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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1227063
審判番号 不服2008-21618  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-25 
確定日 2010-11-10 
事件の表示 特願2003-388303「ハイブリッドフィルムタイプセンサー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開,特開2004-170420〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年11月18日(パリ条約による優先権主張;平成14年(2002年)11月18日 米国)の外国語特許出願であって,平成18年8月30日付けで拒絶理由が通知されて同年12月4日に手続補正がなされた後,平成19年9月6日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年12月10日付け手続補正書が提出されたものの,該手続補正は平成20年5月21日付けで補正却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月25日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに,同年9月24日付けで手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正発明
本件補正は,補正前の特許請求の範囲(平成18年12月4日付けで補正されたもの)の請求項1および請求項3である
「【請求項1】
第一の表面及び第二の表面をもつ基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該第一の表面から、該読み取り電極にもっとも近い該第二の表面まで延在している開口;及び
該読み取り電極と接触し、そして該開口内にあって、検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれた気体拡散膜;からなる気体検出用センサーセルであって、
該気体拡散膜の厚さが、該気体拡散膜の材質、該気体拡散膜に接触する気体の分圧の差、該気体拡散膜の透過係数、及びこれらの組合せからなる群から選択されるパラメータに基づいて計算され;且つ
該気体拡散膜がプロトン交換膜であることを特徴とする気体検出用センサーセル。」
および
「【請求項3】
第一の表面及び第二の表面をもつ基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該第一の表面から、該読み取り電極にもっとも近い該第二の表面まで延在している開口;及び
該読み取り電極と接触し、そして該開口内にあって、検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれたポリマー物質である気体拡散膜;からなる気体検出用センサーセルであって、
該気体拡散膜の厚さが、該気体拡散膜の材質、該気体拡散膜に接触する気体の分圧の差、該気体拡散膜の透過係数、及びこれらの組合せからなる群から選択されるパラメータに基づいて計算され;且つ
該気体拡散膜が電解質物質であることを特徴とする気体検出用センサーセル。」
を,それぞれ,
「【請求項1】
第一の表面及び第二の表面をもつ基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該第一の表面から、該読み取り電極にもっとも近い該第二の表面まで延在している開口;
該基体と接触しているカウンター電極;
該基体と接触している基準電極; 気体の流れをコントロールするための非電解質膜;及び
該読み取り電極及び該カウンター電極と接触し、そして該開口内にあって、検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれた気体拡散膜;からなる気体検出用センサーセルであって、
該気体拡散膜の厚さが下記の式に基づいて計算され:
d=Pd×A×ΔP×i
式中、dは拡散膜の厚さであり、Pdは透過係数であり、Aは幾何学上の読み取り電極に等しい面積であり、ΔPは膜を通る気体の分圧の差であり、及びiは電流の測定量である
且つ
該気体拡散膜がプロトン交換膜であることを特徴とする気体検出用センサーセル。」
および
「【請求項3】
第一の表面及び第二の表面をもつ基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該第一の表面から、該読み取り電極にもっとも近い該第二の表面まで延在している開口;
該基体と接触しているカウンター電極;
該基体と接触している基準電極;
気体の流れをコントロールするための非電解質膜;及び
該読み取り電極及び該カウンター電極と接触し、そして該開口内にあって、検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれたポリマー物質である気体拡散膜;からなる気体検出用センサーセルであって、
該気体拡散膜の厚さが下記の式に基づいて計算され:
d=Pd×A×ΔP×i
式中、dは拡散膜の厚さであり、Pdは透過係数であり、Aは幾何学上の読み取り電極に等しい面積であり、ΔPは膜を通る気体の分圧の差であり、及びiは電流の測定量である
且つ
該気体拡散膜が電解質物質であることを特徴とする気体検出用センサーセル。」
(下線は補正箇所を示す。)
と補正することを含むものである。

上記補正により,補正前の請求項1および3に係る発明の「気体検出用センサーセル」が,
(1)「プロトン交換膜である」気体拡散膜と「気体の流れをコントロールするための非電解質膜」とを共に備えたものに補正されるとともに,
(2)「該開口内にあって、検出されるべき気体と読み取り電極との間におかれた気体拡散膜」が読み取り電極と接触するだけでなく,「読み取り電極及びカウンター電極と接触」するものに補正され,
(3)「気体拡散膜の厚さ」が,「該気体拡散膜の材質、該気体拡散膜に接触する気体の分圧の差、該気体拡散膜の透過係数、及びこれらの組合せからなる群から選択されるパラメータに基づいて計算され」るものから,式「d=Pd×A×ΔP×i」に基づいて計算されるものに補正される
と認められる。

