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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1225570
審判番号 不服2008-23901  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-18 
確定日 2010-10-21 
事件の表示 特願2003-378033号「真空処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-142052号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年11月7日の出願であって、 平成20年8月4日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成20年9月18日に本件審判が請求されるとともに、同年10月20日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年10月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1. 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
基板を表面側で支持するヒータカバーと、
前記ヒータカバーの裏面側に対向するように距離をおいて配置され、基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータと、
前記ヒータカバーの温度を測定する複数の温度センサーと、
前記複数の温度センサーにより測定された温度データが入力される複数の温度制御部とを具備し、
前記基板加熱ヒータは、長手方向が第1方向であり前記第1方向と直角な第2方向に配列される複数の棒状ヒータを備え、
前記棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで前記第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有し、
前記ヒータカバーは、前記複数の発熱部のそれぞれに相対する複数の加熱領域を有し、
前記複数の温度センサーは、前記複数の加熱領域のそれぞれの温度を測定し、
前記複数の温度制御部は、前記測定された温度に基づいて、前記ヒータカバーの前記複数の加熱領域のそれぞれの温度が目標設定温度となるように、前記基板加熱ヒータの前記複数の発熱部における発熱量を制御し、
前記複数の棒状ヒータの各々が、前記複数の発熱部を有し、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に沿って分布する第1発熱部、第2発熱部及び第3発熱部を少なくとも含み、前記第2発熱部は前記第1発熱部と前記第3発熱部の間に位置し、
前記複数の加熱領域は、前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記第3発熱部のそれぞれに相対する第1加熱領域、第2加熱領域及び第3加熱領域を少なくとも含み、前記第2加熱領域は前記第1加熱領域と前記第3加熱領域の間に位置し、
前記複数の温度センサーは、前記第1加熱領域、前記第2加熱領域及び前記第3加熱領域のそれぞれの温度を測定する第1温度センサー、第2温度センサー及び第3温度センサーを含み、
前記複数の温度制御部は、
前記第1温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第1加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第1発熱部における発熱量を制御する第1温度制御部と、
前記第2温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第2加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第2発熱部における発熱量を制御する第2温度制御部と、
前記第3温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第3加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第3発熱部における発熱量を制御する第3温度制御部とを含む真空処理装置。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の棒状ヒータ」について、「各々が、前記複数の発熱部を有し」と、「複数の発熱部」について、「第1方向に沿って分布する第1発熱部、第2発熱部及び第3発熱部を少なくとも含み、前記第2発熱部は前記第1発熱部と前記第3発熱部の間に位置し」と、「複数の加熱領域」について、「前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記第3発熱部のそれぞれに相対する第1加熱領域、第2加熱領域及び第3加熱領域を少なくとも含み、前記第2加熱領域は前記第1加熱領域と前記第3加熱領域の間に位置し」と、「複数の温度センサー」について、「前記第1加熱領域、前記第2加熱領域及び前記第3加熱領域のそれぞれの温度を測定する第1温度センサー、第2温度センサー及び第3温度センサーを含み」と、
「複数の温度制御部」について、「前記第1温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第1加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第1発熱部における発熱量を制御する第1温度制御部と、
前記第2温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第2加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第2発熱部における発熱量を制御する第2温度制御部と、
前記第3温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第3加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第3発熱部における発熱量を制御する第3温度制御部とを含む」と、限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2. 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開2002-212738号公報(以下「刊行物1」という。)には、大面積にて均一な加熱を行う基板加熱ヒータ及びそれを備えたプラズマCVD装置、スパッタリング装置、ドライエッチング装置などの真空処理装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 減圧環境とされる真空処理室内にて、製膜等の基板処理が施される基板を表面に支持する板状のヒータカバーの裏面に沿って設けられ、前記基板の製膜等の基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータであって、
