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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1222183
審判番号 不服2008-4069  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-21 
確定日 2010-08-20 
事件の表示 特願2002-373526「ゴルフボール成型用金型マスターの製造方法、ゴルフボール成型用金型マスター、ゴルフボール成型用金型、及びゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月22日出願公開、特開2004-201874〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年12月25日の出願であって、平成19年12月20日に手続補正がなされ、平成20年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月21日に手続補正がなされたものである。

第2 平成20年3月21日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成20年3月21日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容・目的
(1)補正の内容
ア 平成20年3月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前に、
「半球面を備えた無垢マスターの表面にディンプル型付け用凹部を有するゴルフボール成型用金型マスターの製造方法であって、上記金型マスターが、アルミ,真鍮,プリハードン鋼,焼入れ焼きもどし鋼,析出硬化鋼,耐食鋼,非磁性鋼,冷間ダイス鋼,マルテンサイト系ステンレス鋼,熱間ダイス鋼,高速度工具鋼及びマルエーシンク鋼の群から選ばれた材料にて形成されると共に、上記ディンプル型付け用凹部がエンドミルのエッジ部を用いる切削加工により形成され、上記エンドミルは、その刃数が2枚以上4枚以下、その底刃形状が底部球面半径1mm以下のボールエンド、その材料が、表面にCr-Niコーティング又はダイヤモンドコーティングが施されたものであり、回転数10000rpm以上100000rpm以下にエンドミル切削加工を行うことを特徴とするゴルフボール成型用金型マスターの製造方法。」
とあったものを、

「半球面を備えた無垢マスターの表面にディンプル型付け用凹部を有するゴルフボール成型用金型マスターの製造方法であって、上記金型マスターが、アルミ,真鍮,プリハードン鋼,焼入れ焼きもどし鋼,析出硬化鋼,耐食鋼,非磁性鋼,冷間ダイス鋼,マルテンサイト系ステンレス鋼,熱間ダイス鋼,高速度工具鋼及びマルエーシンク鋼の群から選ばれた材料にて形成されると共に、上記ディンプル型付け用凹部がエンドミルのエッジ部を用いる切削加工により形成され、上記エンドミルは、その刃数が2枚以上4枚以下、その底刃形状が底部球面半径1mm以下のボールエンド、その材料が、表面にCr-Niコーティング又はダイヤモンドコーティングが施されたものであり、無垢マスターの表面を球面加工した後に、回転数10000rpm以上100000rpm以下にてエンドミル切削加工を行うものであり、前記切削加工の経路が、等高線状経路,平行線状経路,放射線状経路,スパイラル状経路及び面沿い加工経路の群から選ばれると共に、前記切削加工の経路が20μm以下のピッチ幅を有するものであることを特徴とするゴルフボール成型用金型マスターの製造方法。」
に補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)

イ 上記アの請求項1に係る本件補正は、次の補正内容からなる。
(ア)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「無垢マスター」の「半球面」を、「無垢マスターの表面を球面加工」することで形成されるものと限定する。
(イ)本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「エンドミル切削加工」について、そのタイミングを、「無垢マスターの表面を球面加工した後」と限定するとともに、その態様を、「切削加工の経路が、等高線状経路,平行線状経路,放射線状経路,スパイラル状経路及び面沿い加工経路の群から選ばれると共に、前記切削加工の経路が20μm以下のピッチ幅を有するもの」と限定する。
(ウ)本件補正前の請求項1の「回転数10000rpm以上100000rpm以下にエンドミル切削加工を行う」との記載を、「回転数10000rpm以上100000rpm以下にてエンドミル切削加工を行う」との記載に改める。

(2)補正の目的
上記(1)イ(ア)及び(イ)の補正内容は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、上記(1)イ(ウ)の補正内容は、誤記を訂正するものであるから、請求項1に係る本件補正は、全体として、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

