときは、当該車両2の位置データに基づいて、サービス提供管理会社3の各車両2から収集した使用環境を記憶してある環境センサデータベース38の情報により、車両2の現在走行している環境を検出し、この使用環境データを処理装置30の車両使用環境データベース39に格納する(154)。また、サービス提供管理会社3においては、部品状態センサ27によって常時監視されている部品について部品状態センサ27によって検出されるデータに基づいて部品の劣化状態に至っているか否かの劣化判定評価を行う(156)。さらに、サービス提供管理会社3においては、部品状態センサ27によって常時監視されていない部品について、当該部品そのものが有している耐用年数を基に、その各部品毎に設定されている耐用年数に、車両2に取り付けられている環境センサから得られたデータ、さらに各種車両から得られる車両走行環境のプローブ情報に基づく補正値を加え、車両2に使用されている各部品の耐用年数を補正して部品の劣化判定評価を行う(158)。
【0038】このような状況において、事業体1は、各車両2に使用される要点検部品のそれぞれの劣化状態の問い合わせを、通信事業者4を介して(160)、サービス提供管理会社3に行う(162)。この事業体1から各車両2に使用される要点検部品のそれぞれの劣化状態の問い合わせがあると、サービス提供管理会社3は、事業体1から問い合わせのあった各車両2に使用される要点検部品のそれぞれの劣化状態について、その劣化状態についての回答を、通信事業者4を介して(164)、事業体1に行う(166)。」

g:「【0039】一方、車両2からは、一定周期で、部品状態センサ27から取り込んだデータの送信をサービス提供管理会社3に行う(168)。この部品状態センサ27から取り込んだデータの送信を車両2から定期的に受信すると、サービス提供管理会社3では、車両2から送信されてくる部品状態センサ27から取り込んだ部品状態センサデータを受信毎に部品状態センサデータベース37に格納する(170)。
【0040】さらに、車両2からは、一定周期で、環境センサから取り込んだ環境データの送信をサービス提供管理会社3に行う(172)。この環境センサから取り込んだ環境データの送信を車両2から定期的に受信すると、サービス提供管理会社3では、車両2から送信されてくる環境センサから取り込んだ環境データを受信毎に環境センサデータベース38に格納する(174)。
【0041】そして、サービス提供管理会社3においては、部品状態センサ27によって常時監視されている部品について、部品状態センサ27によって検出されるデータに基づいて部品の劣化状態の劣化判定評価を行う(176)。そして、部品状態センサ27によって常時監視されている部品について、サービス提供管理会社3において、部品状態センサ27によって検出されるデータに基づいて行った劣化判定評価の結果、当該部品の劣化状態から当該部品の内、交換時期の到来した部品の検出を行う(178)。さらに、サービス提供管理会社3においては、部品状態センサ27によって常時監視されていない部品について、耐用年数が到来した部品の検出を行う(180)。
【0042】この部品状態センサ27によって常時監視されている部品については、部品状態センサ27によって検出されるデータに基づいて行った劣化判定評価の結果、また、部品状態センサ27によって常時監視されていない部品については、耐用年数が到来した結果、交換が必要になった部品の検出を行うと、サービス提供管理会社3は、車両2に使用された要点検部品の内、交換時期に来た部品の連絡を、通信事業者4を介して(182)、事業体1に行う(184)。このサービス提供管理会社3から車両2に使用された要点検部品の内、交換時期に来た部品の連絡を受信すると、事業体1においては、各車両毎に該車両2に使用された要点検部品の内、交換時期に来た部品の登録を行う(186)。
【0043】この事業体1への交換時期に来た部品の連絡と共に、サービス提供管理会社3は、車両2(車載機器20)に対して、使用された要点検部品の内、交換時期に来た部品の交換の指示を与えて警告を行う(188)。このサービス提供管理会社3からの使用された要点検部品の内の交換時期に来た部品の連絡を受信すると、車両2(車載機器20)では、サービス提供管理会社3から連絡を受けた交換時期にきた部品についてこの交換時期の到来した要点検部品の交換を指示する警告を受信した車両2(車載機器20)においては、交換時期の到来した要点検部品の交換の指示を表示する(190)。」

