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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1222768
審判番号 不服2007-35044  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-27 
確定日 2010-09-03 
事件の表示 特願2001-296700「色管理システム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月11日出願公開、特開2003-111093〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯
[1]手続
本願は、平成13年9月27日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成19年 7月25日(起案日)
拒絶査定 :平成19年11月21日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成19年12月27日
手続補正 :平成20年 1月25日
前置審査報告 :平成20年 2月22日
審尋 :平成22年 1月 7日(起案日)
回答書 :平成22年 3月10日

[2]査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

A)本願の各請求項に係る発明は、下記の出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
B)本願の各請求項に係る発明は、下記引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


先願 1.特願2001-146170号(特開2002-342218号公報)
引用文献2.特開平06-326856号公報
引用文献3.特開平11-008774号公報
引用文献4.特開2001-147876号公報


【第2】補正却下の決定
平成20年1月25日付けの手続補正について次のとおり決定する。

《結論》

平成20年1月25日付けの手続補正を却下する。

《理由》

[1]特許請求の範囲の記載(補正前と補正後)
平成20年1月25日付けの手続補正(以下、本件補正という。)は特許請求の範囲についてする補正を含むところ、本件補正前および本件補正後の特許請求の範囲は、下記のとおりである。(補正部分をアンダーラインで示す。)

記(補正前)
【請求項1】 インターネットに接続している端末を利用するユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理システムであって、
端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段と、
登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段と、
色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段と、
を具備することを特徴とする色管理システム。
【請求項2】 インターネットに接続している端末を利用するユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理方法であって、
端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる工程と、
登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する工程と、
色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する工程と、
を含むことを特徴とする色管理方法。

記(補正後)
【請求項1】 インターネットに接続している端末で画像を表示するユーザに提供する色管理システムであって、
端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段と、
登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段と、
色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段と、
を具備することを特徴とする色管理システム。
【請求項2】 インターネットに接続している端末で画像を表示するユーザに提供する場合の色管理方法であって、
端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる工程と、
登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する工程と、
色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する工程と、
を含むことを特徴とする色管理方法。


[2]本件補正の適合性(第17条の2第4項第1号?第4号)
特許請求の範囲についてする補正は、補正前請求項1,2についてする補正であって、これらを、それぞれ、補正後請求項1,2とするものである。

(1)補正前請求項1についてする補正
(1.1)補正前請求項1の発明特定事項
補正前請求項1は、システム(物)の発明であって、
A「インターネットに接続している端末を利用するユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理システム」であることを前提とし、
B「端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段」
C「登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」
D「色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段」
を具備することを発明を特定するために必要な事項としている。
(1.2)補正事項
上記補正前請求項1についてする補正は、
補正前請求項1の「インターネットに接続している端末を利用するユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理システムであって」を「インターネットに接続している端末で画像を表示するユーザに提供する色管理システムであって」と変更するものであり、
〔補正a〕「端末を利用する」を「端末で画像を表示する」にする補正aと、
〔補正b〕「ユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理システム」を「ユーザに提供する色管理システム」にする補正b
とを含んでいる。
(1.3)補正の内容
上記補正aは、発明特定事項Aにおける、「端末を利用する」ことを「端末で画像を表示する」という「端末を利用」する下位概念に限定するものである。
上記補正bは、発明特定事項Aにおいて、「ユーザに通信販売を行なう環境を提供する場合の」という事項を、「ユーザに提供する」としたものであり、「ユーザに提供」する内容である「通信販売を行う環境」を削除し、上位概念化するものである。
(1.4)補正の適否
上記補正aは、上述のように発明特定事項Aにおける「ユーザ」について下位概念に限定するものであるから、補正前請求項1を限定的に減縮するものである。
一方、上記補正bは、発明特定事項Aにおける、「ユーザ」に「提供」する内容を、「通信販売を行う環境」以外を含むように上位概念化するものであり、減縮するものであるとはいえない。

(2)補正前請求項2についてする補正
補正前および補正後請求項2は方法の発明であって、システム(物)の発明である補正前および補正後請求項1とは異なるものの、補正前請求項2の特定事項は、いずれも、補正前請求項1の特定事項である上記A,B,C,Dと実質的に同じであり、かつ、補正前請求項2についてする補正は、上記した補正前請求項1についてする補正と同じく、上記の「補正a」および「補正b」をその実質的内容とするものである。
したがって、補正前請求項1についてする補正が、補正前請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものとはいえないのと同様の理由により、補正前請求項2についてする補正も、補正前請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものとはいえない。

(3)まとめ
請求項1,2についてする各補正は、いずれも、平成18年改正前特許法(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法)第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
そして、これら各補正は、いずれも、同改正前特許法第17条の2第4項第1号,第3号,第4号でそれぞれ規定する請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
以上によれば、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするもののいずれにも該当しない。

[3]まとめ
本件補正は特許請求の範囲についてする補正を含むところ、その補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするもののいずれにも該当しない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反しているものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

【第3】本願発明

平成20年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1,2までに係る発明は、本願明細書及び図面(出願当初の明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1,2までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、本願発明ともいう)は、下記(上記補正前の請求項1に同じ、再掲)のとおりである。

記(本願発明)
インターネットに接続している端末を利用するユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理システムであって、
端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段と、
登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段と、
色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段と、
を具備することを特徴とする色管理システム。

【第4】当審の判断

[1]引用刊行物の記載
(1)刊行物1(特開平11-8774号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

<技術分野>
(K1.1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は画像処理システムに関し、特に、ネットワークを介することで、画像データを処理する場所と出力する場所とが異なるような画像処理システムに関する。」

<従来技術>
(K1.2)「【従来の技術】今までは、主に各出力機器毎に、その出力機器に応じた色変換(色再現)処理が設定されており、画像データに色変換処理を施してから画像出力を行うようにしていた。
【0003】また、画像データのディジタル化が進むに伴い、ユーザの各家庭においてもディジタル化された画像をテレビ受像機やコンピュータディスプレイなどの画像表示手段で鑑賞する機会が増えてきている。
【0004】そして、画像出力手段や画像出力媒体として、多種多様なものが用いられるようになっている。画像出力手段としては、CRT表示装置,液晶表示装置,プラズマディスプレイ装置など、多くの種類がある。
【0005】また、プリンタについては、プリンタの出力形式の違い(レーザプリンタ,インクジェットプリンタ,熱転写プリンタ,など)だけでなく、記録媒体の種類の違い(普通紙,印画紙,布,など)も存在している。
【0006】このように多くの種類が存在するが、いずれの出力手段で出力する場合であっても、出力したい画像データに適正なカラーマッチング処理を施し、所望の色再現で出力されることが望まれている。」

