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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1220991 |
審判番号 | 不服2008-11362 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-07 |
確定日 | 2010-07-28 |
事件の表示 | 特願2002-593187「車両用計器板」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 5日国際公開、WO02/96695、平成16年 9月24日国内公表、特表2004-529031〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、2002年5月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年5月28日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成16年1月26日付けで国際出願翻訳文提出書が提出されると共に同日付けで条約34条補正翻訳文提出書が提出され、平成19年9月14日付けで拒絶理由が通知され、平成19年12月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年5月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成20年5月28日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされると共に同日付けで審判請求書の請求の理由についての手続補正がなされ、その後、当審において平成21年7月21日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成22年1月21日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成20年5月28日付けの特許請求の範囲についての手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年5月28日付けの特許請求の範囲についての手続補正を却下する。 [理由] [1]補正の内容 平成20年5月28日付けの特許請求の範囲についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成19年12月20日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし10を下記の(b)に示す請求項1ないし8と補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 ポジ表示透過型であり、運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される少なくとも一つの液晶ディスプレイ(11)を有する車両用計器板であって、情報域を有する前記ディスプレイ(11)に関しては、それが、透明支持体(15)に情報域で支持されることを特徴とする、計器板(1)。 【請求項2】 ダッシュボード(2)に搭載されてダッシュボードから突出し、前記裏面は車両のフロントガラスからの光によって照明されることを特徴とする、請求項1に記載の計器板(1)。 【請求項3】 夜間にディスプレイ(11)を照明する手段を有することを特徴とする、請求項1及び2のいずれか1項に記載の計器板(1)。 【請求項4】 前記照明する手段は、導光体として作用する前記透明支持体(15)を有することを特徴とする、請求項3に記載の計器板(1)。 【請求項5】 前記照明する手段は、前記ディスプレイ(11)に対して横方向に前記計器板(1)の外部に置かれた光源(41)を更に有することを特徴とする、請求項4に記載の計器板(1)。 【請求項6】 透明支持体(15)は、ディスプレイの裏面に、前記光源(41)から発せられる光を反射する手段(16)を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の計器板(1)。 【請求項7】 透明支持体(15)は、ディスプレイ(11)の裏面に向かって光を反射する表面部(16)を有することを特徴とする、請求項6に記載の計器板(1)。 【請求項8】 表面部(16)は、反射する手段で処理されることを特徴とする、請求項7に記載の計器板(1)。 【請求項9】 ディスプレイの情報域に面していない、透明支持体のフロントガラスに面する表面部は、黒色に処理されていることを特徴とする、請求項8に記載の計器板(1)。 【請求項10】 ディスプレイ(11)は、運転者から見える面が黒味を帯びた色をしている外枠(13)内に搭載されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の計器板(1)。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 ポジ表示透過型であり、運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される少なくとも一つの液晶ディスプレイ(11)を有する車両用計器板であって、情報域を有する前記ディスプレイ(11)の裏面が、透明支持体(15)に押し付けられて支持されており、該透明支持体が、前記ディスプレイの横方向の外部に配置された照明手段(41)の導光体として作用することを特徴とする、計器板(1)。 