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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1229598
審判番号 不服2007-18700  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2002- 99055「生コンクリートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月15日出願公開、特開2003-292363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成14年4月1日の出願であって、平成18年10月25日付けで拒絶理由通知の起案がなされ、同年12月28日に意見書及び明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、平成19年5月29日付けで拒絶査定の起案がなされ、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年8月3日に明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、同年9月21日に審判請求書の手続補正書の提出がなされ、平成20年2月8日に上申書が提出され、平成22年1月5日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋の起案がなされ、同年3月8日に回答書の提出がなされたものである。

II.平成19年8月3日付けの手続補正についての補正却下の決定

II-1.補正却下の決定の結論
平成19年8月3日付けの手続補正を却下する。

II-2.理由
平成19年8月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という場合がある。)は、補正前の平成18年12月28日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲である、
「【請求項1】 コンクリート塊の破砕物全量と水と硬化性材料と砂とからなる生コンクリートの製造方法であって、コンクリート塊を破砕して得られた破砕物全量の粒度分布を測定する工程と、この粒度分布と予め設定されているJIS A 5308付属書表1の砂利及び砂の標準粒度における砂利と砂を、所定の細骨材率として表した所定の粒度分布とを比較する工程と、この比較に基づいて上記コンクリート破砕物に砂を添加して上記所定の粒度分布となるように調製する工程と、この砂を添加したコンクリート破砕物に所定量の水と硬化性材料とを混練する工程とからなることを特徴とする生コンクリートの製造方法。」を、
「【請求項1】 コンクリート塊の破砕物全量と水と硬化性材料と砂とからなる生コンクリートの製造方法であって、一回の生コンクリートの製造に必要な量のコンクリート塊を破砕することによってコンクリート破砕物を得る工程と、このコンクリート破砕物全量の粒度分布を測定する工程と、JIS A 5308付属書1の表2の砂利及び砂の標準粒度における砂利と砂の量を所定の細骨材率となるように設定した場合の骨材全体の粒度分布を表し、これを所定の粒度分布とする工程と、この所定の粒度分布と上記コンクリート破砕物全量の粒度分布とを比較する工程と、この比較に基づいて上記コンクリート破砕物に砂を添加して上記所定の粒度分布となるように調製する工程と、この砂を添加したコンクリート破砕物に所定量の水と硬化性材料とを混練する工程とからなることを特徴とする生コンクリートの製造方法。」と補正することを含むものである。
この請求項1に係る補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2及び第3号の規定を満たすことは明らかであるから、次に、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができものであるかについて検討する。

