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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62D
管理番号 1225680
審判番号 不服2008-28852  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-12 
確定日 2010-10-19 
事件の表示 特願2003-543876号「所定の衝撃エネルギー吸収性を有する自動車用コンポジット構造部材」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月22日国際公開、WO03/42024、平成17年 4月 7日国内公表、特表2005-508797号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、2002年(平成14年)11月14日(パリ条約による優先権主張 2001年(平成13年)11月14日、米国、2001年(平成13年)12月20日、英国)を国際出願日とする特許出願であって、平成20年 8月12日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年11月12日付けで本件審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正(前置補正)がなされた。
一方、当審においても平成21年10月30日付けで拒絶理由1及び2を通知し、これに対して、応答期間内である平成22年 5月 6日付けで手続補正がなされる共に意見書が提出されたところである。
そして、この出願の請求項1?5に係る発明は、上記平成22年 5月 6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
外力から衝撃を受けた際の自動車車両の変形性を減じ及び防止するためのエネルギー制御強化システムであって、
a)自動車車両のフロント長手部分のフレームレールであって、その内部に空洞部を有する、フレームレール、
b)前記フレームレール内に配置された空洞内に配置するように適合された、外表面を有する少なくとも1つの構造強化部材、及び前記構造強化部材の前記外表面より内側に形成された、少なくとも一つの、ノッチ、ホール、段差又は幾何学的形状が変化された部分であって、前記衝撃の際に衝撃エネルギーにより所定の長手方向の変形を起こすように設計されているところのトリガー、及び
c)前記構造強化部材の少なくとも一部の外表面に且つ前記トリガーの両側に配置され、前記フレームレールの空洞内に前記構造強化部材を配置してから発泡されることができて、前記フレームレールの空洞部の内表面に前記構造強化部材を結合するところの構造発泡体を生成する発泡性物質、を含み、前記発泡性物質は、上記トリガーと協働して前記衝撃エネルギーにより前記フレームレールが所定の長手方向の変形を起こすよう制御する、上記システム。」

2.引用例とその記載事項
平成21年10月30日付け拒絶理由通知の理由1で引用した本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-147255号公報(以下「引用例1」という。)には、「車両及びそのレインフォース」に関し、図面とともに以下の事項(ア)?(キ)が記載または示されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乗用車、トラック等のフレーム付き車両、モノコックボディ型車両等の車両、及びその車両に用いるレインフォースに関し、特にその事故に伴う衝突時の衝撃の緩和と乗員保護を課題とするものである。」

(イ)「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について図1及び図8?13を参照して説明する。
(実施例の概要)本実施例は、車両が衝突した際に、車両のフレーム1を折れ曲がりによって衝突エネルギーを吸収させるキックアップ部2の内部又は外部にレインフォース3を設け、且つレインフォース3の一部とフレーム1のキックアップ部2との間に空間部Cを形成するようにし、フレーム1にある想定量以上の折れが生じた場合にのみ作用するように構成する。即ち、レインフォース3はそれ自身の塑性変形時に発生する抗力に加え、キックアップ部2の折れ曲がりによる断面形状の変化を抑制することによりフレーム1の折れ抗力を高めるものである。
【0015】(実施例の具体的構成)
(車体の構成)車体の全体構造及びフレーム構造は、図2,3に示されるように従来構造とは基本的には変わりはない。このことは本発明が従来の車両に容易に適用できることを示している。即ち、図1及び図8に示すように、フレーム1の前後方向のメインフレーム4、4は2本の鋼製のコ型枠を嵌合して閉断面として構成され、その前部が折れ曲げられてキックアップ部2が形成されている。
【0016】メインフレーム4のキックアッブ部2とは、図2,3に示されるように車両のメインフレーム4を車体の側面から見た際に、車室のドアやセンターピラーが配設される部分のメインフレーム4の地上高に対して、前車輪やフロントピラーが配設される部分のメインフレーム4が上方へ折り曲げられて地上高が高められている部分を指す。これは車両の車輪をメインフレーム4が支持するために必要なフレーム構造であって、この折り曲げ部をメインフレーム4のキックアップ部2と称している。フレーム1に対して前方からの衝撃力が加えられると、メインフレーム4は収縮して衝撃力を吸収しようとする。この際に、図4に示されるようにキックアップ部2はより大きく変形する。本実施例では上記キックアップ部2にレインフォース3を配設する。
【0017】(レインフォース3の形状について)レインフォース3は、特に図8に示されるように、後方の本体部3aが上下断面においてコ字型に形成されていると共に全体が側面視舟型に形成される。即ち、その前方の底部3bは上方に湾曲して形成され、その上部前寄りには溝状の凹部3cが形成される。上記凹部3cから後の本体部3aはメインフレーム4の内形状と略同一形状に形成される。レインフォース3はキックアップ部2の内部に嵌合・配設され、フレーム1のキックアップ部2の折れ部2aの位置より車両外側の内下面とレインフォース3の下側との間に空間部Cが形成される。
【0018】そして、一次衝撃力に対してはフレーム1で抗力を発揮させ、それ以上の衝撃力に対しては、レインフォース3の上面に設けた凹部3cとキックアップ部2の折れ部2aとを直接合致させ衝撃力を吸収させるように構成する。前方の底部3bの湾曲形状は種々の条件から導き出されるが、その導き出し方法について説明する(図9参照)。」