2 刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-200199号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0003】ゴルフボールは、圧縮成形法、射出成形法等によって成形される。いずれの成形方法であっても、ともに半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる成形型が用いられる。成形型のキャビティ面には、多数の突起が形成される。成形型でゴルフボールが成形されると、突起の形状が反転された形状のディンプルが、ゴルフボールの表面に形成される。
【0004】成形型の製作には、マスター型が用いられる。マスター型は半球状部分を備えており、この半球状部分には多数のディンプルが形成されている。マスター型が用いられて成形型が製作される際、マスター型のディンプルによって成形型の突起が形成される。
【0005】マスター型のディンプルは、母材の半球状部分がカッター(例えばエンドミル)で切削されることにより形成される。切削には、通常は数値制御工作機器が用いられる。この数値制御工作機器のテーブルに母材が固定され、主軸部にカッターが装着される。そして、主軸部がカッターを回転させつつ、基底面中心(半球状部分の球中心)に向けて前進する。前進は、所定の切削深さとなるまで行われる。こうして、所定深さを備えたディンプルが形成される。
【0006】マスター型には多数(通常は100個から250個程度)のディンプルが形成される。すなわち、母材表面の多数箇所において、カッターによる切削がなされる。母材の半球状部分を完全な球面とすることは困難であり、切削箇所によって球半径はばらついている。精度よくディンプルを形成するには、半球状部分の表面の切削箇所にカッター先端を接触させ、この位置から主軸部を所定寸法だけ前進させる方法が採用される(いわゆる「現物合わせ」)。カッター先端の接触は、顕微鏡や拡大鏡を用いた作業者によって行われている。この作業には熟練が要求され、しかも効率的ではない。」
イ 「【0017】図2は、図1の数値制御工作機器1が用いられたマスター型製造方法の一例が示されたフロー図である。この製造方法では、まずマスター型の母材3が、テーブル5に取り付けられる(STP1)。通常は、基底面中心Oと頂点PとがY方向に並ぶように、母材3取り付けられる。次に、主軸部7にタッチプローブ9が装着される(STP2)。この段階では、タッチプローブ9の探針部13と半球状部分15とは離間している。
【0018】次に、Y方向に延びて点Oを通過する直線が回転軸(Y軸)とされて、テーブル5が回転する(Y軸回転)。これにより、母材3も同方向に回転する(STP3)。Y軸回転の回転量は、ディンプルが形成されるべき箇所(切削箇所)の緯度(θ)によって決定される。
【0019】次に、直線L2が回転軸(L2軸)とされて、テーブル5が回転する(L2軸回転)。これにより、母材3も同方向に回転する(STP4)。L2軸回転の回転量は、ディンプルが形成されるべき箇所の経度(φ)によって決定される。図1には、Y軸回転(STP3)及びL2軸回転(STP4)が完了した状態が示されている。Y軸回転(STP3)とL2軸回転(STP4)との順序が逆とされてもよい。」
ウ 「【0026】図4は、図1の数値制御工作機器1によって母材3が切削される様子が示された正面図である。切削では、まずY軸回転(STP10)及びL2軸回転(STP11)が行われる。これらの回転により、母材3の表面のうち切削箇所が、カッター21の正面に位置する。すなわち、基準位置Q、切削箇所及び基底面中心Oが、Z軸上に並ぶ。図4には、Y軸回転(STP10)及びL2軸回転(STP11)が完了した状態が示されている。Y軸回転(STP10)とL2軸回転(STP11)との順序が逆とされてもよい。
【0027】次に、カッター21の先端が母材3に接触するまで(又は母材3から所定距離に位置するまで)、主軸部7が前進する(STP12)。この際の基準位置QのZ座標は、前述の距離A及び距離Bに基づいて決定される。この位置から、Z軸回りにカッター21を回転させつつ主軸部7が前進し、切削が行われる(STP13)。こうして、半球状部分の表面にディンプルが形成される。
【0028】前述のように、母材3には多数のディンプルが形成される。従って、STP10からSTP13までの一連の手順は、多数回繰り返される。繰り返し数は、ディンプル総数と一致する。こうして、マスター型が完成する。・・(中略)・・
【0030】この製造方法では、カッター21とは異なる部材(前述の例ではタッチプローブ9)によって距離Aが測定される。従って、カッター21の先端に堆積する構成刃先や、カッター21の先端に付着する切削油等の悪影響を受けることがない。よって、寸法精度よくディンプルが形成される。・・(中略)・・
【0035】図1に示された数値制御工作機器を用意した。この数値制御工作機器のテーブルに、球半径が約21.5mmである半球状部分を備えた、アルミニウム合金製の母材を取り付けた。そして、このタッチプローブにて、Y軸回転及びL2軸回転を繰り返し行いつつ、50の切削箇所の距離Aを測定した。次に、主軸部にカッターを取り付けた。このカッターの先端断面形状は、円弧状である。次に、図3に示される工具長測定装置によって、距離Bを測定した。そして、Y軸回転及びL2軸回転を繰り返し行いつつ、距離Aと距離Bとの関係に基づいて母材を切削し、50個のディンプルを形成した。目標切削深さを250μmとした。これらのディンプルの深さを表面粗さ計で測定したところ、全てのディンプルの深さは目標値に対して±2μmの範囲内であった。この評価結果から、本発明の製造方法により高い寸法精度でディンプルを形成できることは明らかである。」
エ 図4及び上記ウから、ディンプルの切削は、カッターの先端により行われることが明らかである。
オ 上記アないしエから、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「多数のディンプルが形成されたゴルフボール用マスター型の製造方法であって、
半球状部分を備えたアルミニウム合金製の母材を、ディンプルが形成されるべき箇所の緯度によって決定される回転量で第1の軸方向に回転させる工程と、
前記母材を、ディンプルが形成されるべき箇所の経度によって決定される回転量で第2の軸方向に回転させる工程と、
前記エンドミルの先端を回転させつつ前進させることで、エンドミルの正面に位置するディンプルが形成されるべき箇所を切削してディンプルを形成する工程と、
一連の前記工程を多数回繰り返す工程と
を含むゴルフボール用マスター型の製造方法。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「『マスター型』の『母材』」、「半球状部分を備えた母材表面」、「『マスター型』の『ディンプル』」、「エンドミルの先端」、「エンドミルの先端を回転させつつ前進させることで、エンドミルの正面に位置するディンプルが形成されるべき箇所を切削」及び「ゴルフボール用マスター型」は、それぞれ、本願補正発明の「無垢マスター」、「半球面を備えた無垢マスターの表面」、「ディンプル型付け用凹部」、「エンドミルのエッジ部」、「エンドミル切削加工」及び「ゴルフボール成型用金型マスター」に相当する。
(2)引用発明の「アルミニウム合金」と、本願補正発明の「アルミ,真鍮,プリハードン鋼,焼入れ焼きもどし鋼,析出硬化鋼,耐食鋼,非磁性鋼,冷間ダイス鋼,マルテンサイト系ステンレス鋼,熱間ダイス鋼,高速度工具鋼及びマルエーシンク鋼の群から選ばれた材料」とは、金属材料である点で一致する。
(3)引用発明の「無垢マスター(母材)」の半球状部分が、エンドミル切削工程以前に半球状に加工されたものであることは明らかであるから、引用発明の「エンドミル切削加工」と本願補正発明の「エンドミル切削加工」とは、「無垢マスターの表面を球面加工した後」に行われる点で一致する。
(4)引用発明の「エンドミル切削加工」は、エンドミルの先端を回転させつつ前進させることで行われるから、引用発明の「エンドミル切削加工」と、本願補正発明の「『回転数10000rpm以上100000rpm以下』にて行われる『エンドミル切削加工』」とは、「所定の回転数にて」行われる点でも一致する。
(5)引用発明の「エンドミル切削加工」が、母材を回転し、該母材の表面の切削すべき箇所をエンドミルの正面に位置させてから行われることから、引用発明の「エンドミル切削加工」と本願補正発明の「『切削加工の経路が、等高線状経路,平行線状経路,放射線状経路,スパイラル状経路及び面沿い加工経路の群から選ばれる』と共に、『前記切削加工の経路が20μm以下のピッチ幅を有する』ものである『エンドミル切削加工』」とは、「切削加工の経路が、所定のもの」である点でも一致する。
(6)上記(1)ないし(5)から、本願補正発明と引用発明とは、
「半球面を備えた無垢マスターの表面にディンプル型付け用凹部を有するゴルフボール成型用金型マスターの製造方法であって、上記金型マスターが、金属材料にて形成されると共に、上記ディンプル型付け用凹部がエンドミルのエッジ部を用いる切削加工により形成され、無垢マスターの表面を球面加工した後に、所定の回転数にてエンドミル切削加工を行うものであり、前記切削加工の経路が、所定のものであるゴルフボール成型用金型マスターの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記金属材料が、本願補正発明では、「アルミ,真鍮,プリハードン鋼,焼入れ焼きもどし鋼,析出硬化鋼,耐食鋼,非磁性鋼,冷間ダイス鋼,マルテンサイト系ステンレス鋼,熱間ダイス鋼,高速度工具鋼及びマルエーシンク鋼の群から選ばれた材料」であるのに対して、引用発明では、アルミニウム合金である点。

