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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F |
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管理番号 | 1229512 |
審判番号 | 不服2008-22986 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-08 |
確定日 | 2011-01-05 |
事件の表示 | 特願2004-309740「ディスプレイ装置の導線端子構造およびそれを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 72286〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成16年10月25日(パリ条約による優先権主張 2004年9月1日、アメリカ合衆国)に特許出願したものであって、平成20年1月30日付けで手続補正がなされたが、同年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされた後、当審において、平成22年2月2日付けで拒絶理由が通知され、同年6月9日付けで手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成22年6月9日付け手続補正後の特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「基板上のディスプレイ領域とボンディング領域にまたがって形成される第三導電部材、 前記基板と前記第三導電部材を覆う絶縁層、 前記ディスプレイ領域にて前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層に形成された第一のコンタクトホールを介して前記第三導電部材に電気接続された第一導電部材、 前記ボンディング領域にて前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層に形成された第二のコンタクトホールを介して前記第三導電部材に電気接続された第二導電部材、 前記第一導電部材及び前記ディスプレイ領域上の前記第三導電部材を覆う平坦化層、および 前記第二導電部材を覆うように伸びるが、前記平坦化層は覆わず、前記平坦化層からは分離した導電層を含む、 ことを特徴とするディスプレイ装置の導線端子構造。」(以下「本願発明」という。) 3 刊行物の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-167258号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある。 (1)「【請求項1】第1の基板と第2の基板に挟まれた液晶層とカラーフィルタ層とを有し、 前記第1の基板上には複数のゲート配線と、前記複数のゲート配線と交差しマトリクス状に配置された複数のドレイン配線と、前記ゲート配線と前記ドレイン配線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタを有し、前記第1の基板と前記第2の基板がその外周部をシール材により接着され、少なくとも前記第1の基板と前記第2の基板の液晶層側の最表面に配向膜を有する液晶表示装置において、 前記第1の基板上において前記薄膜トランジスタと前記第1の基板に形成された配向膜との間に形成された有機膜を有し、該有機膜は前記シール材の領域で除去され、前記シール材は前記第1の基板の無機絶縁膜に対して接着され、かつ前記第2の基板の有機材料に対して接着されていることを特徴とするアクティブマトリクス型液晶表示装置。」 (2)「【0017】 【発明の実施の形態】本発明の特徴を示す代表的な構造を、以下実施例により説明する。 【0018】(実施例1)図1は本発明の一実施例の液晶表示装置に係る映像信号線(ドレイン線)側外周部の断面図、図2は液晶表示装置の画素部の平面図、図3は液晶表示装置の画素部の断面図、図4は液晶セルの平面構成図、図5は図4に示した表示パネルと外部回路を接続した状態を示す図である。ここで、図1は図4の平面構成図の1-1’として一点鎖線で示した切断線の断面図で、液晶セルの外周部における1本の映像信号(ドレイン)線側の端子配線Tdにおける断面図である。 