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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1226279
審判番号 不服2008-29628  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-20 
確定日 2010-11-04 
事件の表示 特願2003-192368「ワンピースゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日出願公開、特開2005- 21517〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年7月4日の出願であって、平成20年8月29日に手続補正がなされ、同年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月18日に手続補正がなされたものである。

第2 平成20年12月18日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成20年12月18日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成20年12月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前に、

「ゴム成分100質量部に対して、0.05?10質量部の酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子を含有するゴム組成物を加硫成形してなるゴルフボール本体を有することを特徴とするワンピースゴルフボール。」
とあったものを、

「ゴム成分100質量部に対して、0.05?10質量部の酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子と0.5?2質量部の酸化チタンとを含有するゴム組成物を加硫成形してなるゴルフボール本体を有することを特徴とするワンピースゴルフボール。」
に補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)

(2)上記(1)の請求項1に係る本件補正は、次の補正内容からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ゴム成分100質量部に対して、0.05?10質量部の酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子を含有するゴム組成物」を、「ゴム成分100質量部に対して、0.5?2質量部の酸化チタン」も含有するものと限定する。

2 本件補正の目的
上記1(2)の補正内容は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定して、本件補正後の請求項1とするものであるから、請求項1に係る本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(2)引用刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-149504号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のワンピースゴルフボールは、基材ゴム、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、有機過酸化物を含有する白色ゴム組成物からなるボール本体と、該ボール本体表面に塗装されてなるクリアーコートとからなるワンピースゴルフボールにおいて、前記白色ゴム組成物は、前記基材ゴム100質量部に対して酸化防止剤0.1?5.0質量部、光安定剤0.05?3.0質量部を含有するゴム組成物であり、前記クリアーコートは、樹脂成分100質量部に対して、紫外線吸収剤0.05?5.0質量部含有されていることを特徴とする。」
イ 「【0009】本発明のボール本体を構成するゴム組成物は、従来よりワンピースゴルフボールに用いられている基材ゴム、α,β-不飽和カルボン酸及びその金属塩、及び有機過酸化物を含有するゴム組成物に、更に酸化防止剤及び光安定剤、白色顔料を配合したものである。」
ウ 「【0017】白色顔料としては、酸化チタンが好ましく使用される。酸化チタンの種類は、特に限定しないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。酸化チタンの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5?5質量部が好ましい。本発明では、クリアーコートに紫外線吸収剤が含有されているので、ボール本体用ゴム組成物には、白色に呈するのに必要十分な量で足りるが、充分な隠ぺい力を確保して鮮やかな白色外観を達成するためには、基材ゴム100質量部に対し、0.5質量部以上とする必要がある。一方、5.0質量部超含有しても、隠蔽性や白色性の向上効果は飽和してしまうために、コスト的に不利になるだけだからである。・・(中略)・・
【0019】本発明にかかるゴム本体の白色ゴム組成物には、上記基材ゴム、α,β-不飽和カルボン酸、酸化防止剤、光安定剤、白色顔料の他、紫外線吸収剤を配合してもよい。紫外線吸収剤と光安定剤との併用は、両者の相乗効果により、より高度な耐候性が得られる。」
エ 「【0024】本発明にいう紫外線吸収剤とは、紫外線、特に有害であるというわれている300?400mμの紫外線を吸収できるもので、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート系、及びニッケル錯体等が例示される。」
オ 「【0025】このような紫外線吸収剤は、有害な紫外線を吸収してクリアーコートが紫外線により劣化することを防止するとともに、ボール本体に到達する紫外線量を減らして、ボール本体を構成するゴムの劣化も防止できる。そして、紫外線吸収剤は、紫外線を他のエネルギーに変換して、それ自身が分解されるわけではないので、長期間にわたって紫外線吸収効果を発揮しつづけることができる。この点、ボール本体自体に、紫外線吸収剤を配合あるいは酸化チタンを大量に含有させることにより、ボール本体の紫外線による劣化を防止する方法では、クリアーコート自体の紫外線劣化を防止できない。また紫外線吸収剤は非常に高価であるため、ボール本体側に配合する場合、所望の効果を得るためには多量の紫外線吸収剤を配合させる必要があるので、価格的に不利になる。一方、酸化防止剤及び光安定剤を含有するクリアー塗料を用いることによってもクリアーコートの劣化を防止することは可能である。しかしながら、酸化防止剤及び光安定剤には紫外線吸収能力がないので、これらだけでは、クリアーコートの紫外線劣化の防止に対して不十分であり、しかも紫外線の透過を防止できないので、ボール本体に紫外線吸収剤を含有させることが必須的になる。以上のような理由から、クリアーコートに紫外線吸収剤を含有させる意義がある。
【0026】紫外線吸収剤の含有量は、クリア塗料中の塗膜形成要素(樹脂分)100質量部あたり、0.05?3質量部が好ましく、より好ましくは0.5?2.5質量部である。0.05質量部以下では、充分な劣化防止効果は得られず、3質量部を超えても、劣化防止効果が飽和する一方、ボール本体との密着性が低下するからである。」
カ 「【0038】〔ゴルフボールの作製〕
ボール本体の作製
表1に示す組成のゴム組成物のうち、酸化防止剤及び光安定剤の量を表2に示す量に変更したゴム組成物を調製し、これを金型に充填して65℃で25分間加熱加圧成形して、ワンピースゴルフボール本体を作製した。」
キ 摘記アないしカから、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基材ゴム100質量部に対して、紫外線吸収剤と0.5?5質量部の酸化チタンとを含有する白色ゴム組成物を加熱加圧成形してなるワンピースゴルフボール本体を有するワンピースゴルフボール。」

