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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B31F |
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管理番号 | 1229790 |
審判番号 | 不服2010-3921 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-23 |
確定日 | 2011-01-04 |
事件の表示 | 特願2000-116726「コルゲータにおけるトリム片除去方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月30日出願公開、特開2001-301070〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 ・本願発明 本願は、平成12年4月18日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年5月22日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「前回と次回のオーダとにより段ボールシート両側部のトリム片の幅寸法とトリム片を除いた製品となるべき段ボールシートの幅寸法とを変更して段ボールシートの長さ方向にそれぞれスリットを入れることのできるスリッタと、スリッタの上流側に設けられ、段ボールシートのオーダ変更部に上記トリム片を横断するように切断することのできるトリムカッタと、スリッタの下流側に設けられ、上記スリッタにより形成されたトリム片を吸引口へ吸引し、除去するトリム片除去手段とによってトリム片を除去する方法において、 前回と次回のオーダの段ボールシート側部の対応するトリム片形成用のスリット間相当部を上記トリムカッタにより段ボールシートの長さ方向に対して直角に切断し、前回と次回のオーダのトリム片を連続させた状態で上記吸引口へ吸引してトリム片を除去するようにしたことを特徴とするコルゲータにおけるトリム片除去方法。」 2.引用発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平10-86245号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 シートをその送り方向に裁断することにより、そのシートの幅方向における少なくとも一方の側に帯状のトリム片の形成が予定され、かつ前記裁断の仕様変更が可能であり、その仕様変更に伴い、前記トリム片を除去したと仮定した場合に残る残余のシート本体部分と当該トリム片との間に非分断部分が生じる場合において、シート面とそれらトリム片とシート本体部分との非分断状態を解消するために、少なくともその非分断部分に、前記シートの幅方向に対し傾斜した角度で切れ目を形成するカッターを備え、 該カッターは、前記シートの幅方向に対する傾斜角度が連続的又は段階的に変更可能に設けられていることを特徴とするトリムカッター。」(【特許請求の範囲】参照) (2)「【従来の技術】従来より、例えば図18に示すように、段ボールシートDSを複数のスリッタ刃Cを有するスリッタ装置Sによって、シート送り方向(流れ方向)に裁断することが行われている。図18では、D_(1)及びD_(2)の2丁取りの例を示しているが、段ボールシートDSの両側は、所定幅の帯状裁断カスであるトリム片(トリミング片)TMとなる。これらトリム片TMは、スリッタ装置Sの下流に設けられたトリム片回収機構Rによってそれぞれ吸引・回収される。 【0003】ところで、多くの段ボール製造ラインでは、連続的に裁断されている段ボールシートDSに対し、丁取り数や丁取り幅などの裁断仕様の変更を能率よく行うために、図10(a)に示すように、2台のスリッタ装置S_(1),S_(2)をシート流れ方向に近接して配置することが行われている。この場合、一方のスリッタ装置S_(1)が旧仕様で裁断を継続している間に、他方のスリッタ装置S_(2)が新仕様裁断のために各スリッタ刃Cを位置決めするとともに、仕様変更のタイミングとなれば(b)に示すように、装置S_(2)がロード状態に、装置S_(1)がアンロード状態にそれぞれ切り替えられて、シート送りを停止することなく裁断仕様が変更される。このときの、新旧各仕様により裁断線群G_(1)及びG_(2)の形成される様子を図11に示している(なお、図中破線は、アンロード状態のスリッタ刃Cを示している)。 【0004】ここで、上図のように、トリム片TMの幅が裁断仕様の変更により、W_(1)からW_(2)へ変化する場合、図19に示すように、旧仕様でのトリム片の裁断線K_(1)と新仕様でのトリム片の裁断線K_(2)とが不連続となり、トリム片TMと残余のシート本体部DMとの間に非分断部分Yが生じて、該トリム片TMの回収が不能となる問題を生ずる。そこで、これを回避するために、ロータリーカッター等の切断刃により、シート縁部に直角に切れ目を形成して上記非分断部分Yを切断するとともにトリム片TMを分断するトリムカッターが使用されている。」