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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16L 審判 訂正 2項進歩性 訂正する F16L 審判 訂正 特36条4項詳細な説明の記載不備 訂正する F16L 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F16L 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16L 審判 訂正 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正する F16L |
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管理番号 | 1228636 |
審判番号 | 訂正2010-390100 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2010-10-01 |
確定日 | 2010-11-12 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3396128号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3396128号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第3396128号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。 平成 8年 5月17日 特許出願(特願平8-123669号) 平成15年 2月 7日 特許権の設定登録(請求項の数5) 平成18年 7月27日 訂正審判請求(訂正2006-39128号) 平成18年 9月 1日 審決(訂正認容、請求項の数5) 平成18年12月15日 無効審判請求(無効2006-80261号) 平成19年 3月28日 答弁書 平成19年 7月20日 第1回口頭審理、無効理由通知 平成19年 8月20日 訂正請求書、意見書 平成19年10月10日 弁駁書 平成20年 2月 8日 訂正拒絶理由通知 平成20年 3月 4日 意見書、手続補正書(訂正請求書) 平成20年 4月30日 審決(請求項1ないし5に係る発明についての 特許を無効とする。) 平成20年 5月31日 知的財産高等裁判所出訴(平成20年(行ケ) 第10208号) 平成20年 6月30日 訂正審判請求(訂正2008-390072号 ) 平成20年 8月28日 知的財産高等裁判所決定(平成20年4月30 日にした審決を取り消す。) 平成20年11月 7日 弁駁書(第2回) 平成20年12月25日 訂正拒絶理由通知 平成21年 2月 2日 意見書 平成21年 5月25日 審決(請求項1ないし5に係る発明についての 特許を無効とする。) 平成21年 7月 3日 知的財産高等裁判所出訴(平成21年(行ケ) 第10181号) 平成21年 8月 7日 訂正審判請求(訂正2009-390097号 ) 平成21年10月16日 上申書 平成22年 1月26日 審決(訂正認容、請求項の数2) 平成22年 3月17日 知的財産高等裁判所判決(平成21年5月25 日にした審決を取り消す。) 平成22年 6月21日 審決(請求項1ないし2に係る発明についての 特許を無効とする。) 平成22年 7月28日 知的財産高等裁判所出訴(平成22年(行ケ) 第10238号) 平成22年10月 1日 本件審判請求(訂正2010-390100号 ) 第2 本件審判の請求の趣旨 本件審判の請求の趣旨は、特許第3396128号発明の明細書を、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その内容は、次のとおりである。 1 訂正事項A 特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1に「それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外壁面及び側面に開口する入口部と、この入口部から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、」とあるのを「それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、」と訂正する。 2 訂正事項B 明りょうでない記載の釈明を目的として、請求項1に「前記スライド部は、前記軸方向を向いた係合面を有し、」とあるのを「前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、」と訂正する。 3 訂正事項C 明りょうでない記載の釈明を目的として、請求項1に「前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させる」とあるのを「前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させる」と訂正する。 4 訂正事項D 特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項2に「それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外壁面及び側面に開口する入口部と、この入口部から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、」とあるのを「それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、」と訂正する。 5 訂正事項E 明りょうでない記載の釈明を目的として、請求項2に「前記スライド部は、前記軸方向を向いた係合面を有し、」とあるのを「前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、」と訂正する。 