(1)引用・周知文献
(1-1)引用文献1
本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-130944号公報には、以下の事項が記載されている。
(1-1-1)「【請求項1】 廃コンクリート塊を粉砕した粉砕物と、セメントと、水とからなる生コンクリート。」(特許請求の範囲の請求項1)
(1-1-2)「【発明の実施の形態】・・・・・・本発明の生コンクリートは、廃コンクリート塊を粉砕した粉砕物と、セメントと、水とからなり、粉砕物はビル等の解体現場から集積された廃コンクリート塊を、・・・・・・クラッシャー(・・・・・・)によって粉砕したものである。クラッシャーによって粉砕された粉砕物は、粗い物、細かい物が混在するが、粗い物は粗骨材として、また細かい物は細骨材として全て本発明の生コンクリートの製造に使用する。・・・・・・。
図4は本発明の生コンクリート(・・・・・・)の製造のフロー(・・・・・・)を・・・・・・示す図である。・・・・・・本発明の生コンクリートを製造する場合は、・・・・・・ビル等の解体現場から集積されてきた廃コンクリート塊をクラッシャーで粉砕して粉砕物とし、この粉砕物を計量し、この粉砕物と水と袋セメントと袋入り粉混和剤の一定量をミキサーに投入して練混ぜ、1バッチ当たり0.3m^(3) 程度(油圧ショベル1杯分を想定)の本発明の生コンクリートを製造する」(【0009】?【0010】)
(1-1-3)「本発明は、ワーカビリティの点でも使用可能なものであることが判る。」(【0012】)
(1-1-4)「図13はジョークラッシャーの刃幅と廃コンクリート塊の粉砕物の粒度分布との関係を示す図であり、図中の刃巾8mm,5mm,3mmはクラッシャーの固定刃と可動刃の刃先間の隙間(巾)の最小値を、刃巾18mm、15mm、13mmは最大値を示す。この図において、ジョークラッシャーの刃幅を変えても、粉砕物の粒度分布に影響を与えないことが判る。」(【0017】)
(1-1-5)「図14は、同一強度の廃コンクリートを同一の刃巾条件で複数個粉砕したときの各粉砕物間の粒度のばらつきをみたものであり、図中の刃巾5mmはクラッシャーの固定刃と可動刃の刃先間の隙間(巾)の最少値を、刃巾15mmは最大値を示す。この図をみれば、各粉砕物間の粒度のばらつきはなく、同一強度の廃コンクリートを同一の刃巾条件で粉砕すれば、一定の粒度が得られ、安定した品質の粉砕物を供給できることが判る。また、粒度の分布も大径から小径にわたってまんベんなく分布しており、骨材として適した材料であることが判る。」(【0018】)
(1-2)引用文献2
本願出願前に頒布された刊行物である「笠井芳夫編 コンクリート総覧 1998年6月10日 技術書院 206頁」には、次の事項が記載されている。
(1-2-1)「(5)粒度(・・・・・・)
定義:・・・・・・骨材の細・粗粒が適当に混合していると・・・・・・ワーカビリティーのよい、良質のコンクリートが得られる。」(206頁3?6行)
(1-3)引用文献3
本願出願前に頒布された刊行物である「社団法人日本コンクリート工学協会編 コンクリート便覧(第二版) 1996年2月15日 技報堂出版株式会社 57頁」には、次の事項が記載されている。
(1-3-1)「2.3.3 粒度および最大寸法
・・・・・・
細骨材の粒度は、コンクリートの品質、特にワーカビリティーに大きくかかわる。」(57頁右欄9行?同頁右欄下から18行)
(1-3-2)「土木・建築学会やJISでは、このような粒度分布の標準的範囲を与えており、表-2.6は、JIS A5308(レディーミックスコンクリート)に示されている砂利及び砂の標準粒度である。図-2.4のように、標準粒度の範囲を示し、実測した粒度曲線がこの範囲内に収まっていれば、普通の場合、この骨材を用いて、ワーカビリティーなどの所用の品質を有するコンクリートが経済的に得られると考える。」(58頁左欄1?8行)
(1-3-3)表-2.6は、本願明細書の表1と同じものであることが見て取れる。
(1-4)引用文献4
本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-335950号公報には、次の事項が記載されている。
(1-4-1)「本発明の・・・・・・コンクリートで建設した構造物は、・・・・・・建設廃材となる。これをジョークラッシャー等適当な破砕機で破砕することができる・・・・・・破砕されたものは再生骨材としてコンクリート用として全量利用されるが、不足分の細骨材部分や粗骨材部分はバージン骨材を加えてコンクリートを製造する。」(【0018】)
(1-5)周知文献1
本願出願前に頒布された「社団法人日本コンクリート工学協会編 コンクリート便覧 昭和53年7月20日 技報堂出版株式会社 292?294頁」には、以下の事項が記載されている。
(1-5-1)「6.2 配合の基本的な考え方
・・・・・・
6.2.2 配合設計の手順
・・・・・・
(7)(6)により定めたスランプをもつコンクリートのうち、ワーカブルで、しかも、できるだけ単位水量が少ないと考えられる配合を(4)により求めた材料のデータを使って、標準配合表その他の資料により仮りに定める。なお、この仮りに定める割合は一つでなくてもよい。
(8)(7)で仮りに定めた配合について試し練りを行い、コンクリートが施工方法に適したワーカビリチーをもち、かつ、スランプ、強度、空気量・・・・・・などが(2)に定めた配合条件に合っているかどうかを確かめ、必要ならば、配合の修正と試し練りを繰り返して、最終的に示方配合(・・・・・・)を決定する。」(292頁4行?294頁23行)
(1-5-2)293頁の「表-6.2 コンクリートに要求される性能に関連する材料の性質および配合条件」をみると、「ワーカビリチー」は、「細粗骨材比」に関係することが見て取れる。

