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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1229783
審判番号 不服2009-23679  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-01 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2005-243098「真空ポンプとこれを用いた冷房システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日出願公開、特開2007- 56766〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年8月24日の出願であって、平成21年9月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成21年12月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年12月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
シリンダ内を往復動するピストンと、前記シリンダの端部を塞ぐシリンダーカバーと、前記シリンダカバーに設けられた吸気口及び排気口と、前記吸気口に設けられ吸気方向に開く逆止弁と、前記排気口に設けられ排気方向に開く逆止弁とを有するシリンダピストン機構を一対備え、一方の前記シリンダピストン機構の前記排気口に、他方の前記シリンダピストン機構の前記吸気口を接続し、前記一対のシリンダピストン機構に対応して、クランク軸に一対のクランクピン部を設け、これらクランクピン部をクランク軸の回転中心を挟んだ位置に配置し、それらクランクピン部に、対応する前記ピストンを連結し、一方の前記シリンダピストン機構のピストンの往復動に対して、他方のシリンダピストン機構のピストンを逆方向に往復動する真空ポンプを用い、
前記真空ポンプの一方の前記吸気口に、水が入った真空容器を接続し、前記真空ポンプを前記真空容器の減圧に用いて前記減圧により生じる水蒸気の気化熱により温度を下げることを特徴とする真空ポンプを用いた冷房システム。」と補正された。
上記補正について、審判請求の理由では「これら補正はいずれも原明細書に記載されていた範囲内の事項であって限定的減縮に相当するものであると思料する。」と説明している。その説明のとおり、上記補正は、請求項1についてみると、実質的に、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「シリンダピストン機構」について、「前記一対のシリンダピストン機構に対応して、クランク軸に一対のクランクピン部を設け、これらクランクピン部をクランク軸の回転中心を挟んだ位置に配置し、それらクランクピン部に、対応する前記ピストンを連結し、」という事項を限定するとともに、同じく、「真空ポンプ」ないしその「吸気口」について、「前記真空ポンプの一方の前記吸気口に、水が入った真空容器を接続し、前記真空ポンプを前記真空容器の減圧に用いて前記減圧により生じる水蒸気の気化熱により温度を下げる」「真空ポンプを用いた冷房システム」という事項を限定したものであって、これは、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例
特開2005-188492号公報(以下、「引用例」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「【0001】
本発明は、例えば空気、冷媒等の圧縮や真空ポンプ等に用いて好適な水平対向型圧縮機に関する。」
(い)「【0031】
ここで、図1ないし図10は第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、水平対向4気筒型の空気圧縮機を例に挙げて述べる。
【0032】
1は水平対向4気筒型の空気圧縮機で、該空気圧縮機1は、例えば箱形状の金属ケース等からなるクランクケース2と、後述のクランク軸3、圧縮部6,21,25,29等により構成されている。
【0033】
3はクランクケース2に主軸受4を介して回転可能に設けられたクランク軸で、該クランク軸3は、例えば電動モータ等の動力源(図示せず)により回転軸線O-Oを中心として回転駆動されるものである。
【0034】
そして、クランク軸3は、図1ないし図3に示す如く、その軸方向両側で回転軸線O-O上に位置して外周側に主軸受4が取付けられる軸受取付部3Aと、該各軸受取付部3Aからクランクケース2内に向けて軸方向に延びつつ径方向に屈曲した屈曲部3Bと、該各屈曲部3Bの先端側にそれぞれ接続して設けられた第1,第2の偏心部3C,3Dと、これらの偏心部3C,3D間の中間位置に連結された中間連結部3Eと、クランクケース2の外部に突出したプーリ取付部3Fとにより構成されている。
【0035】
ここで、第1の偏心部3Cは、軸線O1-O1を中心とする円柱状に形成され、、第2の偏心部3Dは、軸線O2-O2を中心とする円柱状に形成されている。そして、偏心部3C,3Dは、左,右の軸受取付部3A間の中間位置M(以下、クランク軸3の中間位置Mという)を挟んで軸方向の両側に配置され、回転軸線O-Oに対して互いに等しい離間寸法δだけ径方向に離間(偏心)している。この場合、偏心部3C,3Dは、クランク軸3の径方向の両側に偏心し、その回転方向に対して180°の位相差を有している。