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「基材ゴム」、「白色ゴム組成物」及び「白色ゴム組成物を加熱加圧成形してなるワンピースゴルフボール本体」は、それぞれ、本願補正発明の「ゴム成分」、「ゴム組成物」及び「ゴム組成物を加硫成形してなるゴルフボール本体」に相当する。

イ 本願補正発明の「酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子」は、本願明細書の【0046】の「無機系紫外線吸収剤:日本電工社製「セリガードSC4060:微粒子酸化セリウムを非晶質シリカで被覆したタイプ、酸化セリウム含有率38.5質量%、シリカ含有率57質量%」」との記載からみて、紫外線吸収剤として用いられるものであるから、引用発明の「紫外線吸収剤」と本願補正発明の「酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子」とは、「紫外線吸収剤」である点で一致する。

ウ 引用発明の「ゴム組成物(白色ゴム組成物)」が、「ゴム成分(基材ゴム)」100質量部に対して、紫外線吸収剤と0.5?5質量部の酸化チタンとを含有することと、上記イとから、引用発明の「ゴム組成物」と本願補正発明の「ゴム成分100質量部に対して、0.05?10質量部の酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子と0.5?2質量部の酸化チタンとを含有するゴム組成物」とは、「ゴム成分100質量部に対して、紫外線吸収剤と所定重量部の酸化チタンとを含有する」ものである点で一致する。

エ 上記アないしウから、本願補正発明と引用発明とは、
「ゴム成分100質量部に対して、紫外線吸収剤と所定重量部の酸化チタンとを含有するゴム組成物を加硫成形してなるゴルフボール本体を有するワンピースゴルフボール。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記ゴム組成物に含有される紫外線吸収剤が、本願補正発明では、「ゴム成分100質量部に対して、0.05?10質量部の酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子」であるのに対して、引用発明では、そのようなものでない点。

相違点2:
前記ゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対する酸化チタンの含有量が、本願補正発明では、「0.5?2質量部」であるのに対して、引用発明では、「0.5?5質量部」である点。

