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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1229741
審判番号 不服2009-7060  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-02 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2006-278596号「防爆部材付き除霜装置および冷却機器ならびに冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月24日出願公開、特開2008- 96034号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年10月12日の出願であって、平成21年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年4月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成21年4月28日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成21年4月28日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月28日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「可燃性冷媒を用いた冷却機器用の除霜装置であって、
発熱体と当該発熱体を収納するガラス管から構成されるガラス管ヒータと、
前記ガラス管ヒータを囲み、複数の開口部を有する金網とを備え、
前記開口部の個数を定義付ける前記金網のメッシュ数を20メッシュ以上で30メッシュ未満に設定し、
かつ、前記金網を構成する線材の線径を調整することにより、前記開口部それぞれの面積が(0.762×0.762)mm^(2)?(0.813×0.813)mm^(2)の範囲となるようにして、前記金網が前記可燃性冷媒の漏洩発生時の防爆部材となるように構成した防爆部材付き除霜装置。」と補正された。

上記の補正は、発明を特定するために必要な事項である「防爆部材」を、「金網」であることに限定し、同様に「メッシュ数」について、「30メッシュ未満」から、「20メッシュ以上で30メッシュ未満」と、その下限値を限定し、「開口部の最小寸法を0.813mm以下」から、「開口部それぞれの面積が(0.762×0.762)mm^(2)?(0.813×0.813)mm^(2)の範囲」とすることについて、最小寸法を面積としたうえで、その下限値を限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法における改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載内容
刊行物:特開2003-106743号公報

原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前に頒布された刊行物には、「冷蔵庫の除霜用ガラス管ヒータ」に関して以下の記載がある。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】圧縮機、凝縮器、減圧装置、蒸発器を冷媒管で環状につなぐと共に、内部に可燃性冷媒を充填した冷媒回路を備え、断熱箱体に形成された貯蔵室を冷却するために前記蒸発器を使用する冷蔵庫に組込まれ、前記蒸発器に付着した霜を溶かすためにこの蒸発器の近傍に配置される冷蔵庫の除霜用ガラス管ヒータにおいて、このガラス管ヒータを30メッシュ以上の金網で囲んだことを特徴とする冷蔵庫の除霜用ガラス管ヒータ。」

イ.「【0009】図4に示すようにガラス管ヒータ31は、ガラス管32、脱臭触媒33、ガラス管両端に取付けられるシリコーンゴム製のキャップ34、キャップの両端から導出されている配線35、ガラス管32表面から間隔C離してこのガラス管32の前面を囲む金網36で構成されている。尚、この図4には、金網の一部を切り欠いて示しており、各寸法や、金網に隠れた構成が判るように図示している。また、このキャップ34と金網36との間から空気が連通しないように、キャップ34と金網36との隙間は断熱性のパテなどで埋められている(図示せず)。
【0010】Aは金網36の外径、Bはガラス管32の外径で、図4や図5に示すように、ガラス管35から間隔Cをあけて金網36で覆っている。この金網36の線材の寸法(線径)を無視すると、A-Bが2Cとなる。
【0011】金網36は、JISで規定するSUS304で、線材の線径0.18mm(φ0.18)を用い、また、この金網36は60メッシュ(1インチあたり60本の線材がある網)のものを用いているので、開口率は約33%となる。しかし、30メッシュのものを用いた場合は開口率が62%となる。
【0012】本出願人は、このガラス管ヒータ31を用いて、各種実験を行った。次に、その実験結果について説明する。
実験1:ガラス管ヒータの表面温度に関する実験
図4や図5に示すように、金網36として、前述のようにJISで規定されたSUS304、60メッシュ、線径φ0.18のものを、金網外径20mm(φ20)の筒状に形成し、ガラス管32の外径10.5mm(φ10.5)を、間隔Cをあけて覆った(以下、試料Aという)。」