【請求項2】 ダッシュボード(2)に搭載されてダッシュボードから突出し、前記裏面は車両のフロントガラスからの光によって照明されることを特徴とする、請求項1に記載の計器板(1)。 【請求項3】 前記照明手段は夜間にディスプレイ(11)を照明する手段である、請求項1及び2のいずれか1項に記載の計器板(1)。 【請求項4】 透明支持体(15)は、ディスプレイの前記裏面向けて、前記光源(41)から発せられる光を反射する手段(16)を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の計器板(1)。 【請求項5】 透明支持体(15)は、ディスプレイ(11)の前記裏面に面している湾曲表面部(16)を有することを特徴とする、請求項4に記載の計器板(1)。 【請求項6】 前記表面部(16)は、反射する手段で処理されることを特徴とする、請求項5に記載の計器板(1)。 【請求項7】 ディスプレイの情報域に面していない、透明支持体のフロントガラスに面する表面部は、黒色に処理されていることを特徴とする、請求項6に記載の計器板(1)。 【請求項8】 ディスプレイ(11)は、運転者から見える面が黒味を帯びた色をしている外枠(13)内に搭載されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の計器板(1)。」(なお、下線は補正箇所を示す。) [2]本件補正の適否 [2-1]新規事項の追加に関して 本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1における「ディスプレイ(11)の裏面が、透明支持体(15)に押し付けられ」という事項(以下、「補正事項」という。)について、以下に検討する。 「ディスプレイ(11)」と「透明支持体(15)」との係合関係について、特許法第184条の6第2項の規定により願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲とみなされる平成16年1月26日付けで提出された明細書及び特許請求の範囲の翻訳文、及び国際出願日における図面(以下、「当初明細書等」という。)においては、 特許請求の範囲の請求項4に、 「ディスプレイが透明支持体(15)に情報域で支持される」と記載され、 発明の詳細な説明の【0011】に、 「シートは、ディスプレイ(表示装置)の裏面に押し付けて配置され、その外枠はディスプレイの支持体としても働く。」と記載され、 同じく【0017】に、 「計器板は、ディスプレイ(11)用支持体を形成しているシート(15)を備えており、シートは後者(ディスプレイ)の裏面に押し付けられ、第2ハウジング内において外枠(13)に固定されている。」と記載されている。 上記記載から、「透明支持体(15)」である「シート」が「ディスプレイ(11)の裏面」に「押し付けられ」るものであることは記載されているといえる。 しかしながら、「ディスプレイ(11)の裏面が、透明支持体(15)に押し付けられ」ることについては、当初明細書等には、明示的に記載されているとはいえないし、また当初明細書等からみて当業者に自明な事項であったともいえない。 よって、当初明細書等には、「補正事項」が記載されているとはいえない。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 [2-2]本件補正の目的 本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「ディスプレイ(11)に関しては、それが、透明支持体(15)に情報域で支持され」という発明特定事項が、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明において「ディスプレイ(11)の裏面が、透明支持体(15)に押し付けられて支持され」という発明特定事項に補正されたが、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の上記発明特定事項から「情報域」という発明特定事項が削除されることにより、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、透明支持体(15)に支持されるディスプレイ(11)の領域があらゆる領域に拡張されるものとなった。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 また、本件補正が、同法同項その他各号に規定するような請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 [2-3]独立特許要件についての検討 仮に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 1.刊行物に記載された発明 (1)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭61-64551号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a)「【特許請求の範囲】 1.自動車のウインドシールド(12)を通過する光により前面照明されるようにウインドシールドの背後に取付けられるほぼ透明な液晶表示パネル(10)を具備し、液晶表示パネルは運転者の視野の中に配置され;液晶表示パネルは、表示パネル部分を駆動する励起電極(34)を含むねじれネマチツク液晶セル(24)と、ねじれネマチツク液晶セルの両側に設けられ、表示パネルの動作された部分のみが前面照明に対して不透明になることにより、情報を運転者の視野の中にダークパターンの形態で表示するように動作する互いに直交する偏光フイルタ(26、28)とから構成されることを特徴とする自動車の運転者の視野の中に情報を表示するヘツドアツプ表示装置。 