【0019】まず、画素部の構成について図2を用いて説明する。2本の映像信号線DLとゲート配線GLに囲まれた領域が画素を構成する。映像信号線DLとゲート配線GLを覆ってマトリクス状に共通電極CPTが構成されている。CPTは、金属材料で構成してもよい。また透明電極、例えばITO、IZO、ITZO等で構成することにより実質的な光透過領域の向上を図ることができる。本実施例では、例えばITOで構成した。ポリシリコン層PSIはコンタクトホールCNT1により映像信号線DLと接続し、ゲート配線GLから延在したゲート電極を越え、コンタクトホールCNT1によりソース電極SMに接続されている。ソース電極SMはさらに、コンタクトホールCNT2により画素電極SPTに接続されている。SPTは、金属材料で構成してもよい。また透明電極、例えばITO、IZO、ITZO等で構成することにより実質的な光透過領域の向上を図ることができる。本実施例では、例えばITOで構成した。すなわち本実施例ではCPTとSPTはITOにより同一レイヤで構成した。ゲート配線GLと平行に共通配線CLを有し、該CLはコンタクトホールCNT1により共通金属電極CMに接続され、さらにコンタクトホールCNT2により共通電極CPTに接続される。これにより、共通配線CLから共通電極CPTへの共通電位が供給される。 【0020】図3に画素部の断面構成を示す。図2の3-3’間の領域である。図では丸印を付けているが、これは図の見やすさの便宜のためである。本明細書中の他の部分でも、図中の切断部を示す丸印の表記は文章では省略した。 【0021】3-3’間は、ドレイン配線DL?TFTのポリシリコン層PSI?ソース電極SM?画素電極SPT?主透過部?共通電極CPT?共通金属電極CM?共通配線CLの断面となる。図3での左側はTFTの断面に相当する。ドレイン配線DLがTFTの一方の電極としてのPSI(n+)層にCNT1により接続され、ソース電極SMがTFTの他方の電極としてのPSI(n+)層にCNT1により接続されている。ゲート配線層によりゲート電極GLがゲート絶縁膜GI上に構成されたいわゆるMOS型TFTであり、図3の構造は特にトップゲート型あるいはプレーナー型と称される構造である。ただし、該構造に特に限定する物ではない。 【0022】歪点約670℃の無アルカリガラス基板GLS1上に膜厚50nmのSiN膜と膜厚120nmのSiO_(2)膜からなる下地絶縁膜ULSが形成されている。 【0023】下地絶縁膜ULS上にポリシリコン層PSIがあり、その上にSiO_(2)からなるゲート絶縁膜GIがある。ゲート絶縁膜GI上には前記ゲート電極があり、該ゲート電極を覆って層間絶縁膜ILIが構成されている。層間絶縁膜ILI上には金属からなるドレイン配線DLが構成され、例えばTi/Al/Tiのように3層金属膜よりなる。ドレイン配線DLはゲート絶縁膜GI及び層間絶縁膜ILIに開けられた第1のコンタクトホールCNT1を通じて、低温ポリシリコンPSIのリンを不純物としてドープされた高濃度n型層PSI(n+)に接続されている。該高濃度n型層PSI(n+)は導電性が高く、擬似的に配線部として働く。一方、MoあるいはMoWのような金属膜よりなるゲート配線GL下のPSIはボロンを不純物としてドープされたp型層PSI(p)となっており、いわゆる半導体層として働き、ゲート配線GLにON電位で導通状態、OFF電位で非導通状態となるスイッチング動作を示す。 【0024】ゲート配線GLにオン電圧が印加された場合、ゲート配線GL下部でゲート絶縁膜GI下部であり、ボロンを不純物としてドープされたp型層PSI(p)のゲート絶縁膜GI界面のポテンシャルが反転してチャネル層が形成され、n型化されTFTにオン電流が流れ、結果的にソース電極SMへ電流が流れ液晶容量が充電される。 【0025】上記ゲート配線GLを覆うようにSiO2からなる層間絶縁膜ILIが形成され。さらにドレイン配線DLの上層には膜厚200nmのSiNからなる保護絶縁膜PASと膜厚2μmのアクリル系樹脂を主成分とする有機保護膜FPASにより被覆されている。有機保護膜FPAS上では、インジウム‐スズ酸化物(ITO)よりなる共通電極CPT及び画素電極SPTが形成されている。画素電極SPTは有機保護膜FPASおよび保護絶縁膜PASに設けられたコンタクトホールCNT2によりソース電極SMと接続されている。 ・・・ 【0034】次に液晶パネルの概観の平面構造について説明する。図4は上下のガラス基板GLS1、GLS2を含む表示パネルのマトリクス(AR)周辺の要部平面を示す図である。