2 補正の検討
願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という)には,「気体拡散膜」の材質と配置について,以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
第一の表面及び第二の表面を有する基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該読み取り電極の付近で該第一の表面から該第二の表面に延在している開口;
該読み取り電極と接触しそして該開口内に置かれさらに検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれた気体拡散膜からなることを特徴とする気体検出用センサーセル。
【請求項2】
該気体拡散膜がプロトン交換膜である請求項1のセンサーセル。
(中略)
【請求項19】
第一の表面及び第二の表面を有する基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該読み取り電極の付近で該第一の表面から該第二の表面に延在している開口;
該読み取り電極と接触しそして該開口内に置かれさらに検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれたポリマー状物質である気体拡散膜からなり;そして
該気体拡散膜の厚さが該気体拡散膜の透過係数から決定されることを特徴とする気体検出用センサーセル。
【請求項20】
該気体拡散膜が非電解質物質である請求項19のセンサーセル。
【請求項21】
該気体拡散膜が電解質物質である請求項19のセンサーセル。
【請求項22】
該気体拡散膜がポリエチレンから製造される請求項19のセンサーセル。」

(2)「【0010】
本発明は、3相の接触面積を有するコントロール可能かつ再生可能な気体センサー構成に関し、サンプル気体は、非伝導性支持基体及び固体拡散膜を通して延在する開口、穴またはスリットを通して、読み取り電極及び固体プロトン伝導性膜に拡散する。
【0011】
本発明は、気体拡散工程がプロトン伝導性工程から減結合される気体センサーにさらに関する。そのため、本発明は、基体の孔を経るのみならず、従来のセンサーにおいて周知の読み取り電極と接触している拡散膜により気体の流れをコントロールする。それゆえ、本発明は、基体の孔に加えて、気体の流れをコントロールするために非電解質または電解質の膜を使用できる。気体の拡散は、基体の既知の面積または基体及び追加の速度を制限する気体拡散バリヤーフィルム例えばポリエチレンを貫通する開口によってコントロールされ、一方プロトン伝導は、プロトン伝導電解質層例えばNafion(商標)膜を通ってのみ生ずる。」(なお,平成16年1月14日提出の翻訳文では上記商標について「Naflon」と誤記しているので,上記のとおり訂正して記載した。以下同様)

(3)「【0015】
本発明は、第一の表面及び第二の表面を有する基体、基体と接触している読み取り電極、及び気体の流れをコントロールするための読み取り電極に近く第一の表面から第二の表面に延在している開口を有するセンサーを提供することにより、前記の目的及び他の目的を達成する。本発明は、読み取り電極と接触しそして開口内に置かれさらに検出されるべき気体と読み取り電極との間に置かれた電解質材料の気体拡散膜をさらに含む。気体拡散膜は、気体拡散膜の透過係数から決定される厚さを有する。
【0016】
他の態様では、ポリマー状気体拡散膜は、電解質膜の代わりに使用され、ポリマー状膜は非電解質であり、そのため、気体及び/または読み取り電極とは反応しない。
【0017】
さらに他の態様では、気体拡散膜は、電解質材料から製造され、膜の厚さは所望により透過係数から決定できる。」

(4)「【0023】
空いたアルミナの表面(プリントされた導線及び電極を有しない表面)の上に、気体透過性拡散フィルム(9)が付着される。フィルム(9)は、図3に示されるように、孔(2)の上の読み取り電極と一致するようにされるか、または読み取り電極(6)の上にゆるく掛けられる。基体(プリントされた導体の多数の列を有する)、Nafion膜(多数の読み取り電極円板を有する)、及び気体透過性フィルムは、図3の概略図で示されるように配置される。すべての部品が利用された後、得られる構造は、個々のセンサー単位に切断される。
【0024】
孔(2)が、読み取り電極(6)に向かって拡散する気体の拡散または流れをコントロールするため、膜(9)はポリマー状物質である。ポリマー状物質は、電解質例えばイオノマーフィルム、または非電解質の何れかに限定される。応用または実験に応じて、膜(9)と読み取り電極(6)との間に反応または干渉が望まれないときには、膜(9)は、非電解質のものである。他の態様では、膜(9)と読み取り電極(6)との間の反応が望ましいときには、膜(9)は、電解質のものである。また他の態様では、膜(9)は、電解質でもまたは非電解質であっても、孔(2)に加えて、気体拡散をコントロールする第二の構造を提供できる。しかし、孔(2)は、本発明にとり主な気体拡散をもたらすものと理解すべきである。」

(5)当初明細書に添付された図3等において,「気体透過性拡散フィルム(9)」には「読み取り電極6」が接触しているものの,「カウンター電極5」は接触していないセンサーセルが図示されている。

なお,「読み取り電極6」および「カウンター電極5」が接触しているプロトン伝導電解質である「Nafion(登録商標)電解質膜(8)」は,「該開口内にあって、検出されるべき気体と読み取り電極との間におかれた」ものでもないし,段落【0011】の記載にあるように,「読み取り電極6」と「カウンター電極5」との間でプロトン伝導させるための固体電解質膜であって,検出されるべき気体を「読み取り電極6」に拡散して導くための「気体拡散膜」としての機能を果たすものではない(上記(2)参照)。

