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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1222125
審判番号 不服2007-27557  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-09 
確定日 2010-08-16 
事件の表示 特願2003- 57398「情報処理装置および方法、並びにプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-265335〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成15年3月4日の出願であって,平成19年2月23日付けの拒絶理由通知に対して,同年5月1日に意見書と手続補正書が提出されたが,同年9月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年5月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】 複数の機器から1つの装置を特定するための第1のIDを記憶する第1の記憶手段と,
複数のコンテンツから1つのコンテンツを特定するための第2のIDを記憶する第2の記憶手段と,
前記第2の記憶手段により記憶されている前記第2のIDを少なくとも含む情報を,他の装置に供給する供給手段と,
前記他の装置から,前記コンテンツの配信先の装置を特定するための第1のIDと,前記他の装置側で,前記第2のIDを少なくとも含む情報から,配信を希望するコンテンツが選択され,その選択されたコンテンツに対応する前記第2のIDを,それぞれ受信した場合,前記第1の記憶手段に記憶されている前記第1のIDを参照し,受信された前記第1のIDから配信先の装置を特定する特定手段と,
前記特定手段により前記配信先の装置が特定された場合,前記特定された装置に,受信された前記第2のIDで特定される前記コンテンツを配信するスケジュールを作成する作成手段と,
前記作成手段により作成された前記スケジュールに基づき,前記コンテンツを配信する配信手段と
を備え,
前記作成手段は,前記他の装置のユーザが,前記コンテンツを配信する時刻を指定している場合,既に作成されている前記時刻に対応するスケジュールを参照し,その指定された時刻に設定されている予約の数と前記時刻に対応する所定の予約の数とに基づいて,前記コンテンツを配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成し,
不可能であると判断したとき,その時刻の前後に最も近い,送信可能な時刻を,既に作成されている前記時刻の前後に対応するスケジュールを参照し,検索し,その検索した時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成し,
前記所定の予約の数は,前記作成手段が,前記時刻に送信される前記コンテンツのデータ量を判断し,新たに作成するスケジュールに対応する前記コンテンツのデータ量を,その判断したデータ量に加算したデータ量が,自己の配信能力を超えない数である
ことを特徴とする情報処理装置。」

3.原査定の拒絶の理由について

原査定の平成19年2月23日付けの拒絶理由通知の概要は,以下のとおりである。

『 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

(請求項1?10)
引用文献1?3には,スケジュールが重複した場合に,配信予約を拒否/拒絶する構成は記載されているが,それを調整する構成については起債されていない。
しかし,スケジュールが重複した場合にそれを時間的に前にシフトあるいは後ろにシフトすることにより調整を行うことはたとえば引用文献4,5にあるように一般的に周知の技術事項であり,引用文献1?3において当該構成を採用することは当業者においては容易に想到できたものと認める。
従って,請求項1?10に係る発明は,進歩性を有しない。

拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2002-185947号公報
2.特開2002-112231号公報
3.特開2002-009717号公報
4.特開平10-240827号公報
5.特開2000-277401号公報 』

原査定の拒絶査定の概要は,以下のとおりである。

『 この出願については,平成19年 2月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
本願出願人は上記意見書において,「これらに対し,請求項1に記載の本願発明は,スケジュールを作成するとき,“既に作成されている時刻に対応するスケジュールを参照し,指定された時刻にコンテンツを配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に設定されている予約の数と前記時刻に対応する所定の予約の数とに基づいて,コンテンツを配信するスケジュールを作成し,不可能であると判断したとき,その時刻の前後に最も近い,送信可能な時刻を,既に作成されている時刻の前後に対応するスケジュールを参照し,検索し,その検索した時刻にコンテンツを配信するスケジュールを作成する”ことを特徴とします。また,請求項1に記載の本願発明は,ユーザが指定した時刻に配信するコンテンツの数を,“送信されるコンテンツのデータ量を判断し,新たに作成するスケジュールに対応するコンテンツのデータ量を,その判断したデータ量に加算したデータ量が,自己の配信能力を超えない数”に制限することを特徴とします。」と主張する。
しかしながら,上記拒絶理由通知書でべ述べたように,引用文献1-3にはスケジュールが重複した場合に配信予約を拒否することが記載されており,また,一般にスケジュールが重複した場合にそれを時間的に前後シフトさせて調整することも引用文献4及び5で示したように周知の技術であるから,引用文献1-3においてスケジュールが重複した場合にそれを前後にシフトさせることにより配信予約を可能とすることは当業者ならば容易に想到しえたことである。
また,例えば引用文献1では,配信装置の処理負荷やネットワーク負荷を考慮して,その予約数として配信可能な最大のタイトル数としており,これも結局配信するデータ量で配信能力を超えない数に制限するものであることは当業者ならば自明である。
したがって,本願出願人の主張は採用できず,請求項1-9に記載されたものは当業者が容易に発明できたものである。 』