<解決しようとする課題・目的>
(K1.3)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のカラーマッチング処理は、特定の画像出力手段、特定の画像出力媒体、あるいは、その組み合わせを想定した処理であり、多種多様な画像出力手段や画像出力媒体、またその組み合わせに対応していない。
【0008】そのため、ユーザが画像表示手段に表示されている画像を見ながら、カラーマッチング処理の設定を行い、その画像を画像出力手段で出力する。そして、出力された画像を見て、色再現が不十分な場合は、さらに、色再現が充分になされるまで、画像表示手段を見ながらカラーマッチング処理の設定を行う。
【0009】このように、いくつかの作業を繰り返して行うようにしなければならず、多大な時間と労力とが必要となる。また、このような一連の作業を繰り返したにもかかわらず、満足のいく色再現が得られない場合もある。
【0010】本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであって、多種多様な組合わせの画像出力環境に適した画像処理を簡易に行える画像処理システム及び画像処理方法を実現することを目的とする。」

<課題を解決するための手段>
(K1.4)「【課題を解決するための手段】すなわち、課題を解決する手段を構成する本発明は以下の(1)?(26)に説明するようなものである。
【0012】(1)請求項1記載の発明は、画像選択情報と出力環境情報とを受信する受信手段と、複数の画像データを記憶する画像データ記憶手段と、画像データに施す画像処理条件を記憶する処理条件記憶手段と、前記受信した出力環境情報に基づいて、前記処理条件記憶手段に記憶された処理条件の中から特定の処理条件を選択する処理条件選択手段と、前記画像選択情報により選択された画像データを前記特定の処理条件により処理する画像処理手段と、この画像処理手段で処理された画像データを送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする画像処理システムである。
【0013】この画像処理システムでは、画像を選択する画像選択情報、および、画像データを出力する環境に関する出力環境情報をユーザから受信し、受信した出力環境情報に基づいて、予め記憶された処理条件の中から特定の処理条件を選択し、この選択された処理条件に基づいて、選択された画像データに対して所定の処理を施し、この処理された画像データをユーザに送信するようにしている。
【0014】従って、画像処理システムに予め複数の出力環境に合わせた処理条件を記憶しておき、ユーザの出力環境(ユーザの出力機器,出力媒体の組合わせ)に合わせて処理条件を選択して画像処理を実行することで、多種多様な組合わせの画像出力環境に適した画像処理を簡易に行うことができる。
【0015】(2)請求項2記載の発明では、請求項1の発明において、前記出力環境情報に、画像データを出力する出力機器の種類もしくは特性に関する出力機器情報が含まれることを特徴としている。
【0016】従って、画像データを出力する出力機器の種類もしくは特性に関する出力機器情報を含む出力環境情報をユーザから受信し、画像処理システム内には、予め複数の出力機器に合わせた処理条件を記憶しておき、ユーザの出力環境に合わせて処理条件を選択して画像処理を実行することで、多種多様な組合わせの画像出力環境に適した画像処理を簡易に行うことができる。
【0017】(3)請求項3記載の発明では、請求項1の発明において、前記出力環境情報に、画像データが出力される出力媒体の種類もしくは特性に関する出力媒体情報が含まれることを特徴としている。
【0018】従って、画像データを出力する出力媒体の種類もしくは特性に関する出力機器情報を含む出力環境情報をユーザから受信し、画像処理システム内には、予め複数の出力媒体に合わせた処理条件を記憶しておき、ユーザの出力環境に合わせて処理条件を選択して画像処理を実行することで、多種多様な組合わせの画像出力環境に適した画像処理を簡易に行うことができる。
【0019】(4)請求項4記載の発明は、請求項1?請求項3の発明において、前記処理条件記憶手段に記憶されている処理条件が、出力環境に応じた色再現を行うための画像処理特性情報に基づくことを特徴としている。
【0020】従って、画像処理システムに予め複数の出力環境に合わせた処理条件を記憶しておき、ユーザの出力環境(出力機器や出力媒体の種類,特性)に合わせて処理条件を選択し、色再現のための画像処理特性情報に基づく画像処理を実行することで、多種多様な組合わせの画像出力環境に適した画像処理を簡易に行うことができる。」

<実施の形態例(システムの構成)>
(K1.5)「【0065】
【発明の実施の形態】本発明の画像処理システムについて図面を参照して説明する。
<画像処理システムの構成>ここでは、まず図3を参照して本発明の実施の形態例を適用する画像処理システムの全体構成について説明する。
【0066】ここでは、大きく分けて、ユーザ側ノード10,画像処理センタ20から構成されている。10はユーザ側ノードであり、一般家庭やオフィスなど、ネットワーク(公衆通信回線,専用回線など)に接続可能であって、かつ画像データからなる画像ファイルを表示やプリントなどの取り扱いが可能なものである。
【0067】20は画像処理センタであり、複数の画像データを有しており、ユーザによって選択された画像データをユーザが望む出力形態に適した画像処理(カラーマッチング処理など)を施してユーザに送信する機能を備えたものである。
【0068】また、PC11,21は画像データからなる画像ファイルの取り扱い及び通信処理の可能なパーソナルコンピュータ、家庭用ゲーム機、ディジタルカメラなどであり、キーボードやポインティングデバイスのような入力手段とCRTや液晶表示素子からなるディスプレイのような表示手段の接続されているものが好ましい。尚、この実施の形態例では、ユーザ側ノード10ではパーソナルコンピュータを用いるものとして説明を行う。
【0069】モデム12,22はPC内で伝送されている信号を、ネットワーク1上で伝送するための信号変調手段として機能し、その逆の変換を行う信号復調手段としても機能する。各モデムは各PCと一体型で内蔵されていてもよいし、ケーブルやスロットを介して接続されていてもよい。
【0070】尚、ネットワーク1は、各種電気通信回線設備に属するものを指すものとし、アナログ伝送路(アナログ公衆回線網),ディジタル伝送路(同期ディジタル回線網(STM回線),または非同期ディジタル回線網(ATM回線))のいずれであってもよい。また、この実施の形態例においては、インターネット接続,LAN接続などの各種の接続を含むものとする。そして、ディジタル回線を使用する場合は、上述したモデムに替え、各ネットワークのデータに合わせた信号変換手段を用いることになる。
【0071】ハードディスク14,24は画像ファイルを記憶する記憶手段として機能し、その他にも各種の制御プログラムを記憶し、必要に応じて各PCにおいて読み出してプログラムを実行できるよう構成されている。また、必要に応じて、光磁気ディスクやCD-ROMなどの記録媒体も用いることができる。
【0072】尚、この実施の形態例では、画像処理センタ20側のハードディスク24内に複数の画像データが予め格納されており、また、ハードディスク24内にユーザの各種環境に合わせた画像データの処理条件がテーブル形式で格納されているものとする。」