【0036】
また、偏心部3C,3Dの外径Dは、軸受取付部3Aの外径dよりも大径に形成され(D>d)、軸受取付部3A、屈曲部3B及びプーリ取付部3Fは、偏心部3C,3Dよりも小径に形成されている。これにより、偏心部3C,3Dには、後述の大端部軸受18をクランク軸3の端部側から挿通して容易に嵌合できる構成となっている。一方、プーリ取付部3Fには、電動モータ等の図示しないモータにより回転駆動されるプーリ5が取付けられ、クランク軸3はプーリ5を介して回転駆動される。
【0037】
6は空気圧縮機を構成する第1の圧縮部を示し、該第1の圧縮部6は、後述のシリンダ7、ピストン16、連接棒17等により構成されている。そして、圧縮部6は、クランク軸3により連接棒17を介してピストン16が駆動され、該ピストン16がシリンダ7内を往復動することにより、後述の吸込口14から空気を吸込んで圧縮し、吐出口15から圧縮空気を吐出するものである。
【0038】
7はクランクケース2の外面側に立設された筒状のシリンダで、該シリンダ7の内周側は、内径Aを有する円形穴(シリンダボア)として形成されている。また、シリンダ7の先端側には、弁板8を介してシリンダヘッド9が搭載され、該シリンダヘッド9内には、吸込室10と吐出室11とが画成されている。また、弁板8には、シリンダ7内と吸込室10との間を連通,遮断する吸込弁12と、シリンダ7内と吐出室11との間を連通,遮断する吐出弁13とが取付けられている。さらに、シリンダヘッド9には、吸込室10に連通する吸込口14と、吐出室11に連通する吐出口15とが設けられている。」
(う)「【0070】
次に、図11及び図12は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第1,第3の圧縮部と第2,第4の圧縮部との間でシリンダを異なる内径に形成し、4気筒2段圧縮機を構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0071】
41は水平対向4気筒型の空気圧縮機で、該空気圧縮機41は、第1の実施の形態とほぼ同様に、クランクケース2、クランク軸3、第1,第3の圧縮部6,25と、第2,第4の圧縮部42,45とにより大略構成されている。しかし、圧縮部42,45は、第1の実施の形態と比較してシリンダ43,46の内径Bが小さく形成され、圧縮部6,25のシリンダ7,26の内径Aは、これらの内径Bよりも大きくなっている(A>B)。
【0072】
ここで、第2の圧縮部42は、第1の実施の形態とほぼ同様に、内径Bのシリンダ43と、ストロークSをもって往復動するピストン44と、連接棒24とを備えている。また、第4の圧縮部45は、内径Bのシリンダ46と、ストロークSを有するピストン47と、連接棒32とを備えている。
【0073】
また、第1,第3の圧縮部6,25の吐出口15は、図12に示す如く、逆止弁48を介して第2,第4の圧縮部42,45の吸込口14にそれぞれ直列に接続され、第2,第4の圧縮部42,45の吐出口15は、エアタンク33に接続されている。
【0074】
これにより、空気圧縮機41は、空気を2段階で圧縮する4気筒2段圧縮機として構成され、その運転時には、まず低圧側の圧縮部6,25により空気を吸込んで圧縮した後に、この圧縮空気を高圧側の圧縮部42,45により吸込んでさらに圧縮し、高圧の圧縮空気をエアタンク33に向けて吐出するものである。
【0075】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、圧縮部6,25の内径Aを圧縮部42,45の内径Bよりも大きく形成し、これらを直列に接続する構成としたので、各圧縮部の間で慣性力等のバランスを保持しつつ、4気筒2段式の空気圧縮機41を構成することができ、圧縮機を多様化して適用範囲を広げることができる。」
以上の記載事項及び図面(特に図11、12)からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。
「シリンダ7、46内を往復動するピストン16、47と、前記シリンダ7、46の端部を塞ぐ弁板8と、前記弁板8に設けられた吸込口及び吐出口と、前記吸込口に設けられ吸気方向に開く吸込弁12と、前記吐出口に設けられ吐出方向に開く吐出弁13とを有するシリンダピストン機構を一対備え、一方の前記シリンダピストン機構の前記吐出口に、他方の前記シリンダピストン機構の前記吸込口を接続し、前記一対のシリンダピストン機構に対応して、クランク軸3に一対の偏心部3C、3Dを設け、これら偏心部3C、3Dをクランク軸3の回転中心を挟んだ位置に配置し、それら偏心部3C、3Dに、対応する前記ピストン16、47を連結し、一方の前記シリンダピストン機構のピストン16、47の往復動に対して、他方のシリンダピストン機構のピストン16、47を逆方向に往復動する圧縮機。」
(3)対比
本願補正発明と引用例発明とを比較すると、後者の「弁板8」は前者の「シリンダーカバー」に相当し、以下同様に、「吸込口」は「吸気口」に、「吐出口」は「排気口」に、「前記吸込口に設けられ吸気方向に開く吸込弁12」は「前記吸気口に設けられ吸気方向に開く逆止弁」に、「前記吐出口に設けられ吐出方向に開く吐出弁13」は「前記排気口に設けられ排気方向に開く逆止弁」に、「一対の偏心部3C、3D」は「一対のクランクピン部」に、それぞれ相当する。また、後者の「圧縮機」と前者の「真空ポンプ」は「流体機械」である限りにおいて一致する。