4.当審の判断

4-1.引用例

(1)引用例1
原査定の拒絶理由通知で引用された「特開2002-112231号公報」(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【0026】図2は,衛星放送を用いたVODサービスのシステム構成を表している。サービス提供者1000と複数の加入者宅(2000-1,…,2000-N)は,VODチャネル310と制御チャネル410を介して情報をやり取りする。VODチャネル310は,サービス提供者1000から加入者宅2000への単方向通信路であり,動画,音声,番組ガイド情報等からなる番組情報が伝送される。制御チャネル410は双方向通信路であり,番組配信を制御するための情報がサービス提供者1000と加入者宅2000間でやり取りされる。
【0027】図3は,加入者宅2000の端末のシステム構成を示している。加入者宅2000には,VODチャネル310上の映像信号を受信するためのアンテナ700と,受信した映像信号に対するデコードと録画再生を制御するセットトップボックス(STB)500と,映像信号を記録するD-VHS710と,前記STBからのデコードされた映像信号を表示するTVモニタ720と,前記STBに対して視聴者の指示を伝えるためのリモコン800とが備えられる。
【0028】STB500は,アンテナ700からの衛星放送波を復調・デコードするデコーダ600と,全体の動作を制御するプロセッサ520と,プロセッサ520の作業用記憶装置である主メモリ530と,STB500の管理情報を格納している内部ハードディスクドライブ(内部HDD)540と,リモコン800を介して伝えられるユーザ操作を受付けるユーザ入力手段550と,番組ガイド等のユーザインタフェース用のオンスクリーンディスプレイ(OSD)を作成するOSD回路560と,制御チャネル410上での通信を終端する通信手段570と,各構成要素を接続する制御バス510から構成される。」

(イ)「【0031】加入者宅2000からVOD番組を要求する場合の処理フローは以下の通りである。まず,プロセッサ520は通信手段570を制御して,サービス提供者1000から提供可能な番組の一覧を表す番組ガイド90を取得し,その番組一覧のOSD画面を作成し,OSD回路560を介してTVモニタ720に表示する。ユーザはそのOSDから視聴したい番組を選択し,リモコン800を用いて,希望の番組名,希望の受信開始時刻等をSTB500へ入力する。STB500は,このユーザ入力に基づいて番組要求2を作成し,通信手段570を制御して,制御チャネル410上へ送信する。番組要求2に対する応答として,番組を配信するタイムスケジュールを表す配信予定80が制御チャネル410上で受信されるので,これに基づいてVODチャネル310上の番組を取得する。」

(ウ)「【0036】図4は,サービス提供者1000のシステム構成を示している。サービス提供者1000は,システム全体の動作を制御するシステム制御装置200と,番組の送出を実行・管理する映像配信装置100と,番組を送出するための映像送出装置(本実施例では衛星送信機)210と,制御情報を通信するための通信装置220からなる。
【0037】衛星送信機210は,番組を加入者宅2000に送るために,単方向通信回線であるVOD回線300(複数の配信チャネル)を生成する。VOD回線300には,送信周波数の異なる,独立した通信チャネルが多重化されている。さらに,各送信周波数の通信チャネル毎に,複数の番組ストリームがトランスポートパケットにより多重化されている。以下では,1つの番組を伝送できる通信チャネルをVODチャネル310と呼ぶ。図4では,4つのVODチャネル,CH1(311)からCH4(314)が存在する場合について示してあるが,通常の衛星放送では数百のチャネルが存在する。一般的に,サービス提供者1000における設備コストの制約のため,VODチャネル310の数は加入者宅(図2の2000-1から200-N)の数よりも少ない。そこで,VODチャネル310は複数の加入者間で共有されることになり,このVODチャネル資源を有効に利用することが必要となる。
【0038】通信装置220は,制御回線400上の制御チャネル410による通信を終端する。制御チャネル410を介してやり取りされる情報としては,番組の配信スケジュールを表す配信予定80,加入者からの番組要求2等がある。
【0039】番組要求2は,必須の情報である基本情報31と,加入者の受信形態を指示する受信仕様32から構成される。基本情報31は,番組を識別するための番組名3と,希望する配信開始時刻を指示する開始時刻4と,番組の所要時間5からなる。受信仕様32は,開始時刻4がどの程度まで遅延可能かを表す許容遅延6と,番組を1つのVODチャンネル310上で連続して配信する必要があるかそうでないかを指示する連続性7と,STBのもつチューナー(図3の610)の数を表すTuner数8と,対象の番組を受信するために利用可能な内臓HDD(図3の540)の容量を表すHD容量9からなる。
【0040】映像配信装置100は,番組を構成する映像・音声等を格納している映像データベース110と,番組の配信をスケジューリングするために必要な情報を格納している配信予定データベース130と,配信予定データベース130上の情報と通信装置220を介してやり取りされる制御情報に基づいて配信スケジュール70を作成する放送スケジューラ140と,番組のコンテンツを映像データベース110から読み出し衛星送信機により送出するビデオサーバ120からなる。
【0041】配信予定データベース130には,加入者毎の情報を表す加入者情報30と,映像データベース110に格納されている番組に関する情報をもつ番組情報10と,制御チャネル410を介して受信した番組要求2に関する情報をもつ番組要求情報20と,番組の配信に関するタイムスケジュールを表す配信スケジュール70が存在する。
【0042】放送スケジューラ140は新たな番組要求2を受信すると,配信予定データベース130へ番組要求情報20として記録する。この番組要求情報20と,加入者情報30及び番組情報10を用いて,配信スケジュール70が更新される。その配信スケジュール70は,更新の影響が及ぶ加入者に対して配信予定80として通知される。
【0043】図5は,本実施の形態1の配信スケジュール70の一例を示している。配信スケジュール70は,CH1(41),CH2(42),CH3(43)及び,CH4(44)の各VODチャネル310において,その時間区分(以下ではCH時間区分と呼ぶ)に対して番組要求情報20を割当てたものとなっている。例えば,CH1(41)の22時から23時までのCH時間区分52Dには加入者4からの番組Dに対する番組要求情報20が割当てられている。1つのCH時間区分に対して複数の番組要求情報を割当てることも可能である。CH1の20時から21時までのCH時間区分52Cへは,加入者2と加入者3からの番組Cに対する番組要求が相乗りしている。このように,1つのCH時間区分への複数加入者からの番組要求を相乗りすることができれば,VODチャネル310の利用効率を改善することができる。」