(ウ)「【0020】1.図11に示される矢印で指している部分は、抗力を素早く立ち上げる上で重要であるため、重ね書きで求めた形状を極力忠実に守るべきである。同矢印のうち、凹部3cに作用する矢印αは断面形状変化の抑制、前方下面の底部3bの湾曲部に作用する矢印βはレインフォース3自体の抗力をメインフレーム4に伝える役目を果たす。
【0021】2.θ_(30)までのキャブG特性に影響をを与えないために、レインフォース3のメインフレーム4内部への固定部5は変形後も目立った変形の及んでいない後方の範囲のみで溶接等により行う。以上の説明からわかるように、本発明はメインフレーム4には格別の細工をせずに適用できるレインフォース3の構造であって、キックアップ部2に加わる過大な衝突エネルギーを吸収する構造である。
【0022】(実施例の作用)本実施例を採用しない場合は、固定壁への30km/hで正面衝突によりクラッシュゾーンの大半を使って潰してしまう走行車を想定したときにその車両前部のF一δ特性が図12に示したものを前提とし、衝突速度を35km/hに増加した分Bの工ネルギーは30km/hの最大フレーム変形量S_(30)以降の変形で吸収することとなり、メインフレーム4変形量は大きく増えて客室変形が過大となる。
【0023】しかし、本実施例の構成により、S_(30)以降の抗力が高まり、レインフォース3がそのエネルギー増加分B’を吸収してメインフレーム4変形量は大きく増えない。よって、客室変形が少なくて済む。また、S_(30)の時点において、進行中のメインフレーム4の変形現象がキックアップ部2の下方向への折れである場合、前述した方法によって導き出した形状のレインフォース3をキックアップ部2内部に設けることにより、S_(30)以降の抗力が高まり、より少ないストロークS’_(35)で速度増加分Bの工ネルギーを吸収することができる。」

(エ)「【0025】また、レインフォース3の上面にはU形溝3cが形成されており、そのU形溝3cはメインフレーム4のキックアップ部2の折れ部2aと丁度対向する位置、つまりキックアッブ部2の折れ部2aの真下に溝3cを置くことにより、衝突時に溝3cに折れ部2aが直接嵌まる構造で、レインフォース3が確実にキックアップ部2をキャッチして断面形状変化を抑制する。
【0026】(実施例の効果)以上、本実施例は、レインフォース3を付設したメインフレーム4の特性を生かしながら、いかなる衝突形態に対しても段階的にエネルギーを吸収することができる構造としている。しかも安価に、軽量で、装着もし易く、結果的にキャピン内の乗員の保護性を確実に向上させる構造である。そして、通常走行時はメインフレーム4に作用するねじり荷重や曲げ荷重に対して、所定の剛性を保待できる利点がある。換言すれば、衝突時にある変形量に達するまでキャブG特性を変化させることなく、狙った変形量以上の領域(実施例では35km/h以上)において急激(レインフォース3の設定次第で穏やかも可能)に変形の進行を抑えることができる。これによりキャブGと客室変形量のバランスとりが極めて容易となる。」