ウ.「【0035】これに対して、ヒータ着火の場合には、上述の特性から、20メッシュの金網では抵抗としての、役割にはならず、炎が金網36外に伝播してしまう。従って、着火源がヒータの場合には、金網36のメッシュの値は大きい方がよく、また、被覆容積(外径A)は、冷蔵庫に組み込むことを考慮すると、ある程度小さい方がよい。ちなみに今回の実験結果から、ガラス管ヒータを被覆する金網の外径Aは、20mm程度あれば、充分であることが明らかになった。」

エ.「【0043】また、本出願人は実験10として、ガラス管ヒータや金網の各部分の温度がどのくらいの温度であるかを測定した。実験結果として図7に示すように、金網のメッシュの値が大きいほど、すなわち、網の穴が小さいほどヒータ各部の温度が高くなっている。これは、網目の大小が抵抗となって、金網外部に流れ出る熱輻射の放出量を変えることになると同時に、エネルギーの放出量が、金網外部に形成される渦の大きさを左右させる。すなわち、図8のスケッチ図で示されるように、メッシュの値が大きいほど、金網36の外側に生成される渦の大きさが小さく、安定した渦が形成されるためエネルギー放出量を抑える効果は大きい。但し、図示しないがヒータの電圧上昇を早めると、20メッシュの場合には、エネルギーの放出量が強いため、渦の形成が乱れやすく、熱交換されないエネルギーによって着火伝播が起こった。このため、20メッシュ以下の金網の使用は不適であると考えられる。」

オ.「【0044】また、本出願人は実験11として、30メッシュの金網を用い、イソブタン濃度3.4Vol%の雰囲気下で、ガラス管を一部損傷させた状態で、ガラス管ヒータに印加する電圧を徐々に上げて、金網、ガラス管、ニクロム線の各温度を測定した。
【0045】測定結果として図9に示すように、「+」で示したニクロム線温度や「□」で示したガラス管上部表面温度に比べて、網掛けの「○」で示した金網上部表面温度や、網掛けの「△」で示した金網下部表面温度は、何れも下がっている。例えば、200secのときニクロム線温度は約400℃、金網上部表面温度は約200℃、金網下部表面温度は約150℃と、大幅に温度が低くなっている。これは前述した対流効果によるものと考えられる。
【0046】また、270?280sec付近、つまり、ニクロム線温度が約420?430℃付近で、金網やガラス管の温度が急激に上昇しているが、これは、イソブタンに着火があったためである。また、急激な上昇後はやや温度が下がり、徐々に温度が上昇しているのは、着火による金網外への伝播のないことを示しており、しかも、目視によっても金網外への伝播のないことが確認されている。」

カ.「【0057】また、この実施例では、金網の線材の線径を変えた例を説明していないが、線径を変え開口率を約33?62%に設定した金網を用いても良い。更に、開口率を約33?62%に設定したパンチングメタルを用いても、ほぼ同様な効果を得ることができると考えられる。」(下線部当審にて加入。)

キ.「【0058】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、蒸発器に付着した霜を溶かすためにこの蒸発器の近傍に配置される冷蔵庫の除霜用ガラス管ヒータにおいて、このガラス管ヒータを30メッシュ以上の金網で囲んだので、可燃性冷媒が漏れてガラス管ヒータに触れたとしても、燃焼がガラス管ヒータの表面と金網との間で抑えられ、炎が金網外に伝播するのが防止されるため、冷蔵庫での延焼を起きにくくすることができる。

以上の記載(ア.?キ.)及び図面の記載を総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「可燃性冷媒を用いた冷蔵庫の除霜用ガラス管ヒータにおいて、
ガラス管ヒータは、ニクロム線と当該ニクロム線を収納するガラス管から構成されるものであって、ガラス管ヒータを30メッシュ以上の金網で囲み、金網の線材の線径を変え開口率を約33?62%とし、可燃性冷媒が漏れたとしても、炎が金網外に伝播するのが防止される除霜用ガラス管ヒータ。」