相違点2:
前記エンドミルが、本願補正発明では、「その刃数が2枚以上4枚以下、その底刃形状が底部球面半径1mm以下のボールエンド、その材料が、表面にCr-Niコーティング又はダイヤモンドコーティングが施されたもの」であるのに対して、引用発明では、そのようなものであるのか明らかでない点。

相違点3:
前記切削加工を行うエンドミルの回転数が、本願補正発明では、「10000rpm以上100000rpm以下」であるのに対して、引用発明では、そのような値であるのか明らかでない点。

相違点4:
前記切削加工の経路が、本願補正発明では「等高線状経路,平行線状経路,放射線状経路,スパイラル状経路及び面沿い加工経路の群から選ばれる」もので、かつ、「20μm以下のピッチ幅を有する」ものであるのに対して、引用発明では、そのようなものであるのか明らかでない点。

4 判断
上記相違点1ないし4について検討する。
(1)相違点1について
ア 本願補正発明の「アルミ」が、「アルミ合金」を含んでいるか否か必ずしも明らかでない。本願補正発明の「アルミ」が「アルミ合金」を含んでいるのであれば相違しないことは明らかである。仮に、本願補正発明の「アルミ」が「アルミ合金」を含んでいないものとしても、アルミ又は真鍮からなる金型マスターは、本願の出願前に周知である(例.特開平4-218689号公報特に「【0019】ここで、雄型原型マスター1は真ちゅう、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属を用いて公知の方法により作製することができる。」及び特許第2896590号公報特に5欄3行?6行「第1図中1は割出しテーブルで、このテーブル1に真ちゅうやアルミニウム等からなる半球状の無垢マスター2がセラミック等の絶縁体からなる固定リングを介して固定されている。」参照。以下「周知技術1」という。)から、引用発明の金型マスターの金属材料として、アルミニウム合金に代えて、アルミ又は真鍮を用い、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて容易になし得たことである。