<実施の形態例(動作)>
(K1.6)「【0073】<画像処理システムの基本的動作>ここで、図1の動作模式図と図2のフローチャートも参照して、本実施の形態例の画像処理システムの動作説明を行う。
【0074】まず、何らかの形で選択可能な画像データの一覧がユーザ側ノード10に届けられる。この場合、画像処理センタ20から選択可能な画像データの一覧をメニュー形式でユーザ側ノード10に表示させることも可能であり、また、予めパンフレット形式の印刷物をユーザに届けておいてもよい。
【0075】そして、ユーザは、出力したい画像が存在すれば、画像データのファイル名や画像データ番号などを含む画像選択情報を、ネットワーク1を介して画像処理センタ20に送信する。
【0076】また、これに付随して、出力環境情報(出力機器情報や出力媒体情報)をネットワーク1を介して画像処理センタ20に送信する。尚、この出力環境情報は、画像選択情報の送信に付随して自動的に行うように、プログラムでユーザの環境設定を読み取るようにしておいてもよい。また、ユーザが手動で出力環境情報を入力してから送信するようにしておいてもよい。
【0077】ここで、出力環境情報を構成する出力機器情報とは、ユーザが画像処理センタから転送されてきたカラーマッチング処理済みの画像ファイルの画像を記録出力(プリンタによるプリントアウト),表示出力(ディスプレイでの画像表示)などする場合の機器の特性又は機器の種類(製造・販売社名,機器型番,機器名称など)である。
【0078】また、出力環境情報を構成する出力媒体情報とは、ユーザが画像処理センタから転送されてきたカラーマッチング処理済みの画像ファイルの画像を記録出力(プリントアウト)する場合の記録紙等の特性又は種類(製造・販売社名,製品番号,製品名称など)である。
【0079】この出力環境情報としては、画像表示の場合や、プリンタに標準指定された記録紙を使用する場合には、出力機器情報だけとなる。また、プリンタに標準指定された記録紙以外の記録紙を使用する場合などでは、出力環境情報は出力機器情報と出力媒体情報との組合わせになる。また、出力媒体情報として、メーカ名や製品番号などではなく、普通紙、布、といった情報であってもよい。
【0080】尚、ユーザ側ノード10から送信するデータは、最低でも上述した画像選択情報と出力環境情報とを含むものとし、それ以外には、カラーマッチング処理を希望する旨の意志表示や、画像処理センタ20からの送信を可能にするためにユーザを特定可能な個人情報などを含むものとする。
【0081】また、前記画像選択情報及び出力環境情報の送信はネットワーク1で直接画像処理センタ20に接続してもよいが、ユーザ側ノード10の最寄りの転送センタに接続し、ユーザが選択した画像処理センタへは転送センタを経由して転送するようにしてもよい。
【0082】また、略等しい画像データを備えた画像処理センタが複数存在している場合には、画像処理センタ20の稼動状態,混雑状況やユーザ側ノード10の所在地に基づいて、転送センタで画像ファイルの転送先を判断し、最も適した画像処理センタ20に転送することも可能である。
【0083】このようにして転送センタやネットワーク1を介して画像処理センタ20に送信された画像選択情報及び出力環境情報(出力機器情報,出力媒体情報)は、モデム22によってPC21内で標準的に伝送されている信号に変換され、一旦メモリもしくはハードディスク24に格納される(図1S1,図2S1)。
【0084】そして、一連の画像選択情報及び出力環境情報の転送が完了すると、画像処理センタ20では、受信した画像選択情報と出力環境情報とに基づいて、HDD24に予め記憶された複数の画像データや画像処理条件の中から該当する画像データと特定の処理条件とを選択する(図1S2,図2S2)。
【0085】ここで、画像処理条件とは、ユーザの出力環境(各種機器や媒体の組合わせ)に応じて色再現を行うための画像処理特性情報である。また、ここでHDD24(処理条件記憶手段)は、色に関する条件を処理条件として記憶している。これにより、カラーマッチング処理を正確に行うことが可能になる。
【0086】尚、ここでは、HDD24が画像処理条件記憶手段を構成しているが、PC21のメモリであってもよい。また、ここでは、PC21の処理プログラムが、ユーザからの出力環境情報に適した処理条件を選択する処理条件選択手段を構成している。
【0087】また、ここでHDD24(処理条件記憶手段)は、
出力環境情報に含まれる出力機器の種類もしくは特性毎に複数の処理条件を記憶,
出力環境情報に含まれる出力機器の種類もしくは特性、および画像データが出力される出力媒体の種類もしくは特性毎に複数の処理条件を記憶,
処理条件をテーブル(LUTなど)形式や演算式の形式で記憶,
している。
【0088】このように複数の処理条件を予め記憶しておくことで、ユーザの出力環境に合わせて速やかに処理条件を選択して画像処理を実行し、多種多様な組合わせの画像出力環境に適した画像処理を簡易に行うことができるようになる。
【0089】そして、以上のような処理条件に基づいて、選択された画像データに対して、画像処理としてのカラーマッチング処理を施し(図1S3,図2S3)、オリジナルの画像データとは別のファイルとしてカラーマッチング処理後の画像データ(図1:修正画像データ)をメモリもしくはハードディスク24に一時的に格納する。
【0090】尚、ユーザから転送される画像データが、レッドR1,グリーンG1およびブルーB1により表されるデータである場合には、各色毎にカラーマッチング処理を施して、処理により生成した画像データを、レッドR2,グリーンG2およびブルーB2により表されるデータとして保存する。これにより、多種多様な組合わせの画像出力環境に適した画像処理を簡易に行うことができる。
【0091】そして、画像処理センタ20は、パーソナルコンピュータ(PC)21からカラーマッチング処理等の画像処理が施された画像ファイルを、モデム22によりネットワーク1を介して、ユーザ側の出力機器が接続された装置(ユーザ側ノード10など)へ送信する(図1S4,図2S4)。
【0092】また、このユーザへの送信の際に、画像処理された画像データに対してユーザ側で修正ができないような情報を付加しておくことで、ユーザ側で不要な画像処理を施すことを防止できる。そして、これとは逆に、ユーザ側の出力機器での画像処理を考慮した状態での画像処理を画像処理センタ20側で行っておいて、最終的な画像処理をユーザにゆだねることも可能である。
【0093】尚、メモリまたはハードディスク24に一旦格納されたカラーマッチング処理前の画像ファイルならびにカラーマッチング処理後の画像ファイルは、ユーザ側ノード10へ送信後もしばらくはメモリまたはハードディスク24に消去せずに保存しておくことが可能である。
【0094】ユーザから同じ画像ファイルのカラーマッチング処理要求のあったときには、PC21がメモリまたはハードディスク24に格納された画像ファイルのカラーマッチング処理を施すか、もしくは画像ファイルを他の画像処理センタに転送すればよい。
【0095】また、このカラーマッチング処理後の画像ファイルは、カラーマッチング処理前の画像ファイルと対応づけて格納しておくと、後日、ユーザが同じ画像ファイルに同じカラーマッチング処理を施した画像データが必要な場合に、カラーマッチング処理を行わずに、格納されているカラーマッチング処理後の画像ファイルを送信することにより、迅速に対処することが可能である。」

(2)刊行物2(特開平06-326856号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

(K2.1)「【請求項3】画像データを蓄積して外部の別の装置に転送するデータ記録装置において、蓄積されている画像が使用している表示色を蓄積しておく手段と、データの転送先となる装置が表示できる色数を蓄積しておく手段と、蓄積されている画像データの色数を転送先の装置が表示できる色数に変換する手段と、上記蓄積されている画像で使用している色数と表示装置の表現できる色数を比較する手段と、該比較の結果変換方法もしくはパラメータを決定する手段を有することを特徴とするデータ記録装置。」

