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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1221915 |
審判番号 | 不服2008-1479 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-17 |
確定日 | 2010-08-09 |
事件の表示 | 特願2004-296473「情報処理装置および方法、記録媒体、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月20日出願公開、特開2006-107353〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年10月8日の出願であって、平成19年12月14日付で拒絶査定がなされ、平成20年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願特許請求の範囲の請求項1の記載 本願特許請求の範囲の記載は、平成19年12月3日に提出された手続補正書の【手続補正1】の欄に記載されたとおりであり、その請求項1の記載は以下のとおりである。 「 文章を単語に分解する分解手段と、 単語を特徴付けるために設定された複数のクラスと、所定の単語が生起するという条件のもとで、前記クラスが生起する確率とを関連付けた確率分布を保持する保持手段と、 前記分解手段により分解された単語毎に対応する前記単語に関する確率分布を、前記保持手段から読み出し、読み出された複数の単語毎の確率分布の積で近似することにより前記文章に関する確率分布を生成する生成手段と、 前記生成手段により生成された前記文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有する文章を、予め生成されているテーブルであり、複数の文章に関する確率分布に関する情報が記載されているテーブルを検索し、前記文章より後に出現する単語を予測する予測手段と を備えることを特徴とする情報処理装置。」 3.原査定の理由 原査定の拒絶の理由のうち、特許法第36条に関するものの概要は、「この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」というものであり、当該拒絶の理由についての拒絶理由通知と拒絶査定それぞれにおけるより具体的な指摘事項のうち、請求項1に関するものは、以下のとおりである。 ア.拒絶理由通知における指摘事項 「(5)特許請求の範囲第1項の『予測手段』に関する記載では、『確率分布表現』を用いて何らかの方法で所望の予測をしたい、という(『技術的思想』とはいえない)願望の範疇を超えない。 したがって、当該記載では、『発明』(自然法則を利用した『技術的思想』の創作)が明確でない。 また、特許請求の範囲第3乃至4項にある記載を参酌しても依然として不明である。」 イ.拒絶査定における指摘事項 「『テーブルを検索』して得られる結果と、単語の『予測』との関係が特定されていないこともあり、如何なる『技術的思想』で所望の予測を行うのか、依然として不明である。」 4.当審の判断 当審も、本願請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、換言すれば、本願請求項1の記載では、請求項1に係る特許を受けようとする発明が明確でないと判断する。 理由は以下のとおりである。 (1)請求項1の「前記生成手段により生成された前記文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有する文章を、予め生成されているテーブルであり、複数の文章に関する確率分布に関する情報が記載されているテーブルを検索し、前記文章より後に出現する単語を予測する予測手段」なる記載は、それにより特定される具体的事物の範囲が不明確であり、結果として、請求項1に係る特許を受けようとする発明が不明確である。 以下、説明する。 ア.上記記載は、「…を有する文章を、…されているテーブルを検索し、…単語を予測する予測手段」という構文になっており、そこでいう「…を有する文章を、」がどこに係るのかが不明確であるため、日本語としての意味内容が不明確である。 イ.上記記載記載中の「テーブルを検索」が「テーブルにおいて検索」の意味であると善解すれば、すなわち、上記記載が「前記生成手段により生成された前記文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有する文章を、予め生成されているテーブルであり、複数の文章に関する確率分布に関する情報が記載されているテーブルにおいて検索し、前記文章より後に出現する単語を予測する予測手段」を意味していると解すれば、上記「…を有する文章を、」が「検索し」に係ることが明確になるので、上記記載の日本語としての意味内容は明確になるが、そのように解釈した場合であっても、以下の理由で、上記記載により特定される具体的事物の範囲は不明確である。 すなわち、上記記載は、「予測手段」が、「『前記生成手段により生成された前記文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有する文章』を『複数の文章に関する確率分布に関する情報が記載されているテーブル』において検索し、『前記文章より後に出現する単語』を予測する」機能を有するものであることを規定しており、そこでいう「前記文章」は、発明の詳細な説明を参酌すると、外部から入力される文章を指すものと認められるので、上記記載は、「予測手段」が、「『外部から入力された文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有する文章』を『複数の文章に関する確率分布に関する情報が記載されているテーブル』において検索することで、『外部から入力された文章より後に出現する単語』を予測する」といった機能を有するものであることを規定していることになるが、そのような機能を有する具体的な物が、本願出願時に当業者に知られていた証拠はなく、技術常識を考慮しても、当業者が本願請求項1の記載から上記機能を有する具体的な物を想定できたとは認められない。そして、そのような具体的な物を想定できない「予測手段」に関する記載では、当該記載により特定される具体的事物の範囲は不明確である。 (2)以上の事情は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても変わらない。なぜならば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「予測手段」の具体的内容に関する記載としては下記<発明の詳細な説明中の「予測手段」の具体的内容に関する記載>の欄に摘記するような記載があるのみで、当業者が本願出願時に上記「『外部から入力された文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有する文章』を『複数の文章に関する確率分布に関する情報が記載されているテーブル』において検索することで、『外部から入力された文章より後に出現する単語』を予測する」といった機能を有する具体的な物を想定できたことを示す記載はもとより、同機能を有する具体的な物自体についての説明すらないからである。 さらにいえば、下記<発明の詳細な説明中の「予測手段」の具体的内容に関する記載>の欄に摘記する記載を中心とする発明の詳細な説明の記載からは、「予測手段」が、「『外部から入力された文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有するクラスタのクラスタID(大域文脈クラスタ確定部15から供給された大域文脈のクラスタID)と、局所文脈情報取得部12から供給された単語の情報(局所文脈情報)とが一致する単語の生起確率』を、『局所文脈、大域文脈毎の単語生起確率値を保持するテーブル』において検索することで、『外部から入力された文章より後に出現する単語』を予測する」といった機能を有するものであることまでは読み取れるものの、上記のような「『外部から入力された文章に関する確率分布と一致または近似する確率分布を有する文章』を『複数の文章に関する確率分布に関する情報が記載されているテーブル』において検索することで、『外部から入力された文章より後に出現する単語』を予測する」といった機能を有するものであることは読み取れない。 <発明の詳細な説明中の「予測手段」の具体的内容に関する記載> ア.「予測手段(例えば、図1の言語モデルパラメータ取得部16)」(段落【0037】) イ.「言語モデルパラメータ取得部16は、局所文脈情報取得部12で供給された、処理対象とされている単語Nに対して、直前に位置する単語N-1の情報と、大域文脈クラスタ確定部15から供給された大域文脈のクラスタIDから、確率的言語モデルパラメータ保持部20が保持する単語生起確率値を取得し、出力部17に、その取得された確率値を供給する。」(段落【0050】) ウ.「言語モデルパラメータ取得部16は、ステップS38において、局所文脈情報取得部12から供給された単語の情報(局所文脈情報)と、大域文脈クラスタ確定部15から供給されたクラスタIDから、一致する単語生起確率値を、確率的言語モデルパラメータ保持部20に保持されているテーブル61(図6)を参照して読み出し、出力部17に供給する。出力部17は、供給された単語生起確率値を、図示していない後段の処理に供給する。」(【段落138】) 5.むすび 以上のとおり、本願請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その他の拒絶の理由を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-06-14 |
結審通知日 | 2010-06-15 |
審決日 | 2010-06-28 |
出願番号 | 特願2004-296473(P2004-296473) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和田 財太 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
真木 健彦 長島 孝志 |
発明の名称 | 情報処理装置および方法、記録媒体、並びにプログラム |
代理人 | 稲本 義雄 |