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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H02K
管理番号 1221644
審判番号 訂正2010-390054  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-06-03 
確定日 2010-07-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3076017号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3076017号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯・請求の要旨
(1)特許第3076017号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成10年11月19日に出願されたものであっって、平成12年6月9日にその発明について特許権の設定登録が特許第3076017号としてなされたものである。
(2)これに対し、設定登録後に、特許異議申し立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月6日に発明の詳細な説明および図面についての訂正請求がなされ、平成14年9月19日付けの異議の決定により訂正を認めるとともに、特許を維持するとの決定がなされている。
(3)本件審判の請求の要旨は、特許第3076017号の明細書を審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、下記訂正事項1ないし3のとおり訂正することを求めるものである。
・訂正事項1
明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に
「モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、
上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸がはまり込む溝部が形成され、上記偏心荷重部の端面から膨出してこの溝部を形成する側壁における上記溝部の開口側端面が、上記溝部の軸線と直交する方向における上記端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように上記溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰されることにより上記回転軸と一体的に結合されていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置。」とあるのを
「モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、
上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸がはまり込む溝部が形成され、上記偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁における上記溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)が、上記溝部の軸線と直交する方向における上記端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように上記溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰されることにより上記回転軸と一体的に結合されていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置。」
と訂正する。

・訂正事項2
明細書の発明の詳細な説明の【0006】に「請求項1に記載の発明は、モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸がはまり込む溝部が形成され、上記偏心荷重部の端面から膨出してこの溝部を形成する側壁における上記溝部の開口側端面が、上記溝部の軸線と直交する方向における上記端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように上記溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰されることにより上記回転軸と一体的に結合されていることを特徴とするものである。」とあるのを、
「請求項1に記載の発明は、モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸がはまり込む溝部が形成され、上記偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁における上記溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)が、上記溝部の軸線と直交する方向における上記端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように上記溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰されることにより上記回転軸と一体的に結合されていることを特徴とするものである。」に訂正する。

