• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1226829
審判番号 不服2008-19412  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-31 
確定日 2010-11-08 
事件の表示 特願2007-143327「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-299410〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は平成9年3月17日に出願された特願平9-62675号を原出願とする分割出願であって、本願は平成19年5月30日に出願され、平成20年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同年9月1日に手続補正がなされたものである。

第2 平成20年9月1日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成20年9月1日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
コンピュータ本体と、
前記コンピュータ本体と別体でなり、手書き入力を検出する検出部を有する表示部と、
前記コンピュータ本体と前記表示部とを連結する軸部と、
前記表示部を前記軸部に対して所定の角度に回動自在に保持する第1の保持部と、
前記軸部を前記コンピュータ本体に対して所定の角度に回動自在に保持する第2の保持
部と
を備え、
前記表示部は、前記コンピュータ本体に対して、ほぼ垂直な状態からほぼ水平な状態になるように、所定の角度および所定の位置で保持されるとともに、ほぼ水平な状態に位置されたとき、前記コンピュータ本体の一部に当接しながらコンピュータ本体の上を覆う状態となり、その前端が前記コンピュータ本体の載置面に対して当接し、 前記軸部は、前記表示部が前記コンピュータ本体に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、前記表示部の背面に当接する ことを特徴とする情報処理装置。」
と補正された。
なお、下線は審決において付した。

2.補正の適否について
平成20年9月1日付けの手続補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「軸部」について、「前記軸部は、前記表示部が前記コンピュータ本体に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、前記表示部の背面に当接する」と限定する補正であるから、特許法第17条の2第4項の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、平成20年9月1日付けの手続補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうかについて以下に検討する。

3.引用刊行物
原審が拒絶の理由に引用した特開平6-161600号公報(平成6年6月7日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の各記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子機器に係り、特に、入力機能を備えた表示装置を有する電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】入力機能を備えた表示装置を有する電子機器に関する従来技術として、例えば、特開平1-232406号公報等に記載された技術が知られている。この従来技術による電子機器は、電子機器本体に表示部を回動自在に設置し、操作者から表示画面を見やすいものにするというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術は、表示部に直接入力を行う機能を備えた表示装置に入力を行うための操作に対する配慮がなされておらず、例えば、入力時に電子ペンを使用する場合等、表示部を水平に近い状態で、かつ、机上面との距離の少ない位置に置くという入力操作に最適な状態への表示部の調整が困難であるという問題点を有している。また、前記従来技術は、表示部の位置調整の自由度が小さく、例えば、表示装置が液晶ディスプレイの場合等に、操作者のワークスペースが液晶の視野角により制限されるという問題点を有している。
【0004】また、前記従来技術は、メモリーカード、フロッピーディスクユニット、入力用電子ペン、トラックボール等の操作者が頻繁に操作を行う入力デバイスがそれぞれ機能別に分離、独立して配置されており、入力デバイスが散在し操作の妨げとなり、さらに、これらの入力デバイスを本体と接続するケーブル等が散在し操作の邪魔になるという問題点を有している。
【0005】さらに、前記従来技術は、操作者の対面に相手がいる場合、例えば、机を挟んで商談を行う場合等、相手に表示画面を見せる際に電子機器全体の向きを変えなければならないという問題点を有している。
【0006】本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、入力機能を備えた表示装置を有する電子機器における表示装置の表示部を、表示に最適な状態と、入力に最適な状態とに設定することのできる電子機器を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、操作者が頻繁に操作を行う入力デバイスを一体化し、入力デバイスの手元集中化を図り、操作性を向上させることのできる電子機器を提供することにある。
【0008】さらに、本発明の他の目的は、操作者の対面に相手がいる場合でも、表示装置のみの簡単な動作で相手に画面を見せることのできる電子機器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば前記目的は、両端に回転軸を持つ連結部材の片方に表示部を支持し、他のもう一方を電子機器本体により支持するように電子機器を構成することにより、また、表示部及び連結部材を、電子機器本体外周に沿って回動可能にすることにより達成される。
【0010】また、前記他の目的は、メモリーカード、フロッピーディスクユニット、入力ペン、トラックボール等の操作者が頻繁に操作を行う装置を一体化して、集中型入力デバイスとして構成し、また、この集中型入力デバイスと電子機器との接続を無線により行いワイヤレス化することにより達成される。
【0011】さらに、前記他の目的は、表示装置を電子機器後方に反転可能にすると共に、画面表示をも反転可能とすることにより達成される。
【0012】
【作用】前述の構成を有する本発明の電子機器は、表示部を操作者の視覚に適した位置に容易に調整することができると共に、表示部下方の電子機器本体との間のスペースを有効に使用することができるため、機器の設置効率を向上することができる。また、入力時において、入力操作に適した高さ及び角度に表示部を調整することができる。
【0013】また、本発明の電子機器は、入力デバイスを一体化し、電子機器本体との接続を無線により行うことによりワイヤレス化することができるで、操作の手元集中化を図り、操作性の向上を図ることができる。
【0014】さらに、本発明の電子機器は、表示装置及び画面表示の反転を行うことができるので、操作者の対面に相手がいる場合にも、表示装置のみの簡単な動作で対面する相手に画面を見せることができる。」
なお、下線は審決において付した。以下、同様。