内部が気密にされた管体内に、電流の供給により発熱する発熱体が長手方向にわたって設けられた複数の棒状ヒータが同一面内に整列されて配設されていることを特徴とする基板加熱ヒータ。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】従来より、プラズマCVD装置、スパッタリング装置、ドライエッチング装置などの真空処理装置に設けられた基板加熱ヒータとしては、特開平5-43391号公報に示されるものが知られている。・・(略)・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年では、真空処理装置によって処理する基板の大型化が要求されており、・・(略)・・問題があった。
【0006】さらに、基板加熱ヒータ1の内部の発熱体3や制御用の熱電対8に不具合が生じた際には、外箱2を分解する必要があるが、この外箱2は、大型化に伴って極めて重厚に溶接を行っているため、外箱2の分解が困難であり、また、無理に分解した場合は、板材が損傷してしまい、再度組み立てることができなかった。
【0007】この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、製膜等の処理(以下、代表例として製膜を例に記述する)を施す基板の大型化に対応して大型化される真空処理装置に用いて好適な基板加熱ヒータ及びそれを備えた真空処理装置を提供することを目的としている。」
(ウ)「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の基板加熱ヒータは、減圧環境とされる真空処理室内にて、製膜等の基板処理が施される基板を表面に支持する板状のヒータカバーの裏面に沿って設けられ、前記基板の製膜等の基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータであって、内部が気密にされた管体内に、電流の供給により発熱する発熱体が長手方向にわたって設けられた複数の棒状ヒータが同一面内に整列されて配設されていることを特徴としている。これにより、減圧環境のため棒状ヒータからヒータカバーへは輻射伝熱を主体に伝熱されるため、棒状の発熱体分布があってもヒータカバーにはほぼ均一に伝熱される。更にヒータカバーはその板の厚みにより均熱効果があるため、基板を均一温度分布に加熱することが可能である。また、内部が気密にされた管体内に発熱エレメントが設けられた複数の棒状ヒータを整列させた構造であるので、装置の大型化に極めて容易に対応させることができ、従来のように、発熱体全体を外箱で囲って気密構造とした基板加熱ヒータと比較して、軽量化及び低コスト化を図ることができる。」
(エ)「【0029】(第1実施形態例)まず、基板加熱ヒータ及びそれを備えた真空処理装置の第1実施形態例を説明する。図1において、符号11は、真空処理装置である。この真空処理装置11は、図示しない真空ポンプによって減圧される真空チャンバ12aによって形成された製膜室12の略中央に、両側面にラダー電極13が設けられた製膜ユニット14を有しており、1バッチあたり2枚の基板Kを同時に処理できる構造としている。この製膜ユニット14の両側面側に、ヒータカバー15を介して基板加熱ヒータ16が設けられている。そして、製膜室12内に製膜ガスを供給した状態にて、接地電極として設けられたヒータカバー15に基板Kを支持させて基板加熱ヒータ16によって基板Kを加熱しながら、シランガス雰囲気中で非接地電極として設けられたラダー電極13に高周波電力を給電することにより、シランガスが分解されてガラス等の基板Kの表面にシリコン製膜が施されるようになっている。
【0030】上記構成の真空処理装置11に設けられた基板加熱ヒータ16は、複数のヒータユニット21から構成されている。図2に示すように、これらヒータユニット21は、導入パイプ22が接続された集電ボックス23と、この集電ボックス23に互いに間隔をあけて略平行に立設された状態に接続された複数の棒状のカートリッジヒータ(棒状ヒータ)24とを有しており、これら集電ボックス23とカートリッジヒータ24及び集電ボックス23と導入パイプ22とがそれぞれ気密的に接続され、その内部が略大気圧とされている。」
(オ)「【0031】カートリッジヒータ24は、管体24a内に発熱エレメント(発熱体)31を配設した構造とされており、この発熱エレメント31は、端子台32に接続されている。この端子台32には、導入パイプ22を通された導電線33が接続されており、これら導電線33から電力が供給されて、発熱エレメント31が発熱するようになっている。また、導入パイプ22からは、熱電対34も導入されるようになっており、カートリッジヒータ24内の熱が検出されるようになっている。ここで、導入パイプ22は、前述の図12、図13と同様に真空処理装置と真空シールするようになっている。」
(カ)「【0035】なお、カートリッジヒータ24は、長さ寸法A、Bからなる下端部分及び上端部分が発熱が不均一もしくは非発熱である発熱不安定部分であり、したがって、この基板加熱ヒータ16では、長さ寸法Cからなる中間部分の発熱安定部分にてヒータカバー15を介して基板Kを加熱する。」
(キ)「【0043】このように反射板51、52を備えた第4実施形態例の基板加熱ヒータ16によれば、カートリッジヒータ24の発熱の裏面及び周囲への散出を防止することができ、加熱効率及び被加熱基板の温度分布を大幅に向上させることができる。
【0044】そして、上記のように、カートリッジヒータ24の周囲及び裏面に反射板51、52を設けることにより、基板加熱ヒータ16からヒータカバー15への加熱の均一化が図られる。すなわち、全体の加熱容量が大きくなる。ここで、反射板51、52で上下及び両側部における熱散出が規制されるも基板周辺温度はその中央部分より低くなり易い傾向がある。このため、図8に示すように、上下部分Z1、両側部分Z2及び四隅部分Z3の発熱量を大きくし、中央部分Z4は、略均一な発熱分布とすることで基板温度の均一性を向上させる。
【0045】ここで、カートリッジヒータ24は、その内部にある発熱エレメント31がらせんコイル状に巻かれているので、この発熱エレメント31の巻き密度を変えることで発熱密度を容易に調整し、カートリッジヒータ24の発熱量を変化させることができる。なお、本実施形態例では1mを越える大型の被加熱基板サイズに対して、Z1の長さ△l1はZ4の長さl1の0.1?0.2倍とし、Z3の幅△l2はZ4の幅l2の0.1?0.2倍として、中央部分Z4の発熱量を1とすると、上下部分Z1は2?6、両側部分Z2は2?6、四隅部分Z3は8?12とされる。つまり、中央部分Z4の範囲付近に基板Kを配設することにより、基板Kを均一な温度分布にて加熱することができる。」

