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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16F
管理番号 1222516
審判番号 不服2009-15243  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-21 
確定日 2010-08-26 
事件の表示 特願2003-365685「免震除振床システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日出願公開、特開2005-127460〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月27日の出願であって、平成21年5月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成21年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年8月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
除振対象物を複数載置する床部材と、
該床部材と支持構造物との間に配置され、支持構造物から床部材に伝達される地震による震動を低減する免震機能および地震による震動よりも高周波の振動を低減する除振機能を有する免震除振装置とを備え、
前記免震除振装置が、直列に配置された除振装置と免震装置とからなり、
前記除振装置が、前記床部材と前記免震装置との間に設けた中間質量要素を挟んで直列に配置されたばね要素および減衰要素を備え、その下に前記免震装置が配置され、
前記免震装置が、ばね要素および減衰要素を備え、
前記中間質量要素の質量が、前記除振対象物と前記床部材とを合わせた質量の約10分の1から約20分の1となるように設定され、
前記ばね要素もしくは前記減衰要素により振動系全体の減衰定数が10%以上50%以下となるように設定されていることを特徴とする免震除振床システム。
【請求項2】
前記除振装置に空気ばねを備えたことを特徴とする請求項1に記載の免震除振床システム。
【請求項3】
前記免震装置に積層ゴムを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震除振床システム。
【請求項4】
前記床部材が実質的に剛体もしくは弾性体からなり、前記免震除振装置がパッシブ制御されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の免震除振床システム。
【請求項5】
前記床部材が実質的に弾性体からなり、前記免震除振装置がアクティブ制御されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の免震除振床システム。
【請求項6】
前記床部材が実質的に弾性体からなり、アクティブ制御される免震除振装置と、パッシブ制御される免震除振装置とが混在して複数備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の免震除振床システム。
【請求項7】
前記床部材の少なくとも4隅と中央の免震除振装置がアクティブ制御され、他の免震除振装置がパッシブ制御されることを特徴とする請求項6に記載の免震除振床システム。
【請求項8】
前記支持構造物に、前記床部材の上方に間隔をあけて配置され、作業者の通行を許容するオーバーブリッジが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の免震除振床システム。
【請求項9】
前記免震除振装置が、前記支持構造物の床面を水平方向に転がり可能なローラを有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の免震除振床システム。」
と補正された。
上記補正は、請求項1についてみると、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「中間質量要素」について「前記中間質量要素の質量が、前記除振対象物と前記床部材とを合わせた質量の約10分の1から約20分の1となるように設定され、」と限定し、また、「ばね要素」および「減衰要素」について「前記ばね要素もしくは前記減衰要素により振動系全体の減衰定数が10%以上50%以下となるように設定されている」と限定するものであって、これは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
(2-1)引用例1
特開平8-74929号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体施設、先端研究施設等の超精密施設に設置される精密機器に対し、設置基盤から伝わる振動を低減するために、パッシブ防振機構にアクティブ振動制御の機能を組み込んだ微振動制振床に関するものである。」
(い)「【0019】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1?図4を参照しながら詳細に説明する。図1において符号1は微振動制振床である。この微振動制振床1は、建物の床2上に設置された制振床部3と振動制御装置である振動制御コンピュータ4とから構成されている。上記の制振床部3は、次のように構成されている。図1および図2に示すように、建物の床2には6つの鉛直方向制振機構5が所定の間隔に離間されて配置・固定されている。これら鉛直方向制振機構5上には、互いに離間して架設された2つの架材6、6が架設・支持され、これら架材6、6上には床版7が、図示しないボルトにより着脱可能に緊結・固定されている。」
