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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01P
管理番号 1227377
審判番号 不服2008-24300  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-22 
確定日 2010-11-17 
事件の表示 特願2001-341586「バルブケース」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月14日出願公開、特開2002-168125〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本件出願は、平成13年11月7日(パリ条約による優先権主張2000年11月7日、ドイツ連邦共和国)に出願されたものであり、平成19年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月21日付けで意見書が提出されたが、平成20年6月20日付けで拒絶査定がなされた。
そして、平成20年9月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、平成21年9月15日付けで当審において書面による審尋がなされ、同年12月25日付けで審尋に対する回答書が提出された。
その後、当審において平成22年2月17日付けで拒絶理由が通知され、同年5月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年5月24日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、次のとおりである。

「バルブケース内に電気接続導体を有する、内燃機関の冷媒循環用のサーモスタットバルブのバルブケースであり、前記バルブケースの少なくとも一部はプラスチック材料からなるバルブケースにおいて、
電気接続導体が前記バルブケースのプラスチック材料部内に埋設されており、
前記電気接続導体は、その長手方向軸線を中心に90度ねじられており、
前記電気接続導体の両端部は、前記バルブケースのプラスチック材料部内に埋設されている電気コネクタを有していることを特徴とするバルブケース。」



2.引用発明
(1)当審において平成22年2月17日付けで通知した拒絶理由に引用された、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-222102号公報(以下、「刊行物」という。)に記載された事項

刊行物には、以下の事項が図面とともに記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、膨縮物質を収容するハウジングを備え、そのハウジング内に電気的加熱素子が配置されており、その加熱素子に接続導線が設けられ、その接続導線はその接続導線を包囲してハウジングの底の開口部を閉鎖するベース部内で外部へ導出されている熱応動装置と、電気的な加熱素子をハウジング内に挿入する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の熱応動装置は特に、DE4233913A1から知られているように、サーモスタット弁と共に使用される。電気的に加熱される熱応動装置が知られており(EP0139586A1)、その場合にハウジングの底の開口部はプラスチックからなるベース部によって閉鎖されており、そのベース部が加熱素子の接続導線を包囲し、かつそのベース部を通して接続導線が外部へ導出されている。ベース部は別体の構成部分として形成されている。この構成部分は外側からハウジングのリング状段部を有する開口部内にシールリングを介在させて挿入されて、かつ開口部の外側端縁のフランジによって保持される。」(段落【0001】及び【0002】)

イ.「【0005】本発明の実施形態においては、底内に射出成形されたベース部の接続導線を包囲する突出部が外側へ突出している。それによって、まず接続導線が射出成形されたベース部によって比較的大きな長さにわたって包囲されており、それによって高度なシール性がもたらされることになると共に、接続導線が確実に保持されるので、接続導線と加熱素子間の固定箇所が接続導線に作用する引っ張り力の負荷を除かれることになる。」(段落【0005】)

ウ.「【0014】ハウジングの内部にはさらに電気的な加熱素子11が配置されており、これは本実施例においてはプレート形状の支持体からなり、その上に蛇行して案内された図示していないフィラメント抵抗が層の形状で塗布されている。フィラメント抵抗に2本の接続導線12が半田づけされており、それがハウジング10の底の開口部13を通して外部へ導出されている。接続導線12は横寸法の小さくなっている段部の領域14内でフィラメント抵抗に半田づけされており、この領域はハウジング10の底の開口部13内に達している。開口部13にはさらに環状溝15が形成されている。」(段落【0014】)

エ.「【0015】ハウジング10の底の開口部13は射出成形されたプラスチックからなるベース部17によって閉鎖されている。このベース部17は環状溝15を充填し、かつハウジング10の底と内壁の下方端縁領域を覆っている。その場合にベース部は電気的加熱素子の支持体11の下方端縁を包囲しており、かつ特に接続導線12用の半田づけ箇所を有する突出部14をを包囲している。ベース部17には突出部18が設けられており、この突出部はハウジング10の底から突出して、接続導線12を包囲しており、接続導線はその絶縁材19の一部と共になおベース部17によって被覆されている。接続導線12の外側端縁には絶縁材は設けられていない。それらは撚り合わされて亜鉛メッキされている。」(段落【0015】)

