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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J
管理番号 1223370
審判番号 不服2008-10748  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-28 
確定日 2010-09-08 
事件の表示 特願2000-579226号「安定化処理した薬物製剤を含むプラスチック容器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年5月11日国際公開、WO00/25785、平成14年9月3日国内公表、特表2002-528230号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年11月2日(パリ条約による優先権主張1998年11月4日、(GB)英国)を国際出願日とする出願であって、平成20年1月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、その請求項1ないし11に係る発明は、願書に添付した明細書の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし11の記載により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「溶液が緩衝剤処理されている、1-アルキル-N-(2,6-ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミドの酸付加塩の滅菌水溶液を含むプラスチック容器。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-80030号公報(以下、「引用例」という。)には、下記の記載がある。
(a)「【0006】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる局所麻酔薬は特に限定されないが、好ましくはリドカイン、ブピバカイン、ジブカイン、テトラカイン等が挙げられる。また、これらの局所麻酔薬の塩を用いてもよく、好ましくは塩酸塩等が用いられる。」

(b)「【0016】当該局所麻酔薬水溶液には、通常製剤上許容される添加剤を配合してもよい。この添加剤として、例えば担体、安定化剤(クレアチニン等)、溶解補助剤(グリセリン、グルコース等)、懸濁剤(CMC等)、緩衝化剤(クエン酸、炭酸水素ナトリウム等)、乳化剤(脂肪酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、防腐剤(パラオキシ安息香酸メチルまたはプロピル等)、酸化防止剤(BHA、BHT等)などが挙げられる。また、用時溶解により注射剤または液剤になりうる粉末状製剤に製剤化し、用時に溶解して当該局所麻酔薬水溶液を製造することもできる。このような粉末状製剤にはさらに適当な賦形剤を添加することもできる。」

上記(a)、(b)の記載事項より、引用例には、
「溶液に緩衝化剤が添加されている、ブピバカインの塩酸塩の局所麻酔薬水溶液。」の発明が開示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「緩衝化剤」、「ブピバカインの塩酸塩」は、本願発明の「緩衝剤」、「1-アルキル-N-(2,6-ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミドの酸付加塩」それぞれに相当する。

○引用例記載の発明の「溶液に緩衝化剤(緩衝剤)が添加され」ることは、溶液に添加された緩衝剤により溶液が処理されることであるということができるので、本願発明の「溶液が緩衝剤処理され」ることに相当する。

○引用例記載の発明の「局所麻酔薬水溶液」と、本願発明の1-アルキル-N-(2,6-ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミドの酸付加塩の「滅菌水溶液」とは、「人体投与用水溶液」という点で共通する。

上記より、引用例記載の発明は、
「溶液が緩衝剤処理されている、1-アルキル-N-(2,6-ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミドの酸付加塩の人体投与用水溶液。」に相当し、この点において両者は一致し、以下の点で相違している。

◇相違点1
本願発明では、人体投与用水溶液が「滅菌水溶液」であるのに対して、引用例記載の発明では、同「局所麻酔薬水溶液」である点。

◇相違点2
本願発明では、人体投与用水溶液(滅菌水溶液)「を含むプラスチック容器」である、つまり、該水溶液をプラスチック容器に収容しているのに対して、引用例記載の発明では、人体投与用水溶液(局所麻酔薬水溶液)をプラスチック容器に収容しているかどうか明らかでない点。

上記両相違点について検討する。
◆相違点1について
一般に、人体投与用水溶液について、人体投与用である以上、これが滅菌水溶液であることは当然の事項であることから、引用例記載の発明の「局所麻酔薬水溶液(人体投与用水溶液)」についても同様に「滅菌水溶液」であるといわざるをえない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

◆相違点2
一般に、人体投与用水溶液について、これをプラスチック容器に収容することは、本願優先権主張日前に周知の事項(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-82665号公報、米国特許第5209724号明細書の特に第2欄第18?46行、第16欄第39行?第17欄第10行、第18欄第17?37行参照)であることから、引用例記載の発明の「局所麻酔薬水溶液(人体投与用水溶液)(無菌水溶液)」についても、上記周知の事項と同様に、これをプラスチック容器に収容する、つまり、局所麻酔薬水溶液(無菌水溶液)「を含むプラスチック容器」とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

次に、請求人は、審判請求書における請求の理由を補正する平成20年7月9日付け手続補正書の第2頁第16?20行において、「かかる従来技術から予期せぬことに、本願発明は、『1-アルキル-N-(2,6-ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミドの酸付加塩の滅菌水溶液をプラスチック容器中に提供する際に、滅菌のためのオートクレーブによりpHが低下し、それにより製剤が意図される以上に酸性になる』、という問題を新たに認識し、かかる問題を解決するためになされたものであります。」との主張をしているので、この点について検討する。
ここで、上記主張は、「オートクレーブによる滅菌」を前提にするものであり、一方、本願の特許請求の範囲の請求項1には、「滅菌」との記載はあるものの、滅菌手段についての記載がないことから、本願発明は、「オートクレーブによらない滅菌」を発明特定事項にするものを含んでいるので、このような本願発明について、「オートクレーブによる滅菌」を前提にする上記主張を行うことは適当ではなく採用することはできない。

そして、本願発明の作用効果は、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項より当業者であれば十分に予測し得るものである。
よって、本願発明は、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明および本願優先権主張日前に周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2ないし11に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-06 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-27 
出願番号 特願2000-579226(P2000-579226)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 智弥  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 豊永 茂弘
岩田 洋一
発明の名称 安定化処理した薬物製剤を含むプラスチック容器  
代理人 山崎 宏  
代理人 田中 光雄  
代理人 松谷 道子  

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