・記載事項(エ)の「真空処理装置」は、「ヒータカバー15を介して基板加熱ヒータ16が設けられている」ものであって、その「ヒータカバー15」は、記載事項(ア)の「基板を表面に支持する板状のヒータカバー」であり、基板を表面側で支持するヒータカバーといえるものであり、「基板加熱ヒータ16」は、記載事項(ア)の「基板加熱ヒータ」であって、記載事項(ウ)の「請求項1記載の基板加熱ヒータは、減圧環境とされる真空処理室内にて、製膜等の基板処理が施される基板を表面に支持する板状のヒータカバーの裏面に沿って設けられ、前記基板の製膜等の基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱」し、「減圧環境のため棒状ヒータからヒータカバーへは輻射伝熱を主体に伝熱される」ものであり、ヒータカバーの裏面側に対向するように距離をおいて配置され、基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータといえるものである。
そうすると、記載事項(エ)の「真空処理装置」は、基板を表面側で支持するヒータカバーと、前記ヒータカバーの裏面側に対向するように距離をおいて配置され、基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータとを備える真空処理装置といえる。
また、該真空処理装置の基板加熱ヒータ16は、記載事項(エ)の「導入パイプ22」を備え、記載事項(オ)の「導入パイプ22からは、熱電対34も導入されるようになっており、カートリッジヒータ24内の熱が検出されるようになっている」ものであって、記載事項(オ)の「熱電対34」は、実質的に記載事項(イ)の「制御用の熱電対8」に対応するものであるので、真空処理装置は、熱電対34、および、熱電対34からの熱信号が入力される制御部を具備するものともいえる。
・記載事項(エ)の「基板加熱ヒータ16」は、図1に図示された様に、記載事項(エ)の「集電ボックス23に互いに間隔をあけて略平行に立設された状態に接続された複数の棒状のカートリッジヒータ(棒状ヒータ)24」を有したものであるので、長手方向と直角な方向に配列される複数の棒状ヒータ24を備えるものといえる。
・記載事項(エ)の「棒状のカートリッジヒータ(棒状ヒータ)24」は、記載事項(ア)の「棒状ヒータ」であって、「電流の供給により発熱する発熱体が長手方向にわたって設けられた」ものであるので、棒状ヒータは、長手方向にわたって設けられた発熱部を有するといえる。

すると、記載事項(エ)の真空処理装置に着目して刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「基板を表面側で支持するヒータカバー15と、
前記ヒータカバーの裏面側に対向するように距離をおいて配置され、基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータ16と、
熱電対34と、
熱電対34からの熱信号が入力される制御部とを具備し、
前記基板加熱ヒータは、長手方向と直角な方向に配列される複数の棒状ヒータを備え、
前記棒状ヒータは、長手方向にわたって設けられた発熱部を有する真空処理装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開昭62-259384号公報(以下「刊行物2」という。)には、特にヒータエレメントが長手管状のシーズ内に配設されて成るシーズヒータを加熱源とする熱板の改良に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ク)「熱板は加熱可能な構造を有する板であって、プレス装置等において被加工物を加熱するために用いられている。」(第1頁右下欄第4?6行)
(ケ)「つまり、本発明に従う熱板によれば、熱板の有効面を複数のゾーンに分割するに際して、従来の熱板よりもシーズヒータの長手方向においてその有効面をより細かく分割することができるのであり、従ってそれら分割した各ゾーンの温度をそれぞれ独立して制御することにより、熱板の温度分布状態をより精度良く制御することが可能となるのであり、熱板を均一な温度に加熱する場合においても、従来のものよりもその温度を一層均一化することが可能となるのである。」(第2頁右下欄第13行?第3頁左上欄第2行)
(コ)「(実施例)
・・(略)・・第1図は、本発明に従う熱板を備えたホットプレス装置の一例を示すもので・・(略)・・各熱板22は、第2図に示されているように、矩形状の平面形態を有しており、その内部には熱板22を板面に平行に貫通する状態で複数(ここでは6つ)のヒータ挿入孔25が略等間隔に形成されている。そして、それらヒータ挿入孔25内にそれぞれ同一方向から挿入されて多回路シーズヒータとしてのシーズヒータ26が配置されている。
これらシーズヒータ26は、第3図に示されているように、一端が閉塞された長手管状のシーズ28内に同一形状のヒータエレメント30(30A、30B、30C)が3個直列に配設されると共に、それらヒータエレメント30の各一端に対して個々に接続されたリード線32(32A、32B、32C)とそれらヒータエレメント30の他端に共通に接続されたリード線34とがシーズ28の開口部から延び出させられた構造を有しており、リード線32の各対応するものと共通のリード線34との間に電圧を印加することにより、それらヒータエレメント30を択一的に通電加熱し得るようになっている。そして、本実施例では、前述のように、これらシーズヒータ26が熱板22の各ヒータ挿入孔25内に同一方向から挿入されて配置されると共に、それらシーズヒータ26の配置された各熱板22がホットプレス装置に対してそれぞれ同一方向を向いた状態で配設され、各シーズヒータ26から引き出されたリード線32,34がそれぞれ前記被加工物24の搬入方向(成形品の搬出方向)とは反対側の装置側方において引き回し、配線せしめられている。
なお、前記シーズヒータ26のヒータエレメント30は、通常、所定のセラミックスコアに巻回され、シーズ28内面との間に充填せしめられた耐熱性の絶縁材によって該セラミックスコアの外面に固定せしめられて配設されることとなる。また、各リード線32,34はそれぞれセラミックスコアを貫通する状態で、且つ互いに適当な間隔を隔てて絶縁された状態で、該セラミックスコア内に一体的に埋め込まれて配設されることとなる。
また、本実施例では、このようなホットプレス装置において、各熱板22に配設されたシーズヒータ26のヒータエレメント30が第4図に示されている如き制御回路によって通電制御せしめられることにより、第2図に示されているように、熱板22の有効面(ここでは全面)が枡目状に9分割された○1?○9の各ゾーン毎に独立して加熱制御されるようになっている。」(第3頁左下欄第3行?第4頁右上欄第7行。なお、「○1」?「○9」は、丸数字を表す。)
(サ)「すなわち、第4図において、36は、熱板22の各分割ゾーンにそれぞれ対応して設けられたPID制御機能付きの温度コントローラであって、それぞれ対応する半導体無接点リレー(以下、SSリレーと略称する)38に接続されており、各対応するゾーンに配設された熱電対40(第2図参照)からの温度信号に基づき、各対応するSSリレー38を予め設定されたプログラムに従ってON・OFF制御するようになっている。そして、これにより、図示しない電源から各対応するヒータエレメント30 (ここでは各2つのヒータエレメント30,30)に供給される電力を調整し、各対応するゾーンを予め設定された昇温速度で昇温させると共に、各対応するゾーンの温度が目標加熱温度まで上昇した後は、それら各対応するゾーンの温度をその目標加熱温度に保持するようになっている。」(第4頁右上欄第8行?左下欄第4行)