したがって、本願補正発明の用語に倣って整理すると、両者は、
「シリンダ内を往復動するピストンと、前記シリンダの端部を塞ぐシリンダーカバーと、前記シリンダカバーに設けられた吸気口及び排気口と、前記吸気口に設けられ吸気方向に開く逆止弁と、前記排気口に設けられ排気方向に開く逆止弁とを有するシリンダピストン機構を一対備え、一方の前記シリンダピストン機構の前記排気口に、他方の前記シリンダピストン機構の前記吸気口を接続し、前記一対のシリンダピストン機構に対応して、クランク軸に一対のクランクピン部を設け、これらクランクピン部をクランク軸の回転中心を挟んだ位置に配置し、それらクランクピン部に、対応する前記ピストンを連結し、一方の前記シリンダピストン機構のピストンの往復動に対して、他方のシリンダピストン機構のピストンを逆方向に往復動する流体機械。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は「流体機械」が「真空ポンプ」であるのに対して、引用例発明は「流体機械」が「圧縮機」である点。
[相違点2]
本願補正発明は、「前記真空ポンプの一方の前記吸気口に、水が入った真空容器を接続し、前記真空ポンプを前記真空容器の減圧に用いて前記減圧により生じる水蒸気の気化熱により温度を下げる」、及び「真空ポンプを用いた冷房システム」という事項を具備するのに対して、引用例発明はそのような事項を具備していない点。
(4)判断
(4-1)[相違点1]について
上記(あ)に摘記したように、引用例には、「本発明は、例えば空気、冷媒等の圧縮や真空ポンプ等に用いて好適な水平対向型圧縮機に関する。」と記載されており、引用例発明の圧縮機を真空ポンプとして用いることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(4-2)[相違点2]について
真空ポンプの吸気口に水が入った真空容器を接続し、真空ポンプを真空容器の減圧に用いて減圧により生じる水蒸気の気化熱により温度を下げる冷房システムは、例えば、特開平3-59361号公報(特に第2ページ左上欄第18行?左下欄第5行)、特開2003-130476号公報(特に【0002】)に示されているように周知である。
引用例発明の圧縮機を真空ポンプとして用いることが当業者にとって容易に想到し得たものと認められることは、上記のとおりであり、そのような真空ポンプを上記周知の冷房システムの真空ポンプとして使用することは、適宜採用し得る設計的事項にすぎない。
そして、本願補正発明の作用効果は、引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が予測し得た程度のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は、平成22年7月9日付け回答書において、「すなわち、本願の請求項1の発明は、『前記シリンダの端部を塞ぐシリンダーカバーと、前記シリンダカバーに設けられた吸気口及び排気口と、前記吸気口に設けられ吸気方向に開く逆止弁と、前記排気口に設けられ排気方向に開く逆止弁とを有するシリンダピストン機構を一対備え、・・・真空ポンプを用い、前記真空ポンプの一方の前記吸気口に、水が入った真空容器を接続し、前記真空ポンプを前記真空容器の減圧に用いて前記減圧により生じる水蒸気の気化熱により該真空タンク内の水の温度を下げる』という構成を採用する点で甲第1号証と大きく相違する。」、及び「また、甲第1号証は、第4の圧縮部の吐出口をエアータンクに接続(図12)し、エアータンクの圧縮空気を吐出すもの(段落0052段)であり、水の入ったタンクを減圧して冷房する点については開示も示唆もされていません。」と主張するが、本願補正発明が引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは上述したとおりである。
同じく、「本願発明は、…一方のシリンダ内の水蒸気を他方のシリンダに吸引し、このようにして一方のシリンダ内から水蒸気を吸引除去することにより、水蒸気が大量に混入する場合でも、効率よく減圧することができる。」、「このようにして一方のシリンダ内から水蒸気を吸引除去することにより、水蒸気が大量に混入する場合でも、効率よく減圧することができ、この真空ポンプを、水が入った真空容器の減圧に用いることにより、効率の良い冷房システムを構築することができる。」、及び「一方のシリンダの水蒸気を含む気体を、効率よく他方のシリンダに排気することができ、一方のシリンダ内に水が溜まらないから、一方のシリンダピストン機構において、連続して安定した真空吸引を行うことができる。」と主張するが、そのような作用ないし効果が引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者であれば予測し得た程度のものであることは上述したとおりである。
同じく、「また、真空ポンプは、例えば、中古自動車のエンジンを改良して製造することもできるため、安価で製造が容易で、資源の有効活用を図ることができます」と主張するが、「中古自動車のエンジンを改良して製造する」ことが請求項1のどの事項に基づく主張であるのか、必ずしも明確ではないことは措くとしても、引用例発明を何からどのように製造するかは適宜の設計的事項にすぎない。