(2)相違点2について
ア 刃数が2枚以上4枚以下のボールエンドミルは、本願の出願前に周知である(例.特開平10-80816号公報特に「【0009】【実施例】図2、図3は本発明の一実施例であり、超微粒子超硬合金製の直径10mm、刃長25mm、全長100mm、刃数4枚刃、ねじれ角15°のソリッドボ-ルエンドミルで、2枚の親刃と2枚の子刃とを設けたものである。その要部は図4、図5に示すように、・・(中略)・・」、「【0011】・・(中略)・・例えば図6に示すような3枚刃・・(中略)・・」及び図2ないし図6、特開2002-187011号公報特に「【0028】例えば、上記実施例では、多刃ボールエンドミル1が3枚のボール刃によって構成される場合を説明したが、少なくとも3枚以上のボール刃によって構成されるものであれば良く、4枚、或いは、それ以上の枚数のボール刃によって構成されることは当然に可能である。」、特開平6-134648号公報特に「【0019】次に、図3を参照して、本発明のボールエンドミルについて説明する。図3において図3(a)はボールエンドミル12の正面図であり、図3(b)は図3(a)において矢視線B-Bに沿う断面図である。図3のボールエンドミルは、4枚刃のボールエンドミルであり、・・(中略)・・」、特開2000-117522号公報特に「【0019】なお上記図示例では、2個の切れ刃部を設けたエンドミルを代表的に取り上げて説明したが、切れ刃の数は勿論2個に制限されるものではなく、4枚刃・・(中略)・・のボールエンドミルに対しても同様に適用できる。」、特開平11-90737号公報特に特に【0007】「・・中略・・切刃部長さ:20mm×シャンク部長さ:130mm×シャンク部径:6mm×切刃先端部の球面半径:3mmの寸法をもった刃長の長いストレートシャンク2枚刃ボールエンドミルに仕上げることにより基体A?Jをそれぞれ製造した。」、特開平3-60909号公報特に特に1頁左下欄下から3行?末行「本発明はボールエンドミルに係り、特に、切刃を仕上げ切削に適した形状に改良したボールエンドミルに関する。」、1頁右下欄1行?7行「【従来の技術】第9図に示すように、金型等の曲面加工にはボールエンドミルの使用が不可欠である。ボールエンドミルの刃先形状は、回転することによって球面を形成するように構成されており、第6.7.8図にその一般的な形状のボールエンドミルの刃先部を示している。」、2頁右下欄下から5行?3頁左上欄4行「【実施例】以下に本発明の好適な一実施例について、第1図ないし第5図を参照して説明する。第1図は本実施例のボールエンドミルを切刃先端側から軸方向に向かって見た切刃形状を示す図、第2図はその側面から見た図、第3図は第2図のI[I-III線矢視断面図、第4図は第2図のIVの部分を拡大して示す断面図である。本実施例のボールエンドミルは、長刃lと短刃2とが1枚ずつの2枚刃である。」並びに特開平2-232112号公報特に1頁左下欄5行?右下欄5行「(1)回転軸線となる軸心を有する柱状のシャンクと、このシャンクの一端部に設けられた刃部とを有し、上記軸心のまわりに回転駆動されて上記刃部にてボールエンドミル切削を行うボールエンドミル工具において、上記刃部は、上記ボールエンド面の母線上に切れ刃を有し、上記母線に沿って断続的に配置された複数のチップからなることを特徴とするボールエンドミル工具。
(2)チップは、単結晶ダイヤモンドからなることを特徴とする請求項(1)記載のボールエンドミル工具。
(3)チップの切れ刃は、研磨仕上げにより形成されていることを特徴とする請求項(1)記載のボールエンドミル工具。」
・・(中略)・・
本発明は、例えば金型などの三次元曲面を高精度で切削することのできるボールエンドミル工具に関する。」、2頁右上欄10行?15行「ボールエンドミル工具において、その刃部を、ボールエンド面の母線上に切れ刃を有し、母線に沿って断続的に配置された複数のチップから構成し、工具価格の高騰を招くことなく、有効チップ径を大きくすることを可能にし、加工能率を大幅に向上させたものである。」及び2頁右下欄下から3行?3頁左上欄6行「なお、上記実施例においては、チップ(8)・・・の数は3個であるが、その数には限定されない。また、チップ(8)・・・の配列つまり間隔についても、任意に設けてよい。とくに、チップ(8)・・・を隣接させて配列してもよい。また、チップ(8)・・・の材質についても、単結晶ダイヤモンドに限ることなく、焼結多結晶ダイヤモンド,ダイヤモンドコーティングチップ,・・(中略)・・等でもよい。」参照。以下「周知技術2」という。)
