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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1227433
審判番号 不服2008-7537  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-27 
確定日 2010-11-26 
事件の表示 特願2004-71548「半導体装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年9月22日出願公開、特開2005-260091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年3月12日の出願であって、平成19年8月31日付けで手続補正がなされたが、平成20年2月18日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年3月27日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年4月28日付けで手続補正がなされ、その後、同年7月23日に上申書が提出されたものである。

2.補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年4月28日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
平成20年4月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?6を補正後の特許請求の範囲の請求項1?6と補正するとともに、明細書の0012段落?0014段落及び0022段落を補正するものであって、補正前後の請求項1は各々以下のとおりである。
(補正前)
「【請求項1】
タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)のいずれかまたはこれらの2種以上の組合せにより構成された電極と、この電極のラジカル酸化により形成された誘電体層とを有するキャパシタを備えた半導体装置であって、
前記誘電体層は、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成されたこと
を特徴とする半導体装置。」

(補正後)
「【請求項1】
タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)のいずれかまたはこれらの2種以上の組合せにより構成された電極と、この電極のラジカル酸化により形成された誘電体層とを有するキャパシタを備えた半導体装置であって、
前記誘電体層は、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成され、前記電極の平面大きさが100nm以下に形成されたこと
を特徴とする半導体装置。」

(2)補正事項の整理
(2-1)補正事項1
補正前の請求項1の「前記誘電体層は、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成されたこと」を、補正後の請求項1の「前記誘電体層は、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成され、前記電極の平面大きさが100nm以下に形成されたこと」と補正すること。

(2-2)補正事項2
補正前の請求項2の「前記誘電体層は、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素にアンモニアガスまたは窒素を加えてマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成された窒素混合酸化層であること」を、補正後の請求項2の「前記誘電体層は、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素にアンモニアガスまたは窒素を加えてマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成された窒素混合酸化層であって、前記電極の平面大きさが100nm以下に形成されたこと」を補正すること。

(2-3)補正事項3
補正前の請求項3の「前記誘電体層をクリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成すること」を、補正後の請求項3の「前記電極を100nm以下に形成し、前記誘電体層をクリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成すること」と補正すること。

(2-4)補正事項4
補正前の明細書の0012段落?0014段落を、補正後の明細書の0012段落?0014段落と補正すること。

(2-5)補正事項5
補正前の明細書の0022段落を、補正後の明細書の0022段落と補正すること。

(3)新規事項の追加の有無、及び補正の目的について
(3-1)補正事項1?3について
補正事項1?3により追加された事項は、願書に最初に添付した明細書(以下、願書に最初に添付した明細書、願書に最初に添付した図面を、各々「当初明細書」、「当初図面」といい、これらをまとめて「当初明細書等」という。)の0024段落及び0037段落に記載されているから、当該補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
そして、補正事項1?3は、補正前の請求項1?3に係る発明における発明特定事項である「電極」の大きさを限定する補正であるから、特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項1?3は、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。

(3-2)補正事項4について
補正事項4は、いずれも特許請求の範囲の補正と整合を取るためのものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかである。
したがって、当該補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3-3)補正事項5について
補正事項5は、明らかな誤記の訂正であり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであることは明らかである。
したがって、当該補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

(3-4)新規事項の追加の有無、及び補正の目的についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものである。そして、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、本件補正がいわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かにつき、更に検討を進める。

(4)独立特許要件について
(4-1)補正後の発明
補正後の請求項1?6に係る発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、上記2.(1)の「(補正後)」の箇所に記載したとおりのものである。