(K2.2)「【請求項11】画像データを蓄積して外部の別の装置に転送するデータ記録方法において、蓄積されている画像が使用する表示色と、データの転送先となる装置が表示できる色数を検出して、蓄積されている画像データの色数を転送先の装置が表示できる色数に変換するして転送するために、上記の画像で使用している表示色と表示装置の表現できる色数を比較して、その比較の結果変換方法もしくはパラメータを決定して変換処理を実行することを特徴とするデータ記録方法。」

(K2.3)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は複数の情報処理機器間でデータを転送するシステムで用いるデータの記録および転送に関わり、特に記録されているデータと転送先で必要とするデータの間でなんらかの変換あるいはデータ処理を必要とする際に、データの読み出しから処理、転送にいたるまでの一連の処理を最も効率的に行なうための情報処理装置(データ記録装置)および方法に関する。」

(K2.4)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】複数の装置を接続しデータの転送を行う場合、蓄積されているデータとデータを要求している装置の仕様が一致しない場合が生じる。特に通信網を介して多数の装置が接続されている場合、各装置間での機能や仕様の相違が生じることが多い。
【0004】例えば、蓄積されている画像データを表示する場合、画像データの画素数と装置が表示できる画素数が異なる時には画素数の変換を行う必要がある。この変換に関しては蓄積されている画像の画素数と表示で用いる受信側装置の仕様を把握しておく必要があるため、従来多くの場合受信側装置においてこの処理を施していた。
【0005】しかしながら、受信側装置で変換を行うと、例えば画像を蓄積していた送信側の装置の処理速度と比べで受信側の処理速度が大幅に低い場合に処理時間がかかる。また、受信側装置で画素数の変換を行うと、画素数の多い画像を転送して解像度の低い装置で表示する場合には表示されないにもかかわらず多くの画像情報をネットワークを介して転送しなければならないため、ネットワークの利用効率を低めてしまう。さらに操作者が各画像の画素数と表示装置の画素数を把握しておいて変換処理を施す必要がある。
【0006】また、符号化方式のように各種の方式が存在している処理については、受信側で対応できない方式でデータが蓄積されている場合など、個別に操作者がサーバでの復号処理の実行を指示しなければならないなどの問題もある。
【0007】なお本明細書では、以後画像を蓄積し転送する装置をサーバと呼び、転送要求を出し、送られて来た画像データを表示する受信側装置をクライアントと呼ぶ。」

(K2.5)「【0030】次にサーバ内での処理の流れを図3を用いて説明する。クライアントからの画像転送要求を受信(410)すると、サーバはその画像IDから対象となる画像ファイルの読みだしを行う。同時に(420)において該当する画像のサイズや使用されている色の数、あるいは表色系や符号化に有無などを記録した画像特性管理テーブルから該当する画像の情報を読み出す。ただしここで述べた各画像の特性は画像ファイル自体に例えばヘッダ情報として記録してある場合も多い。その場合は別の管理ファイルを特に保存しておく必要はない。一方、通信手順の過程において転送要求を発したクライアントは特定されている。従って、図中(425)の段階においてクライアントの識別が完了し、それに該当するクライアント情報を読みだす(430)。クライアント情報の内容については後に詳しく説明する。読みだされたクライアントの情報と画像の情報を比較することにより必要な変換処理の内容を(435)の段階で決定できる。」

(K2.6)「【0036】次に本発明の特長である変換内容の決定および変換手順に決定の方法について説明する。変換内容はクライアントの仕様とがぞの仕様の差分を吸収することになるため、両者の仕様の比較が必要である。
【0037】表1はサーバ中に記録するクライアント管理テーブルの例である。
【0038】(表1略)
【0039】各装置IDごとにクライアントの名称のほか該クライアントが表示できる画素数や、色数など装置のハード仕様を登録しておく。また、各装置に搭載されているソフトウェアにより実行できる機能も記録する。この場合、IDが1の装置では符号復号処理を全く実行できないため、画像データは原画像の形で転送する必要があるということを意味している。」

(K2.7)「【0061】次に本発明の一応用例として、サーバ側でのみ変換処理を行う場合について図7と図8を用いて説明する。この場合、クライアントと画像データの情報から変換処理の自動化のみを実現するものである。通信回線を経由して複数のクライアントが同時に1台のサーバに要求を出している場合には、クライアント側で処理の一部を分担することにより効率を高められるが、クライアント数が少ない場合にはサーバですべての処理を実行することもできる。
【0062】図7はクライアント側の動作の流れを説明する図で図2に相当する。この場合、クライアントはサーバに対して画像の転送要求を行い、サーバより変換を完了した画像データを受けとって表示するだけである。一方、サーバは図8に示す流れに従って動作し、図3の(450)として記載した変換手順の決定部分およびクライアントでの画像変換処理の指示が削除できる。」

(K2.8)「【0065】【発明の効果】本発明により、ネットワークを介して複数の計算機を接続しているシステムにおいて、システムの一部に蓄積されている画像データを別の装置に転送し利用する場合、転送先の装置の仕様に合わせた画像の変換を操作者が意識せずに実行するとともに、変換を施し転送する場合において転送も含めた処理全体の効率が最も高い手順で変換を施すことができるシステムが実現できる。」

[2]刊行物1に記載された発明(引用発明)
(1)全体・概要
刊行物1には、前掲した記載(K1.1)?(K1.6)があり、(K1.1)を技術分野、(K1.2)を従来技術、(K1.3)を解決しようとする課題・目的とし、(K1.4)?(K1.6)のようにした画像処理システムが記載されており、
前掲(K1.4)を参照して、請求項2を通して請求項1を引用する請求項4に係る発明として、
「画像選択情報と出力環境情報とを受信する受信手段と、
複数の画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
画像データに施す画像処理条件を記憶する処理条件記憶手段と、
前記受信した出力環境情報に基づいて、前記処理条件記憶手段に記憶された処理条件の中から特定の処理条件を選択する処理条件選択手段と、前記画像選択情報により選択された画像データを前記特定の処理条件により処理する画像処理手段と、
この画像処理手段で処理された画像データを送信する送信手段と、
を備えた画像処理システムにおいて、
前記出力環境情報に、画像データを出力する出力機器の種類もしくは特性に関する出力機器情報が含まれ、
前記処理条件記憶手段に記憶されている処理条件が、出力環境に応じた色再現を行うための画像処理特性情報に基づく
画像処理システム」が記載されている。