3.発明の対比
本願補正発明と、引用発明とを対比すると、引用発明における「冷蔵庫の除霜用ガラス管ヒータ」は、本願補正発明の「冷却機器用の除霜装置」に相当し、引用発明における「ニクロム線」は、本願補正発明の「発熱体」に相当し、引用発明における「金網」は、複数の開口部を有するものであるから、本願補正発明における「複数の開口部を有する金網」に相当し、引用発明における「可燃性冷媒が漏れたとしても、炎が金網外に伝播するのが防止される」ことは、本願補正発明の「金網が可燃性冷媒の漏洩発生時の防爆部材となる」ことにそれぞれ相当する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「可燃性冷媒を用いた冷却機器用の除霜装置であって、
発熱体と当該発熱体を収納するガラス管から構成されるガラス管ヒータと、
前記ガラス管ヒータを囲み、複数の開口部を有する金網とを備え、
金網が前記可燃性冷媒の漏洩発生時の防爆部材となるように構成した防爆部材付き除霜装置。」

[相違点]
ガラス管ヒータを囲み、複数の開口部を有する金網に関して、本願補正発明においては、金網のメッシュ数を20メッシュ以上で30メッシュ未満に設定し、かつ、前記金網を構成する線材の線径を調整することにより、前記開口部それぞれの面積が(0.762×0.762)mm^(2)?(0.813×0.813)mm^(2)の範囲となるようにするのに対して、引用発明においては、金網のメッシュ数を30メッシュ以上とし、金網の線材の線径を変えることにより開口率を約33?62%とする点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

防爆部材としての金網において開口面積を適宜定めることは、引用発明において線材の線径を変えることにより、開口面積に関連する開口率の範囲を定めたことが開示されているのみならず、本願の出願前に周知(特開2005-69189号公報(段落【0031】?【0032】の記載参照。以下、「周知例1」という。)、特開平9-155865号公報(段落【0023】の記載、【表1】の記載参照。以下、「周知例2」という。))であり、その際にメッシュ数の下限値を20メッシュに定めることは、上記周知例1に照らせば格別なことではない。さらに、その上限を30メッシュ未満とすることも設計的事項であり、当業者にとって格別困難なことではない。
そして、本願補正発明において、金網の開口部の面積を(0.762×0.762)mm^(2)?(0.813×0.813)mm^(2)の範囲となるようにすることは、その下限値、上限値に特段の臨界的意義が見いだせないところ、防爆という引用発明や周知の技術的事項と共通する課題のもとで通常の設計行為を行う過程において最適化をはかるためにヒータの径、表面温度や金網の線径、形状、材料等を考慮して、実験等を行うことにより当業者が適宜なし得たものである。
そして、本願補正発明によって得られる効果も、引用発明及び、周知の技術的事項に基づいて、当業者であれば予測できた範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明及び、周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第53号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上述のように却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年9月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
(以下、「本願発明」という。)

「可燃性冷媒を用いた冷却機器用の除霜装置であって、
発熱体と当該発熱体を収納するガラス管から構成されるガラス管ヒータと、
前記ガラス管ヒータを囲み、複数の開口部を有する防爆部材と、
を備え、
前記防爆部材を構成する前記開口部相互間の部材の寸法を調整することにより、前記開口部の最小寸法を0.813mm以下とし、かつ当該開口部の個数を定義付ける前記防爆部材のメッシュ数を30メッシュ未満に設定した除霜装置。」

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物は、上記「第2.2.」に記載したとおりのものである。

3.発明の対比・判断
本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、「第2.1.」に記載した限定を省いたものである。そうすると、本願発明の構成要件を全て含んだものに相当する本願補正発明が、上記「第2.4.」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-27 
結審通知日 2010-11-02 
審決日 2010-11-15 
出願番号 特願2006-278596(P2006-278596)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F25D)
P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 松下 聡
長崎 洋一
発明の名称 防爆部材付き除霜装置および冷却機器ならびに冷蔵庫  
代理人 市川 利光  
代理人 市川 利光  
代理人 小栗 昌平  
代理人 小栗 昌平  
代理人 橋本 公秀  
代理人 橋本 公秀  

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