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審決分類 |
審判 一部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正 E02D 審判 一部無効 2項進歩性 E02D |
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管理番号 | 1223213 |
審判番号 | 無効2006-80193 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-09-29 |
確定日 | 2010-08-23 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2814356号「杭埋込装置及び基礎用杭の埋込方法」の特許無効審判事件についてされた平成21年4月15日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10133号,平成22年3月3日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2814356号の請求項1,2に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 手続の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成 7年 2月 3日 特許出願(特願平7-39091号) 平成10年 8月14日 特許権の設定登録(特許第2814356号) 平成18年 9月29日 本件無効審判請求(請求項1及び2に対して) 平成18年12月14日 被請求人:答弁書提出 平成19年 4月28日 請求人:上申書提出 平成19年 6月 5日 1回目審決(請求不成立) 平成19年 7月12日 請求人:知的財産高等裁判所出訴 (平成19年(行ケ)第10255号) 平成20年 2月27日 審決取消しの判決言渡 平成20年 4月 1日 被請求人:訂正請求書提出 平成20年 4月16日 請求人:弁駁書提出 平成20年 6月 6日 被請求人:上申書提出 平成20年 6月12日 2回目審決(請求成立) 平成20年 7月17日 被請求人:知的財産高等裁判所出訴 (平成20年(行ケ)第10269号) 平成20年 9月10日 審決取消しの決定 平成20年10月15日 被請求人:訂正請求書提出 平成20年12月10日 請求人:弁駁書提出 平成21年 2月17日 被請求人:答弁書提出 平成21年 4月15日 3回目審決(請求不成立) 平成21年 5月21日 請求人:知的財産高等裁判所出訴 (平成21年(行ケ)第10133号) 平成22年 3月 3日 審決取消しの判決言渡 第2 当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は,本件特許第2814356号の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明の特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,証拠方法として甲第1号証乃至甲第12号証を提出し,以下のように主張している。 (1)本件特許の請求項1及び2に係る発明は,本件出願前に頒布された甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をできたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 (2)訂正請求書による訂正について 平成20年10月15日付け訂正請求書による訂正によって,訂正後の請求項1及び2に係る発明には,振動装置が台板の上部に設けられること,嵌合部が台板の下面に設けられることが含まれることになるが,これらの事項は,実質上,振動装置と嵌合部との間に介在する台板を新たな構成要素として請求項1に追加する,いわゆる外部付加に相当するものである。 さらに,その新たな構成要素である「台板」について,たまたま図面に描かれていた,台板が四角形であること,台板の四辺が円筒状の嵌合部よりも張り出すこと,及び,そのうち油圧ショベル系掘削機側の辺が振動装置の油圧モーターの端よりも油圧ショベル系掘削機側にあることを特定し,杭の上部が嵌合部にうまく嵌合しない場合に当該嵌合部から張り出した台板が盾となって当該杭が油圧モータに当たるのを防ぐことができるという,本件特許明細書には全く記載のない新たな作用効果を主張している。 したがって,本件訂正は,特許請求の範囲を実質上変更するものであって特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条の2第4項の規定に反するものである。 (3)本件訂正後の請求項に係る発明について 仮に,本件訂正が適法であるとしても,本件訂正明細書の請求項1及び2に係る発明は,甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明,並びに,甲第5号証乃至12号証に記載された周知の技術により,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 そして,証拠方法は,以下のとおりである。 《審判請求書で提示》 甲第1号証:実願昭52-4483号(実開昭53-100709号) の公開公報及びマイクロフィルム 甲第2号証:ベレックス株式会社の製品パンフレット 「SBシリーズ オーガー」 甲第3号証:実願昭53-172557号(実開昭55-88442号) のマイクロフィルム 甲第4号証:特開平4-120313号公報 甲第5号証:日本建設機械要覧 1986 (社團法人日本建設機械化協会編) 甲第6号証:ベレックス株式会社の証明書 甲第7号証-1:甲第2号証の穿孔装置の説明図 甲第7号証-2:甲第2号証の支持アーム部分の説明図 《平成20年4月16日付け弁駁書で提示》 甲第8号証:実願昭61-78127号(実開昭62-190735号) のマイクロフィルム 甲第9号証:実願昭57-154675号(実開昭59-61336号) のマイクロフィルム 甲第10号証:実願平4-89376号(実開平6-56143号) のCD-ROM 甲第11号証:特開平4-277217号公報 《平成20年12月10日付け弁駁書で提示》 甲第12号証:実願昭60-24561号 (実開昭61-141344号)のマイクロフィルム 2.被請求人の主張 被請求人は,本件特許第2814356号の明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明を平成20年10月15日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載したとおりに訂正することを求めるとともに,乙第1号証の1乃至乙第11号証を提出して,本件訂正によって本件発明1及び2は審判請求人が提出した証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,請求人の主張する無効理由によって本件発明1及び2に係る特許を無効とすることはできず,審判の請求は成り立たない,審判費用は,請求人の負担とする,との審決を求めている。 そして,証拠方法は,以下のとおりである。 《平成18年12月14日付け答弁書で提示》 乙第1号証の1?3:「土木工法事典 改訂V」産業調査会 事典出版センター発行 乙第2号証の1?3:「第3版 道路用語辞典」丸善株式会社発行 乙第3号証の1?3:「図解 一般土木用語事典」株式会社山海堂発行 乙第4号証:「世界大百科事典」株式会社日立デジタル平凡社発行 乙第5号証の1?5:「広辞苑」第五版,株式会社岩波書店発行 乙第6号証の1?3:「特許技術用語集-第2版-」日刊工業新聞社発行 乙第7号証の1?3:「油圧ショベル装着式バイブロハンマ ブレーカ共用配管タイプ LHV-025 LHV-04L LHV-04B LHV-07L LHV-07B LHV-09II 取扱説明書・仕様書」 調和工業株式会社 《平成20年6月6日付け上申書で提示》 乙第8号証:特開平9-209359号公報 乙第9号証の1:平成18年(ワ)第7010号損害賠償請求事件 「証拠説明書」 乙第9号証の2:乙第9号証の1の証拠説明書における乙第9号証 《平成21年2月17日付け答弁書で提示》 乙第10号証:「起振機」の写真 乙第11号証:「杭打込作業を行う3号機」の写真 第3 訂正の適否 1.訂正の内容 平成20年10月15日付けの訂正請求は,本件特許第2814356号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであり(以下,同訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。),その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項ア 特許請求の範囲の請求項1を,次のとおりに訂正する。 「基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって, 油圧式ショベル系掘削機(9)と, 当該油圧式ショベル系掘削機(9)のアーム先端部に取り付けてあり,四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する埋込用アタッチメント(A)と, 当該埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる穿孔装置(4)と, を備えており, 上記四角形の台板(14)の四辺は,上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており, 上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり, 上記穿孔装置(4)は, 油圧モーター(43)と, 当該油圧モーター(43)により回転駆動される穿孔ロッド(44)と, を備えており, 上記穿孔装置(4)と上記嵌合部(15)は,穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする, 杭埋込装置。」 (2)訂正事項イ 特許請求の範囲の請求項2を,次のとおりに訂正する。 「基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって, 油圧式ショベル系掘削機(9)と, 当該油圧式ショベル系掘削機(9)のアーム先端部に取り付けてあり,四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する埋込用アタッチメント(A)と, 当該埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)にピン(34)を介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる穿孔装置(4)と, を備えており, 上記四角形の台板(14)の四辺は,上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており, 上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり, 上記穿孔装置(4)は, 油圧モーター(43)と, 当該油圧モーター(43)により回転駆動される穿孔ロッド(44)と, を備えており, 上記穿孔装置(4)と上記嵌合部(15)は,穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする, 杭埋込装置。」 (3)訂正事項ウ 特許明細書段落【0006】の記載「基礎用杭を・・・杭埋込装置である。」(特許公報2頁4欄23?33行)を,次のように訂正する。 「基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって, 油圧式ショベル系掘削機と, 当該油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付けてあり,四角形の台板の上部に設けられており油圧モーターを有する振動装置と杭上部に被せるために当該台板の下面に設けられている円筒状の嵌合部を有する埋込用アタッチメントと, 当該埋込用アタッチメントの上記嵌合部の側部に設けられている相対向するピン孔に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる穿孔装置と, を備えており, 上記四角形の台板の四辺は,上記円筒状の嵌合部よりも張り出しており, 上記台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺は,油圧式ショベル系掘削機側にある上記振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあり, 上記穿孔装置は, 油圧モーターと, 当該油圧モーターにより回転駆動される穿孔ロッドと, を備えており, 上記穿孔装置と上記嵌合部は,穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする, 杭埋込装置。」 (4)訂正事項エ 特許明細書段落【0007】の記載「基礎用杭を・・・杭埋込装置である。」(特許公報2頁4欄34?45行)を,次のように訂正する。 「基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって, 油圧式ショベル系掘削機と, 当該油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付けてあり,四角形の台板の上部に設けられており油圧モーターを有する振動装置と杭上部に被せるために当該台板の下面に設けられている円筒状の嵌合部を有する埋込用アタッチメントと, 当該埋込用アタッチメントの上記嵌合部の側部に設けられている相対向するピン孔にピンを介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる穿孔装置と, を備えており, 上記四角形の台板の四辺は,上記円筒状の嵌合部よりも張り出しており, 上記台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺は,油圧式ショベル系掘削機側にある上記振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあり, 上記穿孔装置は, 油圧モーターと, 当該油圧モーターにより回転駆動される穿孔ロッドと, を備えており, 上記穿孔装置と上記嵌合部は,穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする, 杭埋込装置である。」 (5)訂正事項オ 特許明細書段落【0017】(特許公報3頁6欄40行)の「油圧モーター21」を,「油圧モーター43」と訂正する。 2.訂正の目的の適否について (1)訂正事項アについて 訂正事項アのうち,「埋込用アタッチメント(A)」について,訂正前の請求項1の「振動装置(2)と杭上部に被せるための嵌合部(15)を有する」を「四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する」とする訂正,及び,「上記四角形の台板(14)の四辺は,上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており,上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり」という構成を付加する訂正は,「埋込用アタッチメント(A)」の全体の構成,及び,この「埋込用アタッチメント(A)」が有する「振動装置(2)」,「嵌合部(15)」及び「台板(14)」の構成を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,訂正前の請求項1の「嵌合部(15)に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる」を「嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる」とする訂正は,「嵌合部(15)」に対して「穿孔装置(4)」を取り付けるための構成を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 さらに,「油圧ショベル系掘削機(9),」を「油圧式ショベル系掘削機(9)と,」とする訂正,及び,「油圧モーター(21)」を「油圧モーター(43)」とする訂正は,明らかに誤記の訂正を目的とするものである。 (2)訂正事項イについて 訂正事項イのうち,「埋込用アタッチメント(A)」について,訂正前の請求項2の「振動装置(2)と杭上部に被せるための嵌合部(15)を有する」を「四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する」とする訂正,及び,「上記四角形の台板(14)の四辺は,上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており,上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり」という構成を付加する訂正は,「埋込用アタッチメント(A)」の全体の構成,及び,この「埋込用アタッチメント(A)」が有する「振動装置(2)」,「嵌合部(15)」及び「台板(14)」の構成を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,訂正前の請求項2の「嵌合部(15)にピン(34)を介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる」を「嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)にピン(34)を介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる」とする訂正は,「嵌合部(15)」に対して「穿孔装置(4)」を取り付けるための構成を限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 さらに,「油圧モーター(21)」を「油圧モーター(43)」とする訂正は,明らかに誤記の訂正を目的とするものである。 (3)訂正事項ウ,エについて 訂正事項ウ及びエは,上記訂正事項ア及びイによる特許請求の範囲の訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (4)訂正事項オについて 訂正事項オは,明らかに誤記の訂正を目的とするものである。 3.新規事項の追加の有無について (1)訂正事項ア,イについて 訂正事項ア及びイが新規事項の追加に当たるか否かを検討するにあたり, そのうち,「四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する」とする訂正, 「上記四角形の台板(14)の四辺は,上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており,」という構成を付加する訂正, 並びに,「嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる」(訂正事項ア)及び「嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)にピン(34)を介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる」(訂正事項イ)とする訂正を,訂正事項Aとし, 「上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり」という構成を付加する訂正を訂正事項Bとして,以下検討する。 なお,以下,本件特許出願に係る明細書及び図面を,それぞれ「本件明細書」及び「本件図面」という。 (1a)本件明細書及び図面の記載 本件明細書には,実施例として,次の記載がある。 「【0013】埋込用アタッチメントAはフレーム1を備えている。フレーム1の上面板11の上部には,アーム91の先端部に取り付けるためのブラケット12,12が設けてある。ブラケット12,12には各々ピン挿着孔13,13が設けてある。フレーム1の下部には四角形の台板14が設けてある。台板14の上部には振動装置2が設けてある。振動装置2は,油圧モーター21によっておもりを回転させて振動させる一般的な構造のものである。 【0014】台板14の下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部15が設けてある。嵌合部15の側部には直径線上に相対向してピン孔16,16が設けてある。嵌合部15には,自在継手を構成する中継部材31が取り付けてある。中継部材31は,ほぼY状で,上端部には円筒状の挿通管32,32が設けてある。中継部材31の下端部にはボルト孔33が設けてある。中継部材31は,ピン孔16と挿通管32を合わせ,ピン34を挿通し,これをボルト35とナット36で一方の挿通管32に固定して取り付けてある。」 また,本件特許出願の願書には,本件図面として,本発明に係る杭埋込装置の一実施例を示す説明図である図1,埋込用アタッチメントの要部分解斜視図である図2,ガイド孔を穿孔している状態を示す説明図である図3及び杭を埋め込んでいる状態を示す説明図である図4が添付されている。 図2において,「台板」は埋込用アタッチメントの一部を構成する四角形の板状部材であって,その上部にフレーム及び振動装置を固定し,その下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部が設けてあるものとして記載されている。 また,図1ないし4の振動装置はその油圧式ショベル系掘削機側に油圧モーターを備えているものであり,図2における台板下面の嵌合部の側部には相対向するピン孔が設けられているものであるほか,図2の台板の四辺は円筒形状の嵌合部よりも張り出したものとして記載されている。 