6 訂正事項F 明りょうでない記載の釈明を目的として、請求項2に「つぎに前記固定具の引っ掛け部を前記本管の内周面に引っ掛け、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させる」とあるのを「つぎに前記固定具の引っ掛け部を前記本管の内周面に引っ掛け、前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させる」と訂正する。 7 訂正事項G 段落【0006】に「この発明は、本管に形成された開口に分岐管を接続するための接続装置であって、支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、内壁に背向して形成される2つの縦溝が設けられ、一端部が前記支管部に差し込まれる内筒と、一端に前記本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に前記縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた2つの固定具と、前記内筒の外周に螺合され、回動により前記内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備え、前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外壁面及び側面に開口する入口部と、この入口部から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、前記スライド部は、前記軸方向を向いた係合面を有し、前記本管の開口の外周縁部に前記フランジの鍔部を当接させておき、前記支管部の他端側から前記内筒の一端部を差し込むとともに、前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込むことを特徴とする。」とあるのを、 「この発明は、本管に形成された開口に分岐管を接続するための接続装置であって、支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、内壁に背向して形成される2つの縦溝が設けられ、一端部が前記支管部に差し込まれる内筒と、一端に前記本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に前記縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた2つの固定具と、前記内筒の外周に螺合され、回動により前記内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備え、前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入ロ部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、前記本管の開口の外周縁部に前記フランジの鍔部を当接させておき、前記支管部の他端側から前記内筒の一端部を差し込むとともに、前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込むことを特徴とする。」と訂正する。 第3 訂正の適否 以下、訂正の適否について検討する。 1 訂正の目的について (1)訂正事項Aについて 訂正事項Aは、図1、2に基づいて、係合凹所の入口部が開口する箇所を明りょうにするとともに、係合凹所のスライド部を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (2)訂正事項Bについて 訂正事項Bは、特許明細書段落【0016】の「係合凹所64は、縦板部61の外壁面に連通した入口部65および上方に延長し係合面を有するスライド部66からなる逆L字断面形状を呈する。」との記載、同段落【0018】の「(ニ)締め付け輪4を回転させて、締め付ける。これにより、2対のピン52、52は、係合凹所64、64のスライド部66、66に嵌り込む。」との記載、同段落【0019】の「(b)締め付け輪4の締結により、2対のピン52、52は、スライド部66、66に嵌まり込むため、略L字形の固定具6を拡開する方向に曲げ応力が加わっても、ピン52、52と、係合凹所64、64との係合が外れることが確実に防止できる。」との記載及び図1、2に基づいて、スライド部の係合面を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (3)訂正事項Cについて 訂正事項Cは、同段落【0018】の「(ハ)内筒3の下端部31を支管部21に差し込むとともに、係合凹所64、64の入口部65、65に、2対のピン52、52を嵌め込む。この際に、引っ掛け部62、62は、本管10の内周面15の下方に設定される。(ニ)締め付け輪4を回転させて、締め付ける。これにより、2対のピン52、52は、係合凹所64、64のスライド部66、66に嵌り込む。」との記載、及び図1、2に基づいて、締め付け輪を回動させて内筒を他端側に変位させる直前の、入口部におけるピンの位置、状態を明らかにするものであるから、特許請求の範囲の減縮かつ明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (4)訂正事項Dについて 訂正事項Dは、図1、2、9に基づいて、係合凹所の入口部が開口する箇所を明りょうにするとともに、係合凹所のスライド部を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (5)訂正事項Eについて 訂正事項Eは、同段落【0016】の「係合凹所64は、縦板部61の外壁面に連通した入口部65および上方に延長し係合面を有するスライド部66からなる逆L字断面形状を呈する。」との記載、同段落【0018】の「(ニ)締め付け輪4を回転させて、締め付ける。