そうすると,プロトン交換膜あるいは電解質物質である気体拡散膜と,「気体の流れをコントロールするための非電解質膜」すなわち非電解質膜である気体拡散膜とを選択的に備えることは,当初明細書に記載されているものの,(1)プロトン交換膜あるいは電解質物質である気体拡散膜と「気体の流れをコントロールするための非電解質膜」とを共に備えることも,(2)該開口内にあって,検出されるべき気体と読み取り電極との間におかれた気体拡散膜が,読み取り電極だけでなく「カウンター電極と接触」するものについても,当初明細書に記載されていないし,図面の記載もそのような配置関係を教示,示唆するものではなく,また,これらの記載から自明な事項ともいえない。
したがって,本件補正は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものとはいえない。

3 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし16に係る発明は,平成18年12月4日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載される事項により特定されたとおりのものと認められ,その請求項3に係る発明は次のとおりである。
「【請求項3】
第一の表面及び第二の表面をもつ基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該第一の表面から、該読み取り電極にもっとも近い該第二の表面まで延在している開口;及び
該読み取り電極と接触し、そして該開口内にあって、検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれた気体拡散膜;からなる気体検出用センサーセルであって、
該気体拡散膜の厚さが、該気体拡散膜の材質、該気体拡散膜に接触する気体の分圧の差、該気体拡散膜の透過係数、及びこれらの組合せからなる群から選択されるパラメータに基づいて計算され;且つ
該気体拡散膜が電解質物質であることを特徴とする気体検出用センサーセル。」(以下「本願発明」という)

2 引用刊行物およびその記載内容
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第01/36956号(以下「刊行物1」という)には,図面と共に次の事項が記載されている。(以下の翻訳は,刊行物1に対応する特表2003-515131号公報に基づく)

(1-ア)
「This invention is directed toward a controllable and reproducible gas sensor configuration having a three-phase contact area, whereby the sample gas diffuses to the sensing electrode and membrane through openings, holes or slits that extend through the non-conductive supportive substrate.
This invention is further directed toward a gas sensor where the gas diffusion process is decoupled from the proton conduction process. The gas diffusion is controlled only by through openings of known area in the substrate or in the substrate and an additional rate limiting gas diffusion barrier film, eg: polyethlene, while proton conduction takes place only through an electrolyte layer, e. g., a Nafion(R) membrane.」(4頁2?11行,「本発明は3相接触領域をもち,それによってサンプルガスが非伝導性支持基体を通して広がる開口,孔又はスリットを通して検知電極及び膜に拡散する制御可能で再現性のあるガスセンサーを提供する。
本発明はまたガス拡散プロセスがプロトン伝導プロセスと切り離されているガスセンサーを提供する。ガス拡散は基体中の開口又は基体とたとえばポリエチレン等の追加の速度制限ガス拡散バリアフィルム中の開口を通してだけ制御され,プロトンの伝導はナフィオン(商標)膜等の電解質層を通してだけ起る。」)