h:「【0052】このサービス提供管理会社3からの会員としての登録通知の送信を受けると、サービス提供管理会社3からは、会員として登録された事業体1が管理する車両の車両情報(車両No、車種等)について図21に示す如く、
「次の事項を入力して下さい。
1.車両管理No
2.メーカー名
3.車種
4.グレード
5.タイプ
6.排気量
7.初年度登録年月
8.登録番号
9.総走行距離
10.その他 」
という自動車の予防保全サービスを受けようとする車両の情報を入力するメッセージ画面が送信されてくる。
【0053】この図21に示されるメッセージ画面の車両管理Noは、事業体1が自ら管理する車両を特定するために設定した車両Noである。・・・」

i:「【0082】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る自動車の予防保全サービスシステムによれば、車両に使用された要点検部品の耐用年数と車両部品に取り付けられた部品状態センサから得られる車両部品状態情報に基づいて、又は車両部品の耐用年数に基づき車両が使用さる走行環境及び車両が走行する道路環境と走行距離に基づいて要点検部品の劣化状態を判定し、要点検部品の劣化状態が予め設定した基準に達し交換時期に来たときに部品交換の警告を発することができる。
【0083】本発明に係る自動車の予防保全サービスシステムによれば、車両に使用された要点検部品の耐用年数と車両部品に取り付けられた部品状態センサから得られる車両部品状態情報に基づいて、又は車両部品の耐用年数に基づき車両が使用される走行環境及び車両が走行する道路環境と走行距離に基づいて要点検部品の劣化状態を判定し、過去の単位時間当たりの走行距離と走行状態とから要点検部品の劣化進行状態を演算し要点検部品の劣化状態が予め設定した基準に達する部品交換時期の到来を予測し、部品交換時期の到来予測値を定期的に発信することができる。」

j:摘記事項e、fの記載、特に、摘記事項fの「この事業体1から各車両2に使用される要点検部品のそれぞれの劣化状態の問い合わせがあると、サービス提供管理会社3は、事業体1から問い合わせのあった各車両2に使用される要点検部品のそれぞれの劣化状態について、その劣化状態についての回答を、通信事業者4を介して(164)、事業体1に行う(166)。」という記載からみて、サービス提供管理会社3は、「問い合わせのあった車両2について、車両データベース35、車両点検部品データベース36、部品状態センサデータベース37、車両状態監視データベース41、車両メンテナンスデータベース42等の各種データベースに格納された情報を、車両を特定する情報に基づいて検索する手段を備えること」は明らかである。

これらの記載からみて、上記引用例1には、
「車両2の車載機器のCPU21から、速度センサ、車速センサ、スリップセンサ、降雨センサ、照度センサ、バッテリセンサ、オイルセンサ、エンジン温度センサ、エンジン回転センサ、前照灯・フォグランプ点灯センサ、室内温度センサ等の各種の部品状態センサ27のデータを取得するアンテナ33と、
前記各種の部品状態センサ27のデータ及び車両2に使用されている各部品の現在の劣化状態のデータ、劣化したため部品交換するなどメンテナンスを行った情報を含む、当該車両2に関連する情報を、当該車両2のそれぞれを特定するための車両管理Noに対応付けて格納可能な車両データベース35、車両点検部品データベース36、部品状態センサデータベース37、車両状態監視データベース41、車両メンテナンスデータベース42等の各種データベースと、
前記各種の部品状態センサ27のデータに含まれる、当該車両2の速度、車速、スリップ、エンジン回転数等、及び車両2の位置データと、前記車両2に使用されている各部品の現在の劣化状態のデータ及び前記劣化したため部品交換するなどメンテナンスを行った情報とに基づいて、当該車両2におけるユーザの過去の単位時間あたりの走行距離と走行状態から要点検部品の劣化進行状態を演算し、部品交換時期を予測するCPU31と、
前記車両2に関連する情報を、前記各種データベースに格納する手段と、
前記各種データベースに格納された車両2に関連する情報を、車両2を特定する情報に基づいて検索する手段と、を備えるサービス提供会社3の処理装置30」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

