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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16C
管理番号 1220362
審判番号 不服2009-11840  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-29 
確定日 2010-07-14 
事件の表示 特願2003-7053「超薄肉形転がり軸受」拒絶査定不服審判事件〔平成16年8月5日出願公開、特開2004-218745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年1月15日の出願であって、その請求項1?10に係る発明は特許を受けることができないとして、平成21年4月2日付けで拒絶査定がされたところ、平成21年6月29日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?7に係る発明は、平成21年2月12日付け、及び平成22年3月23日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。なお、平成21年6月29日付けの手続補正は、当審において平成22年1月26日付けで決定をもって却下された。
「【請求項1】
内周に軌道面を有する外方部材と、外周面に軌道面を有する内方部材と、前記外方部材および内方部材の軌道面間に介装された複数の転動体と、各転動体を円周方向で等配する保持器とを備えた超薄肉形転がり軸受であって、
前記保持器は、複数の円弧状セグメントで構成され、隣り合うセグメントの一方の結合部に形成された接合凸部を、他方の結合部に形成された接合凹部に嵌合させて環状に結合し、前記接合凹部とその接合凹部に径方向から押し込まれる接合凸部とは、前記セグメントの径方向寸法と同一の径方向寸法を有すると共に、径方向断面で径方向と直交する方向の寸法が押し込み方向に向けて小さくなるテーパ状の嵌合面を有し、その嵌合面の周方向に連続した環状の係合部を形成して凹凸係合させることにより、両嵌合面を密着させて接合したことを特徴とする超薄肉形転がり軸受。」

2.本願出願前に日本国内において頒布され、当審において平成22年1月26日付けで通知した拒絶理由に引用された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開2000-329143号公報
(2)刊行物2:特開2002-88931号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「超薄肉形転がり軸受およびその保持器」に関して、図面(特に、図1、及び3?8を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「本発明は、産業用ロボット、工作機械、医療機器などに使用される超薄肉形の転がり軸受、および当該軸受の保持器に関する。」(第2頁第2欄第16?18行、段落【0001】参照)
(b)「図1は、図8に示すCTスキャナ装置の軸受25の構造を示すものである。この軸受25は、リング状の外方部材1と、外方部材1の内周側に同心配置した同じくリング状の内方部材2と、内方部材2と外方部材1との間に介装した転動体3と、転動体3を円周方向等間隔で保持する保持器4と、軸受の両端開口部を密封するシール5a、5bと、軸受内部に予圧を付与するための予圧付与手段Sとを主な構成要素とする。(中略)
この複列アンギュラ玉軸受は、ボール3の径(直径)dBとピッチ円径(直径)PCDとの比φを0.03以下(φ=dB /PCD ≦0.03)とした超薄肉形転がり軸受であり、例えばボール直径は1/2インチ(12.7mm)、PCDは1041.4mmm 、両者の比φは0.012に設定される。」(第4頁第5欄第4?25行、段落【0016】?【0018】参照)
(c)「外方部材1の一端側の端面には、取付け孔8が形成され、この取付け孔8に図示しないボルト等をねじ込むことによって、外方部材1が図8に示すCTスキャナ装置の回転架台27に固定される。内方部材2の他端側の端面(本実施形態では環状部材2aの他端側端面)にも同様に取付け孔9が設けられており、この取付け孔9に図示しないボルト等をねじ込むことによって内方部材2が固定架台26に固定される。以上から、外方部材1が回転架台27と共に回転する回転部材となり、内方部材2を構成する環状部材2aおよび嵌合部材2bが非回転の固定部材となる。CTスキャナ装置の構造によっては、上記とは逆に外方部材1を非回転の固定側、内方部材2を回転架台27と共に回転する回転側とすることもできる。」(第4頁第6欄第1?13行、段落【0023】参照)