このパネルの製造では、小さいサイズであればスループット向上のため1枚のガラス基板で複数個分のデバイスを同時に加工してから分割し、大きいサイズであれば製造設備の共用のためどの品種でも標準化された大きさのガラス基板を加工してから各品種に合ったサイズに小さくし、いずれの場合も一通りの工程を経てからガラスを切断する。 【0035】図4は後者の例を示すもので、上下基板GLS1、GLS2の切断後を表している。いずれの場合も、完成状態では外部接続端子群Tg、Tdが存在する(図で上辺)部分はそれらを露出するように上側基板GLS2の大きさが下側基板GLS1よりも内側に制限されている。端子群Tg、Tdはそれぞれ後述するTFTガラス基板GLS1上で表示部ARの左右に配置された低温ポリシリコンTFTの走査回路GSCLへ供給する電源及びタイミングデータに関する接続端子、表示領域ARの上部でTFTガラス基板GLS1上に低温ポリシリコンTFTのドレイン分割回路DDCへの映像データあるいは電源データを供給するための端子Tdであり、引出配線部を集積回路チップCHIが搭載されたテープキャリアパッケージTCP(図5)の単位に複数本まとめて配置されている。各群のマトリクス部からTFTガラス基板上のドレイン分割回路DDCを経て外部接続端子部に至るまでの引出配線は、両端に近づくにつれ傾斜している。これは、パッケージTCPの配列ピッチ及び各パッケージTCPにおける接続端子ピッチに表示パネルのドレイン信号端子Tdを合わせるためである。 【0036】透明ガラス基板GLS1、GLS2の間にはその縁に沿って、液晶封入口INJを除き、液晶LCを封止するようにシールパターンSLが形成される。シール材は例えばエポキシ樹脂から成る。 【0037】図3の断面構造で示した配向膜ORI層は、シールパターンSLの内側に形成される。液晶LCは液晶分子の向きを設定する下部配向膜ORIと上部配向膜ORIとの間でシールパターンSLで仕切られた領域に封入されている。 【0038】この液晶表示装置は、GLS1側、GLS2側で別個に種々の層を積み重ね、シールパターンSLを基板GLS2側に形成し、下部透明ガラス基板SUB1と上部透明ガラス基板GLS2とを重ね合わせ、シール材SLの開口部として設けられる封入口INJから液晶LCを注入し、その後該封入口をエポキシ樹脂などで封止し、上下基板を切断することによって組み立てられる。むろん液晶の注入は吸引法あるいは滴下法などによっても良い。 【0039】図5は、図4に示した表示パネルに映像信号駆動ICを搭載したTCPとTFT基板GLS1上に低温ポリシリコンTFTで形成したドレイン分割回路DDCとの接続及びTFT基板GLS1に低温ポリシリコンTFTで形成した走査回路GSCLと外部とを接続した状態を示す上面図である。 【0040】TCPは駆動用ICチップがテープ・オートメイティド・ボンディング法(TAB)により実装されたテープキャリアパッケージ、PCB1は上記TCPやコントロールICであるTCON、その他電源用のアンプ、抵抗、コンデンサ等が実装された駆動回路基板である。CJはパソコンなどからの信号や電源を導入するコネクタ接続部分である。 【0041】上記のように、液晶表示装置の外周部はTFTガラス基板上に外部回路との接続端子TgあるいはTdが形成される領域である。またTFTガラス基板とCFガラス基板とを接続させるシール材が形成された領域である。 【0042】図1に図4の1-1’切断線での断面構造の一例を示し、特に外周部、すなわち有効表示領域外の領域を説明する。図1により図4のTFT液晶セルの接続端子Td、シール領域、画面領域に対する断面構造の一例を説明する。 【0043】GLS1とGLS2はシール材SELを介して組み合わされ、これらの間に液晶LCが封入されている。シール材は上下のガラス基板の接着材の役割を果し、有機系材料を印刷あるいは塗布し、紫外線あるいは熱で硬化させる。 【0044】GLS1がGLS2から外側に突き出した領域には、外部回路のテープキャリアパッケージTCPあるいはフレキシブルプリント基板FPCに最終的に接続される接続端子電極TMが形成されている。接続端子電極TMは、例えば図3の画素領域の断面構造での画素電極SPTに用いられているITOで構成する。ITOを初めとする透明導電体は、酸化物であるため酸化に対する安定性がほとんどの金属材料より高く、端子TMのように水分にさらされる端子の腐食性を向上できる材料である。図1の右側の領域は画素領域へ向かう領域である。