原査定において周知例として提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-102148号公報(以下「引用例2」という。)には、「車両故障診断システム」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

k:「【請求項2】 車両情報を蓄積記憶する記憶手段と、
車両の故障を検出する検出手段と、
この検出手段により故障が検出されると、前記記憶手段に格納されている車両情報を無線により基地局に送信する送信手段と、
基地局側に設けられ、送信される車両情報に基づいて車両の故障を診断する診断手段と、
前記基地局から送信される前記診断手段での診断結果を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した診断結果を出力する出力手段とを具備することを特徴とする車両故障診断システム。」

l:「【0006】
【作用】車両情報を無線で基地局側の診断手段202に送って故障診断が行われる。基地局側の診断手段202として車載のマイクロコンピュータに比べて大型のコンピュータを使用できるから、マイクロコンピュータでは解析できなかったような複雑な故障を診断できる。請求項2の診断システムでは、車両が故障を検出したときに記憶手段101の車両情報が基地局201に送信され、診断手段202で解析される。その解析結果を受信手段103が受信すると、出力手段105が音声出力や表示出力として運転者に報知する。請求項3の診断システムでは、基地局201の診断手段202側から車両に対して故障診断を要求すると、車両は記憶手段101に記憶している車両情報を基地局201に無線で送信し、診断手段202で故障を診断する。したがって、このような診断要求を定期的に行うようにすれば、従来は整備工場に持込まざるをえなかった定期点検などが、自宅などにいながらにしてできる。」

m:「【0007】
【実施例】図2?図4により本発明の一実施例を説明する。図2は車両故障診断システムの一実施例を示すもので、1はマイクロコンピュータを主体に構成される情報処理部であり、この情報処理部1には、ディスプレー2、スピーカ3、ブザー4、データ入力装置5、メモリ6、センサ群7、出力装置群8、移動通信機器9がそれぞれ接続されている。データ入力装置5は、エンジンオイル、オイルエレメント、エアクリーナ、バッテリなどを交換した時期を入力するために使用される。センサ群7はたとえば次に示すようなセンサを含むものである。
【0008】(1)エンジン冷却水温を検出する水温センサ
(2)エンジンオイル温度を検出する温度センサ
(3)エンジン回転数を検出する回転数センサ
(4)車速を検出する車速センサ
(5)スロットル開度を検出するスロットルセンサ
(6)エンジンノックを検出するノックセンサ
(7)排気ガス中の酸素濃度を検出するO_(2)センサ
(8)吸入空気量を検出するエアフローメータ
(9)エンジンオイルの圧力を検出する油圧センサ
(10)ブレーキペダルの踏込みを検出するブレーキスイッチ
(11)セレクタレバーのシフト位置を検出するシフトスイッチ
(12)空調装置の冷媒温度を検出する温度センサ
(13)車体にかかる垂直方向の加速度を検出する縦Gセンサ
(14)車体にかかる横方向の加速度を検出する横Gセンサ
(15)バッテリ電圧を検出する電圧センサ
【0009】出力装置群8は、エンジン回転数と吸入空気量とに基づいて燃料噴射量を演算して噴射弁を制御する燃料噴射制御装置、エンジン回転状態やノックセンサからの信号などに基づいて点火時期を制御する点火時期制御装置、アイドル時のエンジン回転数を制御するアイドル回転数制御装置などであり、これらの出力信号も診断処理部1に入力されている。
【0010】メモリ6は、上記センサ群7で検出した車両各部の状態や出力装置群8の出力信号の所定時間の履歴(以下、この車両情報を運転状態履歴と呼ぶ)を記憶するとともに、入力装置5から入力されたオイル交換時期などの保守状況(以下、この車両情報を保守履歴と呼ぶ)を記憶する。
【0011】移動通信機器9と無線交信する基地局10は公衆電話回線11を介して処理センター12と接続され、処理センター12には、車両から送信されてくる車両情報に基づいて車両故障を診断したり定期診断を行うための大型コンピュータからなる大型診断装置20が設けられている。
【0012】このように構成された故障診断システムの動作を図3,図4のフローチャートにより説明する。図3は故障発生時に車両側で使用されるフローチャートであり、たとえば、センサ群7からの車両情報が異常値を示す時に起動される。ステップS1で故障の程度を判定し、軽故障であればステップS2に進んで、その故障の内容を音声データと表示データに変換してスピーカ3から故障内容を報知するとともにブザー3を鳴動させる。さらに、ディスプレー2で故障内容を表示する。
【0013】ここで、軽故障とは、直ちに車両の運転を中止する必要ない程度の故障であり、重故障とは直ちに車両を停止して点検修理を必要とする程度の故障である。軽故障か重故障かは、センサ群7や出力装置群8からの現在の出力信号の状態、運転状態履歴、保守履歴などの車両情報を総合的に勘案して判断され、過去の経験にしたがって予めどのような場合が重故障か軽故障かを入力しておき、その車両情報とつきあわせて診断処理部1で判定する。
【0014】ステップS1で重故障と判定されると、ステップS3に進み、センサ群7や出力装置群8の現在の出力信号と、センサ群7で検出された水温やエンジン回転数などのデータや出力装置群8の出力信号の履歴、すなわち運転状態履歴と、オイル交換時期などの履歴、すなわち保守履歴とを取り込んで、基地局10へ無線送信するためのデータに変換する。ステップS4で処理センター12を呼出し、ステップS5で通信回線が確立されたと判定されるとステップS6に進み、ステップS3で作成された送信データを移動通信機器9から基地局10と公衆電話回線11を経由して処理センター12に送信する。」