(2)詳細
そして、「画像処理システム」とその構成手段について、【発明の詳細な説明】をみると、次の通りのことが認められる。

ア 「画像処理システム」
(K1.5)「【0065】【発明の実施の形態】本発明の画像処理システムについて図面を参照して説明する。
<画像処理システムの構成>ここでは、まず図3を参照して本発明の実施の形態例を適用する画像処理システムの全体構成について説明する。
【0066】ここでは、大きく分けて、ユーザ側ノード10,画像処理センタ20から構成されている。10はユーザ側ノードであり、一般家庭やオフィスなど、ネットワーク(公衆通信回線,専用回線など)に接続可能であって、
(中略)
【0067】20は画像処理センタであり、複数の画像データを有しており、ユーザによって選択された画像データをユーザが望む出力形態に適した画像処理(カラーマッチング処理など)を施してユーザに送信する機能を備えたものである。
【0068】また、PC11,21は画像データからなる画像ファイルの取り扱い及び通信処理の可能なパーソナルコンピュータ、家庭用ゲーム機、ディジタルカメラなどであり、キーボードやポインティングデバイスのような入力手段とCRTや液晶表示素子からなるディスプレイのような表示手段の接続されているものが好ましい。尚、この実施の形態例では、ユーザ側ノード10ではパーソナルコンピュータを用いるものとして説明を行う。
(中略)
【0070】尚、ネットワーク1は、各種電気通信回線設備に属するものを指すものとし、アナログ伝送路(アナログ公衆回線網),ディジタル伝送路(同期ディジタル回線網(STM回線),または非同期ディジタル回線網(ATM回線))のいずれであってもよい。また、この実施の形態例においては、インターネット接続,LAN接続などの各種の接続を含むものとする。そして、ディジタル回線を使用する場合は、上述したモデムに替え、各ネットワークのデータに合わせた信号変換手段を用いることになる。」の記載によれば、
当該「画像処理システム」は、「インターネット接続」した「ユーザ側ノード10」における「パーソナルコンピュータ」を操作するユーザに対して、「画像処理センタ20」によって、「ユーザが望む出力形態に適した」「カラーマッチング処理」を施す「ネットワーク」の環境を提供するものであるから、
引用発明として「インターネット接続したユーザ側ノード10におけるパーソナルコンピュータを操作するユーザに対して、ユーザが望む出力形態に適したカラーマッチング処理を施すネットワークの環境を提供するカラーマッチング処理システム」の発明を認めることができる。

イ 「受信手段」
(K1.6)「(前略)【0083】「このようにして転送センタやネットワーク1を介して画像処理センタ20に送信された画像選択情報及び出力環境情報(出力機器情報,出力媒体情報)は、モデム22によってPC21内で標準的に伝送されている信号に変換され、一旦メモリもしくはハードディスク24に格納される(図1S1,図2S1)(以下略)」の記載によれば、
当該「受信手段」は、「モデム22」を示しており、
「モデム22」は、「画像選択情報」及び「出力環境情報」を受信するものである。
(K1.6)「【0074】まず、何らかの形で選択可能な画像データの一覧がユーザ側ノード10に届けられる。この場合、画像処理センタ20から選択可能な画像データの一覧をメニュー形式でユーザ側ノード10に表示させることも可能であり、また、予めパンフレット形式の印刷物をユーザに届けておいてもよい。
【0075】そして、ユーザは、出力したい画像が存在すれば、画像データのファイル名や画像データ番号などを含む画像選択情報を、ネットワーク1を介して画像処理センタ20に送信する。
【0076】また、これに付随して、出力環境情報(出力機器情報や出力媒体情報)をネットワーク1を介して画像処理センタ20に送信する。尚、この出力環境情報は、画像選択情報の送信に付随して自動的に行うように、プログラムでユーザの環境設定を読み取るようにしておいてもよい。また、ユーザが手動で出力環境情報を入力してから送信するようにしておいてもよい。(以下略)」の記載によれば、
「画像選択情報」は、「ユーザ側ノード10」からの「ユーザ」が「出力したい画像」を「選択」したものであり、
「出力環境情報」は、「ユーザ側ノード10」から「ユーザが手動で入力」したものであり、
「画像選択情報」に「出力環境情報」を付随して送信するもの(画像処理センタ20からみれば、「受信」するもの)を認めることができる。
以上のことから、「モデム22」は、
「ユーザ側ノード10」からの、
「ユーザ」が「出力したい画像」を「選択」した「画像選択情報」に、
「ユーザが手動で入力」した「出力環境情報」
を付随して受信するものと認めることができる。

ウ 「画像データ記憶手段」および「処理条件記憶手段」
(K1.6)「【0084】そして、一連の画像選択情報及び出力環境情報の転送が完了すると、画像処理センタ20では、受信した画像選択情報と出力環境情報とに基づいて、HDD24に予め記憶された複数の画像データや画像処理条件の中から該当する画像データと特定の処理条件とを選択する(図1S2,図2S2)。
【0085】ここで、画像処理条件とは、ユーザの出力環境(各種機器や媒体の組合わせ)に応じて色再現を行うための画像処理特性情報である。また、ここでHDD24(処理条件記憶手段)は、色に関する条件を処理条件として記憶している。これにより、カラーマッチング処理を正確に行うことが可能になる。」の記載によれば、
当該「画像データ記憶手段」および当該「処理条件記憶手段」は、「HDD24」であり、「HDD24」には「複数の画像データや画像処理条件」が「予め記憶」されている。

エ 「画像処理手段」
(K1.6)「【0084】そして、一連の画像選択情報及び出力環境情報の転送が完了すると、画像処理センタ20では、受信した画像選択情報と出力環境情報とに基づいて、HDD24に予め記憶された複数の画像データや画像処理条件の中から該当する画像データと特定の処理条件とを選択する(図1S2,図2S2)。
(中略)
【0086】尚、ここでは、HDD24が画像処理条件記憶手段を構成しているが、PC21のメモリであってもよい。また、ここでは、PC21の処理プログラムが、ユーザからの出力環境情報に適した処理条件を選択する処理条件選択手段を構成している。
(中略)
【0089】そして、以上のような処理条件に基づいて、選択された画像データに対して、画像処理としてのカラーマッチング処理を施し(図1S3,図2S3)、オリジナルの画像データとは別のファイルとしてカラーマッチング処理後の画像データ(図1:修正画像データ)をメモリもしくはハードディスク24に一時的に格納する。
(中略)
【0091】そして、画像処理センタ20は、パーソナルコンピュータ(PC)21からカラーマッチング処理等の画像処理が施された画像ファイルを、モデム22によりネットワーク1を介して、ユーザ側の出力機器が接続された装置(ユーザ側ノード10など)へ送信する(図1S4,図2S4)。」の記載によれば、
当該「画像処理手段」は、「パーソナルコンピュータ(PC)21」であり、「受信した画像選択情報」に基づいて「該当する画像データ」を「選択」し、「選択された画像データに対して」、
(「ユーザからの出力環境情報に適した処理条件」を選択し、その選択した)「ユーザからの出力環境情報に適した処理条件」に基づいて、
「画像処理としてのカラーマッチング処理を施し」ている。