これにより、2対のピン52、52は、係合凹所64、64のスライド部66、66に嵌り込む。」との記載、同段落【0019】の「(b)締め付け輪4の締結により、2対のピン52、52は、スライド部66、66に嵌まり込むため、略L字形の固定具6を拡開する方向に曲げ応力が加わっても、ピン52、52と、係合凹所64、64との係合が外れることが確実に防止できる。」との記載及び図1、2、9に基づいて、スライド部の係合面の態様を明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (6)訂正事項Fについて 訂正事項Fは、同段落【0018】の「(ハ)内筒3の下端部31を支管部21に差し込むとともに、係合凹所64、64の入口部65、65に、2対のピン52、52を嵌め込む。この際に、引っ掛け部62、62は、本管10の内周面15の下方に設定される。(ニ)締め付け輪4を回転させて、締め付ける。これにより、2対のピン52、52は、係合凹所64、64のスライド部66、66に嵌り込む。」との記載、及び図1、2、9に基づいて、締め付け輪を回動させて内筒を他端側に変位させる直前の、入口部におけるピンの位置、状態を明らかにするものであるから、特許請求の範囲の減縮かつ明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (7)訂正事項Gについて 訂正事項Gは、特許請求の範囲に係る訂正である訂正事項AないしFの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載との整合を図るためにするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (8)小括 上記(1)ないし(7)のとおり、訂正事項AないしGは、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第126条第1項第1号又は3号に該当する。 2 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について 上記1の(1)ないし(7)のとおり、訂正事項AないしGは、特許明細書又は図面の記載に基づいて訂正をするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第126条第3項の規定に適合する。 また、訂正事項AないしGにより、実質上特許請求の範囲が拡張され、又は変更されるものではないから、特許法第126条第4項の規定に適合する。 3 独立特許要件について そこで、本件訂正後の請求項1ないし2に係る発明(以下「訂正発明1ないし2」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 (1)訂正発明 訂正発明1ないし2は、本件訂正明細書の記載及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 本管に形成された開口に分岐管を接続するための接続装置であって、 支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、 内壁に背向して形成される2つの縦溝が設けられ、一端部が前記支管部に差し込まれる内筒と、 一端に前記本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に前記縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた2つの固定具と、 前記内筒の外周に螺合され、回動により前記内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備え、 前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、 前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、 それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入ロ部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、 前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、 前記本管の開口の外周縁部に前記フランジの鍔部を当接させておき、 前記支管部の他端側から前記内筒の一端部を差し込むとともに、前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、 前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込むことを特徴とする分岐管の接続装置。 【請求項2】 本管に形成された開口に分岐管を接続するための接続装置であって、 支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、 内壁に縦溝が設けられ、一端部が前記支管部に差し込まれる内筒と、 該内筒の一端部に形成され、前記本管の内周面に引っ掛かる固定引っ掛け部と、 一端に前記本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に前記縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた固定具と、 前記内筒の外周に螺合され、回動により前記内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備え、 前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、 前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、 それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、 前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、 前記本管の開口の外周縁部に前記フランジの鍔部を当接させておき、 前記支管部の他端側から前記内筒の一端部を差し込むとともに、前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、まず前記固定引っ掛け部を前記本管の内周面に引っ掛け、つぎに前記固定具の引っ掛け部を前記本管の内周面に引っ掛け、 前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込むことを特徴とする分岐管の接続装置。」 (2)特許法第36条第4項について 別件無効審判(無効2006-80261号)における平成22年6月21日付けの審決(以下、単に「無効審判」、「無効審判の審決」という。)では、本件訂正前の明細書は、特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない、としているので、以下、これをふまえつつ、本件訂正後の明細書についての特許法第36条4項違反の有無について検討する。 ア 無効審判の審決の概要 (ア)無効審判請求人の主張の概要 特許明細書には、固定具の支軸を内筒の軸溝に引っ掛けて吊しておく構成が記載されている(段落【0014】?【0017】)。内筒の軸溝に引っ掛けて吊した状態では、固定具の支軸は、軸溝の下端に位置する。締め付け輪を回転させると、内筒は本管に対して上方へ摺動し、それに伴って固定具も上方へ摺動する。そうすると、内筒は固定具に対して相対的に上方へ摺動しないので、2対のピンは係合凹所に嵌まりこむことはない。したがって、前記のような嵌まり込む構成は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (無効審判の審決5ページ16行?下から4行目) (イ)無効審判の審決の判断の概要 本件発明1、2(当審注:本件訂正前のもの。以下同じ。)は、「軸溝53に支軸67を引っ掛けて、内筒3に固定具6を吊るして」おくとの構成は、具備しないものの、固定具は、内筒に何らかの形で係合された状態が保持され、その後、締め付け輪の回動によりピンがスライド部を摺動するものである。 また、明細書の発明の詳細な説明では、【発明の実施の形態】における第1実施例を示すものとして、「接続装置1を用いた分岐管14の接続作業を説明する。(イ)本管10の開口11に環状シール部材23を取り付けたフランジ2の鍔部22を当てがう。(ロ)固定具6は、締め付け輪4を内筒3のネジ32に螺合させ、且つ、図2に示す如く、支軸67、67を内筒3の軸溝53、53に引っ掛けて吊るしておく。(ハ)内筒3の下端部31を支管部21に差し込むとともに、係合凹所64、64の入口部65、65に、2対のピン52、52を嵌め込む。(ニ)締め付け輪4を回転させて、締め付ける。これにより、2対のピン52、52は、係合凹所64、64のスライド部に嵌まり込む。(ホ)締め付け輪4をさらに回転させると、引っ掛け部62、62は、本管10の内周面15に引っ掛かり、つづいて内筒3と本管10との間にフランジ2が締結される。」(段落【0017】、【0018】)との記載があり、本件発明の実施例とされている。 しかし、これらの記載では、固定具の内筒への係合を行うとともに、(締め付け輪を回動させて、)内筒を摺動させ、内筒に嵌め込むことについて、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 本件発明1ないし2は、「締め付け輪を回動させて内筒を他端側に変位させることで、・・・ピンを軸方向に摺動させ、」「締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させる」ものであるのに対し、段落【0014】、【0016】?【0018】、図2、9の記載から、固定具を内筒に係合させることができるための構成、および「係合部材を摺動させ、被係合部に係合させる」構成を個別に把握し得るのみであって、これらを連続して行える構成、言い換えると、請求項に記載された発明のとおり、一連の接続作業を行えるものではない。 固定具を内筒に係合した後、引き続いて、内筒を他端側に変位させ得るための、係合構成は開示されていない。 確かに、・・・「軸溝53、53に支軸67、67を引っ掛けて、内筒3に固定具6を吊るしておく」ことは発明特定事項となっていないが、固定具は、内筒に何らかの形で係合された状態が保持され、その後、締め付け輪の回動によりピンがスライド部を摺動するものであるから、このような操作が可能となるような係合関係が示されているとはいえない。・・・ したがって、発明の詳細な説明の記載では、本件発明1、及び本件発明2を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 (無効審判の審決8ページ2行?9ページ20行) イ 当審の判断 (ア)本件訂正明細書には以下の記載がある。 「【0016】 縦板部61の両側面63、63には、中間部および下端部に、内筒3の軸方向に摺動する2対のピン52、52に対応して、内筒3の軸方向を向いた係合面を有する係合凹所64、64が上下に形成されている。係合凹所64は、縦板部61の外壁面に連通した入口部65および上方に延長し係合面を有するスライド部66からなる逆L字断面形状を呈する。また、両側面63、63の上端部には、軸溝53、53に軸支される支軸67、67が突設されている。 【0017】 接続装置1を用いた分岐管14の接続作業を説明する。 (イ)本管10の開口11に環状シール部材23を取り付けたフランジ2の鍔部22を当てがう。 (ロ)固定具6は、締め付け輪4を内筒3のネジ32に螺合させ、且つ、図2に示す如く、支軸67、67を内筒3の軸溝53、53に引っ掛けて吊るしておく。 【0018】 (ハ)内筒3の下端部31を支管部21に差し込むとともに、係合凹所64、64の入口部65、65に、2対のピン52、52を嵌め込む。