(段落【0002】-【0004】参照)及び図19 (3)「【発明が解決しようとする課題】上述のようなトリムカッターにおいては、直角な切れ目によりトリム片TMが分断されるので、図20(a)に示すように、分断されたトリム片TMの端縁がトリム片回収機構Rの吸引開口縁等に引っ掛かって、トリム片TMの回収がスムーズに行えなくなる問題がある。また、トリム片TMは段ボールシート等の腰の強い材質で構成されていることから、同図(b)に示すように、トリム片回収機構Rに差しかかった場合に、直角に切断されたその先端部分TMaへの吸引力が不十分となって、その吸込み・回収に失敗するトラブルが生じやすい。 【0006】本発明の課題は、トリム片の端部の引っ掛かりや、吸引力不足等によるトリム片の回収ミスを生じにくいトリムカッターを提供することにある。」(段落【0005】-【0006】参照) (4)「また、カッターはシートに対し、該シートに切れ目を形成する切断位置と、シート面と交差する向きにおいて該切断位置から退避した退避位置との間で接近・離間可能に設けることができる。これにより、例えばカッターをシートから退避させた状態で、シート内側に設定された所定の切断開始位置まで移動させ、その後カッターを切断位置に移動させることにより、シート内の特定位置を狙って切れ目を形成することが可能となる。具体的には、トリム片の非分断部分にのみ切れ目を施すことにより、トリム片を途切れさせることなく、シート本体部分とトリム片とを分離できるようになり、ひいてはトリム片の回収をよりスムーズに行うことができる。」(段落【0015】参照) (5)「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例としてのトリムカッター1を概念的に示すものである。すなわち、段ボールシートDSの幅方向に配列する複数のスリッタ刃Cを備えた前述のスリッタ装置(S_(1),S_(2))が、図中矢印の方向に搬送される段ボールシート(以下、単にシートという)DSの流れ方向に沿って所定の間隔で2台配置され、トリムカッター1はそれらスリッタ装置S_(1),S_(2)の上流側に配置されている。そして、図18に示すように、スリッタ装置S_(1)又はS_(2)の最外位置に位置する2つのスリッタ刃Cにより、段ボールシートDSの両側に所定幅のトリム片TMが形成される。」(段落【0017】参照) (6)「図19に示すように、裁断仕様変更に伴いトリム片TMの裁断線K_(1)及びK_(2)は不連続となり、非分断部分YがシートDSの両側に形成される。本実施例では、シートDSの両側に対し等幅のトリム片TMが形成されるとともに、その非分断部分Yにおいて仕様変更前及び変更後のトリム片裁断線K_(1)及びK_(2)にまたがるように、シートDSの外側から内側へ向けて斜めに切れ目Q(図12等)を形成する場合を例にとる。この場合カッター9は、図7に示すように、シートDSの搬送方向下流側において外向きとなるように傾斜して配置され、シートDSの幅方向において該シートDSの外側から内側へ向かう方向に移動しながら切れ目Qを形成することとなる。また、各カッターユニット2による切れ目Qの形成はシートDSの両側で同時に行われるものとする。」(段落【0026】参照) (7)「こうして切れ目Qの形成が進行し、終了位置に到達すればカッター9をアンロードしてこれを原位置に復帰させ、処理は終了する。その後、シートDSはさらに下流側に搬送され、図10及び図11に示すように、スリッタS_(1),S_(2)により仕様変更を伴いつつ裁断される。これにより、不連続なトリム片裁断線K_(1),K_(2)(図7等)が形成されることとなるが、これらにまたがるようにして(すなわち、非分断部分Yを切断するように)予め切れ目Qが形成されているために、トリム片TMは図12(a)に示すように、下流側部分TM_(1)と上流側部分TM_(2)とに分断されるとともに、シート本体部分DMから分離される。そして、図13に示すように、その上流側部分TM_(2)は、その先端面が切れ目Qにより傾斜面となり、トリム片回収機構Rの吸引開口縁等への引っ掛かりが生じにくくなる。また、傾斜した先端面の形成により、トリム片先端部分TMaの腰が弱くなるので吸引力の不足が生じにくくなり、結果としてトリム片TMの回収を確実に行うことができるようになる。・・・ 【0032】なお、上記実施例においては、カッター9を予めロード状態とした後に、シートDSの縁部から切込みを開始するようにしていたが、アンロード状態でシートDS内側の所定位置までカッター9を移動させ、その後ロード状態として切込みを行うようにすれば、図12(b)に示すように、非分断部分Yのみが切断されるように切れ目Qを形成することができ、トリム片TMを連続状態に保つことが可能となる。