(イ)「【0015】
【実施例】以下、本発明による電子機器の実施例を図面により詳細に説明する。まず、図1?図11を参照して本発明の第1の実施例を説明する。
【0016】図1は本発明の第1の実施例の全体の構造を示す斜視図、図2は連結アームの構造を説明する斜視図、図3は連結アームの連結部を拡大して示す図、図4は電子機器本体の構造を示す分解斜視図、図5は本発明の第1の実施例の正面図、図6、図7は本発明の第1の実施例の側面図、図8は表示装置を入力位置に移動する際の動き方を説明する図、図9、図10は本発明の第1の実施例上面図、図11は集中型入力デバイスの構造を示す斜視図である。図1?図11において、1は電子機器本体、2は入力機能を備えた表示装置(以下、表示装置という)、3は連結アーム、5はメモリカード、6はフロッピーディスクユニット、7は電子ペン、8はトラックボール、9は集中型入力デバイス、10は画面表示反転スイッチである。
【0017】本発明の第1の実施例による電子機器は、図1に示すように、電子機器本体1と、表示装置2とが連結アーム3の両端にそれぞれ回動可能取付けられて構成されている。連結アーム3は、図2に示すように、連結アーム3と電子機器本体1及び表示装置2とを取付けるブラケット3aと、連結アーム3のフレーム3bと、フレーム3bを固定する部材3cと、信号ケーブル3dとにより構成されている。
【0018】また、連結アームの連結部は、図3に示すように、ブラケット3aとフレーム3bとが、ゴムブッシュ3eを介して結合されて構成されている。すなわち、連結部は、ブラケット3aには軸部が、フレーム3bには孔部がそれぞれ設けられており、ブラケット3aの軸部がゴムブッシュ3eを介してフレーム3bの孔部に圧入されて構成されている。この結果、フレーム3bは、ブラケット3aの軸を中心として(イ)に示す方向に回動可能とされ、フレーム3bの回動時には、このブラケット3aの軸とゴムブッシュ3eとの摩擦を利用して回転トルクを発生させ、これにより表示装置2を任意の角度で保持することが可能となる。
【0019】次に、電子機器本体1を図4を参照して説明する。
【0020】図4に示すように、電子機器本体1は、上ケース1aと、下ケース1bと、メインフレーム1cとを有し、メインフレーム1c上に、CPU等の半導体部品を搭載するプリント基板1e、ハードディスク等の固定記憶媒体1f、拡張パッケージ1g、及び、電源ユニット1h等が搭載されて構成される。そして、メインフレーム1cは、上ケース1aと下ケース1bとに挟まれるように取付けられている。
【0021】また、回動部1dは、メインフレーム1cの下方に配置され、メインフレーム1cと下ケース1bとに挟まれるように取付けられる。そして、回動部1dは、下ケース1bの1i部を中心とし、回動可能に固定されている。プリント基板1eと表示装置2とを接続する信号ケーブル3dは、メインフレーム1cの孔を通り、回動部1dに沿って連結アーム3の中に入り、さらに図2に示すように、連結アーム3を通って表示装置2に接続される。
