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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1226999
審判番号 不服2008-21452  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-21 
確定日 2010-11-11 
事件の表示 特願2007-188196号「冷却用包装体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月 5日出願公開、特開2009- 22493号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成19年7月19日の出願であって、平成20年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年8月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年9月19日付けで特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成20年9月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年9月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。

「包材中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、クエン酸粉末(B)とを前記(A)成分1モルに対して、前記(B)成分0.2?3モルをそれぞれ隔離して封入してなる冷却用包装体であって、使用時に前記(A)成分と前記(B)成分とを接触させるものであることを特徴とする冷却用包装体。」(下線は補正個所を示す。)

2.補正の目的、新規事項の追加の有無

本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「有機多塩基粉末」について、「クエン酸粉末、シュウ酸粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種」と選択的に記載されていたものを、「クエン酸粉末」のみに限定し、「第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)」と「クエン酸粉末(B)」の量を「(A)成分1モルに対して、前記(B)成分0.2?3モル」と限定するものであって、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものでもない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。


3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-191435号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a.「本発明の目的は、冷感剤や揮発性物質を使うことなく、冷感効果に優れ、特に夏場等に冷涼感が得られる化粧料を提供することにある。」(段落【0003】)

b.「本発明者らは、常温で固体の酸等と、これより弱い酸の塩とを組合わせれば、これらの吸熱反応により、冷感剤等を使わなくても、冷感効果に優れた化粧料が得られることを見出した。」(段落【0004】)

c.「すなわち、本発明は、(A)常温で固体の酸又は水に溶解したときに酸性を示す無機物若しくは有機酸塩、及び(B)成分(A)より弱酸の塩を含有する冷感化粧料を提供するものである。」(段落【0005】)

d.「本発明で用いる成分(A)のうち、常温で固体の酸としては、例えば炭素数10以上のモノカルボン酸;常温で固体状のアルキルエーテルカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸等のジカルボン酸;乳酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸等のヒドロキシ(モノ、ジ、トリ)カルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン等の酸性アミノ酸などが挙げられる。水に溶解したときに酸性を示す無機物としては、例えば硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム水和物又は無水物、塩化亜鉛、カラミン、硫酸亜鉛、p-フェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。また、有機酸塩としては、塩酸グアニジン、タウリン等が挙げられる。」(段落【0006】)

e.「これらのうち、常温で固体の酸、水に溶解したときに酸性を示す無機物が好ましく、特にクエン酸、コハク酸、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム水和物、無水物が好ましい。」(段落【0007】)

f.「本発明で用いる成分(B)の塩としては、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられ、水和物、無水物のいずれをも使用できる。水和状リン酸塩としては、リン酸水素二ナトリウム12水塩、リン酸ナトリウム12水塩等が;水和状炭酸塩としては、炭酸ナトリウム10水塩等が;無水リン酸塩としては、リン酸水素二ナトリウム等が;炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム、無水炭酸ナトリウム等が挙げられる。」(段落【0008】)

g.「これらのうち、水和物を用いる場合には、使用時に成分(A)と混合して用い、水を必要とせずに冷感効果が得られる。また、固体同士を混合することにより、液体が得られる。また、無水物を用いる場合には、予め成分(A)及び(B)を配合した化粧料を製造し、使用時に水と混合することにより、冷感効果が得られる。更に、成分(B)として炭酸塩を用いる場合には、冷感効果と同時に発泡が起こり、冷感効果を持続させることができる。」(段落【0009】)

h.「本発明の化粧料において、成分(A)及び成分(B)は、それぞれ全組成中に5?95重量%、特に10?50重量%配合するのが、十分な冷感効果を得る点で好ましい。また、成分(A)及び(B)の配合割合は、酸、塩基の当量比で、1/10?10/1、特に1/5?5/1が好ましい。」(段落【0010】)

i.「成分(A)及び(B)の好ましい組合わせとしては、硫酸アルミニウムカリウムと、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又はリン酸水素二ナトリウム;硫酸アルミニウムと炭酸ナトリウム;クエン酸又はコハク酸と、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。」(段落【0011】)

j.「本発明の化粧料は、配合成分を混合することにより製造され、固体状、粉体状のものとして得られる。前記のように、成分(B)として水和物を用いる場合には、2剤式とする。この場合、任意成分は、成分(A)、(B)のどちら側に配合しても良い。」(段落【0013】)