n:「【0017】以上のように、車両側で異常が検出され、その異常が重大な故障の原因となる場合や、故障の原因が不明な時には、現在のセンサ群7や出力装置群8の出力状態と運転状態履歴と保守履歴とを車両側から処理センター12に送信して、処理センター12の大型のコンピュータにより解析して故障診断を行い、その結果を車両に送信して運転者に報知する。したがって、運転者はその場所にいながらにして故障の原因がわかり、修理することも可能である。」

原査定において周知例として提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-110689号公報(以下「引用例3」という。)には、「車両管理用データ伝送システム」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

o:「【0018】また、基地局が車両の使用頻度に関する車両情報を検出することによって車両の保守時期に関する情報を算出する点検時期算出手段を有する。具体的には、車両の使用者によって異なる車両使用状況を判定して適切な車両点検時期を算出する。」

p:「【0030】車載端末11のセンサ16とテレメータ17とから収集された車両情報は、車両CPU12にて制御管理されている。ここで車両情報とは、例えばオルタネータ電圧、バッテリー電圧、油圧、エンジンオイルの汚れ度、冷却水温度、燃料残量、フュエルポンプ作動信号、点火系の制御情報、ランプ系断線情報、パワーウインドウなど作動系の作動情報、タイヤ空気圧、ブレーキパッドの交換時期、アライメントの調整時期など、車両の走行に関わるあらゆる情報である。
【0031】前記車両情報は、車両CPU12の内部メモリに保存されている基準データとの比較が車両CPU12にて行われ、比較結果を表示部15に表示する。基準データとの比較の結果として異常データが検出された場合は、その車両情報4を基地局設備21に送信し、基地局設備のコンピュータ22にて異常データを解析して、異常の発生した個所を特定し、故障への対処方法、処置方法、あるいは故障の起きそうな兆候が検出されれば予防点検を促す情報を導出して保守情報とし、この保守情報5を車載端末11に送信し、車載端末11の表示部15に表示する。この表示により、車両運転者に車両の保守や修理処置を行うよう注意を促す。上述した保守情報の導出は、簡易な異常あるいは兆候であれば、車載端末11にて行うことも可能である。」

q:「【0036】車両CPU12に一旦収集された車両情報が正常な場合は、最終送信時からの経過時間と車両使用時間を加味して一定時間ごとに、車両情報4を基地局設備21に送信する。一方、車両情報に異常が検出された場合や、車両情報が注意範囲を超えた場合は、車両CPU12が送信すべきと判断し、車載端末11の表示部15に表示を行なうと同時に、車両情報4を速やかに基地局設備21に送信する。このことにより車両情報を基地局2が必要な場合だけデータ伝送を行うため、通信電波の有効利用を図ることができる。」

r:「【0040】基地局設備21では、データベース26と車両情報とを比較、演算を行う。データベース26からは、車両に関する固有情報、すなわち車両製造時の規格・基準値などのほか、車種、型式、年式、自家用・商用あるいは特殊な使用法をするか否かの区分、使用地域、使用年数、車両使用者の性別・年令などの初期データを取り出すと共に、車両の部品の規格やマージンなども取り出し、これを車両情報と比較、演算することにより、規格を越えた部品や、規格を越えそうな部品および部位を特定するとともに、車両の点検時期を算出する。またその結果をコンピュータ22の表示部25に表示する。またその結果を車両1へ同時に伝送し、車両CPU12を介して表示部15にて表示することができる。表示部15に表示される情報は、例えば故障の部位と修理方法、あるいは故障の起きそうな部位の警告メッセージ、あるいは車両の点検時期などである。このことにより車両の不具合や事故を未然に防ぎ、また予防保全を行うことができる。」