他方,図1ないし4において,台板は振動装置の油圧モーターが存在する油圧式ショベル系掘削機側に張り出しているが,振動装置の油圧モーターの油圧式ショベル系掘削機側の端は,台板とは別の部材である三角柱の3つの側面のうちの1つの面を開放状態としたような形状の部材によってカバーされている。 (1b)訂正事項Aについて 訂正事項Aは,上記(1a)に示した記載に基づくものであって,本件明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 (1c)訂正事項Bについて i)本件明細書及び図面において開示されている「台板」等の構成 本件明細書において「台板」について定義する記載は存在しないところ,「台」とは「物や人をのせる平たいもの。」(広辞苑第5版1590頁)であることからすると,本件明細書に記載され,本件訂正に係る訂正事項に含まれる「台板」とは,「物をのせる板状の部材」を意味するものと解釈すべきであり,本件明細書の記載に即して具体的に解釈すると,振動装置を載せる板状の部材のことであると理解することができる。 また,上記(1a)によると,本件明細書における「台板」の構成は,埋込用アタッチメントの一部を構成する四角形の板状部材であって,その上部にフレーム及び振動装置を固定し,その下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部が設けてあるものとして記載されているということができるが,本件図面における振動装置の油圧モーターの油圧式ショベル系掘削機側の端は,台板とは別の部材である三角柱の3つの側面のうちの1つの面を開放状態としたような形状の部材によってカバーされており,同図面上は同油圧モーターの端がどこに位置するのかを確認することはできないから,台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺が,油圧式ショベル系掘削機側にある振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあることについて,本件明細書又は本件図面に直接的に記載されているとまで認めることはできない。 もっとも,訂正が,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は,明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができるので,訂正事項Bが,本件明細書及び図面の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものかどうかを判断するに当たっては,この種の杭埋込装置における前記説示した意味での台板の存在及び形状についての当業者の認識を踏まえる必要がある(平成21年(行ケ)第10133号判決書(以下「判決書2」という。)12頁23行?13頁24行参照。)。 ii)本件特許出願時における「台板」についての当業者の認識 例えば,下記a)?g)の本件特許出願前に公刊された各文献の記載事項を参酌するに,本件特許出願時の当業者の認識に関して,以下のようにいうことができる。 従来から,油圧ショベル系掘削機のアームの先端に振動装置付きのアタッチメントを取り付け,同アタッチメントの下部のチャック装置によって杭を把持して杭の打抜行為を行う技術,及び,チャック装置の代わりに杭上端に被せる筒状のキャップを備えた杭打機を含む関連技術が開発されてきた。 そして,このような油圧ショベル系掘削機を利用した杭埋込装置においては,振動装置と杭を保持するチャック装置や杭上端に被せるキャップの間には板状の部材が介在しているものが複数存在し,同板状の部材の形状としては四角形のものが複数知られていた。 また,このような四角形の板状の部材は,その上部に配置される振動装置を収める程度の大きさを有するのが一般であるとともに,チャック装置や杭上部に被せる筒状のキャップよりも張り出し,これらの嵌合部は台板下部の概ね中央部に配置されるのが一般であった。 さらに,上記のような四角形の板状の部材の上部に振動装置を備えるとともに,同四角形の板状の部材の大きさを油圧モーターを含む同振動装置を収める程度のものとし,その下部に杭を把持するチャック装置を備えた油圧ショベル系掘削機を利用した杭打抜機は,本件特許出願前から製造・販売され,杭打や杭抜が必要となる作業現場において利用されていたものと認められ,その中にはエクステンションアーム側に油圧モーターが配置されたものも含まれていたことが認められる(判決書2の21頁13行?22頁9行参照。)。 a)特開平4-120313号公報(甲第4号証) b)「日本建設機械要覧1986」,(社)日本建設機械化協会, 昭和61年3月15日(甲第5号証) c)実願昭61-78127号(実開昭62-190735号) のマイクロフィルム(甲第8号証) d)実願昭60-24561号(実開昭61-141344号) のマイクロフィルム(甲第12号証) e)特開平6-294124号公報 f)実願昭55-105312号(実開昭57-31344号) のマイクロフィルム g)「1992年版日本建設機械要覧」,(社)日本建設機械化協会, 平成4年2月26日 iii)訂正事項Bについてのまとめ 以上によると,本件特許出願時における当業者にとって,油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付ける埋込用アタッチメントとして,四角形の台板の上部に振動装置を備えるとともに,その下部略中央部に杭との嵌合部を備えるものはよく知られており,振動装置,四角形の台板及び嵌合部相互の関係については,四角形の台板を油圧モーターを含む振動装置が納まる程度の大きさとし,振動装置が隠れるように配置する構成のものが知られ,作業現場において長年にわたって使用されてきたものとして周知であったということができる。 そうすると,訂正事項Bは,本件特許出願時において既に存在した「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という基本的な構成を前提として,「振動装置の油圧モーターが油圧式ショベル系掘削機側にある」という当業者に周知の構成のうちの1つを特定するとともに,「台板」と「振動装置」の関係について,同様に当業者に周知の構成のうちの1つである「四角形の台板の上に油圧モーターが隠れるように振動装置を配置するという構成」に限定するものである。 そして,上記a)?g)に示された技術状況に照らすと,上記周知の各構成はいずれも設計的事項に類するものであるということができる。 したがって,本件明細書及び図面に接した当業者は,当該図面の記載が必ずしも明確でないとしても,そのような周知の構成を備えた台板が記載されていると認識することができたものというべきであるから,訂正事項Bは,特許請求の範囲に記載された発明の特定の部材の構成について,設計的事項に類する当業者に周知のいくつかの構成のうちの1つに限定するにすぎないものであり,この程度の限定を加えることについて,新たな技術的事項を導入するものとまで評価することはできないから,訂正事項Bは本件明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである(判決書2の22頁11行?23頁10行参照。)。 (2)訂正事項ウ,エについて 上記(1)で検討したものと同様の理由により,訂正事項ウ及びエは本件明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 4.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更について 本件訂正は,誤記を訂正し,穿孔装置の油圧モーターの番号を加えて明確にするとともに,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び2の杭埋込装置について,特定の構成の台板を備え,かつ,嵌合部に特定のピン孔を備えるものに限定することを内容とするものであるから,本件訂正後の特許請求の範囲は同訂正前のものに比べて減縮したものとなることは明らかである。 したがって,本件訂正によって,実質上特許請求の範囲が拡張又は変更されることになるということはできない(判決書2の11頁11?18行参照。)。 5.訂正の適否のまとめ 以上より,本件訂正は,平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法第1条の規定による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)第134条第2項ただし書きの規定に適合し,特許法第134条の2の規定において準用する改正前特許法第126条第2項の規定に適合するから,本件訂正を認める。 第4 本件発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明は,上記のとおり訂正請求が認められたことから,平成20年10月15日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって, 油圧式ショベル系掘削機(9)と, 当該油圧式ショベル系掘削機(9)のアーム先端部に取り付けてあり,四角形の台板(1)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する埋込用アタッチメント(A)と, 当該埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる穿孔装置(4)と, を備えており, 上記四角形の台板(14)の四辺は,上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており, 上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり, 上記穿孔装置(4)は, 油圧モーター(43)と, 当該油圧モーター(43)により回転駆動される穿孔ロッド(44)と, を備えており, 上記穿孔装置(4)と上記嵌合部(15)は,穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする, 杭埋込装置。」(以下,「本件発明1」という。) 「基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって, 油圧式ショベル系掘削機(9)と, 当該油圧式ショベル系掘削機(9)のアーム先端部に取り付けてあり,四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する埋込用アタッチメント(A)と, 当該埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)にピン(34)を介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる穿孔装置(4)と, を備えており, 上記四角形の台板(14)の四辺は,上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており, 上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は,油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり, 上記穿孔装置(4)は, 油圧モーター(43)と, 当該油圧モーター(43)により回転駆動される穿孔ロッド(44)と, を備えており, 上記穿孔装置(4)と上記嵌合部(15)は,穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする, 杭埋込装置。」