オ 「送信手段」
(K1.6)「【0091】そして、画像処理センタ20は、・・(中略)・・画像処理が施された画像ファイルを、モデム22によりネットワーク1を介して、ユーザ側の出力機器が接続された装置(ユーザ側ノード10など)へ送信する(図1S4,図2S4)。」の記載によれば、
当該「送信手段」は「モデム22」であり、「画像処理が施された画像ファイル」を、「ユーザ側の出力機器が接続された」「ユーザ側ノード10」へ「送信する」ものであり、「画像処理」は、前記エにも示したとおり、「カラーマッチング処理」である。

カ 「前記出力環境情報に、画像データを出力する出力機器の種類もしくは特性に関する出力機器情報が含まれ、」
(K1.5)「【0077】ここで、出力環境情報を構成する出力機器情報とは、ユーザが画像処理センタから転送されてきたカラーマッチング処理済みの画像ファイルの画像を記録出力(プリンタによるプリントアウト),表示出力(ディスプレイでの画像表示)などする場合の機器の特性又は機器の種類(製造・販売社名,機器型番,機器名称など)である。」の記載の、
ディスプレイで画像表示する場合についてみれば、「出力機器」は「ディスプレイ」であり、「出力環境情報」を構成する「出力機器情報」とは、「ユーザが画像処理センタから転送されてきたカラーマッチング処理済みの画像ファイルの画像を表示出力するディスプレイの特性を示す情報」と認められる。

キ 「前記処理条件記憶手段に記憶されている処理条件が、出力環境に応じた色再現を行うための画像処理特性情報に基づく」
(K1.6)「【0085】ここで、画像処理条件とは、ユーザの出力環境(各種機器や媒体の組合わせ)に応じて色再現を行うための画像処理特性情報である。また、ここでHDD24(処理条件記憶手段)は、色に関する条件を処理条件として記憶している。これにより、カラーマッチング処理を正確に行うことが可能になる。」の記載によれば、
当該「処理条件」は「ユーザの出力環境に応じて色再現を行うための画像処理特性情報」である。

ク 上記イ、オ、カのまとめ(「受信手段」および「送信手段」)
上記イ、オ、カによると、「受信手段」および「送信手段」として、「ユーザ側ノード10からの、ユーザが出力したい画像を選択した画像選択情報に、ユーザが手動で入力した、ユーザが画像処理センタから転送されてきたカラーマッチング処理済みの画像ファイルの画像を表示出力するディスプレイの特性を示す情報を付随して受信し、カラーマッチング処理が施された画像ファイルをユーザ側のディスプレイが接続されたユーザ側ノード10へ送信するモデム22」が認められる。

ケ 上記ウ、キのまとめ(「画像データ記憶手段」および「処理条件記憶手段」)
上記ウ、キによると、「画像データ記憶手段」および「処理条件記憶手段」として、「複数の画像データやユーザの出力環境に応じて色再現を行うための画像処理特性情報が予め記憶されたHDD24」が認められる。

コ 上記エ、カ、キのまとめ(「画像処理手段」)
上記エ、カ、キによると、「画像処理手段」として、
「受信した画像選択情報に基づいて該当する画像データを選択し、
受信した「ディスプレイの特性を示す情報」に適した画像処理条件を選択し、選択した画像処理条件(ユーザの出力環境に応じて色再現を行うための画像処理特性情報)に基づいて、
選択された画像データに対して、画像処理としてのカラーマッチング処理を施すパーソナルコンピュータ(PC)21」が認められる。

そして、上記ア、ク、ケ、コから、本願発明と対比する引用発明として、以下の発明を認定することができる。

記(引用発明)
インターネット接続したユーザ側ノード10におけるパーソナルコンピュータを操作するユーザに対して、ユーザが望む出力形態に適したカラーマッチング処理を施すネットワークの環境を提供するカラーマッチング処理システムであって、
ユーザ側ノード10からの、
ユーザが出力したい画像を選択した画像選択情報に
ユーザが手動で入力した、ユーザが画像処理センタから転送されてきたカラーマッチング処理済みの画像ファイルの画像を表示出力するディスプレイの特性を示す情報
を付随して受信し、カラーマッチング処理が施された画像ファイルをユーザ側のディスプレイが接続されたユーザ側ノード10へ送信するモデム22と、
複数の画像データや
ユーザの出力環境に応じて色再現を行うための画像処理特性情報
が予め記憶されたHDD24と、
受信した画像選択情報に基づいて該当する画像データを選択し、
受信した「ディスプレイの特性を示す情報」に適した画像処理条件を選択し、選択した画像処理条件(ユーザの出力環境に応じて色再現を行うための画像処理特性情報)に基づいて、
選択された画像データに対して、画像処理としてのカラーマッチング処理を施すパーソナルコンピュータ(PC)21と、
を備えたカラーマッチング処理システム

[3]対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の分説
対比の便宜上、本願発明を次の構成要件A?Eに分説しておく。
<本願発明(分説)>
A インターネットに接続している端末を利用するユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理システムであって、
B 端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段と、
C 登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段と、
D 色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段と、を具備することを特徴とする
E 色管理システム。

(2)構成要件E「色管理システム」について
引用発明の「カラーマッチング処理」は、「色を管理する処理」ということができるから、引用発明の「カラーマッチング処理システム」は、「色管理システム」と言える。

(3)構成要件A「インターネットに接続している端末を利用するユーザに、通信販売を行なう環境を提供する場合の色管理システムであって」について
引用発明は「インターネット接続したユーザ側ノード10におけるパーソナルコンピュータを操作するユーザ」とするところ、「インターネット接続したユーザ側ノード10」は、「インターネットに接続している端末」と言うことができるから、「インターネット接続したユーザ側ノード10におけるパーソナルコンピュータを操作するユーザ」は、「インターネットに接続している端末を利用するユーザ」と言える。
また、「通信販売を行う環境」は、「ネットワークの環境」と言えるから、引用発明の「ユーザが望む出力形態に適したカラーマッチング処理を施すネットワークの環境を提供するカラーマッチング処理システム」は、「ユーザに、ネットワークの環境を提供する場合の色管理システム」と言い得る点では、本願発明と一致しているが、ユーザに「提供」する「環境」が、本願発明は「通信販売を行なう環境」であるのに対し、引用発明は「通信販売を行なう環境」とはしていない点で相違する。
したがって、引用発明と本願発明は、「インターネットに接続している端末を利用するユーザに、ネットワークの環境を提供する場合の色管理システム」である点で一致し、ユーザに「提供」する「環境」が、本願発明は「通信販売を行う環境」であるのに対し、引用発明は、「通信販売を行なう環境」とはしていない点で相違する。