(4-2)引用刊行物に記載された発明
(4-2-1)引用例1:特開平4-242969号公報
(4-2-1-1)本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平4-242969号公報(以下「引用例1」という。)には、図22及び23とともに、以下の記載がある(なお、下線は当合議体にて付加したものである。以下同じ。)。
a.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、DRAM(ダイナミックラム)メモリセルの製造方法にかかる。」

b.「【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製造が容易であり、歩留まりが高く、かつ、耐圧性に優れ、キャパシタ容量が大きなDRAMメモリセルの製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明の要旨は、基板と反対導電型の第1の領域が形成されており、表面が絶縁膜で覆われている基板の該第1の領域の表面を露出する第1の工程と、少なくとも1層からなる金属薄膜を形成する第2の工程と、前記金属薄膜の表面を直接酸化することにより金属酸化物の薄膜を該金属薄膜の表面に形成する第3の工程と、少なくとも1層の導電性薄膜を形成する第4の工程と、層間絶縁膜形成後、配線ラインを形成する第5の工程と、を少なくとも有していることを特徴とするDRAMメモリセルの製造方法に存在する。」

c.「【0022】第2の工程において形成する金属薄膜(下部電極)の材質としては、その酸化物の誘電率が高い材質が望ましい。例えば、Ta,Ti,Hf,Zr,Nb等が例示される。
【0023】なお、この金属薄膜は、一層構造でもよいが、2層以上の多層構造でもよい。2層以上の多層構造の場合、下層をCrにより形成することが金属薄膜と、基板表面を覆う絶縁膜との密着性を高める上で好ましい。
【0024】一方、導電性薄膜(上部電極)の材質としては、例えば、Ta,Ti、ポリシリコン、シリサイドその他の任意の導電性を有する材質を用いることができる。なお、上部電極形成後、500℃以上の高温工程が入る場合には、上部電極は下部電極と同じ金属で形成することが好ましい。すなわち、異なる金属(例えば、下部電極をTa、上部電極をTiにより構成した場合、500℃以上の温度におかれるとTa_(2)O_(5)とTiとが反応してしまい、Ta_(2)O_(5)が還元されてしまうため、酸化膜の耐圧性の劣化を招くことがあるためである。もちろん上部電極形成後高温プロセスにおかれない場合には異種の導電性材料により構成してもよい。なお、この金属薄膜の形成手段には特に限定されないが、例えば、図22に示す、基板103に外部からバイアス電圧を印加して成膜を行うDC-RFスパッタ装置(特開昭62-287071号公報)あるいは、図23に示すRF電源の周波数を基板側f_(2)とターゲット側f_(1)で異ならしめて成膜を行う2周波励起スパッタ装置(特開昭63-50025号公報)を用いればよい。もちろん他の手段例えば、CVD法等により行ってもよい。
【0025】本発明では、この金属薄膜を直接酸化することにより金属薄膜上にその金属の酸化物の薄膜を形成する。
【0026】このように、金属薄膜の直接酸化を行うことにより耐圧特性に優れた絶縁膜を得ることができる。
【0027】直接酸化法としては、酸化性ガス(例えば、O_(2)ガスあるいはO_(2)+N_(2)ガスの混合ガス雰囲気中で基板を加熱する方法があげられる。
【0028】また、基板を低温に保ったまま酸化する方法としては、金属膜表面に酸素ガス分子を供給するとともに、その表面に運動エネルギーが90eV以下の不活性ガスイオンを照射することにより行う方法がある。この方法は、例えば、Arイオンで、金属表面をたたくと、欠陥を生じないで表面の原子層を活性化できる。25eVのイオンは表面の2?3原子層内にとどまるため表面にのみにそのエネルギーを与える。そして、実効的に金属表面の温度を上昇させることができる。同時に酸素ガスを成膜室内に導入すると、酸素分子や放電によって生じた酸素ラジカルが金属表面に吸着し、Arイオン照射により高温になった金属表面で金属と反応を起こす。これにより金属の酸化が進行する。
【0029】従って、基板温度を400℃まで上昇させなくとも、例えば、150から200℃でも5?10nmの金属酸化膜(例えば、Ta_(2)O_(5)膜)を形成することができる。なお、照射するイオンのエネルギーを90eV以下に保てば下地にダメージを与えることはない。
【0030】なお、このように、90eV以下のイオンを照射するための装置をしては、例えば、図22あるいは図23に示すような装置を用い、O_(2)ガスとArガスとを装置内に導入し、基板側の周波数を50MHz、ターゲット側の周波数を200MHz、RFパワーを10?50Wとし、1mTorr?数10mTorrの雰囲気中でプラズマを発生させて行えばよい。」

