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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1227776
審判番号 不服2006-17789  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-14 
確定日 2010-12-01 
事件の表示 特願2002-323071「光ピックアップ用のアクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月3日出願公開、特開2003-281758〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成14年11月6日(パリ条約に基づく優先権主張 2001年12月1日 大韓民国(KR))の出願であって、その請求項1ないし18に係る発明は、平成22年2月15日付けで手続補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
ホルダーが固設されるベースと、
低密度光ディスクを記録及び/又は再生するための第1の対物レンズを設けるための第1の設置孔と、前記低密度光ディスクより高密度の光ディスクを記録及び/又は再生するための第2の対物レンズを設けるための第2の設置孔とを有するボビンと、
一端が前記ボビンに結合されて他端が前記ホルダーに結合され、前記ボビンを移動自在に支持する支持部材と、
前記ボビンをフォーカス方向及びトラック方向に駆動するための磁気回路とを含む光ピックアップ用のアクチュエータにおいて、
前記第1の設置孔に設けられる低密度光ディスク用の第1の対物レンズの作動距離をWD1、前記第2の設置孔に設けられる高密度光ディスク用の第2の対物レンズの作動距離をWD2とした場合、前記第1及び第2の設置孔は、前記第1及び第2の対物レンズが次の条件式、
WD1≧WD2
第2の対物レンズの光ディスクに対する離隔距離=WD2+α
ここで、α=|WD1-WD2|×(0.1?1.0)
を満足するように設置可能に設けられて、光ディスクの装着時に短い作動距離を有する第2の対物レンズと光ディスクとの接触を防止することを特徴とする光ピックアップ用のアクチュエータ。」

2.引用例
これに対し、当審より平成21年10月21日付けで通知した拒絶理由に引用した特開2001-319358号公報(平成13年11月16日公開)(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。

(a)「【0002】
【従来の技術】光磁気ディスクドライブ、追記型光ディスクドライブ、相変化型光ディスクドライブ、CD-ROM、DVD、光カード等の光記録媒体に対して情報を記録および/または再生する情報記録再生装置等においては光ピックアップが使用される。光記録媒体としては、例えばCD,CD-Rがある。この媒体においてはカバーガラスの厚さが1.2mmでNAが0.43-0.55、記録/再生時における対物レンズ面からの距離WDが0.8-1.5mm程度の対物レンズを用いて記録および/または再生をする。
【0003】また、記録密度の増大にともなって、0-0.1mm程度にカバーガラスの薄い媒体に対して、NAを0.7-0.9程度に大きくしWDを0-0.2mm程度に小さくした対物レンズを用いてさらに高密度の記録再生を行う装置がある。この様な対物レンズの中にはSILを組み合わせた物もある。このようなカバーガラスの厚さ、記録密度が異なる複数の媒体の記録および/または再生を行う装置として、特開平11-120587においては図6に示すような装置が開示されている。」

(b)「【0012】
【発明の実施形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)図1ないし図4は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は本発明の第1の実施の形態の光ピックアップの構成を示し、図2は光ピックアップの外観を示し、図3は記録/再生時における可動部の光学系と光ディスクとの位置関係の様子を示し、図4は可動部に界磁コイルを設けた場合における記録/再生時における可動部の光学系と光ディスクとの位置関係の様子を示す。」

(c)「【0015】この第1の対物レンズ13は、第1レンズ14及び第2レンズ15との2群レンズで構成され、この2群レンズにより開口数NAが0.8、記録/再生時(つまりフォーカス状態)における光記録媒体としての第1の光ディスク16面までの距離WD1が0.1mmとなる対物レンズを構成している。」

(d)「【0018】次にカバーガラス厚さが1.2mmの第2の光ディスク21への記録および/または再生について説明する。光源として、例えば780nmの波長のレーザ22から出射された光はホログラム23を透過しその0次光はミラー10で反射され、発散光で第2の対物レンズ24に入射する。この第2の対物レンズ24で集光された光はこの対物レンズ24から1.0mmはなれた、つまりWD2=1.0mmの第2の光ディスク21に入射し、カバーガラス厚さ1.2mmを介して記録面21aに光スポットP2を結ぶ。この第2の対物レンズ24は1枚のレンズで構成され、NAが0.55、WD2が1.0mmの対物レンズを形成している。
【0019】この記録面21aからの反射光は同じ経路をたどりホログラム23に戻り、ここで回折され、その±1次光が、フォトディテクタ25に入射する。このフォトディテクタ25で光電変換された出力から記録再生信号と、トラッキング信号(プッシュプル法)、フォーカスエラー信号(ビームサイズ法)を得る。第1及び第2の対物レンズ13,24は共にホルダ12に接着固定され、アクチュエータ11にてフォーカス方向とトラッキング方向に支持駆動される。
【0020】第1及び第2の対物レンズ13、24は図2に示すように記録トラックのタンジェンシャル方向に隣接するように配列されている。このため、両対物レンズ13、24を隣接して設けた場合にも、いずれの対物レンズを光ディスク16或いは21の最内周のトラックにアクセスする場合にも、スピンドルモータ26と干渉することなく行える。
【0021】この図2から分かるように、第2の対物レンズ24は第1の対物レンズ13の第1レンズ14に対してb(具体的には0.6mm)光ディスクから離れる方向に位置している。【0022】この図2に示すようにホルダ12は4本のバネ31の一端が固定され、バネ31の他端は固定部材32に固定されている。またホルダ12にはフォーカスコイル33が巻回され、その両側にトラッキングコイル34が固定され、これらのコイル34はヨーク35とマグネット36から構成される磁気回路に対向配置されている。」