イ 表面にダイヤモンドコーティングが施されたボールエンドミルは、本願の出願前に周知である(例.特開2000-198012号公報特に「【0008】X軸機構12およびY軸機構13は、それぞれ左右および前後にスライドする機構となっておりX軸機構12上に設置されるテーブル18を移動する構造となっている。Z軸機構14は、テーブル18上の加工物15に対して上下にスライドする機構となっており、このZ軸機構の中に非接触型の主軸として空気軸受型の主軸機構16が備えられている。この主軸機構16には、工具17としてエンドミル状工具の一種であるボールエンドミルのダイヤモンド電着工具が装着されている。・・(中略)・・【0011】次に本発明に使用されるダイヤモンド電着工具について説明する。この工具は、従来のダイヤモンド工具が工具径の大きさにより比較的大きな結晶を数多く必要とすることに対し、粉末また粒末のダイヤモンド結晶を使用し電着製造することが可能であり経済的に優れている。また種々の工具径に対して簡単に対応できる。このため難切削材の加工の際に工具使用の経済的な側面をあまり配慮せずに、工具選択の幅を広げることが可能である。」、特開平7-9234号公報特に「【請求項1】 シャンク部を備え、軸心を通る貫通孔を有する鋼製ボデイの先端部が回り止め機能を具備した形状の刃台部に形成され、この刃台部にスパイラル状の溝、外周切れ刃および底刃を有し上記刃台部の断面形状と同形の中芯孔を備えた先端盲状の超硬合金チップが回動不能に嵌合され、この超硬合金チップの上記中芯孔の先端側には掛止用段付き部が形成されており、また上端面が上記シャンク部と上記刃台部との境界位置に形成された接合部に当接されている構成において、前記ボデイの貫通孔を貫通してシャンク部から挿入された操作棒の先端に設けられた掛止金具を上記超硬合金チップ中芯孔内面の段付き部に掛止せしめ、上記操作棒に引き戻し力が印加されて、この超硬合金チップが上記掛止金具と上記接合部の間に締めつけ固定されていることを特徴とするエンドミル。
【請求項2】 上記外周切れ刃および底刃を有した超硬合金チップの表面に、チタン、ボロンあるいはダイヤモンド等の硬質の強化被膜層が形成されていることを特徴とする請求項1記載のエンドミル。
・・(中略)・・
【請求項4】 上記外周切れ刃および底刃を有する超硬合金チップに形成される底刃の形状はボール(半円)形状、外周切れ刃から底刃にかけて角をR付きに丸められた形状、センターカット刃を設けた形状であることを特徴とする請求項1記載のエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被削材の側面を切削加工したり、溝を切削加工したり、穴あけのための突っ込み切削加工も可能な切削工具であるエンドミルに関するものである。」
満足に対応することができ、切削加工の高精密化に寄与するものである。」及び上記特開平2-232112号公報の記載参照。以下「周知技術3」という。」。)。
ウ 直径1mm以下のボールエンドミルは、本願の出願前に周知である(例.上記特開2000-198012号公報特に「【0008】X軸機構12およびY軸機構13は、それぞれ左右および前後にスライドする機構となっておりX軸機構12上に設置されるテーブル18を移動する構造となっている。Z軸機構14は、テーブル18上の加工物15に対して上下にスライドする機構となっており、このZ軸機構の中に非接触型の主軸として空気軸受型の主軸機構16が備えられている。この主軸機構16には、工具17としてエンドミル状工具の一種であるボールエンドミルのダイヤモンド電着工具が装着されている。」及び【0014】(実施例1)この例では被加工物として単結晶シリコンのコンロットを加工した例である。この加工には水溶性クーラントを使用し、加工の条件は次のとおりである。
主軸の回転速度 : 20,000RPM
主軸送り速度 : 236mm/min
荒加工切込量 : Ad 0.05mm Rd 0.1 mm
仕上げ加工切込量: Ad 0.04mm Rd 0.04mm
工具 : ダイヤモンド電着工具 工具径 1.0 mm 粒度 200
工具型番BIR01 (FSK社製)
・・(中略)・・」、上記特開平10-80816号公報特に「【0009】【実施例】図2、図3は本発明の一実施例であり、超微粒子超硬合金製の直径10mm、刃長25mm、全長100mm、刃数4枚刃、ねじれ角15°のソリッドボ-ルエンドミルで、2枚の親刃と2枚の子刃とを設けたものである。その要部は図4、図5に示すように、各々の円弧半径は±10μmの許容差で仕上げてあり、親刃に対して子刃は25μm軸方向後方に後退させている。ノ-ズと子刃との間隙は1.2mmである。この場合切り込みが0.16mm以上であれば子刃も切削し4枚刃として機能する。」及び図2ないし図5、特開平11-10426号公報特に【0010】「前記円形状の突起の直径、及び前記エンドミルの直径が1mm以下であっても、好適に切削加工ができる。」及び図2」並びに上記特開2000-117522号公報【0022】[ボールエンドミル基本構成]
エンドミル種類:ロングネックを有するボールエンドミルエンドミル直径:1.0mmR刃のアール(r):0.5mm・・(中略)・・」及び「【0028】[ボールエンドミル基本構成]
エンドミル種類:ロングネックを有するボールエンドミルエンドミル直径:1.0mmR刃のアール(r):0.5mm・・(中略)・・」参照。以下「周知技術4」という。)。
エ 上記アないしウから、引用発明のエンドミルとして、刃数が2枚以上4枚以下であり、直径1mm以下であり、かつ、表面にダイヤモンドコーティングが施されたボールエンドミルを用い、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術2ないし4に基づいて容易になし得たことである。