(1-イ)
「Figure 1 shows the top view of a ceramic film type substrate (1) (e. g., alumina) having holes (2) uniformly distributed in parallel rows. The distance between the holes in the parallel rows and the distance between the rows determine the dimensions of the sensor. The holes are ideally punched in a single step, while the alumina plate is still soft, in the "green"stage of substrate fabrication, prior to high-temperature sintering. Other techniques to create the holes include laser ablation or use of soluble fillers.
Using screen printing or lithographic techniques, conducting leads (3) and thick-and thin- film electrodes are formed on the non-conductive substrate (1) for multiple electrodes. A typical sensor design utilizing this method is shown in Figure 2, which has a single reference electrode (4) (e. g., Pt/Air (02) electrode) and a Pt counter electrode (5). The contact for the sensing electrode (6) is a ring concentric to the hole. This ring can be made of smooth, rough or latinized platinum. Some platinization may provide better contact. Simultaneous platinization of electrodes can be performed by customized electrolytic plating on properly masked multi-sensor plates.
The sensing or working electrode (7) may be a disc of Teflon(R)-bonded or Nafion- bonded platinum or other electrocatalyst. A number of discs are deposited on an ionomer film, such as Nafion electrolyte membrane (8) at uniform distances from each other, for instance, by decal transfer, silk printing, spray painting, artist brush lettering, or by any approach which lends itself to uniform deposition of a design on a transfer substrate without waste. The discs'distances from center to center are the same as for the holes of Figure 1. The diameter of the sensing or working electrode disc is somewhat largerthan the diameter of the hole in Figure 1 to allow for contact between the disc and the sensing electrode support ring of Figure 2. Instead of a single large hole per sensor of Figure 1 (which requires the use of the substrate to control diffusion of the analyte), a series of smaller openings may be used, with small enough diameters to control diffusion independently of the analyte flow. The areas of the openings are chosen so as to control diffusion of the sample gas toward the sensor and to maintain a constant diffusion rate independent of any changes in the sample gas flow rate. By using a number of these diffusion-controlling orifices, a reasonably large signal may be maintained.
Over the empty alumina surface (the surface with no printed leads and electrodes) a gas- permeable diffusion film (9) is deposited in one configuration of the invention. This film is made to conform to the sensor electrode over the holes (as shown in Figure 3), or hangs loose over the (sensor) sensing electrode (7).
The substrate (with multiple arrays of printed conductors), the Nafion membrane (with multiple sensing electrode discs), and the gas-permeable film are arranged as shown in the schematic representation of Figure 3. After all the components are unitized, the resulting structure is cut in individual sensor units.」(5頁5行?6頁17行,「 図1は平行列に均一に分配した孔(2)をもつセラミックフィルム形基体(1)(たとえばアルミナ)の正面図である。平行列中の孔間の距離及び列同士の距離がセンサーの寸法を決める。孔は理想的には単一工程でパンチングされている。アルミナ板は高温焼結前の基体製造のグリーン段階では軟らかい。孔を形成する他の手段としてはレーザー摩耗処理や可溶性フィラーの使用がある。
スクリーン印刷又はリトグラフ技術を用いて、多電極用に、非伝導性基材(1)の上と伝導性リード(3)と厚い及び薄いフィルム電極を形成する。この方法を用いる典型的なセンサーデザインを図2に示す。これは単一参照電極(4)(たとえばPt/空気(O_(2) )電極)及びPt対電極(5)をもつ。検知電極(6)の接触は孔と同心のリングである。このリングは白金(滑らかでも粗くても、白金化していてもよい)でつくることができる。電極の同時白金化は正確にマスクした多層センサー板上に電解メッキすることで行いうる。
検知又は作用電極(7)はテフロン(商標)結合又はナフィオン結合した白金又は他のエレクトロ触媒のディスクでよい。多くのディスクをナフィオン電解質等のイオノマーフィルム上に、互に均一の距離で、たとえば転写、シルク印刷、スプレー印刷、ブラシレタリングその他の適宜の手段で析出させることができる。中心から中心へのディスク距離は図1の孔のそれと同じである。
検知又は作動電極ディスクの直径は、ディスクと図2の検知電極支持リングとの間の接触を可能にするため、図1の孔の直径より幾分大きい。
図1の1センサー当りの単一の大きな孔の代りに(これは複分析物の拡散制御のために基材の使用を必要とする)、複分析物の流れと独立に拡散を制御するため小さい十分な直径をもつ一連の小さい開口を用いうる。これらの開口の面積はセンサーに向かうサンプルガスの拡散を制御しまたサンプルガス流速の変化と独立に一定の拡散速度を維持するように選ばれる。多くのこれらの拡散制御用オリフィスを用いることによって大きな信号を維持できる。
本発明の一態様では、空のナルミナ表面(印刷したリードや電極のない表面)にガス透過性拡散フィルム(9)を析出させる。このフィルムは(図3に示すように)孔をこえてセンサー電極に適合するか又はセンサー(検知)電極(7)をこえてゆるくとりつけられる。(印刷された伝導体の多数列をもつ)基材と(多数の検知電極ディスクをもつ)ナフィオン膜とガス透過性フィルムを図3に示すように配置する。すべての構成部材を一体化してから、個々のセンサーユニットに切断する。」)

(1-ウ)
「The film type sensor configuration from above is integrated with a potentiostat and a voltage of approximately +0.1 V is applied to the Pt sensing electrode with respect to a Pt/Air (02) reference. This corresponds to an applied potentiostatic voltage of approximately 1.16 V with respect to a normal hydrogen electrode (NHE).
Gas samples of air and 7.4 ppm SO_(2 )in air are introduced into the sampling port of the fixture described above. The gas flow is approximately 60 cm^(3)/min and temperature is approximately 25℃. The sample gas diffuses through the 80-mil hole in the non-conductive substrate and electrochemically reactes at the exposed sensing electrode/solid ionomer electrolyte surface. Humidification is provided by the liquid water in the reservoir which soaks the opposite, or back side of the membrane as to where the electrode structures are located.」(7頁9?18行,「上記のフィルム形センサーをポテンシオスタットと一体化し、約+0.1Vの電圧を、Pt/空気(O_(2) )参照に関し、Pt検知電極に印加する。これは常用水素電極(NHE)に関し約1.16Vのポテンシオスタティック電圧に相当する。
空気と空気中7.4ppmのSO_(2)のガスサンプルを上記の取り付け具のサンプリングポートに導入する。ガス流速は約60cm^(2) /分で、温度は約25℃である。サンプルガスは非伝導性基材の80ミルの孔を通って拡散し、さらされている検知電極/固体イオノマー電解質表面で電気化学的に反応する。湿潤化は受器中の水でもたらされる。膜の電極があるのとは反対又は裏側を水に浸す。」)