【0022】前述した構成により、本発明の第1の実施例による電子機器は、表示装置2が連結アーム3を介して、1iを中心として電子機器本体1の周辺に沿って回動することが可能となる。
【0023】次に、図5?図10を参照して表示装置2の動きについて説明する。
【0024】本発明の第1の実施例による電子機器の表示装置2を操作者の正面に向けた場合の正面及び側面の状態を示す図5、図6の状態において、操作者は、表示装置2の下端部に設けたパッド2aを持って図6の(ロ)及び(ハ)方向に表示装置2を動かすと、回転中心31、32を中心として表示装置2及び連結アーム3が、回転する。これにより、操作者は、表示装置2の角度及び高さを任意に調整することがてき、表示装置2を操作者それぞれの好みの角度及び高さに設定することができる。
【0025】また、図5、図6に示す状態から操作者がパッド2aを手前に引き、図8に示すように表示装置2を動作させると、図7に示すように、表示部(=入力部)を水平に近い状態で、かつ、机上面との距離が少ない入力操作に最適な状態への調整を行うことができ、電子ペン等を用いて表示装置2に直接入力を行う場合に、使い勝手のよい状態とすることができる。
【0026】また、図9及び図10に示す上面図に示すように、表示装置2は、前述した電子機器本体1の回動部1dによって、図9の(ニ)に示す方向にも調整することが可能であり、操作者が電子機器本体1の正面ではなく、斜め方向に居る場合にも、操作者は、表示装置2の表示部を正面から見ることができる。
【0027】次に、集中型入力デバイス9の構成を図11を参照して説明する。
【0028】一般に、本発明が適用されるような電子機器においては、操作者が頻繁に操作を行う入力デバイスが往々にして多くなりがちである。そのため、個々のデバイスが独立、分離していると入力操作の妨げとなり、また、ケーブル等も散在して机上の省スペースの妨げにもなる。
【0029】そこで、本発明の第1の実施例では、図11に示すように、メモリーカード5、フロッピーディスクユニット6、入力用電子ペン7、トラックボール8等を一体化した集中型入力デバイス9を構成している。これにより、入力デバイスが操作者の手元に集中され、電子機器の操作性の向上を図ることができる。この集中型入力デバイス9と電子機器本体1との接続は、無線を使用して行う等によりワイヤレス化することができ、これにより、机上にケーブルが散在するようなことも防止することができる。
【0030】また、トラックボール8のベース部8aは、図11に示すように矢印(ホ)の方向に回動可能とされ、クリックボタン8bがトラックボール8を中心に回動する。これにより、操作者の姿勢の変化に対して、集中型入力デバイス9本体の向きを逐一変える必要をなくすことができる。」