・記載事項(コ)の「熱板22」は、「熱板22は、第2図に示されているように、矩形状の平面形態を有しており、その内部には熱板22を板面に平行に貫通ずる状態で複数(ここでは6つ)のヒータ挿入孔25が略等間隔に形成されている。そして、それらヒータ挿入孔25内にそれぞれ同一方向から挿入されて多回路シーズヒータとしてのシーズヒータ26が配置されている」ものであるので、熱板22は、長手方向と直角な方向に配列される複数のシーズヒータ26を備えたものといえる。
・記載事項(サ)の温度コントローラ36は、「熱板22の各分割ゾーンにそれぞれ対応して設けられたPID制御機能付きの温度コントローラであって、それぞれ対応する半導体無接点リレー(以下、SSリレーと略称する)38に接続されており、各対応するゾーンに配設された熱電対40(第2図参照)からの温度信号に基づき、各対応するSSリレー38を予め設定されたプログラムに従ってON・OFF制御するようになっている。そして、これにより、図示しない電源から各対応するヒータエレメント30(ここでは各2つのヒータエレメント30,30)に供給される電力を調整し、各対応するゾーンを予め設定された昇温速度で昇温させると共に、各対応するゾーンの温度が目標加熱温度まで上昇した後は、それら各対応するゾーンの温度をその目標加熱温度に保持するようになっている。」ものであるので、その「各対応するゾーンに配設された熱電対40」は、熱板22の各分割ゾーンのそれぞれの温度を測定するものといえる。
また、その「温度コントローラ36」は、熱電対40で測定された温度に基づいて、熱板22の各分割ゾーンのそれぞれの温度が目標加熱温度となるように、熱板22のヒータエレメント30に供給される電力を調整するものといえる。
・記載事項(コ)の「ヒータエレメント30」は、「第3図に示されているように、一端が閉塞された長手管状のシーズ28内に同一形状のヒータエレメント30(30A、30B、30C)が3個直列に配設されると共に、それらヒータエレメント30の各一端に対して個々に接続されたリード線32(32A、32B、32C)とそれらヒータエレメント30の他端に共通に接続されたリード線34とがシーズ28の開口部から延び出させられた構造を有しており、リード線32の各対応するものと共通のリード線34との間に電圧を印加することにより、それらヒータエレメント30を択一的に通電加熱し得るようになっている」ものであって、ヒータエレメント(30A、30B、30C)は、第3図において、シーズヒータ26の長手方向に沿って30A、30B、30Cの順に配置されており、ヒータエレメント30Bは、ヒータエレメント30Aとヒータエレメント30Cの間に位置したものであるので、ヒータエレメント30は、シーズヒータ26の長手方向に沿ってヒータエレメント30A、ヒータエレメント30B、ヒータエレメント30Cの順に配置され、ヒータエレメント30Bは、ヒータエレメント30Aとヒータエレメント30Cの間に位置したものといえる。
・記載事項(サ)の「熱板22の各分割ゾーン」は、記載事項(コ)の「第2図に示されているように、熱板22の有効面(ここでは全面)が枡目状に9分割された○1?○9の各ゾーン」であって、各分割ゾーン○1?○9と各ヒータエレメント(30A、30B、30C)との関係が第2図の様に図示されたものであるので、ゾーン○1のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○2のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○3のシーズヒータ26のヒータエレメント30C,ゾーン○4のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○5のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○6のシーズヒータ26のヒータエレメント30C,ゾーン○7のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○8のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○9のシーズヒータ26のヒータエレメント30Cのそれぞれに相対するゾーン○1?○9を含み、ゾーン○2,○5,○8はゾーン○1,○4,○7とゾーン○3,○6,○9の間に位置したものといえる。
・記載事項(サ)の「各対応するゾーンに配設された熱電対40」は、第2図記載の様に配置されたものであって、「各対応するゾーンに配設された熱電対40(第2図参照)からの温度信号に基づき、各対応するSSリレー38を予め設定されたプログラムに従ってON・OFF制御」して「各対応するゾーンの温度をその目標加熱温度に保持する」ためのものであるので、各対応するゾーンに配設された熱電対40は、ゾーン○1?○9のそれぞれの温度を測定するゾーン○1?○9の熱電対40を含むものといえる。
・記載事項(サ)の「温度コントローラ」は、第4図記載の「熱板22の各分割ゾーンにそれぞれ対応して設けられたPID制御機能付きの温度コントローラ」であって、「各対応するゾーンに配設された熱電対40(第2図参照)からの温度信号に基づき、各対応するSSリレー38を予め設定されたプログラムに従ってON・OFF制御」し「各対応するヒータエレメント30(ここでは各2つのヒータエレメント30,30)に供給される電力を調整」し、「各対応するゾーンの温度をその目標加熱温度に保持する」ものであるので、
ゾーン○1,○4,○7の各熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○1,○4,○7の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Aに供給される電力を調整する温度コントローラと、
ゾーン○2,○5,○8の各熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○2,○5,○8の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Bに供給される電力を調整する温度コントローラと、
ゾーン○3,○6,○9の各熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○3,○6,○9の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Cに供給される電力を調整する温度コントローラとを含むものといえる。
・記載事項(ケ)の「本発明に従う熱板」は、「分割した各ゾーンの温度をそれぞれ独立して制御することにより、熱板の温度分布状態をより精度良く制御することが可能となるのであり、熱板を均一な温度に加熱する場合においても、従来のものよりもその温度を一層均一化することが可能となる」ためのものであるので、熱板22に配設された各シーズヒータ26の各ヒータエレメント30が制御回路によって通電制御せしめられることにより、ゾーン毎に独立して加熱制御して温度を均一化する熱板といえる。