(e)「【0030】このように本実施の形態によれば、WD1が小さい対物レンズ13で第1の光ディスク16に記録或いは再生を行う場合には、WD2が大きい第2の対物レンズ24を前記第1の光ディスク16からバラツキ等で当たる可能性がある距離よりも大きい所定間隔を保持するように可動部37に配置し、WD2が大きい対物レンズ24で第2の光ディスク21に記録或いは再生を行う場合には、WD1が小さい第1の対物レンズ16を前記第2の光ディスク21から所定間隔を保持するように可動部37に配置している。
【0031】換言すると、第1の対物レンズ13に対して第2の対物レンズ24の媒体側の面を大きく離間させるようにして、具体的にはb程度離間させるようにしてホルダ12に取り付けた可動部37とし、図3に示すようにこの可動部37に対して記録/再生時における第1の光ディスク16の表面の位置を、記録/再生時における第2の光ディスク21の表面の位置より近づけるようにしている。
【0032】つまり、第1の光ディスク16に対して記録/再生する時は第1の対物レンズ13は小さなWD1で第1の光ディスク16に近接しているが、第2の光ディスク21に対して記録/再生する時は第2の光ディスク21の表面からWD1より大きく離間するようにしているので、第1の対物レンズ13の特に第1レンズ14が第2の光ディスク21の表面に接触するようなことを確実に防止できる。
【0033】このように本実施の形態によれば、第1の光ディスク16に記録或いは再生を行う場合及び第2の光ディスク21に記録或いは再生を行う場合のいずれの場合にも、記録又は再生に使用しない側の対物レンズ24或いは13が第1の光ディスク16或いは第2の光ディスク21に突き当たるようなことを確実に防止できる。」

(f)「【0037】そして、厚さT=0.12mmのシリコン基板42に形成された界磁コイル41を可動部37に配置し、磁界変調記録をする場合があるが、この場合には界磁コイル41と第2の対物レンズ24との間隔を上記bのように設定すれば良い。
(第2の実施の形態))次に本発明の第2の実施の形態を図5を参照して説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における第1の光ディスク16と第2の光ディスク21との段差を設けない第1の光ディスク16′と第2の光ディスク21′にしたものである。
【0038】図5(A)は第1の光ディスク16′をターンテーブル26aに装着して第1の対物レンズ13で記録/再生を行う状態を示し、図5(B)は第2の光ディスク21′をターンテーブル26aに装着して第2の対物レンズ24で記録/再生を行う状態を示す。
【0039】図5(A)の場合は第1の対物レンズ13を第1の光ディスク16′とWD1にして記録/再生を行う状態を示し、この場合には第2の対物レンズ24は第1の光ディスク16′より上方側に光スポットP2を結ぶ状態となる。また、図5(B)の場合は第2の対物レンズ24を第2の光ディスク21′とWD2にして記録/再生を行う状態を示し、この場合には第1の対物レンズ13は第2の光ディスク21′より下方側(つまり、第2の光ディスク21′に届く手前の位置)で光スポットP1を結ぶ状態となる。
【0040】図5(A)の第1の光ディスク16′に対する記録/再生時の可動部37の位置は37aとすると、図5(B)の第2の光ディスク21′の記録/再生時の可動部37の位置を37bで示す様に37aよりもcだけ光ディスク16′(又は21′)から離れる方向に位置するようにしている。
【0041】本実施の形態ではc=0.5mmとしている。本実施の形態では、対物レンズ13に対して対物レンズ24の位置を第1の実施の形態に対して光ディスク16′(又は21′)に近い方向にずらしてホルダ12に配置している。」