・・・」(段落【0031】-【0032】参照)及び図12(b) 以上の記載は、装置の発明のみならず、方法の発明としても把握できることから、引用例には、 「段ボールシートの幅方向に配列する複数のスリッタ刃を備えたスリッタ装置が、搬送される段ボールシートの流れ方向に沿って所定の間隔で2台配置され、トリムカッターはそれらスリッタ装置の上流側に配置され、スリッタ装置の最外位置に位置する2つのスリッタ刃により、段ボールシートの両側に所定幅のトリム片が形成され、これらトリム片は、スリッタ装置の下流に設けられたトリム片回収機構の吸引開口にそれぞれ吸引・回収されるトリム片の回収方法であって、 裁断仕様変更に伴いトリム片の裁断線が不連続となり、非分断部分がシートの両側に形成される場合において、この非分断部分のみが切断されるように段ボールシートの幅方向に対し傾斜した角度で上記トリムカッターにより切れ目を形成することにより、トリム片を連続状態に保つことが可能となるトリム片の回収方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「スリッタ装置」、「トリムカッター」、「トリム片回収機構」、「吸引開口」及び「非分断部分」は、それぞれ本願発明の「スリッタ」、「トリムカッタ」、「トリム片除去手段」、「吸引口」及び「スリット間相当部」に相当し、 また、引用発明の「裁断仕様変更」は、本願発明の「前回と次回のオーダとにより段ボールシート両側部のトリム片の幅寸法とトリム片を除いた製品となるべき段ボールシートの幅寸法とを変更」を意味し、 引用発明の「トリム片の回収」は、本願発明の「トリム片の除去」に対応し、 そして、段ボールシートは、一般的にコルゲータと呼ばれる装置により生産されるものであることから、両者は 「前回と次回のオーダとにより段ボールシート両側部のトリム片の幅寸法とトリム片を除いた製品となるべき段ボールシートの幅寸法とを変更して段ボールシートの長さ方向にそれぞれスリットを入れることのできるスリッタと、スリッタの上流側に設けられ、段ボールシートのオーダ変更部に上記トリム片を横断するように切断することのできるトリムカッタと、スリッタの下流側に設けられ、上記スリッタにより形成されたトリム片を吸引口へ吸引し、除去するトリム片除去手段とによってトリム片を除去する方法において、 前回とトリム片の回収次回のオーダの段ボールシート側部の対応するトリム片形成用のスリット間相当部を上記トリムカッタにより切断し、前回と次回のオーダのトリム片を連続させた状態で上記吸引口へ吸引してトリム片を除去するようにしたことを特徴とするコルゲータにおけるトリム片除去方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点;本願発明では、トリムカッタにより切断が、段ボールシートの長さ方向に対して直角であるのに対し、引用発明では、段ボールシートの幅方向に対し傾斜した角度である点。 4.判断 そこで、上記相違点について検討すると、 引用例には、従来技術としてロータリーカッター等の切断刃により、シート縁部に直角に切れ目を形成することが記載され(上記記載事項(2)参照)、引用発明は、該シート縁部に直角に切れ目を形成することの問題点を解決するために傾斜した角度に切れ目を形成するものではあるが、これを従来技術に戻すことに格別な創作性は認められない。 また、この従来技術においては、段ボールシート縁部まで切込みを行い、非分断部分のみが切断されるものではないが、ロータリーカッター等により非分断部分のみを切断することに格別な困難性は認められないことより、 引用発明において、ロータリーカッター等を用いて、シート縁部の非分断部分のみに直角に切れ目を形成し、上記相違点の本願発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。 なお、請求人は、審判請求の理由において 『引用文献1には、本願発明(請求項1?3)の「直角に切断する」事項が従来技術として記載され、一方、本願発明(請求項1?3)の「スリット間相当部を切断する」事項が新たな発明として記載されている。しかしながら、両者を組み合わせる技術思想や動機付けは、引用文献1には見当たらない。むしろ、引用文献1には、直角に切断することに対して否定的な技術思想が開示されているので、両者の組み合わせは阻害される。』との主張をしているが、 直角に切断することについての技術的な意義等は、本願出願当初の明細書に記載されていたものではなく、そもそも、引用発明を従来の技術に戻すこと、すなわち、進歩した技術を進歩する前の技術に戻すことに格別の動機付けが必要とはいえないから、上記請求人の主張は採用できない(参考判決;平成17年(行ケ)第10026号)。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-28 |
結審通知日 | 2010-11-02 |
審決日 | 2010-11-15 |
出願番号 | 特願2000-116726(P2000-116726) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B31F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 忠博、岩崎 晋 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
谷治 和文 栗林 敏彦 |
発明の名称 | コルゲータにおけるトリム片除去方法及び装置 |
代理人 | 真田 有 |