(オ)「【0029】(その他の実施例)本発明は実施例でも述べたとおり、客室変形量が過大となるような衝突条件での変形量の増加を下げるための発明であり、有効なケースとして以下が考えられる。本発明のレインフォースはフレーム付き車両に限らず、衝突中に基本構造部材が折れ曲がり、これによってエネルギー吸収をする車両(例モノコックボディ)の全てに応用できる。また前面衝突に限らず後面,側面衝突等、他の衝突形態にも応用できる。また、上記実施例はレインフォース3を閉断面形状のメインフレーム4の内部に装着したが、メインフレーム4の外部に設けても良く、また、レインフォース3の内部に更なるレインフォース(図示せず)を配置しても良い。また、キックアップ部2の内外にレインフォースを併設しても良い。」

(カ)「【0031】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されているので、下記の効果を奏する。
1.請求項1記載の発明によれば、フレームのキックアップ部に衝突荷重が作用したとき、フレームに一次衝撃力に対する抗力を発揮させ、それ以上の衝撃力に対しては、レインフォースに衝撃力を吸収させることで、客室に発生する減速度の時間履歴と客室変形量のバランスをとることが容易になり、走行車の安全設計が容易となる。また、段階的に衝突のエネルギーを吸収させることができるから、衝突時の乗員保護を向上させることができ、併せて安価に、軽量で、装着もし易い。そして、通常走行時はフレームに作用するねじり荷重や曲げ荷重に対して、所定の剛性を保持できる。また、この構造によればコスト・重量・組付け工数・作業性の向上が図れる。
【0032】2.請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、レインフォースをフレームの内部に設けることにより、フレームの構成がコンパクトになり、また、レインフォースの抗力をフレームに充分伝えることができる。
3.請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、フレームを車両の前後方向に延設し、該フレームにおけるキックアップ部の折れ部より車両前方の内下面に対してレインフォースの下面を傾斜させて空間部を形成したことで、最も頻度が高い前方からの衝撃を緩和し、走行車の安全性の一層の向上に資する。
【0033】4.請求項4記載の発明によれば、メインフレームのキックアップ部に衝突荷重が作用したとき、一次衝撃力に対してメインフレームにおいて抗力を発揮させ、それ以上の衝撃力に対してはレインフォースに衝撃力の多くを一層緩やかに吸収させることができるから、衝突時の乗員保護の向上に寄与する。
5.請求項5記載の発明によれば、衝撃力を緩やかに吸収できるレインフォースを提供でき、しかもフレームに取付簡単で汎用性も期待できる。」

(キ)図1、図2からみて、「車両の前部の前後方向のフレーム1は、その内部に空洞部を有し」ており、図1、図8、図11からみて、「フレーム1の空洞内に配置するように適合された、外表面を有するレインフォース3、及び、前記レインフォース3の前記外表面から内側に向かって形成された、U形溝3c」が看取できる。
また、図4、図10、図11からみて、「U形溝3cは、衝撃力が加えられた際に衝突エネルギーによる所定方向の曲げを起こすように設計されているところ」であることが看取できる。

これらの記載からみて、上記引用例1には、
「前方から衝撃力が加えられると乗用車、トラック等の車両のフレームの折れ抗力を高める衝突エネルギーを吸収する構造であって、
a)車両の前部の前後方向のフレーム1は、その内部に空洞部を有するフレーム1、
b)前記フレーム1の空洞内に配置するように適合された、外表面を有するレインフォース3、及び、前記レインフォース3の前記外表面から内側に向かって形成された、U形溝3cであって、前記衝撃力が加えられた際に衝突エネルギーによる所定方向の曲げを起こすように設計されているU形溝3cを含む衝突エネルギーを吸収する構造。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

