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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D |
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管理番号 | 1222510 |
審判番号 | 不服2009-2761 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-05 |
確定日 | 2010-08-26 |
事件の表示 | 特願2007-218091号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月 6日出願公開、特開2008-267776号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年8月24日(優先権主張平成19年3月23日)の出願であって、 平成20年12月15日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成21年2月5日に本件審判が請求されたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 本件出願の請求項1?4に係る発明は、平成20年9月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 貯蔵室の前面開口部を閉塞する扉の裏面に保持され貯蔵室内の側壁に形成したレール部材によって引き出し可能に設けられた収納容器と、前記貯蔵室内に設けられこの収納容器の上部に配置された中段容器および上段容器とからなり、中央部に位置する前記中段容器は前記収納容器上に載置されて前後摺動自在に設けられ、最上部に位置する上段容器は、前記収納容器および中段容器とは独立して貯蔵室内の側壁面に形成した支持レールに摺動可能に保持され、その収納深さを前記中段容器よりも深くしたことを特徴とする冷蔵庫。」 2. 引用刊行物とその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2007-71490号公報(以下「刊行物1」という。)には、引出し式扉を有する冷蔵庫に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【0020】 以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の一実施例を示す冷蔵庫の縦断面図であり、図2は図1におけるA-A線の断面図である。 【0021】 冷蔵庫の箱体30は、外殻を構成する外箱31と、各貯蔵室の内面を構成する内箱32と、外箱31と内箱32との間に充填された断熱材33とを備えて構成されている。冷蔵庫箱体30内には、上から順に、冷蔵室34、製氷室35、冷凍室36、野菜室38が区画形成されている。これらの貯蔵室のうち、冷蔵室34は回転式の扉によって前面開口部が閉塞されており、製氷室35、冷凍室36及び野菜室38は引出し式の扉によって前面開口部が閉塞されている。 【0022】 冷凍室36内には3段重ねの食品収納ケース41,42、43が設けてあり、そのうちの中段と下段の食品収納ケース42、43は、引出し式の冷凍室扉37を引き出すと扉とともに引き出される。最下段の食品収納ケース43は、後述するようにフレーム50に支えられて、冷凍室36側壁の前縁に設けられた固定ローラ71上を摺動して、引出し式扉37とともに引出しが可能である。また、中段の食品収納ケース42は、下段の食品収納ケース43に載置されており、下段の食品収納ケース43とともに引き出される構成になっている。」 (イ)「【0025】 食品収納ケース43を支持するフレーム50は、冷凍室側壁の側に可動ローラ45を備えている。可動ローラ45はフレーム50の可動ローラ取付部51に取付けられ、この可動ローラ取付部51は奥行方向に延伸するフレーム50の奥端側に設けられる。したがって、冷凍室扉3が引き出されると、可動ローラ45は、冷凍室36内を奥方から手前側(図2では紙面では紙面奥側から紙面手前側)へと、レール63に沿って移動する。」 (ウ)「【0030】 なお、中段の食品収納ケース42は、下段の食品収納ケース43と一緒に引き出された後、下段の食品収納ケース43内の貯蔵食品が出し入れできるように、冷凍室36の側壁に設けたレール62内を、食品収納ケースのフランジ42aにより、前後に摺動可能なように構成してある。」 (エ)「【0031】 また、本実施例では3段の食品収納ケースを備えており、このうち、最上段の食品収納ケース41は、中段の食品収納ケース42及び下段の食品収納ケース43とは独立して引き出される。すなわち、冷凍室36の側壁に設けたレール61内を、食品収納ケースのフランジ41aにより、前後に摺動可能としている。この構成によって、最上段の食品収納ケース41及びこれに収納される食品の荷重は、内箱32の側壁によって受けられ、フレーム50に負担がかからない構成となっている。」 ・記載事項(ア)の「下段の食品収納ケース43」は、「フレーム50に支えられて、冷凍室36側壁の前縁に設けられた固定ローラ71上を摺動して、引出し式扉37とともに引出しが可能」なものであって、そのフレーム50が、記載事項(イ)の「フレーム50は、冷凍室側壁の側に可動ローラ45を備え」、「冷凍室扉3が引き出されると、可動ローラ45は、冷凍室36内を奥方から手前側(図2では紙面では紙面奥側から紙面手前側)へと、レール63に沿って移動する」ものであるので、冷凍室扉37の裏面に保持され冷凍室内の側壁に形成したレール63によって引き出し可能に設けられた下段の食品収納ケース43といえる。 ・記載事項(ア)の「食品収納ケース41」、「中段の食品収納ケース42」は、「3段重ねの食品収納ケース41,42、43」であって、図1において、上方から「食品収納ケース41」、「中段の食品収納ケース42」、「下段の食品収納ケース43」の順で冷凍室36配置されたものであるので、冷凍室内に設けられ下段の食品収納ケース43の上部に配置された中段の食品収納ケース42および上段の食品収納ケース41といえる。 また、記載事項(ア)の「中段の食品収納ケース42」は、「下段の食品収納ケース43に載置されており、下段の食品収納ケース43とともに引き出される構成」、かつ、記載事項(ウ)の「下段の食品収納ケース43と一緒に引き出された後、下段の食品収納ケース43内の貯蔵食品が出し入れできるように、冷凍室36の側壁に設けたレール62内を、食品収納ケースのフランジ42aにより、前後に摺動可能なように構成」したもので、図1において冷凍室36の中央部に位置するものであるので、中央部に位置する中段の食品収納ケース42は下段の食品収納ケース43上に載置されて前後摺動自在に設けられているといえる。 ・記載事項(ア)の「食品収納ケース41」は、記載事項(エ)の「最上段の食品収納ケース41は、中段の食品収納ケース42及び下段の食品収納ケース43とは独立して引き出される。すなわち、冷凍室36の側壁に設けたレール61内を、食品収納ケースのフランジ41aにより、前後に摺動可能としている。この構成によって、最上段の食品収納ケース41及びこれに収納される食品の荷重は、内箱32の側壁によって受けられ、フレーム50に負担がかからない構成となっている」もので、図1において冷凍室36の最上部に位置するものであるので、最上部に位置する上段の食品収納ケース41は、下段の食品収納ケース43および中段の食品収納ケース42とは独立して冷凍室36内の側壁面に形成したレール61に摺動可能に保持されているといえる。 すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。 「冷凍室36の前面開口部を閉塞する冷凍室扉37の裏面に保持され冷凍室内の側壁に形成したレール63によって引き出し可能に設けられた下段の食品収納ケース43と、前記冷凍室内に設けられ下段の食品収納ケース43の上部に配置された中段の食品収納ケース42および上段の食品収納ケース41とからなり、中央部に位置する中段の食品収納ケース42は下段の食品収納ケース43上に載置されて前後摺動自在に設けられ、最上部に位置する上段の食品収納ケース41は、下段の食品収納ケース43および中段の食品収納ケース42とは独立して冷凍室36内の側壁面に形成したレール61に摺動可能に保持されている冷蔵庫。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平3-148583号公報(以下「刊行物2」という。)には、野菜室に出入れ可能な野菜容器を供えその内部に補助容器が設けられた冷蔵庫に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (オ)「最上部に冷凍室が設けられ、その下方に冷蔵室2及び引き出し式チルド室3が設けられ、その下方に野菜室4が設けられている。」(第2頁右上欄第10?12行) (カ)「14は透明なプラスチックで形成された補助容器で、これは左右の上端縁部を野菜容器11の上縁部のフランジ部に載置係合して前後に摺動移動可能に支持したもので、野菜容器11が野菜室4内に収納された状態では、該野菜容器11の後部上部に位置されている。」(第2頁右下欄第1?6行) (キ)第1図には、チルド室3内に設けられた上方が開放した容器が記載されており、その容器部は、補助容器14とほぼ同様の深さで記載されされており、さらに、チルド室の容器部の上縁と、その上方の部材との間には、空間が記載されている。 ・記載事項(キ)のチルド室3内の容器部の「深さ」と、上方の部材との間の空間とは、両者の和でチルド室収納深さを定義するといえる。 そして、補助容器の上段のチルド室の収納深さは、補助容器14とほぼ同様の容器部の深さに、さらに、上方の部材との間の空間を加えたものであるので、「補助容器14よりも深くした」ものということができる。 (3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願平1-142255号(実開平3-80285号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には、貯蔵室に出入れ可能な貯蔵容器を供えその内部に補助容器が設けられた冷蔵庫に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ク)「最上部に冷凍室が設けられ、その下方に冷蔵室2及び引き出し式チルド室3が設けられ、その下方に貯蔵室としての野菜室4が設けられている。」(明細書第4頁第8?11行) (ケ)「14は透明なプラスチックで形成された補助容器で、これは左右の上端縁部を野菜容器11の上縁部のフランジ部に摺動可能に載置して前後に移動可能に支持したもので、野菜容器11が野菜室4内に収納された状態では、該野菜容器11の後部上部に位置されている。」