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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1223589
審判番号 不服2009-14099  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-06 
確定日 2010-09-17 
事件の表示 特願2003-141247号「トラクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 9日出願公開、特開2004-345367号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年5月20日の出願であって、平成21年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成21年8月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年8月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
前面窓を設ける左右の前柱9と、後面窓を設ける左右の後柱10と、前柱9及び後柱10によって支える屋根材11と、側部ドア12とを備えるキャビン8を設け、運転席6をキャビン8内部に設けるトラクタにおいて、
前柱9の上部に屋根材11の屋根フレーム16の前端部を固着させ、後柱10の上部に屋根フレーム16の後端部を固着させ、後柱10に蝶番15を介して側部ドア12を開閉自在に設ける構造であって、
閉状態の側部ドア12の上部前側よりもキャビン8内部側に位置して、側部ドア12を開閉して乗降するときに作業者が利用可能となるように、屋根フレーム16の下面と前柱9のキャビン8内部側の側面とに両端部を固着させる筋違い形取手部材17を備え、前記筋違い形取手部材17を丸パイプフレームで形成したことを特徴とするトラクタ。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(ア)原査定の拒絶理由に引用された刊行物である、実願昭57-83618号(実開昭58-188276号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
・「周知のように例えば農用トラクタなどにあっては後述する如く前後進姿勢変換型のものが一般化し、・・・」(明細書2頁4行ないし6行)
・「座席(12)は、前記伏仰カバー(7)を開放しその下部の副ボンネット(6)上に設置変換できるものであり、それと併せてステアリング(13)も変換できる。
こうして前後進何れの操向姿勢をも自由に採ることができるものであり、この種トラクタに対して安全フレーム型のガードフレーム(G)を立設してある。
該フレーム(G)は、第2図正面図の如く一本の丸パイプを門型に一体折曲成形して成るもので、その左右一対のものが支柱(14)(14)であり、その上端間を横杆部(15)にて連結する形とされている。」(明細書4頁7行ないし17行)
・「尚、前記支柱(14)の両肩には第6図のように天蓋取付基枠(20)が固着され、この基枠(20)の各外端を介してL型の中間ブラケット(21)がボルト止めされると共に、このブラケット(21)を介して天蓋支枠(22)つきの天蓋フレーム(23)の前端を固定してあり、中途については、第5図示の如く支柱(14)上部にコの字枠(24)を取着し同枠(24)と天蓋フレーム(23)側の突片(25)との間に備えた補強斜杆(26)をもって支承して成る。また、このガードフレーム(G)とは別異にフエンダ(10)上を介して後部安全フレーム(F)を立設してもよい。更にこの後部安全フレーム(F)と前部のガードフレーム(G)とを一体化したものとしてもよい。・・・所謂四柱形式又は8柱方式として全て機体に固定するも自由である。」(明細書5頁15行ないし6頁13行)
・第1図および第2図の記載から、ガードフレーム(G)と、後部安全フレーム(F)と、支柱(14)によって支える蓋支枠(22)つきの天蓋フレーム(23)とで座席(12)を保護する保護空間を形成していることが明らかである。
上記記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。
「左右一対の支柱(14)(14)と、後部安全フレーム(F)と、支柱(14)によって支える蓋支枠(22)つきの天蓋フレーム(23)とを備える保護空間を設け、座席(12)を保護空間内部に設けるトラクタにおいて、支柱(14)(14)の上部に天蓋フレーム(23)の前端部を固着させ、支柱(14)と天蓋フレーム(23)との間に固着させる補強斜杆(26)を備えたトラクタ。」

(イ)同じく引用された刊行物である、特開昭51-35922号公報(以下「引用例2」という。)には、「車輌」に関するが、2本の鉛直方向に延伸する支持ビーム36及び38と、前記支持ビーム36及び38によって支える屋根46とを備えるロールオーバー保護構造体26を設け、操縦者席30をロールオーバー保護構造体26内部に設ける車輌において、前記支持ビーム36及び38に長手方向延伸支持ビーム42および44を固定した構造であって、長手方向延伸支持ビーム42および44下面と前記支持ビーム36及び38側面とに固定させる掴み取手34及び34aを備え、前記掴み取手34及び34aをパイプで形成したものが記載されている。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると次のことが明らかである。
・引用発明の「左右一対の支柱(14)(14)」は、その位置関係から、本願補正発明の「前柱9」に対応ないし相当する。
・引用発明の「天蓋支枠(22)つきの天蓋フレーム(23)」は、本願補正発明の「屋根材11」に相当するから、引用発明の「天蓋フレーム(23)は本願補正発明の「屋根フレーム16」に相当しているといえる。
同様に「座席(12)」は、「運転席6」に相当する。
・本願補正発明の「キャビン8」と引用発明の「保護空間」とは、ともに内部に運転席を保護する一定の空間といえるから、「運転席保護空間」という概念で共通する。
・本願補正発明の「筋違い形取手部材17」と引用発明の「補強斜杆(26)」とは、ともに補強用の機能を有するといえるから、「筋違い部材」との点で概念上共通する。そして、この「筋違い部材」は、「屋根フレームの下面と前柱の側面とに両端部を固着させる」ものといえる。

すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「左右の前柱と、前柱によって支える屋根材とを備える運転席保護空間を設け、運転席を運転席保護空間内部に設けるトラクタにおいて、前柱の上部に屋根材の屋根フレームの前端部を固着させ、屋根フレームの下面と前柱の側面とに両端部を固着させる筋違い部材を備えるトラクタ。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
(相違点)
運転席保護空間について、本願補正発明では「前面窓を設ける左右の前柱9と、後面窓を設ける左右の後柱10と、前柱9及び後柱10によって支える屋根材11と、側部ドア12とを備えるキャビン8」であって「前柱9の上部に屋根材11の屋根フレーム16の前端部を固着させ、後柱10の上部に屋根フレーム16の後端部を固着させ、後柱10に蝶番15を介して側部ドア12を開閉自在に設ける構造」であり、同筋違い部材が「閉状態の側部ドア12の上部前側よりもキャビン8内部側に位置して、側部ドア12を開閉して乗降するときに作業者が利用可能となるように、屋根フレーム16の下面と前柱9のキャビン8内部側の側面とに両端部を固着させる筋違い形取手部材17」であって「丸パイプフレームで形成した」ものであるのに対して、引用発明では「左右一対の支柱(14)(14)と、後部安全フレーム(F)と、支柱(14)によって支える天蓋支枠(22)つきの天蓋フレーム(23)とを備える保護空間」であり、「支柱(14)(14)の上部に天蓋フレーム(23)の前端部を固着させ」た構造であり、同筋違い部材は「支柱(14)と天蓋フレーム(23)との間に固着させる補強斜杆(26)」である点。

(4)相違点についての判断
引用例2には、引用発明と同等の位置に掴み取手34および34aをパイプにて形成して設けたものが記載されている。ここで、この掴み取手が取手の機能を有することはその名称から明らかであって、トラクタの運転席キャビンに適用可能であることも明らかである。
また、トラクタの運転席キャビンの構造として、前面窓を設ける左右の前柱と、後面窓を設ける左右の後柱と、前柱及び後柱によって支える屋根材と、側部ドアとを備えるキャビンを設け、運転席をキャビン内部に設け、前柱の上部に屋根材の屋根フレームの前端部を固着させ、後柱の上部に屋根フレームの後端部を固着させ、後柱に蝶番を介して側部ドアを開閉自在に設けた構造のものは周知である。例えば、原審査定時に提示された、特開平11-91637号公報、特開2000-153711号公報、特開2002-96766号公報、特開2003-2063号公報等にそのような構造が記載されている。
これら引用例2記載の事項及び周知の技術を参照すれば、引用発明のものにおいて、上記周知のキャビン構造を採用できることは明らかであって、この場合、全体の補強のために補強斜杆(26)をその位置にて残すことは十分に考えられる。ここで引用発明のものは、乗降するときに作業者が利用する取手部材として、補強斜杆(26)とは別の部材が設けられているが、引用例2に記載の掴み取手34及び34aの機能、配置を参照すれば、その補強斜杆(26)を取手としても利用できることが明らかとなり、この補強斜杆(26)に取手としての機能を付加させるようにすることは格別でない。また、その内外方向の配置として、開閉するドアの邪魔とならないよう、前柱などの内側に配置するようにすることは設計的事項に属する。さらに、引用例2の掴み取手34及び34aはパイプで形成することにも言及していることから、補強斜杆(26)を例えば丸パイプのフレームにて形成するようにすることも設計的事項といえる。
そうすると、引用発明において、周知のキャビン構造を採用し、補強のための補強斜杆(26)をそのまま残すこととして、その際、乗降するときに作業者が利用する取手部材として、補強斜杆(26)に取手としての機能を付加させ、全体として丸パイプのフレームとして形成し、また、その内外方向の配置として、開閉するドアの邪魔とならないよう、前柱の内側として、本願補正発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到ということができる。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成21年8月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成21年3月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されると認められるところ、請求項1には次のとおり記載されている。
「【請求項1】
前面窓を設ける左右の前柱9と、後面窓を設ける左右の後柱10と、前柱9及び後柱10によって支える屋根材11と、側部ドア12とを備えるキャビン8を設け、運転席6をキャビン8内部に設ける農作業車において、前柱9の上部に屋根材11の屋根フレーム16の前端部を固着させ、後柱10の上部に屋根フレーム16の後端部を固着させ、後柱10に蝶番15を介して側部ドア12を開閉自在に設ける構造であって、屋根フレーム16と前柱9とに両端部を固着させる筋違い形取手部材17を備え、側部ドア12を開閉して乗降するときに作業者が利用可能な位置に取手部材17を配置したことを特徴とする農作業車。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明、引用例2に記載の事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-14 
結審通知日 2010-07-21 
審決日 2010-08-03 
出願番号 特願2003-141247(P2003-141247)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62D)
P 1 8・ 575- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小関 峰夫西本 浩司  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 植前 津子
藤井 昇
発明の名称 トラクタ  
代理人 西 博幸  
代理人 石井 暁夫  
代理人 東野 正  
代理人 渡辺 隆一  
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