図4の端子配線Tdは、図1においては、以下の電流経路を持つ配線の総称である。すなわち、端子電極TM、保護膜PAS及び有機保護膜FPAS膜に開口したコンタクトホールCNT2を経て、図3のドレイン配線DLと同一工程、材料で形成された金属配線(図1ではDLと記載)、層間絶縁膜ILIに開口された第1のコンタクトホールCNT1を経て、図3のゲート配線GLと同一工程、材料で構成された金属材料(図1ではGLと記載)、そして再度、第1のコンタクトホールCNT1を経てドレイン配線DLへ至る。 ・・・ 【0050】本実施例では、シール材SELによる接着強度を向上させるために以下のような構造を導入した。ガラス基板GLS1上に有機保護膜FPAS及び保護膜PASの積層膜に対する開口部CNT2を形成する。この開口部の形成方法は図3での第2のコンタクトホールCNT2と同じである。前記外周部の開口部CNT2の幅は少なくとも上下のガラス基板の接着強度を安定に保つ以上の幅とする。本実施例ではシール幅より開口部の幅を広く形成してある。シール材SELは層間絶縁膜ILIと接しており、接着強度が極めて高くなっている。さらに、この開口部の層間絶縁膜ILIの表面は、保護膜PASをF系ガスを用いたドライエッチングで加工された面であり、その清純度が高く形成されている。さらに、表面に極微少な形状の凹凸が形成されているため、接触面積の増加により極めて高い接着強度面となっておりその効果を高めている。微少であることによりボイド等の発生を生じずに、接着力向上の効果のみを奏することができる。このためには、微少な凹凸の高さの差が50nm以下であることが望ましい。 【0051】(3)の配線腐食防止に対しては、本実施例では配線腐食防止と(2)の接着強度増加を両立できる以下の構造を導入した。本実施例では、ドレイン配線DLの外部の端子TMへの引出しを、シール材SELより画素領域側で第1のコンタクトホールCNT1を介して一度ゲート配線GL層へ繋ぎ、少なくとも、シール材SEL領域を通過した後に再度第1のコンタクトホールCNT1を経由して、ドレイン配線DLと同一工程、材料で形成した金属材料領域を経て、第2のコンタクトホールCNT2により腐食に強いITO等の酸化物透明導電体で形成した端子電極TMに至る。すなわち、このようにドレイン配線DLをゲート配線GLと同一工程、材料で構成した配線へ一旦繋ぎ変えることで少なくともシール材SEL領域の下部の金属配線はその上部を層間絶縁膜ILIで保護されているので腐食に対する耐性が保たれている。むろん、腐食耐性向上の観点からは、ILI上にPASが延在しても良い。 【0052】また、端子部TMを一度DLと同層の金属材料を経由してゲート配線材料と接続した理由は、例えばGLの材料としてMoあるいはMoWのようなF系ガスのドライエッチングに対する選択比の小さい材料も適用を可能とするための汎用構造を目指したからである。上記のような選択比の小さい材料では、第2のコンタクトホールCNT2開口時にエッチングガスがGLにあたるとGLがエッチング除去されるので、該領域でGLの消失の危険がある。そこで、ドレイン配線DLと同一材料に繋ぎ変えることでこのような懸念を払拭した。むろん、ドライエッチング耐性の高い材料では、TMとGL層を直接接続しても良い。なお、ドレイン配線DLの配線材料が厚い場合には、シール外領域でのTMと接触するDLを十分保護するため、有機保護膜FPASもTM周囲に設けることが望ましい。本実施例では、DLの低抵抗化による遅延低減の観点からDLと同層の配線材料の厚さを500nm以上と厚く形成したため、保護膜PAS上に有機保護膜FPASも設けて被覆した。 【0053】また、端子電極TMが被覆される領域の下部の第1のコンタクトホールCNT1と第2のコンタクトホールはその開口部が重ならないように平面的に配置されている。これは、コンタクトホールCNT1とCNT2が重なることによる段差増大を回避し、TMの段差低減によるTCPとの接続抵抗の低減を図り、また十分な被覆形状の確保により端子電極TM下部のDLと同層の金属材料層の腐食を防止するためである。 【0054】上記のような、外周部におけるシール材SELと端子領域の構造により、シール材の接着強度が高く、端子配線の腐食のない液晶表示装置を提供できる。」 (3)「【0070】(実施例2)図12は実施例2におけるTFT液晶表示装置の外周部の断面図、図13は実施例2におけるTFT液晶表示装置の画素部の断面図である。実施例1に対する本実施例の構造上の特徴は、実施例1で形成されていたSiN膜によるTFTの保護膜PASが省略されている点にある。 