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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1229727
審判番号 不服2009-765  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-08 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2003-546343「ディスク・ドライブ/記憶装置の適用分野におけるスピンドル・モータ用の高接着耐摩耗性コーティング」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月30日国際公開、WO03/44790、平成17年11月17日国内公表、特表2005-535273〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年11月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年11月16日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年10月8日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月9日に明細書についての補正がなされたものである。

2.平成21年2月9日付の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項19は、
「固定部材と回転可能部材とを相互接続する動圧油ベアリングであって、少なくとも1つの動作表面を有する動圧油ベアリングを含み、
前記の少なくとも1つの動作表面はその上に摩耗減少手段を有する、
モータ。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「動圧ベアリング」について「動圧油ベアリング」と、動圧ベアリングに用いられる流体を油に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-173944号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスピンドルモータ等に使用される気体動圧軸受に関し、起動、停止時の摩擦トルクを低減し、情報機器等の軸受に要求される頻繁な起動、停止に対しての耐久性、信頼性を有し、軸受の摺動による摩耗粉の発生が極めて少ないクリーンな環境で使用するのに好適な気体動圧軸受に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、ハードディスクドライブ装置(HDD)や磁気テープ記憶装置等の情報機器に使用されるスピンドルモータやドラムモータは高精度の回転性能と低消費電力化が要求され、その軸受に気体動圧軸受を採用する試みがなされている。しかしながら、気体動圧軸受は、起動、停止時に軸受の摺動面が接触しており、摺動面の材質、加工状態、或いは組立精度によっては摺動面の摩擦による摩耗が著しく進行し耐久性に問題を生じる場合が多い。」
・「【0005】このためこれらセラミックス材による摺動面に対しても潤滑剤の塗布又はコーティング等による表面の改質を行い高面圧条件下においても耐摩耗性の改善を計る等の試みがなされている。一般に気体動圧軸受にはその摺動面に液体潤滑剤である油又はグリース(以下「油」と称する)を薄く塗布する方法が最も簡便であり採用され易い。」
・「【0028】
【作用】本発明の気体動圧軸受においては、軸受の摺動面の材質が金属又はセラミックス材からなり、摺動面は厚さ200オングストローム以上の水素化アモルファスカーボン膜(a-C:H)を設けて、被覆されている。水素化アモルファスカーボン膜は緻密で天然ダイヤモンドに次ぐ硬度を有し、低い摩擦係数と耐摩耗性に優れた、潤滑膜として理想の特性を示す。」
・「【0057】7はアルミニウム材等よりなるハブで、該ハブ7の内周面7aにラジアルスリーブ4の外周が固着されている。該ハブ7の外周7bには磁気ディスクのスタックが載架できるようになっている。ハブ7の内周面7aの下端にはバックヨーク8の外周面8aが固着され、該バックヨーク8の内周面8bにはロータマグネット9の外周9aが固着されている。
【0058】ステータコア10は該ステータコア10の中央に設けられた貫通穴に貫通した主軸5の下部に固着され、該ステータコアの外周面10aは前記ロータマグネット9の内周面9bに対向している。該ステータコア10には界磁コイル11が巻き回されており、該界磁コイル11に適切な電流を供給することによりロータマグネット9が固着されたハブ7が回転駆動される。該ハブ7の回転駆動により、スラスト気体動圧軸受を構成する第1、第2のスラスト板2、3の対向面2a、3aとラジアルスリーブ4の両端面4b、4cの間に気体動圧が発生し、スラスト気体動圧軸受が形成される。また、ラジアル気体動圧軸受を構成するラジアル軸受部材1の外周面1aとラジアルスリーブ4の内周面4aとの間に動圧が発生し、ラジアル気体動圧軸受が形成される。」
・また、これらの記載と図6を参照すれば、主軸5とハブ7がラジアル気体動圧軸受で相互接続されているといえる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「主軸5とハブ7とを相互接続するラジアル気体動圧軸受であって、ラジアル軸受部材1の外周面1aとラジアルスリーブ4の内周面4aを有するラジアル気体動圧軸受を含み、
前記のラジアル軸受部材1の外周面1aとラジアルスリーブ4の内周面4aはラジアル軸受部材1の外周面1aとラジアルスリーブ4の内周面4aが低い摩擦係数と耐摩耗性に優れた、潤滑膜で被覆された、
スピンドルモータ。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「主軸5」はその機能・作用からみて、前者の「固定部材」に相当し、以下同様に「ハブ7」は「回転可能部材」に、「ラジアル気体動圧軸受」は「動圧ベアリング」に、「ラジアル軸受部材1の外周面1aとラジアルスリーブ4の内周面4a」は「少なくとも1つの動作表面」に、「低い摩擦係数と耐摩耗性に優れた、潤滑膜で被覆された」態様は「その上に摩耗減少手段を有する」態様に、「スピンドルモータ」は「モータ」に、それぞれ相当する。
したがって両者は、
[一致点]
「固定部材と回転可能部材とを相互接続する動圧ベアリングであって、少なくとも1つの動作表面を有する動圧ベアリングを含み、
前記の少なくとも1つの動作表面はその上に摩耗減少手段を有する、
モータ。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
「動圧ベアリング」に関して、動圧を発生させるために用いる流体が本件補正発明では、「油」であるのに対して、引用発明では、「気体」である点。

(4)相違点に対する判断
ディスクドライブ用のスピンドルモータにおいて、ラジアル動圧軸受に動圧を発生させるために用いる流体として油を用いることは周知技術である。(例.特開2001-295834号公報「【0005】動圧軸受の起動トルクを減らす為には、……油膜の……」との記載、特開平5-87126号公報「【0003】ヘリングボーン溝12A、12Bにはラジアル潤滑剤22が注油されている。」等の記載参照。)
そして、動圧軸受の流体として気体も油も騒音を減らすための軸受の流体として共通する機能を有するものであることから、ディスクドライブ用のスピンドルモータに関する引用発明においてもラジアル気体動圧軸受に動圧を発生させるために用いる流体として油を用いることで、本件補正発明の構成とすることは必要に応じて適宜設計し得る事項と認めざるを得ない。

また、本件補正発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項19に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項19に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「固定部材と回転可能部材とを相互接続する動圧ベアリングであって、少なくとも1つの動作表面を有する動圧ベアリングを含み、
前記の少なくとも1つの動作表面はその上に摩耗減少手段を有する、
モータ。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から動圧ベアリングに用いられる流体について「油」と限定する点を省いたものである。
そうすると本願発明と引用発明とは、実質的な相違点がない。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-23 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-16 
出願番号 特願2003-546343(P2003-546343)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 113- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 片岡 弘之
大河原 裕
発明の名称 ディスク・ドライブ/記憶装置の適用分野におけるスピンドル・モータ用の高接着耐摩耗性コーティング  
代理人 深見 久郎  
代理人 堀井 豊  
代理人 浅村 肇  
代理人 森 徹  
代理人 酒井 將行  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 浅村 皓  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  
代理人 田中 正  
代理人 荒川 伸夫  

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