平成21年10月30日付け拒絶理由通知の理由1で引用した本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開01-58741号(以下「引用例2」という。)には、「STRUCTURAL REINFORCEMENT SYSTEM FOR
AUTOMOTIVE VEHICLES」に関し、図面とともに以下の事項(ク)?(シ)が記載されている。(上記引用例2の翻訳文として、引用例2の対応特許である特表2003-522075号公報の記載を参照した。)

(ク)「WHAT IS CLAIMED IS:
1. A system for reinforcement of an automotive vehicle frame,
comprising:
(a) a skeleton member having a plurality of reinforcing ribs
incorporated therein adapted for placement in a cavity defined
in an automotive vehicle frame; and
(b) an expandable material over at least a portion of said
skeleton member.
・・・
4. The system as claimed in claim 1, wherein said skeleton member
is adapted for reinforcing a vehicle frame rail.」(第9ページ第2行?第17行)
{【請求項1】 自動車フレーム用の補強システムであって、
(a)複数の補強用骨を有し、自動車フレーム内の空洞に配置するように構成された骨組み、および
(b)前記骨組みの少なくとも一部を覆う膨張性材料、
を有する補強システム。
・・・
【請求項4】 前記骨組みは、車両のフレームレールの補強用である、請求項1記載の補強システム。}

(ケ)「9. A member for use in a system for reinforcement of an
automotive vehicle frame in response to an external load,
comprising:
(a) a first portion having a plurality of beam elements with a
longitudinal axis generally non-parallel to the load; and
(b) a second portion contiguous with said first portion, the second
portion having a surface adapted for carrying an expandable
material, which upon expansion helps distribute load over said
surface in response to said load.
・・・
12. The member as claimed in claim 9, wherein said expandable
material is an epoxy-based polymer foam.
13. The member as claimed in claim 9, wherein said expandable
material is a heat activated expandable polymer foam.
14. The member as claimed in claim 9, wherein said expandable
material is an expandable plastic foam that is generally free of
tack to the touch.
15. The member as claimed in claim 9, wherein said expandable
material is an expandable plastic foam that can be activated at a
temperature encountered in an automotive vehicle paint operation.」
(第9ページ第30行?第10ページ第22行)
{【請求項9】 外的負荷に対する自動車フレームの補強用システムに用いられる部材であって、
(a)その長さ軸が負荷に対して非平行になる複数の梁部材を有する第1部分、および
(b)膨張性材料を保持する表面を有し、前記膨張性材料の膨張によって前記負荷の前記表面における負荷を分散させるように働く、前記第1部分から連続する第2部分、
を有する部材。
・・・
【請求項12】 前記膨張性材料はエポキシベースのポリマー発泡材料である、請求項9記載の部材。
【請求項13】 前記膨張性材料は熱により活性化して膨張するポリマー発泡材料である、請求項9記載の部材。
【請求項14】 前記膨張性材料は、ほぼ粘着性のない膨張性のプラスティック発泡材料である、請求項9記載の部材。
【請求項15】 前記膨張性材料は、自動車の塗装処理における温度で活性化される膨張性プラスティック発泡材料である、請求項9記載の部材。}
(コ)「Though other heat activated materials are possible, a
preferred heat activated material is an expandable plastic, and
preferably one that is foamable. A particularly preferred material
is an epoxy-based structural foam. For example, without limitation,
in one embodiment, the structural foam is an epoxy-based material,
including an ethylene copolymer or terpolymer that may possess an
alpha-olefin. As a copolymer or terpolymer, the polymer is
composed of two or three different monomers, i.e., small molecules
with high chemical reactivity that are capable of linking up with
similar molecules.
A number of epoxy-based structural reinforcing foams are known in
the art and may also be used to produce the structural foam. A
typical structural foam includes a polymeric base material, such
as an epoxy resin or ethylene-based polymer which, when
compounded with appropriate ingredients (typically a blowing
and curing agent), expands and cures in a reliable and predicable
manner upon the application of heat or the occurrence of a
particular ambient condition. From a chemical standpoint for a
thermally-activated material, the structural foam is usually
initially processed as a flowable thermoplastic material before
curing. It will cross-link upon curing, which makes the material
incapable of further flow. 」(第3ページ第27行?第4ページ第9行)
{【0008】
様々な熱活性化材料の使用が可能であるが、好適な熱活性化材料は、膨張性のプラスティックであり、さらに好適には発泡性を有するものである。特に好適な材料としては、エポキシベースの構造発泡材料(Structural Foam)が挙げられる。例えば、一実施形態においては、構造発泡材料は、αオレフィンを含むエチレン共重合体または三元共重合体を含む、エポキシベースの材料である。共重合体、三元共重合体とは、2または3の異なった単量体(モノマー:類似の分子と結合する高い化学的反応性をもつ低分子量の分子)から構成される重合体(ポリマー)である。
【0009】
当該技術分野において数多くのエポキシベースの構造補強発泡材料(Structural Reinforcing Foam)が知られており、構造発泡材料の生成にも使用できる。典型的な構造発泡材料は、例えばエポキシ樹脂、エチレンベースポリマーなどの高分子材料であって、それらは適切な材料(一般的には、発泡剤、硬化剤)と混合されると、加熱または特定の環境条件において、予測可能かつ信頼性の高い方法で膨張し、硬化する。熱活性化材料に対する化学的見地からすると、構造発泡材料は通常、硬化の前に、まず流動性熱可塑性プラスティックとして処理される。硬化時において架橋がおこり、材料は流動性を失う。}