(4-2-1-2)以上を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「Ta,Ti,Hf,Zr,Nb等の材料で形成された金属薄膜(下部電極)と、前記金属薄膜(下部電極)の直接酸化を行うことにより形成された絶縁膜と、導電性薄膜(上部電極)を備えたDRAMメモリセルであって、
前記絶縁膜は、O_(2)ガスとArガスとを成膜室内に導入し、基板側の周波数を50MHz、ターゲット側の周波数を200MHz、RFパワーを10?50Wとし、1mTorr?数10mTorrの雰囲気中でプラズマを発生させることにより、金属表面を運動エネルギーが90eV以下のArイオンでたたき、実効的に金属表面の温度を上昇させ、酸素分子や放電によって生じた酸素ラジカルが金属表面に吸着し、Arイオン照射により高温になった金属表面で金属と反応を起こすことにより形成されることを特徴とするDRAMメモリセル。」

(4-2-2)引用例2:特開2001-160555号公報
本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開2001-160555号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
a.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、111面方位のシリコンをその表面に有するシリコンに形成されるトランジスタを複数含む半導体装置およびその形成方法に係る。
【0002】
【従来の技術】MIS(金属/絶縁膜/シリコン)トランジスタのゲート絶縁膜には、低リーク電流特性、低界面準位密度、高ホットキャリア耐性などの高性能電気特性、高信頼性が要求される。これらの要求を満たすゲート絶縁膜形成技術として、従来は、800℃以上の熱酸化技術が用いられてきた。この熱酸化技術を使用して、良好な酸化膜/シリコン界面特性、酸化膜の耐圧特性、リーク電流特性が得られるのは、従来、表面が100面方位に配向したシリコンを用いたときであった。100以外の他の面方位に配向したシリコンに熱酸化技術を使用したゲート酸化膜を形成しても、100面方位に配向したシリコンのシリコン酸化膜に比べて、酸化膜/シリコン界面の界面準位密度が高く、また酸化膜の耐圧特性、リーク電流特性が悪いなど電気的特性が劣ってしまっていた。また、MISトンジスタ(審決注:「MISトランジスタ」の誤記。以下そのように読み替える。)のモビリティに関しても100面方位に配向したシリコンを使用したときが良く、他の面方位のシリコンでは高い駆動力のあるMISトランジスタを作成できなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、10GHzオーダーの高速動作素子を実現するためには、信号を減衰させることなく伝播させたりクロストークを抑制させたりするために、半導体基体に金属材料を導入する必要があるが、550℃以上の高温プロセスを用いると金属と半導体が反応を起こすことによって素子の動作性能が劣化してしまうという問題や、また、不純物が再拡散することによって正確な不純物分布の形成が難しくなり、微細な高速素子の形成が困難となるという問題が発生し、800℃以上の熱酸化技術が使用できないという課題が生じていた。」

b.「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、係る従来の課題を解決するためになされたものであり、111面方位のシリコンをその表面に有するシリコン基体にトランジスタを複数含む半導体装置において、前記シリコンの表面に形成された絶縁膜の少なくとも一部がKrを含有するシリコン酸化膜ないしはArまたはKrを含有するシリコン窒化膜であることを特徴とする。また、少なくとも1層の金属層上方に絶縁膜を介して設けられた111面方位をその表面に主体に有するシリコン層にトランジスタを複数含む半導体装置において、前記シリコン層の表面に形成された絶縁膜の少なくとも一部がKrを含有するシリコン酸化膜ないしはArまたはKrを含有するシリコン窒化膜であることを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明によれば、550℃以下の低温のプラズマ酸化で成膜したにも関わらず、1000℃程度の高温で成膜したシリコン熱酸化膜より優れた特性、信頼性を有するシリコン酸化膜を111面配向のシリコン(ポリシリコンを含む)上に形成することが可能となり、高性能なトランジスタ集積回路を実現できる。
【0010】また、本発明によれば、1000℃程度の高温で成膜したシリコン熱酸化膜と同程度の優れた特性、信頼性を有するシリコン窒化膜を550℃以下の低温で111面配向のシリコン(ポリシリコンを含む)上に形成することが可能となり、高誘電率ゲート絶縁膜をもった高性能なトランジスタ集積回路を実現できる。」