(4)構成要件B「端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段」について
<端末の備えるモニタのモニタプロファイル>
引用発明の「表示出力するディスプレイの特性を示す情報」が、「モニタプロファイル」と称されることは常である。(下記周知例1,2参照)
そして、引用発明の「ディスプレイ」は「ユーザ側ノード10」に接続されていて、「端末の備えるモニタ」であると言えるから、引用発明の「ユーザか画像処理センタから転送されてきたカラーマッチング処理済みの画像ファイルの画像を表示出力するディスプレイの特性を示す情報」は、「端末の備えるモニタのモニタプロファイル」であると言い得るものである。
<モニタプロファイルをユーザに登録させる手段>
引用発明は、「ディスプレイの特性を示す情報」を「ユーザが手動で入力」するようにしているものの、「画像選択信号」に「ディスプレイの特性を示す情報」(モニタプロファイル)を付随して「受信」する構成となっており、「モニタプロファイルをユーザに登録させる手段」を有していない点で本願発明と相違する。

記(周知例1,2)
ア 周知例1:特開平11-96333号公報
<記載事項の摘示>
「【0095】このRGB値算出部9は、図6に示すように、表示モニタの特性データを保存するCRTモニタプロファイル保存部17と、表示モニタの特性データを用いてXYZ 値をモニタ入力信号RGB値に変換する出力信号算出部18とで構成される。」

イ 周知例2:特開2001-251527号公報
<記載事項の摘示>
「【0024】このカラーマッチングは、図1に示したように行われる。すなわち、モニタに表示される「モニタに依存した色空間での色の値1」を、モニタの特性データ(モニタプロファイル)を用いて「デバイス(モニタやプリンタ等)に依存しない色空間での値2」に変換する。つぎにプリンタの特性データ(プリンタプロファイル)を用いて、前記値2を「プリンタに依存した色空間での値3」に変換する。これらの変換は、カラーマッチングモジュールを用いて行われる。」

(5)構成要件C「登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」について
引用発明において「ユーザ側ノード10」には「ディスプレイ」が接続されており、その「ディスプレイ」には「ディスプレイの特性」が備わっていると言い得る。
また、「モデム22」は、「ユーザ側ノード10からの、ユーザが出力したい画像を選択した画像選択情報」と「ディスプレイの特性を示す情報」を受信しており、「端末からのアクセス要求」があると言うべきであり、
「パーソナルコンピュータ(PC21)」において「受信した画像選択情報に基づいて該当する画像データを選択し、
受信した「ディスプレイの特性を示す情報」に適した画像処理条件を選択し、選択した画像処理条件(ユーザの出力環境に応じて色再現を行うための画像処理特性情報)に基づいて、
選択された画像データに対して、画像処理としてのカラーマッチング処理を施」しているのであるから、
「アクセス要求に対して」「画像処理としてのカラーマッチング処理」を施していると言える。
そして、「ディスプレイの特性を示す情報」は、上記(4)のとおり「モニタプロファイル」と言い得るものであり、
「カラーマッチング処理」は、「色変換処理」と言い得ると共に、受信した「ディスプレイの特性を示す情報」に適した画像処理条件を選択し、選択した画像処理条件(ユーザの出力環境に応じて色再現を行うための画像処理特性情報)に基づいて」施されるのであるから、
引用発明における「パーソナルコンピュータ(PC21)」は、「モニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」であると言い得るものである。
したがって、引用発明は、「モニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、モニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」を具備していると言える。
もっとも、上記(4)と同様に「モニタプロファイル」が「登録」されたものではない点では相違する。

(6)構成要件D「色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段」について
引用発明において「モデム22」は「カラーマッチング処理が施された画像ファイルをユーザ側のディスプレイが接続されたユーザ側ノード10へ送信」しており、上述(5)のとおり「カラーマッチング処理」は「色変換処理」と言い得、「画像ファイル」は「画像データ」と言い得、「ユーザ側ノード10」には、「ディスプレイが接続され」ており、この「ディスプレイ」は「機器の特性」、つまり「モニタプロファイル」が備わっていると言い得るから、引用発明は「色変換をした画像データを、モニタプロファイルを備える端末に送信する」ものである。
もっとも、上記(4)(5)と同様に「モニタプロファイル」が「登録」されたものではない点では相違する。

[4]一致点・相違点

以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点および相違点は、下記のとおりである。

記(一致点)
インターネットに接続している端末を利用するユーザに、ネットワークの環境を提供する場合の色管理システムであって、
モニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、モニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段と、
色変換をした画像データを、モニタプロファイルを備える端末に送信する手段と、
を具備する色管理システム。

記(相違点)
[相違点1]
ユーザに「提供する環境」が、
本願発明では「通信販売を行なう環境」であるのに対し、
引用発明では「通信販売を行なう環境」とはしていない点

[相違点2]
本願発明では「端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段」を具備しているのに対し、
引用発明はこれを具備しておらず、

画像データを色変換する手段が、
本願発明では、「登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて」とするのに対して、
引用発明では、「モニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、モニタプロファイルを用いて」であって、「登録された」、「登録されている」とはしておらず、

端末に送信する手段が、
本願発明では、「登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段」とするのに対して、
引用発明では、「モニタプロファイルを備える端末に送信する手段」であって、「登録された」とはしていない点

[5]相違点の判断
(1)相違点の克服
<相違点1の克服>
引用発明では、「ネットワークの環境」であるのを、「通信販売を行う環境」にすることで上記相違点1は克服される。

<相違点2の克服>
引用発明では、「ユーザが手動で入力」し、「画像選択情報」に「付随して受信」した「モニタプロファイル(ディスプレイの特性を示す情報)」を用いて、画像データを色変換する」のに代えて、
「端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段」を具備するとし、
引用発明の、
「モニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、モニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」、「色変換をした画像データを、モニタプロファイルを備える端末に送信する手段」を、
「登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」、「色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段」
とすることで、上記相違点2は克服される。

(2)相違点の克服の容易想到性
(a)[相違点1の克服]の容易想到性
<周知事項>
通信販売を行う環境では、色の再現性が重要であり、この為、カラーマッチング処理が必要とされること、すなわち、カラーマッチング処理が必要とされるネットワークの環境として、通信販売を行う環境は、下記周知例3,4のように、よく知られている。

<[相違点1の克服]の容易想到性>
引用発明は、前掲(1.1)に技術分野として「ネットワークを介すること」が記載されており、前掲(K1.2)によれば、「画像データのディジタル化が進むに伴い、ユーザの各家庭においてもディジタル化された画像を(中略)コンピュータディスプレイなどの画像表示手段で鑑賞する機会が増えてきている。(中略)画像出力手段としては、CRT表示装置,液晶表示装置,プラズマディスプレイ装置など、多くの種類がある。(中略)このように多くの種類が存在するが、いずれの出力手段で出力する場合であっても、出力したい画像データに適正なカラーマッチング処理を施し、所望の色再現で出力されることが望まれている。」という課題を克服するためのものである。
つまり、引用発明は、「ネットワーク」の環境において「多くの種類が存在する」「出力手段」で「出力したい画像データに適正なカラーマッチング処理を施し、所望の色再現で出力」するためのものである。
そして、上記周知事項のとおり、カラーマッチング処理が必要とされる「ネットワークの環境」として、「通信販売を行う環境」は周知であり、引用発明が「ネットワークの環境」における「カラーマッチング処理を施」す課題のもとになされたことを鑑みれば、引用発明における「ネットワークの環境」を「通信販売を行う環境」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
すなわち、上記[相違点1の克服]は、周知事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。