同じく、「前記シリンダの端部を塞ぐシリンダーカバーに吸気口及び排気口を設け、これら吸気口及び排気口に逆止弁を設け、逆止弁をシリンダーカバーに収めることにより、シリンダカバーとピストンとで作られる空間を極力狭くし、これにより圧縮工程で水蒸気が凝縮する空間を極力少なくするように構成している。」と主張するが、「前記シリンダの端部を塞ぐシリンダーカバーに吸気口及び排気口を設け、これら吸気口及び排気口に逆止弁を設け、逆止弁をシリンダーカバーに収める」という事項は、実質的に引用例に示されている。
また、本審決では、特開平3-59361号公報、及び特開2003-130476号公報は、「真空ポンプの吸気口に水が入った真空容器を接続し、真空ポンプを真空容器の減圧に用いて減圧により生じる水蒸気の気化熱により温度を下げる冷房システム」が周知であることを示す文献として引用しているにすぎず(前審の前置報告書も同様)、それ以外の構造・作用等の点を挙げて引用例発明と相違するとの主張は正鵠を得たものではなく、本審決の認定及び判断を左右するものではない。

(5)むすび
本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定違反するものであり、本件補正における他の補正事項を検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成21年12月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成21年4月23日付け手続補正により補正された明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
シリンダ内を往復動するピストンと、前記シリンダの端部を塞ぐシリンダーカバーと、前記シリンダカバーに設けられた吸気口及び排気口と、前記吸気口に設けられ吸気方向に開く逆止弁と、前記排気口に設けられ排気方向に開く逆止弁とを有するシリンダピストン機構を一対備え、一方の前記シリンダピストン機構の前記排気口に、他方の前記シリンダピストン機構の前記吸気口を接続し、一方の前記シリンダピストン機構のピストンの往復動に対して、他方のシリンダピストン機構のピストンを逆方向に往復動することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記一対のシリンダピストン機構に対応して、クランク軸に一対のクランクピン部を設け、これらクランクピン部をクランク軸の回転中心を挟んだ位置に配置し、それらクランクピン部に、対応する前記ピストンを連結したことを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の真空ポンプを用い、前記真空ポンプの一方の前記吸気口に、水が入った真空容器を接続し、前記真空ポンプを前記真空容器の減圧に用いて前記減圧により生じる水蒸気の気化熱により温度を下げることを特徴とする真空ポンプを用いた冷房システム。」

3-1.本願発明1について
(1)本願発明1
本願発明1は上記のとおりである。
(2)引用例
引用例、その記載事項は上記2.に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明1は実質的に、上記2.で検討した本願補正発明の「前記一対のシリンダピストン機構に対応して、クランク軸に一対のクランクピン部を設け、これらクランクピン部をクランク軸の回転中心を挟んだ位置に配置し、それらクランクピン部に、対応する前記ピストンを連結し、」という事項を削除するとともに、同じく、「前記真空ポンプの一方の前記吸気口に、水が入った真空容器を接続し、前記真空ポンプを前記真空容器の減圧に用いて前記減圧により生じる水蒸気の気化熱により温度を下げる」「真空ポンプを用いた冷房システム」という事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明1の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.に記載したとおり、引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、実質的に同様の理由により、引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
したがって、本願発明1は引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願発明2、3について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-25 
結審通知日 2010-11-01 
審決日 2010-11-12 
出願番号 特願2005-243098(P2005-243098)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F04B)
P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 一彦  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 倉田 和博
川上 溢喜
発明の名称 真空ポンプとこれを用いた冷房システム  
代理人 牛木 護  

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