オ.「【0016】ベース部17を形成することができるようにするために、鋳造型が形成されるが、その一部はハウジング10によって構成される。支持体11がハウジング10の内側輪郭に相当するコア20の凹部内に、次のように、すなわちその下端部領域と接続導線12の半田づけ箇所を有する突出部14がコア20から突出するように、差し込まれている。コア20がハウジング10内に差し込まれて、その場合にコアはハウジング10のリングカラー21に密着して支持される。ハウジング10の底の外側に対して型部材22が設けられており、この型部材は突出部18用の凹部23と接続されている。この型部材22は好ましくは図面平面において分割された2つの部分からなり、これらの部分には絶縁材19を有する接続導線12を導出するためのそれぞれ2つのハーフシェル形状の凹部が設けられている。コア20はリングカラー21上に支持されているので、型部分22とコア20間に十分な閉鎖力をもたらすことができる。型部材22には詳しく図示しないが開口部が形成されており、それを通してベース部17を形成するプラスチック材料の射出成形が行われる。」(段落【0016】)


(2)上記(1)並びに図1及び2からわかること。
a.上記(1)ア.に「【0001】・・(中略)・・本発明は、膨縮物質を収容するハウジングを備え、そのハウジング内に電気的加熱素子が配置されており、その加熱素子に接続導線が設けられ、その接続導線はその接続導線を包囲してハウジングの底の開口部を閉鎖するベース部内で外部へ導出されている熱応動装置と、電気的な加熱素子をハウジング内に挿入する方法に関するものである。
【0002】・・(中略)・・この種の熱応動装置は特に、DE4233913A1から知られているように、サーモスタット弁と共に使用される。・・(後略)・・」とあることから、刊行物に記載された「熱応動装置」は「サーモスタット弁」とともに用いられていることがわかる。また、上記「サーモスタット弁」においては、上記「熱応動装置」における「加熱素子」により加熱される「膨縮物質」により、バルブケース内に設けられている弁体を駆動していることは明らかであり、上記バルブケース内に上記「加熱素子」に設けられた「接続導線」を有しているといえる。

b.上記(1)エ.に「【0015】ハウジング10の底の開口部13は射出成形されたプラスチックからなるベース部17によって閉鎖されている。・・(後略)・・」とあることから、刊行物に記載された「熱応動装置」における「ベース部17」はプラスチック材料からなることがわかる。

c.上記b.に加えて、上記(1)エ.に「【0015】・・(中略)・・このベース部17は環状溝15を充填し、かつハウジング10の底と内壁の下方端縁領域を覆っている。その場合にベース部は電気的加熱素子の支持体11の下方端縁を包囲しており、かつ特に接続導線12用の半田づけ箇所を有する突出部14をを包囲している。ベース部17には突出部18が設けられており、この突出部はハウジング10の底から突出して、接続導線12を包囲しており、接続導線はその絶縁材19の一部と共になおベース部17によって被覆されている。」とあること並びに図1及び2より、刊行物に記載された「接続導線12」がプラスチック材料からなる「ベース部17」内に埋設されていることがわかる。

d.上記(1)イ.に「【0005】・・(中略)・・それによって、まず接続導線が射出成形されたベース部によって比較的大きな長さにわたって包囲されており、それによって高度なシール性がもたらされることになる・・(後略)・・」とあるように上記「接続導線12」は上記バルブケース内において上記「ベース部17」内に埋設されて高度なシール性がもたらされており、また、上記「接続導線12」はバルブケース外から電力を供給するものであることからみて、上記上記「ベース部17」は上記バルブケースの一部を構成し(上記バルブケース内において高度なシール性を保持しつつ「接続導線12」を上記「加熱素子」からバルブケース外まで導い)ているものであることは明らかである。

e.上記b.ないしd.を総合すると、上記バルブケースの一部を構成している「ベース部17」はプラスチック材料からなり、上記「接続導線12」がプラスチック材料内に埋設されているといえる。


