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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1225873
審判番号 不服2008-18487  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-22 
確定日 2010-10-26 
事件の表示 平成9年特許願第534881号「N?(ホスホノメチル)グリシンおよびその誘導体の新規な使用」拒絶査定不服審判事件〔平成9年10月9日国際公開、WO97/36488、平成12年6月20日国内公表、特表2000-507565〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、1997年3月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1996年3月29日 ヨーロッパ特許庁(EP)、1996年7月16日 ヨーロッパ特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成10年9月28日に特許法第184条の8第1項の規定による補正書の写し(翻訳文)が提出され(補正書の提出年月日 1998年5月15日)、平成16年2月26日に手続補正書が提出され、平成19年5月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出され、平成20年4月8日付けで拒絶査定がされたところ、同年7月22日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1?10に係る発明は、平成10年9月28日付けの特許法第184条の8第1項の規定による補正書の写し(翻訳文)並びに平成16年2月26日付け及び平成19年8月23日付けの手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「作物はグリホセート耐性のテンサイ、飼料ビート、とうもろこし、菜種および綿から選択され、そしてグリホセートは通常の枯死量で施用することを特徴とする、作物の収穫量を増加させるためのグリホセートまたはその塩もしくはエステルの使用。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定は、「この出願については、平成19年 5月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2によって、拒絶をすべきものです。」というものであるところ、その「理由1」は、以下の理由を含むものである。
「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。・・・
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由1,2について
請求項1?10について
下記刊行物1?4に記載されるように、ビート、トウモロコシ等のグリホセート耐性植物にグリホセートを適用して雑草を除去することは公知である。本願請求項には「作物の収穫量を増加させる」旨記載されているが、適用植物、適用物質がいずれも異なるものでなく、方法として相違するものとはいえない。・・・
引 用 文 献 等 一 覧
・・・
3.特表平5-508071号公報
・・・」
(以下、上記刊行物3を、「刊行物1」という。)

第4 刊行物1に記載された事項
この出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である刊行物1には、以下の事項が記載されている。

a「5.・・・グリホセート耐性5-エノールピルビル-3-ホスホシキメート(EPSP)合成酵素。・・・
40.請求項5記載の植物遺伝子を含む植物を繁殖させることからなる、グリホセート耐性植物の作成方法。
41.上記植物が、トウモロコシ、トマト、タバコ、セイヨウアブラナ、アマ、ヒマワリ、テンサイ、アルファルファ、ワタおよびイネからなる群より選ばれた、請求項40記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項5、40、41)

b「遺伝子工学における最近の進歩は、外来遺伝子を取り込ませて植物を形質転換させるに不可欠な道具を提供してきた。今や、耕種学上重要であって特異な性質をもつ植物を成育させることも可能である。こういった有利な特徴の一つが除草剤耐性であることは言うまでもない。
除草剤耐性の作物の出現によって、除草作業の必要性を低下させることができ、農家にかかるコストの低減が効果的に行われる。
この観点から重要な研究テーマとなる除草剤は、N-ホスホノメチルグリシンである。
(審決注:構造式は省略)
この除草剤は、非選択性で広範囲スペクトルをもつ種子の生育期処理除草剤であって、50種を超える作物への使用に関して登録されている。この分子は一種の酸であって、水溶液に溶解して、植物毒性のアニオンを形成する。数種のアニオン型が知られている。「グリホセート」とは、本願明細書においては、酸およびそのアニオンを指す。
グリホセートは、芳香族アミノ酸合成の前駆体を生じるシキミ酸経路を阻害する。特に、グリホセートは、酵素である5-エノールピルビル-3-ホスホシキメート合成酵素を阻害することによって、3-ホスホシキミ酸の5-エノールピルビル-3-ホスホシキミ酸への転換を阻害する。
グリホセート耐性植物は、その植物のゲノムに高レベルのEPSP合成酵素を産生する能力を付与することによって作成され得る。」(3頁左上欄5行?右上欄15行)