(以下,「本件発明2」という。) 第5 甲号各証の記載内容 1.甲第1号証:実願昭52-4483号(実開昭53-100709号) の公開公報及びマイクロフィルム) 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第1号証には,以下の記載事項がある。 (1a)「杭打込みに必要な動力を杭に付与する装置と,この装置に併設した杭保持用のチヤツクとを有する杭打込み装置を取付けた基台をリーダーに進退自在に支持して杭の打込みをする杭打機において,前記チヤツクに,上部に杭的形状をなす嵌挿部材を取付けたアースオーガを着脱可能としたことを特徴とする杭打機。」(明細書1頁「実用新案登録請求の範囲」) (1b)「図面において1はクレーン,2はクレーンのリーダー,3は吊ワイヤー,この吊ワイヤー3には緩衝装置4を介して,杭打込み装置5を取付けた基台6をリーダー2に進退自在に支持している。 前記基台6は,第2図に示すようにリーダー2のレール2a上を,基台6に4個あて枢支したローラー7でもつて挟着し,はずれないようにして支持されている。 この基台6上には,杭打込み装置5が取付金具8を介して第3図,第4図に示すように取付けられ,この杭打込み装置5は,杭保持用のチヤツク9と,杭打込に必要な動力を杭に付与する装置としてのたとえば起振装置10とからなり,杭保持用のチヤツク9の開閉動作はチヤツク9内側に装備した,たとえば油圧シリンダ11で行わせている。起振装置10は前記チヤツク9の上部にボルトなどの接合手段で強固に取付けられ,この起振装置10の上部に設けた駆動モータ12から回転動力を受けて,装置10内に内蔵された1対の偏心体10aを相対的方向に回転させて,垂直振動のみを誘起し得る構造を有している。」(同書4頁3行?5頁3行) (1c)「また前記杭保持用チヤツク9の下部には,アースオーガ13が嵌挿され,このオーガ13は,回転モータ14を内蔵し,前記チヤツク9に嵌挿する嵌挿部材15を上部に取付けたフレーム本体16と,下部には前記回転モータ14から延長して延びる地盤Eを掘削するオーガ刃17が取付けられている。オーガ13と,チヤツク9の嵌挿であるが,チヤツク9は目的に応じて杭を装着するので,オーガ13の上部の嵌挿部材15は,このチヤツクに装着する杭と同じ形状,もしくは杭と同様の形状を有し,チヤツク9内の油圧シリンダ11でもつて強固に固定するようにし,さらにオーガ13の上部両端部に油圧等で作動する係合装置18を設け,より確実に一体化が図れるようにし,オーガ13は前記チヤツク9の油圧シリンダ11と係合装置18をはずすことによつて離脱するようになつており,これにより杭打込み装置5と,アースオーガ13は着脱可能である。」(同書5頁4?20行) (1d)「このように構成された杭打機にあつては,杭を地盤Eに打込むには,市街地などの騒音規制区域の時は杭打込み装置5にアースオーガ13を装着したままリーダー2を真直に立て上げオーガ13の回転モータ14を回動し,オーガ刃17を回動させ地盤Eを掘削して穴をあける。その穴に杭を挿入し掘削した土砂を杭と穴の間に入れ込み杭の打込みをする。なおこの場合連続して杭を全部打込んで最後に,杭打込み装置5のチヤツク9の油圧シリンダ11をゆるめ,かつ係合装置18をはずしアースオーガ13をとりはずし,チヤツク9で先に地盤中に打込んだ杭の頭を装着し,杭に支持力をもたせるために短時間杭打込み装置5の起振装置10を作動させ杭の打止めを行う。」(同書6頁1?14行) (1e)「以上の説明から明らかなように,本考案によれば杭打込みに必要な動力を杭に付与する装置と,この装置に併設した杭保持用のチヤツクとを有する杭打込み装置を取付けた基台をリーダーに進退自在に支持して杭の打込みをする杭打機において,前記チヤツクに,上部に杭的形状をなす嵌挿部材を取付けたアースオーガを着脱可能としていることから,従来騒音,振動規制区域内か外かにより使用機械を選択したり,土質に応じて同様に使用機械を選択していたのをアースオーガの着脱により自由に選択でき場所を考慮する必要がなく,また種々の杭の打込み手段をとることができ,さらに構造が簡単で安価にすることができるなど実用上優れた効果がある。」(同書7頁6行?末行) (1f)「4.図面の簡単な説明 第1図は全体の関係を示す概略図,第2図は要部拡大断面図,第3図は他の要部拡大断面図,第4図は第3図の側面を示す要部拡大断面図である。」(同書8頁1?5行) 上記の記載事項(1a)?(1f)及び図面からみて,甲第1号証には,以下の発明が記載されていると認められる。 「杭の打込みをする杭打機であって, クレーン1と, クレーン1のリーダー2に進退自在に支持された基台6に取付けてあり,駆動モータ12を有する起振装置10と杭保持用のチャック9とからなり,起振装置10は杭保持用のチャック9の上部にボルトなどの接合手段で強固に取付けられた杭打込み装置5と, 杭打込み装置5の杭保持用のチャック9に,上部に取付けた杭的形状をなす嵌挿部材15を嵌挿して同チャック9内の油圧シリンダ11によって着脱可能に取り付けられるアースオーガ13と, を備えており, 上記アースオーガ13は, 回転モータ14と, 回転モータ14により回動されるオーガ刃17と, を備えており, 上記アースオーガ13と上記チャック9は,穴あけ作業時と杭の打込み作業時において選択して使用できるようにした杭打機。」(以下,「甲1発明」という。) 2.甲第2号証:ベレックス株式会社の製品パンフレット 甲第7号証-1:甲第2号証の穿孔装置の説明図 甲第7号証-2:甲第2号証の支持アーム部分の説明図 甲第2号証には,以下の記載事項がある。 (2a)「立穴掘削機 サンワ油圧オーガー」(1頁(表紙)) (2b)「SBシリーズ オーガー・・・ 1.油圧モーターと効率のよい減速機の組合せで強力な掘削トルクが得られます。 ・・・ 3.左右,前後のスイング機構でオーガーの曲がりなどの損傷が少なく,又,傾斜地に於いては重力方向へ掘削できます。 ・・・」(3頁) (2c)「ベレックス株式会社 本社 大阪市平野区平野東4丁目5番10号 〒547-0043 TEL.06-6792-6541 FAX.06-6792-6548」(4頁(裏表紙)), (2d)3頁中央拡大写真には,上端部に左右,前後の自在継手を備えるオーガーが示されており,2頁右列下写真(SB-120),同中列中写真(SB-250),同中列下写真(SB-250),3頁左列上写真(SB-250)には,油圧式ショベル系掘削機のアームの先端部にピン状の部材により上記自在継手を介してオーガが取り付けられていることが示されている。 3.甲第3号証:実願昭53-172557号 (実開昭55-88442号)のマイクロフィルム) 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証には,以下の記載事項がある。 (3a)「本考案は,杭打装置に関する。」(明細書1頁10行) (3b)「走行体(車輪式,クローラー式など)に搭載した油圧装置によつて操作されるアームの先端に,ビルや補装路面を衝撃破壊する油圧ブレーカーをとりつけたものや,またアームの先端に掘削用のシヨベル機構をとりつけたものが夫々単独の専用機として実用に供されているし,またこれら油圧ブレーカー及びシヨベル機構をアームに対して着脱交換可能となしたものも実用に供されている。 本考案は上述した油圧ブレーカーが衝打作用を有することに着目し,この衝打作用を利用して山留用の鋼矢板,コンクリート矢板や松杭の打設を行わせ,土木建設工事における打杭作業を従来の装置に加えることにより作業性の向上と設備の軽減化を計らんとするものである」(同書1頁11行?2頁9行) (3c)「図面について実施例の詳細を説明すると,(A)は駆動装置,油圧装置,操舵装置などを搭載した走行体で,該走行体(A)には上記油圧装置によつて自由に操作される屈伸アーム(1)がとりつけられており,この屈伸アーム(1)の先端には公知の油圧ブレーカー(2)が装着してある。 この油圧ブレーカー(2)には軸杆(3)が着脱自在にとりつけてあり,更にこの軸杆(3)の先端にはハンマー部材(4)が着脱並に交換可能に設けられている。 軸杆(3)に対するハンマー部材(4)の装着構造は,第5,6図などより明らかな如く,軸杆(3)の先端部全周に径小の凹溝部(5)が設けてあり,この軸杆(3)に被嵌したハンマー部材(4)の円筒部(6)に直交的に挿通した左右2本のピン(7)が夫々該円筒部(6)の内面と上記凹溝部(5)との間に形成された空隙部を貫通するように配設せしめられ,この2本のピン(7)によつて軸杆(3)とハンマー部材(4)とを抜け止め連結し,併せて軸杆(3)に対してハンマー部材(4)が回動できるように構成されている。 該ハンマー部材(4)は第3図,第5図,第7図などから明らかなように,鋼矢板(8)(またはコンクリート矢板)の上端に嵌合する溝部(9)が形成したものや,第4図に示すように松杭(10)の上端に被嵌される筒状部(11)を形成したものなどがあり,打設する対象物によつて形状及び機能の変化したものが用いられるため,打設対象物に対応するハンマー部材(4)の形状は実施例のものに特定されるものではない。」(同書2頁10行?4頁7行) (3d)「本考案は上述のように構成したので,油圧ブレーカーにハンマー部材を装備した軸杆をとりつけ油圧ブレーカーの衝打作用と走行体,アーム,油圧ブレーカーなどの総合荷重を利用してハンマー部材により山留用鋼矢板,コンクリート矢板,松杭などを容易に打設することができる。 而もこのハンマー部材は軸杆に対して回動自在であることから被打設物に対する走行体の位置決めも任意であつて,作業場の状況に応じて対処し得られる。 また先端にハンマー部材を装着した軸杆は従来の油圧ブレーカーのチゼルと交換して使用することができ,従つて油圧ブレーカー1機でチゼルによる破壊作業とハンマー部材による鋼矢板などの打設作業がなしうることから油圧ブレーカーを多目的作業機として利用でき,作業性の向上は勿論のこと設備の軽減も計りうるなど経済的,実用的効果大である。」(同書4頁13行?5頁末行)。 4.甲第4号証:特開平4-120313号公報 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第4号証には,以下の記載事項がある。 (4a)「【産業上の利用分野】 本発明は,アームの先端に取付軸を介してバイブロハンマやオーガ回転駆動機等の作業用アタッチメントを取付け,かつウインチからのワイヤをアームの先端よりガイドシーブを介して垂下するようにしたアーム式作業機に関する。」(段落【0001】) (4b)「【従来の技術】 この種の従来のアーム式作業機として,例えば図8に示すようなものが知られている。 これは油圧ショベルをベースマシンとした杭打機を示し,油圧ショベル本体1には,ブーム(第1アーム)2a,アーム2bおよびエクステンションアーム2c(これらが第2アームを構成する)が順に連結され,これらは油圧シリンダ7a?7cによりそれぞれ回動可能とされる。