記(周知例3,4)
(1)周知例3:特開2001-60082号公報
「【0069】(実施の形態3)図11に、本発明の実施の形態3におけるネットワーク上での電子ショッピングを想定したアプリケーションにおけるネットワーク色再現システムの構成図を示し、以下に説明する。
【0070】本システムの目的とするところは、電子ショッピングのコンテンツである商品カラー画像をユーザ端末側の色再現端末装置上で正しい色にて再現することである。正しい色とは、当該商品をユーザの環境に持ってきた時に再現される色を再現することと定義する。このため、ユーザ端末側の色再現端末装置では、照明・順応補正などの処理も必要になる。」
<周知事項>
上記周知例3には、ネットワーク上での電子ショッピングという環境において、商品カラー画像をユーザ端末側の色再現端末装置上で正しい色にて再現するという目的が記載されており、「電子ショッピング」は、「通信販売」と言い得るものであり、「正しい色にて再現する」ことは「カラーマッチング」と言い得るものであるから、周知例3には、ネットワークの環境としての通信販売を行なう環境において、カラーマッチング処理が必要であることが記載されている。

(2)周知例4:国際公開99/23637号
「近年、DTP(Desk Top Publishing)や、インターネットの浸透に伴って、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイなどのモニタ上において、色彩画像を扱う機会が増加している。
例えば、画具を用いて行われていた作画作業が、パーソナルコンピュータ上において、CG(Computer Graphics)として実行されるようになりつつある。また、インターネットを介して伝送された電子広告をモニタ上に表示させ、電子広告に表示されている商品の画像を参照して売買を行うことなどが考えられる。
このような場合においては、元の画像(作者が作成した画像、あるいは、撮影された画像)と、画像を出力する装置(例えば、モニタやプリンタなど)によって出力された画像の色の見えが一致している必要がある。
例えば、パーソナルコンピュータのモニタ上に表示された画像の色の見えと、プリンタによって出力された画像の色の見えとは、出来るだけ近いことが円滑な作画を行うためには望ましい。
また、パーソナルコンピュータのモニタ上に表示された商品(例えば、洋服や絵画など)の色の見えと、購入した現物の商品の色の見えが異なる場合には、販売側と購入側の間でトラブルが生ずる可能性がある。
従って、個々の画像表示装置の特性に拘らず、同一の色の見えを実現する必要がある。
このような装置間の色の見えの差異を補正する方法としては、例えば、CMS(Color Management System)と呼ばれる色管理システムが知られている。」
<周知事項>
上記周知例4には、インターネットを介して伝送された電子広告をモニタ上に表示させ、表示されている商品の画像を参照して売買を行う環境において、元の画像と画像の出力する装置によって出力された画像の色の見えが一致する必要があることが記載されており、「インターネット」は「ネットワーク」の一つであり、「インターネットを介して伝送された電子広告をモニタ上に表示させ、表示されている商品の画像を参照して売買を行う環境」は、「通信販売を行なう環境」と言い得、「色の見えが一致する」ようにすることは「カラーマッチング処理」と言い得るものであるから、周知例4には、通信販売を行う環境では、色の再現性が重要であり、この為、カラーマッチング処理が必要とされること、すなわち、ネットワークの環境としての、通信販売を行なう環境において、カラーマッチング処理が必要があることが記載されている。

(b)[相違点2の克服]の容易想到性
<刊行物2記載技術>
刊行物2には、前掲(K2.1)?(K2.8)があり、特に、(K2.6)(段落【0037】、【0039】)、(K2.7)及び(K2.8)によれば、
サーバ側で行うクライアントの仕様に合わせた画像の変換処理に必要な、
クライアント(受信側装置)の仕様(表示できる色数などの装置のハード仕様)を前もってサーバ側に登録しておく技術が記載されている。

<[相違点2の克服]の容易想到性>
引用発明では、「色変換処理」(カラーマッチング処理)に必要な「モニタプロファイル」(ディスプレイの特性を示す情報)を取得するのに、「ユーザが出力したい画像を選択した画像選択情報」に、「ユーザが手動で入力した」、「モニタプロファイル」を「付随して受信」する手法を採っていることから、同じユーザが再度、(例えば、異なる画像等の)色変換処理を望む場合にも、ユーザが、再度、「モニタプロファイル」(ディスプレイの特性を示す情報)を手動で入力する必要がある。
すなわち、引用発明では、画像選択の度に「モニタプロファイル」を手動で入力する必要があるところ、
刊行物2には、サーバ側で行う、クライアントの仕様に合わせた画像の変換処理に必要な、クライアント(受信側装置)の仕様(表示できる色数などの装置のハード仕様)を前もってサーバ側に登録しておく手法が示され、この手法によれば、同じ受信側装置ユーザ(操作者)に対する再度の画像データ変換の際には、ユーザの入力が不要であることは明らかであること、
「モニタプロファイル」(ディスプレイの特性を示す情報)も「受信側装置の仕様(表示できる色数などの装置のハード仕様)」であることは明らかであること、
に鑑みれば、
刊行物2に接した当業者は、引用発明における「プロファイル」の取得においても、「ユーザが出力したい画像を選択した画像選択情報」に、「ユーザが手動で入力した」、「モニタプロファイル」を「付随して受信」する手法、に代えて、
<刊行物2記載技術>の手法である、前もって登録しておく手法を採れば、同じユーザからの再度の色変換処理(カラーマッチング処理)を利用する場合、入力の手間等が省けてユーザの便宜に寄与すると考え得るものといえ、
したがって、引用発明においても、「モニタプロファイル」を前もって登録しておく手法を採るように変更することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明を、そのような手法を採るように変更する場合、引用発明でも「ユーザが手動で入力」していたのであるから、「端末の備えるモニタのモニタプロファイルをユーザに登録させる手段」を備えるとすることは、当業者が容易になし得ることである。
また、このときの引用発明の、
「モニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、モニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」、「色変換をした画像データを、モニタプロファイルを備える端末に送信する手段」を、
「登録されたモニタプロファイルを備える端末からのアクセス要求に対して、登録されているモニタプロファイルを用いて、画像データを色変換する手段」、「色変換をした画像データを、登録されたモニタプロファイルを備える端末に送信する手段」
とすることは、上記手法を採ることからごく自然なことに過ぎない。
したがって、上記[相違点2の克服]も、刊行物2記載技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。

[6]まとめ(当審の判断)
以上、引用発明を出発点として、上記[相違点1の克服]、[相違点2の克服]を合わせて行うことで、本願発明の構成に達するところ、これらの克服を合わせて行うことも当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の構成は、上記のとおり、当業者容易想到であるところ、本願発明の効果は、その容易想到である構成から当業者が予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものでもない。

【第5】むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1,2に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶するべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-21 
出願番号 特願2001-296700(P2001-296700)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 直樹  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 梅本 達雄
奥村 元宏
発明の名称 色管理システム及び方法  

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