・訂正事項3
明細書の発明の詳細な説明の【0008】に「本発明に係る小型無線機の振動発生装置は、偏心荷重部に回転軸をはめ込む溝部を形成し、この偏心荷重部の端面から膨出して溝部を形成する側壁における溝部の開口側端面を、溝部の軸線と直交する方向における端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰して回転軸と振動子を一体的に結合させることにより、側壁の膨出高さを低減し、振動効率の向上を可能とする。」とあるのを、
「本発明に係る小型無線機の振動発生装置は、偏心荷重部に回転軸をはめ込む溝部を形成し、この偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出して溝部を形成する側壁における溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)を、溝部の軸線と直交する方向における端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰して回転軸と振動子を一体的に結合させることにより、側壁の膨出高さを低減し、振動効率の向上を可能とする。」に訂正する。

・訂正事項4
明細書の発明の詳細な説明の【0022】に「以上説明したように、請求項1?3のいずれかに記載の発明は、偏心荷重部に回転軸をはめ込む溝部を形成し、上記偏心荷重部の端面から膨出してこの溝部を形成する側壁における溝部の開口側端面を、溝部の軸線と直交する方向における端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰して回転軸と振動子を一体的に結合させるため、従来のように所要の結合力を確保するために側壁を回転軸側に塑性変形させて曲げたときに側壁の上端部が回転軸の上側部分を覆うようにする必要がないため、従来に比して溝部の側壁の膨出高さを低減できる分、振動子の偏心荷重を有効に作用させて振動効率を向上させることができる。」とあるのを、
「以上説明したように、請求項1?3のいずれかに記載の発明は、偏心荷重部に回転軸をはめ込む溝部を形成し、上記偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁における溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)を、溝部の軸線と直交する方向における端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰して回転軸と振動子を一体的に結合させるため、従来のように所要の結合力を確保するために側壁を回転軸側に塑性変形させて曲げたときに側壁の上端部が回転軸の上側部分を覆うようにする必要がないため、従来に比して溝部の側壁の膨出高さを低減できる分、振動子の偏心荷重を有効に作用させて振動効率を向上させることができる。」に訂正する。
また、「さらに、溝部を形成する両側壁における溝部の開口側端面を押し潰して加締めるので、従来のように側壁全体を塑性変形させて曲げなくてよいから、従来に比して加締め荷重を小さくできるという利点がある。」とあるのを、
「さらに、溝部を形成する両側壁における溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)を押し潰して加締めるので、従来のように側壁全体を塑性変形させて曲げなくてよいから、従来に比して加締め荷重を小さくできるという利点がある。」と訂正する。

2.訂正の可否についての判断
(1)訂正事項1について
特許異議事件において、特許法第29条の2の先願として特願平9-119716号(特開平10-313549号公報)が引用されたのに対して、訂正請求を行い、異議決定において登録が維持されたものであるが、その際、偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除くために、図8の(c)および図9の(c)を削除している。すなわち、特許異議事件における訂正請求により、図3、図8の(a),(b)、図9の(a),(b)に示されるような「偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁」および側壁における溝部の開口側端面が「偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く」実施例のみとなるように訂正されている。そして特許異議に係る異議の決定においても「偏心荷重部の端面から膨出してこの溝部を形成する側壁における溝部の開口側端面」が慣用手段ではないとの理由により登録が維持されたものである。
しかしながら、特許異議事件における訂正請求においては特許請求の範囲は訂正されておらず、特許請求の範囲の記載と図3、図8の(a),(b)、図9の(a),(b)に示されるような「偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁」および側壁における溝部の開口側端面が「偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く」実施例とは必ずしも整合したものとなっていない。
