• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65H
管理番号 1222078
審判番号 不服2008-25102  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-01 
確定日 2010-08-19 
事件の表示 特願2000-229381「シート巻き取り用プラスチックコア」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月12日出願公開、特開2002- 46943〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年7月28日の出願であって、平成20年8月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年10月1日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年10月31日付けで手続補正がなされたものである。その後、当審において、平成20年10月31日付けの手続補正の却下の決定が平成22年3月31日付けでなされるとともに、同日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成22年6月3日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明は、平成22年6月3日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「帯状のシートをロール状に巻き取るためのプラスチックコアであって、円筒状のコア本体の表面の軸方向ほぼ中央部にシート巻き取り領域を有し、該シート巻き取り領域内の円周方向両縁部にそれぞれ高さ0.05?0.30mmのリング状突起が形成され、該両縁部の幅がそれぞれ該シート巻き取り領域の幅の10%以下であることを特徴とするプラスチックコア。」

3.引用発明
これに対して、当審で通知した拒絶の理由2(進歩性欠如)に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭58-182616号(実開昭60-88764号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)及び実願昭61-185007号(実開昭63-90664号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項及び引用発明が記載されている。

【引用例1について】
(1)「フイルムベースの片面に感圧転移性を有するインク層が付設されたインクリボンがコアに巻回されてなるインクリボン巻体において前記コアのリボン巻取面のインクリボンの不使用部分に対向する位置に、前記インクリボンの不使用部分をコアの径方向に折曲せしめる凹部または凸部が形成されてなるインクリボン巻体。」(【実用新案登録請求の範囲】参照)

(2)「本考案は・・・、コアならびにその周辺の巻心近くのリボンの抜け出しおよび裏写りによるリボンの使用不能が排除されたインクリボン巻体を提供することを目的とする。」(第2頁19行-第3頁2行参照)

(3)「第4図に示すように、コア(9)の巻取面(4)の両縁部に環状の線状突起(8a)、(8b)を設けて、インクリボン(2)の両縁部における不使用部分を外側に折曲せしめること。」(第6頁5-8行参照)

以上の記載によると、引用例1には、
「インクリボンが巻回されるコアにおいて、
前記コアのリボン巻取面のインクリボンの不使用部分に対向する位置であって、その両縁部に環状の線状突起を設けて、インクリボンの両縁部における不使用部分を外側に折曲せしめるコア。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

【引用例2について】
(1)「巻取面となる環状の外周面のほぼ中央部に、この外周面の巾よりも小さい環状の突起を設けたことを特徴とする巻芯。」(【実用新案登録請求の範囲】参照)

(2)「この考案は、インパクトプリンタ等に用いるインクリボン、熱転写インクリボン等の狭巾帯状体を巻き取る巻芯に関する。」(第1頁10-13行参照)

(3)「この考案は、・・・特に巻き始めに発生しやすい巻ずれを有効に防止でき・・・る巻芯を提供することを目的とする。」(第3頁6-10行参照)

(4)「第1,2図に示すように、この考案による巻芯1は、円筒状となっていて、・・・また突起3の大きさは、高さhが0.01から0.1mm・・・とすることが好ましい。巻芯1は一般的にはスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のプラスチック材料を成形して得られる・・・。」(第3頁17行-第4頁7行参照)

以上の記載によると、引用例2には、以下の技術事項が記載されているものと認められる。
「巻き始めに発生しやすい巻ずれを有効に防止するために、インクリボン等の巻取面となる環状の外周面の略中央部に、この外周面の巾よりも小さい環状の突起を設けた巻芯において、
上記突起の高さを0.01から0.1mmとすること。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「インクリボン」及び「環状の線状突起」は、それぞれ本願発明の「帯状のシート」及び「リング状突起」に相当することより、両者は、
「帯状のシートをロール状に巻き取るためのコアであって、円筒状のコア本体の表面の軸方向ほぼ中央部にシート巻き取り領域を有し、該シート巻き取り領域内の円周方向両縁部にそれぞれリング状突起が形成されたコア。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願発明では、コアがプラスチックであるのに対し、引用発明では、コアの材質が特定されていない点。

相違点2;本願発明では、シート巻き取り領域内の円周方向両縁部に形成されたリング状突起がそれぞれ高さ0.05?0.30mmであるのに対し、引用発明では、環状の線状突起の高さが特定されていない点。

相違点3;本願発明では、リング状突起が形成される両縁部の幅がそれぞれシート巻き取り領域の幅の10%以下であるのに対し、引用発明では、環状の線状突起が形成される両縁部の領域の幅が特定されていない点。

5.判断
上記各相違点について検討すると、
・相違点1について
帯状物を巻き取る巻芯をプラスチックで形成することは、本願出願前周知の技術(例えば、上記引用例2の記載事項(4)を参照。)であるので、
引用発明において、コアの材質をプラスチックとすることは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
引用例2には、巻き始めに発生しやすい巻ずれを防止するための環状の突起ではあるが、インクリボン等の巻取面に設けられた上記突起の高さを0.01から0.1mmとする技術事項が記載されている。
また、本願発明のリング状突起は、シートロールが抜け落ちないようにするものであるが、その高さの最適値は、シートの幅、厚さ及び材質、コアの外径並びにシートの巻締力などの各種条件により変化しうるものであり、上記最適値の範囲はそのような各種条件を考慮し、また、実験等をとおして当業者が設計上適宜に決めうる事項と認められ、
そして、0.05?0.30mmの数値範囲は、引用例2に記載された技術事項を参酌すれば、格別なものとも認められないことより、
引用発明において、環状の線状突起の高さを上記相違点2における本願発明の数値範囲内に設定することは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点3について
本願発明が、リング状突起が形成される両縁部の幅をそれぞれシート巻き取り領域の幅の10%以下としている技術的な意義は、本願明細書の段落【0011】に「インクシート巻き取り領域内の両縁部というのは画像に影響が出ないその領域の端に近い部分をいう相対的な概念であり、端から測ってインクシート巻き取り領域の幅の10%以下程度の帯状の領域である。」とあるように「画像に影響が出ない部分」を規定するものである一方、
引用発明においても、環状の線状突起を設けられている両縁部は「インクリボンの不使用部分に対向する位置」であり、これは本願明細書の上記「画像に影響が出ない部分」に相当するものと認められることより、
上記相違点3は、実質的な相違ではない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-21 
結審通知日 2010-06-23 
審決日 2010-07-06 
出願番号 特願2000-229381(P2000-229381)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 誠吉澤 秀明渋谷 善弘  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 佐野 健治
谷治 和文
発明の名称 シート巻き取り用プラスチックコア  
代理人 臼井 伸一  
代理人 藤野 育男  
代理人 越智 隆夫  
代理人 岡部 正夫  
代理人 岡部 讓  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 高梨 憲通  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