(う)「【0023】架材6下部に設置されている鉛直方向制振機構5は、積層ゴム20とこの積層ゴム20上の鉛直方向電磁式アクチュエータ21とから構成されている。図3に示すように、積層ゴム20の下端部は建物の床2上に固定され、その上端部は鉛直方向電磁式アクチュエータ21の下部に固定されている。積層ゴム20は、その上端面における受圧面積を最小にし、所要のばね定数を得る最小の高さとすると共に、上下に軸線を有する円筒形状とされている。この積層ゴム20は、ゴム20aと鉄板20bを交互に貼り合わせたものであるが、水平だけでなく、鉛直方向に対しても柔らかく支持する必要があるため、ゴム20aの厚みは通常のものの場合より厚く形成したものを用いている。
【0024】鉛直方向電磁式アクチュエータ21は、積層ゴム20上に固定された基盤22の中央上部に固定されたコイル23と、支持用ゴム24の上部に固定・設置されたヨーク25と、マグネット26から構成された直接駆動型としている。ヨーク25の上端部には、架材6下部に設置された上記の受けプレート10が設置されており、架材6および床版7が支持されている。コイル23は、それぞれ図示しない配線により振動制御コンピュータ4と接続されている。」
(え)「【0026】上記構成の微振動制振床1によれば、制振床部3に伝わる振動を床版7中央下部の加速度センサー40が検出し、その情報を振動制御コンピュータ4に出力する。振動制御コンピュータ4では、この情報から必要な制御量を算出し、鉛直方向電磁式アクチュエータ21および水平方向電磁式アクチュエータ41a・41bに、適切な電流を供給することによって制振床部3をアクティブに制御する。すなわち、鉛直方向電磁式アクチュエータ21のコイル26には、振動に対応した適切な電流が可変通電され、振動を相殺させるよう床版7を鉛直方向に振動させて除振する。一方、水平方向電磁式アクチュエータ41a・41bのコイル42a・42bにも同様に振動に対応した適切な電流が可変通電される。このとき、床版7下部に吊り下げられ、かつ、所定の重量を有するコイル42a・42bは、水平方向に振動し、これによって直交する2つの水平方向の振動を相殺・除振する。このようにして、鉛直方向および直交する2つ水平方向、すなわち3次元の振動がアクティブに制御される。」
また、「積層ゴム20」は、「建物の床2から床版7に伝達される地震による震動を低減する免震機能」を有するものと認められる。
以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「精密機器を載置する床版7と、
前記床版7を上部に緊結・固定した架材6、6と建物の床2との間に配置され、建物の床2から床版7に伝達される地震による震動を低減する免震機能を有する積層ゴム20及び該積層ゴム20上に設置した除振機能を有する鉛直方向電磁式アクチュエータ21から成る鉛直方向制振機構5とを備え、
前記積層ゴム20は、水平だけでなく、鉛直方向に対しても柔らかく支持し、
前記鉛直方向電磁式アクチュエータ21は、そのコイル26に振動に対応した適切な電流が可変通電され、振動を相殺させるよう床版7を鉛直方向に振動させて除振する、
設置基盤から伝わる振動を低減するための微振動制振床。」
(2-2)引用例2
特開2001-271871号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(お)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクティブ防振装置に関し、特に小型且つ軽量なアクティブ防振装置に関する。ここで、「防振」とは、振動源となる機器からその支持体への力の伝達を遮断することを意味し、床その他の支持体からこれに支持された振動を嫌う機器に伝播するのを抑制することを意味する「除振」とは異なる概念である。」
(か)「【0031】図6は、本発明の第1の実施の形態にかかるアクティブ防振装置の使用状態を説明するための側面方向の概略図である。図6において、本実施の形態のアクティブ防振装置60は、支持体61と鉛直方向に振動する振動源62との間に配置された中間質量体である付加制御質量体63と、付加制御質量体63の振動源62側に設けられた空気ばね64(第1の緩衝部材、結合部分)と、付加制御質量体63を挟んで空気ばね64と対向する位置にある空気ばね65(第2の緩衝部材)と、空気ばね65を支持する台座61bと、ともに台座61bに支持された変位センサ59bおよびメカニカルレベラー59cとを有している。空気ばね64、65は、内圧の変化によって伸張収縮が可能であって、弾性作用および減衰作用を有している。」
以上の記載事項及び図面(特に図6)からみて、引用例2には、次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。
「振動源62と支持体61との間に配置され、振動源62から支持体61に伝達される振動を低減する防振装置であって、
前記防振装置が、前記振動源62と前記支持体61との間に設けた付加制御質量体63を挟んで直列に配置された空気ばね64,65を備え、
該空気ばね64,65が弾性作用および減衰作用を有している防振装置。」
(3)対比
本願補正発明と引用例1発明とを対比すると、後者の「精密機器」は前者の「除振対象物」に相当し、以下同様に、後者の「床版7」及び「架材6、6」が前者の「床部材」に、後者の「建物の床2」が前者の「支持構造物」に、後者の「積層ゴム20」が前者の「ばね要素」を備えた「免震装置」に、後者の「鉛直方向電磁式アクチュエータ21」が前者の「除振装置」に、後者の「鉛直方向制振機構5」が前者の「免震除振装置」に、後者の「微振動制振床」は前者の「免震除振床システム」に、それぞれ相当する。
したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、
「除振対象物を載置する床部材と、
該床部材と支持構造物との間に配置され、支持構造物から床部材に伝達される地震による震動を低減する免震機能および除振機能を有する免震除振装置とを備え、
前記免震除振装置が、直列に配置された除振装置と免震装置とからなり、