【0071】SiNで形成された保護膜PASを削除することにより、プラズマCVD法により膜厚300nmのSiN膜である保護膜PASを形成工程、CF4を用いたリアクティブイオンエッチング法により加工した工程が省略できる。このため、TFT液晶表示装置の製造工程を簡略化でき、コストの低減と工程短縮による歩留り向上が実現できる。 【0072】上記構造変更を実現するには、層間絶縁膜ILIは実施例1のSiO2に対し、SiH4とNH3とN2の混合ガスを用いたプラズマCVD法で形成することが望ましい。これにより、図13のポリシコンPSIに水素を供給し結晶粒界のダングリングボンドを置換する役目を果していた実施例1の保護膜PASの役割を層間絶縁膜が果すことができる。 【0073】一方、外周部におけるシール材SELの接着性は層間絶縁膜ILI上に形成されている点で、実施例1と同様に高い状態を実現できる。また、端子部の腐食性は、端子電極TM下部のドレイン配線DL同一材料で構成されている金属材料は有機保護膜FPASで被覆されていることにより高いレベルに保たれている。」 (4)上記(1)ないし(3)を踏まえて図12をみると、有機保護膜FPASの表面が平たんであること、有機保護膜FPASがシール材SELの領域で除去されてシール幅より幅の広い開口部CNT2が形成されること、シール材SELの領域の下部には、ゲート配線GLと同一工程、材料で構成された金属材料GLからなる金属配線(以下、単に「金属配線GL」という。)が画素領域側と端子領域側にまたがって形成され、画素領域側及び端子領域側のそれぞれにおいて、層間絶縁膜ILIに開口された第1のコンタクトホールCNT1を介して層間絶縁膜ILI上に形成されたドレイン配線DL又はドレイン配線DLと同一工程、材料で形成された金属配線DL(以下、単に「金属配線DL」という。)につながり、金属配線DLは、有機保護膜FPAS膜に開口したコンタクトホールCNT2を介して端子電極TMにつながること、及び、層間絶縁膜ILIは金属配線GLとガラス基板GLS1を覆っていることがみてとれる。 なお、図12は、次のとおりである。 4 引用発明 (1)上記3(1)によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。 「第1の基板と第2の基板に挟まれた液晶層とカラーフィルタ層とを有し、前記第1の基板上には複数のゲート配線と、前記複数のゲート配線と交差しマトリクス状に配置された複数のドレイン配線と、前記ゲート配線と前記ドレイン配線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタを有し、前記第1の基板と前記第2の基板がその外周部をシール材により接着され、少なくとも前記第1の基板と前記第2の基板の液晶層側の最表面に配向膜を有する液晶表示装置において、前記第1の基板上において前記薄膜トランジスタと前記第1の基板に形成された配向膜との間に形成された有機膜を有し、該有機膜は前記シール材の領域で除去され、前記シール材は前記第1の基板の無機絶縁膜に対して接着され、かつ前記第2の基板の有機材料に対して接着されているアクティブマトリクス型液晶表示装置。」 (2)上記3(2)ないし(4)によれば、上記(1)の発明は、実施例2として、以下の構成を備えるものと認められる。 ア ゲート配線GLを覆うようにSiO_(2)からなる層間絶縁膜ILIが形成され、さらにドレイン配線DLはアクリル系樹脂を主成分とする有機保護膜FPASにより被覆されており、有機保護膜FPASの表面は平たんになっている。 イ 有機保護膜FPASがシール材SELの領域で除去されてシール幅より幅の広い開口部CNT2が形成されてシール材SELが層間絶縁膜ILIに接着される。 ウ シール材SELの領域の下部には、金属配線GLが画素領域側と端子領域側にまたがって形成され、画素領域側及び端子領域側のそれぞれにおいて、層間絶縁膜ILIに開口された第1のコンタクトホールCNT1を介して層間絶縁膜ILI上に形成されたドレイン配線DL又は金属配線DLにつながり、金属配線DLは、有機保護膜FPAS膜に開口したコンタクトホールCNT2を介して端子電極TMにつながり、層間絶縁膜ILIは金属配線GLとガラス基板GLS1を覆う。 (3)上記(2)における「ガラス基板GLS1」、「有機保護膜FPAS」及び「SiO_(2)からなる層間絶縁膜ILI」は、それぞれ、上記(1)の発明における「第1の基板」、「有機膜」及び「無機絶縁膜」に対応するものと認められる。 (4)以上によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。 「第1の基板と第2の基板に挟まれた液晶層とカラーフィルタ層とを有し、前記第1の基板上には複数のゲート配線と、前記複数のゲート配線と交差しマトリクス状に配置された複数のドレイン配線と、前記ゲート配線と前記ドレイン配線との交点に対応して形成された薄膜トランジスタを有し、前記第1の基板と前記第2の基板がその外周部をシール材により接着され、少なくとも前記第1の基板と前記第2の基板の液晶層側の最表面に配向膜を有する液晶表示装置において、前記第1の基板上において前記薄膜トランジスタと前記第1の基板に形成された配向膜との間に形成された有機膜を有し、該有機膜は前記シール材の領域で除去され、前記シール材は前記第1の基板の無機絶縁膜に対して接着され、かつ前記第2の基板の有機材料に対して接着されているアクティブマトリクス型液晶表示装置であって、前記第1の基板はガラス基板GLS1であり、前記有機膜はアクリル系樹脂を主成分とする有機保護膜FPASであり、前記無機絶縁膜はSiO_(2)からなる層間絶縁膜ILIであり、前記ゲート配線GLを覆うように層間絶縁膜ILIが形成され、前記ドレイン配線DLは前記有機保護膜FPASにより被覆され、該有機保護膜FPASの表面は平たんとなっており、該有機保護膜FPASが前記シール材SELの領域で除去されてシール幅より幅の広い開口部CNT2が形成されて前記シール材SELが前記層間絶縁膜ILIに接着され、前記シール材SELの領域の下部には、画素領域側と端子領域側にまたがって金属配線GLが形成され、画素領域側及び端子領域側のそれぞれにおいて、前記層間絶縁膜ILIに開口された第1のコンタクトホールCNT1を介して前記層間絶縁膜ILI上に形成された前記ドレイン配線DL又は金属配線DLにつながり、該金属配線DLは、前記有機保護膜FPAS膜に開口したコンタクトホールCNT2を介して端子電極TMにつながり、前記層間絶縁膜ILIは前記金属配線GLと前記ガラス基板GLS1を覆う、アクティブマトリクス型液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。) 5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「ガラス基板GLS1」は、本願発明の「基板」に相当し、引用発明の「『画素領域側と端子領域側にまたがって』『形成され』た『金属配線GL』」は、本願発明の「基板上のディスプレイ領域とボンディング領域にまたがって形成される第三導電部材」に相当する。 (2)引用発明の「『前記金属配線GLと前記ガラス基板GLS1を覆う』『層間絶縁膜ILI』」は、本願発明の「前記基板と前記第三導電部材を覆う絶縁層」に相当する。 (3)引用発明の「『画素領域側』において、『前記層間絶縁膜ILIに開口された第1のコンタクトホールCNT1を介して』『金属配線DL』につながる『層間絶縁膜ILI上に形成された』『ドレイン配線DL』」は、本願発明の「前記ディスプレイ領域にて前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層に形成された第一のコンタクトホールを介して前記第三導電部材に電気接続された第一導電部材」に相当する。 (4)引用発明の「『端子領域側』において、『前記層間絶縁膜ILIに開口された第1のコンタクトホールCNT1を介して』『金属配線DL』につながる『層間絶縁膜ILI上に形成された金属配線DL』」は、本願発明の「前記ボンディング領域にて前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層に形成された第二のコンタクトホールを介して前記第三導電部材に電気接続された第二導電部材」に相当する。 (5)引用発明の「『ドレイン配線DL』を『被覆』する『有機保護膜FPAS』」は、「シール材SELの領域で除去され」るものであるから、「シール材SELの領域」を境として画素領域側及び端子領域側のそれぞれに分けられるものと認められる。 しかるところ、引用発明における、画素領域側の「有機保護膜FPAS」は、「ドレイン配線DL」とともに「ガラス基板GLS1」を覆うものといえ、「有機保護膜FPASの表面は平たんとなって」いるから、画素領域側の「有機保護膜FPAS」は、本願発明の「前記第一導電部材及び前記ディスプレイ領域上の前記第三導電部材を覆う平坦化層」に相当する。 (6)本願発明の「前記第二導電部材を覆うように伸びるが、前記平坦化層は覆わず、前記平坦化層からは分離した導電層」に関し、本願明細書(平成22年6月9日付け手続補正後のもの。以下同じ。)に、「あるいは、図6dに示されるように、導電層120は、一部の導電部材106の上にだけ形成されている。」(【0028】)と記載されることに照らすと、本願発明の前記導電層は、第二導電部材の一部を覆っているものであってもよいと解される。 しかるところ、引用発明は、「(端子領域側において、前記層間絶縁膜ILI上に形成された)金属配線DLは、前記有機保護膜FPAS膜に開口したコンタクトホールCNT2を介して端子電極TMにつなが」るというものであって、「コンタクトホールCNT2」の位置において「端子電極TM」は「金属配線DL」を覆っている。 そして、引用発明は、「有機保護膜FPAS」が「前記シール材SELの領域で除去されて」「形成され」た「シール幅より幅の広い開口部CNT2」において「前記シール材SELが前記層間絶縁膜ILIに接着され」るものであって、該「端子電極TM」と画素領域側の「有機保護膜FPAS」との間には、「シール材SEL」が存在するから、該「端子電極TM」は、画素領域側の前記「有機保護膜FPAS」からは分離されているといえる。 よって、引用発明の「端子電極TM」は、本願発明の「前記第二導電部材を覆うように伸びるが、前記平坦化層は覆わず、前記平坦化層からは分離した導電層」に相当する。 (7)引用発明の「アクティブマトリクス型液晶表示装置」は、本願発明の「ディスプレイ装置」に相当し、引用発明の「該有機保護膜FPASが前記シール材SELの領域で除去されてシール幅より幅の広い開口部CNT2が形成されて前記シール材SELが前記層間絶縁膜ILIに接着され、前記シール材SELの領域の下部には、画素領域側と端子領域側にまたがって金属配線GLが形成され、画素領域側及び端子領域側のそれぞれにおいて、前記層間絶縁膜ILIに開口された第1のコンタクトホールCNT1を介して前記層間絶縁膜ILI上に形成された前記ドレイン配線DL又は金属配線DLにつながり、該金属配線DLは、前記有機保護膜FPAS膜に開口したコンタクトホールCNT2を介して端子電極TMにつなが」るとの構成は、「導線端子構造」といえるものであるから、引用発明は、本願発明の「ディスプレイ装置の導線端子構造」との構成を備える。 (8)以上によれば、引用発明は本願発明の構成をすべて備えるものであって、相違するところはないものと認められる。 (9)請求人は、平成22年6月9日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)において、本願発明では、平坦化層が第一導電部材及びディスプレイ領域上の第三導電部材「のみ」を覆うとは限定されておらず、引用発明の有機保護膜FPASがシール部材のところで途切れることで、その外側の部分が平坦化層でなくなるということはなく、端子電極TMが本願発明の平坦化層に相当する有機保護膜FPASを覆っているから、本願発明の「前記平坦化層は覆わず、前記平坦化層からは分離した導電層」を開示しない旨、及び、引用発明では、端子電極TMが有機保護膜FPASに乗り上げていることにより、本願明細書で挙げた先行技術と同様にして、本願発明が解決しようとする課題が発生し得る旨主張する。 しかし、本願発明では、平坦化層が第一導電部材及びディスプレイ領域上の第三導電部材「のみ」を覆うとは限定されないとしても、本願明細書及び図面において第二導電部材を平坦化層が覆うことは記載されていないのであるから、本願発明の「平坦化層」について、第二導電部材を覆うものであってもよいと解することはできない。 そうであれば、引用発明の端子領域側の有機保護膜FPASについて、本願発明の「平坦化層」に相当するものということはできない。 また、引用発明においては、端子領域側の有機保護膜FPASには、コンタクトホールCNT2が形成されて端子電極TMが金属配線DLとつながるようにされているのであって、本願明細書で挙げた先行技術のように、パターニングの際に、隣接する端子電極TM同士を短絡させるような不要な導電残部が残るようなエッジないし段差を形成する構成ではなく、本願発明が解決しようとする課題が発生し得ると解すべき根拠は認められない。 よって、請求人の上記各主張は採用できない。 