(エ)「【0060】図9は,本実施の形態1において,遅延が許容されている番組要求に対する配信スケジューリングの一例を示している。番組要求2-1では,番組F(3-1)を18時(4-1)から配信することが要求されているが,VODチャネル(41-1?44-1)において18時からのCH時間区分において未使用状態のものが存在しない。しかし,番組要求2-1では1時間までの遅延6-1が許容されているので,CH2の19時から22時間までのCH時間区分(1F-1)へ番組要求2-1を割当てることにより,加入者からの要求を満足する配信予定80-1を作成することができる。」

(a)上記摘記事項(イ)の「ユーザはそのOSDから視聴したい番組を選択し,リモコン800を用いて,希望の番組名,希望の受信開始時刻等をSTB500へ入力する。」との記載,及び上記摘記事項(ウ)の【0039】段落の「基本情報31は,番組を識別するための番組名3と,希望する配信開始時刻を指示する開始時刻4と,番組の所要時間5からなる。」との記載からみて,番組名3は,「複数の番組から1つの番組を識別するための」ものであることは明らかである。
また,上記摘記事項(ア)の【0026】段落の「図2は,衛星放送を用いたVODサービスのシステム構成を表している。サービス提供者1000と複数の加入者宅(2000-1,…,2000-N)は,VODチャネル310と制御チャネル410を介して情報をやり取りする。VODチャネル310は,サービス提供者1000から加入者宅2000への単方向通信路であり,動画,音声,番組ガイド情報等からなる番組情報が伝送される。」との記載,及び上記摘記事項(イ)の「まず,プロセッサ520は通信手段570を制御して,サービス提供者1000から提供可能な番組の一覧を表す番組ガイド90を取得し,その番組一覧のOSD画面を作成し,OSD回路560を介してTVモニタ720に表示する。」との記載からみて,サービス提供者1000側の映像配信装置100が,番組ガイド90の情報を記憶するための「記憶手段」を備えていることは明らかである。
また,上記摘記事項(イ)の「まず,プロセッサ520は通信手段570を制御して,サービス提供者1000から提供可能な番組の一覧を表す番組ガイド90を取得し,その番組一覧のOSD画面を作成し,OSD回路560を介してTVモニタ720に表示する。ユーザはそのOSDから視聴したい番組を選択し,リモコン800を用いて,希望の番組名,希望の受信開始時刻等をSTB500へ入力する。」との記載からみて,番組ガイド90が番組名3の情報を含んでいることも明らかである。
してみると,引用例1の映像配信装置100は,「複数の番組から1つの番組を識別するための番組名3を少なくとも含む番組ガイド90を記憶する記憶手段」を備えているということができる。

(b)上記摘記事項(イ)の「まず,プロセッサ520は通信手段570を制御して,サービス提供者1000から提供可能な番組の一覧を表す番組ガイド90を取得し,その番組一覧のOSD画面を作成し,OSD回路560を介してTVモニタ720に表示する。ユーザはそのOSDから視聴したい番組を選択し,リモコン800を用いて,希望の番組名,希望の受信開始時刻等をSTB500へ入力する。」との記載からみて,サービス提供者1000の映像配信装置100が,「記憶手段により記憶されている番組ガイド90を,STB500に供給する供給手段」を備えていることは明らかである。
また,上記(a)に記載したとおり,番組ガイド90は「番組名3を少なくとも含む」ものである。
してみると,引用例1の映像配信装置100は,「記憶手段により記憶されている番組名3を少なくとも含む番組ガイド90を,STB500に供給する供給手段」を備えているということができる。