2.特許請求の範囲第1項記載のヘツドアツプ表示装置において、 液晶表示パネル(10)の補助照明手段は放射線源(40)と、前方偏光フイルタ(26)の前方に配置され、放射線源に応答して、ダークパターンを可視状態にするために光を表示パネルを通して導く材料の層(38)とから構成されることを特徴とする、装置。 3.特許請求の範囲第2項記載のヘツドアツプ表示装置において、 前方偏光フイルタ(26)の前方に配置される材料の層(38)は、紫外線放射により励起されたときに表示パネルをさらに照明するために可視光を発生する透明材料の層であり、材料を照射する紫外線源は放射線源(40)を構成することを特徴とする、装置。」(【特許請求の範囲】) b)「本発明は自動車などの車両に使用されるへツドアツプ表示装置に関し、さらに詳細には液晶式ヘツドアツプ表示装置に関する。 運転者が乗物のウインドシールドの方向又はそれを通して前方を見ているときに情報を都合良く確認できるように、自動車又は航空機の計器パネルに常時表示される情報の少なくとも一部をウインドシールドの領域に表示することは以前にも提案されている。」(公報第1ページ右欄第20行ないし同第2ページ左上欄第8行) c)「第1図及び第2図に示されるように、表示パネル10は、ウインドシールド12の背後でダツシユボード16上に支持される支持台18を含む。表示パネル10はフロント部の照明光をほぼ透過し、また、運転者の側から見たときにウインドシールドを通過して運転者に向かう光が表示パネルを通過するように、すなわち、運転者が表示パネル10を通して道路又は自動車のフロント部を見ることができるように配置される。」(公報第2ページ左下欄第8ないし17行) d)「第3図に示されるように、透明表示パネル10は、支持台18の他に、互いに直交する前方偏光子26及び後方偏光子28をそれぞれ有する従来のねじれネマチツクLCDセル24を含む。」(公報第2ページ右下欄第9ないし13行) e)「LCDセルは前方ガラス板30及び後方ガラス板31をそれぞれ有し、2枚のガラス板は周囲シール32により離間され、ガラス板30及び31間の空間にねじれネマチツク液晶材料が封入されている。液晶材料は、電界により励起状態にされないときは、前方偏光子26を通過する光の偏光平面を後方偏光子28の偏光方向と一致するように回転させることにより、光を運転者に到達させる。たとえば、前方偏光子26が垂直方向に偏光されると、後方偏光子28が水平方向に偏光された場合に、光は運転者に達する。LCDセルの一部に電界を印加することにより、光回転能力が破壊されるので、セルのその部分は不透明になる。図示されるように、アナログ図形表示22の数字及びマーカーセグメントを表わす透明電極34は前方ガラス板30の内面に配置され、後方ガラス板31の内面は、所望の可視パターンが形成されるように共動電極(図示せず)を支持する。各透明電極34はガラス板30又は31の縁部にあるコネクタパツド36に接続され、それぞれのコネクタパツドは、情報をウインドシールド12を透過して見える道路又はその他の景色の通常の情景に対してダークパターンの形態で表示するために電子駆動回路(図示せず)が表示パネルのセグメントを選択的に動作させることができるように、支持台18の内部にある電気的コネクタ(図示せず)と共動する。」(公報第2ページ右下欄第13行ないし同第3ページ右上欄第2行) f)「夜間でも表示を読みやすくするために、表示パネルはさらに2つの要素を含む。第1の要素は、紫外線の下で発光する透明プラスチツクシート38の形態の光パネルであり、前方偏光子26の前面に固着される。第2の要素である紫外線ランプ40は、第2図に示されるように、透明プラスチツクシート38を照明するためにダツシユボード16上の、ウインドシールド12と表示パネル10との間に配置される。透明プラスチツクシート38は、たとえば、三酸化タングステンの粒子を混入した透明ポリマーから製造されれば良い。この材料は、紫外線放射を受けると表示パネル10を介して可視光を発するが、動作されたセグメントは表示部分をそれぞれ不透明にするので、ダークパターンを見ることができる。」(公報第3ページ右上欄第10行ないし同左下欄第6行) (2)ここで、上記(1)a)ないしf)及び図面の記載より、次のことが分かる。 イ)上記(1)a)ないしe)及び図1ないし図3の記載より、ねじれネマチツクLCDセル24、前方偏光子26及び後方偏光子28が一つの液晶式表示装置を構成しており、この液晶式表示装置は、ウインドシールド12を通過して運転者に向かう光により前面照明されるものであって、光を透過させると共に情報をダークパターンの形態で表示する型のものであり、情報を表示する領域を有していることが分かる。 ロ)上記(1)a)、b)、d)及びf)並びに図1ないし図3の記載より、ねじれネマチツクLCDセル24、前方偏光子26及び後方偏光子28によって構成される液晶式表示装置の裏面に透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持されていることが分かる。 ハ)上記(1)a)、b)、d)及びf)並びに図2及び図3の記載より、 透明プラスチツクシート38が、ねじれネマチツクLCDセル24、前方偏光子26及び後方偏光子28によって構成される液晶式表示装置の外部に配置された紫外線ランプ40により発光させられていることが分かる。 (3)刊行物1に記載された発明1 したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明1」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物1に記載された発明1> 「光を透過させると共に情報をダークパターンの形態で表示する型であり、ウインドシールド12を通過して運転者に向かう光により前面照明される一つの液晶式表示装置を有する自動車の計器パネルであって、情報を表示する領域を有する前記液晶式表示装置の裏面に透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持されており、該透明プラスチツクシート38が、前記液晶式表示装置の外部に配置された紫外線ランプ40により発光させられる、自動車の計器パネル。」 (4)刊行物2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭60-125384号(実開昭62-32836号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a)「2.実用新案登録請求の範囲 インストルメントパネル部(2)に設けられているグローブボツクス本体(1)の開口部(1a)を覆うグローブボツクスリツド(3)が、前記インストルメントパネル部(2)の上方に起立状体に開放できるように該インストルメントパネル部(2)に回動自在に枢着されてなるグローブボツクスを備えた車両において、前記グローブボツクスリツド(3)にその開放起立状態において表示面(7)が搭乗者に対向するように透明又は半透明型液晶表示パネル(6)を設置したことを特徴とする車両用表示装置。」(実用新案登録請求の範囲) b)「〔考案の利用分野〕 本考案は自動車の車室内に設けられたグローブボツクス等の収納ボツクスの開閉蓋に、液晶表示装置等の表示装置を設けた車両用表示装置に関するものである。」(明細書第1ページ第17行ないし同第2ページ第2行) c)「液晶表示パネル6は、液晶セル8と、その外部光入射面9側に設けられた光拡散板10と、導光板11およびこの導光板11を照明するランプ12とにより構成され、前記グローブボツクスリツド3の開口部5の両面夫々に取付けられた透明な保護板13,13によって表示面7側および外部光入射面9側が覆われている。 この導光板11は、前記グローブボツクスリツド3の外面側からの外部光を透過させ、該グローブボツクスリツド3の内面側からの光を反射させるハーフミラー構造に形成されるとともに、前記液晶セル8との対向面が断面略V字状に凹設されて、夜間等において前記ランプ12からの光を該液晶セル8に向けて出射することができるようになつている。 したがつて、グローブボツクスリツド3をインストルメントパネル部2の上方に起立させると、液晶表示パネル6の表示面7が搭乗者に向き、導光板11を透光した外部光が、光拡散板10により均一化されて液晶セル8を照明し、該液晶セル8の表示面7側に各種の情報が表示される。 また、夜間等において、ランプ12を点灯することにより、導光板11を介してこのランプ12からの光で液晶セル8を照明することができる。」(明細書第4ページ第5行ないし同第5ページ第9行) (5)ここで、上記(4)a)ないしc)及び図面の記載より、次のことが分かる。 イ)上記(4)a)ないしc)並びに第1図及び第2図の記載より、液晶セル8は、透過型であって、搭乗者の位置から見たその裏面が外部光により照明されるものであり、情報を表示する領域を有していることが分かる。 ロ)上記(4)b)及びc)並びに第1図及び第2図の記載より、車両用表示装置は一つの液晶セル8を有していることが分かる。 ハ)上記(4)c)及び第2図の記載より、液晶セル8の裏面側に、導光板11が配置されていることが分かる。 ニ)上記(4)c)及び第2図の記載より、導光板11が、液晶セル8の横方向の外部に配置されたランプ12の導光体として作用していることが分かる。 (6)刊行物2に記載された発明 したがって、上記(4)及び(5)を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物2に記載された発明> 「透過型であり、搭乗者の位置から見たその裏面が外部光により照明される一つの液晶セル8を有する車両用表示装置であって、情報を表示する領域を有する前記液晶セル8の裏面側に、導光板11が配置され、該導光板11が、前記液晶セル8の横方向の外部に配置されたランプ12の導光体として作用する、車両用表示装置。」 2.対比・判断 本件補正発明と刊行物1に記載された発明1とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物1に記載された発明1における「光を透過させると共に情報をダークパターンの形態で表示する型」は本件補正発明における「ポジ表示透過型」に相当し、以下同様に、「液晶式表示装置」は「液晶ディスプレイ(11)」に、「自動車の計器パネル」は「車両用計器板」及び「計器板(1)」に、「情報を表示する領域」は「情報域」に、「透明プラスチツクシート38」は「透明支持体」に、「紫外線ランプ40」は「照明手段(41)」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1に記載された発明1における「一つの」という事項は、本件補正発明における「少なくとも一つの」という事項に包含される。 