(サ)「In general, however, a rib is placed adjacent to, and in
generally non-parallel relationship to a surface over which loads
will be distributed. In Fig. 2, by way of illustration, a plurality
of first ribs 28 are located adjacent to a surface of the member
(shown covered with expandable material 30). Fig. 3 also shows
how the ribs 28 (reference numerals illustrating some of the ribs,
but not all) can be configured relative to one another to provide
additional stabilization. In general, because of the relatively
high bending moment of the ribs, without unduly increasing
weight of the member, rigidity can be increased in locations
where loads are anticipated by selective design and placement
of the ribs. At the same time, enhanced load distribution is
possible from the continuous surfaces and foam employed with
the ribs to spread energy. Moreover, weight savings can be
achieved by such design.
・・・
In a particularly preferred embodiment, the skeleton members of
the present invention are injection molded plastics, such as
nylons. However, other materials and manufacturing techniques
may be employed similarly to achieve like results. For instance,
high strength to weight metal components, such as aluminum,
titanium, magnesium or the like, may be employed, as well as
polymer composites such as a layered polymer with fibers
capable of compression molding to generate strength.
Returning to Fig. 1, when employed in an automotive vehicle in
accordance with the present invention, the skeleton members,
particularly when coated with an expandable material (such as
a heat activated epoxy based foam) can reinforce the region for
which it is used by the combination of increased stiffening from
the presence of beam-like ribs and load distribution through the
combination of relatively high surface area continuous surfaces
and an expandable material.」(第6ページ第3行?第7ページ第3行)
{【0013】
しかしながら、一般に、骨は負荷が加わる表面に対して近接して、かつ通常はかかる表面と非平行な関係になるように配置される。図2において、複数の第1骨28が部材の表面(膨張性材料30に被覆されている)に近接して配置されている。図3には、より大きな安定性をもたらすために、骨28(参照符号は一部の骨について付しているが、すべての骨には付していない)を互いに組み合わせる方法が示されている。これらの骨によって比較的高い曲げモーメントが得られるため、部材を過度に重くすることなく、用途に合わせて骨を設計し配置することにより、負荷が加わることが予想される箇所における剛性を高くすることができる。同時に、骨とともに用いられる、エネルギーを分散させる発泡材料および連続した表面により、負荷をより分散させることができる。さらに、このような設計により、軽量化が図られる。・・・
【0014】
・・・特に好適な実施形態においては、本発明の骨組みは射出成型されたプラスティック、例えばナイロンでできている。しかしながら、同様の結果を得るために、その他の材料および他の製造技術を用いることは可能である。例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム等の重量対強度比の高い金属部材や、またファイバーとポリマーの層状体のように強度を持たせるために圧縮成型可能なポリマー合成物(コンポジット)も使用可能である。
【0015】
図1に戻って、本発明が自動車に用いられる場合、骨組みは、膨張性材料(熱活性化エポキシベースの発泡材料)に被覆されている場合には特に、特定の領域を、梁状の骨による剛性強化と、比較的高い表面領域、連続した表面および膨張性材料の組み合わせによる負荷分散とを組み合わせることにより、補強することができる。}