(2)対比・判断
引用文献1の(1-1-2)には、「ビル等の解体現場から集積されてきた廃コンクリート塊をクラッシャーで粉砕して粉砕物とし、この粉砕物を計量し、この粉砕物と水と袋セメントと袋入り粉混和剤の一定量をミキサーに投入して練混ぜ、・・・・・・・本発明の生コンクリートを製造する」と記載され、この「本発明の生コンクリート」とは同(1-1-1)からみて、「本発明の生コンクリートは、廃コンクリート塊を粉砕した粉砕物と、セメントと、水とからな」るものといえる。
この(1-1-2)の記載を、補正発明の記載ぶりに則して整理すると、引用文献1には、「廃コンクリート塊をクラッシャーで粉砕した粉砕物と水とセメントとからなる生コンクリートの製造方法であって、コンクリート塊を破砕することによってコンクリート破砕物を得る工程と、この粉砕物を計量し、このコンクリート粉砕物に水と袋セメントと袋入り粉混和剤の一定量をミキサーに投入して練混ぜる工程とを有する生コンクリートの製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
そこで、補正発明と引用発明を対比する。
(あ)補正発明の「コンクリート塊の破砕物」は、本願明細書の【0013】に「このコンクリート破砕物は・・・・・・ジョークラッシャ1Aによってコンクリート塊を破砕した」と記載されているから、クラッシャーによって破砕したものを含むといえ、また、「粉砕」(「粉みじんに細かくくだくこと」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])と「破砕」(「やぶりくだくこと」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])は同義とみることができる。
そうすると、引用発明の「廃コンクリート塊をクラッシャーで粉砕した粉砕物」は、補正発明の「コンクリート塊の破砕物」に相当することは明らかである。
また、引用発明の「セメント」及び「袋セメント」は、共に補正発明の「硬化性材料」に相当する。
(い)引用発明は「この粉砕物を計量し、このコンクリート粉砕物・・・・・・をミキサーに投入して練混ぜる工程」を有し「1バッチ当たり0.3m^(3) 程度(油圧ショベル1杯分を想定)の本発明の生コンクリートを製造」しているから、「コンクリート塊を粉砕することによってコンクリート粉砕物を得る工程」において、1バッチ、すなわち、一回の生コンクリートを製造に必要な量以上のコンクリート粉砕物を得ていることは明らかである。
(う)本願明細書の【0020】の「この砂を添加しているコンクリート破砕物を生コンクリートの骨材としてミキサーからなる混練部に投入すると共に、この骨材と共に生コンクリートを構成するための他の構成材料である水、セメント、混和剤を上記骨材に対して所定の配合割合でもって混練部に投入し、混練することによって生コンクリートを製造する。」との記載をみると、補正発明は、特定事項として明記されていないが「混和剤」を添加しているといえ、引用発明の「袋入り粉混和剤」は、補正発明の「混和剤」に相当する。

そうすると、両者は、
「コンクリート塊の破砕物と水と硬化性材料とからなる生コンクリートの製造方法であって、生コンクリートの製造に必要な量のコンクリート塊を破砕することによってコンクリート破砕物を得る工程と、コンクリート破砕物に所定量の水と硬化性材料と混和剤を混練する工程とを有する生コンクリートの製造方法。」で一致し、次の点で相違している。
相違点A:コンクリート塊を破砕するに当たって、補正発明は、一回の生コンクリートの製造に必要な量のコンクリート塊を破砕し、その全量から生コンクリートを製造しているのに対し、引用発明は、一回の生コンクリートを製造に必要な量以上のコンクリート塊を破砕し、生コンクリートを製造している点
相違点B:補正発明は、コンクリート破砕物全量の粒度分布を測定する工程と、JIS A 5308付属書1の表2の砂利及び砂の標準粒度における砂利と砂の量を所定の細骨材率となるように設定した場合の骨材全体の粒度分布を表し、これを所定の粒度分布とする工程と、この所定の粒度分布と上記コンクリート破砕物全量の粒度分布とを比較する工程と、この比較に基づいて上記コンクリート破砕物に砂を添加して上記所定の粒度分布となるように調製する工程と、この砂を添加して混練する工程とを有しているのに対し、引用発明はこれら工程を有していない点
そこで、これら相違点について検討する。
・相違点Aについて
破砕一回当たりのコンクリート塊の破砕量が多くなれば、そのために必要なエネルギーが増えたり破砕物を仮置きする場所も広くなり、無駄のないエネルギー消費や保管場所の制約などを考慮して、破砕量は適宜決め得るものといえるから、コンクリート塊を破砕するに当たって、補正発明において、一回の生コンクリートの製造に必要な量のみのコンクリート塊を破砕し、その破砕した全量を用いて、生コンクリートを製造することは当業者なら困難なくなし得ることである。
・相違点Bについて
まず、廃コンクリート塊の破砕物の粒度分布について、引用文献1の記載をみておくと、(1-1-5)に「同一強度の廃コンクリートを同一の刃巾条件で粉砕すれば、・・・・・・粒度の分布も大径から小径にわたってまんベんなく分布しており、骨材として適した材料であることが判る。」、(1-1-3)に「ワーカビリティの点でも使用可能なものである」と記載されているから、引用文献1には、コンクリート塊の破砕物は、粒度の分布も大径から小径にわたってまんベんなく分布しており、骨材として適しワーカビリティの点でも使用可能であることが記載されるといえる。また、(1-1-4)に「ジョークラッシャーの刃幅を変えても、粉砕物の粒度分布に影響を与えないことが判る。」と記載されているから、コンクリート塊の破砕物の粒度の分布はジョークラッシャーの刃幅の影響を受けないことを教示しているとみることができる。
ところで、周知文献1には、(1-5-1)に「6.2.2 配合設計の手順
・・・・・・仮に定めた配合について試し練りを行い、コンクリートが施工方法に適したワーカビリチーをもち、かつ、スランプ、強度、空気量・・・・・・などが(2)に定めた配合条件に合っているかどうかを確かめ、必要ならば、配合の修正と試し練りを繰り返して、最終的に示方配合(・・・・・・)を決定する。」と記載されていることからみて、生コンクリートの製造に当たって、所定のワーカビリチー、すなわち、ワーカビリティを得るために試し練りを繰り返し配合量の修正を行うといえる。そして、引用文献2には、(1-2-1)に「骨材の細・粗粒が適当に混合していると・・・・・・ワーカビリティのよい、良質のコンクリートが得られる。」と記載されているし、また、引用文献3には、(1-3-1)に「細骨材の粒度は、・・・・・・特にワーカビリティーに大きくかかわる」と記載されているし、さらに、周知文献1の(1-5-2)の「ワーカビリチー」は「細粗骨材比」に関係することが見て取れることからみても、周知文献1でいうワーカビリティを得るために骨材の粒度、特に細骨材の粒度を調整するものとみることが自然である。
そうすると、コンクリート塊の破砕物以外の骨材を使用しない引用発明においても、所定のワーカビリティーを得るために、必要に応じてコンクリート塊の破砕物である骨材の粒度を調整する必要があることは明らかであり、上述のとおりコンクリート塊の破砕物の粒度の分布はジョークラッシャーの刃幅の影響を受けないことを引用文献1は教示しているから、コンクリート塊の破砕物である骨材の粒度を調整するにあたっては別途骨材を添加すべきこと、この添加すべき骨材は、引用文献2の(1-2-1)及び引用文献3の(1-3-1)の記載からみて細骨材がよいという動機付けを、当業者ならば当然に得るものといえる。
ここで、コンクリート塊の破砕物である骨材の粒度を細骨材を添加することによって調整するとは、コンクリート塊を破砕して得られた破砕物全量の粒度分布を測定し、目的とする所定の粒度分布と比較し、目的とする所定の粒度分布とすべくバージンの細骨材つまり砂(細骨材をバージンとすることは、引用文献4の(1-4-1)の記載からも窺うことできる)を添加することに他ならず、引用文献3の(1-3-2)及び(1-3-3)によれば、この目的とする粒度分布として「JIS A 5308付属書表1の砂利及び砂」を所定のものとした骨材全体の粒度分布とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
そうすると、上記相違点Bに係る補正発明の特定事項をなすことは当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、上記相違点A及びBに係る補正発明の特定事項により、補正発明が格別な効果を奏するものともいえない。
よって、補正発明は引用文献1?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。