すると、刊行物2には、次の発明が開示されているものということができる。
「被加工物を加熱する熱板22と、
熱板22の各対応するゾーンに配設された熱電対40と、
各熱電対40からの温度信号に基づき、各対応するSSリレー38を予め設定されたプログラムに従ってON・OFF制御するようになっている熱板22の各分割ゾーンにそれぞれ対応して設けられたPID制御機能付きの温度コントローラ36とを具備し、
熱板22は、長手方向と直角な方向に配列される複数のシーズヒータ26を備え、
シーズヒータ26は、一端が閉塞された長手管状のシーズ28内に同一形状のヒータエレメント30A、30B、30Cを有し、
熱板22は、有効面が枡目状に9分割された○1?○9の各ゾーン毎に独立して加熱制御され、
各対応するゾーンに配設された熱電対40は、熱板22の各分割ゾーンのそれぞれの温度を測定し、
温度コントローラ36は、熱電対40で測定された温度に基づいて、熱板22の各分割ゾーンのそれぞれの温度が目標加熱温度となるように、熱板22の各ヒータエレメント30に供給される電力を調整し、
前記複数のシーズヒータ26の各々が、一端が閉塞された長手管状のシーズ28内に同一形状のヒータエレメント30(30A、30B、30C)が3個直列に配設され、
ヒータエレメント30は、シーズヒータ26の長手方向に沿ってヒータエレメント30A、ヒータエレメント30B、ヒータエレメント30Cの順に配置され、ヒータエレメント30Bは、ヒータエレメント30Aとヒータエレメント30Cの間に位置し、
各分割ゾーンは、ゾーン○1のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○2のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○3のシーズヒータ26のヒータエレメント30C,ゾーン○4のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○5のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○6のシーズヒータ26のヒータエレメント30C,ゾーン○7のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○8のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○9のシーズヒータ26のヒータエレメント30Cのそれぞれに相対するゾーン○1?○9を含み、ゾーン○2,○5,○8はゾーン○1,○4,○7とゾーン○3,○6,○9の間に位置し、
各対応するゾーンに配設された熱電対40は、ゾーン○1?○9のそれぞれの温度を測定するゾーン○1?○9の熱電対40を含み、
温度コントローラは、
ゾーン○1,○4,○7の各熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○1,○4,○7の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Aに供給される電力を調整する温度コントローラと、
ゾーン○2,○5,○8の各熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○2,○5,○8の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Bに供給される電力を調整する温度コントローラと、
ゾーン○3,○6,○9の各熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○3,○6,○9の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Cに供給される電力を調整する温度コントローラとを含み、
熱板22に配設された各シーズヒータ26の各ヒータエレメント30が制御回路によって通電制御せしめられることにより、ゾーン毎に独立して加熱制御して温度を均一化する熱板。」(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

3. 本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
・引用発明の「長手方向」は、本願補正発明の「第1方向」に相当し、引用発明の「長手方向と直角な方向」は、本願補正発明の「長手方向が第1方向であり前記第1方向と直角な第2方向」に相当する。
・引用発明の「熱電対34」と、本願補正発明の「ヒータカバーの温度を測定する複数の温度センサー」とは、「温度を測定する温度センサー」で共通するものである。
また、引用発明の「熱電対34からの熱信号が入力される制御部」と、本願補正発明の「複数の温度センサーにより測定された温度データが入力される複数の温度制御部」とは、前者の熱電対34が温度を測定するセンサーであり、そこからの信号は、測定された温度データであることが自明であるので、「温度センサーにより測定された温度データが入力される制御部」で共通するものである。
・引用発明の「棒状ヒータは、長手方向にわたって設けられた発熱部を有する」と、本願補正発明の「棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで前記第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有し」とは、「棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで第1方向にわたって設けられた発熱部を有する」で共通するものである。

(2)両発明の一致点
「基板を表面側で支持するヒータカバーと、
前記ヒータカバーの裏面側に対向するように距離をおいて配置され、基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータと、
温度を測定する温度センサーと、
温度センサーにより測定された温度データが入力される制御部とを具備し、
前記基板加熱ヒータは、長手方向が第1方向であり前記第1方向と直角な第2方向に配列される複数の棒状ヒータを備え、
前記棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで第1方向にわたって設けられた発熱部を有する真空処理装置。」

(3)両発明の相違点
(ア)本願補正発明は、「ヒータカバーの温度を測定する複数の温度センサー」を具備するのに対して、引用発明は熱電対34を具備するものの、その数は不明であり、「ヒータカバー」の温度を測定するものでもない点。
(イ)本願補正発明は、「複数の温度センサーにより測定された温度データが入力される複数の温度制御部」を具備するのに対して、引用発明は熱電対34からの熱信号が入力される制御部を具備するものの、その数、及び、制御内容は不明な点。