(c)上記摘記事項(イ)の「まず,プロセッサ520は通信手段570を制御して,サービス提供者1000から提供可能な番組の一覧を表す番組ガイド90を取得し,その番組一覧のOSD画面を作成し,OSD回路560を介してTVモニタ720に表示する。ユーザはそのOSDから視聴したい番組を選択し,リモコン800を用いて,希望の番組名,希望の受信開始時刻等をSTB500へ入力する。」との記載からみて,「STB500側で,番組名3を少なくとも含む番組ガイド90から,視聴したい番組が選択され」ていることは明らかである。
また,上記摘記事項(イ)には「ユーザはそのOSDから視聴したい番組を選択し,リモコン800を用いて,希望の番組名,希望の受信開始時刻等をSTB500へ入力する。STB500は,このユーザ入力に基づいて番組要求2を作成し,通信手段570を制御して,制御チャネル410上へ送信する。」と記載され,番組要求2を送信する相手先は映像配信装置100であるから,映像配信装置100が「選択された番組に対応する番組名3を含む番組要求2を,受信し」ていることは明らかである。
また,上記摘記事項(ウ)の【0042】段落の「放送スケジューラ140は新たな番組要求2を受信すると,配信予定データベース130へ番組要求情報20として記録する。この番組要求情報20と,加入者情報30及び番組情報10を用いて,配信スケジュール70が更新される。その配信スケジュール70は,更新の影響が及ぶ加入者に対して配信予定80として通知される。」との記載からみて,映像配信装置100が,「STB500から,番組要求2を,受信した場合,当該番組要求2を送信した加入者のSTB500を特定する特定手段」を備えていることは明らかである。
してみると,引用例1の映像配信装置100は,「STB500から,前記STB500側で,番組名3を少なくとも含む番組ガイド90から,視聴したい番組が選択され,その選択された番組に対応する前記番組名3を含む番組要求2を,受信した場合,当該番組要求2を送信した加入者のSTB500を特定する特定手段」を備えているということができる。

(d)上記摘記事項(ウ)の【0040】段落の「映像配信装置100は,番組を構成する映像・音声等を格納している映像データベース110と,番組の配信をスケジューリングするために必要な情報を格納している配信予定データベース130と,配信予定データベース130上の情報と通信装置220を介してやり取りされる制御情報に基づいて配信スケジュール70を作成する放送スケジューラ140と,番組のコンテンツを映像データベース110から読み出し衛星送信機により送出するビデオサーバ120からなる。」との記載からみて,「放送スケジューラ140」は,「配信スケジュール70を作成する」ものである。
また,上記摘記事項(ウ)の【0041】?【0042】段落の「配信予定データベース130には,加入者毎の情報を表す加入者情報30と,映像データベース110に格納されている番組に関する情報をもつ番組情報10と,制御チャネル410を介して受信した番組要求2に関する情報をもつ番組要求情報20と,番組の配信に関するタイムスケジュールを表す配信スケジュール70が存在する。(途中省略)放送スケジューラ140は新たな番組要求2を受信すると,配信予定データベース130へ番組要求情報20として記録する。この番組要求情報20と,加入者情報30及び番組情報10を用いて,配信スケジュール70が更新される。その配信スケジュール70は,更新の影響が及ぶ加入者に対して配信予定80として通知される。」との記載,及び図5の記載からみて,配信スケジュール70は,「受信された番組要求2に含まれる番組名3で特定される番組を配信する」ためのものであることは明らかである。
また,上記摘記事項(ア)の【0027】段落の「加入者宅2000には,VODチャネル310上の映像信号を受信するためのアンテナ700と,受信した映像信号に対するデコードと録画再生を制御するセットトップボックス(STB)500と,映像信号を記録するD-VHS710と,前記STBからのデコードされた映像信号を表示するTVモニタ720と,前記STBに対して視聴者の指示を伝えるためのリモコン800とが備えられる。」の記載からみて,番組が「STB500」に配信されることも明らかである。
してみると,引用例1の映像配信装置100は,「特定手段により番組要求2を送信した加入者のSTB500が特定された場合,前記特定されたSTB500に,受信された番組要求2に含まれる番組名3で特定される番組を配信する配信スケジュール70を作成する放送スケジューラ140」を備えているということができる。

(e)上記摘記事項(ウ)の【0042】段落の「その配信スケジュール70は,更新の影響が及ぶ加入者に対して配信予定80として通知される。」との記載,及び上記摘記事項(イ)の「番組要求2に対する応答として,番組を配信するタイムスケジュールを表す配信予定80が制御チャネル410上で受信されるので,これに基づいてVODチャネル310上の番組を取得する。」との記載からみて,引用例1の映像配信装置100が「配信スケジュール70に基づき,番組を配信する配信手段」を備えていることは明らかである。
また,上記(d)で記載したように,配信スケジュール70は,放送スケジューラ140により作成されるものである。
してみると,引用例1の映像配信装置100は,「放送スケジューラ140により作成された配信スケジュール70に基づき,番組を配信する配信手段」を備えているということができる。