(シ)「The expandable material is shown in its expanded state. As
the skilled artisan will appreciate, not all ribs are shown, and
the specific design of each rib configuration will vary depending
upon its intended use, and the geometry of the region being
reinforced (e.g. walls 40 and 42 of the vehicle frame structure
defining the cavity). Further expandable material may be
employed in contact with the ribs.
Figs. 8 and 9 illustrate yet another embodiment according to the
present invention. In this embodiment, a skeleton member 20
having a plurality ribs 44 and generally continuous surfaces
(shown coated with a layer 46) is fabricated to also include
structure for facilitating vehicle manufacture. Specifically, the
embodiment shown includes a plurality of through-holes 48, for
enabling body shop weld access or the like. As shown in Fig. 9,
in this embodiment, the expandable material layer 46, upon
expansion, covers the circumference of a cross section of the
structure.
The skilled artisan will appreciate that the use of the
reinforcements disclosed herein is not intended as being limited
only to illustrate the locations shown in Fig. 1. They can be
used in any location within an automotive vehicle frame. For
instance, other reinforced locations are also possible including
but not limited to pillar to door regions, roof to pillar,
mid-pillar, roof rails, windshield or other window frames, deck
lids, hatches, removable top to roof locations, other vehicle
beltline locations, motor rails, lower sills, cross members, lower
rails, and the like. Moreover, vehicle roof tops may be reinforced
to support additional loads in accordance with the present
invention. In the same manner as was described above in the
context of a roof and pillar system, a reinforcement frame
member having an expandable material thereon is placed
in a cavity defined in the vehicle frame structure. The material
is expanded to help secure the reinforcement in place. 」(第7ページ第17行?第8ページ第6行)
{【0018】
膨張性材料は膨張した状態で示されている。当業者であれば、すべての骨が図示されているわけではないこと、それぞれの骨の仕様の設計は、その想定用途および補強箇所(例えば、自動車のフレーム構造である壁40および42は空洞を形成している)の形状によって変化することが理解できるだろう。これらの骨に対して膨張性材料がより多く接触するように構成することもできる。
【0019】
図8および9は、本発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態においては、複数の骨44およびおおよそ連続した表面(層46に被覆されている)からなる骨組み20が、自動車の製造のための構造を含んで形成されている。特に図示された実施形態は、車体の組み立て工程における溶接のためのアクセス用またはそれに類似した目的のために、複数の貫通孔48を有する。図9にあるように、この実施形態では、膨張性材料の層46は、その膨張にともない、構造体の断面においてその周囲を覆っている。
【0020】
当業者は、本明細書に開示された補強材の使用が、図1に示された箇所に限定されるものではないことが理解できるだろう。これらは、自動車のフレームのあらゆる箇所に使用可能である。例えば、その他の補強箇所としては、ピラーからドア領域にかけて、ルーフからピラーにかけて、中間(mid)ピラー、ルーフレール、ウィンドシールドまたはその他のウィンドウフレーム、デッキ・リッド(Deck Lid、荷物室のふた)、ハッチ、取外し可能な(リムーバブル)トップからルーフへの箇所、その他の車両ベルトライン各部、エンジンレール(motor rail)、ロワーシル(lower sill)、クロスメンバ、ロワーレールその他が挙げられる。もっともこれらは例示であって、これらの箇所に限られるわけではない。さらに、車両のルーフトップは本発明により、より大きな負荷に耐えられるように補強することができる。ルーフおよびピラー構造を例に説明したのと同様の方法で、膨張性材料を持つ補強フレーム部材が自動車のフレーム構造中の空洞に配置される。膨張性材料を膨張させることにより、補強部材をその箇所で固定するように機能する。}