上記記載事項及び図面を総合勘案し、共通部分は第1の実施形態も参考にしつつ第2の実施形態を中心にまとめると、上記引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「固定部材と、
第1及び第2の対物レンズを共に接着固定するホルダと、
を含むピックアップのアクチュエータにおいて、
前記ホルダには4本のバネの一端が固定され、前記バネの他端は前記固定部材に固定され、
また、前記ホルダにはフォーカスコイルが巻回され、その両側にトラッキングコイルが固定され、これらのコイルはヨークとマグネットから構成される磁気回路に対向配置され、
前記第1の対物レンズは、開口数NAが0.8、記録/再生時における光記録媒体としての第1の光ディスク面までの距離WD1が0.1mmとなる対物レンズであり、
前記第2の対物レンズは、カバーガラス厚さ1.2mmを介して記録面に光スポットを結ぶ、NAが0.55、WD2が1.0mmの対物レンズであり、
前記第1及び第2の対物レンズは、共にホルダ12に接着固定され、アクチュエータにてフォーカス方向とトラッキング方向に支持駆動され、
第1の対物レンズに対して第2の対物レンズの媒体側の面をb程度離間させるようにしてホルダに取り付けた可動部とし、この可動部に対して記録/再生時における第1の光ディスクの表面の位置を、記録/再生時における第2の光ディスクの表面の位置より近づけるようにするものであって、
前記第2の対物レンズは、第1の対物レンズに対してb(具体的には0.6mm)光ディスクから離れる方向に位置し、第1の対物レンズを第1の光ディスクとWD1にして記録/再生を行う場合には、前記第2の対物レンズは第1の光ディスクより上方側に光スポットP2を結ぶ状態となり、第2の対物レンズを第2の光ディスクとWD2にして記録/再生を行い、
第2の光ディスクの記録/再生時の可動部37の位置は、第1の光ディスクに対する記録/再生時の可動部の位置よりもcだけ光ディスクから離れる方向に位置する、
光ピックアップ。」


3.対 比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「固定部材」は、本願発明の「ホルダ」に相当する。本願発明の「ベース」については、引用文献1には明記がないが、引用発明においても「固定部材」が固設される構造が必要であることは自明の事項である。
引用発明の「ホルダ」は、第1及び第2の対物レンズを取り付けるための要素であるから、本願発明の「ボビン」に相当する。
引用発明の「4本のバネ」は本願発明の「支持部材」に相当する。
「磁気回路」は、本願発明と引用発明とで共通している。
引用発明の「第1の光ディスク」は、開口数0.8、ディスク面までの距離WDが0.1mm程度で記録再生される、より記録密度の高いディスクであり、「第2の光ディスク」は、従来周知のCD等、比較的記録密度の低い光ディスクであって、引用発明のピックアップは、これらの光ディスクを記録再生する光ピックアップであるから、引用発明における「第2の対物レンズ」は、本願発明の「低密度光ディスクを記録及び/又は再生するための第1の対物レンズ」に相当し、引用発明の「第1の対物レンズ」は、本願発明の「前記低密度光ディスクより高密度の光ディスクを記録及び/又は再生するための第2の対物レンズ」に相当する。

本願発明と引用発明において、同様の記号WD1、及びWD2が用いられるので、以下の検討では、混乱を避けるため、引用発明については、アンダーラインを付して、WD1、及びWD2と表記する。
すると、引用発明の第1の対物レンズの「記録/再生時における光記録媒体としての第1の光ディスク面までの距離WD1」は、本願発明の「高密度光ディスク用の第2の対物レンズの作動距離をWD2」に相当し、同様に、引用発明の第2の対物レンズの「記録/再生時における光記録媒体としての第1の光ディスク面までの距離WD2」は、本願発明の「低密度光ディスク用の第1の対物レンズの作動距離をWD1」に相当する。
引用発明において、第1のディスク(高密度ディスク)を記録再生するための対物レンズ光学系14の作動距離(WD1)が、0.1mm、第2のディスク(低密度ディスク)を記録再生するための対物レンズ光学系14の作動距離(WD2)が、1.0mmであるから、
WD2>WD1
であって、本願発明の
WD1≧WD2
に相当する要件を備えている。
引用発明の「第2の対物レンズ」の先端は、「第1の対物レンズ」の先端よりb(明らかに0<b)だけディスク面から離れて位置しており、第2の対物レンズが第2のディスクを記録再生している状態では、2枚のレンズを保持する可動部37は、第1の対物レンズが第1のディスクを記録再生している状態よりc(明らかに0<c)だけディスク面から離れるように位置している。すると、
WD2 = WD1+b+c (1)
これから、cを求めると、
c = (WD2-WD1)-b (2)
となる。
bは正の実数であるから、
(WD2-WD1)-b < (WD2-WD1) (3)
である。ここで、
{(WD2-WD1)-b}/(WD2-WD1) = k (4)
と置くと、kは、0<k<1 となることが明らかであるから、
(WD2-WD1)-b = (WD2-WD1)*k (5)
ただし、 0<k<1
と表すことができる。