(1-エ)
「Referring to Figures 5 and 6, a block diagram of the sensor control circuit (13) is shown. The sensor control circuit (13) is designed to: 1) control the potential of the sensing electrode (7) at a predetermined voltage (the"potentiostatic voltage", or"Epot ; 2) measure the temperature; 3) convert the gas concentration- related current to a temperature- compensated voltage signal ; and 4) provide properly amplified voltage to the data acquisition/storage microprocessor (14). An on-board micro power-regulated power supply (16) uses the microprocessor's (14) power supply to provide the required 3. 9 volts for the sensor circuitry. The DC power can be supplied by a 6-V battery (16d) or an AC adaptor (16e).
The control amplifier portion (17b) of the sensor control circuit (13) consists of a micro power operational amplifier (e. g., MAX407 or LM6062). The sensing (7), counter (5) and reference (4) electrode portions of the sensor assembly (1) are in the feedback loop of the control amplifier (17b) as shown in Figure 5, a standard configuration for potentio stat circuits. An adjustable voltage divider (17a) allows the polarizing voltage (Epot) to be set at a predetermined voltage range such as 0 to 50 mV. This signal is compared to the reference electrode (7) voltage (which appears with it at the summing junction) by the control amplifier (1 7b) of the sensor control circuit (13). The latter adjusts the current through the sensor cell (10) to minimize the difference between the Epot and the reference electrode (4) voltages.
The resulting sensor cell assembly (19) current (flow of electrons from sensing electrode (7) to counting electrode (5)), which is linearly related to the concentration of gas, is transformed into a voltage signal by the current-to-voltage converter (15a). Temperature compensation of the sensor signal is effected in the next stage of amplification (15b) using a thermistor (18a) which is positioned in the gas sensor housing (10). The last stage of amplification (15c) provides the necessary inversion of the voltage signal as well as gain adjustment, to permit calibration for normal variations in sensitivity among sensors. The same type of micro power operational amplifier is used for these stages (15a), (15b), (15c) as for the control amplifier (15b). The transformed current signal is directed to an A/D channel on the data acquisition board of the microprocessor (14). 」(8頁4?26行,「図5及び6にセンサー制御回路のブロック図を示す。センサー制御回路(13)は、(1)検知電極(7)の電位差を予め定めた電圧(ポテンシオスタティック電圧又は「Epot」)で制御し、(2)温度を測定し、(1)ガス濃度-関連電流の温度補償した電圧信号への変換、及び(4)データ取得/保存マイクロプロセッサ(14)への正しく増幅した電圧の付与のためにデザインされる。オンボードマイクロパワー調節した電源(16)がセンサー回路用に必要な±3.9ボルトを与えるためのマイクロプロセッサ(14)電源として用いられる。このDC電力は6ボルトバッテリー(16d)又はDCアダプタ(16e)によって供給される。
センサー制御回路(13)の制御増幅器部分(17b)はマイクロパワー操作増幅器(たとえばMAX407又はLM6062)からなる。センサーアセンブリ(1)の検知電極(7)対電極(5)及び参照電極(4)部分は、図5に示すように、制御増幅器(17b)のフィードハックループにある。これはポテンシオスタット回路の標準的配置である。調節可能な電圧デイバイダ(17a)が分極電圧(Epoe)をたとえば0?50mVの予め定めた電圧範囲にすることを可能にする。この信号をセンサー制御回路(13)の対照増幅器(17b)によって参照電極(7)電圧と比較する。後者はセンサーセル(10)を通してEpot電圧と参照電極(4)電圧の差を最小にする。
センサーセルアセンブリ(19)電流(検知電極(7)から対電極(5)への電子の流れ)は、ガスの濃度に対し直線関係にあり、電流電対コンバータ(15a)によって電圧信号にかえられる。センサー信号の温度補償はガスセンサープラスチックハウジング(10)内に配されたサーミスタ(18a)を用いて次の段階の増幅(15b)で行なわれる。
最終段階の増幅(15c)は、電圧信号の必要な反転と利得調節をもたらしセンサー内の感度の標準偏差の較正を可能にする。同じタイプのマイクロパワー操作増幅器がこれらの段階(15a)、(15b)、(15c)用に、制御増幅器(15b)用と同様に用いられる。変換した電流信号はマイクロプロセッサ(14)のデータ取得ボード上のA/Dチャネルに向けられる。」)