これら記載事項を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「クエン酸とリン酸水素二ナトリウム12水塩とを、クエン酸とリン酸水素二ナトリウム12水塩の配合割合を酸、塩基の当量比で1/10?10/1、特に好ましくは1/5?5/1の割合で、使用時に混合する2剤式の粉末とする吸熱反応により冷涼感が得られる冷感化粧料。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用発明の「クエン酸」、「リン酸水素二ナトリウム12水塩」は、本願補正発明の「クエン酸」、「第2リン酸ナトリウム12水和物」にそれぞれ相当する。

引用発明は「2剤式の粉末」として使用するものであるから、「クエン酸」と「リン酸水素二ナトリウム12水塩」とは粉末状であるといえ、引用発明は「クエン酸粉末」と「第2リン酸ナトリウム12水和物粉末」の発明特定事項を有するといえる。

引用発明は、「クエン酸」と「リン酸水素二ナトリウム12水塩」の配合割合が、「酸、塩基の当量比で1/10?10/1、特に1/5?5/1の割合」であり、これをモル数に換算し、リン酸水素二ナトリウム12水塩を基準として表現すると、「リン酸水素二ナトリウム12水塩」1モルに対して、「クエン酸」はおよそ0.066?6.66モル、特に好ましくはおよそ0.133?3.33モル配合されると言い換えることができ、この割合は、本願補正発明と、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末成分1モルに対して、前記、クエン酸粉末成分0.2?3モル配合される点で共通している。

また、引用発明は、「2剤式の粉末」であって、「使用時に混合する」ことで、「吸熱反応により冷涼感が得られる」ものであるから、使用前にはそれぞれが隔離されているといえ、本願補正発明とは「第2リン酸ナトリウム12水和物粉末とクエン酸粉末とを隔離しておき、使用時に成分と成分とを接触させるものである」点で共通するものである。

また、引用発明の「冷感化粧料」と本願補正発明の「冷却用包装体」とは、「冷却剤」である限りにおいて共通するものである。


そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「第2リン酸ナトリウム12水和物粉末と、クエン酸粉末とを前記第2リン酸ナトリウム12水和物粉末成分1モルに対して、クエン酸粉末成分0.2?3モルをそれぞれ隔離しておき、使用時に第2リン酸ナトリウム12水和物成分とクエン酸粉末成分とを接触させるものである冷却剤。」

そして、両者は次の相違点で相違する。
(相違点)
本願補正発明は、「冷却用包装体」であって、「包材中に」「第2リン酸ナトリウム12水和物粉末」と「クエン酸粉末」とが「隔離して封入」されるのに対して、引用発明は、「第2リン酸ナトリウム12水和物粉末」と「クエン酸粉末」とが「隔離」され、使用時に接触される冷却剤ではあるもののどのように包装されるかについては言及されていない点。

3-3.相違点の判断
上記相違点について検討する。
2種類の組成物を隔離して、封入し、使用時に接触させることで吸熱反応により冷却効果を得る冷却用包装体は本願出願前に周知技術であって、引用発明のものも、保管、輸送、販売等の際には何らかの包装をすることが当然であることに鑑みれば、引用発明を、該周知技術のような包装体とし、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、拒絶査定時の明細書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「包材中に、第2リン酸ナトリウム12水和物粉末(A)と、クエン酸粉末、シュウ酸粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機多塩基酸粉末(B1)とをそれぞれ隔離して封入してなる冷却用包装体であって、使用時に前記(A)成分と前記(B1)成分とを接触させるものであることを特徴とする冷却用包装体。」

IV.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「II.3-1」に記載したとおりである。

V.対比・判断
本願発明は、前記II.1の本願補正発明から、「クエン酸粉末」に限定されていたものを、「クエン酸粉末、シュウ酸粉末からなる群から選ばれる少なくとも1種」と選択的に記載し、「第2リン酸ナトリウム12水和物粉末」と「クエン酸粉末」の量についての限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「II.3-3」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-13 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-09-27 
出願番号 特願2007-188196(P2007-188196)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61F)
P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 望月 寛  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 豊永 茂弘
岩田 洋一
発明の名称 冷却用包装体  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 江川 勝  

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