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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1229180
審判番号 不服2009-2527  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-05 
確定日 2010-12-24 
事件の表示 特願2003-194898「多層プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月 3日出願公開、特開2005- 32905〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成15年7月10日の出願であって、平成19年10月19日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年12月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年2月5日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされ、同年2月23日に手続補正書が提出されたものである。

[2]平成21年2月23日付け手続補正についての補正の却下の決定
<結論>平成21年2月23日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

<理由>
(1)補正の内容、目的
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1において、導電性接続ピンが、「ピン接続用半田を介して接続される」ことを限定し、ピンパッドには、「スズ層、又は、貴金属の単層が被覆され、前記ピン接続用半田が設けられ」ることを限定するとともに、請求項6を削除する補正を含むものであり、該補正は、特許請求の範囲の減縮、及び請求項の削除を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
そこで、上記補正後の本願請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかどうかを検討する。

(2-1)補正後の本願発明
補正後の本願請求項1に係る発明は、平成21年2月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載される事項により特定される以下のとおりのものである。

「スルーホールを有するコア基板上に、両面もしくは片面に層間絶縁層と導体層が形成されて、バイアホールもしくはスルーホールを介して電気的な接続が行われ、表面又は裏面に形成されたピンパッドに外部端子として導電性接続ピンがピン接続用半田を介して接合される多層プリント配線板において、
前記ピンパッドには、スズ層、又は、貴金属層の単層が被覆され、前記ピン接続用半田が設けられ、
前記導電性接続ピンは、裁頭円錐形状の接合部と前記接合部の円錐底部に突設された軸状の先端部とからなり、該接合部裁頭円錐形状の裁頭部の面積(A1)は、該円錐底部の面積(B1)に対して、0.01≦(A1/B1)<1.00であり、
前記導電性接続ピンの隣り合う距離は、3.0?1.0mmであることを特徴とする多層プリント配線板。」(以下、「補正後の本願発明1」という。)

(2-2)引用刊行物発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2001-177038号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0030】図1は本発明のリードピン付き配線基板およびリードピン付き電子部品を実施の形態の一例を示す、有機材料系のPGA型の配線基板を例にとった断面図である。また、図2?図5はそれぞれ本発明のリードピン付き配線基板およびリードピン付き電子部品に用いるリードピンの形状を示す側面図である。
【0031】これらの図において、……
……リードピン付き配線基板2は配線基板4にネイルヘッド型のリードピン5がろう付け接合されて構成されている。
【0032】6は配線基板4を構成するコア基板、7はコア基板6の表面に積層された絶縁膜であり、これらコア基板6と絶縁層7とにより配線基板4の絶縁基板を構成している。
8はコア基板6の内部に形成された貫通導体としてのスルーホール導体、9はコア基板6および絶縁層7の表面あるいは層間に形成された所定パターンの配線導体層、10は異なる層間の配線導体層9同士を電気的に接続する貫通導体としてのビア導体である。スルーホール導体8はコア基板6の上下面に形成された配線導体層9同士を電気的に接続している。……
【0033】……
……12は配線基板4の下面に配線導体層9と電気的に接続されて形成されたランドであり、このランド12にはリードピン5の頭部が半田等のろう材14によりろう付けされている。」(第5頁第7欄第3-35行)

(b)「本発明のリードピン付き配線基板2およびリードピン付き電子部品1は、上記の構成において、リードピン5の頭部5aの少なくとも頭頂側の周縁5cにC面またはR面を設けたことを特徴とするものである。
本発明にかかるリードピン5においては、……図2に示すように頭部5aの頭頂側の周縁5cのみにC面を設けたり、…種々の形態とすることができる。」(第5頁第7欄第42行-第8欄第5行)

(c)「以上のような本発明に用いるリードピン5の頭部5aの頭頂側の周縁5cに設けるC面としては、充分な接合強度を得るためにろう材14と頭部5aとの接合面積を確保するという点からは、また、斜め方向のの引っ張りにより生じるモーメントから接合材に加わる応力を効果的に分散して垂直引っ張りと同等の接合強度が得やすいという点からは、頭部5aの頭頂側よりこの頭部5aの厚みの2/3以内の大きさで、かつ軸部5bに対して50?80°の角度を有するものであることが望ましい。」(第5頁第8欄第19-28行)