(ウ)「【0031】図12、図13は本発明の第2の実施例の側面図である。図12、図13において、4はキーボードであり、他の符号は図1?図11の場合と同一である。図示本発明の第2の実施例は、前述した本発明の第1の実施例に示した電子機器において、入力装置にキーボード4を併用する場合の例である。
【0032】この本発明の第2の実施例は、図12に示すように、キーボード4が、その未使用時には、電子機器本体1の上に格納できるように構成される。そして、使用時、キーボード4は、机上の任意の位置に置かれて使用することが可能である。これにより、本発明の第2の実施例は、キーボードを備える場合にも、机上の省スペース化を図ることができる。
【0033】また、本発明の第2の実施例は、連結アーム3の電子機器本体1側の回転中心32が、前述した本発明の第1の実施例の場合より、キーボード4の高さ分だけ高い位置とされており、表示装置2を低い位置に水平に設定する場合にも、図13に示すように、キーボード4が表示装置2と電子機器本体1との間に格納され、表示装置2に直接入力を行う際にも、キーボード4が入力操作の邪魔になるようなことを防止することができる。」

(エ)「【0034】図14は本発明第3の実施例の側面図、図15は本発明の第4の実施例の側面図である。
【0035】図14に示す本発明の第3の実施例は、前述した本発明の第1、第2の実施例に示した電子機器において、連結アーム3の中間に回動可能な軸33をさらに設けて構成したものであり、表示装置2の位置の調整の自由度をさらに大きくすることのできるものである。なお、前述の中間に設ける回動可能な軸は、さらに多数設けられてもよい。
【0036】図15に示す本発明の第4の実施例は、連結アーム3を、回転軸にこだわることなく、自在に変形が可能な部材を用いて、フレキシブルアームとしたものであり、これにより、表示装置2の位置の調整の自由度を飛躍的に大きくすることのできるものである。」

(オ)「【0037】図16は本発明の第5の実施例の側面図、図17は本発明の第5の実施例の斜視図、図18は表示装置の動きを説明する図である。
【0038】図16?図18に示す本発明の第5の実施例は、電子機器の操作者の対面に相手が居る場合に好都合なものである。
【0039】電子機器の操作者の対面に相手がいる場合、例えば、電子機器を用いて商談を行うような場合において、使用する電子機器がノート型等の小型のものは問題ないが、ラップトップ型のもの、CRTディスプレイを用いたものでは、顧客に画面を見せる際には電子機器全体の向きを変えるか、顧客に場所を移動して頂くか、あるいは、電子機器を操作者が対面する位置ではなく机の横に設置しなければならなかった。机の横に電子機器設置する場合、入力操作、特に、画面に直接入力操作を行うような場合、非常に操作が行いにくいという問題があった。
【0040】本発明の第5の実施例は、このような問題点を解決するものであり、図16に示すように、表示装置2をパッド2aが上方になるように動かすことにより、表示装置2の表示面を、電子機器本体1の向きを変えることなく、対面側に反転することができるようにしたものである。しかし、このままでは、画面表示は、相手側では上下逆になるため、この本発明の第5の実施例は、画面表示を上下に反転させる機能を、電子機器内に持たせている。そして、例えば、図17に示すように表示装置2に画面表示反転スイッチ10が設けられ、このスイッチを押すたびに画面表示が上下反転するようにされている。
【0041】なお、画面表示反転スイッチ10は、図17に示すような表示装置2のコーナーに設ける必要はなく、集中型入力デバイス9、キーボード4等に設けてもよい。あるいは、画面表示反転の切替えを、入力ペンの特定の操作、キーボードの特定のキーを押す等により行うようにすることもできる。
【0042】また、対面する相手が画面入力を行う場合、図7により説明したと同一の状態で、画面の上下反転を行った状態としておいてもよく、また、図18に鎖線で示すように、表示装置2を対面する相手側の近くまで展開するようにすることもできる。このように、本発明の第5の実施例は、対面する相手が画面入力を行う場合、二通りの形態が可能であり、机が長く相手との距離がある場合でも、相手は自分の近くに表示装置2を引き寄せることができる。」

(カ)「【0043】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、表示部を操作者の視覚に適した位置に容易に調整することができると共に、表示部への入力時に、入力操作に適した高さ及び角度に表示部の調整を行うことができ、また、キーボード等の入力装置を併用する場合にも、表示部下方のスペースを有効に使用することにより、機器の設置効率の向上を図ることができる。
【0044】また、本発明によれば、入力デバイスを一体化し、電子機器本体との接続をワイヤレス化することができるので、操作の手元集中化と操作性の向上とを図ることができ、さらに、表示装置及び画面表示を反転させることにより、操作者の対面に相手がいる場合にも、表示装置のみの簡単な動作で相手に画面を見せることができる。」

(キ)
図6、図7によれば、表示装置2はほぼ垂直な状態から水平に近い状態まで角度を変えることができ、表示部を水平に近い状態にしたときに表示部の背面が電子機器1本体の上を覆いかつ連結アーム3が電子機器本体及び表示装置2の背面に当接していることが見てとれる。