(1-オ)
「CLAIMS
1. A sensor cell for detecting gases comprising:
a substrate;
a sensing electrode ; a counter electrode ; and a reference electrode, said sensing, counter and reference electrodes in contact with said substrate; an ionomer membrane in contact with said substrate and said sensing, counter and reference electrodes ;
an open three-phase area in said substrate, proximate to said sensing electrode, said area providing contact among said gases to be detected, said sensing electrode, and said ionomer membrane; and a diffusion opening proximate to said sensing electrode.
2. The apparatus of claim 1 whereby said diffusion opening comprises at least one opening in said substrate, said opening in close contact with said sensing electrode.
3. The apparatus of claim 1 whereby at least one of said sensing, counter, or reference electrodes contains a fluorocarbon-bonded particulate catalyst which is bonded to said ionomer membrane.
4. The apparatus of claim 3 whereby said fluorocarbon-bonded particulate catalyst is coated with a polymeric thin gas-permeable diffusion layer film.
5. The apparatus of claim 1 whereby at least one of said sensing,counter, or reference electrodes contains an ionomer-bonded particulate catalyst which is bonded to said ionomer membrane.
6. The apparatus of claim 5 whereby said ionomer-bonded particulate catalyst is coated with a polymeric thin gas-permeable diffusion layer film.
7. The apparatus of claim 1 whereby said sensing, counter and reference electrodes are in contact with said ionomer membrane.
8. The apparatus in claim 1 whereby said ionomer membrane is a proton exchange membrane.
9. The apparatus in claim 1 whereby said ionomer membrane is an anion, hydroxide ion exchange membrane.
10. The apparatus of claim 1 wherein said sensing, counter, and reference electrodes are formed by deposition on said ionomer membrane.
11. The apparatus of claim 1 wherein said sensing, counter, and reference electrodes are formed by deposition on said substrate.
12. The apparatus of claim 1 wherein said sensing, counter, and reference electrodes are metallic.
13. The apparatus of claim 1 wherein said sensing, counter, and reference electrodes comprise a material selected from the group consisting of Pt, Au, C, platinized Pt, and platinized Au.
14. The apparatus of claim 1 wherein said ionomer membrane, substrate, and said electrodes are brought into contact by bonding techniques.
15. The apparatus of claim 1 whereby said ionomer membrane is humidified by an aqueous material.
16. The apparatus of claim 1 wherein said sensor cell is electronically controlled in a 2 electrode sensor configuration.
17. The apparatus of claim 1 wherein said sensor cell is electronically controlled in a 3 electrode sensor configuration.
18. The apparatus of claim 1 wherein said sensor cell is electronically controlled by a potentio static circuit connected to said sensing, counter and reference electrodes.
19. The apparatus of claim 1 wherein said sensor cell is electronically controlled by a potentio dynamic circuit connected to said sensing, counter and reference electrodes.
20. The apparatus of claim 1 wherein said sensor cell is electronically controlled by a constant voltage source connected to said sensing electrode and an electrochemically reversible counter electrode acting as a reference electrode.
21. The apparatus of claim 1 further comprising a microprocessor for real time data readout, data storage and retrieval, and remote data transmission.
22. The apparatus of claim 1 incorporated into a gas sensing instrument.」(12頁1行?14頁17行,「請求項
1.基材、検知電極、対電極及び参照電極からなるガス検知用センサーセルであって、該検知電極と対電極と参照電極が該基材と緊密接触しており、且つ該基材、該検知電極、該対電極及び該参照電極と接触しているイオノマー膜を有し、さらに該検知電極に近い該基材内に開放3相領域をもち、該領域が検知されるガス中で該検知電極及び該イオノマー膜と接触するようになっており、さらに該検知電極の近くに拡散開口をもつことを特徴とするセンサーセル。
2.該拡散開口が該基材中の少なくとも1の開口からなり且つ該検知電極と接触している請求項1の装置。
3.該検知電極、対電極又は参照電極の少なくとも1が該イオノマー膜と結合したフルオロカーボン結合粒状触媒を含有する請求項1の装置。
4.該フルオロカーボン結合粒状触媒がポリマーの薄いガス透過性拡散層フィルムを被覆してもつ請求項3の装置。
5.該検知電極、対電極又は参照電極の少なくとも1が該イオノアー膜と結合したイオノマー結合粒状触媒を含有する請求項1の装置。
6.該イオノマー結合粒状触媒がポリマーの薄いガス透過性拡散層フィルムを被覆してもつ請求項5の装置。
7.該検知電極、対電極及び参照電極が該イオノマー膜と接触している請求項1の装置。
8.該イオノマー膜がプロトン交換膜である請求項1の装置。
9.該イオノマー膜がアニオン性ヒドロキシドイオン交換膜である請求項1の装置。
10.該検知電極と対電極と参照電極が該膜上への析出によって形成される請求項1の装置。
11.該検知電極と対電極と参照電極が該基材上への析出によって形成される請求項1の装置。
12.該検知電極と対電極と参照電極が金属からなる請求項1の装置。
13.該検知電極と対電極と参照電極がPt,Au,C,白金化Pt及び白金化Auからなる群から選ばれる請求項1の装置。
14.該イオノマー膜と基材と電極が接着によって緊密接触している請求項1の装置。
15.該イオノマー膜が水性物質によって湿潤化されている請求項1の装置。
16.該センサーセルが2電極センサー配置で電子的に制御されている請求項1の装置。
17.該センサーセルが3電極センサー配置で電子的に制御されている請求項1の装置。
18.該センサーセルが該検知電極と対電極と参照電極に接続したポテンシオスタティック回路によって電子的に制御されている請求項1の装置。
19.該センサーセルが該検知電極と対電極と参照電極に接続したポテンシオダイナミック回路によって電子的に制御されている請求項1の装置。
20.該センサーセルが該検知電極に接続している定電圧源及び参照電極として作用する電気化学的に可逆的な対電極によって電子的に制御されている請求項1の装置。
21.リアルタイムのデータ読み出し、データの保存及び修正及び遠隔へのデータ伝達用のマイクロプロセッサをもつ請求項1の装置。
22.ガス検知装置に組み込んだ請求項1の装置。」)