エクステンションアーム2cの先端には,起振装置を有するバイブロハンマ(作業用アタッチメント)5が取付軸6を介して取り付けられ,このバイブロハンマ5のチャック装置5aに矢板やH鋼等の杭3が把持される。この状態でバイブロハンマ5に設けられた起振装置を作動させるとともに,油圧シリンダ7a?7cにより各アーム2a,2b,2cを作動させてバイブロハンマ5を垂直に降下させながら杭3を地面に打ち込む。・・・」(段落【0002】) (4c)「【実施例】 図1?図5により本発明の一実施例を説明する。なお図8と同様な箇所には同一の符号を付す。 図1は杭打機の側面図,図2?図4はそのエクステンションアーム2cの先端部近傍を示す正面図,平面図および側面図である。図2,図3に示すように,上述したエクステンションアーム2cの先端部には,横向きの取付軸6,ブラケット5fおよび縦軸5bを介してバイブロハンマ5のブラケット5cが回動位置調整可能に取付けられ,ブラケット5cには,振動吸収用弾性材5dを介してモータや偏心錘等から成る起振機5eが取付けられている。また起振機5eの下部には,杭3を把持する油圧シリンダ等からなるチャック装置5aが取付けられる。」(段落【0007】) (4d)「・・・ また図6は,本発明の別実施例に係るアーム式作業機を示し,これは,油圧シリンダ7d?7gより回動される4本のアーム2d?2gを備えるとともに,先端のアーム(エクステンションアーム)2gの先端部に,バイブロハンマ5の代わりにオーガ回転駆動機45を取付軸(不図示)により連結したものである。この場合にも,ガイドシーブ10Aを上記取付軸の側方で,かつ取付軸と略同軸で取付けることにより,オーガ回転駆動機45にオーガスクリュ46を装着する際に,オーガスクリュ46の吊り込み作業をアーム2gの姿勢に拘らず常に最適位置で行うことができる。」(段落【0017】) 5.甲第5号証:日本建設機械要覧 1986 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証には,以下の記載事項がある。(注:下記記載中の「(マル1)」等の表記は,丸で囲んだ数字を示したものである)。 (5a)「(8)油圧バイブロ (マル1)LHV型油圧バイブロは0.4?0.7m3級のショベルのディッパにアタッチメントとして取付け,主として農道や路地の狭い場所,下水道工事における軽量鋼矢板,H形鋼,鋼矢板の打込み,引抜きに使用する。 ・・・ (マル4)LHVの取付,取外しはバケットのピンを利用し,バケットと同じ要領で簡単にできる。」(14頁左欄22?33行) (5b)「6.1.2-(3)油圧式ホーセイ振動杭打機・・・ 1.概要 日本でのバイブロ杭打ちの実績も長いが,クレーン車と発電機が必要である欠点も伴い,大型パイルにはよいが小型のパイル打込みと引抜きに簡便さが求められた。 油圧ショベルに装着して使用する本機は,この欠点を解消し,クレーン車,発電機が不要で,運搬移動が容易となり,使いやすさと省エネの点が大きく改善された。」(15頁最上段及び左欄1?7行) (5c)「6.1.2-(6)振動パイルドライバ (エーパイラ)・・・ 1.概要 本機は油圧ショベルに取付けて手軽に使用できる油圧式高周波振動杭打抜機である。 ・・・ 2.特長 (マル1)油圧ショベルに取付けて使用し,・・・ ・・・ (マル5)「エーパイラ」自体の起振力に油圧ショベルのパワーが加わるため,強力な打込み,引抜きができる。」(18頁最上段及び上段左欄1行?上段右欄1行) 6.甲第6号証は,その記載内容を省略する。 7.甲第8号証:実願昭61-78127号 (実開昭62-190735号)のマイクロフィルム 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である,甲第8号証には,以下の記載事項がある。 (7a)「本考案は,油圧ショベルのアームの先端にバケットの代わりに着脱自在に油圧ハンマを取付けた杭打機に関する。」(明細書1頁16?18行) (7b)「該油圧ハンマ9は,取付け用ブラケット10をバケットの代わりにピン11により着脱自在に連結すると共に,ブラケット10をバケットシリンダ8のピストンロッド8aにリンク12およびピン13によって着脱自在に連結することにより,バケットと取換え可能に取付けられる。該ブラケット10には,第2図および第3図に示すように,油圧ハンマ9のケーシング14に長手方向に設けた一対のガイドパイプ15を包囲するように摺動自在に嵌合した水平断面が半円形をなす一対のガイド16を上下2段に固定している。 ケーシング14内には,杭打ち込み用ラム17を上下動自在に収容している。18はラム17を昇降させる油圧シリンダであり,該油圧シリンダ18のチューブをケーシング14の下端側面に固着したブラケット19にピン20により連結し,ピストンロッド18aをピン21により貫通し,該ピン21にはスライダ22を左右それぞれ1個ずつ取付け,該各スライダ22を,ケーシング14の上部側面に固着した左右のガイド板23に縦方向に設けたガイド溝24に摺動自在に嵌合し,ピン21の両端の各ガイド板23の外側に位置する部分にはシーブ25,26を回転自在に取付けている。また,前記ケーシング14の上端にはブラケット28により支持された軸27に2個のシーブ29,30を回転自在に取付け,前記ラム17の上面にはブラケット31を固着し,該ブラケット31により支持した軸32にシーブ33を前記シーブ29,30に対して直角をなす向きに取付けると共に,第4図にも示されているように,一方のガイド板23の上端の掛止具34に一端を接続したワイヤロープ35を,シーブ25,29,33,30,26に順次掛け回し,他方のガイド板23の掛止具36にワイヤロープ35の他端を接続している。 50は杭49に被せるキャップであり,該キャップ50はケーシング14の下端にボルト51により取付けられた筒体52に上下動自在に嵌合され,かつケーシング14とキャップ50とはキャップ落下防止用のチェーン53により接続されている。キャップ50の上面には木材等でなる緩衝材55が設けられている。」(同4頁5行?5頁6頁6行) (7c)第2図には,杭49に被せるキャップ50が,板状の部材を挟んで下面に杭の上端に被さる筒状の部分,上面に緩衝材55を保持する筒状の部分から構成され,板状の部材は杭の上端に被さる筒状の部分より外側に張り出していることが記載されている。 8.甲第9号証:実願昭57-154675号 (実開昭59-61336号)のマイクロフィルム 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である,甲第9号証には,以下の記載事項がある。 (8a)「本考案は油圧式杭打機に関し,さらに詳しくは上下振動発振装置をパワーショベルに取り付けた杭打機に関するものである。」(明細書1頁15?17行) (8b)「ついで最上位に位置させた上下振動発振装置(13)下部の嵌装孔(27)に杭(28)の頭を挿入して杭(28)を立設し,ワイヤー(18)を弛緩させない程度に吊持ちを解放してオイルモータ(15)により上下振動発振装置(13)を作動させる。(同7頁10?14行) (8c)第2図には,杭28の頭を挿入する嵌挿孔27が有底円筒状であることが記載されている。 9.甲第10号証:実願平4-89376号(実開平6-56143号) のCD-ROM 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である,甲第10号証には,以下の記載事項がある。 (9a)「簡易杭等の杭打ちに使用される簡易杭打装置であって,油圧ショベルに取付け可能なブレーカ本体のピック取付け部に,杭の上端部に被嵌可能な杭キャップを取付けたことを特徴とする簡易杭打装置。」(【請求項1】) (9b)「本考案ではこのブレーカ本体1の前記ピック取付け部2に,所望する杭4の上端部に被嵌可能な杭キャップ3が取付けられている。この杭キャップ3は,打ち込まれる杭4の上端径に合わせて適宜選定し,当該杭キャップ3を杭4の上端部に被嵌して杭を支持し,この状態で前記ブレーカ本体1により杭キャップ3を介して杭4に打撃を与えることにより,杭打ちを可能とする。」(段落【0008】) (9c)【図1】には,杭4をの上端部に被嵌可能な杭キャップ3が有底円筒状であることが記載されている。 10.甲第11号証:特開平4-277217号公報 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である,甲第11号証には,以下の記載事項がある。 (10a)「本発明は,例えば牧場等に柵を構築する際に杭を施工するための杭打機に係り,特に低騒音,低振動で一連の杭打作業が行なえる杭打機に関する。」(段落【0001】) (10b)「【実施例】 図1は本発明による柵用杭打機の一実施例を示す側面図である。図1において,1は油圧ショベルであり,該油圧シリンダ1は,下部走行体60に旋回装置61を介して上部旋回体62を設置し,該上部旋回体62にブームシリンダ63によりブーム64を起伏自在に取付け,該ブーム64の先端にアームシリンダ65によりアーム66を上下回動自在に取付けてなり,該アーム66の先端に通常は掘削用バケット(図示せず)が取付けられるが,本発明においては,このバケットの代わりに,ブラケット2がバケットシリンダ67により上下に首振り自在に取付けられ,ブラケット2には,傾斜角調整装置3を介してリーダ4がそのほぼ中間部を中心として左右の傾斜角調整自在に取付けられる。リーダ4にはオーガ駆動装置6と,該オーガ駆動装置6に装着されるオーガ5を地面に押し込む装置の一例としての油圧シリンダ7と,杭圧入用装置の一例である油圧シリンダ8が後述の構造で取付けられる。」(段落【0008】) (10c)「図9(A) はリーダ4の前面の前記オーガ駆動装置6やこれに関連するものを除去して杭41の圧入装置部分を示したもので,同(B) はそのE-E線断面図(ただしリーダ4を除く)であり,杭41圧入用油圧シリンダ8は,リーダ4内に収容され,その上端をピン42によりリーダ4の頂部に連結して取付けられ,そのピストンロッドは,圧入力を増加させるための圧入錘43(実施例においては140kgのものを用いた)の上端に設けたブラケット44にピン45により連結され,該圧入錘43は,その上下の前後両面に摺動板46を固着し,これらの摺動板46はリーダ4の左右のコ字形チャンネル4b内に摺動自在に嵌合し,これにより,油圧シリンダ8の伸縮によって圧入錘43はリーダ4内で案内されて上下動する構成となっている。圧入錘43の下面には,角形をなす杭41に嵌まり込むホルダ47が取付けられている。」(段落【0014】) 11.甲第12号証:実願昭60-24561号 (実開昭61-141344号)のマイクロフィルム 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である,甲第12号証には,以下の記載事項がある。 (11a)「ベース板1の中央部よりやや後方位置に軸受2を設け,杭の上端に嵌合し得る筒状のソケツト3の上端より突設した軸片を軸受2に回転自在に軸支させ,該ソケツト3の内面にクツシヨン材4を付設し,ベース板1の上面の両側部に左右1対の縦板5,5’を立設し,該縦板5,5’の上端の前部位置に油圧用または電動用のウインチ6を設置し,該ウインチ6のドラムに巻込みしたワイヤー7をベース板1に設けた孔8よりソケツト3の前方に付設したリンク9に通係させ,縦板5,5’の上端の中央と後部位置とにアーム取付用のカラーメタル10,10’を固定した杭打ち装置11を構成するものである。