(ウ)本願補正発明は、「棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで前記第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有」するのに対して、引用発明は第1方向にわたって設けられた発熱部を有するものの、第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有するものではない点。
(エ)本願補正発明は、上記(ア)?(ウ)の複数の温度センサー、複数の温度制御部、複数の発熱部を前提として、「前記ヒータカバーは、前記複数の発熱部のそれぞれに相対する複数の加熱領域を有し、
前記複数の温度センサーは、前記複数の加熱領域のそれぞれの温度を測定し、
前記複数の温度制御部は、前記測定された温度に基づいて、前記ヒータカバーの前記複数の加熱領域のそれぞれの温度が目標設定温度となるように、前記基板加熱ヒータの前記複数の発熱部における発熱量を制御し、
前記複数の棒状ヒータの各々が、前記複数の発熱部を有し、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に沿って分布する第1発熱部、第2発熱部及び第3発熱部を少なくとも含み、前記第2発熱部は前記第1発熱部と前記第3発熱部の間に位置し、
前記複数の加熱領域は、前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記第3発熱部のそれぞれに相対する第1加熱領域、第2加熱領域及び第3加熱領域を少なくとも含み、前記第2加熱領域は前記第1加熱領域と前記第3加熱領域の間に位置し、
前記複数の温度センサーは、前記第1加熱領域、前記第2加熱領域及び前記第3加熱領域のそれぞれの温度を測定する第1温度センサー、第2温度センサー及び第3温度センサーを含み、
前記複数の温度制御部は、
前記第1温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第1加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第1発熱部における発熱量を制御する第1温度制御部と、
前記第2温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第2加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第2発熱部における発熱量を制御する第2温度制御部と、
前記第3温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第3加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第3発熱部における発熱量を制御する第3温度制御部とを含む」真空処理装置であるのに対して、引用発明の真空処理装置はそのような構成を有していない点。

4. 容易推考性の検討
(1)相違点(ア)について
ア.まず、刊行物2記載の発明と、本願補正発明の対応関係を検討する。
(a)刊行物2記載の発明の「熱電対40」は、本願補正発明の「温度センサー」に相当し、以下同様に、「シーズヒータ26」は、「棒状ヒータ」に、「各分割ゾーン」は、「複数の加熱領域」に、「目標加熱温度」は、「目標設定温度」に、「各ヒータエレメント30」は、「複数の発熱部」に相当する。
(b)刊行物2記載の発明の「各熱電対40からの温度信号に基づき、各対応するSSリレー38を予め設定されたプログラムに従ってON・OFF制御するようになっている熱板22の各分割ゾーンにそれぞれ対応して設けられたPID制御機能付きの温度コントローラ36」は、本願補正発明の「複数の温度センサーにより測定された温度データが入力される複数の温度制御部」に相当する。
(c)刊行物2記載の発明のシーズヒータ26の「長手方向」は、本願補正発明の「長手方向」に相当し、さらに、後者が「長手方向が第1方向」とするものであるので本願補正発明の「第1方向」にも相当する。
また、刊行物2記載の発明のシーズヒータ26の「長手方向と直角な方向」は、本願補正発明の「第2方向」に相当する。
(d)刊行物2記載の発明の「シーズヒータ26は、一端が閉塞された長手管状のシーズ28内に同一形状のヒータエレメント30A、30B、30Cを有し」は、本願補正発明の「棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで前記第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有」することに相当する。
(e)刊行物2記載の発明の「各ヒータエレメント30に供給される電力を調整」することは、本願補正発明の「複数の発熱部における発熱量を制御」することに相当する。
(f)刊行物2記載の発明の「ヒータエレメント30A」は、本願補正発明の「第1発熱部」に相当し、以下同様に、「ヒータエレメント30B」は、「第2発熱部」に、「各ヒータエレメント30C」は、「第3発熱部」に、「シーズヒータ26の長手方向に沿ってヒータエレメント30A、ヒータエレメント30B、ヒータエレメント30Cの順に配置され、ヒータエレメント30Bは、ヒータエレメント30Aとヒータエレメント30Cの間に位置」することは、「第1方向に沿って分布する第1発熱部、第2発熱部及び第3発熱部を少なくとも含み、前記第2発熱部は前記第1発熱部と前記第3発熱部の間に位置」することに、「ゾーン○1」は、「第1加熱領域」に、「ゾーン○2」は、「第2加熱領域」に、「ゾーン○3」は、「第3加熱領域」に、「ゾーン○1のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○2のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○3のシーズヒータ26のヒータエレメント30C,ゾーン○4のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○5のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○6のシーズヒータ26のヒータエレメント30C,ゾーン○7のシーズヒータ26のヒータエレメント30A,ゾーン○8のシーズヒータ26のヒータエレメント30B,ゾーン○9のシーズヒータ26のヒータエレメント30Cのそれぞれに相対するゾーン○1?○9を含み」は、「前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記第3発熱部のそれぞれに相対する第1加熱領域、第2加熱領域及び第3加熱領域を少なくとも含み」に、「ゾーン○1」の「熱電対40」は、「第1温度センサー」に、「ゾーン○2」の「熱電対40」は、「第2温度センサー」に、「ゾーン○3」の「熱電対40」は、「第3温度センサー」に、「ゾーン○1?○9のそれぞれの温度を測定するゾーン○1?○9の熱電対40」のうちゾーン○1,ゾーン○2,ゾーン○3のものは、「前記第1加熱領域、前記第2加熱領域及び前記第3加熱領域のそれぞれの温度を測定する第1温度センサー、第2温度センサー及び第3温度センサー」に相当する。
