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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1227396 |
審判番号 | 不服2009-16165 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-09-02 |
確定日 | 2010-11-17 |
事件の表示 | 特願2000-301500「容器のヒンジ式キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月10日出願公開、特開2002-104460〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成12年9月29日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年10月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「キャップ基体と、蝶番機構を介してキャップ基体に開閉自在に取着された開閉蓋とからなる容器のヒンジ式キャップであって、 キャップ基体には、垂直に延びる筒状の側周壁と、側周壁の上部に、蝶番機構および摘み部を側周壁上部の周面内に配設するための切欠部が設けられており、 開閉蓋は、その頂壁が容器軸線に直交する面であって、容器を倒立可能としており、 側周壁には、キャップ基体の切欠部に連続する切欠部が設けられていることを特徴とするヒンジ式キャップ。」 2.引用発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-317467号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「1.下方部分(1)および上方部分(2)を備え、各部分がケーシング壁(4、5)を有し、両ケーシング壁(4、5)がヒンジの閉鎖状態において、互いに上下に垂直に整合し、下方部分(1)が少くとも一つのフィルムヒンジ(3)により、ならびに前記フィルムヒンジ(3)の両側に設けられた二つの引張りバンド(6)によって上方部分(2)に連結され、前記バンド(6)がヒンジの閉鎖状態において引張られるプラスチック製の一体スナップヒンジ付き蓋において、前記引張りバンド(6)が前記ケーシング壁(4、5)の凹所(11)に設けられかつその全長に亘って少くともほぼ均一な断面を有し、前記引張りバンド(6)が閉鎖位置においてそれらの最外端面を前記ケーシング壁(4、5)の外面と整合する、一体スナップヒンジ付き蓋。 2.前記引張りバンド(6)を取付ける装置が前記ケーシング壁(4、5)の凹所底面(11)内に一体に形成されかつ丸くされている、請求項1記載のスナップヒンジ付き蓋。 3.前記引張りバンド(6)の取付部が前記ケーシング壁(4、5)の凹所(11)底面の前記フィルムヒンジ(3)の枢着軸線の高さにかつそれに並行に延びている、請求項1記載のスナップヒンジ付き蓋。 4.前記垂直ケーシング壁(4、5)が円くされフィルムヒンジ(3)が一つだけ設けられ、その両側に条片状引張りハンド(6)が設けられ前記各引張りバンド(6)が前記フィルムヒンジ(3)の枢着軸線に対して傾斜する凹所(11)の底面上に傾斜して設けられ、前記フィルムヒンジ(3)の近くにある前記条片状引張りバンド(6)の各側面が前記フィルムヒンジ(3)から離れた位置における側面より短い、請求項1記載のスナップヒンジ付き蓋。」(第1頁左下欄第6行?第2頁左上欄第2行) b.「図示の本発明実施例は、その下方部分1が管Tに取付けられる蓋である。上方部分2はこの場合キャップである。蓋の部分1および2は、周囲のケーシングの壁に沿って短い距離だけ突出する通常のフィルムヒンジ3によって互いに連結されている。下方部分1のケーシング壁4およびキャップまたは上方部分2のケーシング壁5は、上下に垂直に整合している。蓋の開放を容易にするのに役立つ凹み8が、フィルムヒンジの反対側に上下部分に設けられている。フィルムヒンジ3の左側および右側には、両方の引張りバンド6がほとんど端部だけ見えている。それらはケーシング壁4および5と一体にされ、横方向端部7だけが見えている。引張りバンド6の外面は、僅かにひろがっていることを除いて、上下部分1、2のケーシング面と整合している。」(第3頁左下欄第1行?第16行) c.