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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1224183 |
審判番号 | 不服2010-2074 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-01-29 |
確定日 | 2010-09-24 |
事件の表示 | 特願2004-250109「画像形成方法とそれ用のトナー、プロセスカートリッジ、画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 9日出願公開、特開2006- 65194〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成16年8月30日の出願であって、平成21年2月9日付けで通知した拒絶の理由に対して、同年4月16日付けで手続補正書が提出され、次いで、同年6月5日付けで最後の拒絶理由の通知がなされ、これに対して、同年7月31日付けで手続補正書が提出されたが、同年10月27日付けで、同年7月31日付けの手続補正の却下の決定がなされるとともに、拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年1月29日付けで審判請求がなされ、同日付けで手続補正書が提出され、さらに同年2月2日付けで実験成績証明書が提出され、その後、当審における審尋に対して、同年6月21日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成22年1月29日付けの手続補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年1月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正には、特許請求の範囲を次のように補正しようとする事項が含まれている。 (補正前) 「【請求項1】 少なくとも、着色剤、離型剤、樹脂微粒子、第一の結着樹脂として未変性ポリエステル樹脂、第二の結着樹脂として変性ポリエステル樹脂を含有し、 該第一の結着樹脂はガラス転移点が30?46℃のTHF可溶成分のみからなり、 該第二の結着樹脂はその全組成分中の含有量が5?25wt%であり、 該離型剤は樹脂中で互いに独立して分散しその全組成分中の含有量が2?10wt%であり、 前記樹脂微粒子は当該画像形成用トナーの粒子表面に存在し、且つ、ガラス転移点が50?70℃であり、 THF不溶成分を4?22wt%含有することを特徴とする画像形成用トナー。 【請求項2】 前記第一の結着樹脂と第二の結着樹脂との重量比が70/30?90/10であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成用トナー。 【請求項3】 コールター法により測定される前記トナーの粒度分布における重量平均粒径(Dv)が3.0?6.0μmであり、かつ個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成用トナー。 1.00≦Dv/Dn≦1.20 …(1) 【請求項4】 前記トナーの粒度分布における8μm以上の粒子含有量が体積基準で2%以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成用トナー。 【請求項5】 前記トナーの粒度分布における3μm以下の粒子含有量が体積基準で5%以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成用トナー。 【請求項6】 フロー式粒子像測定装置により測定される前記トナーの2μm以下である粒子含有量が個数基準で15%以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成用トナー。 【請求項7】 フロー式粒子像測定装置により測定される前記トナーの平均円形度が0.900?0.960の紡錘形状であることを特徴とする請求項1?6の何れかに記載の画像形成用トナー。 【請求項8】 前記離型剤が植物性ワックスであり、かつ融点が40℃?105℃であることを特徴とする請求項1?7の何れかに記載の画像形成用トナー。 【請求項9】 前記トナーが、少なくとも第一の結着樹脂と、第二の結着樹脂の材料であるアミン類及びイソシアネート基を末端に有するポリエステルプレポリマーと、更に着色剤と離型剤とを有機溶剤中に溶解させた該溶解物又は分散させた分散物を、別途樹脂微粒子を水に分散させて調製した水系媒体中に分散し、分散液中で該化合物と該プレポリマーを重付加反応させた後に分散液の有機溶剤を除去して形成されたトナーであることを特徴とする請求項1?8の何れかに記載の画像形成用トナー。 【請求項10】 感光体の帯電工程、潜像形成工程、トナーを用いた現像工程、転写工程、クリ-ニング工程、定着工程からなり、該定着工程が、加熱部材と加圧部材間に記録媒体を通して搬送しながら転写されたトナー画像を定着する工程と共に、該加熱部材及び/又は加圧部材に付着したトナーをクリーニング部材に移行させて除去する工程から構成された画像形成方法において、 前記現像工程に用いられるトナーが、請求項1?9の何れかに記載の画像形成用トナーであることを特徴とする画像形成方法。 【請求項11】 前記クリーニング部材に移行したトナーのフローテスターにより測定される1/2流出時における溶融温度(1/2流出温度)が120?140℃であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。 【請求項12】 前記現像工程で用いられるトナーのフローテスターにより測定される1/2流出時における溶融温度(1/2流出温度)をT1とし、前記クリーニング部材に固着したトナーの1/2流出温度をT2としたとき、T1+10<T2(℃)の関係を満たすことを特徴とする請求項11に記載の画像形成方法。 【請求項13】 前記クリーニング部材に移行したトナーの150℃おける粘弾性G’の値が3000Pa以上であることを特徴とする請求項10?12の何れかに記載の画像形成方法。 【請求項14】 前記感光体が、アモルファスシリコン感光体であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。 【請求項15】 前記潜像形成工程において感光体上の潜像を現像する際に、交互電界を印加することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。 【請求項16】 前記感光体を帯電させる際に、感光体に帯電部材を接触させ、当該帯電部材に電圧を印加することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。 【請求項17】 感光体と、帯電手段、現像剤が収納された現像手段、クリ-ニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在としたプロセスカ-トリッジであって、該現像剤に用いられるトナーは請求項1?9の何れかに記載のトナーであることを特徴とするプロセスカ-トリッジ。 【請求項18】 プロセスカ-トリッジを搭載した画像形成装置であって、該プロセスカ-トリッジは請求項17に記載のプロセスカ-トリッジであることを特徴とする画像形成装置。」 (補正後) 「【請求項1】 少なくとも、着色剤、離型剤、樹脂微粒子、第一の結着樹脂として未変性ポリエステル樹脂、第二の結着樹脂として変性ポリエステル樹脂を含有し、 該第一の結着樹脂はガラス転移点が30?46℃のTHF可溶成分のみからなり、 該第二の結着樹脂はトナー全組成分中の含有量が5?25wt%であり、 該離型剤は樹脂中で互いに独立して分散しトナー全組成分中の含有量が2?10wt%であり、 前記樹脂微粒子は、ガラス転移点が50?70℃であり、 THF不溶成分を4?22wt%含有してなり、 且つ、前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し、 前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していないことを特徴とする画像形成用トナー。 【請求項2】 前記第一の結着樹脂と第二の結着樹脂との重量比が70/30?90/10であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成用トナー。 【請求項3】 コールター法により測定される前記トナーの粒度分布における重量平均粒径(Dv)が3.0?6.0μmであり、かつ個数平均粒径(Dn)との比(Dv/Dn)が下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成用トナー。 1.00≦Dv/Dn≦1.20 …(1) 【請求項4】 前記トナーの粒度分布における8μm以上の粒子含有量が体積基準で2%以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成用トナー。 