c.「【0015】
【実施例1】まずは、プラズマを用いた低温の酸化膜形成について述べる。図1は、本発明の酸化方法を実現するための、ラジアルラインスロットアンテナを用いた装置の一例を示す断面図である(特許願9-133422参照)。本実施例においては、酸化膜形成時のためにKrをプラズマ励起ガスとして使用していることに新規な特徴がある。真空容器(処理室)101内を真空にし、シャワープレート102からKrガス、O_(2)ガスを導入し、処理室内の圧力を1Torr程度に設定する。シリコンウェハ等の円形状の基板103を、加熱機構を持つ試料台104に置き、試料の温度が400度になるように設定する。この温度設定は200-550度の範囲内で以下に述べる結果はほとんど同様のものとなる。同軸導波管105から、ラジアルラインスロットアンテナ106、誘電体板107を通して、処理室内に、2.45GHzのマイクロ波を供給し、処理室内に高密度のプラズマを生成する。また、供給するマイクロ波の周波数は、900MHz以上10GHz以下の範囲にあれば以下に述べる結果はほとんど同様のものとなる。シャワープレート102と基板103の間隔は、本実施例では6cmにしてある。この間隔は狭いほうがより高速な成膜が可能となる。本実施例では、ラジアルラインスロットアンテナを用いたプラズマ装置を用いて成膜した例を示したが、他の方法を用いてマイクロ波を処理室内に導入してもよい。
【0016】KrガスとO_(2)ガスが混合された高密度励起プラズマ中では、中間励起状態にあるKr^(*)とO_(2)分子が衝突し、原子状酸素O^(*)が効率よく発生する。この原子状酸素により、基板表面は酸化される。従来の、シリコン表面の酸化は、H_(2)O分子、O_(2)分子により行われ、処理温度は、800℃以上と極めて高いものであったが、本発明の原子状酸素による酸化は、550℃以下と十分に低い温度で可能とある。Kr^(*)とO_(2)の衝突機会を大きくするには、処理室圧力は高い方が望ましいが、あまり高くすると、発生したO^(*)同志が衝突し、O_(2)分子に戻ってしまう。当然、最適ガス圧力が存在する。図2に、処理室内の圧力比を、Kr97%酸素3%に保って、処理室のガス圧を変えたときの、シリコン基板温度400度、10分間の酸化処理により成長する酸化膜厚を示す。処理室のガス圧が1Torrの時に最も酸化膜は厚くなり、この圧力ないしはその近傍の酸化条件が最適である。この最適圧力は基板シリコンの面方位が100面でも111面でも変わらない。」

(4-2-3)引用例3:特開2000-294550号公報
本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開2000-294550号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の記載がある。
a.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体の製造方法に係り、更に詳細には、MIS型半導体装置におけるゲート絶縁膜形成方法に関する。」