前記除振装置の下に前記免震装置が配置され、
前記免震装置が、ばね要素を備えている免震除振床システム」
で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は、「床部材」が「除振対象物を複数載置する」ものであるのに対して、引用例1発明では、「床版7」及び「架材6、6」が「精密機器」を「複数」載置するものかどうか、不明である点。
[相違点2]
本願補正発明は、「除振装置」が「前記床部材と前記免震装置との間に設けた中間質量要素を挟んで直列に配置されたばね要素および減衰要素を備え」ており、また、「除振機能」が「地震による震動よりも高周波の振動を低減する」機能であるのに対して、引用例1発明は、「除振装置」が「鉛直方向電磁式アクチュエータ21」であり、また、「除振機能」がそのようなものかどうか、不明である点。
[相違点3]
本願補正発明は、「免震装置」が「ばね要素および減衰要素を備え」ているのに対して、引用例1発明は、「免震装置」が「積層ゴム20」である点。
[相違点4]
本願補正発明は、「前記中間質量要素の質量が、前記除振対象物と前記床部材とを合わせた質量の約10分の1から約20分の1となるように設定され、前記ばね要素もしくは前記減衰要素により振動系全体の減衰定数が10%以上50%以下となるように設定されている」のに対して、引用例1発明は、「中間質量要素」を備えたものでなく、また、「減衰定数」がどの程度のものか不明である点。
(4)判断
(4-1)相違点1について
免震除振床に載置する「除振対象物」の「数」や「種類」は、「除振対象物」の大きさや設備のレイアウト等を考慮して当業者が適宜設計する設計的事項にすぎない。また、「複数」の「除振対象物」を載置する床を免震ないし除振支持することは、例えば、特開2001-317584号公報(特に【0024】、【図2】)、特開平10-141436号公報(特に【0014】)、特開平7-150807号公報(特に図1)に示されているように、周知であると認められる。
したがって、引用例1発明において、「床版7」及び「架材6、6」に「精密機器」を「複数」載置することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(4-2)相違点2について
引用例1発明の「除振装置」は「鉛直方向電磁式アクチュエータ21」であるが、その「除振装置」としてどのようなものを採用するかは、所要の除振機能や装置の形状・構造等を勘案して適宜設計する事項にすぎない。
ここで、引用例2発明の「防振装置」は、「振動源62から支持体61に伝達される振動を低減する」ものとして利用されているものの、伝達される振動を低減する点で広く「除振装置」としても利用し得るものであり、引用例1発明における「除振装置」として、引用例2発明の「防振装置」を採用することは上記の適宜の設計の域を超えるものではなく、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
また、設置基盤から伝わる振動には、自動車等交通手段や周辺機器等から生じる、地震による震動よりも高周波の振動が存在することは当業者に周知ないし明らかであるから、引用例1発明の「除振装置」として引用例2発明の「除振装置」を採用した場合に、それを「地震による震動よりも高周波の振動を低減する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(4-3)相違点3について
一般に、「減衰要素」を備えた「免震装置」は、例えば、2002-266936号公報(特に図1)、特開2002-139096号公報(特に図1)に示されているように、周知の事項であると認められる。
引用例1発明の「免震装置」を「ばね要素および減衰要素を備え」ているものとすることは、上記の周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(4-4)相違点4について
引用例1発明の「除振装置」として引用例2発明の「防振装置」を採用すること、及び、引用例1発明の「免震装置」を「ばね要素および減衰要素を備え」ているものとすることは、いずれも当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上述のとおりである。その場合に、引用例2発明の「付加制御質量体63」をどの程度とするか、また、「前記ばね要素もしくは前記減衰要素」による「振動系全体の減衰定数」をどの程度とするかは、所要の除振ないし免震性能等に応じて適宜設計する事項にすぎない。そして、本願明細書及び図面を参照しても、本願補正発明の数値範囲の上下限値に格別顕著な技術的意義があるとは認められず、該数値範囲を充足する値とすることは、上記の適宜の設計として当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。
そして、本願補正発明の作用効果は、引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が予測し得る程度のものである。

なお、審判請求人は、審判請求の理由において、概ね、
「したがって、仮に、引用文献1に記載の免震除振床システムに引用文献2に記載の除振装置を採用しても、積層ゴム(ばね要素)を有する免震装置と、付加制御質量体および空気ばね(ばね要素および減衰要素)を有する除振装置との組み合わせが想起されるに過ぎません。」、
「また、例えば本願の段落番号[0022]に記載のように、地震による振動よりも高周波の振動が支持構造物に伝達されたときには、除振装置に備えられたばね要素および減衰要素により、その振動が除振されます。この際、本願発明においては2質点系の振動系が構成されているため、中間質量のない1質点系よりも、共振周波数における加速度応答倍率を減少させることができるとともに、高周波側の加速度応答倍率を低く抑えることができます。」、及び、