さらに、刊行物1に記載された発明1における「ウインドシールド12を通過して運転者に向かう光により前面照明される(液晶式表示装置)」という事項は、運転者が見る液晶式表示装置の前面とは反対側に位置する前記液晶式表示装置の裏面が、ウインドシールド12を通過する光である日光に照らされていることを示すものであるから、本件補正発明における「運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される(液晶ディスプレイ(11))」という事項に相当する。 さらにまた、刊行物1に記載された発明1における「液晶式表示装置の裏面に透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持され」という事項は、「ディスプレイの裏面が、透明支持体に係合し」という事項である限りにおいて、本件補正発明における「ディスプレイ(11)の裏面が、透明支持体(15)に押し付けられて支持され」という事項と一致する。 その上、刊行物1に記載された発明1における「透明プラスチツクシート38が、前記液晶式表示装置の外部に配置された紫外線ランプ40により発光させられる」という事項は、「透明支持体が、前記ディスプレイの外部に配置された照明手段と共に照明装置を構成している」という事項である限りにおいて、本件補正発明における「透明支持体が、前記ディスプレイの横方向の外部に配置された照明手段(41)の導光体として作用する」という事項と一致する。 してみると、本件補正発明と刊行物1に記載された発明1とは、 「ポジ表示透過型であり、運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される少なくとも一つの液晶ディスプレイを有する車両用計器板であって、情報域を有する前記ディスプレイの裏面が、透明支持体に係合しており、該透明支持体が、前記ディスプレイの外部に配置された照明手段と共に照明装置を構成している、計器板。」の点で一致し、次の2つの点で相違する。 <相違点1> 本件補正発明では、「ディスプレイ」の裏面が、「透明支持体」に「押し付けられて支持されて」いるのに対して、刊行物1に記載された発明1では、本件補正発明における「ディスプレイ」に相当する「液晶式表示装置」の裏面に、本件補正発明における「透明支持体」に相当する「透明プラスチツクシート38」が「固着」され、「前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10」が「支持台18により支持されて」いる点(以下、「相違点1」という。)。 <相違点2> 本件補正発明では、「透明支持体」が、「ディスプレイ」の「横方向」の外部に配置された「照明手段」の「導光体として作用」しているのに対して、刊行物1に記載された発明1では、本件補正発明における「透明支持体」に相当する「透明プラスチツクシート38」が、本件補正発明における「ディスプレイ」に相当する「液晶式表示装置」の外部に配置された、本件補正発明における「照明手段」に相当する「紫外線ランプ40」により「発光」させられている点(以下、「相違点2」という。)。 上記相違点1及び2について検討する。 <相違点1について> 刊行物1に記載された発明1における「液晶式表示装置の裏面に透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持され」るという事項について検討する。 「液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持され」ているのであるから、表示パネル10を構成する透明プラスチツクシート38が、支持台18により支持されていることは明らかである。このことと、「液晶式表示装置の裏面に透明プラスチツクシート38が固着され」ていることを総合すると、支持台18の支持力は多少なりとも透明プラスチツクシート38を介して液晶式表示装置に伝達されているものと認められ、したがって、液晶式表示装置の裏面は透明プラスチツク38に支持されているということができる。 そして、複数の部材を相互に固着する場合に、複数の部材を相互に押し付けて固着するようにする技術は一般的に行う技術であるから、刊行物1に記載された発明1における「液晶式表示装置」と「透明プラスチツクシート38」とを「押し付けて」固着する程度のことは、当業者が適宜行う設計事項にすぎない。 してみると、刊行物1に記載された発明1において、「液晶式表示装置の裏面」が「透明プラスチツクシート38」に「押し付け」られて支持されるようにして、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることに格別な困難性はない。 <相違点2について> 本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物2に記載された発明における「搭乗者」は本件補正発明における「運転者」に相当し、以下同様に、「外部光」は「日光」に、「液晶セル8」は「液晶ディスプレイ(11)」に、「情報を表示する領域」は「情報域」に、「ランプ12」は「照明手段(41)」に、それぞれ相当する。 また、刊行物2に記載された発明における「透過型」は、本件補正発明における「ポジ表示透過型」の上位概念に当たる。 さらに、刊行物2に記載された発明における「一つの」という事項は、本件補正発明における「少なくとも一つの」という事項に包含される。 さらにまた、刊行物2に記載された発明における「車両用表示装置」は、本件補正発明における「車両用計器板」及び「計器板(1)」の上位概念に当たる。 その上、刊行物2に記載された発明における「導光板11」は、「導光部材」という限りにおいて、本件補正発明における「透明支持体(15)」と一致する。 