(d)「各セグメント40の両端には、隣り合うセグメントと結合するための結合部A、Bが設けられる。結合部A、Bの形状には2種類あり、各セグメント40の両端にそれぞれ何れか一方の結合部が設けられる。両結合部A、Bには、結合相手となるセグメントの結合部と円周方向および半径方向で凹凸係合する二種類の嵌合部、すなわち円周方向で凹凸係合する円周方向嵌合部44a、44bと、半径方向で凹凸係合する半径方向嵌合部45a、45bとがそれぞれ設けられる(図4および図5参照)。
一方の結合部(図3のA)の円周方向嵌合部44aは、先端側を幅広にした凸状をなし、例えば図4に示すように、半径方向に延びるほぼ円筒面状の係合部46と、係合部46より軸方向幅の狭い幅狭部47とで構成される。また、当該結合部Aの半径方向嵌合部45aは凹状をなし、上記凸状の円周方向嵌合部44aの軸方向両側でかつ保持器4の半径方向一部領域(例えば半径方向の中央部)に形成される。凸状の円周方向嵌合部44aは、先端側を幅広にした形状であれば他の形状(例えば台形)であってもよく、また、凹状の半径方向係合部45aは、保持器4の半径方向の一部領域が凹んでいるのであれば、その形状は特に問わない。
図5に示すように、他方の結合部Bの円周方向嵌合部44bは、上記凸状の円周方向嵌合部44aに適合する凹状に形成される。また、当該結合部Bの半径方向嵌合部45bは、上記凹状の半径方向嵌合部44aに適合する凸状に形成される。
上記構成において隣り合うセグメント同士の結合は、例えば一方の結合部(例えばA)を他方の結合部(例えばB)に対し、半径方向に押し込むことによって行われる。結合後は、円周方向嵌合部44a、44bの凹凸係合によりセグメント同士の円周方向の分離が防止され、半径方向嵌合部45a、45bの凹凸係合により、半径方向の分離が防止される。この時、仮に円周方向嵌合部44a、44bのハメアイがルーズであっても半径方向嵌合部45a、45b同士の嵌合により、結合部A、B間に締め代が付与されるので、セグメント40同士でぐらつきを生じることなく、両者を確実に結合することができる。
図4および図5では、一方の結合部(例えばA)において、円周方向嵌合部44a半径方向嵌合部45aを凹状と凸状の組合わせとしているが、双方の嵌合部44a、45aを凹状に、あるいは凸状に形成することもできる。
図6および図7に上記結合部A、Bの他の実施形態を示す。図4および図5では、両結合部A、Bにおいて、円周方向嵌合部と半径方向嵌合部(44a、45a)(44b、45b)とを別体に設けた場合を説明したが、図6および図7は両結合部A、Bで円周方向および半径方向嵌合部(44a、45a)(44b、45b)を一体に設けたものであり、図4および図5と同様の効果が奏される。図面では、一方の結合部(例えばA)の両嵌合部44a,45aを何れも凸状としているが、何れか一方の嵌合部を凹状にすることもできる。」(第5頁第7欄第42行?第8欄第43行、段落【0031】?【0036】参照)
(e)「本発明によれば、従来構造に比べて部品点数が削減されるので、部品コストや組立コストの低減が達成される。また、部品数が少ないが故に高精度を出しやすく、また、そのような高精度を出すための仕上げ加工を簡略化することもできる。従って、さらなる低コスト化および高精度化が達成される。
セグメントの隣り合うセグメントとの結合部に、円周方向および半径方向で相手側セグメントの結合部と凹凸係合する嵌合部を設けることにより、セグメント同士の結合部間に締め代が付与され、セグメント同士の結合部分が円周方向および半径方向の二方向から係止される。従って、セグメント同士を確実に結合することができ、増速時にも保持器が異音の発生源となることはない。」(第5頁第8欄第45行?第6頁第9欄第8行、段落【0037】及び【0038】参照)
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
【引用発明】
内周に軌道面1cを有する外方部材1と、外周面に軌道面2cを有する内方部材2と、前記外方部材1および内方部材2の軌道面1c,2c間に介装された複数の転動体3と、各転動体3を円周方向で等配する保持器4とを備えた超薄肉形転がり軸受であって、