b.「【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問題点を解決するためになされたものである。即ち、本発明は、シリコン基板とSiN膜との界面での膜質制御を首尾よく行うことのできる半導体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0014】また、本発明は、短時間で高品質のSiN膜を形成することのできる半導体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本発明の半導体製造方法は、処理ガス雰囲気下で、ケイ素を主成分とする被処理基体に、複数のスリットを有する平面アンテナ部材を介してマイクロ波を照射することにより酸素、又は窒素、又は酸素と窒素とを含むプラズマを形成し、このプラズマを用いて前記被処理基体表面に直接に酸化、窒化、又は酸窒化を施して1nm以下の膜厚(シリコン酸化膜換算)の絶縁膜を形成することを特徴とする。
【0016】本発明の半導体製造方法では、絶縁膜厚が1nm以下であるため、シリコン基板の窒化は拡散ではなくプラズマにより生成された窒素原子又は酸素原子又は窒素原子と酸素原子がシリコン基板表面と反応する工程が主な工程となり、窒化速度は30秒程度の短時間で行うことができる。
【0017】この直接窒化又は酸化又は酸窒化した薄膜絶縁膜上にCVD法により残りの絶縁膜を形成する場合、3nm/min以上の製膜速度が比較的容易に達成できるため、トータル4nmの膜厚の絶縁膜でも2分以内で形成できる。
【0018】更に本発明の半導体製造方法では、直接窒化又は酸化又は酸窒化によりシリコン基板との界面に良質な絶縁膜を形成する工程とその上にCVD法により残りの絶縁膜を形成する工程とを独立に行うことができるため、全て、直接窒化又はCVD法によって絶縁膜を形成する方法に比べてシリコン基板界面での膜質制御性が向上し、より良質な絶縁膜を形成することができる。
【0019】この半導体製造方法において、前記処理ガスは、例えば、N_(2)又はN_(2)O又はNO又はNH_(3)を含むガスが挙げられる。この処理ガスはアルゴンなどの希ガスを含んでいても良い。
【0020】また、本発明の他の半導体製造方法は、処理ガス雰囲気下で、ケイ素を主成分とする被処理基体に、複数のスリットを有する平面アンテナ部材を介してマイクロ波を照射することにより酸素、又は窒素、又は酸素と窒素とを含むプラズマを形成し、このプラズマを用いて前記被処理基体表面に直接に酸化、窒化、又は酸窒化を施して第1の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する工程と、を具備することを特徴とする。」

c.「【0057】図6は本発明の方法の各工程の流れを示したフローチャートである。
【0058】まず、前段の工程でウエハW表面にフィールド酸化膜11を形成する。
【0059】次いで真空容器50の側壁に設けたゲートバルブ(図示省略)を開いて搬送アーム37,38により、前記シリコン基板1表面にフィールド酸化膜11が形成されたウエハWを載置台52上に載置する。
【0060】続いてゲートバルブを閉じて内部を密閉した後、真空ポンプ55により排気管53を介して内部雰囲気を排気して所定の真空度まで真空引きし、所定の圧力に維持する。一方マイクロ波電源部56より例えば2.45GHz(3kWのマイクロ波を発生させ、このマイクロ波を導波路51こより(審決注:「51により」の誤記。以下そのように読み替える。)案内してRLSA60及びガス供給室54を介して真空容器50内に導入し、これにより真空容器50内の上部側のプラズマ領域Pにて高周波プラズマを発生させる。
【0061】ここでマイクロ波は矩形導波管63D内を矩形モードで伝送し、同軸導波変換器63Cにて矩形モードから円形モードに変換され、円形モードで円筒形同軸導波管63Bを伝送し、さらに円形導波管63Aにて拡げられた状態で伝送していき、RLSA60のスロット60aより放射され、ガス供給室54を透過して真空容器50に導入される。この際マイクロ波を用いているので高密度のプラズマが発生し、またマイクロ波をRLSA60の多数のスロット60aから放射しているのでプラズマが高密度なものとなる。
【0062】そして載置台52の温度を調節してウエハWを例えば400℃に加熱しながら、ガス供給管72より第1のガスであるXeガスと、N_(2)ガスと、H_(2)ガス及びO_(2)ガスとを、夫々500sccm、25sccm、15sccm、1.0sccmの流量で導入して第1の工程を実施する。
【0063】この工程では、導入されたガスは真空容器3にて発生したプラズマ流により活性化(プラズマ化)され、このプラズマにより図7(a)に示すように、シリコン基板1の表面が酸窒化されて第1の絶縁膜(SiON膜)21が形成される。こうしてこの窒化処理を例えば30秒間行い、1nmの厚さの第1の絶縁膜(SiON膜)21を形成する。
【0064】次に、ゲートバルブを開き、真空容器50内に搬送アーム37,38を進入させ、載置台52上のウエハWを受け取る。搬送アーム37,38はウエハWをプラズマ処理ユニット32から取り出した後、隣接するCVD処理ユニット33内の載置台87にセットする。」