【請求項5】 前記トナーの粒度分布における3μm以下の粒子含有量が体積基準で5%以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成用トナー。 【請求項6】 フロー式粒子像測定装置により測定される前記トナーの2μm以下である粒子含有量が個数基準で15%以下であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成用トナー。 【請求項7】 フロー式粒子像測定装置により測定される前記トナーの平均円形度が0.900?0.960の紡錘形状であることを特徴とする請求項1?6の何れかに記載の画像形成用トナー。 【請求項8】 前記離型剤が植物性ワックスであり、かつ融点が40℃?105℃であることを特徴とする請求項1?7の何れかに記載の画像形成用トナー。 【請求項9】 前記トナーが、少なくとも第一の結着樹脂と、第二の結着樹脂の材料であるアミン類及びイソシアネート基を末端に有するポリエステルプレポリマーと、更に着色剤と離型剤とを有機溶剤中に溶解させた該溶解物又は分散させた分散物を、別途樹脂微粒子を水に分散させて調製した水系媒体中に分散し、分散液中で該化合物と該プレポリマーを重付加反応させた後に分散液の有機溶剤を除去して形成されたトナーであることを特徴とする請求項1?8の何れかに記載の画像形成用トナー。 【請求項10】 感光体の帯電工程、潜像形成工程、トナーを用いた現像工程、転写工程、クリーニング工程、定着工程からなり、該定着工程が、加熱部材と加圧部材間に記録媒体を通して搬送しながら転写されたトナー画像を定着する工程と共に、該加熱部材及び/又は加圧部材に付着したトナーをクリーニング部材に移行させて除去する工程から構成された画像形成方法において、 前記現像工程に用いられるトナーが、請求項1?9の何れかに記載の画像形成用トナーであることを特徴とする画像形成方法。 【請求項11】 前記感光体が、アモルファスシリコン感光体であることを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。 【請求項12】 前記潜像形成工程において感光体上の潜像を現像する際に、交互電界を印加することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。 【請求項13】 前記感光体を帯電させる際に、感光体に帯電部材を接触させ、当該帯電部材に電圧を印加することを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。 【請求項14】 感光体と、帯電手段、現像剤が収納された現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在としたプロセスカートリッジであって、該現像剤に用いられるトナーは請求項1?9の何れかに記載のトナーであることを特徴とするプロセスカートリッジ。 【請求項15】 プロセスカートリッジを搭載した画像形成装置であって、該プロセスカートリッジは請求項14に記載のプロセスカートリッジであることを特徴とする画像形成装置。」 この補正事項は、 請求項1において、補正前の「前記樹脂微粒子は当該画像形成用トナーの粒子表面に存在し」を「前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し」に変更するとともに、「前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」という文を追加し、さらに、補正前の「その全組成分中の含有量」を「トナー全組成分中の含有量」に変更し、 また、補正前の請求項11?13を削除し、請求項14?18を新たな請求項11?15とするものである。 以下、補正の適否について検討する。 2.新規事項の追加について 上記補正事項において、請求項1に「前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」(以下、「追加事項」という。)が追加された。 この追加事項の意味について検討するに、請求人が、実験成績証明書で、本願明細書の実施例1に開示されたトナーについて、再現を行い、電子顕微鏡写真の写しを示し、「樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆した状態であることが確認できる。このことから、つまり、実験例のトナーは着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂はトナー粒子表面に露出していないといえる。」と主張していることも勘案すると、追加事項の概念には、『樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆しており、それにより、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂は、トナーの表面からまったくみえない状態』を少なくとも含んでいるものと解される。 次に、本願の当初明細書には、追加事項に関連する記載として次のものがみられる。 「【0057】 上記のように、本発明に用いられるトナーの組成分として第一の結着樹脂と第二の結着樹脂が含有される。このような2系統の樹脂成分を組合せることによって、低温コアシェル構造を有し擬似カプセル状としたトナー構成を形成し、これによって低温定着性とクリーニングローラーからの溶け出しを両立させることができる」 「【0086】 このような未変性ポリエステル樹脂と変性ポリエステル樹脂からなる2系統の樹脂成分を組合せることによって、低温コアシェル構造を有し擬似カプセル状としたトナー粒子構造を形成することができ、本発明における目的を達成することができる。 以下、第二の結着樹脂として好適なウレタン変性ポリエステル樹脂(変性ポリエステル樹脂)及び第一の結着樹脂として好適なウレタン変性されていないポリエステル樹脂(未変性ポリエステル樹脂)を中心に説明する。 【0087】 図4に、トナー粒子構造の模式図を示す。 図4に示すトナー粒子構造にするためには、使用する未変性ポリエステル樹脂のTgや分子量の範囲を制御する必要がある。つまり、粒子内部に含まれる未変性ポリエステル樹脂のTgを30℃?46℃とし、分子量を数平均分子量で2000?10000としたものを用いることが重要である。このように、トナー粒子内部を低軟化点樹脂で構成し、更に変性ポリエステル樹脂を分散させて粒子に弾性を持たせることによって粒子内部の設計、すなわち低温コアシェル構造を有し擬似カプセル状としたトナー粒子構造の形成が可能となる。」 「【0116】 前記トナー原料の溶解物又は分散物を、樹脂微粒子を水に分散させて調製した水系媒体中に分散して乳化分散液とする場合に使用される樹脂微粒子は、ガラス転移点(Tg)が50?70℃であることが重要であり、重量平均分子量が10万?30万であることが好ましい。 ガラス転移点が50℃未満の場合はトナーのブロッキングが低下し、70℃を超える場合は定着時におけるトナー粒子の軟化の妨げになる。 樹脂微粒子は、乳化後にトナー粒子の最表面に付着し、トナー粒子内部に含有される低軟化性樹脂のブロッキングを防ぐトナー構造を形成する(前記図4参照)。」 また、本願の図4は次のとおりである。 そこで、検討するに、上記した本願明細書には、追加事項の表現は、みあたらない。 そして、明細書の【0057】【0086】【0087】には、「低温コアシェル構造を有し擬似カプセル状としたトナー粒子構造」という表現がみられるが、それは、未変性ポリエステル樹脂と変性ポリエステル樹脂の2成分を組合せることによって、低温コアシェル構造を有し擬似カプセル状としたトナー粒子構造を形成した旨が、説明されているのであって、「樹脂微粒子」を使用したときに、「低温コアシェル構造を有し擬似カプセル状としたトナー粒子構造」が形成されることは、明記されていない。なお、未変性ポリエステル樹脂と変性ポリエステル樹脂の2成分を組合せることによって擬似カプセル状とする技術については、本件請求人の特開2003-255679号公報(【0011】)、特開2003-167382号公報(【0011】)がある。 図4には、トナー粒子構造の模式図が示されているが、これはあくまで模式図であって、正確ではない。それでも、一応、出願当初における請求人の認識をみるために、検討すると、図4の模式図は、断面からみて「樹脂微粒子」(図4では、有機微粒子)が数珠つなぎになっているようであるが、断面でなく、トナー粒子の表面からみたときに、複数の樹脂微粒子の間に隙間が生じている可能性を排除することができない。したがって、「前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」ように、樹脂微粒子がトナー粒子表面を完全に被覆していることまでは、把握することができない。 また、明細書の【0116】には、「樹脂微粒子は、乳化後にトナー粒子の最表面に付着し、トナー粒子内部に含有される低軟化性樹脂のブロッキングを防ぐトナー構造を形成する(前記図4参照)。」