この際に、引っ掛け部62、62は、本管10の内周面15の下方に設定される。 (ニ)締め付け輪4を回転させて、締め付ける。これにより、2対のピン52、52は、係合凹所64、64のスライド部66、66に嵌まり込む。 (ホ)締め付け輪4をさらに回転させると、引っ掛け部62、62は、本管10の内周面15に引っ掛かり、つづいて内筒3と本管10との間にフランジ2が締結される。 【0019】 これによりつぎの効果がある。 (a)組み付け作業において、固定具6、6が本管10内に脱落することを防止できるので、作業効率がよい。 (b)締め付け輪4の締結により、2対のピン52、52は、スライド部66、66に嵌まり込むため、略L字形の固定具6を拡開する方向に曲げ応力が加わっても、ピン52、52と、係合凹所64、64との係合が外れることが確実に防止できる。」 (イ)かかる記載からすると、接続装置を用いた分岐管の接続作業によって固定具6と内筒3の状態は、まず、支軸67を内筒3の軸溝53に引っ掛けて固定具を吊るす作業(以下「作業1」という。)が行われることで、軸溝53に支軸67が軸支された状態(軸溝53の底部に支軸67が接した状態)となる。これにより、固定具6が本管10内に脱落することが防止される。次に、係合凹所64の入口部65に、2対のピン52を嵌め込む作業(以下「作業2」という。)が行われ、訂正発明1ないし2で特定されるように、ピン52が入口部65の内周端に保持された状態となる。その後、締め付け輪4を回転させて締め付けることで、2対のピン52を、係合凹所64のスライド部66に嵌め込む作業(以下「作業3」という。)が行われ、ピン52が係合凹所64のスライド部66に嵌り込んだ状態となる。 (ウ)ここで、作業1、すなわち支軸67を内筒3の軸溝53に引っ掛けて固定具を吊るす状態とすることは、固定具6が本管10内に脱落することを防止するためのものであって、作業2、すなわち係合凹所64の入口部65に、2対のピン52を嵌め込むためのものではない。そうすると、作業2を行う際においてもなお、軸溝53に支軸67が軸支された状態のままとなっている必然性はない。 そして、作業1の完了した時点で軸溝53に支軸67が軸支されていたとしても、作業2の後に、作業3、すなわち締め付け輪4を回転させて締め付けて、2対のピン52を係合凹所64のスライド部66に嵌め込むことが行われるのであるから、作業2の完了した時点では、支軸67と内筒3の軸溝53との位置関係が作業3の支障とならない状態となっていること、換言すれば、軸溝53に支軸67が軸支された状態が解消されていること、より具体的には、支軸67が内筒3の軸溝53の底部から離れ浮いた状態となっていることは明らかである(これは、図9(イ)(ロ)における、支軸67と入口部65との軸方向に沿う長さが支軸67とピン52との軸方向に沿う長さよりも長いことからも裏付けられる。)。 そうすると、作業2が完了した時点では、係合凹所64の入口部65に、2対のピン52が嵌め込まれている(段落【0018】(ハ))ことで、訂正発明1ないし2のように、ピン52が入口部65の内周端に保持された状態となっており、かつ、その時点では、支軸67が内筒3の軸溝53の底部から離れ浮いているのであるから、ピン52が入口部65の内周端に保持された状態から、締め付け輪4を回動させて内筒3を他端側に変位させることで、係合面に対し前記ピン52を軸方向に摺動させ、前記ピン52をスライド部66に嵌め込むことができることは、明らかである。 (エ)したがって、本件訂正明細書は、訂正発明1ないし2を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条4項に違反しない。 (3)特許法第36条第6項第2号について 無効審判の審決では、本件訂正前の本件発明1ないし2は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない、としているので、以下、これをふまえつつ、訂正発明1、2についての特許法第36条6項2号違反の有無について検討する。 ア 無効審判の審決の概要 本件発明1においては、「縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた2つの固定具」の、「入口部に内筒のピンを嵌め込んで、引っ掛け部を本管の内周面の下方に設定し」、「締め付け輪を回動させて内筒を他端側に変位させることで、係合面に対しピンを軸方向に摺動させ、ピンをスライド部に嵌め込む」ことができるための構成、本件発明2については、「縦溝が嵌まり込む縦板部が形成された固定具」の、「入口部に内筒のピンを嵌め込んで、・・・固定具の引っ掛け部を本管の内周面に引っ掛け」、「締め付け輪を回動させて内筒を他端側に変位させることで、係合面に対しピンを軸方向に摺動させ、ピンをスライド部に嵌め込む」ことができるための構成は、いずれも明確ではない。 すなわち、本件発明1ないし2の記載では、締め付け輪を回動させて、内筒を他端側に変位させることで、ピンをスライド部に嵌め込むことができる構成が明確ではない。 (無効審判の審決9ページ22行?10ページ2行) イ 当審の判断 (ア)訂正発明1について 訂正発明1は、「前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入ロ部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し」との構成により、「前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込む」ものである。 そうすると、締め付け輪を回動させて、内筒を他端側に変位させることで、ピンを入口部の内周端に保持された状態からスライド部に嵌め込むための構成は明確である。 (イ)訂正発明2について 訂正発明2は、「前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し」との構成により、「前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、・・・前記固定具の引っ掛け部を前記本管の内周面に引っ掛け、前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込む」ものである。 そうすると、締め付け輪を回動させて、内筒を他端側に変位させることで、ピンを入口部の内周端に保持された状態からスライド部に嵌め込むための構成は明確である。 (ウ)小括 したがって、訂正発明1ないし2は明確であり、特許法第36条第6項第2号に違反しない。 (4)特許法第29条第2項について ア 引用刊行物 無効審判では、以下の刊行物1、2が示されている。 刊行物1:特開平8-14467号公報 刊行物2:実願平4-75951号(実開平6-40578号)のCD-ROM イ 当審の判断 (ア)訂正発明1について 刊行物1、2には、訂正発明1の発明特定事項のうち、少なくとも、「前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入ロ部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し」との事項が記載されておらず、示唆もない。 そして、訂正発明1は、上記発明特定事項を具備することにより、訂正明細書に記載の効果を奏するものである。 そうすると、訂正発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)訂正発明2について 刊行物1、2には、訂正発明2の発明特定事項のうち、少なくとも、「前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し」との事項が記載されておらず、示唆もない。 そして、訂正発明2は、上記発明特定事項を具備することにより、訂正明細書に記載の効果を奏するものである。 そうすると、訂正発明2は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)小括 したがって、訂正発明1ないし2は、刊行物1ないし2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)まとめ 以上のとおり、訂正発明1ないし2は、特許出願の際独立して特許を受けることができないということはできず、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項、第4項及び第5項に規定する要件に適合するので、本件訂正を認める。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 分岐管の接続装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 本管に形成された開口に分岐管を接続するための接続装置であって、 支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、 内壁に背向して形成される2つの縦溝が設けられ、一端部が前記支管部に差し込まれる内筒と、 一端に前記本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に前記縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた2つの固定具と、 前記内筒の外周に螺合され、回動により前記内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備え、 前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、 前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、 それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、 前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、 前記本管の開口の外周縁部に前記フランジの鍔部を当接させておき、 前記支管部の他端側から前記内筒の一端部を差し込むとともに、前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、 前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込むことを特徴とする分岐管の接続装置。 【請求項2】 本管に形成された開口に分岐管を接続するための接続装置であって、 支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、 内壁に縦溝が設けられ、一端部が前記支管部に差し込まれる内筒と、 該内筒の一端部に形成され、前記本管の内周面に引っ掛かる固定引っ掛け部と、 一端に前記本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に前記縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた固定具と、 前記内筒の外周に螺合され、回動により前記内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備え、 前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、 前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、 それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、 前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、 前記本管の開口の外周縁部に前記フランジの鍔部を当接させておき、 