c「 グリホセート耐性のツクバネアサガオ植物
・・・形質転換されたツクバネアサガオの植物体は、ホルシュら(1985年)の記載する方法に従って、上記の形質転換円盤状葉からの再生によって生じた。得られた形質転換植物体は、上記のpMON546ベクターを含んでいた。このベクターには、野生型ツクバネアサガオEPSP合成酵素遺伝子に融合したCaMV35Sプロモーターが含まれている。
4つのそれぞれ代表的な形質転換苗木を選択し増殖せて、4つの非形質転換(野生型)ツクバネアサガオの苗木とともに、下記の試験法で試験した。
1日あたり12時間の光を当て、26℃で増殖チャンバーに入った増殖培地中で増殖させた。これら植物体は、毎週水溶性の肥料を与え、必要に応じて水も与えた。植物体には、自動トラック噴霧器を使って、均一で再現性のある噴霧率で除草剤を噴霧した。使用したグリホセートを、1エーカーあたりグリホセートの酸等価物のポンド数として測定した。これら等価物を、グリホセートのイソプロピルアミン塩としてイオン性界面活性剤と混合した。
4つの別個の野生型(非形質転換)ツクバネアサガオ植物体を、対照植物体として使用するために選択した。
4つの別個の形質転換植物体は、ホルシュら(1985年)が記載したように、カナマイシン耐性に基づいて選択された。
対照植物体および形質転換植物体に、下記の表2に示した適用レベルでグリホセートのイソプロピルアミン塩を噴霧した。この実験の結果も表2に総括する。」(21頁右下欄17行?22頁左下欄6行)

d「 表2
グリホセート噴霧に対する植物の応答

植物型 グリホセート用量^(*) 外観
対照^(1) 0.879kg/ヘクタール 完全に死滅。
(0.8#/エーカー) 植物体は非常に急速
な葉緑体破壊および
白色化を示し、枯死
した。

キメラ 0.879kg/ヘクタール よく成長し、
EPSP (0.8#/エーカー) 正常な形態で増殖
する新葉で若干の
葉緑体破壊を示すが、
植物体は正常な外観
を呈し、開花した。
* 酸当量
1 野生型植物または対照ベクター(pMON505)で形質転換した植物

表2に示すように、対照の植物体は、グリホセートを0.897kg/ヘクタール(0.8ポンド/エーカー)で噴霧した場合、枯死した。対照的に、形質転換されたツクバネアサガオの植物体は、0.897kg/ヘクタ-ル(0.8ポンド/エーカー)の噴霧後、正常で生気を帯びていた。形質転換植物体は、非形質転換植物体よりも、グリホセートの暴露に対して強い耐性を示す。」(22頁右下欄1行?23頁左上欄3行)

e「グリホセート耐性のトウモロコシ細胞
フロムら(1986年)の記載した通りに、形質転換されたトウモロコシ細胞を、DNAベクターを用いた電気穿孔法を行った後、カナマイシンを含む培地中での増殖によって選択することができる。なお、このDNAベクターは、CamV35Sプロモーターからなるカナマイシン耐性遺伝子、NPTIIコード領域およびNOS3′末端を含む。これらの細胞も、EPSP合成酵素のグリホセート耐性を産生するであろうし、高レベルのグリホセートに耐性となるであろう。」(31頁右下欄下から3行?32頁左上欄7行)