「さらに、本願の請求項1に係る発明は、中間質量要素の質量が、除振対象物と床部材とを合わせた質量の約10分の1から約20分の1となるように設定されています。これにより、減衰定数が5?30%である1質点系除振装置と比較して、効果的に共振周波数での加速度応答倍率を減少させることができるとともに、高周波側の加速度応答倍率を低く抑えることができます。これに対して、各引用文献には、除振装置に備えられた中間質量要素の質量について、具体的な記載はなく、示唆もされておりません。したがって、各引用文献からは、本願発明の構成を想起し得ず、本願発明の構成によって初めて上述の本願特有の作用効果を奏することが可能となります。さらに、本願の請求項1に係る発明は、ばね要素もしくは減衰要素により振動系全体の減衰定数が10%以上50%以下となるように設定されています。これにより、減衰定数が5?30%である1質点系除振装置と比較して、効果的に共振周波数での加速度応答倍率を減少させることができるとともに、高周波側の加速度応答倍率を低く抑えることができます。これに対して、各引用文献には、振動系全体の減衰定数について、具体的な記載はなく、示唆もされておりません。したがって、各引用文献からは、本願発明の構成を想起し得ず、本願発明の構成によって初めて上述の本願特有の作用効果を奏することが可能となります。」と主張している。
しかし、引用例1発明の「免震装置」を「ばね要素および減衰要素を備え」ているものとすることは当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上述のとおりである。また、各引用文献には、除振装置に備えられた中間質量要素の質量、及び、振動系全体の減衰定数について、具体的な記載がないことは、その限りではそのとおりであるが、本願補正発明の数値範囲を充足する値とすることは当業者が容易に想到し得たものであること、及び、本願補正発明の作用効果は引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が予測し得る程度のものであることは、上述のとおりである。

よって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)むすび
本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、本件補正における他の補正事項を検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成21年8月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?11に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、平成21年1月26日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】
除振対象物を複数載置する床部材と、
該床部材と支持構造物との間に配置され、支持構造物から床部材に伝達される地震による震動を低減する免震機能および地震による震動よりも高周波の振動を低減する除振機能を有する免震除振装置とを備え、
前記免震除振装置が、直列に配置された除振装置と免震装置とからなり、
前記除振装置が、前記床部材と前記免震装置との間に設けた中間質量要素を挟んで直列に配置されたばね要素および減衰要素を備え、その下に前記免震装置が配置され、
前記免震装置が、ばね要素および減衰要素を備えることを特徴とする免震除振床システム。」

3-1.本願発明1について
(1)本願発明1
上記のとおりである。
(2)引用例
引用例1、2、及びその記載事項は上記「2.平成21年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定」に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明1は、実質的に、上記「2.平成21年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明において、「前記中間質量要素の質量が、前記除振対象物と前記床部材とを合わせた質量の約10分の1から約20分の1となるように設定され」という事項、及び、「前記ばね要素もしくは前記減衰要素により振動系全体の減衰定数が10%以上50%以下となるように設定されている」という事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明1の特定事項をすべて含み、本願発明1を限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2.平成21年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本願発明1が特許を受けることができないものである以上、本願請求項2?11に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-16 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-12 
出願番号 特願2003-365685(P2003-365685)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16F)
P 1 8・ 121- Z (F16F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳楽 隆昌  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 大山 健
川本 真裕
発明の名称 免震除振床システム  
代理人 上田 邦生  
代理人 藤田 考晴  

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