訂正事項1は、上記側壁の開口側端面と上記偏心荷重部の端面との位置関係を明確化させるべく、「上記偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁」と限定するとともに、上記側壁の開口側端面と上記偏心荷重部の端面とが異なる面であることを明確化させるべく、「側壁における上記溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)」と限定するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項1のうち、「軸線Oを越えて」については、明細書の発明の詳細な説明【0009】における「溝部3Bを形成する側壁3C、3Cは、軸線Oよりも図1中の下方に膨出され」の記載、及び【0017】における図8(b)の説明中に「軸線Oの同図中下側に位置する水平面3Fが形成されている」の記載により、偏心荷重部の端面と側壁における溝部の開口側端面の間に軸線Oがあることが理解でき、溝部を形成する側壁が軸線Oを越えていることが理解できる。したがって、訂正事項1のうち、「軸線Oを越えて」は、願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
また、訂正事項1のうち、「(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)」についても、特許明細書等の図8(a)及び(b)には、それぞれ、円弧面3E及び外側面3C1が記載され、同じく特許明細書等の【0017】において、「側壁3Cにおける溝部3Bの開口側端面から円弧状の外周面3Dに向かって偏心荷重部3A側に窪んだ円弧状の円弧面3Eが形成されている。同図(a)において、偏心荷重部3A側に窪んだ円弧状の円弧面3Eに代えて、偏心荷重部3A側から外側に向かって膨出する円弧面としてもよい。」の記載があり、さらに、同図(b)については、「外側面3C1が円弧状に形成され」との記載がある。図9(a)にも、外側面3C2と傾斜面3Gが記載され、「外側面3C2と外周面3Dとの間に傾斜面3Gが形成される」との記載があり、図9(b)にも、外側面3C2が記載され、「同図(a)と同様に外側面3C2が形成され」と説明されている。したがって、訂正事項1のうち、「(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)」は、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2ないし4について
上記訂正事項2ないし4は上記訂正事項1の明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるための訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、上記訂正事項1と同様に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
小型無線機の振動発生装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、
上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸がはまり込む溝部が形成され、上記偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁における上記溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)が、上記溝部の軸線と直交する方向における上記端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように上記溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰されることにより上記回転軸と一体的に結合されていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置。
【請求項2】上記振動子の上記溝部は、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の小型無線機の振動発生装置。
【請求項3】上記側壁における上記溝部と反対側に位置する外側面は、上記偏心荷重部側に窪んだ円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の小型無線機の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、携帯電話のような小型無線機の呼び出しなどに用いられる振動発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ページング方式の小型無線呼び出し機の一種として、モータの回転軸に高比重金属製の振動子を偏心させて結合してなる振動発生装置を内蔵した形式のものが普及しつつある。このような振動発生装置を内蔵した小型無線呼び出し機は、呼び出し音を発する代わりに、振動子の回転によって振動を発生させるため、例えば、人込みの中や会議中などにおいても他人に知られることなく受信を確認することができる。
【0003】