d.「【0076】例えば、第一の絶縁膜SiONの形成について、RLSAプラズマを用いて圧力100mTorr、Xe、N_(2)、H_(2)、O_(2)のガス流量を各々500sccm、25sccm、15sccm、1sccm温度400℃で成膜すると、図9に示したように、1nmのSiON膜を30秒程度で形成できる。
【0077】しかし、同条件で3nmのSiON膜を形成するには245秒必要とした。この成膜速度でO_(2)流量をゼロにしてもほとんど変化しなかった。一方、CVDではXe、SiH_(4)、N_(2)ガス流量を各々500sccm、15sccm、20sccm、温度400℃において4.5nm/min程度の成膜速度が達成された。従って、2nmの膜厚では30秒程度以内で形成された。この結果、本発明の半導体製造方法ではトータル60秒程度以内で3nmの絶縁膜を形成できるため、直接窒化法に比べて大幅に成膜速度を向上させることができる。
【0078】また、上記RLSAプラズマによる直接酸窒化の成膜による膜厚変化は図1-に示すように1nm程度までは時間に比例しており、表面反応律速であることが分かる。しかし、これ以上になると、拡散律速となり、成膜速度が徐々に低下する。従って、本発明の半導体製造方法では、直接酸窒化により1nmのSiON膜を形成し、この後CVD法によりSiN膜を形成した。」

(4-3)補正発明と引用発明との対比
(4-3-1)引用発明の「Ta,Ti,Hf,Zr,Nb等の材料で形成された金属薄膜(下部電極)」は、補正発明の「タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)のいずれかまたはこれらの2種以上の組合せにより構成された電極」に相当する。
また、引用発明の「Ta,Ti,Hf,Zr,Nb等の材料で形成された金属薄膜(下部電極)と、前記金属薄膜(下部電極)の直接酸化を行うことにより形成された絶縁膜と、導電性薄膜(上部電極)」によりキャパシタが構成されていることは当業者にとって明らかである。
したがって、引用発明の「絶縁膜」は補正発明の「誘電体層」に相当するとともに、引用発明の「DRAMメモリセル」はキャパシタを備えているものと認められる。
そして、引用発明の「絶縁膜」は、「酸素ラジカルが金属表面に吸着し、Arイオン照射により高温になった金属表面で金属と反応を起こすことにより形成される」ものであるから、補正発明の「誘電体層」と同様に、「電極のラジカル酸化により形成された」ものと認められる。
また、引用発明の「DRAMメモリセル」が補正発明の「半導体装置」に相当することは当業者にとって自明である。
したがって、引用発明の「Ta,Ti,Hf,Zr,Nb等の材料で形成された金属薄膜(下部電極)と、前記金属薄膜(下部電極)の直接酸化を行うことにより形成された絶縁膜と、導電性薄膜(上部電極)を備えたDRAMメモリセル」は、補正発明の「タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)のいずれかまたはこれらの2種以上の組合せにより構成された電極と、この電極のラジカル酸化により形成された誘電体層とを有するキャパシタを備えた半導体装置」に相当する。

(4-3-2)引用発明の「O_(2)」が補正発明の「酸素」に相当し、引用発明の「酸素ラジカル」がラジカルの一種であることは自明であるから、引用発明の「前記絶縁膜は、O_(2)ガスとArガスとを成膜室内に導入し、基板側の周波数を50MHz、ターゲット側の周波数を200MHz、RFパワーを10?50Wとし、1mTorr?数10mTorrの雰囲気中でプラズマを発生させることにより、金属表面を運動エネルギーが90eV以下のArイオンでたたき、実効的に金属表面の温度を上昇させ、酸素分子や放電によって生じた酸素ラジカルが金属表面に吸着し、Arイオン照射により高温になった金属表面で金属と反応を起こすことにより形成される」という構成は、補正発明の「前記誘電体層は、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成され、前記電極の平面大きさが100nm以下に形成され」るという構成に対応しており、両者は、「前記誘電体層は、不活性ガスを含む酸素に高周波電力を印加することにより発生させたラジカルにより形成される構成」である点で共通する。