尚,図中12は油圧シヨベル,13はアーム,14は杭を示す。 作用,効果 本考案になる杭打ち装置11は,第5図,第6図に示す様に,油圧シヨベル12のアーム13の先端に取付けていたバケツトを取外し,縦板5,5’のカラーメタル10,10’の位置にアーム13先端のピン孔を嵌合させ,ピンを嵌挿して着脱自在に杭打ち装置11をアーム13先端に装着し,そしてウインチ6を油圧シヨベル12の油圧ユニツトや電動ユニツトに接続して使用するものである。そして,第5図に示す様にワイヤー7の先端を杭14に巻着してウインチ6を作動させながら杭14を吊上げ,杭14のヘッドをソケツト3内に第6図に示す様に嵌合させて保持しながら所望位置へと移動してアーム13を利用して杭14を押込みするものである。 従つて,杭14のヘツドをソケツト3に嵌合させた後には油圧シヨベル12のオペレータが一人で旋回,移動,押込みをなし得るものであり,杭14の上端をソケツド3に嵌合させているため杭14が安定してふらつくことなく,押込み時の杭の角度修正も容易であり,作業時の危険も少なく,高能率に杭を打込みし得るものである。」(明細書3頁1行?4頁16行) (11b)第1?4図には,筒状のソケット3がベース板1の下面に取り付けられ,該ベース板1は該ソケツト3よりも前後左右にわたって張り出していること,及び,反油圧ショベル側の縦板5,5’上にウインチ6が設けられ,台板1の反油圧ショベル側の片はウインチ6の端よりも反油圧ショベル側に設けられていることが記載されている。 第6 対比・判断 1.本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比すると,甲1発明の「杭」は本件発明1の「基礎用杭」に相当し,以下同様に,「杭打機」は「杭埋込装置」に,「起振装置10」は「振動装置(2)」に,「杭打込み装置5」は「埋込用アタッチメント(A)」に,「アースオーガ13」は「穿孔装置」に,「オーガ刃17」は「穿孔ロッド(44)」に,それぞれ相当する。 そして,甲1発明の「クレーン1」と本件発明1の「油圧式ショベル系掘削機(9)」とは,共に「土木建設機械」である点で,同様に甲1発明の「クレーン1のリーダー2に進退自在に支持された基台6」と本件発明1の「油圧式ショベル系掘削機(9)のアーム先端部」とは,共に「土木建設機械の作業部取付部」である点で,甲1発明の「駆動モータ12」及び「回転モータ14」と本件発明1の「油圧モーター21」及び「油圧モーター43」は,いずれも「モーター」である点で,それぞれ共通している。 ところで,本件発明1における「嵌合部(15)」の技術的意義について検討するに,平成3年11月15日株式会社岩波書店発行の「広辞苑第4版」によると,「嵌合」とは,「はめあい」を意味するものであるとされ(574頁),「はめあい」とは「〔機〕軸が穴にかたくはまり合ったり,滑り動くようにゆるくはまり合ったりする関係をいう語。かんごう。」であるとされ(2098頁),「穴(・孔)」とは「くぼんだ所または向うまで突き抜けた所。・・・」とされている(60頁)。 そうすると,本件発明1における「嵌合」の意義についても,上記の一般的な語義に従い,「軸がくぼんだ所にかたくはまり合ったり,滑り動くようにゆるくはまり合ったりする関係」を意味し,本件発明1の「嵌合部」とは,そのようにして軸がはまる「穴」,すなわち「くぼんだ所」のことを意味するものと理解することができる。 一方,甲第1号証の上記第5の1.(1a)?(1d)の各記載によると,甲1発明のチャック9は嵌挿部材15を嵌挿するものであり,その嵌挿部材15は同じくチャックに装着される杭と同一形状又は杭と同様の形状を有するものであるというのであるから,杭はその上部がチャック9に嵌挿されるものであることが認められる。 そうすると,チャック9が杭上部に被せるための「くぼんだ所」を有すること及び杭上部とチャック9の「くぼんだ所」が「はまり合う」関係にあることは明らかであり「チャック9」は「杭上部を被せるための嵌合部」を有するものと認められる(平成19年(行ケ)第10255号判決書(以下,「判決書1」という。)19頁21行?21頁12行参照。)。 したがって,甲1発明の「杭保持用のチャック9」と本件発明1の「杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)」とは,共に「杭上部に被せるための嵌合部」である点で共通する。 してみると,両者は,以下の点で一致している。 (一致点) 「基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって, 土木建設機械と, 当該土木建設機械の作業部取付部に取り付けてあり,モーターを有する振動装置と杭上部に被せるための嵌合部を有する埋込用アタッチメントと, 当該埋込用アタッチメントの上記杭上部に被せるための嵌合部に着脱可能に取り付けられる穿孔装置と, を備えており, 上記穿孔装置は, モーターと, 当該モーターにより回転駆動される穿孔ロッドと, を備えており, 上記穿孔装置と上記杭上部に被せるための嵌合部は,穿孔時と杭埋込時において選択的に使用される 杭埋込装置。」 そして,次の各点で相違している。 (相違点1) 杭埋込装置を構成する土木建設機械,及び,埋込用アタッチメントの取付に関して, 本件発明1は該土木建設機械が「油圧式ショベル系掘削機」であって,埋込用アタッチメントを「油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付けて」いるのに対して, 甲1発明は,該土木建設機械が「クレーン」であって,埋込用アタッチメントを「クレーン1のリーダー2に進退自在に支持された基台6に取付けて」ある点。 (相違点2) 振動装置と嵌合部を有する埋込用アタッチメントの構成に関して, 本件発明1は,四角形の台板を備えており,振動装置が台板の上部に設けられ,嵌合部が円筒状であって台板の下面に設けられており,該台板の四辺は,(円筒状の)嵌合部よりも張り出しており,さらに台板の四辺のうち土木建設機械(油圧式ショベル系掘削機)側の辺は,土木建設機械(油圧式ショベル系掘削機)側にある上記振動装置の(油圧)モーターの端よりも土木建設機械(油圧式ショベル系掘削機)側にあるのに対して, 甲1発明は,そのような構成であるか定かでない点。 (相違点3) 埋込用アタッチメントが有する嵌合部に穿孔装置を着脱可能に取り付ける構成に関して, 本件発明1が,嵌合部の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に,穿孔装置を自在継手を介して着脱可能に取り付ける構成としているのに対して, 甲1発明は,嵌合部に相対向するピン孔(16,16)を設けたものではなく,自在継手を介して取り付けられたものでもない点。 (相違点4) 振動装置及び穿孔ロッドを回転駆動するモーターに関して,本件発明1が「油圧モーター」であるのに対して,甲1発明が「駆動モータ12」,「回転モータ14」である点。 上記各相違点について,以下検討する。 (相違点1について) ベースとして油圧式ショベル系掘削機を用い,嵌合部と振動装置を有する埋込用アタッチメントを,油圧式ショベル系掘削機のアーム先端に取り付けるように構成した杭打機は,例えば甲第3,4,8乃至10号証に記載されているように周知である。 そうすると,相違点1に係る本件発明1の構成は,甲1発明の杭埋込装置を構成する土木建設機械として油圧式ショベル系掘削機を採用し,埋込用アタッチメントの取付構造として,上記周知の技術を適用することにより当業者が容易に想到しうるものである。 (相違点2について) 甲第1号証の図面によると,起振装置10とチャック9の間に板状の部材が存在することが認められる。 そして,上記第3の3.(1)(1c)ii)において認定した本件特許出願時における当業者の認識を踏まえると,この種の杭打込装置において,「台板の上部に振動装置を設けるとともに,下面中央部に嵌合部を設ける」という構成は基本的な構成のうちの1つであると認められるから,甲1発明に接した当業者は,同記載の図面から台板の存在を認識することができる(判決書2の23頁15?21行参照。)。 そして,相違点2に係る構成は,この種の杭埋込装置における設計的事項であって,当業者によく知られた周知の構成のうちの1つであることについては,第3の3.において検討したところから明らかであり,また,そうであるからこそ,本件訂正は,特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもなく,新規事項を追加するものでもないということができるところ,台板と振動装置との関係として,油圧モーターを含む振動装置が台板に隠れるように構成することによって,下方からの外力から台板の上部にある振動装置が保護されることは,当業者であれば,作業現場における使用を通じて既に熟知している事柄である。 そうすると,当業者に周知の設計的事項に係る構成である相違点2に係る構成を導き出すことは,当業者にとって容易である(判決書2の24頁10?20行参照。)。 (相違点3について) 1961年(昭和36年)9月10日株式会社コロナ社発行の「建設機械」75?76頁の記載によると,本件特許出願当時において,アースオーガには種々のものが存在し,油圧式ショベル系掘削機に取り付けられるタイプのアースオーガも存在することが知られていた。 また,1989年(平成元年)10月15日社団法人日本機械学会発行の「機械工学便覧エンジニアリング編」C1-134頁には,油圧ショベルの応用アタッチメントとしてアースオーガが開発されていることが記載され, 実願平5-19930号(実開平6-79890号)のCD-ROM,及び,実願平1-33727号(実開平2-125092号)のマイクロフィルムには,自在継手を介してアームに取り付けるアースオーガが記載されている。 これらによると,ピン状の部材により自在継手を介して油圧式ショベル系掘削機のアームに取り付けるアースオーガは,本件特許出願時において,周知であったものと認められる(判決書1の24頁19行?26頁3行参照。)。 そうすると,アースオーガの取付位置を,アームの先端とすることはごく自然に選択される事項であり,アームの先端部に嵌合部が取り付けられている場合において,アースオーガをその嵌合部に取り付けることに阻害事由があるとは認められないから,同嵌合部に穿孔装置を自在継手を介して取り付けることは当業者により適宜選択される事項である(判決書1の26頁22行?27頁1行参照。)。 そして,その際に,嵌合部の側部にピン状の部材を取り付けるための相対向するピン孔を設けることは,ピン状の部材による取り付けにあたり当然に採用されることにすぎない。 したがって,甲1発明に上記周知の技術を適用することにより,相違点3に係る構成を導き出すことは当業者にとって容易である。 (相違点4について) 上記第3の3.