との記載があるものの、乳化後のトナー粒子の最表面に樹脂微粒子が一定程度付着していれば、当然、ブロッキングを防ぐ作用を奏するものであり、しかも、【0116】で求めているブロッキングがどの程度のものであるかも不確かであるから、【0116】の記載から、樹脂微粒子がトナー粒子表面を完全に被覆していることまでは、把握することができない。 さらに、請求人は、実験成績証明書を提出して、本願明細書の実施例1に開示されたトナーについて、再現を行い、電子顕微鏡写真の写しを示し、「樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆した状態であることが確認できる。このことから、つまり、実験例のトナーは着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂はトナー粒子表面に露出していないといえる。」と主張している。しかし、電子顕微鏡写真の写しをみても、トナー粒子表面と樹脂微粒子の区別が必ずしもつかないことに加え、黒点のような部分が若干みえ、それがトナー粒子表面が露出している部分といえなくもないから、この電子顕微鏡写真の写しから、「樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆した状態であることが確認できる」とまでは断言できない。 これらのことからみて、追加事項である「前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」は、当初明細書や図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものというべきである。 したがって、この追加事項を入れる補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでない。 よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件について 次に、仮に、上記追加事項を入れる補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとすると、 補正前の「前記樹脂微粒子は当該画像形成用トナーの粒子表面に存在し」を「前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し」に変更した点は、不明りょうな記載を釈明した程度のことであり、また、追加事項の「前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」は、樹脂微粒子の画像形成用トナー粒子表面への付着状態、被覆状態を限定するものであると一応いえ、さらに、補正前の「その全組成分中の含有量」を「トナー全組成分中の含有量」に変更する点は、不明りょうな記載の釈明であり、 また、補正前の請求項11?13を削除し、請求項14?18を新たな請求項11?15とする点は、請求項の削除とそれに伴い必要となった補正である。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同項第2号の特許請求の範囲の減縮、同項第4項の明りょうでない記載の釈明を目的としたものと一応いうことができる。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについても一応、以下に検討する。 (1)記載不備について 本願補正発明は、「前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し、前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」と規定する。 ここで、「前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」でいう「当該画像形成用トナーの粒子表面」とは、樹脂微粒子が付着する前のものか、付着した後のものかは明らかにされていないところ、一応、後者、すなわち、「樹脂微粒子が付着した状態での画像形成用トナーの粒子表面」を意味するものと考えられる。 しかし、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、「樹脂微粒子が付着した状態での画像形成用トナーの粒子表面」に露出していないとは、如何なる状態のものを含むのかは判然としない。 つまり、上記「2.」において検討したように、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は「樹脂微粒子が付着した状態での画像形成用トナーの粒子表面」に露出していないとの概念に、『樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆しており、それにより、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂は、トナーの表面からまったくみえない状態』のものが含まれていることは一応確かだと仮定しても、それ以外の『樹脂微粒子がトナー粒子にかなり密に付着しているが完全には被覆していない状態』のものとして、どのような状態のものが含まれるかは、以下にみるように、必ずしも明確でない。 まず、本願の明細書及び図面の記載をみると、本願明細書の【0116】には、「樹脂微粒子は、乳化後にトナー粒子の最表面に付着し、トナー粒子内部に含有される低軟化性樹脂のブロッキングを防ぐトナー構造を形成する(前記図4参照)。」とあり、この記載からは、トナー粒子内部に含有される低軟化性樹脂(これは直接的には、ガラス転移点が30?46℃の第一の結着樹脂[未変性ポリエステル樹脂]を指すものと考えられる。)のブロッキングを防ぐ限りにおいて、多数の樹脂微粒子が乳化後のトナー粒子の最表面にかなり密に付着していれば足り、必ずしも完全に被覆している必要がないというべきである。 また、模式図の図4をみても、樹脂微粒子(有機微粒子)の形状が残されたままでトナー粒子に付着しており、球状に近い樹脂微粒子同士が接触しながら並んでいるような断面図であるから、粒子表面からみて、複数の樹脂微粒子間において若干の隙間があって、『樹脂微粒子がトナー粒子にかなり密に付着しているが完全には被覆していない状態』のものである可能性を排除していない。つまり、図4は、模式図であるけれども、その記載をみても、『樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆しており、それにより、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂は、トナーの表面からまったくみえない状態』のものだけを、本件請求人が出願当初に認識していたと解することができない。 そうすると、本願補正発明の「前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し、前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」との規定は、『樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆しており、それにより、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂は、トナーの表面からまったくみえない状態』のものだけでなく、『樹脂微粒子がトナー粒子にかなり密に付着しているが完全には被覆していない状態』のものを含む可能性を排除することができない。 しかし、その場合、『樹脂微粒子がトナー粒子にかなり密に付着しているが完全には被覆していない状態』のものとして、樹脂微粒子のトナー粒子表面に対する被覆率がどの程度のものまでを、上記規定の概念が含むかは不明である(例えば、被覆率が95%以上か、90%以上かということ)から、結局、本願補正発明の範囲は明確でないと言わざるを得ない。 よって、本願補正発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであったと仮定しても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、やはり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)進歩性について さらに、本願補正発明の「前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し、前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」と規定が、請求人が主張するような『樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆しており、それにより、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂は、トナーの表面からまったくみえない状態』のものだけを意味し、本願補正発明が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていると仮定して、本願補正発明の進歩性についても、一応、以下に検討しておく。 (2-1)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された、特開2004-163805号公報(原査定の引用文献1。以下、「刊行物1」という。)、及び、特開2003-202701号公報(原査定の引用文献2。以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 (2-1-1)刊行物1 (1a)「【請求項1】 有機溶媒中に活性水素基を有する化合物と反応可能な変性ポリエステル系樹脂をトナーバインダーとして含むトナー組成物を溶解又は分散させ、次いで該溶解又は分散物を樹脂微粒子を含む水系媒体中で分散させて架橋剤及び/又は伸長剤と反応させ、得られた分散液から溶媒を除去して得られたトナーにおいて、該トナーバインダーが、該変性ポリエステル系樹脂と共に未変性ポリエステル系樹脂を含有し、該未変性ポリエステル系樹脂の酸価が0.5?40mgKOH/gであることを特徴とする乾式トナー。 【請求項2】 前記変性ポリエステル系樹脂と前記未変性ポリエステル系樹脂との重量比が5/95?25/75であることを特徴とする請求項1記載の乾式トナー。 【請求項3】 前記乾式トナーのガラス転移点(Tg)が40?70℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の乾式トナー。 【請求項4】?【請求項11】(略) 【請求項12】 上記乾式トナーのTHF不溶分が1?15重量%であることを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載の乾式トナー。」 (1b)「【0049】 (未変性ポリエステル系樹脂) 本発明においては、前記変性されたポリエステル(A)単独使用だけでなく、この(A)と共に、0.5?40mgKOH/gの酸価をもった変性されていないポリエステル(C)をトナーバインダー成分として含有させることが重要である。(C)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上する。(C)としては、前記(A)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(C)と同様である。また、(C)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。 【0050】 (A)と(C)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(A)のポリエステル成分と(C)は類似の組成が好ましい。(A)を含有させる場合の(A)と(C)の重量比は、通常5/95?75/25、好ましくは10/90?25/75、さらに好ましくは12/88?25/75、特に好ましくは12/88?22/78である。(A)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。 【0051】 未変性ポリエステル(C)の分子量分布は以下に示す方法により測定される。未変性ポリエステル(C)約1gを三角フラスコで精評した後、THF(テトラヒドロフラン)10?20gを加え、バインダー濃度5?10%のTHF溶液とする。40℃のヒートチャンバー内でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを1ml/minの流速で流し、前記THF試料溶液20μlを注入する。 【0052】?【0053】(略) 【0054】 Mnは2000?15000でMw/Mnの値は5以下が好ましい。5以上だと、シャープメルト性に欠け、光沢性が損なわれる。またTHF不溶分を1?15%含むポリエステル樹脂を使用することでホットオフセット向上につながる。THF不溶分はカラートナーにおいてはホットオフセットには効果があるものの光沢性やOHPの透明性については確実にマイナスであるが離型幅を広げるなどには1?15%内で効果を発揮するケースもある。」 (1c)「【0056】 またトナーにTHF不溶分を1?15%含ませることによりホットオフセット向上につながる。THF不溶分はカラートナーにおいてはホットオフセットには効果があるものの光沢性やOHPの透明性については確実にマイナスであるが離型幅を広げるなどには1?15%内で効果を発揮するケースもある。トナーにTHF不溶分の調整は、変性ポリエステルの伸長、及び/又は架橋を未変性ポリエステルの酸価によって制御することにより調整することが出来る。」 (1d)「【0058】 (トナー、及び未変性ポリエステルのガラス転移点) 本発明において、トナーの樹脂成分として変性ポリエステルと未変性ポリエステルを含むが、変性ポリエステルを伸長、及び/または架橋させたポリマーは分子量が高いため、明確なガラス転移挙動が観測されない。そのため、トナーのガラス転移点(Tg)と未変性ポリエステルのガラス転移点(Tg)に差は見られず、トナーのガラス転移点(Tg)は未変性ポリエステルのガラス転移点(Tg)によって調整することが可能であり、トナーのガラス転移点として、通常40?70℃、好ましくは45?55℃である。40℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。架橋及び/又は伸長されたポリエステル樹脂の共存により、本発明の乾式トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。」 (1e)「【0062】 (離型剤) また、トナーバインダー、着色剤とともにワックスを含有させることもできる。本発明のワックスとしては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワッックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワッックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。 【0063】 これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。本発明において用いられるワックスの融点は、通常40?160℃であり、好ましくは50?120℃、さらに好ましくは60?90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5?1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10?100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0?40重量%であり、好ましくは3?30重量%である。」 (1f)「【0067】 (樹脂微粒子) 本発明で使用される樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。 【0068】 この樹脂微粒子の粒径は50?400nmであることが好ましい。該樹脂微粒子の平均粒径が50nm未満では、トナー表面上に残存する樹脂微粒子が皮膜化またはトナー表面全体を密に覆う状態となり、離型剤微粒子がトナー内部のバインダー樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られ、さらに粒径、及び形状制御も困難になる。また、樹脂微粒子の粒径が400nmより大きいと、トナー表面上に残存する樹脂微粒子が凸部として大きく突出したり、粗状態の多重層として樹脂微粒子が残存し、現像部撹拌時のストレスにより、離型剤微粒子の脱離が見られる。」 (1g)「【0079】 プレポリマー(A)、及び未変性ポリエステル(C)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、予めトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。 【0080】 分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2?20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000?30000rpm、好ましくは5000?20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1?5分である。分散時の温度としては、通常、0?150℃(加圧下)、好ましくは5?30℃である。分散温度が高温になれば、カーボンの凝集、及びワックスの粒子表面への露出が起こるため、低温のほうが好ましい。」 (1h)「【0098】 【実施例】 以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下では、部は重量部を示す。以下では、まず、実施例で用いる材料の調製方法を〈製造例〉で示し、次いで得られた材料を用いた実施例を示す。 