(3)補正却下のむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明
平成19年8月3日付けの手続補正書による補正は却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は平成18年12月28日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 コンクリート塊の破砕物全量と水と硬化性材料と砂とからなる生コンクリートの製造方法であって、コンクリート塊を破砕して得られた破砕物全量の粒度分布を測定する工程と、この粒度分布と予め設定されているJIS A 5308付属書表1の砂利及び砂の標準粒度における砂利と砂を、所定の細骨材率として表した所定の粒度分布とを比較する工程と、この比較に基づいて上記コンクリート破砕物に砂を添加して上記所定の粒度分布となるように調製する工程と、この砂を添加したコンクリート破砕物に所定量の水と硬化性材料とを混練する工程とからなることを特徴とする生コンクリートの製造方法。」

なお、以下の検討では、上記「JIS A 5308付属書1の表1」は、「JIS A 5308付属書表2」の誤記として扱う。

IV.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成18年10月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由2、すなわち、請求項1に係る発明に対して文献1-4を引用して、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない、というものである。

V.文献1?4の記載
文献1?4は、それぞれ、II-2の(1)において、それぞれ、引用文献4、1?3として提示した文献である。

VI.対比・判断
本願発明と補正発明とを対比すると、本願発明は、コンクリート塊について、補正発明の「一回の生コンクリートの製造に必要な量の」という特定事項を有しないものの他の特定事項は補正発明と実質的に同じである。
ところで、本願明細書の【0009】に、「予め、所定量、例えば一バッチ分の生コンクリートを製造するのに必要なコンクリート塊を破砕機によって破砕して」と記載されているように、本願発明は、上記「一回の生コンクリートの製造に必要な量の」という特定事項を有しているとみることができる。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、実質的に、上記相違点A及びBで相違し、その余の点で一致している。
そして、上述のとおり、相違点A及びBは文献1?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得るものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。

VII.むすび
以上のとおり、本願発明は、文献1?4に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-15 
結審通知日 2010-10-26 
審決日 2010-11-09 
出願番号 特願2002-99055(P2002-99055)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C04B)
P 1 8・ 575- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 史泰  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 中澤 登
深草 祐一
発明の名称 生コンクリートの製造方法  
代理人 山本 拓也  

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