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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66B
管理番号 1227800
審判番号 不服2009-11811  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-06-29 
確定日 2010-12-01 
事件の表示 特願2003-516932「エレベータケージの位置を確認するための装置を有するエレベータ設備」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月13日国際公開、WO03/11732、平成16年12月 2日国内公表、特表2004-536000〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、2002年7月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年7月31日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成16年1月30日付けで国内書面が提出され、平成19年6月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年10月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月2日付けで再度拒絶理由が通知され、これに対し平成20年5月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月2日付けで再々度拒絶理由が通知され、これに対し同年12月10日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年3月27日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し同年6月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年12月10日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成19年10月2日付けで提出された手続補正書により補正された明細書及び願書に最初に添付された図面からみて、平成20年12月10日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。
「ガイドフランジ(21)を有する少なくとも1つのガイドレール(7)と、
ガイドフランジ(21)に沿って移動可能なエレベータケージ(2)と、
エレベータケージ(2)の絶対位置を確認するための装置とを備え、該装置が、
エレベータケージ(2)の移動方向(8)でガイドレール(7)の長さに沿ってガイドレール(7)に取り付けられたコードキャリア(10)であって、複数のコードワードを担持しており、これらコードワードの各々がエレベータケージ(2)の絶対位置の数字コードを表しているコードキャリア(10)と、
付勢力を作用させるための装置(50、52)を有するサスペンション(45)であって、エレベータケージ(2)に装着され、移動方向(8)と垂直な第1の方向(x)および第2の方向(y)に移動可能であるサスペンション(45)と、
サスペンション(45)に懸架されたコード読み取りセンサシステム(11)であって、コードキャリア(10)のコードワードを非接触検出するためにコード読み取りセンサシステム(11)がコードキャリア(10)から所定の間隔(39)をもってガイドレール(7)に沿って案内されるように構成されたコード読み取りセンサシステム(11)と、
コード読み取りセンサシステム(11)に取り付けられた第1のガイドローラ(35)であって、第1のガイドローラ(35)が、ガイドフランジ(21)の第1のガイド面(25)上を転動して、付勢力を作用させるための装置(50)により、移動方向(8)と垂直な第1の方向(x)にガイドフランジ(21)に対して付勢された第1のガイドローラ(35)とを備え、
サスペンション(45)が、移動方向(8)と垂直なエレベータケージ(2)のコード読み取りセンサシステム(11)に対する移動に対して補償を与え、また、サスペンション(45)が移動方向(8)と垂直な第1の方向(x)でエレベータケージ(2)の振動からコード読み取りセンサシステム(11)を切り離し、サスペンション(45)が第1のガイドローラ(35)を第1のガイド面(25)に対して付勢し、これにより、第1のガイド面(25)に対して垂直な方向でコード読み取りセンサシステム(11)とコードキャリア(10)の間の間隔(39)を維持する、エレベータ設備。」


第3.原査定の拒絶の理由に引用された特公昭58-6669号公報(以下、「引用文献」という。)
1.引用文献の記載事項
引用文献には、次の事項が図面と共に記載されている。
(ア)「第1、第2図に示す終端停止装置によつて従来の位置検出装置を説明する。
図中、1は昇降路で、2はここに立設された案内レール、3はエレベータのかごからなる昇降体、4は昇降体3に装着された周知のローラガイドシユーからなる案内装置で、防振体により防振支持された3個のローラを有し、これによつて案内レール2に係合されている。」(公報第1ページ第1欄下から10ないし3行)
(イ)「第5?第7図はこの発明の他の実施例を示すもので、図中、第1?第4図と同符号は相当部分を示し、8は両端がそれぞれ基板7及び支持台11にユニバーサルジヨイントを介して枢着されたリンクで、第6図に示すように平面において二等辺三角形のそれぞれの頂点に相当する位置に互いに離れて配置されている。9は支持台11に枢着されて案内レール2の案内面の3面に対応してそれぞれ配置された転輪で、案内面に接触して転動する。5は案内レール2の側面にこれの長手に沿つて配置されたテープ状の作動体で、長手に等間隔で設けられた多数の突起部から成る作動部5aが設けてある。6は支持台11に装着された静電容量計、過電流変位計又は光、電磁波等を利用して対向物の変位、速度を検出する装置からなる作動装置で、検出部が作動体5に対向するように配置されて作動部5aに対応したときに動作する。
すなわち、作動装置6は昇降体3とともに昇降しその動作回数によつて別の装置(図示しない)によつて昇降体3の位置が検出される。この作動装置6が支持された支持台11はリンク8を介して付勢体15によつて案内レール2方向へ付勢されるとともに転輪9により案内レール2面に対して所定位置に保持される。このため昇降体3が水平方向に変位しても案内レール2面に対する作動装置6の位置は変化しない。」(公報第2ページ第4欄第4ないし29行)
(ウ)「図面の簡単な説明
第1図は従来のエレベータの位置検出装置を示すエレベータ装置の要部横断面図、第2図は第1図のII-II線断面図、第3図はこの発明によるエレベータの位置検出装置の一実施例を示す第2図のIII部拡大図、第4図は第3図の左側面図、第5図はこの発明によるエレベータの位置検出装置の他の実施例を示す第4図相当図、第6図は第5図の平面図、第7図は第5図の右側面図である。」(公報第3ページ第5欄第1行ないし同ページ第6欄第1行)

