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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1226814
審判番号 不服2006-17614  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-11 
確定日 2010-11-08 
事件の表示 平成 8年特許願第173005号「光学積層体」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月22日出願公開、特開平 9-327879〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成8年6月11日の出願であって、平成17年11月14日付けで拒絶理由が通知されたが応答がなく、平成18年7月6日付けで拒絶査定がされ、同年8月11日付けで拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年9月6日付けで手続補正書が提出され、その後、当審において平成20年5月21日付けで審尋がなされ、同年7月23日に回答書が提出され、平成21年3月17日付けで拒絶理由が通知され、同年5月26日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月18日付けで審尋がなされたが応答がなかったものである。

2 本願発明
本願発明は、平成21年5月26日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されたとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「平均粒子径1?3μmの無機充填剤を含有し、且つ全光線反射率が60%以上である樹脂フィルムと偏光板を積層してなることを特徴とする光学積層体。」(以下、「本願発明1」という。)

3 当審の拒絶理由
当審において平成21年3月17日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明1は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1:実願昭55-137931号(実開昭57-60119号)のマイクロフィルム
引用文献2:特開平4-239540号公報

4 引用文献の記載事項
(1) 引用文献1の記載事項
(1-a)「内部に微粉末が配合されていると共にその周辺に微細泡が形成されている、真珠光沢様プラスチックフイルム又はシートからなる液晶表示用反射板。」(実用新案登録請求の範囲)
(1-b)「図面において、1はポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック、2は炭酸カルシュウム、硫酸バリュウム、硫酸マグネシュウム、酸化チタン、クレー、タルク、ケイ酸、ケイソウ土などからなる粒子径約0.01?100μの微粉末、3はプラスチック1と微粉末2との界面に形成された微細泡(約10μ以下)である。なお図中の4はオーバーコート層である。
上記1?3からなるプラスチックフイルム又はシートHは、プラスチックベースに微粉末(約2.5?50重量%)及び他の配合剤例えば界面活性剤などを配合し、所定の温度条件下で延伸することによって微細泡が得られ、フイルム又はシートは真珠様の光沢を発揮する。」(第2頁第6?19行)
(1-c)「本考案の反射板は以上のように構成されているので、微細泡がフイルム又はシートに受ける外圧などによって潰れたりすることがなく、きめの細い高い反射率が得られるという特徴を有する。」(第2頁末行?第3頁第3行)
(1-d)「また本考案の反射板は、その一面に接着層や反射板を設けることによって、実装時の作業の向上を計ったり、反射偏光板として用いたりすることもできるという利点もある。」(第3頁第4?7行)

(2) 引用文献2の記載事項
(2-a)「表面の、400?700nmの光の波長域における平均反射率が90%以上であり、該波長域の反射率の(最大値-最小値)が10%以下であることを特徴とする白色ポリエステルフイルム。」(特許請求の範囲の【請求項1】)
(2-b)「本発明は、白色ポリエステルフイルムに関し、特に、液晶ディスプレイ用の反射板用基材に用いて最適な白色ポリエステルフイルムで、液晶画面をサイドライト(エッジライトとも言う)により照明した場合、より明るい画面が得られる反射板用基材を構成することが可能な白色ポリエステルフイルムに関する。」(段落【0001】)

5 引用文献1に記載された発明
引用文献1は、「内部に微粉末が配合されていると共にその周辺に微細泡が形成されている、真珠光沢様プラスチックフイルム又はシートからなる液晶表示用反射板」(摘示(1-a))に関する技術を記載するものであり、同引用文献には、「図面において、1はポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチック、2は炭酸カルシュウム、硫酸バリュウム、硫酸マグネシュウム、酸化チタン、クレー、タルク、ケイ酸、ケイソウ土などからなる粒子径約0.01?100μの微粉末、3はプラスチック1と微粉末2との界面に形成された微細泡(約10μ以下)である。」(摘示(1-b))、「本考案の反射板は以上のように構成されているので、微細泡がフイルム又はシートに受ける外圧などによって潰れたりすることがなく、きめの細い高い反射率が得られるという特徴を有する。」(摘示(1-c))及び「また本考案の反射板は、その一面に接着層や反射板を設けることによって、実装時の作業の向上を計ったり、反射偏光板として用いたりすることもできるという利点もある。」(摘示(1-d))と記載されている。
上記記載において、摘示(1-d)における「その一面に接着層や反射板を設ける」なる記載は、反射板の一面に反射板を設けることはないし、反射偏光板となるものであるから、「その一面に接着層や偏光板を設ける」の誤記と解される。
そうしてみると、引用文献1には、
「内部に炭酸カルシュウム、硫酸バリュウム、硫酸マグネシュウム、酸化チタン、クレー、タルク、ケイ酸、ケイソウ土などからなる粒子径約0.01?100μの微粉末が配合されていると共にその周辺に約10μm以下の微細泡が形成されている高い反射率のプラスチックフイルム又はシートの一面に偏光板を設けた反射偏光板」
の発明(以下、「引用発明」という。)の発明が記載されていると認められる。