一方、引用発明において、第1の対物レンズが第1の光ディスクを記録再生している状態で、第2の対物レンズとディスク面との間隔、すなわち本願発明で特定される「離隔距離」は(図5(B)も参照すると)、
(離隔距離) = WD1+c (6)
であるから、cに(2)式を代入すると、
(離隔距離) = WD1+(WD2-WD1)-b (7)
となり、さらに(5)式を代入すると、
(離隔距離) = WD1+(WD2-WD1)*k (8)
ただし、 0<k<1
と表すことができ、本願発明の「離隔距離」が、
(離隔距離) = WD2+α
ここで、α= |WD1-WD2|*(0.1?1.0)
であることと比較して、少なくとも|WD1-WD2|の係数が1.0未満である点で一致する。

以上のことからすると、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
<一致点>
「 ホルダーが固設されるベースと、
低密度光ディスクを記録及び/又は再生するための第1の対物レンズを設けるための第1の設置孔と、前記低密度光ディスクより高密度の光ディスクを記録及び/又は再生するための第2の対物レンズを設けるための第2の設置孔とを有するボビンと、
一端が前記ボビンに結合されて他端が前記ホルダーに結合され、前記ボビンを移動自在に支持する支持部材と、
前記ボビンをフォーカス方向及びトラック方向に駆動するための磁気回路とを含む光ピックアップ用のアクチュエータにおいて、
前記第1の設置孔に設けられる低密度光ディスク用の第1の対物レンズの作動距離をWD1、前記第2の設置孔に設けられる高密度光ディスク用の第2の対物レンズの作動距離をWD2とした場合、前記第1及び第2の設置孔は、前記第1及び第2の対物レンズが次の条件式、
WD1≧WD2
第2の対物レンズの光ディスクに対する離隔距離=WD2+α
ここで、α=|WD1-WD2|×(?1.0)
を満足するように設置可能に設けられて、短い作動距離を有する第2の対物レンズと光ディスクとの接触を防止することを特徴とする光ピックアップ用のアクチュエータ。」

一方、次の点で相違する。
<相違点>
(1)本願発明は、離隔距離について、
第2の対物レンズの光ディスクに対する離隔距離=WD2+α
ここで、α=|WD1-WD2|×(0.1?1.0)
と、|WD1-WD2|の係数の下限値が0.1であるのに対し、引用発明では、(WD2-WD1)の係数であるkについて、下限値は特定されていない点。
(2)本願発明は、「光ディスクの装着時に」短い作動距離を有する第2の対物レンズと光ディスクとの接触を防止すると特定するのに対し、引用発明では、光ディスクの装着時について特定がない点。


4.判 断
そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点(1)について
上記対比の検討における(8)式から明らかなように、kがごく小さい領域は「離隔距離」がWD1にごく近い領域でもある。因みに、k=0とすると、引用例において従来例として示されている図6の場合に帰着する。
すると前記kがごく小さい領域では、第2の対物レンズで記録再生をしているときに、第1の対物レンズが、同レンズによる記録再生時に比べて、光ディスクからあまり離れないことになり、実質上、発明の効果を十分奏することができないことが明らかであるから、kがごく小さい領域を除外する程度の配慮は、当業者が当然すべき程度の事項である。
その他に下限値を0.1と限定したことによる格別の作用効果も認められないことからすると、0.1との下限値の特定に臨界的な意義は認められないものであり、引用発明において、0<k<0.1の領域を除外して、kの下限値を0.1とする程度のことは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

(2)相違点(2)について
光ピックアップにおいて、記録再生時のみならず、光ディスクの装着時においても、対物レンズが光ディスクに接触すべきでないことは当業者にとって自明な事項であって、引用発明においても、例えば、光ディスクの装着時に、対物レンズが(8)式を満たす状態にある【図5】の(B)のような位置とすることで、条件式を満足するように設置可能に設けられて、「光ディスクの装着時に短い作動距離を有する第2の対物レンズと光ディスクとの接触を防止する」ものとなることが明らかであるし、また、例えば、特開平7-130065号公報(【0043】【0054】参照)、特開平9-212884号公報(【0057】参照)のように、光ディスクの装填時、当該光ディスクがピックアップ(対物レンズ)と接触しないように、ピックアップ(対物レンズ)を下降させる機構は周知技術であるから、同周知技術を引用発明の光ピックアップに採用することで「光ディスクの装着時に短い作動距離を有する第2の対物レンズと光ディスクとの接触を防止する」ようにすることは当業者が容易に想到しうることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用例に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。


5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて周知技術も考慮することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-20 
出願番号 特願2002-323071(P2002-323071)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山澤 宏田良島 潔  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 横尾 俊一
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 光ピックアップ用のアクチュエータ  
代理人 伊東 忠彦  

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