6 小括 以上の検討によれば、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 7 付言 本願発明は、前記2のとおりであって、第二導電部材を平坦化層が覆うか覆わないかについて特定されるものではないが、平坦化層について、「前記第一導電部材及び前記ディスプレイ領域上の前記第三導電部材を覆う」ものとされること、本願明細書及び図面において第二導電部材を平坦化層が覆うことは記載されていないことに照らすと、本願発明においては、第二導電部材を平坦化層が覆わないものと解する余地もあるので、かかる見地から、念のため、以下に検討して付言する。 (1)前記5(5)のとおり、引用発明の「『ドレイン配線DL』を『被覆』する『有機保護膜FPAS』」は、「シール材SELの領域で除去」され、「シール材SELの領域」を境として画素領域側及び端子領域側のそれぞれに分けられるものであって、前記5(6)のとおり、引用発明は、「(端子領域側において、前記層間絶縁膜ILI上に形成された)金属配線DLは、前記有機保護膜FPAS膜に開口したコンタクトホールCNT2を介して端子電極TMにつなが」るというものであるから、引用発明の「(端子領域側において、前記層間絶縁膜ILI上に形成された)金属配線DL」は、「コンタクトホールCNT2」が「開口した」部分を除いて前記「有機保護膜FPAS膜」に覆われているものといえる。 (2)そうすると、前記5での検討に照らして、本願発明と引用発明とは、 「本願発明は、第二導電部材を平坦化層が覆わないものであるのに対して、引用発明は、コンタクトホールCNT2が開口した部分を除いて金属配線DL(第二導電部材)を有機保護膜FPAS(平坦化層)が覆うものである点」(以下「相違点」という。) で相違し、その余の点において一致するものと認められる。 (3)しかるところ、引用刊行物には、「なお、ドレイン配線DLの配線材料が厚い場合には、シール外領域でのTMと接触するDLを十分保護するため、有機保護膜FPASもTM周囲に設けることが望ましい。」(【0052】、前記3(2)を参照。)、「また、端子部の腐食性は、端子電極TM下部のドレイン配線DL同一材料で構成されている金属材料は有機保護膜FPASで被覆されていることにより高いレベルに保たれている。」(【0073】、前記3(3)を参照。)との記載がある。 上記記載は、端子電極TM下部の金属配線DLを高いレベルで保護するためには、金属配線DLが有機保護膜FPASで被覆されるのが望ましいことをいうものであるが、このことは、金属配線DLが有機保護膜FPASで被覆されることが必ずしも必要欠くべからざるものではないことを示唆するものといえる。 してみると、引用発明において、金属配線DLが有機保護膜FPASで覆われないようにし、これにより相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。 (4)請求人は、意見書において、引用刊行物の「なお、ドレイン配線DLの配線材料が厚い場合には、シール外領域でのTMと接触するDLを十分保護するため、有機保護膜FPASもTM周辺に設けることが望ましい」との記載事項は、有機保護膜FPAS(の全体)を設けるか設けないかを論じているものである旨主張する。 しかし、引用刊行物の【0052】及び【0073】の記載事項が、シール外領域における有機保護膜FPASの必要性を論じていることは、これらの記載自体から明らかであり、有機保護膜FPAS(の全体)を設けるか設けないかを論じている旨の請求人の上記主張には根拠がないから、採用できない。 (5)以上の検討によれば、本願発明を上記のとおり解したとしても、本願発明は、引用発明及び引用刊行物の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-02 |
結審通知日 | 2010-08-03 |
審決日 | 2010-08-23 |
出願番号 | 特願2004-309740(P2004-309740) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(G02F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右田 昌士 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
杉山 輝和 吉野 公夫 |
発明の名称 | ディスプレイ装置の導線端子構造およびそれを形成する方法 |
代理人 | 森田 耕司 |
代理人 | 山田 勇毅 |
代理人 | 大野 聖二 |