してみると、刊行物2に記載された発明は、本件補正発明の発明特定事項にあわせて表現すると、「透過型であり、運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される少なくとも一つの液晶ディスプレイを有する車両用表示装置であって、情報域を有する前記液晶ディスプレイの裏面側に、導光部材が配置され、該導光部材が、前記液晶ディスプレイの横方向の外部に配置された照明手段の導光体として作用する車両用表示装置。」であるといえる。 そして、刊行物1に記載された発明1と刊行物2に記載された発明とは、共に「透過型であり、運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される少なくとも一つの液晶ディスプレイを有する車両用表示装置であって、情報域を有する前記液晶ディスプレイの裏面側に、部材が配置され、該部材が、前記液晶ディスプレイの外部に配置された照明手段と共に照明装置を構成している車両用表示装置。」であって、軌を一にするものであるから、刊行物1に記載された発明1における「透明プラスチツクシート38」と「紫外線ランプ40」とからなる照明装置に代えて、刊行物2に記載された発明における「導光部材が、液晶ディスプレイの横方向の外部に配置された照明手段の導光体として作用する」照明装置を採用することに格別な困難性はない。 なお、刊行物1に記載された発明1における「透明プラスチツクシート38」と「紫外線ランプ40」とからなる照明装置に代えて、刊行物2に記載された発明における「導光部材が、液晶ディスプレイの横方向の外部に配置された照明手段の導光体として作用する」照明装置を採用する際に、刊行物1に記載された発明1における「液晶式表示装置の裏面」と刊行物2に記載された発明における「導光部材」とを接合させるようにして、本件補正発明のように、「ディスプレイの裏面」が「透明支持体」に「付けられ」るようにすることは、例えば、実願昭58-201051号(実開昭60-107981号)のマイクロフィルム、実願昭58-41666号(実開昭59-146238号)のマイクロフィルム、実願昭58-171440号(実開昭60-79116号)のマイクロフィルム、特開平9-330609号公報(図24及び図24に関する記載参照。)、実願平1-70436号(実開平2-85422号)のマイクロフィルム及び実願昭60-158243号(実開昭62-68124号)のマイクロフィルム(第7図及び第7図に関する記載参照。)に記載されている、「ディスプレイの面が導光体に接合される」という液晶技術分野において一般的に行われている技術を勘案して、当業者が適宜なし得た設計変更にすぎない。 そして、本件補正発明を全体としてみても、刊行物1に記載された発明1及び刊行物2に記載された発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 [2-4]むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものでもあり、また、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものでもあるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本件発明について 1.本件発明 平成20年5月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明は、平成19年12月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、平成16年1月26日付け条約34条補正翻訳文提出書により補正された明細書及び特許請求の範囲、平成16年1月26日付け国際出願翻訳文提出書に記載された明細書及び特許請求の範囲、並びに国際出願日における図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。 2.刊行物に記載された発明 (1)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である刊行物1(特開昭61-64551号公報)には、前記第2[理由][2][2-3]1.(1)a)ないしf)の事項が記載されている (2)ここで、上記(1)a)ないしf)及び図面の記載より、次のことが分かる。 イ)上記(1)a)ないしe)及び図1ないし図3の記載より、ねじれネマチツクLCDセル24、前方偏光子26及び後方偏光子28が一つの液晶式表示装置を構成しており、この液晶式表示装置は、ウインドシールド12を通過して運転者に向かう光により前面照明されるものであって、光を透過させると共に情報をダークパターンの形態で表示する型のものであり、情報を表示する領域を有していることが分かる。 ロ)上記(1)a)、b)、d)及びf)並びに図1ないし図3の記載より、ねじれネマチツクLCDセル24、前方偏光子26及び後方偏光子28によって構成される液晶式表示装置に関しては、それに、透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持されていることが分かる。 (3)刊行物1に記載された発明2 したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明2」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物1に記載された発明2> 「光を透過させると共に情報をダークパターンの形態で表示する型であり、ウインドシールド12を通過して運転者に向かう光により前面照明される一つの液晶式表示装置を有する自動車の計器パネルであって、情報を表示する領域を有する前記液晶式表示装置に関しては、それに、透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持される、自動車の計器パネル。」 