(f)上記摘記事項(ウ)の【0039】段落の「番組要求2は,必須の情報である基本情報31と,加入者の受信形態を指示する受信仕様32から構成される。基本情報31は,番組を識別するための番組名3と,希望する配信開始時刻を指示する開始時刻4と,番組の所要時間5からなる。」との記載,及び上記摘記事項(エ)の「番組要求2-1では,番組F(3-1)を18時(4-1)から配信することが要求されているが,VODチャネル(41-1?44-1)において18時からのCH時間区分において未使用状態のものが存在しない。」との記載からみて,番組要求2-1を送信した「加入者」が,「番組を配信する時刻を指定している」ことは明らかであり,その場合に,「既に作成されている前記(指定された)時刻に対応する配信スケジュール70を参照し」て,「その指定された時刻において,番組を配信することが可能か否かを判断し」ていることも明らかである。
また,引用例1では,「その指定された時刻において未使用状態のCH時間区分が存在するか否かに基づいて」,番組を配信することが可能か否かを判断しているものである。
そして,「可能であると判断したとき,その時刻に番組を配信する配信スケジュール70を作成」することは自明のことである。
そうすると,引用例1には,「放送スケジューラ140は,加入者が,番組を配信する時刻を指定している場合,既に作成されている前記時刻に対応する配信スケジュール70を参照し,その指定された時刻において未使用状態のCH時間区分が存在するか否かに基づいて,前記番組を配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に前記番組を配信する配信スケジュール70を作成し」との事項が記載されているということができる。

(g)上記摘記事項(エ)の「番組要求2-1では,番組F(3-1)を18時(4-1)から配信することが要求されているが,VODチャネル(41-1?44-1)において18時からのCH時間区分において未使用状態のものが存在しない。しかし,番組要求2-1では1時間までの遅延6-1が許容されているので,CH2の19時から22時間までのCH時間区分(1F-1)へ番組要求2-1を割当てることにより,加入者からの要求を満足する配信予定80-1を作成することができる。」の記載からみて,指定された時刻に番組を配信することが「不可能であると判断したとき」,「その時刻に近い,送信可能な時刻を,検索し」ていることは明らかである。また,当該検索が「既に作成されている前記時刻の後に対応する配信スケジュール70を参照し」て行われていることも明らかである。
さらに,その結果,「その検索した時刻に番組を配信する配信スケジュール70を作成」していることも明らかである。
そうすると,引用例1には,「不可能であると判断したとき,その時刻に近い,送信可能な時刻を,既に作成されている前記時刻の後に対応する配信スケジュール70を参照し,検索し,その検索した時刻に前記番組を配信する配信スケジュール70を作成する」との事項が記載されているということができる。

以上の点を踏まえ,上記摘記事項(ア)乃至(エ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の番組から1つの番組を識別するための番組名3を少なくとも含む番組ガイド90を記憶する記憶手段と,
前記記憶手段により記憶されている前記番組名3を少なくとも含む番組ガイド90を,STB500に供給する供給手段と,
前記STB500から,前記STB500側で,前記番組名3を少なくとも含む番組ガイド90から,視聴したい番組が選択され,その選択された番組に対応する前記番組名3を含む番組要求2を,受信した場合,当該番組要求2を送信した加入者のSTB500を特定する特定手段と,
前記特定手段により前記番組要求2を送信した加入者のSTB500が特定された場合,前記特定されたSTB500に,受信された番組要求2に含まれる番組名3で特定される番組を配信する配信スケジュール70を作成する放送スケジューラ140と,
前記放送スケジューラ140により作成された前記配信スケジュール70に基づき,前記番組を配信する配信手段と
を備え,
前記放送スケジューラ140は,前記加入者が,前記番組を配信する時刻を指定している場合,既に作成されている前記時刻に対応する配信スケジュール70を参照し,その指定された時刻において未使用状態のCH時間区分が存在するか否かに基づいて,前記番組を配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に前記番組を配信する配信スケジュール70を作成し,
不可能であると判断したとき,その時刻に近い,送信可能な時刻を,既に作成されている前記時刻の後に対応する配信スケジュール70を参照し,検索し,その検索した時刻に前記番組を配信する配信スケジュール70を作成する,
ことを特徴とする映像配信装置100。」

4-2.対比

本願発明と,上記引用例1発明とを比較する。

引用例1発明の「番組」,「識別する」,「番組名3」,「記憶手段」が,それぞれ本願発明の「コンテンツ」,「特定する」,「第2のID」,「第2の記憶手段」に相当するから,引用例1発明の「複数の番組から1つの番組を識別するための番組名3を少なくとも含む番組ガイド90を記憶する記憶手段」が本願発明の「複数のコンテンツから1つのコンテンツを特定するための第2のIDを記憶する第2の記憶手段」に相当する。

引用例1発明の「番組名3を少なくとも含む番組ガイド90」,「STB500」が,それぞれ本願発明の「第2のIDを少なくとも含む情報」,「他の装置」に相当するから,引用例1発明の「前記記憶手段により記憶されている前記番組名3を少なくとも含む番組ガイド90を,STB500に供給する供給手段」が本願発明の「前記第2の記憶手段により記憶されている前記第2のIDを少なくとも含む情報を,他の装置に供給する供給手段」に相当する。

