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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20056282 審決 特許
不服200627219 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J
管理番号 1222793
審判番号 不服2008-5522  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-06 
確定日 2010-09-01 
事件の表示 特願2002- 23844号「輸液製剤用薬液」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 5日出願公開、特開2003-220116号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成14年1月31日の出願であって、平成20年1月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、平成20年4月4日に明細書についての手続補正書がなされたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明は平成20年4月4日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「ビタミンB_(2)及び鉄供給源を含有する輸液製剤用薬液であって、該薬液は輸液製剤に使用前に注入されるものであり、複数の室を備える容器に収容され、第1区画にビタミンB_(2)を含有する薬液が収容され、第2区画に鉄供給源を含有する薬液が収容され、該鉄供給源を含有する薬液は、亜鉛供給源、銅供給源、マンガン供給源又はヨウ素供給源を含有するものである高カロリー輸液、アミノ酸輸液、電解質輸液又は糖類輸液製剤用薬液。」

III.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特表2000-501324号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「1.少なくとも2個のチャンバを規定する内部を含む容器であって:
第1チャンバが脂質を含有する液体を含み;
第2チャンバが脂質を含有しない液体を含み;
該第1および第2チャンバが開口可能なシールで分離されている、容器。」(特許請求の範囲、請求項1)

b.「 潜在的に生活を支える治療法の1つの形態は、総合的な非経口栄養または過栄養である。典型的には、総合的な栄養要求物を患者に提供する非経口栄養溶液は、脂質成分、炭水化物成分、タンパク質成分、ビタミン、および無機物を含む。
多数の安定性および関連する問題のために、総台的な非経口栄養溶液は、使用直前の状態で貯蔵され得ない。よって、使用に先立って溶液を混合することが必要である。」(7ページ欄15行?20行)

c.「本発明は、医療用溶液を貯蔵する容器および方法を提供する。より詳しくは、本発明は、最終溶液を形成するために合わせて混合されるべき成分を貯蔵する容器および方法を提供し、この成分の1種は脂質を含む。」(8ページ1行?3行)


これら記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「医療用溶液であって、医療用溶液は使用に先立って最終溶液を形成するために合わせて混合されるべき成分を有するものであり、少なくとも2個のチャンバを規定する内部を含む容器に貯蔵され、第1チャンバが脂質を含有する液体を含み、 第2チャンバが脂質を含有しない液体を含むものである医療用溶液。」


IV.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「医療用溶液」は、本願発明の「輸液製剤用薬液」及び「薬液」に相当し、同様に、「最終溶液」は「輸液製剤」に、「第1チャンバ」は「第1区画」に、「第2チャンバ」は「第2区画」にそれぞれ相当する。

また、引用発明において「少なくとも2個のチャンバを規定する内部を含む容器に貯蔵され」ることは、本願発明の「複数の室を備える容器に収容され」ることに相当する、

また、引用発明は、「医療用溶液は使用に先立って最終溶液を形成するために合わせて混合されるべき成分を有するもの」であるから、医療用溶液は使用前に最終溶液に注入されるものであるといえ、引用発明は「薬液は輸液製剤に使用前に注入されるもの」であるとの発明特定事項を有するといえる。

さらに、引用発明において、「第1チャンバが脂質を含有する液体を含み、 第2チャンバが脂質を含有しない液体を含む」ことと、本願発明において、「第1区画にビタミンB_(2)を含有する薬液が収容され、第2区画に鉄供給源を含有する薬液が収容され、該鉄供給源を含有する薬液は、亜鉛供給源、銅供給源、マンガン供給源又はヨウ素供給源を含有する」こととは、「第1区画と第2区画とにそれぞれ混合される輸液製剤用薬液が収容される」限りにおいて一致する。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
「輸液製剤用薬液であって、薬液は輸液製剤に使用前に注入されるものであり、複数の室を備える容器に収容され、第1区画と第2区画とにそれぞれ混合される輸液製剤用薬液が収容されるものである輸液製剤用薬液」

そして、両者は次の相違点で相違する。

(相違点)
本願発明は、輸液製剤用薬液がビタミンB_(2)及び鉄供給源を含有する輸液製剤用薬液であって、第1区画にビタミンB_(2)を含有する薬液が収容され、第2区画に鉄供給源を含有する薬液が収容され、該鉄供給源を含有する薬液は、亜鉛供給源、銅供給源、マンガン供給源又はヨウ素供給源を含有するものである高カロリー輸液、アミノ酸輸液、電解質輸液又は糖類輸液製剤用薬液であるのに対して、引用発明は、輸液製剤用薬液であって、第1チャンバが脂質を含有する液体を含み、 第2チャンバが脂質を含有しない液体を含むものである点。