(d)「以上により、本発明のリードピン付き配線基板2およびリードピン付き電子部品1によれば、そのリードピン5を外部電気回路基板のソケットに挿抜したり、15?35°の斜め方向の引っ張り力がリードピン5に加わったりした場合に、リードピン5の軸部5bに加えられた斜め方向の外力に起因したモーメントによるろう材14との接合部への応力の集中が大幅に緩和されると同時に、リードピン5の頭部5aの頭頂側の周縁5cにおけるろう材14の分量が多くなるために、ろう材14にかかる応力を効果的に分散することができる。」(第6頁第10欄第7-16行)

(e)図2には、頭部と前記頭部の底部に突設された軸部とからなるリードピンが示されており、前記頭部は、その頭頂側の周縁部にC面が設けられ、「裁頭円錐形状」となっている様子が示されている。

上記記載事項(a)-(e)によれば、引用刊行物1には、
「スルーホールを有するコア基板上に、両面に層間絶縁層と導体層が形成されて、バイアホールもしくはスルーホールを介して電気的な接続が行われ、下面に形成されたランドに外部端子としてリードピンが半田を介して接合される多層プリント配線板において、
前記ランドには、前記半田が設けられ、
前記リードピンは、裁頭円錐形状の頭部と前記頭部の円錐底部に突設された軸部とからなる多層プリント配線板。」の発明(以下、「引用刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

(2-3)対比・判断
本願補正発明1と引用刊行物1発明とを対比すると、引用刊行物1発明における「下面」、「ランド」、「半田」、「リードピン」、「頭部」、「軸部」は、それぞれ、本願補正発明1における「表面又は裏面」、「ピンパッド」、「ピン接続用半田」、「導電性接続ピン」、「接合部」、「軸状の先端部」に相当する。

よって、両者は、
「スルーホールを有するコア基板上に、両面に層間絶縁層と導体層が形成されて、バイアホールもしくはスルーホールを介して電気的な接続が行われ、表面又は裏面に形成されたピンパッドに外部端子として導電性接続ピンがピン接続用半田を介して接合される多層プリント配線板において、
前記ピンパッドには、前記ピン接続用半田が設けられ、
前記導電性接続ピンは、裁頭円錐形状の接合部と前記接合部の円錐底部に突設された軸状の先端部とからなる多層プリント配線板。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明1では、前記ピンパッドには、スズ層、又は、貴金属層の単層が被覆されるのに対し、引用刊行物1発明では、そうではない点。

(相違点2)
前記導電性接続ピンについて、本願補正発明1では、接合部裁頭円錐形状の裁頭部の面積(A1)は,円錐底部の面積(B1)に対して、0.01≦(A1/B1)<1.00であるのに対し、引用刊行物1発明では、そのような限定がない点。

(相違点3)
本願補正発明1では、前記導電性接続ピンの隣り合う距離は、3.0?1.0mmであるのに対し、引用刊行物1発明では、そのような限定がない点。
上記相違点について検討すると、
・(相違点1)について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-174250号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、
「有機樹脂絶縁層の一部を開口して露出させた導体回路に、導電性接着剤を介在させて導電性接続ピンを取り付けるプリント配線板において、
前記露出した導体回路上に、スズ、又は貴金属の単層の金属層を施して導電性接着剤を介在させて導電性接続ピンを取り付けたことを特徴とするプリント配線板。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)と記載されるとともに、
【図18】には、前記単層の金属層として、それぞれ、スズ、金、銀を設けた実施例1-3のものが、ニッケル層-金層を設けた比較例のものよりも電圧降下量が低いことが示されており、同様の目的で、引用刊行物1発明において、ピンパッド上にニッケル層-金層ではなく、スズ層、又は金、銀のような貴金属層の単層を設けることは当業者が容易になしえたことである。