6 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「炭酸カルシュウム、硫酸バリュウム、硫酸マグネシュウム、酸化チタン、クレー、タルク、ケイ酸、ケイソウ土など」は無機充填剤に、「プラスチック」は樹脂に、「反射偏光板」は光学積層体に他ならないので、本願発明1と引用発明とは、
「無機充填剤の微粉末を含有する高い反射率の樹脂フィルムと偏光板を積層してなる光学積層体」
の点で一致し、下記の点で、相違又は一応相違する。
ア 本願発明1においては、無機充填剤の平均粒子径が1?3μmであるのに対し、引用発明においては粒子径が約0.01?100μである点(以下、「相違点ア」という。)
イ 本願発明1においては、樹脂フィルムの全光線反射率が60%以上であるのに対し、引用発明においては高い反射率であるものの全光線反射率が規定されていない点(以下、「相違点イ」という。)

7 当審の判断
(1) 相違点アについて
引用発明における粒子径については、平均粒子径であるかどうか明記されていないが、通常、平均粒子径が用いられているので、本願発明1とは平均粒子径1?3μmの範囲において重複しており、その範囲において一致するということができるが、仮に一致していないとしても、0.01?100μmの範囲から、その中間の粒子径である1?3μmの範囲の平均粒子径のものを用いてみることは当業者が適宜行うことであり、また、本願発明1において、平均粒子径1?3μmの範囲のものを用いたことにより格別顕著な効果を奏し得たものとも認められない。
なお、本願発明1において平均粒子径が1?3μmである無機充填剤を含有することに臨界的意義があることを実験により証明するように審尋において求めたが、なんら回答が得られなかった。したがって、上記したように、本願発明1において平均粒子径が1?3μmの範囲の充填剤を用いることにより格別顕著な効果を奏し得たものと認めることはできない。

(2) 相違点イについて
本願発明1においては、樹脂フィルムの全光線反射率が60%以上であることが規定されている。本願明細書の段落【0004】によれば、この全光線反射率は、「分光光度計に付属装置(積分球等)を取り付ける(例えば、(株)島津製作所製、UV3100PC、視野;2°、光源;C)ことにより測定されるもので、具体的には測定面に対し垂直に入射した光の試料面での全反射光の総和をJIS Z 8722に規定されるY値(%)として測定した値を意味する」ものであり、JIS Z 8722には、第1種分光測光器と第2種分光測光器が記載されており、それぞれ、波長範囲は380?780nm、400?700nmであることが記載されている。したがって、本願発明1の全光線反射率とは、380?780nm、あるいは400?700nmの全反射光の総和をY(輝度率又は視感反射率)%で表したものと解される。これに対し、引用文献2には400?700nmの光の波長域における平均反射率が90%以上である液晶ディスプレイの反射板用基材を構成することが可能な白色ポリエステルフイルムが記載されている(摘示(2-a)及び(2-b))。引用文献2には、可視光線である400?700nmの波長域における平均反射率が90%の以上のものが液晶ディスプレイの反射板に用いられることが記載されているのであるから、引用発明において反射率を可視光線である400?700nmの波長範囲における全反射光の総和を%で表し、反射板として使用できるものとするため、樹脂フィルムの全光線反射率を60%以上とすることは当業者が適宜なし得ることである。そして、本願発明1において、その下限を60%としたことにより格別顕著な効果を奏し得たものということができない。

(3) 請求人の主張する効果について
請求人は、引用発明に開示されている反射板は「真珠光沢様プラスチックフィルム又はシート」であるのに対し、本願発明1における樹脂フィルムは「光沢を有していない」白色フィルムであり、本願発明1の樹脂フィルムは、この相違によりいわゆる映り込みを防止できるという効果を奏する旨主張する(平成21年5月26日付け意見書、「3-2」)。
しかしながら、本願発明1において樹脂フィルムの光沢の有無については特定されておらず、また、「本願発明の反射板として用いられる、平均粒子径1?3μmの無機充填剤を含有しかつ全光線反射率が60%以上である樹脂フィルムが光沢を有することはないと主張するのであれば、その証拠を示されたい。」という平成21年9月18日付けの当審の審尋に対しても、なんら回答がないものであるから、上記主張は是認できない。
してみれば、本願発明1の樹脂フィルムは光沢を有していないとはいうことはできず、したがって、この点において、本願発明1が引用発明と異なる効果を奏し得たものということはできない。

(4) まとめ
したがって、本願発明1は引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-26 
結審通知日 2010-09-01 
審決日 2010-09-22 
出願番号 特願平8-173005
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 正紀菊地 則義河原 肇  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 橋本 栄和
細井 龍史
発明の名称 光学積層体  
代理人 神谷 惠理子  

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