(4-3-3)したがって、補正発明と引用発明とは、
「タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)のいずれかまたはこれらの2種以上の組合せにより構成された電極と、この電極のラジカル酸化により形成された誘電体層とを有するキャパシタを備えた半導体装置であって、
前記誘電体層は、不活性ガスを含む酸素に高周波電力を印加することにより発生させたラジカルにより形成されたことを特徴とする半導体装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「前記誘電体層」を「不活性ガスを含む酸素に高周波電力を印加することにより発生させたラジカルにより形成」するに際し、補正発明は、「クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成」しているのに対し、引用発明は、「O_(2)ガスとArガスとを成膜室内に導入し、基板側の周波数を50MHz、ターゲット側の周波数を200MHz、RFパワーを10?50Wとし、1mTorr?数10mTorrの雰囲気中でプラズマを発生させることにより、金属表面を運動エネルギーが90eV以下のArイオンでたたき、実効的に金属表面の温度を上昇させ、酸素分子や放電によって生じた酸素ラジカルが金属表面に吸着し、Arイオン照射により高温になった金属表面で金属と反応を起こすことにより形成」している点。

(相違点2)
補正発明は、「電極の平面大きさが100nm以下に形成された」ものであるのに対し、引用発明は、「電極の平面大きさ」が特定されていない点。

(4-4)相違点についての当審の判断
(4-4-1)相違点1について
(4-4-1-1)引用例2の「本実施例においては、酸化膜形成時のためにKrをプラズマ励起ガスとして使用していることに新規な特徴がある。真空容器(処理室)101内を真空にし、シャワープレート102からKrガス、O_(2)ガスを導入し、処理室内の圧力を1Torr程度に設定する。シリコンウェハ等の円形状の基板103を、加熱機構を持つ試料台104に置き、試料の温度が400度になるように設定する。・・・同軸導波管105から、ラジアルラインスロットアンテナ106、誘電体板107を通して、処理室内に、2.45GHzのマイクロ波を供給し、処理室内に高密度のプラズマを生成する。・・・KrガスとO_(2)ガスが混合された高密度励起プラズマ中では、中間励起状態にあるKr^(*)とO_(2)分子が衝突し、原子状酸素O^(*)が効率よく発生する。この原子状酸素により、基板表面は酸化される。」(0015段落?0016段落)という記載から、引用例2には、クリプトン(Kr)を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより酸化膜を形成する発明が記載されているものと認められる。

また、引用例3の「続いてゲートバルブを閉じて内部を密閉した後、真空ポンプ55により排気管53を介して内部雰囲気を排気して所定の真空度まで真空引きし、所定の圧力に維持する。一方マイクロ波電源部56より例えば2.45GHz(3kWのマイクロ波を発生させ、このマイクロ波を導波路51により案内してRLSA60及びガス供給室54を介して真空容器50内に導入し、これにより真空容器50内の上部側のプラズマ領域Pにて高周波プラズマを発生させる。」(0060段落)、及び「例えば、第一の絶縁膜SiONの形成について、RLSAプラズマを用いて圧力100mTorr、Xe、N_(2)、H_(2)、O_(2)のガス流量を各々500sccm、25sccm、15sccm、1sccm温度400℃で成膜すると、図9に示したように、1nmのSiON膜を30秒程度で形成できる。」(0076段落)という記載と、「また、本発明の他の半導体製造方法は、処理ガス雰囲気下で、ケイ素を主成分とする被処理基体に、複数のスリットを有する平面アンテナ部材を介してマイクロ波を照射することにより酸素、又は窒素、又は酸素と窒素とを含むプラズマを形成し、このプラズマを用いて前記被処理基体表面に直接に酸化、窒化、又は酸窒化を施して第1の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する工程と、を具備することを特徴とする。」(0020段落)という記載とを合わせて解釈すると、引用例3には、キセノン(Xe)を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより酸化膜を形成する発明が記載されているものと認められる。