また、刊行物2記載の発明の「ゾーン○1」の「熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○1」「の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Aに供給される電力を調整する温度コントローラ」、「ゾーン○2」の「熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○2」「の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Bに供給される電力を調整する温度コントローラ」、「ゾーン○3」の「熱電対40によって測定された温度に基づいて、ゾーン○3」「の温度が目標加熱温度となるように、各シーズヒータのヒータエレメント30Cに供給される電力を調整する温度コントローラ」は、それぞれ、本願補正発明の「前記第1温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第1加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第1発熱部における発熱量を制御する第1温度制御部」、「前記第2温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第2加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第2発熱部における発熱量を制御する第2温度制御部」、「前記第3温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第3加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第3発熱部における発熱量を制御する第3温度制御部」に相当する。
(g)刊行物2記載の発明の「被加工物を加熱する熱板22」と、本願補正発明の「ヒータカバーの裏面側に対向するように距離をおいて配置され、基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータ」とは、「被加工物を加熱する加熱ヒータ」である点で共通する。
また、刊行物2記載の発明の「熱板22」と、本願補正発明の「ヒータカバー」とは、「被加工物を加熱する板」である点で共通するものである。
(h)刊行物2記載の発明の「熱板22の各対応するゾーンに配設された熱電対40」と、本願補正発明の「前記ヒータカバーの温度を測定する複数の温度センサー」とは、「被加工物を加熱する板の温度を測定する複数の温度センサー」である点で共通するものである。
(i)刊行物2記載の発明の「熱板22は、有効面が枡目状に9分割された○1?○9の各ゾーン毎に独立して加熱制御され」る構成と、本願補正発明の「ヒータカバーは、前記複数の発熱部のそれぞれに相対する複数の加熱領域を有し」とは、「被加工物を加熱する板は、複数の発熱部のそれぞれに相対する複数の加熱領域を有」する点で共通するものである。

そうすると、刊行物2記載の発明と本願補正発明とは、次の点で一致するものである。
「被加工物を加熱する加熱ヒータと、
被加工物を加熱する板の温度を測定する複数の温度センサーと、
前記複数の温度センサーにより測定された温度データが入力される複数の温度制御部とを具備し、
前記加熱ヒータは、長手方向が第1方向であり前記第1方向と直角な第2方向に配列される複数の棒状ヒータを備え、
前記棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで前記第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有し、
被加工物を加熱する板は、複数の発熱部のそれぞれに相対する複数の加熱領域を有し、
前記複数の温度センサーは、前記複数の加熱領域のそれぞれの温度を測定し、
前記複数の温度制御部は、前記測定された温度に基づいて、前記被加工物を加熱する板の前記複数の加熱領域のそれぞれの温度が目標設定温度となるように、前記加熱ヒータの前記複数の発熱部における発熱量を制御し、
前記複数の棒状ヒータの各々が、前記複数の発熱部を有し、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に沿って分布する第1発熱部、第2発熱部及び第3発熱部を少なくとも含み、前記第2発熱部は前記第1発熱部と前記第3発熱部の間に位置し、
前記複数の加熱領域は、前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記第3発熱部のそれぞれに相対する第1加熱領域、第2加熱領域及び第3加熱領域を少なくとも含み、前記第2加熱領域は前記第1加熱領域と前記第3加熱領域の間に位置し、
前記複数の温度センサーは、前記第1加熱領域、前記第2加熱領域及び前記第3加熱領域のそれぞれの温度を測定する第1温度センサー、第2温度センサー及び第3温度センサーを含み、
前記複数の温度制御部は、
前記第1温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第1加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第1発熱部における発熱量を制御する第1温度制御部と、
前記第2温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第2加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第2発熱部における発熱量を制御する第2温度制御部と、
前記第3温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第3加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第3発熱部における発熱量を制御する第3温度制御部とを含む」点。

イ.つぎに、引用発明と、刊行物2記載の発明との関係について検討する。
引用発明は、記載事項(ウ)に「基板を均一温度分布に加熱する」と記載されている様に、基板を均一温度分布に加熱するという課題を有するものである。
一方、刊行物2記載の発明は、「熱板22に配設された各シーズヒータ26の各ヒータエレメント30が制御回路によって通電制御せしめられることにより、ゾーン毎に独立して加熱制御して温度を均一化する」ものであり、かつ、その熱板(本願発明の「ヒーターカバー」、及び、引用発明の「ヒーターカバー」と被加工物を加熱する板である点で共通するもの。)の温度の均一化が、引用発明の「基板を均一温度分布に加熱する」ことに寄与することも明らかであるので、引用発明の基板を均一温度分布に加熱するために、刊行物2記載の発明を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。