そして,上記記載事項(1-ア)?(1-オ)および図1?6,特に図3の記載を総合すると,刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。

「非伝導性基材(1),検知電極(7),対電極(5)及び参照電極(4)からなるガス検知用センサーセルであって,該検知電極(7)と対電極(5)と参照電極(4)が該基材(1)と緊密接触しており,且つ該基材(1),該検知電極(7),該対電極(5)及び該参照電極(4)と接触しているイオノマー膜(8)を有し,さらに該検知電極(7)に近い該基材内に開放3相領域をもち,該領域が検知されるガス中で該検知電極(7)及び該イオノマー膜(8)と接触するようになっており,さらに該検知電極(7)の近くに拡散開口(2)をもつとともに,該検知電極が該イオノマー膜(8)と結合したフルオロカーボン結合粒状触媒を含有し,該フルオロカーボン結合粒状触媒がポリエチレンの薄いガス透過性拡散層フィルム(9)によって被覆されているセンサーセル。」(以下「引用発明」という)

(2)同様に,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-18475号公報(以下「刊行物3」という)には,「電気化学式ガスセンサ」について,図面とともに次の事項が記載されている。

(3-ア)
「【請求項1】(1)透湿性を有する絶縁基板1に設けられた作用極2、対極3を含む電極群5と、この電極群5を被覆し、含水状態で電解質となる固体電解質膜9とから構成されたセンサ素子6と、(2)このセンサ素子6と一体に形成された吸水性を有するシート8とで構成され、(3)上記吸水性を有するシート8を上記絶縁基板1を挟んで固体電解質膜9と反対側に付設していることを特徴とする電気化学式ガスセンサ。」(2頁左欄)

(3-イ)
「【0008】以下、本発明を詳細に説明する。図1は本発明に係る電気化学式ガスセンサを示した断面図で有る。
【0009】本発明の電気化学式ガスセンサはセンサ素子6を有する。このセンサ素子6は透湿性を有する絶縁基板1と、絶縁基板1に設けられた作用極2、対極3、及び参照極4を含む電極群5と、この電極群5を被覆し、含水状態で電解質となる固体電解質膜9とで構成されている。この透湿性を有する絶縁基板1は、例えば、表裏に渡って連通する透気孔を備えた多孔質基板が用いられる。この多孔質基板はアルミナ等のセラミックス基板、酸化処理したシリコン基板、その他樹脂を硬化した基板等に後加工により表裏に微細な通気孔を設けて構成された基板でも良いし、木綿や紙等の多孔質の基材に多孔質を消失しない程度に樹脂をラミネートした基板でも良い。上記電極群5は、白金や金その他の電極材料が用いられ、例えばスパッタリングや蒸着等種々の方法によって形成することができる。上記固体電解質膜9としては、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルスルホネート、パーフルオロスルホネートポリマー、パーフルオロカルボキシレートポリマー等が用いられ、中でも電解質として安定なパーフルオロスルホネートポリマー(デュポン社製の商標ナフィオン)が適当である。
【0010】上記固体電解質膜9を透過した一定量以上の被検ガスが作用極2に到達すると、作用極2と対極3において電気化学反応が起きる。その結果、作用極2と参照極4間の印加電圧に従い、作用極2と対極3に電流が流れる。この電流がセンサ素子6の信号として外部機器に入力される。」(2頁右欄?3頁左欄)

(3-ウ)
「【0013】本発明の電気化学式ガスセンサの使用例を図2に示す。本発明の電気化学式ガスセンサはハウジング10に収容され、被検ガスの検知機能を最適に発揮する。すなわち、固体電解質膜9に外気の汚染物質が付着するのをハウジング10によって防止し、被検ガスはハウジング10に設けられた通気孔11から導入される。この被検ガスが作用極2に到達すると、作用極2と対極3において電気化学反応が起き、作用極2と対極3間の印加電圧と被検ガス量に従い、作用極2と対極3に電流が流れる。電極群5にリード線7を介して接続され、この電流は電気化学式ガスセンサの出力信号として報告等を含む外部機器に入力する。」(3頁右欄)