前記支管部の他端側から前記内筒の一端部を差し込むとともに、前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、まず前記固定引っ掛け部を前記本管の内周面に引っ掛け、つぎに前記固定具の引っ掛け部を前記本管の内周面に引っ掛け、 前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込むことを特徴とする分岐管の接続装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、本管に分岐管を接続するための接続装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 下水などの本管に分岐管を接続する場合に、特公平6-6999号公報に示す如く、支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、一端に本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に被係合部に係合する係合部が設けられた一対の固定具と、内筒の外周に螺合され、回動により内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備えた接続装置が使用される。固定具は、略L字形を呈し、一端が内筒の内周面に係合し、他端が本管の内周面に引っ掛かる。 【0003】 この接続装置は、つぎの作業でフランジおよび内筒を本管に固定する。 (1)本管の開口の外周縁部にフランジの鍔部を当接させる。 (2)支管部の他端側から、内筒の一端部を差し込む。 (3)一対の固定具を内筒の他端から挿入して被係合部に係合部を係合させる。 (4)一対の固定具の引っ掛け部を本管の内周面に引っ掛ける。 (5)締め付け輪を回動させて内筒を他端側に変位させると、引っ掛け部が本管の内周面に圧接して、フランジおよび内筒が本管に締結される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかるに、上記略L字形の固定具は、締め付けを強く行うと、固定具にかかる曲げ力で固定具が変形し、内筒の内壁面に設けた被係合部と固定具の一端に設けた係合部との係合が外れ、固定具が本管内に脱落する場合があった。 【0005】 この発明の目的は、締め付け輪による締め付けを強く行った場合にも、固定具の変形により固定具の一端と内筒の内周面との係合が外れて固定具が本管内へ脱落することを確実に防止できる分岐管の接続装置の提供にある。請求項2に記載の発明の目的は、固定具が1つで済むため、部品数の低減と、作業の単純化が可能になる分岐管の接続装置の提供にある。 【0006】 【課題を解決するための手段】 この発明は、本管に形成された開口に分岐管を接続するための接続装置であって、支管部および該支管部の一端部の外周に形成された鍔部からなるフランジと、内壁に背向して形成される2つの縦溝が設けられ、一端部が前記支管部に差し込まれる内筒と、一端に前記本管の内周面に引っ掛かる引っ掛け部が形成され、他端に前記縦溝に嵌まり込む縦板部が設けられた2つの固定具と、前記内筒の外周に螺合され、回動により前記内筒を他端側に変位させる締め付け輪とを備え、前記縦溝の両側壁には、それぞれ、前記内筒の軸方向に並ぶように2本のピンが周方向に突設され、一方の側壁に突設されたピンと他方の側壁に突設されたピンとが互いに対向して、前記軸方向に2段の対をなし、前記縦板部の両側面には、それぞれ、前記2本のピンの位置に対応するように2つの係合凹所が形成され、それぞれの係合凹所は、前記縦板部の外周面及び側面に開口する入口部と、この入口部の内周端から他端側に延びるとともに、前記縦板部の側面に開口するスライド部とからなり、前記縦板部の側面にL字状に開口し、前記スライド部は、前記軸方向に沿う係合面を有し、前記本管の開口の外周縁部に前記フランジの鍔部を当接させておき、前記支管部の他端側から前記内筒の一端部を差し込むとともに、前記固定具の前記入口部に前記内筒の前記ピンを嵌め込んで、前記引っ掛け部を前記本管の内周面の下方に設定し、前記ピンが前記入口部の内周端に保持された状態から、前記締め付け輪を回動させて前記内筒を他端側に変位させることで、前記係合面に対し前記ピンを前記軸方向に摺動させ、前記ピンを前記スライド部に嵌め込むことを特徴とする。 【0007】 【発明の作用・効果】 この発明では、締め付け輪を回動させると、係合凹所に嵌め込まれたピンが、係合面上を内筒の軸方向に摺動して、縦溝に縦板部が係合されるため、略L字形の固定具が拡開するように変形しても、縦溝と縦板部の係合が外れることを確実に防止できる。 【0010】 【発明の実施の形態】 図1?図3は、第1実施例を示す。地面を切削して形成した排水管埋設用の溝に、下水道用の本管10が配設されている。本管10には、略円形の開口11が形成され、この開口11に、この発明の分岐管の接続装置1が締結される。 【0011】 接続装置1は、支管部21および該支管部21の一端(図示下端、以下同じ)の外周に形成された鍔部22からなるフランジ2と、下端部31が支管部21に差し込まれる内筒3とを有する。フランジ2の鍔部22は、略矩形の平面形状を有し、本管10の外周面に対応した円弧状の断面を有し、支管部21の下端には環状シール部材23が嵌め込まれている。 【0012】 内筒3の中間部の外周にはネジ32が形成されており、ネジ32には回動により内筒3を上端側に変位させる締め付け輪4が螺合されている。内筒3の上端部33には、ゴム製のブーツ12および締結バンド13、13によって径小の分岐管14が接続される。 【0013】 締め付け輪4は、内周にネジ41が形成され、外周に半径方向の把手42、42が背向して設けられている。締め付け輪4は、内筒3の外周に螺合されて内筒3の下端部31が支管部21に差し込まれたとき、締め付け輪4の下面が支管部21の上面に当接してストッパーとして作用している。 【0014】 内筒3の内周壁には、背向して被係合部5、5が形成されている。