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「衝突エネルギーを吸収する構造」は本願発明の「エネルギー制御強化システム」に相当し、以下同様に、「前方から衝撃力が加えられると」は「外力から衝撃を受けた際」に、「乗用車、トラック等の車両」は「自動車車両」に、「フレームの折れ抗力を高める」は「変形性を減じ及び防止する」に、「車両の前部の前後方向のフレーム1」は「自動車車両のフロント長手部分のフレームレール」に、「前記フレーム1の空洞内に配置するように適合された、外表面を有するレインフォース3」は、「前記フレームレール内に配置された空洞内に配置するように適合された、外表面を有する少なくとも1つの構造強化部材」に、「前記レインフォース3の前記外表面から内側に向かって形成された、U形溝3c」は「前記構造強化部材の前記外表面より内側に形成された、少なくとも1つの、段差又は幾何学的形状が変化された部分」にそれぞれ相当し、「前記衝撃力が加えられた際に衝突エネルギーによる所定方向の曲げを起こすように設計されている、U形溝3c」の「所定方向の曲げ」の方向は明記されてはいないが、図7から図11からみて、「長手方向の変形」を実質的に含んでいることは明らかであるから、「前記衝撃の際に衝撃エネルギーにより所定の長手方向の変形を起こすように設計されているところのトリガー」に相当する。
そうすると、両者は、
「外力から衝撃を受けた際に自動車車両の変形性を減じ及び防止するためのエネルギー制御強化システムであって、
a)自動車車両のフロント長手部分のフレームレールであって、その内部に空洞部を有する、フレームレール、
b)前記フレームレール内に配置された空洞内に配置するように適合された、外表面を有する少なくとも1つの構造強化部材、及び、前記構造強化部材の前記外表面より内側に形成された、少なくとも1つの、段差又は幾何学的形状が変化された部分であって、前記衝撃の際に衝撃エネルギーにより所定の長手方向の変形を起こすように設計されているところのトリガーを含む、上記システム。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

<相違点>
本願発明では、「前記構造強化部材の少なくとも一部の外表面に且つ前記トリガーの両側に配置され、前記フレームレールの空洞内に前記構造強化部材を配置してから発泡されることができて、前記フレームレールの空洞部の内表面に前記構造強化部材を結合するところの構造発泡体を生成する発泡性物質、を含み、前記発泡性物質は、上記トリガーと協働して前記衝撃エネルギーにより前記フレームレールが所定の長手方向の変形を起こすよう制御する」のに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