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「サービス提供会社3の処理装置30」は、本願補正発明の「車両情報管理装置」に関するものであり、引用発明の「車両2の車載機器のCPU21」は、本願補正発明の「個々の車両に備えられる車載コンピュータ」に相当し、以下同様に、「速度センサ、車速センサ、スリップセンサ、降雨センサ、照度センサ、バッテリセンサ、オイルセンサ、エンジン温度センサ、エンジン回転センサ、前照灯・フォグランプ点灯センサ、室内温度センサ等の各種の部品状態センサ27のデータ」は「当該車両の構成要素の状態に関する車両状態情報」に、「取得するアンテナ33」は「取得する手段」に、「前記各種の部品状態センサ27のデータ及び車両2に使用されている各部品の現在の劣化状態のデータ、劣化したため部品交換するなどメンテナンスを行った情報を含む、当該車両2に関連する情報」は「前記車両状態情報及び当該車両の整備に関連する整備情報を含む、当該車両に関連する車両履歴情報」に、「当該車両2のそれぞれを特定するための車両管理No」は「当該車両のそれぞれに固有の車両特定番号」に、「車両データベース35、車両点検部品データベース36、部品状態センサデータベース37、車両状態監視データベース41、車両メンテナンスデータベース42等の各種データベース」は「車両情報データベース」に、「前記車両2に関連する情報を、前記各種データベースに格納する手段」は「前記車両履歴情報を、前記車両情報データベースに格納する手段」に、「前記各種データベースに格納された車両2に関連する情報を、車両2を特定する情報に基づいて検索する手段」は「前記車両情報データベースに格納された車両履歴情報を、当該車両に関連付けられた車両属性情報に基づいて検索する手段」にそれぞれ相当する。
そして、本願補正発明の「前記車両状態情報に含まれる、当該車両の挙動、及び車両位置情報に関連する情報と、前記整備情報とに基づいて、当該車両におけるユーザの運転操作に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段」と、引用発明の「前記各種の部品状態センサ27のデータに含まれる、当該車両2の速度、車速、スリップ、エンジン回転数等、及び車両2の位置データと、前記車両2に使用されている各部品の現在の劣化状態のデータ及び前記劣化したため部品交換するなどメンテナンスを行った情報とに基づいて、当該車両2におけるユーザの過去の単位時間あたりの走行距離と走行状態から要点検部品の劣化進行状態を演算し、部品交換時期を予測するCPU31」とは、「車両2の速度、車速、スリップ、エンジン回転数等」は、「車両の挙動」に関連する情報であり、また、通常、「要点検部品」は「消耗部品」であることから、「前記車両状態情報に含まれる、当該車両の挙動、及び車両位置情報に関連する情報と、前記整備情報とに基づいて、当該車両の走行状態等に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段」である限りにおいて少なくとも一致する。
そうすると、両者は、
「個々の車両に備えられる車載コンピュータから、当該車両の構成要素の状態に関する車両状態情報を取得する手段と、
前記車両状態情報及び当該車両の整備に関連する整備情報を含む、当該車両に関連する車両履歴情報を、当該車両のそれぞれに固有の車両特定番号に対応付けて格納可能な車両情報データベースと、
前記車両状態情報に含まれる、当該車両の挙動、及び車両位置情報に関連する情報と、前記整備情報とに基づいて、当該車両の走行状態等に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段と、
前記車両履歴情報を、前記車両情報データベースに格納する手段と、
前記車両情報データベースに格納された車両履歴情報を、当該車両に関連付けられた車両属性情報に基づいて検索する手段と、を備える車両情報管理装置」
の点で一致し、以下の各点で相違するものと認められる。