(3)相違点3について
ア 切削加工を行うエンドミルの回転数を10000rpm以上100000rpm以下とすることは、本願の出願前に周知である(例.上記特開2000-198012号公報特に「【0006】【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため本発明は、難切削材の加工方法において、非接触型軸受の主軸を有し、三軸以上の制御軸を有する数値制御装置付き工作機械を使用し、その工作機械の前記主軸にエンドミル状のダイヤモンド電着またはCBN電着による小径工具を取り付け、その数値制御装置へ第一の制御軸の切り込み量を0.0001mmからおよそそのエンドミル状小径工具の工具径の間の量に制御し、・・(中略)・・前記小径工具の一刃送り量を0.0001から0.2mmとすることを特徴とする構成とし、難切削材の加工効率を高めた。またさらに主軸の回転の設定は、その回転数を5,000から150,000rpmとすることを特徴とする構成とし、工具の寿命を延ばした。・・(中略)・・【0008】・・(中略)・・この主軸機構16には、工具17としてエンドミル状工具の一種であるボールエンドミルのダイヤモンド電着工具が装着されている。」及び【0014】(実施例1)この例では被加工物として単結晶シリコンのコンロットを加工した例である。この加工には水溶性クーラントを使用し、加工の条件は次のとおりである。
主軸の回転速度 : 20,000RPM
主軸送り速度 : 236mm/min
荒加工切込量 : Ad 0.05mm Rd 0.1 mm
仕上げ加工切込量: Ad 0.04mm Rd 0.04mm
工具 : ダイヤモンド電着工具 工具径 1.0 mm
粒度 200
工具型番BIR01 (FSK社製)
・・(中略)・・」、上記特開平11-10426号公報特に「【0020】・・(中略)・・この時のエンドミルの回転数は、毎分1万回転(10000rpm)程度或いはそれ以上が良い。好ましくは30000rpm以上であるとよい。このように、回転数が高速度であり、一回当たりの切削する深さを小さく設定することで、刃先の温度が摩擦熱で上昇することを防止できる。これは、高速で切削された切粉へ、切削による熱が移り、ワーク自体の温度を上昇させないという作用による。・・(中略)・・、図2)」並びに特開平9-155617号公報特に「【請求項5】 主軸の回転速度を30000?50000rpmとしたことを特徴とする請求項1?4のうちいずれか1項記載の切削加工法。」及び「【0013】【実施例】被削材を木材とし、加工工具として超硬ボールエンドミルφ2を使用し、工具回転数50000rpm、軸方向切り込み0.5mm、径方向切り込み0.5mm、送り速度10000mm/分で切削加工することにより、良好な加工面を得ることができた。」及び図3参照。以下「周知技術5」という。)。
イ 上記アから、引用発明において、切削加工を行うエンドミルの回転数を10000rpm以上100000rpm以下とし、上記相違点3に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術5に基づいて容易になし得たことである。