「第5図によれば、上方部分またはキャップは下方または内側から見ることができ、また下方部分は上方から見ることができ、引張りバンドが固定される凹所11も同様に見ることができる。キャップまたは上方部分2の凹所はケーシング壁5を貫通していないで、むしろ最小必要な壁厚を残し、蓋の閉鎖位置で上方部分および下方部分はケーシング壁の全周上で互いに接触する。」(第3頁右下欄第15行?第4頁第2行) d.「本発明は、プラスチック製の一体スナップヒンジ付き蓋において、引張りバンドがケーシング壁の凹所に設置されかつその全長に亘って少くともほぼ均一な断面を有し、前記引張りバンドが閉鎖位置においてそれらの最外端面を前記ケーシング壁の外面と整合するように構成したことにより、美的概念を損ない、コンベヤベルトにおける輸送上の障害物となる引張りバンドの突出を回避することができるとともに、その開閉を確実なものとすることができる。」(第4頁左下欄第10行?第20行) 上記記載b.の「下方部分1のケーシング壁4およびキャップまたは上方部分2のケーシング壁5は、上下に垂直に整合している。」及び図面より、引用例1は、下方部分には、「垂直に延びる筒状のケーシング壁」が示されているといえる。 上記記載b.の「蓋の開放を容易にするのに役立つ凹み8が、フィルムヒンジの反対側に上下部分に設けられている。」の記載及びFIG.1,FIG.2,FIG.4,FIG.5より、上方部分2の凹所8の上側の部分がケーシング壁5の外径に等しいことがわかる。したがって、引用例1は、凹所8の上側の部分が蓋の解放を容易にするために、ケーシング壁の外径に等しい形状で凹所8から出っ張っている「出張部」の構成を示しているといえる。 上記記載b.の「蓋の開放を容易にするのに役立つ凹み8が、フィルムヒンジの反対側に上下部分に設けられている。フィルムヒンジ3の左側および右側には、両方の引張りバンド6がほとんど端部だけ見えている。それらはケーシング壁4および5と一体にされ、横方向端部7だけが見えている。」及び図面より、引用例1は、上方部分が下方部分に連続する凹所を有している構成を示しているといえる。 したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「下方部分と、フィルムヒンジを介して下方部分に開閉自在に取着された上方部分とからなる管のスナップヒンジ付き蓋であって、 下方部分には、垂直に延びる筒状のケーシング壁と、ケーシング壁の上部に、出張部をケーシング壁上方の周面内に配設するための凹所が設けられており、 上方部分は、ケーシング壁に下方部分の凹所に連続する凹所が設けられているスナップヒンジ付き蓋。」 また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平3-667号(実開平5-71153号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という)には、以下の各事項が記載されている。 e.「すなわち、本考案によれば、合成樹脂製の筒壁と、該筒壁上端に嵌め込まれるキャツプ本体が一体成形されたヒンジによって開閉自在に構成されるヒンジキャップにおいて、キャップ本体のヒンジ連結部が、ヒンジの屈曲線と平行に形成された段部を有し、少くとも該ヒンジの屈曲線が、キャップ本体の平面形状の円周仮想線内に内包されるように形成されたことを特徴とするヒンジキャップが提供される。 また本考案によれば、前記筒壁のヒンジ部以外の外面を別ピースの合成樹脂製または金属製の外挿体でカバーすることにより、前記屈曲したヒンジ部が該外挿体の面と同一もしくは、外挿体よりも内面に位置することになり、人体との接触が全く起こらないヒンジキャップが提供されることになる。」(段落【0007】?【0008】) f.「【考案の具体的説明】 本考案のヒンジキャップの開放状態の一例を上面図で示す図1、および側断面図で示す図2において、筒壁(1)とキャップ本体(2)は、一体成形された一対のヒンジ片(3)(3’)ならびに該ヒンジ片の間に設けられたキャップ本体の開の状態を保持するための支持片(4)によって橋絡されている。 キャップ本体(2)には、キャップの開蓋を容易にするための鍔(8)が設けられるとともに、天蓋中央部に注出口(7)に嵌入される嵌入筒(6)が突設されている。」(段落【0009】) g.「本考案に係るヒンジキャップの、閉蓋時の側面図を図3に、また上面図を図4に示す。図3および図4からも明らかなように、ヒンジ部(3)(3’)の少くとも屈曲線、好ましくはヒンジ全体が、キャップ本体に形成された段部9と、キャップ本体の円周仮想線(5)の間の区域に形成されるため、使用者の手などがこのヒンジ部に接触する度合いは著しく減少され、よって、人体を損傷することのない安全なヒンジキャップを提供することが可能になる。」