(1)(1c)ii)において認定した本件特許出願時における当業者の認識を踏まえると,油圧モーターを含む振動装置を備えた油圧ショベル系掘削機を利用した杭打抜機は,本件特許出願前から製造,販売,利用されていたと認められ,振動装置の駆動源として油圧モーターを用いることは周知であったものと認められるから,甲1発明の駆動モータ12を油圧モーターとすることは,当業者にとって容易である。 また,自在継手を介して車両のアームに取り付けるアースオーガにおいて,穿孔ロッドを油圧モーターにより回転駆動することは,例えば,実願昭56-106321号(実開昭58-16289号)のマイクロフィルム,特開平5-118184号公報,及び,実願平5-19930号(実開平6-79890号)のCD-ROMに記載されているように,本件特許出願時において周知であったものと認められるから,甲1発明の回転モータ14を油圧モーターとすることも,当業者にとって容易である。 したがって,相違点4に係る構成は,甲1発明に周知の技術を適用することにより,当業者が容易に想到しうるものである。 そして,本件発明1の効果は,甲1発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものである。 したがって,本件発明1は,甲1発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。 2.本件発明2について 本件発明2は,本件発明1における「穿孔装置(4)」を「埋込用アタッチメント(A)の嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に自在継手を介して着脱可能に取り付け」る構成に関して,当該自在継手が「ピン(34)を介し着脱可能な」ものであることをさらに限定したものであるから,本件発明2と甲1発明とを対比すると,本件発明1と同様に上記第6の1.の一致点で一致し,かつ,相違点1,2,4で相違するのに加えて,次の相違点3’で相違する。 (相違点3’) 埋込用アタッチメントが有する嵌合部に穿孔装置を着脱可能に取り付ける構成に関して, 本件発明2が,嵌合部の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に,穿孔装置をピン34を介し着脱可能な自在継手を介して取り付ける構成としているのに対して, 甲1発明は,嵌合部に相対向するピン孔(16,16)を設けたものではなく,ピン34を介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられたものでもない点。 (相違点3’について) 上記「相違点3について」で述べたとおり,ピン状の部材により自在継手を介して油圧式ショベル系掘削機のアームに取り付けるアースオーガは,本件特許出願時において,周知であったものと認められる。 そうすると,上記「相違点3について」で検討したものと同様の理由により,相違点3’に係る構成は,甲1発明に,周知の技術を適用することにより当業者が容易に想到しうるものである。 そして,本件発明2の効果は,本件発明1の効果と同様に,甲1発明及び周知の技術から当業者が予測できる範囲内のものである。 したがって,本件発明2は,甲1発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。 第7 むすび 以上のとおり,本件の請求項1及び2に係る発明は,本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるから,本件請求項1及び2に係る発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 杭埋込装置及び基礎用杭の埋込方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって、 油圧式ショベル系掘削機(9)と、 当該油圧式ショベル系掘削機(9)のアーム先端部に取り付けてあり、四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する埋込用アタッチメント(A)と、 当該埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる穿孔装置(4)と、 を備えており、 上記四角形の台板(14)の四辺は、上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており、 上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は、油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり、 上記穿孔装置(4)は、 油圧モーター(43)と、 当該油圧モーター(43)により回転駆動される穿孔ロッド(44)と、 を備えており、 上記穿孔装置(4)と上記嵌合部(15)は、穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする、 杭埋込装置。 【請求項2】基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって、 油圧式ショベル系掘削機(9)と、 当該油圧式ショベル系掘削機(9)のアーム先端部に取り付けてあり、四角形の台板(14)の上部に設けられており油圧モーター(21)を有する振動装置(2)と杭上部に被せるために当該台板(14)の下面に設けられている円筒状の嵌合部(15)を有する埋込用アタッチメント(A)と、 当該埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)の側部に設けられている相対向するピン孔(16,16)にピン(34)を介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる穿孔装置(4)と、 を備えており、 上記四角形の台板(14)の四辺は、上記円筒状の嵌合部(15)よりも張り出しており、 上記台板(14)の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機(9)側の辺は、油圧式ショベル系掘削機(9)側にある上記振動装置(2)の油圧モーター(21)の端よりも油圧式ショベル系掘削機(9)側にあり、 上記穿孔装置(4)は、 油圧モーター(43)と、 当該油圧モーター(43)により回転駆動される穿孔ロッド(44)と、 を備えており、 上記穿孔装置(4)と上記嵌合部(15)は、穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする、 杭埋込装置。 【請求項3】請求項1または2記載の杭埋込装置を使用した、基礎用杭の埋込方法であって、 上記埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)に自在継手を介し上記穿孔装置(4)を取り付けるステップ、 油圧式ショベル系掘削機(9)を操作して上記穿孔装置(4)の上記穿孔ロッド(44)により地盤に所要深さのガイド孔を設けるステップ、 上記埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)から上記自在継手と上記穿孔装置(4)を取り外すステップ、 上記ガイド孔の内部に土を固化する土質改良剤を入れるステップ、 杭を上記ガイド孔に立て、杭の上部に上記埋込用アタッチメント(A)の上記嵌合部(15)を被せて振動させながら押圧し、杭を地盤に埋め込むステップ、 を含むことを特徴とする、 基礎用杭の埋込方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、建物などの施工の際に地盤を補強するために基礎用杭を埋め込む杭埋込装置及び基礎用杭の埋込方法に関するものである。 【0002】 【従来技術】 一般家屋など建物の施工においては、建物の土台となる基礎の施工が重要である。基礎は地盤の上に設けられるので、十分な強度を有する基礎を施工するには地盤をまず強化する必要がある。 地盤強化の一般的な方法としては、地盤を撹拌してセメントなどの改良剤を混入して固化させる方法の他、地盤に多数の杭を埋め込む方法がある。このうち、後者の方法は施工費も比較的安価であるため、特に広く利用されている。 【0003】 この方法の施工は、まず、地盤の所要の位置に専用機械である建柱車などの穿孔装置いわゆるオーガー装置によって所要の深さの穴を設け、次に、油圧ハンマーや油圧バイブロ類を備えた杭埋め装置によって木杭またはコンクリート杭を叩いたり振動をかけながら埋め込むことにより行われている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、上記したような従来の方法には、次のような課題があった。 すなわち、杭の埋め込み作業を行なうには、穿孔用の作業機械と杭埋め込み用の作業機械を必要とする。従って、例えば施工箇所が住宅地域の狭い場所である場合は、まず、穿孔用の作業機械を現場に乗り入れて穿孔作業を行ない、次に作業機械を杭埋め込み用のものと入替えて杭埋め作業を行なう。 このように、杭の埋め込み作業においては、上記二種類の作業機械が必要であるばかりか、場所によっては作業機械の入替え作業も必要となり、作業効率も悪くなる。 【0005】 【発明の目的】 本発明は、上記課題を解消するもので、建物の基礎を施工する際の基礎用杭の埋め込みにおける穿孔作業と杭埋め込み作業を一台の作業機械でできるようにして、例えば施工箇所が住宅地域の狭い場所である場合でも、従来のような各作業専用の作業機械を入替える作業を不要にし、作業効率を向上させることができる杭埋込装置及び基礎用杭の埋込方法を提供することを目的とする。 【0006】 【目的を達成するための手段】 上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。 第1の発明にあっては、 基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって、 油圧式ショベル系掘削機と、 当該油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付けてあり、四角形の台板の上部に設けられており油圧モーターを有する振動装置と杭上部に被せるために当該台板の下面に設けられている円筒状の嵌合部を有する埋込用アタッチメントと、 当該埋込用アタッチメントの上記嵌合部の側部に設けられている相対向するピン孔に自在継手を介して着脱可能に取り付けられる穿孔装置と、 を備えており、 上記四角形の台板の四辺は、上記円筒状の嵌合部よりも張り出しており、 上記台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺は、油圧式ショベル系掘削機側にある上記振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあり、 上記穿孔装置は、 油圧モーターと、 当該油圧モーターにより回転駆動される穿孔ロッドと、 を備えており、 上記穿孔装置と上記嵌合部は、穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする、 杭埋込装置である。 