従来、この種の小型無線機の振動発生装置は、図17に示すように、小型無線機の信号発生回路に接続された小型モータ1の回転軸2に、振動子10を一体的に結合させた構成となっている。振動子10は、粉末冶金法によって成形された高比重金属製のものであり、略半円柱状に形成され、その軸線Oから偏心する扇状部分の偏心荷重部10Aの中心部分に断面「U」字状の溝部10Bが形成され、その溝部10Bを形成する側壁10C、10Cは偏心荷重部10Aと反対側に膨出されかつテーパ部10D、10Dを有する凸条とされている。
そして、回転軸2と振動子10とを結合させるには、図18および図19に示すように、溝部10B内に回転軸2を挿入した振動子10を受け治具11に位置決めした後、金型12を下降させ、そのテーパ部12A、12Aで振動子10の側壁10C、10Cのテーパ部10D、10Dを押圧し、側壁10C、10C全体を塑性変形させて回転軸2の上側を覆うように回転軸2側に曲げ、回転軸2に密着させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の振動発生装置は、所要の結合力を確保するためには側壁10C、10Cを回転軸2側に塑性変形させたときに側壁10C、10Cの上端部が回転軸2の上側部分を覆う必要があるため、側壁10C、10Cの膨出高さをある程度高くする必要があり、その結果偏心荷重部10Aの反対側の荷重が大きくなり、その分偏心荷重部10Aの偏心作用が減少して、振動効率が悪化するという問題があった。
また、振動子10の側壁10C、10Cのテーパ部10D、10Dを押圧し、側壁10C、10Cを回転軸2側に塑性変形させて回転軸2側に曲げ回転軸2に密着させるので、側壁10C、10Cに曲げ応力がかかることになるが、粉末成形品である振動子10はその材質上脆さがあるため、テーパ部10D、10Dの根元にクラックが発生しやすく、要求される高比重を図りつつクラックの発生を抑制するのは困難であった。
さらに、側壁10C、10C全体を塑性変形させるので、大きな押圧力を必要とするという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、振動子の偏心荷重を効率よく作用させて振動効率を向上させることができ、しかも振動子および装置全体の生産性の向上を図ることができる小型無線機の振動発生装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸がはまり込む溝部が形成され、上記偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁における上記溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)が、上記溝部の軸線と直交する方向における上記端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように上記溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰されることにより上記回転軸と一体的に結合されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1において、上記振動子の上記溝部は、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成されていることを特徴とするものである。
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記側壁における上記溝部と反対側に位置する外側面は、上記偏心荷重部側に窪んだ円弧状に形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る小型無線機の振動発生装置は、偏心荷重部に回転軸をはめ込む溝部を形成し、この偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出して溝部を形成する側壁における溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)を、溝部の軸線と直交する方向における端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰して回転軸と振動子を一体的に結合させることにより、側壁の膨出高さを低減し、振動効率の向上を可能とする。また、振動子のクラックの発生を抑えつつ要求される高比重化を可能とする。その結果、振動子の小型軽量化、ひいては振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化、低コスト化を実現する。さらに、加締め荷重を小さくし、振動発生装置の生産性を向上させる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1?図15は、本発明の第1の実施形態、およびその変形例を説明するための図である。
本実施形態の小型無線機の振動発生装置は、前述した従来例における小型モータ(モータ)1の回転軸2に対して、図1および図2に示すような形状の振動子3が一体的に結合された構成となっている。振動子3は、粉末冶金法によって成形された高比重金属製のものであり、軸線Oを中心とする略半円柱状とされ、その軸線Oから偏心する扇状部分全体が偏心荷重部3Aとなっている。3Bは軸線Oに沿って延在する断面略半円形の溝部であり、断面円形の鋼製の回転軸2がはまり込む内径とされている。溝部3Bを形成する側壁3C、3Cは、軸線Oよりも図1中の下方に膨出され、溝部3Bは、軸線Oを中心とする180°以上の範囲に渡って形成されている。したがって、溝部3Bには、回転軸2の中心角180°以上の範囲が内在されることになる。側壁3Cにおける溝部3Bと反対側に位置する外側面3C_(1)は、偏心荷重部3A側に窪んだ円弧状に形成されている。この外側面3C_(1)の円弧の半径は、例えば、側壁3Cの膨出高さと同一寸法に設定される。