前記保持器4は、複数の円弧型セグメント40で構成され、隣り合う円弧型セグメント40の一方の結合部Aに形成された円周方向嵌合部44aを、他方の結合部Bに形成された円周方向嵌合部44bに嵌合させて環状に結合し、前記円周方向嵌合部44bとその円周方向嵌合部44bに径方向から押し込まれる円周方向嵌合部44aとは、前記円弧型セグメント40の径方向寸法と同一の径方向寸法を有すると共に、径方向断面で径方向と直交する方向の寸法が押し込み方向に向けて同じ形状の嵌合面を有し、その嵌合面に半径方向嵌合部45a,45bを形成して凹凸係合させることにより、両嵌合面を密着させて接合した超薄肉形転がり軸受。

(刊行物2)
刊行物2には、「板部材の接合構造」に関して、図面(特に、図1及び2を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(f)「本発明は、金属板等の板部材の接合構造に関する。」(第2頁第1欄第28及び29行、段落【0001】参照)
(g)「図1は、相互に接合されるべき一対の板部材A、Bを示している。これらの板部材は、相互に同種同材の金属板であっても良いが、例えば一方をステンレスとし他方を鉄とするように相互に異種の金属板であっても良い。更には、金属以外のプラスチック板等であっても良い。
そこで、一対の板部材A、Bは、相互に接合縁1a、1bを接合せしめた際、相互に係合して固定される嵌合手段2a、2bを設けている。両板部材A、Bにおける嵌合手段2a、2bの構成は、相互に同一形状であるから、共通する符号で示しており、各嵌合手段2a、2bは、接合縁1a、1bに切欠形成された切欠孔3と、接合縁1a、1bから突設された舌片4とから構成されている。尚、このような嵌合手段2a、2bは、両板部材A、Bの接合縁1a、1bに沿って間隔をあけて複数列設される。
両板部材A、Bの嵌合手段2a、2bにおける切欠孔3のそれぞれは、当該板部材A、Bの接合縁1a、1bから切込み状に形成された幅狭の切込み部5と、該切込み部5に連通する幅広の孔部6とを備え、該孔部6を概ね円形(楕円を含む)に形成している。そして、切欠孔3は、板部材A、Bの表裏両面に対して、表面において径大に開口すると共に裏面において径小に開口するテーパ内周壁7を備えた皿孔状に形成されている。図例の場合、テーパ内周壁7は、孔部6と切込み部5の両者にわたり形成されているが、孔部6と切込み部5の少なくとも一方(好ましくは孔部6)にのみ形成しても良い。
両板部材A、Bの嵌合手段2a、2bにおける舌片4のそれぞれは、前記切欠孔3の切込み部5に嵌合可能な幅狭の首部8と、前記孔部6に嵌合可能な幅広の胴部9とを備え、該胴部9を概ね円形(楕円を含む)に形成している。そして、舌片4は、前記切欠孔3のテーパ内周壁7に合致するテーパ外周壁10を備えた皿板状に形成されている。図例の場合、テーパ外周壁10は、胴部9と首部8の両者にわたり形成されているが、胴部9と首部8の少なくとも一方(好ましくは胴部9)にのみ形成しても良い。
前記切欠孔3と舌片4から成る嵌合手段2a、2bは、板部材A、Bを金属板により構成する場合、該金属板をプレス刃により打抜くことにより接合縁1a、1bと共に形成され、打抜きと同時にテーパ内周壁7及びテーパ外周壁10を形成することができるが、必要に応じて切削加工によりテーパ内周壁7及びテーパ外周壁10を形成しても良い。尚、板部材A、Bをプラスチック板により構成する場合は、射出成形により図例のような切欠孔3と舌片4から成る嵌合手段2a、2bが成形される。
そこで、一対の板部材A、Bの接合縁1a、1bを突き合わせると共に相互に接合せしめると、図2に示すように、一方の板部材Aにおける嵌合手段2aの切欠孔3と舌片4が、他方の板部材Bにおける嵌合手段2bの舌片4と切欠孔3にそれぞれ嵌合される。この状態で、両板部材A、Bは、該板部材の平面に関して、該平面と平行な離反方向Xに対して分離しないように固定され、しかも、該平面の表面に向かう偏位方向Y1及び裏面方向に向かう偏位方向Y2に対しても分離しないように固定される。即ち、離反方向Xに関しては、各切欠孔3の切込み部5及び孔部6に対して各舌片4の首部8及び胴部9がそれぞれ嵌合しているので、両板部材A、Bの分離を阻止する。また、表面に向かう偏位方向Y1に関しては、各切欠孔3のテーパ内周壁7に対して上方から各舌片4のテーパ外周壁10が係合しているので、両板部材A、Bが相対的に偏位方向Y1に移動することを阻止する。更に、裏面に向かう偏位方向Y2に関しては、各舌片4のテーパ外周壁10に対して下方から各切欠孔3のテーパ内周壁7が係合しているので、両板部材A、Bが相対的に偏位方向Y2に移動することを阻止する。