(4-4-1-2)そして、引用例1の「酸素ガスを成膜室内に導入すると、酸素分子や放電によって生じた酸素ラジカルが金属表面に吸着し、Arイオン照射により高温になった金属表面で金属と反応を起こす。これにより金属の酸化が進行する。」(0028段落)という記載、引用例2の「KrガスとO_(2)ガスが混合された高密度励起プラズマ中では、中間励起状態にあるKr^(*)とO_(2)分子が衝突し、原子状酸素O^(*)が効率よく発生する。この原子状酸素により、基板表面は酸化される。」(0016段落)という記載、及び引用例3の「処理ガス雰囲気下で、ケイ素を主成分とする被処理基体に、複数のスリットを有する平面アンテナ部材を介してマイクロ波を照射することにより酸素、又は窒素、又は酸素と窒素とを含むプラズマを形成し、このプラズマを用いて前記被処理基体表面に直接に酸化、窒化、又は酸窒化を施して第1の絶縁膜を形成する」(0020段落)という記載等から明らかなように、引用発明と引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明とは、酸素ラジカルを用いて酸化物を形成するという同一の技術分野に属するものである。

また、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明は、シリコン基板にMOSトランジスタのゲート絶縁膜としての酸化膜を形成するものであり、金属にキャパシタ誘電膜としての酸化膜を形成する引用発明とは、酸化膜を形成する部分の材料、及び酸化膜の用途が異なるものであるが、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明は、いずれも酸素ラジカルを表面に吸着させることにより酸化物を形成するというメカニズムにより酸化が行われるものであるから、酸化膜を形成する部分がシリコンであるか金属であるかにかかわらず適用可能であることは当業者であれば直ちに察知し得たことであり、また、シリコン基板、ゲート絶縁膜及びゲート電極からなるMOS構造がキャパシタと極めて類似するものであることは、当該構造を利用した「MOSキャパシタ」が当業者において周知であることからも分かるように、当業者の技術常識である。

さらに、引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明は、いずれも不揮発性ガスイオンの運動エネルギーを制御する必要がなく十分な速度で酸化膜を形成することができるものであるところ、製造方法の簡略化は、半導体装置の製造の分野において、更に言えば製造業全般において、当業者が常に念頭に置いている技術課題であることは論を待たないところである。

(4-4-1-3)したがって、引用発明、並びに引用例2に記載された発明及び引用例3に記載された発明に接した当業者であれば、引用発明において、製造方法の簡略化を図るため、不活性ガスの運動エネルギーの制御を必要としない引用例2に記載された発明又は引用例3に記載された発明を適用し、補正後の補正発明のように、「前記誘電体層」を「クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)の少なくとも一方を含む酸素のマイクロ波励起により発生させたラジカルにより形成」する構成とすることは、容易になし得たことである。
よって、相違点1は当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度ものである。

(4-4-2)相違点2について
メモリセルの微細化は、メモリの分野における不断の課題といえるものであるから、引用発明の半導体装置において、メモリセルの電極を微細化することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願の明細書及び図面を精査しても、補正発明において、「前記電極の平面大きさ」の上限値を「100nm」としたことにより格別の効果が生じているとは認められないから、「100nm」という上限値に臨界的意義は認められない。
したがって、引用発明において、補正発明のように、「前記電極の平面大きさが100nm以下に形成された」ものとすることは当業者が容易になし得たことである。
よって、相違点2も当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

(4-4-3)判断についてのまとめ
以上検討したとおり、補正発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4-5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項をいう。以下同じ。)の規定に適合しないものである。

(5)補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成19年8月31日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される上記2.(1)の「(補正前)」の箇所に記載したとおりのものである。
また、本願の出願前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平4-242969号公報(引用例1)、特開2001-160555号公報(引用例2)及び特開2000-294550号公報(引用例3)には、上記2.(4-2)に記載したとおりの事項が記載されており、引用例1には上記2.(4-2-1-2)に記載したとおりの発明(引用発明)が記載されているものと認められる。
そして、上記2.(4)において検討したとおり、補正発明は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明から技術的限定を省いた本願発明についても、当然に、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-24 
結審通知日 2010-09-28 
審決日 2010-10-14 
出願番号 特願2004-71548(P2004-71548)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮部 裕一小川 将之  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 近藤 幸浩
安田 雅彦
発明の名称 半導体装置およびその製造方法  
代理人 加藤 清志  

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