(4)判断
上記相違点1及び2について検討する。
ア 相違点1について
(ア) 引用例の「【0026】紫外線吸収剤の含有量は、クリア塗料中の塗膜形成要素(樹脂分)100質量部あたり、0.05?3質量部が好ましく、より好ましくは0.5?2.5質量部である。0.05質量部以下では、充分な劣化防止効果は得られず、3質量部を超えても、劣化防止効果が飽和する一方、ボール本体との密着性が低下するからである。」との記載(上記(2)オ参照。)からも明らかなように、紫外線吸収剤の含有量は、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものである。
(イ) 紫外線吸収剤として、酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆してなる粒子は、本願の出願前に周知である(以下「周知技術」という。例.特開平7-258520号公報特に「【請求項1】 2官能性有機リン化合物をリン原子含有量が500ppm以上となるように共重合した極限粘度 0.5以上のポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルに、酸化セリウムとシリカ又は酸化セリウムとタルクからなり、表面が不定形シリカで被覆された平均粒子径 0.1?3.0 μm の粒子を0.05?10重量%含有させた耐光性難燃性ポリエステル組成物。」、「【0021】酸化セリウムとシリカ(表面を被覆する不定形シリカを除く)又はタルクとの割合は、重量比で15:85?50:50とするのが適当である。酸化セリウムの割合があまり少ないと紫外線を吸収して耐光性を向上させる効果が不十分となり、逆に多すぎるとポリエステルの明度が低下するという問題がある。
【0022】また、粒子の表面を被覆する不定形シリカの量は、粒子の15?25重量%とするのが好ましい。不定形シリカの量が多すぎると酸化セリウムによる紫外線吸収効果が損なわれ、一方、少なすぎると粒子の機械的強度が低く、また、表面活性が強くなって触媒作用を生じたりするため、好ましくない。」、「【0024】このような耐光剤粒子としては、日本無機化学工業社から「セリガード」の商品名で市販されているものを使用することができる。」及び「【0030】なお、実施例及び比較例で使用した「セリガード」は、日本無機化学工業社の商品名で、組成は次のとおりである。
セリガードT-3018;酸化セリウムとタルクとからなる粒子の表面を不定形シリカで被覆したもので、酸化セリウム:タルク:不定形シリカの重量比が30:52:18のもの
セリガードS-3018;酸化セリウムとシリカとからなる粒子の表面を不定形シリカで被覆したもので、酸化セリウム:シリカ:不定形シリカの重量比が30:52:18のもの
セリガードT-2018;酸化セリウムとタルクとからなる粒子の表面を不定形シリカで被覆したもので、酸化セリウム:タルク:不定形シリカの重量比が20:62:18のもの
セリガードS-2018;酸化セリウムとシリカとからなる粒子の表面を不定形シリカで被覆したもので、酸化セリウム:シリカ:不定形シリカの重量比が20:62:18のもの」、特開平11-350252号公報特に「【請求項1】 平均分子量400?2000のポリアルキレングリコールが2?10重量%含有され、かつ平均粒子径3.0μm以下の酸化セリウム粒子が0.05?5重量%含有されているポリアルキレンテレフタレートからなることを特徴とする易染性ポリエステル繊維。
【請求項2】 酸化セリウム粒子が、酸化セリウムと、タルクあるいはシリカからなり、表面が不定形シリカで被覆された平均粒子径0.1?3.0μmの粒子である請求項1記載の易染性ポリエステル繊維。」及び「【0031】【作用】本発明のポリエステル繊維が優れた染色性と耐光性を備えている・・(中略)・・特に耐光剤粒子として、酸化セリウムとタルクあるいはシリカからなり、表面が不定形シリカで被覆されたものを用いることにより、酸化セリウムとタルクあるいは酸化セリウムとシリカとからなる粒子が紫外線エネルギーを吸収し、かつ吸収することにより発生するラジカルは粒子を被覆しているシリカが遮断するため、ポリエステルのラジカルによる分解を抑制する。したがって、ポリアルキレングリコールを含有したポリエステルの耐光性を高め、染色後の退色を防止することが可能となり、L80の耐光試験後の保持率が85%以上となるものと推定される。・・(中略)・・【0033】また、実施例及び比較例で使用した耐光剤粒子は次の5種類のものである。
A:酸化セリウムとタルクとからなる粒子の表面を不定形シリカで被覆したもので、酸化セリウム/タルク/不定形シリカの重量比が30/52/18のもの(日本無機化学工業社製 セリガードT-3018)
B:酸化セリウムとシリカとからなる粒子の表面を不定形シリカで被覆したもので、酸化セリウム/シリカ/不定形シリカの重量比が30/52/18のもの(日本無機化学工業社製 セリガードS-3018)
C:酸化セリウムとタルクとからなる粒子の表面を不定形シリカで被覆したもので、酸化セリウム/タルク/不定形シリカの重量比が20/62/18のもの(日本無機化学工業社製 セリガードT-2018)」、特開平10-273867号公報特に「【0027】第2の発明における耐候性長繊維不織布が、優れた耐候性を示す理由は明かではないが、酸化セリウムを含有した耐候剤粒子によって紫外線エネルギーが吸収され、ラジカルの発生が抑制されるため、ポリエステルが紫外線を吸収して劣化するのが防止されるものと推定される。また、酸化セリウムとシリカまたはタルクとからなる粒子は、表面活性が不安定で、耐光性、耐熱性が不十分であるが、これを不定形シリカで被覆することにより、表面が緻密化し、耐光性、耐熱性が向上する。」並びに特開2003-25478号公報特に「【0026】紫外線遮蔽機能層:この紫外線遮蔽機能層において用いられる紫外線遮蔽材料としては、紫外線散乱剤と紫外線吸収剤に大別することができる。ここで、紫外線散乱剤とは、紫外線を散乱させることによって、紫外線遮断効果をもたらす材料のことであり、主に金属酸化物粉末などの無機系材料が用いられる。この紫外線散乱剤の例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどを微粒子化した粉体、あるいは二酸化チタン微粒子を酸化鉄で複合化処理してなるハイブリッド無機粉体、酸化セリウム微粒子の表面を非結晶性シリカでコーティングしてなるハイブリッド無機粉体などが挙げられる。紫外線散乱効果は、粒子径に大きく影響を受け、本発明においては、前記紫外線散乱剤の平均粒子径は、3μm以下が好ましく、特に1nm?1.5μmの範囲が好ましい。この紫外線散乱剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。」参照。)。
ここで、以下のa及びbの点は技術常識である。
a 不定形と非晶質とが同義であること(例.特開2002-156509号公報「【0018】なお、本発明において、上記SiO_(2)粒子とは、不定形(非晶質)の粒子ではなく、予め結晶化した状態でのSiO_(2)粒子を意味する。」参照。)。
b 非結晶と非晶質とが同義であること(例.特開平9-120795号公報「【0019】・・(中略)・・保護膜2の結晶構造が非晶質(非結晶)性であるものと・・(中略)・・」参照。)。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)から、引用発明において、ゴム組成物に含有される紫外線吸収剤として、酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆してなる粒子を用いるとともに、該粒子の含有量を、ゴム成分100質量部に対して0.05?10質量部とし、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が、引用例1に記載された事項及び周知技術に基づいて容易になし得たことである。