4.相違点の検討・当審における判断
上記引用例2の自動車フレーム用補強システムとして、摘記事項(ク)の請求項4に「骨組みは、車両のフレームレールの補強用である」と記載されるとともに、摘記事項(シ)の段落【0020】には、「・・・補強材は、自動車のフレームのあらゆる箇所に使用可能である。・・・膨張性材料を持つ補強フレーム部材が自動車のフレーム構造中の空洞に配置される。膨張性材料を膨張させることにより、補強部材をその箇所で固定するよう機能する。」と記載されている。
また、図8、図9からみて、該膨張性材料は骨組みの少なくとも外表面の一部で且つ複数の箇所に配置されていること及びフレームの空洞部の内表面に補強フレーム部材を固定することは明らかである。
そして、摘記事項(コ)や(サ)の段落【0015】には、「膨張性材料」が「熱活性化エポキシベースの構造発泡材料」である旨が記載されていおり、該「膨張性材料」が、構造発泡体を生成する発泡性物質を含むことは明らかである。
さらに、摘記事項(サ)の段落【0013】には、「骨とともに用いられる、エネルギーを分散させる発泡材料および連続した表面により、負荷をより分散させることができる。」と記載されており、発泡材料が骨組みと共に衝撃エネルギーを受け、負荷を分散させることは示されている。
よって、引用例2に記載された「骨組み」、「フレーム構造中の空洞」、「固定」は、本願発明の「構造強化部材」、「フレームレールの空洞内」、「結合」にそれぞれ相当することから、上記引用例2には、「構造強化部材の少なくとも一部の外表面に配置され、フレームレールの空洞内に前記構造強化部材を配置してから発泡されることができて、前記フレームレールの空洞部の内表面に前記構造強化部材を結合するところの構造発泡体を生成する発泡性物質を含む、自動車用フレーム補強システム」が開示されている。
そして、引用発明に開示された「トリガーであるU形溝3cの両側の構造強化部材」に上記引用例2に開示された「構造発泡体を生成する発泡性物質」を適用することにより、「該発泡性物質は、トリガーと協働(相乗効果なく単純に寄せ集めることによる協働)して衝撃エネルギーによりフレームレールが所定長手方向に変形を起こすように制御される」ものと認められる。
してみれば、引用発明も上記引用例2に開示された事項も、自動車用フレームの補強構造に関するものであることから、上記相違点に係る本願発明の構成については、引用発明のU形溝3cの両側の構造強化部材に、上記引用例2に開示された事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

さらに、本願発明の作用効果についても、引用発明、及び、上記引用例2に開示された事項から予測される程度のものであって、格別なものとはいえない。

なお、審判請求人は、平成22年 5月 6日付け意見書にて、
「長手方向の変形」は「軸方向への変形・短縮・崩壊」を意味しており「曲げ」とは異なる旨の主張をしているが、「曲げ」も「長手方向の変形」であることには相違なく、請求項1においては、審判請求人の主張のように限定解釈すべき記載もないことから、この審決においては一致点とした。
なお、該「長手方向の変形」を「軸方向のみへの変形」であると解釈しても、フレーム内に軸方向への変形を考慮した補強構造体を設けることは、本願出願前周知である(必要があれば、実願昭57-22828号(実開昭58-126575号)のマイクロフィルムの第5図(a)(b)、特開平4-310477号公報の図5、図9を参照されたい。)
また、同意見書において、引用例1のトリガーは、構造強化部分の表面の外側部分に窪みとして形成されたものであり、本願発明の「外表面にかからず、内側にのみ形成されたトリガー」を記載も示唆もしていないと主張している。
しかしながら、引用発明のU形溝3cは、構造強化部材の外表面から内側に向かって形成されたもの、つまり、全体の外表面より内側に形成されたものであるし、請求項1においては、審判請求人の主張のように限定解釈すべき記載もないことから、この審決では一致点とした。
なお、「外表面より内側に設けた」を、「外表面にかからず、内側にのみ設けた」と解釈しても、上記特開平4-310477号公報の図9に示されるように、補強メンバ5Bの上下の壁部(外表面)にかからず、縦壁部(内側部分)に設けた長孔35a,35b,35cにより圧縮変形促進部(トリガー)としたものが開示されており、この点に格別の困難性は認められない。

5.むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び上記引用例2に開示された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-26 
結審通知日 2010-05-27 
審決日 2010-06-09 
出願番号 特願2003-543876(P2003-543876)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小関 峰夫西本 浩司  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 横溝 顕範
藤井 昇
発明の名称 所定の衝撃エネルギー吸収性を有する自動車用コンポジット構造部材  
代理人 松井 光夫  

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