その結果、接合縁1a、1bを接合せしめ、嵌合手段2a、2bを相互に嵌合せしめるだけで、一対の板部材A、Bが離反方向X並びに偏位方向Y1及びY2に対して固定される。因みに、本発明において、接合された接合縁1a、1bにスポット溶接等の付加的固定手段を施すことは任意であり、必要に応じて自由に行い得る。」(第2頁第2欄第31行?第3頁第4欄第6行、段落【0010】?【0016】参照)

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「軌道面1c」は本願発明の「軌道面」に相当し、以下同様にして、「外方部材1」は「外方部材」に、「軌道面2c」は「軌道面」に、「内方部材2」は「内方部材」に、「転動体3」は「転動体」に、「保持器4」は「保持器」に、「円弧型セグメント40」は「円弧状セグメント」又は「セグメント」に、「結合部A」及び「結合部B」は「結合部」に、「円周方向嵌合部44a」は「接合凸部」に、「円周方向嵌合部44b」は「接合凹部」に、「半径方向嵌合部45a,45b」は「係合部」に、それぞれ相当するので、両者は下記の一致点、並びに相違点1及び2を有する。
<一致点>
内周に軌道面を有する外方部材と、外周面に軌道面を有する内方部材と、前記外方部材および内方部材の軌道面間に介装された複数の転動体と、各転動体を円周方向で等配する保持器とを備えた超薄肉形転がり軸受であって、
前記保持器は、複数の円弧状セグメントで構成され、隣り合うセグメントの一方の結合部に形成された接合凸部を、他方の結合部に形成された接合凹部に嵌合させて環状に結合し、前記接合凹部とその接合凹部に径方向から押し込まれる接合凸部とは、前記セグメントの径方向寸法と同一の径方向寸法を有すると共に、嵌合面を有し、その嵌合面に係合部を形成して凹凸係合させることにより、両嵌合面を密着させて接合した超薄肉形転がり軸受。
(相違点1)
前記嵌合面に関して、本願発明は、「径方向断面で径方向と直交する方向の寸法が押し込み方向に向けて小さくなるテーパ状の嵌合面を有し」ているのに対し、引用発明は、径方向断面で径方向と直交する方向の寸法が押し込み方向に向けて同じ形状の嵌合面を有している点。
(相違点2)
前記嵌合面に形成された係合部に関して、本願発明は、「周方向に連続した環状の係合部」であるのに対し、引用発明は、半径方向嵌合部45a,45bであり、本願発明のように周方向に連続した環状の係合部でない点。
そこで、上記相違点1及び2について検討する。
(相違点1について)
引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項は、板状部材の結合構造に関する技術分野に属するものであって、刊行物2には、「両板部材A、Bの嵌合手段2a、2bにおける切欠孔3のそれぞれは、当該板部材A、Bの接合縁1a、1bから切込み状に形成された幅狭の切込み部5と、該切込み部5に連通する幅広の孔部6とを備え、該孔部6を概ね円形(楕円を含む)に形成している。そして、切欠孔3は、板部材A、Bの表裏両面に対して、表面において径大に開口すると共に裏面において径小に開口するテーパ内周壁7を備えた皿孔状に形成されている。」、及び「舌片4は、前記切欠孔3のテーパ内周壁7に合致するテーパ外周壁10を備えた皿板状に形成されている。」(いずれも、上記摘記事項(g)参照)と記載されている。
したがって、刊行物2には、図1及び2の記載を考慮すると、舌片4と切欠孔3が押し込み方向に向けて小さくなるテーパ状の嵌合面を有していることが記載又は示唆されている。
してみれば、引用発明における径方向断面で径方向と直交する方向の寸法が押し込み方向に向けて同じ形状の嵌合面を有している構成に代えて、上記刊行物2に記載又は示唆された押し込み方向に向けて小さくなるテーパ状の嵌合面の構成を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。
(相違点2について)