【0010】
回転軸2と振動子3とを結合させる際には、まず、振動子3の溝部3B内に軸線O方向から回転軸2をはめ込んだ上、その振動子3を図3および図4に示すような受け治具4によって位置決めする。受け治具4には、振動子3の円弧状の外周面3Dと面接触する円弧面部4Aが形成されている。4Bは、軸線Oを中心とする振動子3の回動変位を阻止するためのストッパ部である。
【0011】
加締めポンチ5は、その先端に、水平面部5Aとこの水平面部5Aから下方に突出する凸条からなる2つの先端部5B、5Bが回転軸2の軸線Oに並行に2列に並んで形成されている。先端部5Bは、水平断面が細長い長方形で、上方に向かって漸次拡大する切頭四角錐の形状に形成されている。先端部5B、5Bの間には、後端側に窪んだ逃げ部5Cが形成されている。
そして、この加締めポンチ5の先端部5B、5Bによって、図5および図6に示すように、振動子3の側壁3C、3Cにおける溝部3Bの開口側端面を回転軸2の軸線Oに沿って所定範囲に渡って下方に押し潰して加締める。このようにして加締められた側壁3C、3Cは、図7に示すように、凹所6、6が形成されるように塑性変形され、これにより溝部3Bの内面と回転軸2とが密着して振動子3と回転軸2とが一体的に結合される。
【0012】
このように、回転軸2をはめ込む溝部3Bを形成し、この溝部3Bの側壁3C、3Cにおける溝部3Cの開口側端面を押し潰して回転軸2と振動子3とを一体的に結合したので、従来のように所要の結合力を確保するために側壁10C、10Cを回転軸2側に塑性変形させて曲げ側壁10C、10Cの上端部が回転軸2の上側部分を覆うようにする必要はないから、従来に比して溝部3B、3Bの側壁3C、3Cの膨出高さを低減できる分、振動子3の偏心荷重を有効に作用させて振動効率を向上させることができる。しかも、従来のように側壁10C、10Cに曲げ応力がかからないので、振動子3のクラックの発生を抑しつつ、さほど靭性を考慮することなくタングステン(W)の含有量を増加させて振動子3の高比重化を図ることができる。これらの結果、振動子の小型軽量化、ひいては振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化、低コスト化を実現することができる。
さらに、溝部3Bの両側の側壁3C、3Cにおける溝部3Bの開口側端面を下方に向かって押し潰して加締めるので、従来のように側壁10C、10C全体を塑性変形させて曲げなくてよいから、従来に比して加締め荷重を小さくできる。
また、側壁3Cの外側面3C_(1)を円弧状に形成したので、側壁3Cを押し潰す際に、外側面3C_(1)における側壁3Cの根元側に応力集中による割れが発生するのを防止することができる。
【0013】
ところで、振動子3は、例えば、W-Ni系、W-Ni-Fe系、W-Ni-Cu系、あるいはW-Mo-Ni-Fe系等の、比重が17?19程度の超重合金材料を用いて、粉末冶金法により成形されたものである。具体例としては、W粉末;89?98重量%およびNi粉末;1.0?11重量%からなる組成の混合粉末、あるいは上記重量%の範囲のW粉末およびNi粉末に、Cu;0.1?6重量%、Fe粉末;0.1?6重量%、Mo粉末;0.1?6重量%、およびCo粉末;0.1?5重量%の1種または2種以上を含有する組成の混合粉末を、1ton/cm^(2)?4ton/cm^(2)で扇板状に圧粉成形し、この圧粉体を0℃?-60℃の露点の水素気流中またはアンモニア分解ガス中で液相焼結した後、さらに、真空、中性もしくは還元性のいずれかの雰囲気中において700℃?1430℃±30℃の温度範囲で加熱した後に、少なくとも300℃まで40℃/min以上の冷却速度で急冷する熱処理を施したものである。
【0014】
このような振動子3の組成において、W(タングステン)の含有量が98重量%を越えると展性が低下するものの高比重となり、また89重量%に満たない場合には所定の比重が得られなくなり、この種の振動子としては不都合となる。また、Ni(ニッケル)の含有量が11重量%を越えた場合にも所定の比重が得られなくなり、それが1.0重量%に満たない場合には焼結性が進まなくなってしまう。さらに、Co(コバルト)は、Niと同様の効果があるものの、それが0.1重量%未満では充分な添加の効果が得られず、一方、それが5重量%を越えても相応の効果が得られずに製造上不経済となる。また、Cu粉末およびFe粉末は、これらを含有させることにより焼結温度を下げることができるものの、上記の上限値以上では所定の比重が得られなくなる。
【0015】
また、回転軸2や振動子3などの寸法の具体例を挙げると次のとおりである。回転軸2の直径Dは0.8mm、振動子3の外径R1は3.0mm、振動子3の長さL1は3.0mm、溝部3Bの内径R2は0.4mm、側壁3Cの高さH1は0.25mm、側壁3C、3Cの形成領域の幅W1は2.5mmである。また、加締めポンチ5の先端部5Bに関しては、高さH2が0.3mm、先端幅W2が0.2mm、基端幅W3が0.7mm、長さL2が2mm、両側部分および両端部分の傾斜角θ1、θ2が40°、先端部5B、5B中心線間の距離L3が1.6mm、押し潰す時の押し潰し深さH3が0.25mmである。