以上の記載からみて、引用例1には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「電子機器本体1と、入力機能を有する表示装置2と、前記電子機器本体1と前記表示装置7とを連結する連結アーム3と、前記表示装置2を前記連結アーム3に対して所定の角度に回動可能に保持する第1のブラケット3aと、前記連結アーム3を電子機器本体1に対して所定の角度に回動可能に保持する第2のブラケット3aとを備え、
電子機器本体1は、メインフレーム1cを有し、メインフレーム1c上に、CPU等の半導体部品を搭載するプリント基板1e、ハードディスク等の固定記憶媒体1f、拡張パッケージ1g、及び、電源ユニット1h等が搭載され、
表示装置2へ電子ペン等を用いて直接入力することができ、
前記表示装置2は、前記電子機器本体1に対して、ほぼ垂直な状態から水平に近い状態になるように所定の角度および所定の位置で保持されるととともに、表示装置2を水平に近い状態にすると、表示装置の表示部(=入力部)を水平に近い状態でかつ机上面との距離が少ない入力操作に最適な状態への調整を行うことができ、
ほぼ水平な状態に位置されたとき表示装置2の背面が前記電子機器本体1の上を覆う状態となり、
前記連結アーム3は、前記表示装置2が前記電子機器本体1に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、前記表示装置2の背面と電子機器本体に当接することを特徴とする電子機器。」

4.対比
本願補正発明と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)を対比する。
(1)引用発明の「電子機器本体1」は、メインフレーム1cを有し、メインフレーム1c上に、CPU等の半導体部品を搭載するプリント基板1e、ハードディスク等の固定記憶媒体1f、拡張パッケージ1g、及び、電源ユニット1h等が搭載されているから、本願補正発明の「コンピュータ本体」といえ、引用発明の「入力機能を有する表示装置2」は、本願補正発明の「表示部」に相当し、電子機器本体1と表示装置2は連結アーム3で連結されているから、引用発明の電子機器1と表示装置2は別体といえる。
(2)引用発明の電子機器本体1と表示装置2とを連結する「連結アーム3」は、本願補正発明のコンピュータ本体と表示部とを連結する「軸部」に相当する。
(3)引用発明の2つの「ブラケット3a」は、本願補正発明の「第1の保持部」及び「第2の保持部」に相当する。
(4)引用発明の「机上面」は、本願補正発明の「コンピュータ本体の載置面」に相当する。
(5)引用発明の「電子機器」は、上記(1)に記載したようにコンピュータ本体といえる「電子機器本体」と「表示装置」から構成されているから、本願補正発明の「情報処理装置」に相当することは明らかである。
(6)引用発明は、電子機器本体1と、前記電子機器本体1と別体で構成され電子ペン7を用いた手書き入力機能を有する表示装置2と、前記電子機器本体1と前記表示装置7とを連結する連結アーム3と、前記表示装置2を前記連結アーム3に対して所定の角度に回動可能に保持する第1のブラケット3aと、前記連結アーム3を電子機器本体1に対して所定の角度に回動可能に保持する第2のブラケット3aとを備えているから、本願補正発明と引用発明とは、
「コンピュータ本体と、
前記コンピュータ本体と別体でなり、入力部を有する表示部と、
前記コンピュータ本体と前記表示部とを連結する軸部と、
前記表示部を前記軸部に対して所定の角度に回動自在に保持する第1の保持部と、
前記軸部を前記コンピュータ本体に対して所定の角度に回動自在に保持する第2の保持部とを備えている」
点で一致する。
(7)引用発明においては、表示装置2は、電子機器本体1に対して、ほぼ垂直な状態からほぼ水平な状態になるように所定の角度および所定の位置で保持されるととともに、ほぼ水平な状態に位置されたとき、連結アーム3は、前記電子機器本体1と表示装置2の背面に当接し、表示装置2は電子機器本体1の上を覆う状態となるから、本願補正発明と引用発明とは、
「前記表示部は、前記コンピュータ本体に対して、ほぼ垂直な状態からほぼ水平な状態になるように、所定の角度および所定の位置で保持されるとともに、ほぼ水平な状態に位置されたとき、コンピュータ本体の上を覆う状態」となり、「前記軸部は、前記表示部が前記コンピュータ本体に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、前記表示部の背面に当接する」している点で一致する。