なお、引用発明は、一応その構成単独で「基板を均一温度分布に加熱する」機能を有するものであるが、記載事項(キ)に「反射板51、52を設けることにより、基板加熱ヒータ16からヒータカバー15への加熱の均一化が図られる。」、「発熱エレメント31の巻き密度を変えることで発熱密度を容易に調整し、・・(略)・・基板Kを均一な温度分布にて加熱することができる。」と、さらに付加的な温度の均一化手段を付け加えることも意図したものであるので、引用発明に対する、さらなる温度の均一化手段を付加することは否定されるものではない。

ウ.そうすると、引用発明に、刊行物2記載の発明を適用して、引用発明の熱電対34を、刊行物2記載の発明の様な「被加工物を加熱する板の温度を測定する複数の温度センサー」として、相違点(ア)に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(2)相違点(イ)について
上記「(1)イ.」記載の様に、引用発明に刊行物2記載の発明を適用することは当業者が容易に想到し得たことであり、そのために、引用発明の制御部を、刊行物2記載の発明の様な「複数の温度センサーにより測定された温度データが入力される複数の温度制御部」として、相違点(イ)に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(3)相違点(ウ)について
上記「(1)イ.」記載の様に、引用発明に刊行物2記載の発明を適用することは当業者が容易に想到し得たことであり、そのために、引用発明の棒状ヒータを、刊行物2記載の発明の様な「1本あるいは複数本の組み合わせで前記第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有」するものとして、相違点(ウ)に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(4)相違点(エ)について
上記「(1)イ.」記載の様に、引用発明に刊行物2記載の発明を適用することは当業者が容易に想到し得たことであり、そのために、上記(1)?(3)様に複数の温度センサー、複数の温度制御部、複数の発熱部を有する構成とすると共に、それらを刊行物2記載の発明の様な「被加工物を加熱する板は、複数の発熱部のそれぞれに相対する複数の加熱領域を有し、
前記複数の温度センサーは、前記複数の加熱領域のそれぞれの温度を測定し、
前記複数の温度制御部は、前記測定された温度に基づいて、前記被加工物を加熱する板の前記複数の加熱領域のそれぞれの温度が目標設定温度となるように、前記加熱ヒータの前記複数の発熱部における発熱量を制御し、
前記複数の棒状ヒータの各々が、前記複数の発熱部を有し、
前記複数の発熱部は、前記第1方向に沿って分布する第1発熱部、第2発熱部及び第3発熱部を少なくとも含み、前記第2発熱部は前記第1発熱部と前記第3発熱部の間に位置し、
前記複数の加熱領域は、前記第1発熱部、前記第2発熱部及び前記第3発熱部のそれぞれに相対する第1加熱領域、第2加熱領域及び第3加熱領域を少なくとも含み、前記第2加熱領域は前記第1加熱領域と前記第3加熱領域の間に位置し、
前記複数の温度センサーは、前記第1加熱領域、前記第2加熱領域及び前記第3加熱領域のそれぞれの温度を測定する第1温度センサー、第2温度センサー及び第3温度センサーを含み、
前記複数の温度制御部は、
前記第1温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第1加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第1発熱部における発熱量を制御する第1温度制御部と、
前記第2温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第2加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第2発熱部における発熱量を制御する第2温度制御部と、
前記第3温度センサーによって測定された温度に基づいて、前記第3加熱領域の温度が目標設定温度となるように、前記第3発熱部における発熱量を制御する第3温度制御部とを含む」ものとして、相違点(エ)に係る構成とすることも、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(5)本願補正発明の作用効果も、引用発明、刊行物2記載の発明から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5. むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1. 本願発明
平成20年10月20日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成20年2月14日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
基板を表面側で支持するヒータカバーと、
前記ヒータカバーの裏面側に対向するように距離をおいて配置され、基板処理時に前記ヒータカバーを介して前記基板を加熱する基板加熱ヒータと、
前記ヒータカバーの温度を測定する複数の温度センサーと、
前記複数の温度センサーにより測定された温度データが入力される複数の温度制御部と
を具備し、
前記基板加熱ヒータは、長手方向が第1方向であり前記第1方向と直角な第2方向に配列される複数の棒状ヒータを備え、
前記棒状ヒータは、1本あるいは複数本の組み合わせで前記第1方向に沿って分布する複数の発熱部を有し、
前記ヒータカバーは、前記複数の発熱部のそれぞれに相対する複数の加熱領域を有し、
前記複数の温度センサーは、前記複数の加熱領域のそれぞれの温度を測定し、
前記複数の温度制御部は、前記測定された温度に基づいて、前記ヒータカバーの前記複数の加熱領域のそれぞれの温度が目標設定温度となるように、前記基板加熱ヒータの前記複数の発熱部における発熱量を制御する
真空処理装置。」

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、2とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3. 対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、引用発明、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4. むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-06 
出願番号 特願2003-378033(P2003-378033)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
P 1 8・ 575- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 氏原 康宏中里 翔平  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 中川 真一
冨岡 和人
発明の名称 真空処理装置  
代理人 上田 邦生  
代理人 藤田 考晴  

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