(相違点2)について
引用刊行物1発明におけるリードピン(「導電性接続ピン」)も、裁頭円錐形状の接合部とすることにより、接合部ないし接合材に発生する応力を分散させ、ピン実装後の接合強度を得る(上記記載事項(d)参照)という点で、本願補正発明1と共通するものであり、接合部裁頭円錐形状の裁頭部の面積(A1)と円錐底部の面積(B1)との比(A1/B1)をどの程度とするかは、所望の強度に応じて決定すべき設計的な事項にすぎない。
また、上記記載事項(c)によれば、引用刊行物1発明と本願補正発明1とが(A1/B1)について、重複する範囲を有していることも明らかである。

(相違点3)について
PGA(ピン・グリッド・アレイ)パッケージにおいて、ピンのピッチを2.54mm、1.27mmとしたものは、通常のものであり、また、ピッチを1mm以下に狭くすると、ピン立てが困難になることも周知の事項である(下記周知例参照)。よって、引用刊行物1発明において、ピンのピッチ、すなわち、導電性接続ピンの隣り合う距離を3.0?1.0mmと設定することも当業者が適宜なしえた事項にすぎない。
(周知例)特開平6-318666号公報
「PGAタイプのパッケージでは、…ピンのピッチとしては、2.54mm(100mil)、1.27mm(50mil)が従来までの主流となっている。」(【0004】)、
「ところが、ファイン化の一貫としてピンのピッチを1.0mm以下に狭くすると、ピン立てや…を精度良く行うことが難しくなり、」(【0006】)

そして、本願補正発明1が、引用刊行物1、2の記載及び周知技術からは予想しえない相乗的効果を奏するものとも認められない。

なお、審判請求人は、審尋回答書において、「本願発明は、導電性接続ピンの接合部は裁頭円錐形状に形成されることにより、導電性接続ピンとピンパッドとの接続面積を拡大させている。これに対して、引用文献4(上記引用刊行物2)では、接合部は円形状であり、接続面積は限定される。ここで、本願発明では、単層の貴金属層、スズ層が形成されたピンパッド面によって半田濡れ性を向上させることで、接続面積の拡大と併せて、電気的接続信頼性の改善という相乗効果を実現している。
引用文献4は接合部は円形形状であり、本願発明の作用・効果を示唆しておらず、引用文献4、及び、引用文献4と他の引用文献とを組み合わせることができたとしても、本願発明は容易に案出し得ない。」と主張しているが、「導電性接続ピンの接合部は裁頭円錐形状に形成される」ことにより、導電性接続ピンとピンパッドとの接続面積が拡大し、接合強度が得られることは、引用刊行物1発明自体が内在する作用・効果であり(上記記載事項(c)参照)、相乗効果であると主張する上記の点は、上記引用文献4の記載事項を引用刊行物1発明に適用した場合、予想される範囲内の事項にすぎない。
(3)まとめ
よって、補正後の本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1、2記載の発明及び周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明について
(1)本願発明
平成21年2月23日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-6に係る発明は、平成19年12月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりである。

「スルーホールを有するコア基板上に、両面もしくは片面に層間絶縁層と導体層が形成されて、バイアホールもしくはスルーホールを介して電気的な接続が行われ、表面又は裏面に形成されたピンパッドに外部端子として導電性接続ピンが導電性接着剤を介して接合される多層プリント配線板において、
前記導電性接続ピンは、裁頭円錐形状の接合部と前記接合部の円錐底部に突設された軸状の先端部とからなり、該接合部裁頭円錐形状の裁頭部の面積(A1)は、前記円錐底部の面積(B1)に対して、0.01≦(A1/B1)<1.00であり、
前記導電性接続ピンの隣り合う距離は、3.0?1.0mmであることを特徴とする多層プリント配線板。」(以下、「本願発明1」という。)

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1(特開2001-177038号公報)、同2(特開2003-174250号公報)には、上記[2](2-2)(2-3)に記載のとおりの事項が記載されている。

(3)対比・判断
本願発明1を特定するのに必要な事項をすべて含み、さらに具体的に限定したものに相当する本願補正発明1が、上記[2](2-3)のとおり、引用刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由で、引用刊行物1、2に記載された発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-08 
結審通知日 2010-10-12 
審決日 2010-11-05 
出願番号 特願2003-194898(P2003-194898)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 智子藤原 敬士板谷 一弘  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 鈴木 正紀
田中 永一
発明の名称 多層プリント配線板  
代理人 田下 明人  

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