2.上記1.並びに第1、2図及び第5ないし7図から認定できること
(カ)第5ないし7図の他の実施例において、「案内レール2」は「ガイドフランジ」を有することが認定できる。
(キ)第5ないし7図の他の実施例において、かごである「昇降体3」は「案内レール2」の「ガイドフランジ」に沿って移動可能であることが認定できる。
(ク)第5ないし7図の他の実施例において、「テープ状の作動体5」は、かごである「昇降体3」の移動方向で「案内レール2」の長さに沿って「案内レール2」に配置されていることが認定できる。
(ケ)第5ないし7図の他の実施例において、「テープ状の作動体5」は、長手に等間隔で多数の突起部からなる「作動部5a」が設けられており、かごである「昇降体3」の位置を確認するための装置であることが認定できる。
(コ)第5ないし7図の他の実施例において、「支持台11」、「リンク8」、「基板7」及び「案内装置4」はかごである「昇降体3」に装着されていることが認定できる。
(サ)第5ないし7図の他の実施例において、かごである「昇降体3」は「案内装置4」を構成する3個の「ガイドローラ」によって、かごである「昇降体3」の移動方向と垂直な2つの方向に移動可能であることが認定できる。
(シ)第5ないし7図の他の実施例において、「作動装置6」は「支持台11」、「リンク8」、「基板7」及び「案内装置4」によって懸架されていることが認定できる。そして、「支持台11」、「リンク8」、「基板7」及び「案内装置4」は「作動装置6」の支持構造と呼ぶことができる。
(ス)第5ないし7図の他の実施例において、上記支持構造に懸架された「作動装置6」は「テープ状の作動体5」の「作動部5a」を非接触検出するために「テープ状の作動体5」から所定の間隔をもって「案内レール2」に沿って案内されるように構成されていることが認定できる。
(セ)第5ないし7図の他の実施例において、「案内装置4」を構成する3個の「ガイドローラ」は、「作動装置6」に「支持台11」、「リンク8」及び「基板7」を介して取り付けられており、上記3個の「ガイドローラ」のうちの「案内レール2」の側面を挟持する一対の「ガイドローラ」は「案内レール2」の側面上を転動し、さらに圧縮コイルばねにより、かごである「昇降体3」の移動方向と垂直な方向に「案内レール2」に対して付勢されていることが認定できる。
(ソ)第5ないし7図の他の実施例において、上記支持構造はかごである「昇降体3」の移動方向と垂直なかごである「昇降体3」の「作動装置6」に対する移動に対して補償を与え、また、前記移動方向と垂直な方向でかごである「昇降体3」の振動から「作動装置6」を切り離し、「案内装置4」を構成する「ガイドローラ」のうちの「案内レール2」の側面を挟持する一対の「ガイドローラ」を「案内レール2」の側面に対して付勢し、これにより、前記「案内レール2」の側面に対して垂直な方向で「作動装置6」と「テープ状の作動体5」の間の間隔を維持することが認定できる。

3.引用発明
上記1.及び2.並びに第1、2図及び第5ないし7図によると、引用文献には、
「ガイドフランジを有する1つの案内レール2と、
ガイドフランジに沿って移動可能なかごである昇降体3と、
かごである昇降体3の位置を確認するための装置とを備え、該装置が、
かごである昇降体3の移動方向で案内レール2の長さに沿って案内レール2に取り付けられ、長手に等間隔で多数の突起部からなる作動部5aが設けられたテープ状の作動体5と、
付勢力を作用させるための圧縮コイルばねを有する支持台11、リンク8、基板7及び案内装置4からなる支持構造であって、かごである昇降体3に装着され、移動方向と垂直な第1の方向および第2の方向に移動可能である支持構造と、
支持構造に懸架された作動装置6であって、テープ状の作動体5の長手に等間隔で多数の突起部からなる作動部5aを非接触検出するために作動装置6がテープ状の作動体5から所定の間隔をもって案内レール2に沿って案内されるように構成された作動装置6と、
作動装置6に取り付けられた案内レール2の側面を挟持する一対のガイドローラであって、この一対のガイドローラが、ガイドフランジの側面上を転動して、付勢力を作用させるための圧縮コイルばねにより、移動方向と垂直な方向にガイドフランジに対して付勢された一対のガイドローラとを備え、
支持構造が、移動方向と垂直なかごである昇降体3の作動装置6に対する移動に対して補償を与え、また、支持構造が移動方向と垂直な方向でかごである昇降体3の振動から作動装置6を切り離し、支持構造がガイドローラを案内レール2の側面に対して付勢し、これにより、案内レール2の側面に対して垂直な方向で作動装置6とテープ状の作動体5の間の間隔を維持する、エレベータ装置。」
という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