(4)相違点4について
ア 引用発明は、半球状部分を備えた母材を、ディンプルが形成されるべき箇所の緯度によって決定される回転量で第1の軸方向に回転させ、ディンプルが形成されるべき箇所の経度によって決定される回転量で第2の軸方向に回転させることにより、ディンプルが形成されるべき箇所を、エンドミルの正面に位置させ、切削するものであるところ、同緯度又は同経度上にある複数のディンプルを順次切削することにすれば、緯度又は経度のどちらか一方に対応する回転工程を省くことができて効率的であること、母材の最小回転量が小さいほどディンプルの形成位置を任意に、かつ精度よく設定できることは、いずれも当業者に自明であり、また、母材の最小回転量の上限をどの程度とするかは、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものである。
イ 上記アから、引用発明において、同緯度又は同経度上にある複数のディンプルを順次切削することとするとともに、母材の最小回転量の上限を、母材表面上の弧長に換算して20μmとなるような回転量とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
ウ 引用発明において、同緯度又は同経度上にある複数のディンプルを順次切削することとするとともに、母材の最小回転量の上限を、母材表面上の弧長に換算して20μmとなるような回転量とすれば(上記イ参照。)、切削加工の経路は、本願補正発明の「等高線状経路」(本願の図2a参照。)又は「放射線状経路」(本願の図2c参照。)に相当するとともに、本願補正発明の「『20μm以下のピッチ幅』を有する『経路』」にも相当するものとなる。
エ 上記イ及びウから、引用発明において、上記相違点4に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

(5)効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術1ないし5それぞれの奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。

(6)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 小括
上記4のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年3月21日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成19年12月20日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項によってそれぞれ特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)アで、本件補正前の請求項1として記載したものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記第2〔理由〕2に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、本願発明の発明を特定するために必要な事項を限定したものである(上記第2〔理由〕1(2)参照。)から、本願発明は、本願補正発明からその限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2〔理由〕4に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-17 
結審通知日 2010-06-23 
審決日 2010-07-07 
出願番号 特願2002-373526(P2002-373526)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小齊 信之赤坂 祐樹  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅野 芳男
桐畑 幸▲廣▼
発明の名称 ゴルフボール成型用金型マスターの製造方法、ゴルフボール成型用金型マスター、ゴルフボール成型用金型、及びゴルフボール  
代理人 小林 克成  
代理人 重松 沙織  
代理人 小島 隆司  
代理人 石川 武史  

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