<相違点1>
個々の車両に備えられる車載コンピュータから、当該車両の構成要素の状態に関する車両状態情報を取得する手段において、「当該車両の構成要素の状態に関する車両状態情報」が、本願補正発明では、「該車両の故障発生時に送信される」のに対して、引用発明では、そのような言及がない点。

<相違点2>
車両状態情報に含まれる、当該車両の挙動、及び車両位置情報に関連する情報と、整備情報とに基づいて、当該車両の走行状態等に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段において、「当該車両の走行状態等」が、本願補正発明では、「当該車両におけるユーザの運転操作」であるのに対して、引用発明では、「当該車両2におけるユーザの過去の単位時間あたりの走行距離と走行状態」である点。

4.相違点の検討
<相違点1>について
車両各部の状態に関する車両情報を、該車両の故障発生時に送信することは、出願前周知の技術である(例えば、上記引用例2の摘記事項k?nや上記引用例3の摘記事項p、qを参照のこと)。
よって、本願補正発明でいう上記相違点1の構成は、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について
上記引用例2の摘記事項m、nには、
「車両情報に含まれる車速、縦G、横G等の車両の挙動に関連する情報と保守履歴に基づいて、当該車両における運転状態履歴に応じた故障診断を行うもの」が記載されており、上記引用例2に記載された事項の「車両情報」、「保守履歴」、「運転状態履歴」は、それぞれ本願補正発明の「車両状態情報」、「整備情報」、「ユーザの運転操作の履歴」に相当するから、上記引用例2には、
「車両状態情報に含まれる車速、縦G、横G等の車両の挙動に関連する情報と整備情報に基づいて、当該車両におけるユーザの運転操作の履歴に応じた故障診断を行うもの」が開示されているものと認められる。
そうすると、引用発明の「車両状態情報に含まれる、当該車両の挙動、及び車両位置情報に関連する情報と、整備情報とに基づいて、当該車両におけるユーザの過去の単位時間あたりの走行距離と走行状態に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段」における「当該車両におけるユーザの過去の単位時間あたりの走行距離と走行状態」として、上記引用例2に開示された「当該車両におけるユーザの運転操作の履歴」を適用して、本願補正発明でいう上記相違点2における構成とすることは、故障診断を行うための情報と、消耗部品の交換時期を特定するための情報とが相互に強く関連するものであることから、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果について検討してみても、引用発明、上記引用例2に開示された事項、及び上記周知技術から当業者が予測し得たものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記引用例2に開示された事項、および上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

III.本願発明について
1.本願発明の記載事項
平成21年 7月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成21年 3月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】
個々の車両に備えられる車載コンピュータから、該車両の故障発生時に送信される当該車両の構成要素の状態に関する車両状態情報を取得する手段と、
前記車両状態情報及び当該車両の整備に関連する整備情報を含む、当該車両に関連する車両履歴情報を、当該車両のそれぞれに固有の車両特定番号に対応付けて格納可能な車両情報データベースと、
前記車両状態情報に含まれる、当該車両の挙動、及び車両位置情報に関連する情報と、前記整備情報とに基づいて、当該車両における消耗部品の交換時期を特定する手段と、
前記車両履歴情報を、前記車両情報データベースに格納する手段と、
前記車両情報データベースに格納された車両履歴情報を、当該車両に関連付けられた車両属性情報に基づいて検索する手段と、を備える、車両情報管理装置。」(以下「本願発明」という。)

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記II.2に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.1で検討した本願補正発明の「車両におけるユーザの運転操作に応じた消耗部品の交換時期を特定する手段」が「車両における消耗部品の交換時期を特定する手段」となるものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、前記II.3における相違点1のみで相違するものであることから、前記II.4に記載したとおりの理由により、本願発明は、引用発明、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-12 
結審通知日 2010-05-18 
審決日 2010-06-03 
出願番号 特願2003-407060(P2003-407060)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60S)
P 1 8・ 121- Z (B60S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 裕治朗  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 藤井 昇
植前 津子
発明の名称 車両情報管理装置  
代理人 高田 大輔  
代理人 川口 嘉之  
代理人 松倉 秀実  
代理人 和久田 純一  
代理人 平川 明  
代理人 今堀 克彦  

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