被係合部5は、図2に示す如く、本管10の軸方向に位置する幅の広い縦(筒部の軸方向)溝51、該縦溝51の側壁に対向して突設した水平方向で周方向の上下2対のピン52、52からなる。また、内筒3の上端部33には、後記する固定具6の支軸を支持するための軸溝53、53が縦溝51の両側壁に臨んで対向して形成されている。 【0015】 被係合部5、5には、内筒3と本管10とを固定するための固定具6、6が係合されている。固定具6は、係合部であって縦溝51に嵌まり込む縦板部61と、該縦板部61の下端から横方向に延設され、本管10の内周面15に引っ掛かる引っ掛け部62からなる略L字形を呈する。縦板部61は円弧断面を有し、引っ掛け部62は本管10の内周直径に合う円弧断面を有する。 【0016】 縦板部61の両側面63、63には、中間部および下端部に、内筒3の軸方向に摺動する2対のピン52、52に対応して、内筒3の軸方向を向いた係合面を有する係合凹所64、64が上下に形成されている。係合凹所64は、縦板部61の外壁面に連通した入口部65および上方に延長し係合面を有するスライド部66からなる逆L字断面形状を呈する。また、両側面63、63の上端部には、軸溝53、53に軸支される支軸67、67が突設されている。 【0017】 接続装置1を用いた分岐管14の接続作業を説明する。 (イ)本管10の開口11に環状シール部材23を取り付けたフランジ2の鍔部22を当てがう。 (ロ)固定具6は、締め付け輪4を内筒3のネジ32に螺合させ、且つ、図2に示す如く、支軸67、67を内筒3の軸溝53、53に引っ掛けて吊るしておく。 【0018】 (ハ)内筒3の下端部31を支管部21に差し込むとともに、係合凹所64、64の入口部65、65に、2対のピン52、52を嵌め込む。この際に、引っ掛け部62、62は、本管10の内周面15の下方に設定される。 (ニ)締め付け輪4を回転させて、締め付ける。これにより、2対のピン52、52は、係合凹所64、64のスライド部66、66に嵌まり込む。 (ホ)締め付け輪4をさらに回転させると、引っ掛け部62、62は、本管10の内周面15に引っ掛かり、つづいて内筒3と本管10との間にフランジ2が締結される。 【0019】 これによりつぎの効果がある。 (a)組み付け作業において、固定具6、6が本管10内に脱落することを防止できるので、作業効率がよい。 (b)締め付け輪4の締結により、2対のピン52、52は、スライド部66、66に嵌まり込むため、略L字形の固定具6を拡開する方向に曲げ応力が加わっても、ピン52、52と、係合凹所64、64との係合が外れることが確実に防止できる。 【0020】 図4?図6は参考例1を示す。参考例1では、2対のピン52、52を固定具6の縦板部61の両側面に上下2段に設け、逆L字断面形状を呈する係合凹所64を縦溝51の両溝縁に設けている。この場合は、図5に二点鎖線で示す如く上側の一対のピン52、52を、上側の一対の係合凹所64、64に引っ掛けておき、固定具6、6の脱落を防止しながら上記締結作業を実行する。 【0021】 図7は参考例2を示す。参考例2では、固定具6の縦板部61の外側面に多数の下方向きピン52を列設している。この場合は、縦溝51の底壁面に対応する上下方向の係合穴を設ける。 【0022】 図8は参考例3を示す。参考例3では、固定具6の縦板部61の外側面に逆L字形断面を有する係合条68を設けている。この場合は、縦溝51の底壁面に対応したL字形断面を有する係合条を設ける。これら参考例1?3においても、第1実施例と同様の作用、効果を有する。 【0023】 図9は第2実施例を示す。この実施例では、内筒3の下端に固定引っ掛け部35を設け、固定具6と1つとしている。この実施例では、図9の(イ)に示す如く、まず内筒3を傾斜させて固定引っ掛け部35を本管10の内周面15に引っ掛け、つぎに図9の(ロ)に示す如く、内筒3を立てて固定具6の引っ掛け部62を本管10の内周面15に引っ掛ける。 【0024】 【図面の簡単な説明】 【図1】 第1実施例にかかる分岐管の接続装置の組付図である。 【図2】 第1実施例にかかる内筒および固定具の斜視図である。 【図3】 第1実施例にかかる分岐管の接続装置の斜視図である。 【図4】 参考例1にかかる固定具の斜視図である。 【図5】 参考例1にかかる分岐管の接続装置の正面断面図である。 【図6】 参考例1にかかる分岐管の接続装置の正面断面図である。 【図7】 参考例2にかかる固定具の斜視図である。 【図8】 参考例3にかかる固定具の斜視図である。 【図9】 第2実施例にかかる固定具の断面図である。 【符号の説明】 1 分岐管の接続装置 2 フランジ 3 内筒 4 締め付け輪 5 被係合部 6 固定具 10 本管 11 開口 14 分岐管 15 内周面 21 支管部 22 鍔部 35 固定引っ掛け部 36 長い固定引っ掛け部 37 短い固定引っ掛け部 51 縦溝 52 ピン 61 縦板部 62 引っ掛け部 64 係合凹所 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2010-11-04 |
出願番号 | 特願平8-123669 |
審決分類 |
P
1
41・
536-
Y
(F16L)
P 1 41・ 853- Y (F16L) P 1 41・ 121- Y (F16L) P 1 41・ 856- Y (F16L) P 1 41・ 537- Y (F16L) P 1 41・ 851- Y (F16L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 秀明 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
冨岡 和人 長崎 洋一 鈴木 敏史 稲垣 浩司 |
登録日 | 2003-02-07 |
登録番号 | 特許第3396128号(P3396128) |
発明の名称 | 分岐管の接続装置 |
代理人 | 長谷 真司 |
代理人 | 石黒 健二 |
代理人 | 長谷 真司 |
代理人 | 石黒 健二 |