(明細書第5頁第19行?第6頁第5行) (コ)第2図は、チルド室3内に設けられた上方が開放した容器が記載されており、その容器部は、補助容器14とほぼ同様の深さで記載されされており、さらに、チルド室の容器部の上縁と、その上方の部材との間には、空間が記載されている。 ・記載事項(コ)のチルド室3内の容器部の「深さ」と、上方の部材との間の空間とは、両者の和でチルド室収納深さを定義するといえる。 そして、補助容器に対して上段のチルド室の収納深さは、補助容器14とほぼ同様の容器部の深さに、さらに、上方の部材との間の空間を加えたものであるので、「補助容器14よりも深くした」ものということができる。 3.本願発明と引用発明との対比 (1)両発明の対応関係 ア.引用発明の「冷凍室36」は、本願発明の「貯蔵室」に相当し、以下同様に「冷凍室扉37」は「扉」に、「レール63」は「レール部材」に、「下段の食品収納ケース43」は「収納容器」に、「中段の食品収納ケース42」は「中段容器」に、「上段の食品収納ケース41」は「上段容器」にそれぞれ相当する。 (2)両発明の一致点 「貯蔵室の前面開口部を閉塞する扉の裏面に保持され貯蔵室内の側壁に形成したレール部材によって引き出し可能に設けられた収納容器と、前記貯蔵室内に設けられこの収納容器の上部に配置された中段容器および上段容器とからなり、中央部に位置する前記中段容器は前記収納容器上に載置されて前後摺動自在に設けられ、最上部に位置する上段容器は、前記収納容器および中段容器とは独立して貯蔵室内の側壁面に形成した支持レールに摺動可能に保持される冷蔵庫。」 (3)両発明の相違点 本願発明は、上段容器が「収納深さを前記中段容器よりも深くした」ものであるのに対して、引用発明は、そのようなものでない点。 4.本願発明の容易推考性の検討 相違点について ア.まず、一般的に、収納容器の幅、深さ、奥行き等の寸法は、収納物品の形状や、許容される収納容器の外形等を考慮して、設計時に適宜選択される設計値であり、冷蔵庫の貯蔵室に設けられる収納容器においても、このことが変わるものではない。 このことは、例えば、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2000-186885号公報の【0015】で「寸法設定について説明する。まず下部冷凍室の第1の収納ケース11の深さは、主にストック食品を冷凍収納する目的からおよそ160mmに設定している。下部冷凍室の第2の収納ケース12の深さは、小物の冷凍食品等を視認性良く収納する目的からおよそ100mmに設定している。上部冷凍室の収納ケース10は、収納部を左右に分割し、一方を氷収納部、他方を冷凍食品収納部とし、氷の収納量、冷凍食品の収納及び整理性を考慮して、深さをおよそ150mmと設定している。」と、収納容器の深さを収納物品に対応して選択していることを明示的に記載している様に明らかなことである。 イ.一方、多段構成の収納容器において、上段容器の収納深さを中段容器よりも深くした態様のものも、刊行物2,3、さらに、上記特開2000-186885号公報【図1】や、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2002-277136号公報【図4】の野菜室12の中の上段の収納容器54aと次段の収納容器54bも、そのような態様で記載されている様に周知であり、特別なものではない。 ウ.そうすると、引用発明の食品収納ケース41,42、43を具現化するにあたり、上記周知の態様のものを選択して、相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 エ.さらに、本願発明の作用効果は、引用発明、及び周知事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。 (例えば、本願明細書に背景技術として提示されている、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2005-83687号公報【0058】には「上段容器は、冷凍室の最上段にあり、その収納深さ寸法が小さいため、仕切り部材7に隠れて把手82aが見えにくくなっている。」旨記載されており、上記周知の態様とした容器が、本願明細書【発明の効果】記載の「区分配置された引き出し式容器のいずれもを見易くし、特に最上段の容器の目視を容易にして収納食品の使い忘れを防止することができる」なる効果を生ずることを予測することが特段困難なものとは認められない。) したがって、本願発明は、引用発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-06-28 |
結審通知日 | 2010-06-29 |
審決日 | 2010-07-14 |
出願番号 | 特願2007-218091(P2007-218091) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田々井 正吾 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
中川 真一 冨岡 和人 |
発明の名称 | 冷蔵庫 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 堀口 浩 |