第5 当審の判断
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「請求項5記載の植物遺伝子を含む植物を繁殖させることからなる、グリホセート耐性植物の作成方法。」(摘示aの請求項40)が記載されており、上記植物としては、「トウモロコシ、・・・テンサイ、・・・ワタ・・・からなる群より選ばれ」るものが記載されており(摘示aの請求項41)、一例として、グリホセート耐性のトウモロコシの作成について記載されている(摘示e)。
また、上記グリホセートとは「酸およびそのアニオンを指す」こと、グリホセートは「生育期処理除草剤であって、50種を超える作物への使用に関して登録されている」ことが記載されている(摘示b)。そして、グリホセート耐性植物を作成するのは、除草剤であるグリホセートを使用することを前提とし、グリホセート耐性植物は枯らさずに、雑草だけを除去するためであることが明らかであるから、刊行物1には、上記作成方法により作成されたグリホセート耐性植物の栽培時における、雑草を除去するためのグリホセートの使用が記載されているといえる。
さらに、グリホセートの使用量に関し、グリホセート耐性植物の一種であるツクバネアサガオに対し、酸当量で0.879kg/ヘクタールのグリホセートを噴霧することにより、対照の植物体は、「枯死した」のに対し、形質転換されたツクバネアサガオの植物体は「正常で生気を帯びて」おり、「形質転換植物体は、非形質転換植物体よりも、グリホセートの暴露に対して強い耐性を示す。」ことが記載されている(摘示c、d)。そうすると、刊行物1には、対照の非形質転換植物体に対する量と同量、すなわち、グリホセート耐性植物の通常の枯死量でのグリホセートの施用について記載されているといえる。

よって、刊行物1には、
「植物はグリホセート耐性のトウモロコシ、テンサイ、ワタから選ばれ、そしてグリホセートは通常の枯死量で施用することを特徴とする、雑草を除去するためのグリホセートの酸およびそのアニオンの使用。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「植物」と、本願発明の「作物」とは、その選択肢としてテンサイ、とうもろこし、綿を含む点で重複し、これらの植物からは作物が収穫されることが明らかであるから、引用発明の「植物」は、本願発明の「作物」に相当する。また、引用発明の「グリホセートの酸およびそのアニオン」は、本願発明の「グリホセートまたはその塩」に相当する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「作物はグリホセート耐性のテンサイ、とうもろこしおよび綿から選択され、そしてグリホセートは通常の枯死量で施用することを特徴とする、グリホセートまたはその塩の使用。」
である点で一致するが、以下の点で一応相違するといえる。

A グリホセートまたはその塩の使用が、本願発明においては、「作物の収穫量を増加させるための」使用であるのに対し、引用発明においては、「雑草を除去するための」使用である点
(以下、「相違点A」という。)

3 検討
(1)相違点Aについて
ア 本願発明は、「作物の収穫量を増加させるためのグリホセートまたはその塩もしくはエステル(審決注:以下、「グリホセート等」と表す。)の使用」という発明である。
ここで、まず、「使用」の発明とは、特許法上いかなる発明として解されるのか検討する。
特許法第68条で、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」と規定され、同法第2条第3項では、「実施」を、「物の発明」、「方法の発明」及び「物を生産する方法の発明」に区分して定義しているので、特許法上、「使用」の発明も、このいずれかの区分に属すべきであるところ、「方法の発明」以外に適切な区分はないことは明らかである。
そうすると、本願発明の「作物の収穫量を増加させるためのグリホセート等の使用」とは、「作物の収穫量を増加させるためのグリホセート等の使用方法」という方法の発明であると読み替えることができる。また、引用発明も同様に、「雑草を除去するためのグリホセート等の使用方法」という方法の発明であるということができる。

イ ところで、一般に、物の発明における「用途発明」とは、「ある物の未知の属性を発見し、この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明」であると解される(東京高裁平成10(行ケ)401号判決)。
そうすると、用途発明として新規性があるといえるためには、「物の未知の属性を発見した」(以下、「要件(i)」という。)ことに加え、「この属性により、当該物が新たな用途への使用に適することを見いだした」、つまり、「物の用途として新たな用途を提供した」(以下、「要件(ii)」)といえなければならないと解される。
本願発明は、上記アに示したとおり、方法の発明であるものの、物(グリホセート等)の「作物の収穫量を増加させる」という属性を発見したことによってなされ、「作物の収穫量を増加させるための」と使用方法を特定した発明であるといえるので、物の発明における用途発明と同様の考え方が適用可能であるといえる。
そこで、相違点Aが実質的な相違点であり、本願発明が用途発明として新規性があるといえるか否かを判断するために、以下、本願発明が要件(i)及び要件(ii)を満たすか否かについて検討する。