刊行物1には、図4および図5に記載された実施形態に関し、「結合後は、円周方向嵌合部44a、44bの凹凸係合によりセグメント同士の円周方向の分離が防止され、半径方向嵌合部45a、45bの凹凸係合により、半径方向の分離が防止される。この時、仮に円周方向嵌合部44a、44bのハメアイがルーズであっても半径方向嵌合部45a、45b同士の嵌合により、結合部A、B間に締め代が付与されるので、セグメント40同士でぐらつきを生じることなく、両者を確実に結合することができる。」、及び「図6および図7は両結合部A、Bで円周方向および半径方向嵌合部(44a、45a)(44b、45b)を一体に設けたものであり、図4および図5と同様の効果が奏される。」(いずれも、上記摘記事項(d)参照)と記載されている。
上記記載からみて、刊行物1には、図6及び7に記載された実施形態について、「結合後は、円周方向嵌合部44a、44bの凹凸係合によりセグメント同士の円周方向の分離が防止され、半径方向嵌合部45a、45bの凹凸係合により、半径方向の分離が防止される。この時、仮に円周方向嵌合部44a、44bのハメアイがルーズであっても半径方向嵌合部45a、45b同士の嵌合により、結合部A、B間に締め代が付与されるので、セグメント40同士でぐらつきを生じることなく、両者を確実に結合することができる。」という図4及び図5に記載された実施形態と同様の作用効果を奏することが記載又は示唆されているといえる。
一方、引用発明の半径方向嵌合部45a,45bを、半径方向の分離をより一層防止して、セグメント40同士でぐらつきを生じることなく、両者を確実に結合するために、「周方向に連続した環状の係合部」とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計変更の範囲内の事項である。
してみれば、引用発明の半径方向嵌合部45a,45bを、「周方向に連続した環状の係合部」とすることにより、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、技術的に格別の困難性を有することなく当業者が容易に想到できるものであって、これを妨げる格別の事情は見出せない。

また、本願発明の奏する効果についてみても、刊行物1及び2に記載された発明の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、平成22年3月23日付けの意見書において、「転がり軸受が超薄肉形であることを前提とする本願発明は、嵌合面の周方向に連続した環状の係合部を凹凸状に形成することにより、接合凸部と接合凹部との接触面積がより一層増大することになって接合部分の強度および安定性が向上し、また、隣接するセグメント間で内径方向または外径方向のずれが生じることを未然に防止して抜け止めになるという特有の効果を奏するものであります。」(「(3)刊行物との対比」の項を参照)と本願発明が奏する作用効果について主張している。
しかしながら、上記(相違点1について)及び(相違点2について)において述べたように、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるところ、審判請求人が主張する本願発明が奏する上記の作用効果は、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものにすぎず、本願発明の構成を備えることによって、本願発明が、従前知られていた構成が奏する作用効果を併せたものとは異なる、相乗的で予想外の作用効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2?7に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-06 
結審通知日 2010-04-07 
審決日 2010-06-02 
出願番号 特願2003-7053(P2003-7053)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 勇  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
藤村 聖子
発明の名称 超薄肉形転がり軸受  
代理人 田中 秀佳  
代理人 熊野 剛  
代理人 田中 秀佳  
代理人 城村 邦彦  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  

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