3.対比・判断 本件発明と刊行物1に記載された発明2とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物1に記載された発明2における「光を透過させると共に情報をダークパターンの形態で表示する型」は本件発明における「ポジ表示透過型」に相当し、以下同様に、「液晶式表示装置」は「液晶ディスプレイ(11)」に、「自動車の計器パネル」は「車両用計器板」及び「計器板(1)」に、「情報を表示する領域」は「情報域」に、「透明プラスチツクシート38」は「透明支持体」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1に記載された発明2における「一つの」という事項は、本件発明における「少なくとも一つの」という事項に包含される。 さらに、刊行物1に記載された発明2における「ウインドシールド12を通過して運転者に向かう光により前面照明される(液晶式表示装置)」という事項は、運転者が見る液晶式表示装置の前面とは反対側に位置する前記液晶式表示装置の裏面が、ウインドシールド12を通過する光である日光に照らされていることを示すものであるから、本件発明における「運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される(液晶ディスプレイ(11))」という事項に相当する。 さらにまた、刊行物1に記載された発明2における「液晶式表示装置に関しては、それに、透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持される」という事項は、「ディスプレイに関しては、それが、透明支持体に接合される」という事項である限りにおいて、本件発明における「ディスプレイ(11)に関しては、それが、透明支持体(15)に情報域で支持される」という事項と一致する。 してみると、本件発明と刊行物1に記載された発明2とは、 「ポジ表示透過型であり、運転者の位置から見たその裏面が日光により照明される少なくとも一つの液晶ディスプレイを有する車両用計器板であって、情報域を有する前記ディスプレイに関しては、それが、透明支持体に接合される、計器板。」の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点3> 本件発明では、「ディスプレイ」が「透明支持体」に「情報域で支持されている」のに対して、刊行物1に記載された発明2では、本件発明における「ディスプレイ」に相当する「液晶式表示装置」に、本件発明における「透明支持体」に相当する「透明プラスチツクシート38」が「固着」され、「前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10」が「支持台18により支持」されている点(以下、「相違点3」という。)。 上記相違点3について検討する。 刊行物1に記載された発明2には上記「液晶式表示装置に関しては、それに、透明プラスチツクシート38が固着され、前記液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持される」という事項が記載されている。 ここで、「液晶式表示装置と前記透明プラスチツクシート38とからなる表示パネル10が支持台18により支持され」ているのであるから、表示パネル10を構成する透明プラスチツクシート38が、支持台18により支持されていることは明らかである。このことと、「液晶式表示装置の裏面に透明プラスチツクシート38が固着され」ていることを総合すると、支持台18の支持力は多少なりとも透明プラスチツクシート38を介して液晶式表示装置に伝達されているものと認められ、したがって、液晶式表示装置は透明プラスチック38に支持されているということができる。 そして、本件発明のように、透明支持体に支持されるディスプレイの領域を「情報域」と特定したことに格別な技術的意義は認められず、刊行物1に記載された発明2において、液晶式表示装置を透明プラスチツクシート38により支持する場合に、液晶式表示装置における領域のうち「情報域」を適宜選択して、上記相違点3に係る本件発明の発明特定事項とすることに格別な困難性はない。 そして、本件発明を全体としてみても、刊行物1に記載された発明2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 4.むすび 以上のとおり、本件発明は、刊行物1に記載された発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-25 |
結審通知日 | 2010-03-02 |
審決日 | 2010-03-15 |
出願番号 | 特願2002-593187(P2002-593187) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60K)
P 1 8・ 561- Z (B60K) P 1 8・ 57- Z (B60K) P 1 8・ 575- Z (B60K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西山 智宏、久島 弘太郎 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 八板 直人 |
発明の名称 | 車両用計器板 |
代理人 | 三好 秀和 |