そうすると、本願補正発明と引用発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。

(一致点)
「コンピュータ本体と、
前記コンピュータ本体と別体でなり、入力部を有する表示部と、
前記コンピュータ本体と前記表示部とを連結する軸部と、
前記表示部を前記軸部に対して所定の角度に回動自在に保持する第1の保持部と、
前記軸部を前記コンピュータ本体に対して所定の角度に回動自在に保持する第2の保持部とを備え、
前記表示部は、前記コンピュータ本体に対して、ほぼ垂直な状態からほぼ水平な状態になるように、所定の角度および所定の位置で保持されるとともに、ほぼ水平な状態に位置されたとき、コンピュータ本体の上を覆う状態となり、
前記軸部は、前記表示部が前記コンピュータ本体に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、前記表示部の背面に当接する情報処理装置。」

(相違点1)
本願補正発明の表示部は、手書き入力ができ、手書き入力を検出する検出部を有しているのに対して、
引用発明の表示装置2は、電子ペン7を用いた入力ができる表示装置ではあるものの、手書き入力が可能か明記されておらず、また手書き入力を検出する検出部を有することは記載されていない点。

(相違点2)
本願補正発明の表示部は、コンピュータ本体に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、前記コンピュータ本体の一部に当接しその前端がコンピュータ本体の載置面に対して当接するのに対して、
引用発明の表示装置2は電子機器本体1に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、その連結アーム3が電子機器本体1に当接するが、表示装置2は電子機器本体1に当接しておらず、また、表示装置2の前端が電子機器本体1の置かれる机上面に対して当接していない点。

5.判断
(相違点1について)
コンピュータ等の表示面に手書き入力を行えるようにすることは周知技術(例えば、特開平8-137599号公報の段落0023-0035、特開平5-204488号公報の要約、段落0008?0012参照。)であるから、引用発明において表示部へ電子ペンを用いて直接入力をする際に手書き入力できるようにすることは当業者が容易に想到し得ることであり、そのように構成すれば手書き入力を検出する検出部を備えることは明らかである。

(相違点2について)
手書き入力が行われる表示部がコンピュータ本体に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、その前端をコンピュータ本体の載置面に対して当接するようにすることは、周知(例えば、特開平5-204488号公報の図3参照。)であるし、引用発明の目的とすることは表示装置への入力を最適に行うことにあることから、表示装置の表示部に手書き入力をするときに、表示部を安定に支持するように机上面や電子機器本体に表示装置を当接させることは当業者が容易に想到し得ることである。よって、引用発明に上記周知技術ないしは技術常識を適用して本願補正発明の如く構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件補正発明についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、したがって、平成20年9月1日付けの本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年9月1日付けの手続補正は前記のとおり却下されるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
コンピュータ本体と、
前記コンピュータ本体と別体でなり、手書き入力を検出する検出部を有する表示部と、
前記コンピュータ本体と前記表示部とを連結する軸部と、
前記表示部を前記軸部に対して所定の角度に回動自在に保持する第1の保持部と、
前記軸部を前記コンピュータ本体に対して所定の角度に回動自在に保持する第2の保持部と
を備え、
前記表示部は、前記コンピュータ本体に対して、ほぼ垂直な状態からほぼ水平な状態になるように、所定の角度および所定の位置で保持されるとともに、ほぼ水平な状態に位置されたとき、前記コンピュータ本体の一部に当接しながらコンピュータ本体の上を覆う状態となり、その前端が前記コンピュータ本体の載置面に対して当接する
ことを特徴とする情報処理装置。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 3.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、発明を限定する事項である次の事項、すなわち、
「前記軸部は、前記表示部が前記コンピュータ本体に対してほぼ水平な状態に位置されたとき、前記表示部の背面に当接する」
を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含む本願補正発明が、前記「第2 4.」及び「第2 5.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許を受けることができない。

4.本件発明についてのむすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-10 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-09-27 
出願番号 特願2007-143327(P2007-143327)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 江嶋 清仁
特許庁審判官 篠塚 隆
和田 志郎
発明の名称 情報処理装置  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