引用例1発明の「視聴したい番組」「番組要求2を送信した加入者のSTB500」が,それぞれ本願発明の「配信を希望するコンテンツ」「配信先の装置」に相当するから,本願発明の「前記他の装置から,前記コンテンツの配信先の装置を特定するための第1のIDと,前記他の装置側で,前記第2のIDを少なくとも含む情報から,配信を希望するコンテンツが選択され,その選択されたコンテンツに対応する前記第2のIDを,それぞれ受信した場合,前記第1の記憶手段に記憶されている前記第1のIDを参照し,受信された前記第1のIDから配信先の装置を特定する特定手段」と引用例1発明の「前記STB500から,前記STB500側で,前記番組名3を少なくとも含む番組ガイド90から,視聴したい番組が選択され,その選択された番組に対応する前記番組名3を含む番組要求2を,受信した場合,当該番組要求2を送信した加入者のSTB500を特定する特定手段」とは,以下に記載する相違点はあるものの,「前記他の装置から,前記他の装置側で,前記第2のIDを少なくとも含む情報から,配信を希望するコンテンツが選択され,その選択されたコンテンツに対応する前記第2のIDを,受信した場合,配信先の装置を特定する特定手段」である点で共通する。

引用例1発明の「特定されたSTB500」「配信スケジュール70」「放送スケジューラ140」がそれぞれ本願発明の「特定された装置」「スケジュール」「作成手段」に相当するから,引用例1発明の「前記特定手段により前記番組要求2を送信した加入者のSTB500が特定された場合,前記特定されたSTB500に,受信された番組要求2に含まれる番組名3で特定される番組を配信する配信スケジュール70を作成する放送スケジューラ140」が本願発明の「前記特定手段により前記配信先の装置が特定された場合,前記特定された装置に,受信された前記第2のIDで特定される前記コンテンツを配信するスケジュールを作成する作成手段」に相当する。

引用例1発明の「前記放送スケジューラ140により作成された前記配信スケジュール70に基づき,前記番組を配信する配信手段」が本願発明の「前記作成手段により作成された前記スケジュールに基づき,前記コンテンツを配信する配信手段」に相当する。

引用例1発明の「加入者」は,STB500(他の装置)の「ユーザ」であるから,引用例1発明の「加入者」が本願発明の「他の装置のユーザ」に相当する。
してみれば,本願発明の「前記作成手段は,前記他の装置のユーザが,前記コンテンツを配信する時刻を指定している場合,既に作成されている前記時刻に対応するスケジュールを参照し,その指定された時刻に設定されている予約の数と前記時刻に対応する所定の予約の数とに基づいて,前記コンテンツを配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成し」と引用例1発明の「前記放送スケジューラ140は,前記加入者が,前記番組を配信する時刻を指定している場合,既に作成されている前記時刻に対応する配信スケジュール70を参照し,その指定された時刻において未使用状態のCH時間区分が存在するか否かに基づいて,前記番組を配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に前記番組を配信する配信スケジュール70を作成し」とは,以下に記載する相違点はあるものの,ともに「前記作成手段は,前記他の装置のユーザが,前記コンテンツを配信する時刻を指定している場合,既に作成されている前記時刻に対応するスケジュールを参照して,前記コンテンツを配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成し」の点で共通する。

本願発明の「不可能であると判断したとき,その時刻の前後に最も近い,送信可能な時刻を,既に作成されている前記時刻の前後に対応するスケジュールを参照し,検索し,その検索した時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成」と引用例1発明の「不可能であると判断したとき,その時刻に近い,送信可能な時刻を,既に作成されている前記時刻の後に対応する配信スケジュール70を参照し,検索し,その検索した時刻に前記番組を配信する配信スケジュール70を作成」とは,以下に記載する相違点はあるものの,ともに「不可能であると判断したとき,その時刻に近い,送信可能な時刻を,既に作成されている前記時刻に対応するスケジュールを参照し,検索し,その検索した時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成」の点で共通する。

上記摘記事項(ウ)の【0040】段落の記載からみて,映像配信装置100が情報処理を行う装置であることは明らかであるから,引用例1発明の「映像配信装置100」が本願発明の「情報処理装置」に相当する。

そうすると両者は,

「複数のコンテンツから1つのコンテンツを特定するための第2のIDを記憶する第2の記憶手段と,
前記第2の記憶手段により記憶されている前記第2のIDを少なくとも含む情報を,他の装置に供給する供給手段と,
前記他の装置から,前記他の装置側で,前記第2のIDを少なくとも含む情報から,配信を希望するコンテンツが選択され,その選択されたコンテンツに対応する前記第2のIDを,受信した場合,配信先の装置を特定する特定手段と,
前記特定手段により前記配信先の装置が特定された場合,前記特定された装置に,受信された前記第2のIDで特定される前記コンテンツを配信するスケジュールを作成する作成手段と,
前記作成手段により作成された前記スケジュールに基づき,前記コンテンツを配信する配信手段と
を備え,
前記作成手段は,前記他の装置のユーザが,前記コンテンツを配信する時刻を指定している場合,既に作成されている前記時刻に対応するスケジュールを参照して,前記コンテンツを配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成し,
不可能であると判断したとき,その時刻に近い,送信可能な時刻を,既に作成されている前記時刻に対応するスケジュールを参照し,検索し,その検索した時刻に前記コンテンツを配信するスケジュールを作成する
ことを特徴とする情報処理装置。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では,「複数の機器から1つの装置を特定するための第1のIDを記憶する第1の記憶手段」を備え,特定手段が,「他の装置から,前記コンテンツの配信先の装置を特定するための第1のIDを受信した場合,前記第1の記憶手段に記憶されている前記第1のIDを参照し,受信された前記第1のIDから配信先の装置を特定する」のに対して,引用例1発明では,第1のIDに対応する構成の記載が無く,特定手段は,番組要求2を送信した加入者のSTB500を特定している点。