ウ まず、要件(i)については、刊行物1には、上記第4の摘示a?eのとおり、グリホセート等が「作物の収穫量を増加させる」ことについて記載も示唆もないから、本願発明は、物(グリホセート等)の未知の属性を発見した発明であるといえる。

エ 次に、要件(ii)について検討する。
引用発明は、上記1に示したとおり、グリホセートをトウモロコシ、テンサイ、ワタ等のグリホセート耐性植物に「通常の枯死量で施用」するものである。そして、刊行物1には、施用時期については、「生育期」(摘示b)に除草処理を行うことが記載され、施用量である「通常の枯死量」については、上記と植物が異なるものの、ツクバネアサガオ植物体の場合にあっては、非形質転換植物体と同量の0.897kg/ヘクタールのグリホセート用量(酸当量)で使用する例が記載されている(摘示d)。
他方、本願発明も、グリホセートをテンサイ、とうもろこし、綿等のグリホセート耐性の作物に「通常の枯死量で施用」するものであり、本願明細書を参酌すると以下の記載がある(本願明細書の発明の詳細な説明の記載内容については、平成16年2月26日付けの手続補正で、出願当初の明細書1頁及び12頁における誤記を補正するのみであるので、以下の本願明細書の摘示箇所は、この出願の公表公報(特表2000-507565号公報)の頁及び行で表す。)。
(ア)「グリホセートは同時に雑草を死滅させるために雑草集団を防除する通常の枯死量で施される。グリホセート除草剤は1回で、または数回の連続処理により施すことができる。施用量は一般に気候条件、季節、雑草の蔓延、雑草植物の生長段階に応じて、また作物や当業者に知られている他の要因に応じて0.2?6.0Kg酸当量/haの範囲である。」(8頁15?19行)
(イ)「実施例1
・・・グリホセートに対して耐性を有するように遺伝学的に変異したテンサイを適当な耕種学的方法に従って・・・播種し、そして・・・手で間引いた。それぞれの試験は4回繰り返した。
試験区画を実質的に雑草がないように保持した;それが必要で明記した場合は発芽前の除草剤施用により、下記のように施される発芽後のグリホセート処理剤により、または公認の標準的なビート処理剤(比較用)による。
次の処理剤を施した;
N.1 標準的なテンサイ除草剤
N.2 2倍量の標準的なテンサイ除草剤
N.3 3×720g酸当量/haのグリホセート配合物
N.4 3×1080g酸当量/haのグリホセート配合物
N.5 3×1440g酸当量/haのグリホセート配合物
N.6 2×2160g酸当量/haのグリホセート配合物
グリホセート除草剤の3回連続施用が行われる場合、1回目は作物の2?4葉段階で行われ、2回目は作物の6?8葉段階で行われ、そして3回目は作物の10?12葉段階で天蓋のように葉が茂る前に行われる。
2回連続施用が行われる場合、1回目は作物の2?4葉段階で行われ、そして2回目は10?12葉段階で行われる。」(9頁最終行?10頁20行)
本願明細書には、上記摘示(ア)及び(イ)のとおり、本願発明の施用時期は、雑草を死滅させるために有効な時期であり、例えば、作物の2?12葉段階という生育期であること、施用量である「通常の枯死量」については、「雑草集団を防除する通常の枯死量」で、「0.2?6.0Kg酸当量/haの範囲」であることが記載されているので、上記引用発明と適用対象作物、施用時期、施用量のいずれも差異がなく、グリホセート等の使用方法としての差異が認められない。
以上のとおり、両発明は、適用対象作物、施用時期、施用量において差異がないから、使用方法として区別できない。そうすると、引用発明は雑草を除去することを目的とし、本願発明は作物の収穫量を増加することを目的とするという点で一見相違するとしても、それにより使用方法の適用範囲が異なるものではないから、グリホセート等の用途として新たな用途を提供したということはできない。