第4.対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「案内レール2」は、その形状及び機能からみて、本願発明における「ガイドレール」に相当し、以下、同様に、「かごである昇降体3」は「エレベータケージ」に、「付勢力を作用させるための圧縮コイルばね」は「付勢力を作用させるための装置」に、「支持台11、リンク8、基板7及び案内装置4からなる支持構造」は「サスペンション」に、「一対のガイドローラ」は「第1のガイドローラ」に、「ガイドフランジの側面」は「ガイドフランジの第1のガイド面」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「かごである昇降体3の位置を確認するための装置」は、「エレベータケージの位置を確認するための装置」という限りにおいて、本願発明における「エレベータケージの絶対位置を確認するための装置」に相当する。
また、引用発明における「長手に等間隔で多数の突起部からなる作動部5aが設けられたテープ状の作動体5」及び「テープ状の作動体5の長手に等間隔で多数の突起部からなる作動部5aを非接触検出するため」の「作動装置6」は、「エレベータケージの位置情報キャリア」及び「エレベータケージの位置情報キャリアの位置情報を非接触検出するため」の「センサ装置」という限りにおいて、本願発明における「複数のコードワードを担持しており、これらコードワードの各々がエレベータケージの絶対位置の数字コードを表しているコードキャリア」及び「コードキャリアのコードワードを非接触検出するため」の「コード読み取りセンサシステム」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、
「ガイドフランジを有する少なくとも1つのガイドレールと、
ガイドフランジに沿って移動可能なエレベータケージと、
エレベータケージの位置を確認するための装置とを備え、該装置が、
エレベータケージの移動方向でガイドレールの長さに沿ってガイドレールに取り付けられたエレベータケージの位置情報キャリアと、
付勢力を作用させるための装置を有するサスペンションであって、エレベータケージに装着され、移動方向と垂直な第1の方向および第2の方向に移動可能であるサスペンションと、
サスペンションに懸架されたセンサ装置であって、エレベータケージの位置情報キャリアの位置情報を非接触検出するためにセンサ装置がエレベータケージの位置情報キャリアから所定の間隔をもってガイドレールに沿って案内されるように構成されたセンサ装置と、
センサ装置に取り付けられた第1のガイドローラであって、第1のガイドローラが、ガイドフランジの第1のガイド面上を転動して、付勢力を作用させるための装置により、移動方向と垂直な第1の方向にガイドフランジに対して付勢された第1のガイドローラとを備え、
サスペンションが、移動方向と垂直なエレベータケージのセンサ装置に対する移動に対して補償を与え、また、サスペンションが移動方向と垂直な第1の方向でエレベータケージの振動からセンサ装置を切り離し、サスペンションが第1のガイドローラを第1のガイド面に対して付勢し、これにより、第1のガイド面に対して垂直な方向でセンサ装置とエレベータケージの位置情報キャリアの間の間隔を維持する、エレベータ設備。」
の点で一致し、次の(相違点)でのみ相違している。
(相違点)
本願発明においては、「エレベータケージの位置を確認するための装置」が「エレベータケージの絶対位置を確認するための装置」であって、かつ、該装置が「複数のコードワードを担持しており、これらコードワードの各々がエレベータケージの絶対位置の数字コードを表しているコードキャリア」と「コードキャリアのコードワードを非接触検出するため」の「コード読み取りセンサシステム」を備えているのに対して、引用発明においては、「エレベータケージの位置を確認するための装置」が「かごである昇降体3の位置を確認するための装置」であって、かつ、該装置が「長手に等間隔で多数の突起部からなる作動部5aが設けられたテープ状の作動体5」と「テープ状の作動体5の長手に等間隔で多数の突起部からなる作動部5aを非接触検出するため」の「作動装置6」を備えている点(以下、単に「相違点」という。)。

第5.当審の判断
上記相違点について、以下に検討する。
「エレベータケージ」のような一次元方向に移動する物体の「絶対位置を確認するための装置」であって、かつ、該装置が「複数のコードワードを担持しており、これらコードワードの各々がエレベータケージの絶対位置の数字コードを表しているコードキャリア」と「コードキャリアのコードワードを非接触検出するため」の「コード読み取りセンサシステム」を備えているものは、周知の技術である(例えば、実公平2-26014号公報、特開平2-132096号公報、特開平4-171505号公報及び特許第3176861号公報を参照されたい。以下、「周知技術」という。)。
そして、引用発明において、「かごである昇降体3の位置を確認するための装置」として、上記周知技術を適用することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたことである。
しかも、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-01 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-20 
出願番号 特願2003-516932(P2003-516932)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 多佳子  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 八板 直人
加藤 友也
発明の名称 エレベータケージの位置を確認するための装置を有するエレベータ設備  
代理人 坪倉 道明  
代理人 小野 誠  
代理人 川口 義雄  
代理人 大崎 勝真  

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