[相違点2]
本願発明では,「指定された時刻に設定されている予約の数と前記時刻に対応する所定の予約の数とに基づいて,前記コンテンツを配信することが可能か否かを判断し」,前記所定の予約の数は,前記作成手段が,前記時刻に送信される前記コンテンツのデータ量を判断し,新たに作成するスケジュールに対応する前記コンテンツのデータ量を,その判断したデータ量に加算したデータ量が,自己の配信能力を超えない数であるのに対して,引用例1発明では,指定された時刻において未使用状態のCH時間区分が存在するか否かに基づいて,番組を配信することが可能か否かを判断している点。

[相違点3]
指定された時刻にコンテンツを配信することが不可能であると判断したときに,参照するスケジュールが,本願発明では,「既に作成されている前記時刻の前後に対応するスケジュール」であるのに対して,引用例1発明では,「既に作成されている前記時刻の後に対応する配信スケジュール70」であり,また,検索する送信可能な時刻が,本願発明では,指定された「時刻の前後に最も近い」時刻であるのに対して,引用例1発明では,指定された「時刻に近い」時刻である点。

4-3.判断
上記各相違点について,検討する。

[相違点1]について
コンテンツ配信システムにおいて,コンテンツが配信される機器毎に固有の機器識別情報(本願発明における「第1のID」に相当する)をコンテンツ配信サーバに送信することによって,コンテンツ配信サーバ側でコンテンツの配信先の装置を特定することは,例えば特開平11-328850号公報(特に【0017】【0032】?【0040】段落の記載参照),特開2002-288449号公報(特に【0071】?【0104】段落の記載参照)等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術1」という。)であるものと認められることから,引用例1発明に当該周知技術1を適用して,複数の機器から1つの装置を特定するための第1のIDを記憶する第1の記憶手段を備えて,他の装置から,前記コンテンツの配信先の装置を特定するための第1のIDを受信した場合,前記第1の記憶手段に記憶されている前記第1のIDを参照し,受信された前記第1のIDから配信先の装置を特定するように構成することに格別の困難性があるものとは認められない。

したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,引用例1発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
コンテンツ配信システムにおいて,同時に配信される配信データ量とシステムの配信能力とに基づいて,配信データ量が配信能力を超えないように制限することは例えば特開2002-223425号公報(特に【0025】?【0026】段落の記載参照),特開2002-135307号公報(特に【0013】段落の記載参照)等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術2」という。)であるものと認められ,また,そのような制限を,予約の数が所定の上限数を超えないようにすることによって行うことも,例えば特開2002-185947号公報等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術3」という。)であるものと認められる。
してみれば,引用例1発明において,「指定された時刻に設定されている予約の数と前記時刻に対応する所定の予約の数(所定の上限数)とに基づいて,前記コンテンツを配信することが可能か否かを判断」するように構成して,同時に配信されるデータ量が,自己の配信能力を超えないように制限することは当業者であれば容易に想到し得たことと認められる。
また,その際,「所定の予約の数」が「前記作成手段が,前記時刻に送信される前記コンテンツのデータ量を判断し,新たに作成するスケジュールに対応する前記コンテンツのデータ量を,その判断したデータ量に加算したデータ量が,自己の配信能力を超えない数である」ようにすべきであることも当業者であれば自明のことであり,何ら格別の困難性は認められない。

したがって,相違点2に係る本願発明の構成は,引用例1発明及び周知技術2,3に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]について
所定の予約を行うものにおいて,希望する日時での予約が不可である場合に,当該希望する日時に最も近い日時で予約可能な日時を検索することは,例えば特開平8-331268号公報(特に【0015】段落の記載参照)等に記載されているように周知技術(以下,「周知技術4」という。)であるものと認められることから,引用例1発明に当該周知技術4を適用して,指定された時刻にコンテンツを配信することが不可能であると判断したときに,既に作成されている前記時刻の前後に対応するスケジュールを参照して,指定された時刻の前後に最も近い時刻を検索するように構成することに格別の困難性があるものとは認められない。

したがって,相違点3に係る本願発明の構成は,引用例1発明及び周知技術4に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1,及び周知技術1?4から当業者が予測できる範囲のものである。