そして,図1,2には,上記記載に対応する図が示されている。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると,その機能・構造からみて,引用発明の「非伝導性基材(1)」,「検知電極(7)」,「拡散開口(2)」および「センサーセル」は,本願発明の「基体」,「読み取り電極」,「開口」,「気体拡散膜」および「気体検出用センサーセル」に相当することは明らかである。そして,上記記載事項(1-イ)の「孔(2)をもつセラミックフィルム形基体(1)」からみて,引用発明の「非伝導性基材(1)」が第一の表面及び第二の表面を有することも明らかであり,上記記載事項(1-ウ)の「空気と空気中7.4ppmのSO_(2)のガスサンプルを上記の取り付け具のサンプリングポートに導入する。ガス流速は約60cm^(2) /分で、温度は約25℃である。サンプルガスは非伝導性基材の80ミルの孔を通って拡散し、さらされている検知電極/固体イオノマー電解質表面で電気化学的に反応する。」からみて,該第一の表面がサンプルガス(気体)の流れをコントロールし,拡散開口(2)が該第二の表面まで延在しているといえる。また,引用発明の「ガス透過性拡散層フィルム(9)」が検知電極(7)と接触し,拡散開口(2)内にあって,サンプルガスと該検知電極(7)との間に置かれていることも,明らかである。
そうすると,両者は,
(一致点)
「第一の表面及び第二の表面をもつ基体;
該基体と接触している読み取り電極;
気体の流れをコントロールするために該第一の表面から、該読み取り電極にもっとも近い該第二の表面まで延在している開口;
該読み取り電極と接触し、そして該開口内にあって、検出されるべき気体と該読み取り電極との間に置かれた気体拡散膜;からなる気体検出用センサーセル。」
である点で一致し,次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では「該気体拡散膜の厚さが、該気体拡散膜の材質、該気体拡散膜に接触する気体の分圧の差、該気体拡散膜の透過係数、及びこれらの組合せからなる群から選択されるパラメータに基づいて計算され」るのに対し,引用発明では気体拡散膜の厚さをどのようにして求めるか不明である点。
(相違点2)
「気体拡散膜」が,本願発明では「電解質物質である」のに対し,引用発明では非電解質物質であるポリエチレンである点。

4 判断
(1)相違点1について
「非伝導性基材(1),検知電極(7),対電極(5)及び参照電極(4)からなるガス検知用センサーセルであって,該検知電極(7)と対電極(5)と参照電極(4)が該基材(1)と緊密接触しており,且つ該基材(1),該検知電極(7),該対電極(5)及び該参照電極(4)と接触しているイオノマー膜(8)を有し,さらに該検知電極(7)に近い該基材内に開放3相領域をもち,該領域が検知されるガス中で該検知電極(7)及び該イオノマー膜(8)と接触するようになっており,さらに該検知電極(7)の近くに拡散開口(2)をもつとともに,該検知電極が該イオノマー膜(8)と結合したフルオロカーボン結合粒状触媒を含有し,該フルオロカーボン結合粒状触媒がポリエチレンの薄いガス透過性拡散層フィルム(9)によって被覆されているセンサーセル。」
前記記載(1-ウ)および(1-エ)によれば,引用発明の「センサーセル」は,所定の電圧が対電極(5)と検知電極(7)との間に印加され,非伝導性基材(1)の拡散開口(2)とガス透過性拡散層フィルム(9)を通って検知電極(7)に到達した検出されるべきサンプルガスが電極で反応し,該サンプルガスの濃度に関連した電流,すなわち,検知電極(7)から固体電解質であるイオノマー膜(8)を介しての対電極(5)への電子の流れが検出される電気化学的センサーセルであり,その電流値の大きさは,検知電極(7)に到達する検出されるべきサンプルガスの量に左右されるので,ガス透過性拡散層フィルム(9)の厚さ,材質,透過係数あるいは接触する気体の分圧の差等の種々のパラメータに影響されることは,電気化学的センサー分野における技術常識にすぎない。
そうすると,センサーセルによって適当な電流検出値が得られるように,引用発明の「ガス透過性拡散層フィルム(9)」の厚さを決定する際に,測定される電流値に影響を与える前記パラメータを考慮しながら,その厚さを計算して決定してみるようなことは,格別の困難性がなく,当業者であれば適宜行う設計的事項であるといえる。

(2)相違点2について
上記記載事項(3-ア)?(3-ウ)からみて,刊行物3には,引用発明の「センサーセル」と同様の原理の電気化学的気体検出用センサーセルにおいて,被検ガスと作用極(読み取り電極)との間に配置され,作用極に一定量以上の被検ガスを透過させて到達させる膜,すなわち気体拡散膜として,ナフィオン膜などの固体電解質膜が使用されることが記載されているといえる。
してみると,引用発明の「ガス透過性拡散層フィルム(9)」として,非電解質物質であるポリエチレンに代えて,刊行物3に記載された上記固体電解質膜を用いることは,何ら困難性がなく,当業者が容易に想到し得る範囲の事項であるといえる。

そして,本願明細書に記載された相違点1および2に係る構成を採用したことによる効果も,引用発明および刊行物3記載の事項から予測し得る範囲のものであって,格別顕著なものとはいえない。

5 まとめ
したがって,本願発明は,引用発明および刊行物3記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項を検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-07 
結審通知日 2010-06-08 
審決日 2010-06-28 
出願番号 特願2003-388303(P2003-388303)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 561- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 伸雄柏木 一浩  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 竹中 靖典
郡山 順
発明の名称 ハイブリッドフィルムタイプセンサー  
代理人 畑 泰之  
代理人 斉藤 武彦  

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