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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1224202
審判番号 不服2008-22830  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-04 
確定日 2010-10-20 
事件の表示 特願2003-293852「測距装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日出願公開、特開2005- 62039、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 本願は、平成15年 8月15日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

すなわち、上記拒絶理由である新規事項違反とされた平成20年4月3日付けの手続補正の内容は、特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である、1回目に入力されたセンサデータに低コントラストのデータが含まれている測距エリアについて少なくとも更に1回入力される「センサデータ」を、「既に積分処理して生成された一対のセンサデータ」とする補正を含むものである。そこで、上記補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かを、検討する。

上記発明特定事項に関し、上記「既に積分処理して生成された一対のセンサデータ」という文言は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に直接的に記載されていない。

また、上記発明特定事項に関し、少なくとも更に1回入力される「センサデータ」とは、当初明細書等の「その低輝度かつ低コントラストのセンサデータが含まれている測距エリアについて、少なくとも更に1回、センサデータを信号処理回路1CからA/D変換して入力し、…」(【0033】)との記載から、信号処理回路1Cから入力されるアナログデータであるといえる。
そして、信号処理回路1Cから入力される「センサデータ」そのものは、明細書の【0017】等の記載によれば、「ラインセンサから入力される輝度信号を積分処理した一対のセンサデータ」である。

しかしながら、少なくとも更に1回入力される「一対のセンサデータ」を再度A/D変換する際、該センサデータを生成する積分処理がいつ行われたかについては、当初明細書等に明記されていない。そこで、技術常識を考慮すると、おおよそ、
(1)再度A/D変換する直前に、積分処理を行って生成される「センサデータ」、又は、
(2)一回目の積分処理の結果、信号処理回路1Cに保持されている積分処理済みの「センサデータ」、
のいずれかであると、考えられる。
(2)とする根拠は、積分処理回路が生成したデータは、次の積分処理がおこなわれるまではリセット処理などをおこなわない限り積分処理回路に保持されているという、積分処理回路に関する技術常識に基づくものである。

したがって、信号処理回路1Cから少なくとも更に1回入力される「センサデータ」としては、(1)信号処理回路1Cから入力される直前に、ラインセンサから入力される輝度信号を積分処理して生成されるデータ、又は、(2)既に積分処理されて信号処理回路1Cに保持されているデータのいずれかであることは、当初明細書等の記載に基づけば、当業者にとって自明である。

次に別の観点から、検討する。
当初明細書等には、以下の記載がある。

(発明が解決しようとする課題)
「 【0006】
特許文献1に記載の測距装置においては、逆光シーンや夜景を背景としたシーンなどの撮影に際しても被写体の測距が可能となり、測距精度が向上する反面、低輝度でかつ低コントラストの領域について、再度、一対のラインセンサの出力信号を積分しているため、長い積分時間が加算されて測距時間が大幅に増大するという問題がある。」

(課題を解決するための手段)
「 【0010】
また、低コントラストのセンサデータが含まれている測距エリアについて、センサデータを再度A/D変換して加算処理する時間は、従来例のように、低輝度でかつ低コントラストの領域について、再度、一対のラインセンサの出力信号を積分する場合の積分時間に較べ、極めて短時間であるため、測距時間が大幅に短縮される。」

(発明を実施するための最良の形態)
「 【0064】
また、低輝度かつ低コントラストのセンサデータが含まれている測距エリアについて、センサデータを再度A/D変換して加算処理する時間は、従来例のように、低輝度でかつ低コントラストの領域について、再度、一対のラインセンサの出力信号を積分する場合の積分時間に較べ、極めて短時間であるため、測距時間を大幅に短縮することができる。」

してみると、当初明細書等には、本願発明や従来の発明は、一対のセンサデータを得るために受光センサの出力信号を積分処理することを前提とするものであり、低輝度かつ低コントラストのセンサデータが含まれている測距エリアについて、従来の発明は、一対のラインセンサの出力信号を再度積分しているので測距時間が長時間であったのを、本願発明では、大幅に短縮することができると記載されているといえる。

そして、本願発明は、測距時間を大幅に短縮した要因について直接的な記載はないものの、当初明細書等の段落【0064】で、本願発明の「センサデータを再度A/D変換して加算処理する時間」は、従来例の「再度、一対のラインセンサの出力信号を積分する場合の積分時間」に較べ、極めて短時間であるため、測距時間を大幅に短縮することができる旨、記載している。

すなわち、測距時間の短縮に関する当初明細書等の段落【0064】の記載において、従来例の「積分時間」に対して、従来例の課題を解決したとする本願発明が「積分時間」ではなく「センサデータを再度A/D変換して加算処理する時間」と比較している記載に着目すれば、本願発明の「測距時間」が従来例より「極めて短時間」となるのは、「積分時間」を必要としない可能性が高いから、本願発明において少なくとも更に1回入力されるセンサデータは、積分処理を必要としないセンサデータ、すなわち「既に積分処理して生成された一対のセンサデータ」であるがい然性は高いといえる。

したがって、当初明細書等に記載されている、少なくとも更に1回入力される「センサデータ」は、再度積分処理をおこなって生成されるセンサデータを排除するとまではいえないが、段落【0064】の記載を参酌すれば、当初明細書等には、少なくとも更に1回「既に積分処理して生成された一対のセンサデータ」が再入力される実施態様が示唆されているものと、認められる。

以上から、上記補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、上記補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。

また、原審の平成20年1月31日付け拒絶理由通知についても検討すると、補正後の請求項1の発明特定事項である、「既に積分処理して生成された一対のセンサデータが再度A/D変換されて再入力されることで、再入力された相関演算用のセンサデータを1回目にA/D変換されて入力された相関演算用のセンサデータに加算処理して格納するように構成されている」点に関し、拒絶理由通知で引用された引用文献2(特開平9-33248号公報)及び引用文献3(特開昭62-294213号公報)に開示されている技術は、低コントラストのデータが含まれる箇所に対し、再度積分処理をおこなったデータを加算する技術であり、「既に積分処理して生成された一対のセンサデータ」を加算する技術ではない。
また、本願の請求項1に係る発明は、既に積分処理されたセンサデータを再度A/D変換を介して入力することで、時間のかかる積分処理をおこなわないことによる処理時間の短縮とA/D変換誤差を小さくする効果を奏するものである。

したがって、本願の請求項1に係る発明は、原審の上記拒絶理由通知で引用された文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明し得たものであるともいえない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-10-06 
出願番号 特願2003-293852(P2003-293852)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (G01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大和田 有軌  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 小松 徹三
松浦 久夫
発明の名称 測距装置  
代理人 小林 和憲  
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