【0016】
なお、本実施形態においては、図7に示すように、凹所6、6が、振動子3の側壁3C、3Cにおける溝部3Bの開口側端面に、溝部3B側および外側面3C1側にそれぞれ押し潰されない部分を残した状態で、回転軸2の軸線Oに沿って所定範囲に渡って中央部のみを押し潰して加締めるようにしたが、これに代えて、溝部3B側にのみ押し潰されない部分を残して、その他の部分は回転軸2の軸線Oに沿って所定範囲に渡って外側面3C_(1)に至るまで押し潰して加締めるようにしても良いし、または外側面3C_(1)側にのみ押し潰されない部分を残して、その他の部分は回転軸2の軸線Oに沿って所定範囲に渡って溝部3Cに至るまで押し潰して加締めるようにしても良い。後者のようにすると、溝部3C側が開放状態となるので、凹所6において当該凹所6の溝部3C側の底部に亀裂が発生するおそれがあるのに対し、このような亀裂が生じないという利点がある。
【0017】
図8および図9は、本実施形態における振動子3の変形例を説明するための図である。図8(a)に示すものは、側壁3Cにおける溝部3Bの開口側端面から円弧状の外周面3Dに向かって偏心荷重部3A側に窪んだ円弧状の円弧面3Eが形成されている。同図(a)において、偏心荷重部3A側に窪んだ円弧状の円弧面3Eに代えて、偏心荷重部3A側から外方に向かって膨出する円弧面としてもよい。また、同図(b)に示すものは、第1の実施形態と同様に、側壁3Cを押し潰す際に、外側面3C_(1)における側壁3Cの根元側に発生する応力集中による割れを防止するために、外側面3C_(1)が円弧状に形成され、この外側面3C_(1)と外周面3Dとの間に、軸線Oの同図中下側に位置する水平面3Fが形成されている。
一方、図9(a)に示すものは、側壁3Cの外側面3C_(2)が、溝部3Bの開口側から底側に向かう方向と平行でかつ軸線Oと平行な平面とされ、この外側面3C_(2)と外周面3Dとの間に傾斜面3Gが形成されるとともに、これらの接合部分は、側壁3Cを押し潰す際に、この接合部分に応力集中による割れが発生するのを防止するために、丸み処理が施され、偏心荷重部3A側に窪んだ円弧状とされている。また、同図(b)に示すものは、同図(a)と同様に外側面3C_(2)が形成され、この外側面3C_(2)と外周面3Dとの間に同図(b)中溝部3Bの底と略同様の高さに位置する水平面3Hが形成されされるとともに、外側面3C_(2)と水平面3Hとの接合部分は、同図(a)と同様に、この接合部分に応力集中による割れが発生するのを防止するために、偏心荷重部3A側に窪んだ円弧状とされている。
【0018】
図10は、本実施形態における振動子3の他の変形例を説明するための図である。同図(a)に示すものは、偏心荷重部3Aの側壁3Cと円弧状の外周面3Dとの間の外面3I、3Iに、軸線Oに沿って横断面略半円状の切欠溝3J、3Jが形成され、同図(b)に示すものは、外面3I、3Iに軸線Oに沿って横断面三角状の切欠溝3K、3Kが形成され、同図(c)に示すものは、外面3I、3Iに軸線Oに沿って横断面四角状の切欠溝3L、3Lが形成された形状となっている。このように偏心荷重部3Aの軸線Oに近い位置に切欠としての例である切欠溝3J、3K、3Lを形成すれば、偏心荷重の中心が軸線Oからより離れることになるので、振動子3の軽量化を図りつつ偏心荷重を有効に作用させることができ、振動効率を向上させることができる。
【0019】
図11ないし図14は、本実施形態における振動子3のさらに他の変形例を説明するための図である。図11および図12に示す振動子3の両端面3M、3Mには、それぞれ小型モータの軸受部が嵌合される嵌合凹所3Nが形成されている。また、図13および図14に示す振動子3の両端面3P、3Pには、それぞれ小型モータの軸受部が嵌合される嵌合凹所3Q、3Qが形成されている。このような振動子3によれば、小型モータ1と振動子3を一体化したときに軸線O方向の寸法を短縮することができる。なお、上記嵌合凹所3N、3Qは一方の端面3M、3Pにのみ設けるようにしても良い。
【0020】
図15は、本実施形態における振動子3の溝部3Bの変形例を説明するための図である。同図(a)の場合は、断面四角形の溝の側壁が内側に窄む形状とされ、同図(b)の場合は、断面略五角形の溝の側壁が内側に窄む形状とされ、同図(c)の場合は、U字状の溝とされ、同図(d)の場合は、断面略四角形の溝とされ、同図(e)の場合は、断面四角形の溝の底面が楔状に切り欠かれた形成とされている。これらの溝部3Bは、いずれも回転軸2の中心角180°の範囲を内在させる大きさに形成されている。同図(c)、(d)、(e)については、回転軸2を溝部3B内に上方より挿入し加締めて結合させることができるから、作業速度を速めることができ、作業効率を向上させることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図16は、本発明の第2の実施形態を説明するための図である。