なお,審判請求人は平成19年11月8日付けの手続補正書(方式)において以下のとおり主張している。

「(c)本願発明と引用発明との対比
請求項1に記載の本願発明は,“他の装置のユーザが,コンテンツを配信する時刻を指定している場合,既に作成されている時刻に対応するスケジュールを参照し,その指定された時刻に設定されている予約の数と時刻に対応する所定の予約の数とに基づいて,コンテンツを配信することが可能か否かを判断し,可能であると判断したとき,その時刻にコンテンツを配信するスケジュールを作成し,
不可能であると判断したとき,その時刻の前後に最も近い,送信可能な時刻を,既に作成されている時刻の前後に対応するスケジュールを参照し,検索し,その検索した時刻にコンテンツを配信するスケジュールを作成する”ことを特徴とする。
また,そのスケジュールにおける“所定の予約の数”は,“時刻に送信されるコンテンツのデータ量を判断し,新たに作成するスケジュールに対応するコンテンツのデータ量を,その判断したデータ量に加算したデータ量が,自己の配信能力を超えない数である”ことを特徴とする。
審査官殿は,引用文献1を引用して,「配信装置の処理負荷やネットワーク負荷を考慮して,その予約数として配信可能な最大のタイトル数としており,これも結局配信するデータ量で配信能力を超えない数に制限するものであることは当業者なら自明である。」と指摘し,本願発明の進歩性を否定している。
仮に,配信可能なコンテンツがほぼ同じデータ量であるならば,(タイトル数)×(データ量)が,配信能力を超えないように,予め予約可能な最大のタイトル数を設定しておくことは可能である。このような“配信可能なコンテンツがほぼ同じデータ量である”という仮定があるならば,審査官殿が指摘するとおり「配信装置の処理負荷やネットワーク負荷を考慮して,その予約数として配信可能な最大のタイトル数としており,これも結局配信するデータ量で配信能力を超えない数に制限する」ものであることはある意味当業者にとって自明であるといえるかもしれない。
しかしながら,複数のコンテンツを配信することができるように構成されている場合,配信するコンテンツのデータ量に幅があり,それらのコンテンツのデータ量が一定であるとは限らない。例えば,コンテンツの視聴時間がそれぞれ異なる場合などには,視聴時間に応じて,コンテンツのデータ量は増大し,データ量として比較的大きなコンテンツから比較的大きなコンテンツまで存在する可能性がある。
さらに,近年取り扱われる多くのコンテンツは,同一内容のコンテンツであっても,画質や音質を任意に設定することが可能である(ユーザ側で好みの画質や音質を設定したり,配信先の装置の処理能力に応じて画質や音質を設定したりすることが可能である)ように,異なる画質や音質の複数のコンテンツが用意されていることがある。このような音質・画質が異なるコンテンツの場合,同じコンテンツ内容であり,同じ視長時間であっても高画質(高音質)か低画質(低音質)かによってコンテンツのデータ量は大きく変化する。
このようなデータ量が異なるコンテンツを扱うことを考慮した場合,引用文献1のように,タイトル数だけで,予約の可否を制限すると,例えば,データ量の多いコンテンツが一時に送信されるスケジューリングがされてしまうと,たとえタイトル数は配信能力を超えていなくても,実質的には配信能力を超えてしまう可能性がある。
よって,引用文献1のように,タイトル数のみで予約の可否を制限したとしても配信装置の処理負荷やネットワーク負荷を考慮し,その配信能力を超えないように予約を制限することに実効的な効果は得られないと思慮する。
これに対して,請求項1に記載の本願発明は,上記したように,予約されているコンテンツのデータ量に基づいて,予約を制限することを特徴とするのであり,引用文献1の単にコンテンツデータの個数に応じて予約を制限するのとは異なると思慮する。
また,請求項1に記載の本願発明は,上記したような特徴を有するため,例えば,視聴時間の異なるコンテンツや,画質,音質などが異なるコンテンツを扱うような場合であり,データ量がコンテンツ毎に異なるような場合であっても,コンテンツのデータ量を算出し,算出したデータ量に基づいて,予約の数を決めることができるため,確実に配信装置の処理負荷やネットワーク負荷を考慮し,その配信能力を超えないように予約を制限することができるといった「格別の効果を奏する」。
このように,請求項1に記載の本願発明は,引用文献1とは異なる構成と作用効果を有していると思慮する。
また,引用文献1乃至3には,スケジュールが重複した場合に配信予約を拒否されることが記載され,引用文献4,5には,スケジュールが重複した場合にそれを時間的に前後にシフトさせて調整することが記載されているので,引用文献1乃至3においてスケジュールが重複した場合にそれを前後にシフトさせることにより配信予約を可能とすることは当業者ならば容易に想到しえたことであるとのことですが,そもそも,スケジュールが重複した場合に配信予約を拒否するための処理,具体的には,上記したような処理を行う点が異なり,引用文献1乃至5とは異なる構成と作用効果を,請求項1に記載の本願発明が有していることは明白であると思慮する。
このように,請求項1に記載の本願発明は,引用文献1乃至5に記載の発明とは異なる構成と作用効果を有し,引用文献1乃至5に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないので,特許法第29条第2項には違反しないと思慮する。」

以上の審判請求人の主張について検討すると,上記主張の点に関しては,上記「[相違点2]について」及び「[相違点3]について」で検討したとおりであるから,審判請求人の上記主張は採用することができない。

4-4.まとめ

以上のとおりであることから,本願発明は,引用例1発明,及び周知技術1?4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって,本願発明は,引用例1発明,及び周知技術1?4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-17 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-05 
出願番号 特願2003-57398(P2003-57398)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田川 泰宏金子 幸一  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 小林 義晴
須田 勝巳
発明の名称 情報処理装置および方法、並びにプログラム  
代理人 稲本 義雄  

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