イ 相違点2について
(ア) 引用例の「【0017】白色顔料としては、酸化チタンが好ましく使用される。酸化チタンの種類は、特に限定しないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。酸化チタンの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5?5質量部が好ましい。本発明では、クリアーコートに紫外線吸収剤が含有されているので、ボール本体用ゴム組成物には、白色に呈するのに必要十分な量で足りるが、充分な隠ぺい力を確保して鮮やかな白色外観を達成するためには、基材ゴム100質量部に対し、0.5質量部以上とする必要がある。一方、5.0質量部超含有しても、隠蔽性や白色性の向上効果は飽和してしまうために、コスト的に不利になるだけだからである。・・(中略)・・」との記載(上記(2)ウ参照。)からも明らかなように、酸化チタンの含有量は、当業者が適宜決定すべき設計事項というべきものである。
(イ) 上記(ア)から、引用発明において、ゴム組成物における酸化チタンの含有量を、ゴム成分100質量部に対して0.5?2質量部とし、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が、引用例に記載された事項に基づいて容易になし得たことである。

ウ 効果について
本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例に記載された事項及び周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。

エ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本件補正は、旧特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成20年8月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によってそれぞれ特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2〔理由〕2で検討した本願補正発明において、その発明特定事項である「ゴム成分100質量部に対して、0.05?10質量部の酸化セリウムからなる微粒子を非晶質シリカで被覆した形態の粒子と0.5?2質量部の酸化チタンとを含有するゴム組成物」における「(ゴム成分100質量部に対して、)0.5?2質量部の酸化チタン(を含有する)」との限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに上記限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2〔理由〕4に記載したとおり、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-02 
結審通知日 2010-09-07 
審決日 2010-09-21 
出願番号 特願2003-192368(P2003-192368)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤坂 祐樹  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅野 芳男
桐畑 幸▲廣▼
発明の名称 ワンピースゴルフボール  
代理人 小谷 悦司  
代理人 江川 勝  
代理人 小谷 昌崇  

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