V.相違点の判断
上記相違点について検討する。
使用するまで分離して保存し、使用にあたって混合される2種以上の薬液からなる輸液製剤用薬液として、ビタミンB_(2)及び鉄供給源を含有し、ビタミンB_(2)を含有する薬液と鉄供給源を含有する薬液とを分離して保存し、鉄供給源として、亜鉛やヨウ素等を含有する電解質輸液等を用いるものは本願出願前に周知のもの(例えば、特開平8-709号公報(段落【0012】?【0015】)、特開平10-203959号公報(段落【0011】、【0015】、【0034】)等参照。)であり、引用発明において、保存する薬液として前記周知のものを第1区画、第2区画にそれぞれ収容し、相違点にかかる本願発明の発明特定事項とすることは当業者にとって容易になし得ることである。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成21年12月25日付けの審尋に対する回答書において、「一 般に、高カロリー輸液用糖・電解質・アミノ酸液は、1日の投与量が約1kgの輸液バッグ2個の場合が多く、比較的重量があるものです(明細書[0003]段落参照)。つまり、約1kgの輸液バック1個が半日量ということになります。一方、このような輸液に混入するための本願発明の高カロリー輸液、アミノ酸輸液、電解質輸液又は糖類輸液製剤用薬液におけるビタミン剤を含有する薬液の量としては1?5mLが好ましいとされており(明細書[0019]段落参照)、比較的小容量であるので、この中のビタミンは高濃度で存在することになります。
例えば、審尋中に周知文献として引用された特開平10-203959号公報の[0022]段落には、『これらの水溶性ビタミンの配合量は、例えばAMA(American Medical Association)提示の1日所要量に基づき、必要量が投与できるように決定される。』と記載されていますが、AMAガイドラインによるビタミンB_(2)必要量は、3.6mg/日ですから、半日量は1.8mgになります。この半日量を上記した本願発明のビタミン剤を含有する薬液量の最大値である5mLに溶解して投与すると仮定すると、1.8mg/5mLですから、360mg/Lになります。これは、想定される最も低濃度ですから、本願発明の高カロリー輸液、アミノ酸輸液、電解質輸液又は糖類輸液製剤用薬液におけるビタミンB_(2)の濃度は、360mg/L以上ということになります。
そして、上記したビタミンB_(2)を含むビタミン剤と鉄供給源を含む微量元素製剤を混合した薬液における品質劣化を防止するという課題は、このような高濃度のビタミンB_(2)を使用する場合に初めて生じるということができます。
(4)一方、審尋中で周知技術として引用された特開平8-709号公報と特開 平10-203959号公報におけるビタミンB_(2)の濃度は、前者で1?20mg/L(公報[0013]段落、実施例では7.5mg/L)、後者で溶液Bに1?10mg配合する程度(公報[0015]段落、実施例では23mg/L及び15.33mg/L)であり、本願発明の高カロリー輸液、アミノ酸輸液、電解質輸液又は糖類輸液製剤用薬液におけるビタミンB_(2)の濃度に比べて、桁違いに低濃度であるといえます。そして、このような低濃度のビタミンB_(2)の濃度の輸液には、鉄供給源を含む微量元素製剤を混合した薬液における品質劣化の防止を解決するという課題が存在しているとはいえません。すなわち、両公報程度の濃度では、混合すれば沈殿を起こすということはできません。
したがって、鉄供給源を含む微量元素をどこに配合するかについては、いずれの文献も特に問題にしておらず、特開平8-709号公報([0015]段落)でも特開平10-203959号公報([0034]段落)でも、単に任意に配合できる成分として記載されているだけです。
いずれの文献も、ビタミンB_(2)と亜鉛供給源、銅供給源、マンガン供給源又はヨウ素供給源を含有する鉄供給源が混在しないように輸液本体とは別に複数の室を備える容器に収容したことによって、保存時及び高カロリー輸液、アミノ酸輸液、電解質輸液、糖類輸液バッグ内への混合時に、析出物の生成のような異種の薬液間の品質劣化の原因となる相互作用を排除できるという本願発明の技術思想を記載も示唆もするものでないことは明らかです。」と、本願の明細書に記載された発明と周知技術について、濃度の差を根拠として、差異を主張しているが、本願の請求項においては、濃度について何ら限定しておらず、かつ請求項の記載自体不明であると言うこともできないから、濃度の差に関連する請求人の前記主張を採用することはできない。


VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-15 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-12 
出願番号 特願2002-23844(P2002-23844)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久郷 明義  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 豊永 茂弘
岩田 洋一
発明の名称 輸液製剤用薬液  
代理人 結田 純次  
代理人 三輪 昭次  
代理人 竹林 則幸  
代理人 高木 千嘉  
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