オ よって、本願発明は、要件(ii)を満たすとはいえず、「作物の収穫量を増加させるための」という発明特定事項により、グリホセート等の用途として新たな用途を提供したということができないから、相違点Aは実質的な相違点であるとはいえない。

(2)まとめ
したがって、相違点Aは実質的な相違点であるとはいえず、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(3)審判請求人の主張について
ア 請求人は、平成20年10月6日付けで手続補正された審判請求書において、
(ア)「本願発明は、グリホセート除草剤に対して耐性を有する作物を、通常の枯死量で処理することにより、作物の収穫量が増加することを見出したことによってなされた発明であって、「グリホセート耐性作物の収穫量を増加させる」という用途を限定した発明(用途発明)です。・・・グリホセートによる収穫量の増加は、(手で雑草を抜いたり、または標準的な除草剤を施用することにより)除草効果に起因した収穫量の増加を排除した場合においても観察されます(実施例3、5?7等参照)。つまり、本願発明における収穫量の増加は、雑草の除去によるものではなく、本願出願前には未知であった新たな属性によるものといえます。」と主張し、また、
(イ)「本願発明は、通常の栽培環境下において、雑草の存在とは無関係に、またその除草効果に因らず収穫量を増加させる効果を奏します。
先に述べた審査基準で定義される用途発明の新規性を判断する際に、別の用途発明である引用発明が用いられる条件(「雑草の存在」)が発明特定事項において排除されていないということを理由に新規性がないと判断することは、全く不当と言わざるを得ません。」と主張する。

イ しかし、物の未知の属性を発見した場合であっても、物の用途として新たな用途を提供したといえなければ、相違点Aが実質的な相違点であるとはいえないことは、上記(1)で述べたとおりである。
加えて、本願明細書の実施例1をみると、上記3(1)エ(イ)に摘示したとおり、「試験区画を実質的に雑草がないように保持した」とあるが、本願発明の実施態様であるN.3?N.6のグリホセート配合物の施用については、「実質的に雑草がないように保持」する手段は、まさにグリホセート配合物の施用によるものであり、他の実施例についても、本願発明の実施態様である試験区画においては、実質的に雑草がないように保持する手段は、いずれもグリホセート除草剤の施用によるものである。
そうすると、引用発明の雑草を除去するためのグリホセート等の使用と、使用方法として何ら差異があるとはいえない。
よって、収穫量を増加させる効果を発見し、物の未知の属性を発見したといえるとしても、それにより、新たな用途を提供したとはいえないから、請求人の上記ア(ア)及び(イ)の主張は採用することができない。

ウ また、請求人は、平成19年8月23日付けの意見書において、「用途発明の特許出願についての知財高裁判決(平成18年11月29日 平成18年(行ケ)第10227号)」を引用して、本願発明も当該判決の発明と同様に新たな用途を提供したということができる旨主張する。

エ しかしながら、上記判決において対比される「シワ形成抑制剤」(該判決の本願発明)と「美白化粧料組成物」(該判決の引用発明)とは、組成物を皮膚に適用する点では共通するものの、「シワ」と「皮膚の黒化,又はシミ,ソバカス等の色素沈着」という予防・治療対象(用途)が異なるから、施用量や施用時期に差異が生じるといえる。
それに対し、この出願に係る本願発明と引用発明とは、上記(1)に示したとおり、適用対象作物、施用時期、施用量において差異がないから、上記判決とは異なる事例であり、そのまま適用することはできない。
よって、請求人の上記ウの主張も採用することはできない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の点を検討するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-14 
結審通知日 2010-05-25 
審決日 2010-06-07 
出願番号 特願平9-534881
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨永 保  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 松本 直子
木村 敏康
発明の名称 N?(ホスホノメチル)グリシンおよびその誘導体の新規な使用  
代理人 高木 千嘉  
代理人 三輪 昭次  
代理人 結田 純次  
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