【0099】 〈製造例1〉(有機微粒子エマルションの合成) 撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30:三洋化成工業製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エテレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA-920で測定した重量平均粒径は、O.14μmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは152℃であった。 【0100】 〈製造例2〉(水相の調製) 水990部、[微粒子分散液1]83部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7):三洋化成工業製)37部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。 【0101】 〈製造例3〉(低分子ポリエステルの合成) 冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応し、さらに10?15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[低分子ポリエステル1]を得た。[低分子ポリエステル1]は、数平均分子量2500、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25mgKOH/gであった。 【0102】 〈製造例4〉(中間体ポリエステル及びプレポリマーの合成) 冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリツト酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応し、さらに10?15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5mgKOH/g、水酸基価51であった。 次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は、1.53%であった。 【0103】 〈製造例5〉(ケチミンの合成) 撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。 【0104】 〈製造例6〉(マスターバッチの製造) 水1200部、カーボンブラック(Printex35 デクサ製)540部〔DBP吸油量=42ml/100mg、pH=9.5〕、ポリエステル樹脂1200部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕、[マスターバッチ1]を得た。 【0105】 〈製造例7〉(油相の作製) 撹拌棒および温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]378部、カルナバWAX11O部、CCA(サリチル酸金属錯体E-84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。 [原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。[顔料・WAX分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。 【0106】 〔実施例1〕 (乳化→脱溶剤) [顔料・WAX分散液1]664部、[プレポリマー1]を139部、[ケチミン化合物1]5.9部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで1分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。 撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。 【0107】 (洗浄→乾燥) [乳化スラリー1]100部を減圧濾過した後、次の各工程を行った。 ▲1▼:濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。 ▲2▼:▲1▼の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液1OO部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。 ▲3▼:▲2▼の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。 ▲4▼:▲3▼の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。 [濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い[トナー1]を得た。」 (1i)ここで、上記(1h)において、低分子ポリエステル1(Tgは43℃)は、未変性ポリエステル樹脂であり、カーボンブラックは着色剤であり、カルナバWAXは離型剤であり、イソシアネート基を有するポリエステルのプレポリマー1とケチミン化合物とが反応したものは、変性ポリエステル樹脂であるといえる。また、水相1中のビニル系樹脂微粒子(Tgは152℃)は、【0106】の工程により、トナーの粒子表面に付着することは、自明である。 これら記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「少なくとも、着色剤、離型剤、ビニル系樹脂微粒子、未変性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂を含有し、 未変性ポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が43℃であり、 ビニル系樹脂微粒子は、ガラス転移点(Tg)が152℃であり、 ビニル系樹脂微粒子は、トナーの粒子表面に付着している、 トナー」 (2-1-2)刊行物2 (2a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤および樹脂微粒子からなるトナーであって、該トナーの体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dn)との比Dv/Dnが1.00?1.40であり、該樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)が50?90℃であり、該トナー粒子表面上に存在する該樹脂微粒子の被覆率が1?90%の範囲であることを特徴とするトナー。 【請求項2】 Dv/Dnが1.00?1.20の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。 【請求項3】 該樹脂微粒子のTgが50?70℃であることを特徴とする請求項1、2に記載のトナー。 【請求項4】 該樹脂微粒子の被覆率が5?80%の範囲であることを特徴とする請求項1?3に記載のトナー。 【請求項5】 該結着樹脂の主成分がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1?4に記載のトナー。 【請求項6】 該トナーが有機溶媒中に活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂からなるトナーバインダー成分を含むトナー組成分を溶解又は分散させて形成した溶解又は分散物を樹脂微粒子を含む水系媒体中で架橋剤及び/又は伸長剤と反応させ、得られた分散物から溶媒を除去し、かつトナー表面に付着した該樹脂微粒子を洗浄・脱離して得られることを特徴とする請求項1?5に記載のトナー。 【請求項7】 該トナー中のバインダーが、変性ポリエステル系樹脂と共に、未変性ポリエステル系樹脂を含有し、該変性ポリエステル系樹脂と該未変性ポリエステル系樹脂との重量比が5/95?80/20であることを特徴とする請求項1?6に記載の静電荷像現像用トナー。」 (2b)「【0007】(樹脂微粒子)本発明で使用される樹脂微粒子は、ガラス転移点(Tg)が50?90℃であること条件であり、ガラス転移点(Tg)が50℃未満の場合、トナー保存性が悪化してしまい、保管時および現像機内でブロッキングを発生してしまう。ガラス転移点(Tg)が90℃超の場合、樹脂微粒子が定着紙との接着性を阻害してしまい、定着下限温度が上がってしまう。更に好ましい範囲としては50?70℃の範囲があげられる。また、その重量平均分子量は10万以下であることが望ましい。好ましくは5万以下である。その下限値は、通常、4000程度である。重量平均分子量が10万を超える場合、樹脂微粒子が定着紙との接着性を阻害してしまい、定着下限温度が上がってしまう。樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂微粒子としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂又はそれらの併用樹脂からなるものが好ましい。ビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸-アクリル酸エステル重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。樹脂微粒子において、その平均粒径は5?200nm、好ましくは20?18nmである。 【0008】(樹脂微粒子の被覆率)本発明トナーにおける樹脂微粒子は、トナー形状(円形度、粒度分布など)を制御する(揃える)ために、その製造工程で添加されるが、トナー表面上に偏在する樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)が50?90℃であり、トナー粒子に対する被覆率が1?99%の範囲であることが重要である。被覆率90%超では、トナー粒子表面を樹脂微粒子が ほぼ完全に被覆してしまっている状態であり、トナー粒子内部のワックスのしみ出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットを発生してしまう。ガラス転移点(Tg)が50℃未満の場合、トナー保存性が悪化してしまい、保管時および現像機内でブロッキングを発生してしまう。ガラス転移点(Tg)が90℃以上の場合、樹脂微粒子がトナーの定着紙との接着性を阻害してしまい、定着下限温度が上がってしまう。従って、十分な定着温度幅を確保できないため、低温定着システムの複写機では定着できない、または定着画像を擦ると剥がれてしまうといった不具合が発生する。本発明の樹脂微粒子はトナーの摩擦帯電性を良好にする機能を持っている。そこで、被覆率が1%未満では、トナーに十分な摩擦帯電特性を付与することができないため、十分な画像濃度を出せなかったり、地肌汚れを発生したりする。また、より好ましくは5?80%の範囲である。樹脂微粒子の被覆率は、トナー表面の電子顕微鏡写真を画像解析装置を用いて、トナー表面に対する樹脂微粒子の被覆率を測定する。測定条件については後述する。」 (2c)「【0053】 【実施例】以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 (有機微粒子エマルションの合成) 製造例1 撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30、三洋化成工業製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA-920で測定した体積平均粒径は、0.10μmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。該樹脂分のTgは57℃であった。 【0054】(水相の調製) 製造例2 水990部、[微粒子分散液1]80部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON-7:三洋化成工業製)40部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。 【0055】(低分子ポリエステルの合成) 製造例3 冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物220部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物561部、テレフタル酸218部、アジピン酸48部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10?15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸45部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[低分子ポリエステル1]を得た。[低分子ポリエステル1]は、数平均分子量2500、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25であった。 【0056】(プレポリマーの合成) 製造例4 冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリツト酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10?15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5、水酸基価49であった。次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]411部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は、1.53%であった。 【0057】(ケチミンの合成) 製造例5 撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。 【0058】(マスターバッチの合成) 製造例6 カーボンブラック(キャボット社性 リーガル400R):40部、結着樹脂:ポリエステル樹脂(三洋化成RS-801 酸価10、Mw20000、Tg64℃):60部、水:30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロール表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行ない、パルベライザーで1mmφの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。 【0059】(油相の作成) 製造例7 撹拌棒および温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]378部、カルナバWAX110部、CCA(サリチル酸金属錯体E-84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。 [原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。[顔料・WAX分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。 【0060】(乳化⇒脱溶剤) 実施例1 [顔料・WAX分散液1]648部、[プレポリマー1]を154部、[ケチミン化合物1]6.6部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで1分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。[分散スラリー1]は、体積平均粒径5.95μm、個数平均粒径5.45μm(マルチサイザーIIで測定)であった。 【0061】(洗浄⇒乾燥) [乳化スラリー1]100部を減圧濾過した後、 :濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。 :の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。この超音波アルカリ洗浄を再度行った(超音波アルカリ洗浄2回)。 :の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。 :の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。 [濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、体積平均粒径Dv6.03μm、個数平均粒径Dn5.52μm、Dv/Dn1.09(マルチサイザーIIで測定)の[トナー1]を得た。」 (2-2)対比・判断 そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、 刊行物1記載の発明の「ビニル系樹脂微粒子」「未変性ポリエステル樹脂」「変性ポリエステル樹脂」「トナー」は、 それぞれ、本願補正発明の「樹脂微粒子」「第一の結着樹脂として未変性ポリエステル樹脂」「第二の結着樹脂として変性ポリエステル樹脂」「画像形成用トナー」に相当する。 刊行物1記載の発明の「未変性ポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が43℃であり」は、本願補正発明の「該第一の結着樹脂はガラス転移点が30?46℃」の範囲内にある。 刊行物1記載の発明の「ビニル系樹脂微粒子は、トナーの粒子表面に付着している」は、本願補正発明の「前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し」に相当する。 そうすると、両者の一致点、相違点は、次のとおりと認められる。 [一致点] 「少なくとも、着色剤、離型剤、樹脂微粒子、第一の結着樹脂として未変性ポリエステル樹脂、第二の結着樹脂として変性ポリエステル樹脂を含有し、該第一の結着樹脂はガラス転移点が30?46℃であり、且つ、前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着している、画像形成用トナー」 [相違点1] 本願補正発明では、第一の結着樹脂(未変性ポリエステル樹脂)は、ガラス転移点が30?46℃のTHF可溶成分のみからなるのに対し、 刊行物1記載の発明では、未変性ポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が43℃であるが、THF可溶成分のみからなることは明示されていない点。 [相違点2] 本願補正発明は、離型剤が、樹脂中で互いに独立して分散しトナー全組成分中の含有量が2?10wt%であるのに対し、 刊行物1記載の発明は、特定されていない点。 [相違点3] 本願補正発明は、トナー全組成分中における第二の結着樹脂(変性ポリエステル樹脂)の含有量が、5?25wt%であり、トナーがTHF不溶成分を4?22wt%含有しているのに対し、 刊行物1記載の発明は、特定されていない点。 [相違点4] 樹脂微粒子のガラス転移点が 本願補正発明では、50?70℃であるのに対し、 刊行物1記載の発明では、152℃である点。 [相違点5] 本願補正発明では、樹脂微粒子は、画像形成用トナーの粒子表面に付着し、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、画像形成用トナーの粒子表面に露出していないのに対し、 刊行物1記載の発明では、樹脂微粒子は、画像形成用トナーの粒子表面に付着しているが、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、画像形成用トナーの粒子表面に露出しているかどうか不明な点。 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物1記載の発明の未変性ポリエステル樹脂(低分子ポリエステル)も、基本的にTHF可溶成分からなるということができ、また、刊行物1記載の発明の未変性ポリエステル樹脂のガラス転移点が43℃であり、求める低温定着性や確保される耐熱保存性の程度に応じて、ガラス転移点を調整することに困難性はない。 したがって、刊行物1記載の発明において、本願補正発明のごとく、ガラス転移点が30?46℃のTHF可溶成分のみからなるものとすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。 (相違点2について) まず、離型剤の含有量について、本願の明細書には、「トナー中のワックスの含有量は、通常1?20重量%であり、好ましくは3?10重量%である。特に、小粒径の粒子中にワックスを微分散するにはワックスの含有量は3?7重量%を保つのがよい。」(【0126】)と説明され、これと、本願補正発明の「樹脂中で互いに独立して分散しトナー全組成分中の含有量が2?10wt%である」とは、完全には一致しないが、本願補正発明はワックス(離型剤)の分散性も考慮してやや控えめの含有量としているものと理解される。 しかし、本願補正発明のワックス(離型剤)含有量は、一般に慣用されている程度のものであり、刊行物1の(1e)にも、離型剤に関して「トナー中のワックスの含有量は通常0?40重量%であり、好ましくは3?30重量%である。」という記載がある。 そうしてみると、刊行物1記載の発明において、離型剤が樹脂中で互いに独立して分散しトナー全組成分中の含有量が2?10wt%であるものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。 (相違点3について) 刊行物1の(1b)には、変性されたポリエステル(A)と、変性されていないポリエステル(C)との重量比について、「通常5/95?75/25、好ましくは10/90?25/75、さらに好ましくは12/88?25/75、特に好ましくは12/88?22/78である。(A)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。」という記載がある。 この記載では、「トナー全組成分中における第二の結着樹脂(変性ポリエステル樹脂)の含有量」は、明記されていないが、トナーにおいて結着樹脂が占める重量割合が大きいことからすると、刊行物1に記載された、変性されたポリエステル(A)と変性されていないポリエステル(C)との重量比は、他のトナー組成分を考慮したトナー全組成分中における第二の結着樹脂(変性ポリエステル樹脂)の含有量でみると、本願補正発明の「5?25wt%」の範囲にあるか、あるいは、範囲から外れるとしても、その範囲に近い値になる蓋然性が高い。 なお、本願の明細書にも、変性ポリエステル樹脂、すなわちウレア変性ポリエステル(UMPE)と、未変性ポリエステル樹脂、すなわちウレア変性されていないポリエステル(PE)とに関して、「UMPEとPEの重量比は、通常5/95?80/20、好ましくは5/95?30/70、更に好ましくは5/95?25/75、特に好ましくは7/93?20/80である。UMPEの重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。」(【0105】)という記載があり、これは、刊行物1の上記記載と、ほぼ同じ内容である。 また、本願の明細書には、「【0061】また、第一の結着樹脂と組合せて、少なくともTHFに不溶成分であると共に全組成分中での含有量が5?25wt%である第二の結着樹脂を用いることによって、定着装置のクリーニングローラーに移行し固着するトナーが高い弾性を有し、クリーニングローラの温度が上昇しても固着したトナーが溶け出し難くなる。5wt%よりも少なかったり、逆に25wt%よりも多い場合には、低温定着性とのバランスが取れなくなる。」と記載されている。ここで、トナー全体におけるTHF不溶成分の含有量は示されていないが、THF不溶成分である第二の結着樹脂(変性ポリエステル樹脂)の、トナー全組成分中における含有量5?25wt%であり、本願補正発明で規定する、トナーにおけるTHF不溶成分の含有量4?22wt%(なお、この含有量は、平成21年4月16日付けの手続補正書により追加されたものであるが、その補正根拠は、本願明細書【0221】の表1の各実施例に基づく。)と、ほぼ同じ数値範囲となっている。 ところで、刊行物1の(1b)(1c)には、「トナーにTHF不溶分を1?15%含ませることによりホットオフセット向上につながる。」「トナーにTHF不溶分の調整は、変性ポリエステルの伸長、及び/又は架橋を未変性ポリエステルの酸価によって制御することにより調整することが出来る。」との記載があるから、これを参考にして、刊行物1記載の発明において、トナーにおけるTHF不溶成分の含有量を好適化することは、当業者が適宜なし得ることである。 また、本願補正発明における「トナーにおけるTHF不溶成分の含有量4?22wt%」という数値範囲は、上記のとおり、本願明細書【0221】の表1の各実施例に基づくものであるが、実施例は、本願補正発明には規定されていない各種の特定条件下において、「トナーにおけるTHF不溶成分の含有量4?22wt%」が適当とされるものであって、それら条件が変更になったときにも、「トナーにおけるTHF不溶成分の含有量4?22wt%」が適当であるかどうかは不明である。そうすると、それら条件の規定がない本願補正発明において、「トナーにおけるTHF不溶成分の含有量4?22wt%」に明確な臨界的意義があるということはできない。 以上のことを勘案すると、刊行物1記載の発明において、本願補正発明のごとく、トナー全組成分中における第二の結着樹脂(変性ポリエステル樹脂)の含有量が5?25wt%であり、トナーがTHF不溶成分を4?22wt%含有するようになすことは、当業者が適宜なし得ることと言わざるを得ない。 (相違点4について) 刊行物1記載の発明は、実施例から認定したものであって、樹脂微粒子のガラス転移点が152℃であるけれども、刊行物1における他の記載をみても、樹脂微粒子のガラス転移点の設定に関する思想は何も示されていないから、樹脂微粒子のガラス転移点を152℃から変更することに、阻害要因はなく、当業者が樹脂微粒子のガラス転移点152℃に固執することは特にないというべきである。 一方、刊行物2には、基本的に、本願の実施例や刊行物1記載の発明と同様なトナー製造方法が示されており、特に、刊行物2の(2b)には、「本発明で使用される樹脂微粒子は、ガラス転移点(Tg)が50?90℃であること条件であり、ガラス転移点(Tg)が50℃未満の場合、トナー保存性が悪化してしまい、保管時および現像機内でブロッキングを発生してしまう。ガラス転移点(Tg)が90℃超の場合、樹脂微粒子が定着紙との接着性を阻害してしまい、定着下限温度が上がってしまう。更に好ましい範囲としては50?70℃の範囲があげられる。」(【0007】)という記載がある。 そうすると、刊行物1記載の発明において、ブロッキング防止、低温定着性の確保の観点から、刊行物2の技術事項を適用して、本願補正発明のごとく、樹脂微粒子のガラス転移点を50?70℃のものに変更することは、当業者が適宜なし得ることである。 (相違点5について) 刊行物1の(1f)には、「【0068】この樹脂微粒子の粒径は50?400nmであることが好ましい。該樹脂微粒子の平均粒径が50nm未満では、トナー表面上に残存する樹脂微粒子が皮膜化またはトナー表面全体を密に覆う状態となり、離型剤微粒子がトナー内部のバインダー樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られ、さらに粒径、及び形状制御も困難になる。」という記載がある(なお、この記載中、樹脂微粒子だけでなく、離型剤微粒子という表現も出てくるが、後者は、前者の誤記である可能性もある)。ここでは、トナー表面上の樹脂微粒子が皮膜化またはトナー表面全体を密に覆う状態となることは、よくないとの知見が示されている。 また、刊行物2の(2b)には、樹脂微粒子のガラス転移点が50?70℃である範囲が好ましいとしつつ、「トナー粒子に対する被覆率が1?99%の範囲であることが重要である。被覆率90%超では、トナー粒子表面を樹脂微粒子が ほぼ完全に被覆してしまっている状態であり、トナー粒子内部のワックスのしみ出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットを発生してしまう。」との知見が示されている(なお、樹脂微粒子の被覆率は、トナー表面の電子顕微鏡写真を画像解析装置を用いて、トナー表面に対する樹脂微粒子の被覆率を測定する、とされる)。 これに対して、本願補正発明では、「樹脂微粒子は、画像形成用トナーの粒子表面に付着し、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」と規定するが、これに対応する意義は、本願明細書【0116】の「樹脂微粒子は、乳化後にトナー粒子の最表面に付着し、トナー粒子内部に含有される低軟化性樹脂のブロッキングを防ぐトナー構造を形成する(前記図4参照)。」というものであり、ブロッキングを防ぐ作用を重視したものといえる。 この進歩性の判断における前提は、上記のとおり、本願補正発明の「前記樹脂微粒子は、当該画像形成用トナーの粒子表面に付着し、前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」との規定が、『樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆しており、それにより、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂、第二の結着樹脂は、トナーの表面からまったくみえない状態』のものだけを意味すると仮定しているのであるが、樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆した場合に、刊行物1,2で指摘されるような問題点(微粒子がトナー内部のバインダー樹脂成分と定着紙との接着性を阻害する点、トナー粒子内部のワックスのしみ出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセットを発生してしまう点)を、本願補正発明ではどのように解決しているのか、が不明である。そして、先に指摘したように、乳化後のトナー粒子の最表面に樹脂微粒子が一定程度付着していれば、ブロッキングを防ぐ作用を奏するものであるから、樹脂微粒子がトナー粒子を完全被覆することの意味は、必ずしも明確ではない。 それでも、本願補正発明は、ブロッキング防止を優先にした発明というのであれば、その限りでは意味があることかもしれない。 しかし、一般に、ブロッキング防止等を目的として、トナー粒子の表面に樹脂微粒子を付着させ、熱処理等により造膜して被覆するという技術は、本願出願前に周知である。例えば、特開平7-248649号公報(請求項3、【0001】、【0003】、【0018】?【0020】等)、特開平8-254853号公報(特許請求の範囲、【0014】、【0016】等)、特開平10-133423号公報(請求項1、【0048】、【0071】等)、特開2001-235894号公報(請求項1,【0005】?【0007】、【0017】等)を参照。 また、刊行物1,2では、樹脂微粒子でトナー粒子を完全被覆することはよくないという知見が示されているが、当業者が、ブロッキング防止を優先したいというニーズがあるときに、刊行物1,2の知見を踏まえた上で、あえて、樹脂微粒子でトナー粒子を完全被覆することを想起することもあり得るというべきである。 なお、刊行物1,2のような知見も周知である。例えば、特開平4-188154号公報(特許請求の範囲、第3頁右上欄、第7頁右上欄?左下欄、等)、特開昭63-131149号公報(特許請求の範囲、第3頁左上欄、等)、特開平4-81771号公報(第2頁左上欄?右上欄、第5頁右上欄、等) してみると、刊行物1記載の発明において、ブロッキング防止を重視する周知技術を適用して、本願補正発明のごとく、「樹脂微粒子は、画像形成用トナーの粒子表面に付着し、着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」ものとすることは、当業者が容易になし得ることである。 (相違点1?5全体について) 以上は、相違点1?5を個々に検討したが、相違点1?5を全体としてみても、本願補正発明のようになすことに、困難性がない。 (2-3)むすび 以上のとおりであるから、本願補正発明は、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本願補正発明が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていると仮定しても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 4.補正却下の決定のむすび よって、いずれにしても、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願の請求項1に係る発明 平成22年1月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?18に係る発明は、平成21年4月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 少なくとも、着色剤、離型剤、樹脂微粒子、第一の結着樹脂として未変性ポリエステル樹脂、第二の結着樹脂として変性ポリエステル樹脂を含有し、 該第一の結着樹脂はガラス転移点が30?46℃のTHF可溶成分のみからなり、 該第二の結着樹脂はその全組成分中の含有量が5?25wt%であり、 該離型剤は樹脂中で互いに独立して分散しその全組成分中の含有量が2?10wt%であり、 前記樹脂微粒子は当該画像形成用トナーの粒子表面に存在し、且つ、ガラス転移点が50?70℃であり、 THF不溶成分を4?22wt%含有することを特徴とする画像形成用トナー。」 2.これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開2004-163805号公報(原査定の引用文献1。上記「第2 3.(2-1)」で示した「刊行物1」)、及び、特開2003-202701号公報(原査定の引用文献2。同「刊行物2」)の記載事項は、上記「第2 3.(2)(2-1)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明1は、本願補正発明から、「前記着色剤、離型剤、第一の結着樹脂及び第二の結着樹脂は、当該画像形成用トナーの粒子表面に露出していない」という限定事項を省いたものに、実質的に相当する。 そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 3.(2)(2-3)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により(但し、上記相違点5は、ここでは相違点でないので、周知技術を用いる必要がない。)、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-14 |
結審通知日 | 2010-07-20 |
審決日 | 2010-08-11 |
出願番号 | 特願2004-250109(P2004-250109) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G) P 1 8・ 561- Z (G03G) P 1 8・ 121- Z (G03G) P 1 8・ 575- Z (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福島 直子、藤井 勲 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
伏見 隆夫 伊藤 裕美 |
発明の名称 | 画像形成方法とそれ用のトナー、プロセスカートリッジ、画像形成装置 |
代理人 | 舘野 千惠子 |