本実施形態の場合は、加締めポンチ5の先端部5B、5Bが、回転軸2の軸線O方向に沿って直列に並んで形成され、さらにこれら直列に並んだ5B、5Bが回転軸2の軸線Oに並行に2列に並んで形成され、合計4つの先端部5Bが形成されている。そして、振動子3の側壁3C、3Cにおける溝部3Bの開口側端面が、下方に押し潰されてそれぞれ軸線O方向に沿って2個所の凹所が形成され、これにより溝部3Bの内面と回転軸2とが密着して振動子3と回転軸2とが一体的に結合される。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1?3のいずれかに記載の発明は、偏心荷重部に回転軸をはめ込む溝部を形成し、上記偏心荷重部の端面から軸線Oを越えて膨出してこの溝部を形成する側壁における溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)を、溝部の軸線と直交する方向における端面の幅寸法よりも先端部の幅寸法が小さい加締めポンチによって、当該端面の幅方向に凹部が形成されるように溝部の開口側から底側に向かう方向に押し潰して回転軸と振動子を一体的に結合させるため、従来のように所要の結合力を確保するために側壁を回転軸側に塑性変形させて曲げたときに側壁の上端部が回転軸の上側部分を覆うようにする必要がないため、従来に比して溝部の側壁の膨出高さを低減できる分、振動子の偏心荷重を有効に作用させて振動効率を向上させることができる。しかも、従来のように側壁に曲げ応力がかからないので、振動子のクラックの発生を抑しつつ、さほど靭性を考慮することなくタングステン(W)の含有量を増加させて振動子の高比重化を図ることができる。これらの結果、振動子の小型軽量化、ひいては振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化、低コスト化を実現することが可能となる。
さらに、溝部を形成する両側壁における溝部の開口側端面(上記偏心荷重部の外周面の近傍位置まで延在したものを除く。)を押し潰して加締めるので、従来のように側壁全体を塑性変形させて曲げなくてよいから、従来に比して加締め荷重を小さくできるという利点がある。
【0023】
また、請求項2に記載の発明によれば、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させるように、振動子の溝部を形成することにより、回転軸を振動子の溝部内により確実に拘束して、それらの結合強度をより高めることができるといった効果が得られる。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、上記側壁における溝部と反対側に位置する外側面を偏心荷重部側に窪んだ円弧状に形成しているので、側壁の根元側に応力集中による割れが発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施形態における振動子の平面図である。
【図2】
図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】
本発明の第1の実施形態における回転軸の加締め作業開始前の状態を示す横断面図である。
【図4】
本発明の第1の実施形態における回転軸の加締め作業開始前の状態を示す縦断面図である。
【図5】
本発明の第1の実施形態における回転軸の加締め作業中の状態を示す横断面図である。
【図6】
本発明の第1の実施形態における回転軸の加締め作業中の状態を示す縦断面図である。
【図7】
本発明の第1の実施形態における回転軸と振動子との結合部分の拡大断面図である。
【図8】
(a)および(b)は、本発明の第1の実施形態における振動子の異なる変形例を説明するための平面図である。
【図9】
(a)および(b)は、本発明の第1の実施形態における振動子の異なる変形例を説明するための平面図である。
【図10】
(a)、(b)、および(c)は、本発明の第1の実施形態における振動子の他の変形例を説明するための平面図である。
【図11】
本発明の第1の実施形態における振動子のさらに他の変形例を説明するための平面図である。
【図12】
図11のXII-XII線に沿う断面図である。
【図13】
本発明の第1の実施形態における振動子のさらに他の変形例を説明するための平面図である。
【図14】
図13のXIV-XIV線に沿う断面図である。
【図15】
(a)、(b)、(c)、および(d)は、本発明の第1の実施形態における振動子の異なる変形例を説明するための要部の断面図である。
【図16】
本発明の第2の実施形態を説明するための側面図である。
【図17】
従来の振動発生装置の斜視図である。
【図18】
従来における回転軸の加締め作業開始前の状態を示す横断面図である。
【図19】
従来における回転軸の加締め作業中の状態を示す横断面図である。
【符号の説明】
1 小型モータ(モータ)
2 回転軸
3 振動子
3A 偏心荷重部
3B 溝部
3C 側壁
4 受け治具
5 加締めポンチ
5B 先端部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2010-07-09 
出願番号 特願平10-329223
審決分類 P 1 41・ 853- Y (H02K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩瀬 昌治  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 大河原 裕
冨江 耕太郎
登録日 2000-06-09 
登録番号 特許第3076017号(P3076017)
発明の名称 小型無線機の振動発生装置  
代理人 近藤 惠嗣  
代理人 近藤 惠嗣  
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