【0007】 第2の発明にあっては、 基礎用杭を地盤に埋め込むための杭埋込装置であって、 油圧式ショベル系掘削機と、 当該油圧式ショベル系掘削機のアーム先端部に取り付けてあり、四角形の台板の上部に設けられており油圧モーターを有する振動装置と杭上部に被せるために当該台板の下面に設けられている円筒状の嵌合部を有する埋込用アタッチメントと、 当該埋込用アタッチメントの上記嵌合部の側部に設けられている相対向するピン孔にピンを介し着脱可能な自在継手を介して取り付けられる穿孔装置と、 を備えており、 上記四角形の台板の四辺は、上記円筒状の嵌合部よりも張り出しており、 上記台板の四辺のうち油圧式ショベル系掘削機側の辺は、油圧式ショベル系掘削機側にある上記振動装置の油圧モーターの端よりも油圧式ショベル系掘削機側にあり、 上記穿孔装置は、 油圧モーターと、 当該油圧モーターにより回転駆動される穿孔ロッドと、 を備えており、 上記穿孔装置と上記嵌合部は、穿孔時と杭埋込時において選択的に使用されることを特徴とする、 杭埋込装置である。 【0008】 第3の発明にあっては、 第1または第2の発明に係る杭埋込装置を使用した、基礎用杭の埋込方法であって、 上記埋込用アタッチメントの上記嵌合部に自在継手を介し上記穿孔装置を取り付けるステップ、 油圧式ショベル系掘削機を操作して上記穿孔装置の上記穿孔ロッドにより地盤に所要深さのガイド孔を設けるステップ、 上記埋込用アタッチメントの上記嵌合部から上記自在継手と上記穿孔装置を取り外すステップ、 上記ガイド孔の内部に土を固化する土質改良剤を入れるステップ、 杭を上記ガイド孔に立て、杭の上部に上記埋込用アタッチメントの上記嵌合部を被せて振動させながら押圧し、杭を地盤に埋め込むステップ、 を含むことを特徴とする、 基礎用杭の埋込方法である。 【0009】 土質改良剤は土を固化するもので、例えばセメント、石灰などであるが、これらに限定するものではない。 【0010】 【作用】 本発明に係る杭埋込装置は、次のように作用する。 まず、埋込用アタッチメントの嵌合部に自在継手を介し穿孔装置を取り付ける。油圧式ショベル系掘削機を操作して穿孔装置の穿孔ロッドにより地盤に所要深さのガイド孔を設ける。 埋込用アタッチメントの嵌合部から自在継手と穿孔装置を取り外す。ガイド孔の内部に土を固化する土質改良剤を入れる。杭をガイド孔に立て、杭の上部に埋込用アタッチメントの嵌合部を被せて振動させながら押圧し、杭を地盤に埋め込む。 このように、本発明によれば、杭を地盤に埋め込む際の穿孔作業と埋め込み作業を一台の油圧式ショベル系掘削機で行なうことができる。従って、施工箇所が住宅地域などの狭い場所である場合でも、従来のような各作業専用の作業機械に入替える作業が不要となり、作業効率が向上する。 なお、穿孔する際、例えば穿孔装置の穿孔ロッドなどが地中の石やコンクリート片などの障害物に接触したときには、自在継手の作用により穿孔ロッドの軸方向が変わり、逃がすことができるので、穿孔装置各部の損傷を防止できる。 【0011】 また基礎用杭の埋込方法では、ガイド孔に土質改良剤を入れるので、施工後、杭の周りには土質改良剤により固化した土が付着し、杭の強度がより強くなり、腐食しにくくなると共に抜けにくくなる。 【0012】 【実施例】 本発明を図面に示した実施例に基づき更に詳細に説明する。 図1は本発明に係る杭埋込装置の一実施例を示す説明図、図2は埋込用アタッチメントの要部分解斜視図である。 符号Bは杭埋込装置で、油圧式ショベル系掘削機9を備えている。油圧式ショベル系掘削機9の可動操作部であるアーム91の先端部には埋込用アタッチメントAが取り付けてある。また、アーム91に設けてあるリンク94には、先端部にフック93を取り付けた吊りワイヤー92の基端部が取り付けてある。なお、フック93は抜け止め防止機構を有するものである。 【0013】 埋込用アタッチメントAはフレーム1を備えている。フレーム1の上面板11の上部には、アーム91の先端部に取り付けるためのブラケット12、12が設けてある。ブラケット12、12には各々ピン挿着孔13、13が設けてある。 フレーム1の下部には四角形の台板14が設けてある。台板14の上部には振動装置2が設けてある。振動装置2は、油圧モーター21によっておもりを回転させて振動させる一般的な構造のものである。 【0014】 台板14の下面中央部には杭の上部に嵌め込むための円筒状の嵌合部15が設けてある。嵌合部15の側部には直径線上に相対向してピン孔16、16が設けてある。嵌合部15には、自在継手を構成する中継部材31が取り付けてある。中継部材31は、ほぼY状で、上端部には円筒状の挿通管32、32が設けてある。中継部材31の下端部にはボルト孔33が設けてある。中継部材31は、ピン孔16と挿通管32を合わせ、ピン34を挿通し、これをボルト35とナット36で一方の挿通管32に固定して取り付けてある。 【0015】 また、中継部材31の下部には穿孔装置4が取り付けてある。穿孔装置4は基体ブラケット41を備えている。基体ブラケット41の上部にはボルト孔42、42が設けてある。基体ブラケット41は、ボルト孔42をボルト孔33に合わせ、ボルト47を挿通し、ナット48を螺着することにより中継部材31に取り付けてある。 【0016】 基体ブラケット41の下部には油圧モーター43が内蔵してある。油圧モーター43の回転軸には穿孔ロッド44が取り付けてある。穿孔ロッド44の下部にはスクリュー45が設けてあり、スクリュー45の上方には地面に接触することにより穿孔ロッド44の穿孔深さを一定にするための停止部46が設けてある。 なお、穿孔装置4の油圧モーター43と振動装置2の油圧モーター21は、作業において同時に運転されることはないので、油圧式ショベル系掘削機9のオイルラインの一系統を切り替えて使用するようにしている。 【0017】 (作 用) 図3はガイド孔を穿孔している状態を示す説明図、図4は杭を埋め込んでいる状態を示す説明図である。 図1ないし図4を参照して本実施例の作用を説明する。 ▲1▼油圧式ショベル系掘削機9のアーム91を操作し、施工部の地盤8の穿孔箇所に穿孔ロッド44を立てる。穿孔装置4の油圧モーター43を作動させてアーム91を操作し、所要深さにガイド孔81を穿孔する。 なお、自在継手を構成する中継部材31などの作用により、穿孔装置4の穿孔ロッド44は任意方向に傾斜させて地盤8に穿孔することもできる。また、穿孔する際、例えば穿孔ロッド44が石やコンクリート破片などの障害物に接触したときには、穿孔ロッド44の方向が変わり、逃がすことができるので、穿孔ロッド44の損傷を防止できる。 【0018】 ▲2▼嵌合部15から中継部材31と共に穿孔装置4を取り外す。そして、オイルラインを切り替えて、振動装置2の油圧モーター21が作動するようにする。 ▲3▼必要に応じて、穿孔したガイド孔81の内部に適量の水とセメントなどの土質改良剤を入れる。 ▲4▼杭7をガイド孔81に立て、アーム91を操作して、杭7の上部に嵌合部15を被せる。 ▲5▼振動装置2を作動させ、フレーム1を振動させながら、アーム91を操作して杭7を押圧してガイド孔81に沿って埋め込む。 【0019】 ▲6▼杭7を所定の深さまで埋込んだら、吊りワイヤー92のフック93を、杭7上部にあらかじめ取り付けてある引掛けワイヤー(図示省略)に引っ掛けて吊り上げる。このとき、地盤8が軟弱で杭7が容易に抜ける場合は、杭7を抜いた孔の内部に再度土質改良剤を入れて、杭7を埋め込む。 【0020】 ▲7▼上記杭7の抜き差し及び土質改良剤の充填を必要なだけ繰り返し、杭7が抜けにくくなったところで最終的に差込む。 また、ガイド孔81にはセメントなどの土質改良剤を入れて杭7を埋め込むので、施工後、杭7の周りには土質改良剤により固化した土が付着し、杭7の強度がより強くなり腐食しにくくなると共に抜けにくくなる。 【0021】 なお、杭がコンクリート杭である場合、上部角部は欠けやすいので、有底四角筒状の保護キャップ(図示省略)を上部に装着し、その保護キャップに嵌合部15を被せるようにすることもできる。 なお、本発明は図示の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において種々の変形が可能である。 【0022】 【発明の効果】 本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。 (a)本発明に係る杭埋込装置及び基礎用杭の埋込方法によれば、杭を地盤に埋め込む際の穿孔作業と埋め込み作業を一台の油圧式ショベル系掘削機で行なうことができる。 従って、施工箇所が住宅地域などの狭い場所である場合でも、従来のような各作業専用の作業機械に入替える作業が不要となり、作業効率が向上する。 【0023】 (b)穿孔装置は振動装置に自在継手を介して取り付けてある。これにより、穿孔装置は穿孔ロッドを任意方向に傾斜させて地盤に穿孔することもできる。 また、穿孔中に穿孔装置が石やコンクリート破片などの障害物に接触したときには、穿孔ロッドの方向が変わり、逃がすことができるので、穿孔装置の損傷を防止できる。 【0024】 (c)基礎用杭の埋込方法にあっては、穿孔したガイド孔に土質改良剤を入れるようにしてあるので、施工後、杭の周りには土質改良剤により固化した土が付着し、杭の強度がより強くなると共に抜けにくくなるので、基礎としての強度をより向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る杭埋込装置の一実施例を示す説明図。 【図2】 埋込用アタッチメントの要部分解斜視図。 【図3】 ガイド孔を穿孔している状態を示す説明図。 【図4】 杭を埋め込んでいる状態を示す説明図。 【符号の説明】 B 杭埋込装置 9 油圧式ショベル系掘削機 91 アーム 92 吊りワイヤー 93 フック 94 リンク A 埋込用アタッチメント 1 フレーム 11 上面板 12 ブラケット 13 ピン挿着孔 14 台板 15 嵌合部 16 ピン孔 2 振動装置 21 油圧モーター 31 中継部材 32 挿通管 33 ボルト孔 34 ピン 35 ボルト 36 ナット 4 穿孔装置 41 基体ブラケット 42 ボルト孔 43 油圧モーター 44 穿孔ロッド 45 スクリュー 46 停止部 47 ボルト 48 ナット |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2007-05-16 |
結審通知日 | 2008-05-29 |
審決日 | 2007-06-05 |
出願番号 | 特願平7-39091 |
審決分類 |
P
1
123・
121-
ZA
(E02D)
P 1 123・ 561- ZA (E02D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼川 康史 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
山本 忠博 紀本 孝 |
登録日 | 1998-08-14 |
登録番号 | 特許第2814356号(P2814356) |
発明の名称 | 杭埋込装置及び基礎用杭の埋込方法 |
代理人 | 梶原 克彦 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 梶原 克彦 |
代理人 | 小谷 昌崇 |
代理人 | 穴見 健策 |
代理人 | 村松 敏郎 |
代理人 | 高宮 章 |