(3)刊行物に記載された発明
上記(1)、(2)及び図面の記載を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「バルブケース内に接続導線12を有する、サーモスタット弁のバルブケースであり、前記バルブケースの少なくとも一部はプラスチック材料からなるバルブケースにおいて、接続導線12が前記バルブケースのプラスチック材料内に埋設されているバルブケース。」



3.対比
本願発明と引用発明を対比すると両者の対応関係は次のとおりである。

引用発明における「接続導線12」は、その機能からみて、本願発明における「電気接続導体」に相当する。
また、引用発明における「サーモスタットバルブ」と本願発明における「内燃機関の冷媒循環用のサーモスタット弁」は「サーモスタットバルブ」である点で共通する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「バルブケース内に電気接続導体を有する、サーモスタットバルブのバルブケースであり、前記バルブケースの少なくとも一部はプラスチック材料からなるバルブケースにおいて、電気接続導体が前記バルブケースのプラスチック材料内に埋設されているバルブケース。」である点で一致し、以下の(1)ないし(3)の点で相違する。

(1)本願発明における「サーモスタットバルブ」は「内燃機関の冷媒循環用」のものであるのに対して、引用発明における「サーモスタット弁」は内燃機関の冷媒循環用のものであるかどうか明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明における「電気接続導体」は「その長手方向軸線を中心に90度ねじられて」いるものであるのに対して、引用発明における「接続導線12」はその長手方向軸線を中心に90度ねじられていない点(以下、「相違点2」という。)。

(3)本願発明における「電気接続導体の両端部は、バルブケースのプラスチック材料内に埋設されている電気コネクタを有している」のに対して、引用発明における「接続導線12」の両端部は、バルブケースのプラスチック材料内に埋設されている電気コネクタを有していない点(以下、「相違点3」という。)。



4.判断
(1)相違点1について
サーモスタット弁を内燃機関の冷媒循環路に設けることは周知(必要があれば、例えば、特開平9-303147号公報、特開平8-232660号公報、特開平6-207685号公報を参照されたい。以下、「周知技術1」という。)である。
そして、引用発明において、上記周知技術1を適用して上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものである。


(2)相違点2について
電気・電子機器における電気接続導体をプラスチック材料からなる成形体内に埋設するものにおいて、上記電気接続導体の長手方向軸線を中心に90度ねじられているものは周知(必要があれば、例えば、特開平8-78485号公報の段落【0061】ないし【0072】及び図6ないし8、特開平9-260569号公報の段落【0003】ないし【0008】、【0012】及び【0015】ないし【0018】並びに図1ないし5、実願昭61-201955号(実開昭63-105357号)のマイクロフィルムの第1図及び第2図を参照されたい。以下、「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明の備える「バルブケースのプラスチック材料内に埋設されている」「接続導線12」において、上記周知技術2を適用して上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものである。


(3)相違点3について
電気・電子機器における電気接続導体をプラスチック材料からなる成形体内に埋設するものにおいて、上記電気接続導体の両端部に上記成形体内に埋設されている電気コネクタを備えるものは周知(必要があれば、例えば、特開平7-194052号公報の段落【0015】及び【0016】並びに図3及び図6、特開平11-186754号公報の段落【0012】ないし【0030】及び図1ないし図3を参照されたい。以下、「周知技術3」という。)である。
そして、引用発明の備える「バルブケースのプラスチック材料内に埋設されている」「接続導線12」において、上記周知技術3を適用して上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を想到することは当業者が容易になし得たものである。

また、本願発明は全体としてみても引用発明及び周知技術1ないし3から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。


5.むすび
以上から、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし3に基づいて当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-15 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-06 
出願番号 特願2001-341586(P2001-341586)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 大谷 謙仁
加藤 友也
発明の名称 バルブケース  
代理人 大橋 康史  
代理人 大平 和由  
代理人 青木 篤  
代理人 篠崎 正海  
代理人 鶴田 準一  
代理人 島田 哲郎  

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