(段落【0011】) g.の「好ましくはヒンジ全体が、キャップ本体に形成された段部9と、キャップ本体の円周仮想線(5)の間の区域に形成される」の記載及び図4よりヒンジ部及び、支持片が、キャップ本体の平面形状の円周仮想線内にあることがわかる。 以上のe.,f., g.の記載及び図面によると引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」とする)が記載されている。 「キャップ本体(開閉蓋)には、ヒンジ全体(蝶番機構)をキャップ本体(開閉蓋)の平面形状の円周仮想線内(側周壁の周面内)に配設するための段部(切欠部)が設けられているヒンジキャップ」 なお、括弧内は本願発明に倣った用語を示している。 3.対比 本願発明と引用発明1とを対比するに、引用発明1の「下方部分」、「フィルムヒンジ」、「上方部分」、「管」、「スナップヒンジ付き蓋」、「ケーシング壁」、「出張部」、「凹所」、は、それぞれ本願発明の「キャップ基体」、「蝶番機構」、「開閉蓋」、「容器」、「ヒンジ式キャップ」、「側周壁」、「摘み部」、「切欠部」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明1は 「キャップ基体と、蝶番機構を介してキャップ基体に開閉自在に取着された開閉蓋とからなる容器のヒンジ式キャップであって、 キャップ基体には、垂直に延びる筒状の側周壁と、側周壁の上部に、摘み部を側周壁上部の周面内に配設するための切欠部が設けられており、 開閉蓋は、側周壁にはキャップ基体の切欠部に連続する切欠部が設けられているヒンジ式キャップ」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1 本願発明が「キャップ基体の側周壁上部に、蝶番機構をキャップ基体の側周壁上部の周面内に配設するための切欠部が設けられ、開閉蓋の側周壁に、キャップ基体の切欠部に連続する切欠部が設けられている」のに対して、引用発明1がそのような構成かが不明な点 相違点2 本願発明が「開閉蓋の頂壁が容器軸線に直交する面であって、容器を倒立可能として」いる構成であるのに対して、引用発明1はそのような構成かが不明な点 4.相違点の検討 上記相違点について検討する。 相違点1について 引用発明2は「キャップ本体(開閉蓋)には、ヒンジ全体(蝶番機構)をキャップ本体(開閉蓋)の平面形状の円周仮想線内(側周壁の周面内)に配設するための段部(切欠部)が設けられて」いる構成を有しており、引用発明1,2は、「ヒンジ式キャップ」という同一の技術分野に属していることから、引用発明2における前記構成を引用発明1におけるヒンジ部の構成として適用することは、当業者が容易になし得たものである。 その適用の際に、引用発明1の「下方部分(キャップ基体)」の「ケーシング壁(側周壁)」にも、「上方部分(開閉蓋)」の「ケーシング壁(側周壁)」に連続する「段部(切欠部)」を設けることは、元々引用発明1の「上方部分には、ケーシング壁に下方部分の凹所に連続する凹所が設けられている」構成を有していることから、その構成と同じようにしているに過ぎず、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 相違点2について ヒンジ式キャップの技術分野において「開閉蓋の頂壁が容器軸線に直交する面であって、容器を倒立可能」とする構成は周知技術(特開平8-282690号公報、特開平9-315466号公報、登録実用新案公報第3048800号公報を参照のこと)であり、当該周知技術を引用発明1の上方部分(開閉蓋)に用いることは、当業者にとり格別な困難性の無いものである。 5.まとめ 以上の通り本願発明は、上記引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-04 |
結審通知日 | 2010-08-24 |
審決日 | 2010-09-08 |
出願番号 | 特願2000-301500(P2000-301500) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩崎 晋、柳田 利夫、山本 忠博 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
谷治 和文 佐野 健治 |
発明の名称 | 容器のヒンジ式キャップ |
代理人 | 吉村 眞治 |